(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456218
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】破砕機の可燃性ガス検出方法および破砕機の防爆装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20190110BHJP
B02C 13/31 20060101ALI20190110BHJP
B02C 13/18 20060101ALI20190110BHJP
B02C 23/04 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
G01N21/3504
B02C13/31
B02C13/18
B02C23/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-71726(P2015-71726)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191622(P2016-191622A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小林 利治
(72)【発明者】
【氏名】二澤 保紀
【審査官】
嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−204968(JP,A)
【文献】
特開2004−219379(JP,A)
【文献】
特開2001−074654(JP,A)
【文献】
特開2006−220625(JP,A)
【文献】
特開2008−229580(JP,A)
【文献】
特開2003−284917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
B01D 53/34−53/96
B02C 9/00−25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光器 から可燃性ガスにおける吸収波長とリファレンス波長を含む赤外線を破砕機内の空間部に照射して受光器で受光する破砕機の可燃性ガス検出方法であって、
吸収波長の赤外線の放射強度 がリファレンス波長の赤外線の放射強度より減衰された時に、空間部に可燃性ガス塊が存在すると判断し、
吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度がそれぞれ減衰されず略同一の時に、空間部に介在物がないと判断し、
吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度が略同一程度に減衰され、減衰が小さい時に空間部に粉塵が存在し、減衰が大きい時に空間部に被破砕物が存在すると判断する
ことを特徴とする破砕機の可燃性ガス検出方法。
【請求項2】
赤外線の複数の光軸を、略同一平面上でかつ格子状に形成し、
可燃性ガス塊が検出された光軸の交差位置から、可燃性ガス塊の存在位置を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の破砕機の可燃性ガス検出方法。
【請求項3】
破砕機に設けられてケーシング内から空間部に、可燃性ガスにおける吸収波長とリファレンス波長を含む赤外線を照射する投光器と、
前記ケーシングに設けられて吸収波長の赤外線とリファレンス波長の赤外線をそれぞれ受光する受光器と、
投光器と受光器の間で略同一平面上で、かつ格子状に配置された複数の赤外線の光軸と、
前記ケーシングに設けられて可燃性ガス塊を希釈する希釈用ガスを噴射する複数の防爆用ガスノズルと、
受光器で受光した吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度に基づいて可燃性ガス塊を検出するとともに、赤外線の光軸の交差位置から可燃性ガス塊の位置を判断するガス検出判断部と、
ガス検出判断部で可燃性ガス塊を検出した時に、可燃性ガス塊の位置に対応する防爆ガスノズルを選択し、選択された防爆ガスノズルから前記空間部の可燃性ガス塊に向かって希釈用ガスを噴射する防爆制御部と、具備した
ことを特徴とする破砕機の防爆装置。
【請求項4】
光軸を含む略平面が、破砕用回転体の被破砕物投入口側近傍および破砕物排出口側近傍の少なくとも一方に配置された
ことを特徴とする請求項3記載の破砕機の防爆装置。
【請求項5】
希釈用ガスが窒素ガスであり、
防爆判断部は、ガス検出判断部で可燃性ガス塊を検出した時に破砕機を停止し、可燃性ガス塊が希釈された時に再起動する
ことを特徴とする請求項3または4記載の破砕機の防爆装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被破砕物に含まれる容器などから漏れ出した可燃性ガスを検出する破砕機の可燃性ガス検出方法、およびこの可燃性ガスが破砕時の火花により着火燃焼、爆発するのを未然に防止する破砕機の防爆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却施設に設置された破砕機に被破砕物を投入して破砕する際に、被破砕容器などに残存する可燃性液体や可燃性ガス、たとえばメタンやプロパン、ブタン、ガソリンなどが漏れ出し、破砕時に発生する火花が着火して、破砕機内で燃焼や爆発が発生するのを防止するために、例えば特許文献1が提案されている。
特許文献1には、回転されるハンマーと、側壁面に突設されたブロックとの間で上方の投入口から被破砕物を破砕する破砕機において、側壁面の突状物の背面にガス濃度計を設置し、このガス濃度計に基準を超えた濃度の可燃性ガスが検出されると、不燃性気体を注入して燃焼や爆発を防止するものが開示されている。
【0003】
特許文献2には、赤外線光源と赤外線検出素子とにより所定の被測定ガスを検出する赤外線ガス検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4737838号公報
【特許文献2】特開2006−220625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の破砕機は、濃度計がガスサンプリング式であるため、検知に応答時間が長くかかり、応答特性が低い。またサンプリング位置が限定されるため、サンプリング位置近傍で発生した可燃性ガスしか検出することができない。
【0006】
また特許文献2では、被測定ガスに吸収される吸収光の放射強度と、被測定ガスに吸収されないリファレンス光の放射強度を測定しており、吸収光の放射強度はリファレンス光の放射強度を基準とするものである。しかしながら、破砕機のように被破砕物や粉塵などが混在する空間部で、可燃性ガスを検出することは困難である。
【0007】
本発明は、被破砕物や粉塵などが存在する破砕機内の空間部で、被破砕物や粉塵を判別して可燃性ガスのみを精度よく検出することができる破砕機の可燃性ガス検出方法、および破砕機内の空間部に漏出した可燃性ガス塊を効果的に希釈して着火、爆発を未然に防止できる破砕機の防爆装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る破砕機の可燃性ガス検出方法は、
投光器から可燃性ガスにおける吸収波長とリファレンス波長を含む赤外線を破砕機内の空間部に照射して受光器で受光する破砕機の可燃性ガス検出方法であって、
吸収波長の赤外線の放射強度がリファレンス波長の赤外線の放射強度より減衰された時に、空間部に可燃性ガス塊が存在すると判断し、
吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度がそれぞれ減衰されず略同一の時に、空間部に介在物がないと判断し、
吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度が略同一程度に減衰され、減衰が小さい時に空間部に粉塵が存在し、減衰が大きい時に空間部に被破砕物が存在すると判断することを特徴とする。
【0009】
また、上記破砕機の可燃性ガス検出方法において、
赤外線の複数の光軸を、略同一平面上でかつ格子状に形成し、
可燃性ガス塊が検出された光軸の交差位置から、可燃性ガス塊の発生位置を特定することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る破砕機の防爆装置は、
破砕機に設けられてケーシング内から空間部に、可燃性ガスにおける吸収波長とリファレンス波長を含む赤外線を照射する投光器と、
ケーシングに設けられて吸収波長の赤外線とリファレンス波長の赤外線をそれぞれ受光する受光器と、
投光器と受光器の間で略同一平面上で、かつ格子状に配置された複数の赤外線の光軸と、
ケーシングに設けられて可燃性ガス塊を希釈する希釈用ガスを噴射する複数の防爆用ガスノズルと、
受光器で受光した吸収波長の赤外線の放射強度とリファレンス波長の赤外線の放射強度に基づいて可燃性ガス塊を検出するとともに、赤外線の光軸の交差位置から可燃性ガス塊の位置を判断するガス検出判断部と、
ガス検出判断部で可燃性ガス塊を検出した時に、可燃性ガス塊の位置に対応する防爆用ガスノズルを選択し、選択された防爆用ガスノズルから前記空間部の可燃性ガス塊に向かって希釈用ガスを噴射する防爆制御部と、具備したことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、上記構成の破砕機の防爆装置において、
光軸を含む略平面が、破砕用回転体の被破砕物投入口側近傍および破砕物排出口側近傍の少なくとも一方に配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、上記構成の破砕機の防爆装置において、
希釈用ガスが窒素ガスであり、
防爆判断部は、ガス検出判断部で可燃性ガス塊を検出した時に破砕機を停止し、可燃性ガス塊が希釈された時に再起動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る破砕機の可燃性ガス検出方法によれば、可燃性ガスの吸収波長とリファレンス波長の放射強度を互いに比較して、吸収波長がリファレンス波長より減衰され、設定された放射強度差となった時に可燃性ガス塊が発生したと判断する。また赤外線の吸収波長とリファレンス波長の放射強度がそれぞれ略同一で減衰されない時に空間部に介在物がなく、さらに吸収波長とリファレンス波長の放射強度がそれぞれ略同一に減衰され、この減衰が小さい時に粉塵が存在すると判断し、減衰が極めて大きい時に被破砕物が存在すると判断する。これにより、破砕機の空間部で被破砕物と粉塵と可燃性ガスとが混在することがあっても、可燃性ガスを精度良く判別して、可燃性ガス塊の発生を検出することができる。なお、ここで可燃性ガス塊とは、火花などにより着火、燃焼、爆発するおそれがある濃度となった可燃性ガス雰囲気空間をいう。
【0014】
また吸収波長とリファレンス波長の赤外線の光軸を格子状に配置することにより、検出された光軸に基づいてその交差位置から可燃性ガス塊の発生位置を特定することができ、これにより可燃性ガス塊に対する希釈や排出、破砕停止などの対応を迅速かつ効果的に行うことができる。
【0015】
さらに、破砕機の防爆装置によれば、空間部の略同一平面上で格子状に配置された赤外線の光軸において、可燃性ガスを検出した光軸の交差位置に、可燃性ガス塊が発生したと判断することができる。そして可燃性ガス塊に向かって希釈用ガスを噴射可能な防爆用ガスノズルを選択し、これら防爆用ガスノズルから可燃性ガス塊に向かって希釈用ガスを効果的に噴射することができる。これにより、少ない量の希釈用ガスで迅速かつ効果的に可燃性ガス塊を希釈することができ、破砕機内で漏出された可燃性ガスによる着火や燃焼、爆発を未然に防止することができる。
【0016】
また、気流が滞留しやすい破砕用回転体の被破砕物投入口側近傍および破砕物排出口側近傍の一方の略平面上に、赤外線の光軸を交差状に配置することにより、可燃性ガス塊の発生位置を効果的に検出することができる。
【0017】
さらに、希釈用ガスを窒素ガスとすることで、可燃性ガスの吸収波長が窒素ガスの影響を受けることがなく、可燃性ガス塊の希釈状態を精度よく検出することができる。したがって、ガス検出判断部では、吸収波長とリファレンス波長の放射強度差(比率)が小さくなったのを精度良く検出することができ、これにより可燃性ガス塊の濃度が低下したと判断して、破砕機の再起動を安全かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る可燃性ガス検出装置を有する一軸式竪型破砕機を示す側面視の断面図である。
【
図4】(a)〜(d)は可燃性ガスの吸収波長の赤外線と可燃性ガスのリファレンス波長の赤外線の照射距離と放射強度の関係を示し、(a)は介在物および可燃性ガスの無い状態、(b)は粉塵が存在する状態、(c)は可燃性ガスが存在する状態、(d)は被破砕物が存在する状態を示す。
【
図5】可燃性ガスの吸収波長の赤外線と可燃性ガスのリファレンス波長の赤外線の放射強度の変化を示すグラフである。
【
図6】本発明に係る可燃性ガス検出装置を有する二軸式横型破砕機の実施例2を示す側面視の断面図である。
【
図7】二軸式横型破砕機を示すB−B断面図である。
【
図8】赤外線投・受光器の他の実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を
図1〜
図5に基づいて説明する。
図1および
図2に示す大型の一軸式竪型破砕機10は、たとえばごみ収集施設や廃棄物リサイクル施設などに設置されて焼却等の処理前の大型廃棄物を破砕 するものである。この破砕機10は、基台フレーム11に駆動モータ12と破砕機本体13が並列に立設配置されており、駆動モータ12の出力軸が巻き掛け伝動機構14を介して破砕機本体13の駆動軸15に連動連結されている。
【0020】
破砕機本体13は、鉛直方向の軸心部に駆動軸15が回転自在に配置されたケーシング20と、駆動軸15の上端部に設けられて被破砕物を撹拌するノッカ(破砕用回転体)23と、駆動軸15の中間部に設けられ外周部に支持された複数のグラインダ24により被破砕物を破砕するロータ(破砕用回転体)25と、駆動軸15の下端部に設けられ旋回アームの先端部に破砕物を排出口22に送り出す掻き出し体が取り付けられたスイーパ(破砕用回転体)26と、ケーシング20の内周面にグラインダ24に対向して配置されグラインダ24との間で被破砕物を破砕する複数のシェルライナ27と、を具備している。このケーシング20はたとえば直径が10m前後に形成され、ノッカ23の上方に被破砕物投入口21が開口され、スイーパ26の一側方に破砕物排出口22が開口されている。
【0021】
上記構成において、被破砕物投入口21からケーシング20内に投入された被破砕物は、まずノッカ23により撹拌されつつ外周部に送り込まれ、次いでグラインダ24とシェルライナ27との間で破砕される。破砕されて落下した破砕物は、スイーパ26により破砕物排出口22に送り出される。
【0022】
本発明に係る可燃性ガス検出装置31を具備した防爆装置41を
図3〜
図5を参照して説明する。
図3に示すように、可燃性ガス検出装置31は、少なくとも可燃性ガスの吸収波長とリファレンス波長を含む赤外線を、ケーシング20内でスイーパ26の上方の空間部28に照射する赤外線投光器(投光器)32と、各赤外線投光器32に対向するケーシング20に配置されて吸収波長の赤外線とリファレンス波長の赤外線とをそれぞれ受光する赤外線受光器(受光器)33と、赤外線受光器33Aで受光した吸収波長とリファレンス波長の赤外線の放射強度差(比率)やそれぞれの波長の放射強度差に基づいて、空間部28に存在する被破砕物、粉塵、可燃性ガスのいずれかを検出するガス検出判断部34と、を具備している。
【0023】
これら複数対の赤外線投光器32および赤外線受光器33は、ノッカ23 上方の空間部28で略同一平面、たとえば水平面上に配置され、赤外線の光軸IRがたとえば0.5〜2.0mのピッチで格子状に交差するように配置されている。これにより、可燃性ガスを検出した赤外線投・受光器32,33の光軸IRが交差する位置を可燃性ガス塊の発生位置として特定することができる。ここで可燃性ガス塊とは、火花などにより着火、燃焼、爆発するおそれがある濃度の可燃性ガス雰囲気空間をいう。
【0024】
また破砕機10では、破砕時に粉塵が舞い上がって放散しないように、破砕物の排出口22を負圧として被破砕物の投入口21から排出口22に向かって気流が形成されている。このような気流中で、気流が最も滞留しやすい箇所が、スイーパ26の上方の空間部28であり、この空間部28で略同一水平面上に赤外線の光軸IRを配置することにより、効果的に可燃性ガス塊を検出することができる。
【0025】
防爆装置41は、可燃性ガス検出装置31を含み、ケーシング20に不活性ガスまたは水蒸気からなる希釈用ガスを空間部28の所定部位に向かって噴射する複数の防爆用ガスノズル42が所定間隔ごとに設けられている。希釈用ガスは、不活性ガスや水蒸気であり、好ましくは窒素ガスが最適である。ガス検出判断部34において、空間部28に可燃性ガス塊が発生したと判断された時に、検出した赤外線投・受光器32,33の光軸IRの交差位置に対応して選択された防爆用ガスノズル42から、空間部28に希釈用ガスを噴射する防爆制御部43が設けられている。吸収波長とリファレンス波長の放射強度差に基づいて、可燃性ガス塊の濃度を判断することができる。したがって、希釈用ガスの噴射後に、吸収波長とリファレンス波長の放射強度差(比率)が十分に小さくなったと判断することにより、停止していた破砕機を再起動することができる。
【0026】
以下、詳細を説明する。
赤外線投光器32から空間部28に照射される赤外線は、少なくとも可燃性ガス、たとえばメタン(CH4)やプロパン(C3H8)、ブタン(C4H10) の吸収波長の赤外線とリファレンス波長の赤外線を含んでいる。表1に可燃性ガスの吸収波長の代表例を示す。
【0027】
【表1】
赤外線受光器33は、吸収波長の赤外線A-IRのみを通過させる吸収波長用の波長選択(バンドパス)フィルタ35Aと、この波長選択フィルタ35Aを介して吸収波長の赤外線A-IRを受光する吸収波長受光部(受光素子)33Aと、リファレンス波長の赤外線R-IRのみを通過させるリファレンス波長用の波長選択(バンドパス)フィルタ35Rと、このリファレンス波長用フィルタ35Rを介してファレンス波長の赤外線R-IR受光するリファレンス波長受光部(受光素子)33Rと、を具備している。ここで、吸収波長用の波長選択フィルタ35Aの選択波長は、3.1μm以上、3.5μm以下であり、リファレンス波長用の波長選択フィルタ35Rの選択波長は、3.5を超え、4.1μm以下である。なお、上記の吸収波長およびリファレンス波長に限定されるものではなく、破砕物に含まれる可燃性ガスの成分に対応して、任意に選択することができる。
【0028】
そして吸収波長受光部35Aおよびリファレンス波長受光部35Rで検出した信号は、それぞれアンプ36A,36Rで増幅後、ガス検出判断部34に出力される。
つぎに吸収波長の赤外線A-IRとリファレンス波長の赤外線R-IRの挙動を、
図4および
図5を参照して説明する。
【0029】
図4(a)に示すように、空間部28に介在物および可燃性ガスが無い場合、赤外線投光器32から空間部28に照射された吸収波長の赤外線A-IRとリファレンス波長の赤外線R-IRは、空間部28でそれぞれ僅かに減衰しつつ直進し、赤外線受光器33に略同一の放射強度で受光される。
【0030】
図4(b)に示すように、空間部28に粉塵がある場合、赤外線投光器32から空間部28に照射された吸収波長の赤外線A-IRとリファレンス波長の赤外線R-IRは、粉塵中に入射されることでそれぞれ一定の割合で減衰しつつ直進し、赤外線受光器33に略同一程度で小さく減衰された放射強度で受光される。
【0031】
図4(c)に示すように、空間部28に可燃性ガス塊がある場合、赤外線投光器32から空間部28に照射された赤外線IRのうち、吸収波長の赤外線A-IRは可燃性ガスにより吸収されて大きく減衰され、リファレンス波長の赤外線R-IRは、殆ど吸収されずわずかに減衰した状態で直進し、それぞれ赤外線受光器33に受光される。この放射強度差(比率)が、所定時間、予め設定された閾値を超えて検出されると、空間部28の光軸IR上に可燃性ガス塊が存在すると判断される。
【0032】
図4(d)に示すように、空間部28に被破砕物がある場合、赤外線投光器32から空間部28に照射された吸収波長の赤外線A-IRとリファレンス波長の赤外線R-IRは、それぞれ被破砕物により直進が遮断されて赤外線受光器33で受光されず、放射強度は0となる。
【0033】
図5は、たとえば一対の赤外線投・受光器32,33において、赤外線受光器33で受光した吸収波長の赤外線A-IRとリファレンス波長の赤外線R-IRの放射強度の時間的な変化を示す。時間の経過とともに両波長の赤外線A-IR,R-IRの放射強度がそれぞれ変化し、空間部28にたとえば被破砕物や粉塵が介在されることで、赤外線A-IR,R-IRが吸収散乱されて同程度で減衰される。また空間部28に可燃性ガス塊があると、吸収波長の赤外線A-IRが大幅に減衰されるが、リファレンス波長の赤外線R-IRはほとんど減衰されず、放射強度に大きな差が生じる。この放射強度差(比率)が大きくなり、予め設定された放射強度差の閾値を超え、かつ閾値の数値を一定時間超えるかまたは一定の時間の移動平均値が閾値を超えると、 検出判断部34では空間部28に可燃性ガス塊が存在すると判断する。
【0034】
防爆制御部43では、検出判断部34で可燃性ガスが存在すると判断された場合、検出された複数組の赤外線投・受光器32,33の光軸IRの交差位置から、可燃性ガス塊の発生位置を特定する。そして、可燃性ガス塊の発生位置とその周辺部に希釈用ガスを噴射できる防爆用ガスノズル42を選択し、選択された防爆用ガスノズル42の電磁式開閉弁44を開け、ガス供給源(ガスボンベ)45から可燃性ガス塊に向かって希釈用ガスを噴射させる。また同時に駆動モータ12のモータ制御器12aに停止信号を出力して破砕機10を停止する。さらに同時に警報ブザー46を作動させるとともに、警告表示部47に可燃性ガス塊が検出されたことを警告表示する。
【0035】
ここで、希釈用ガスは、不活性ガスまたは水蒸気を使用することができるが、ここでは窒素ガスが好適である。これは、窒素ガスの吸収波長は可燃性ガスの吸収波長の赤外線A-IRと異なるため、ファレンス波長の赤外線R-IRに影響を与えることがないためであり、ガス検出判断部34において、窒素ガスによって可燃性ガス塊の濃度が十分に希釈されたことを確認することができるためである。これによりガス検出判断部34で可燃性ガス塊の希釈を確認後に、破砕機10を安全に再起動することができる。他の不活性ガスや水蒸気では、可燃性ガスの吸収波長の赤外線A-IRとファレンス波長の赤外線R-IRの計測に悪影響を与える恐れがある。なお、アルゴンガスArは、吸収波長の赤外線A-IRとファレンス波長の赤外線R-IRに影響を与えることがないが、高価でランニングコストが嵩むため希釈用ガスに適さない。
【0036】
上記実施例1の可燃性ガス検出装置31によれば、可燃性ガスの吸収波長とリファレンス波長の赤外線A-IR,R-IRの放射強度を検出して互いに比較し、吸収波長の赤外線A-IRがリファレンス波長の赤外線R-IRより減衰され、互いの放射強度差(比率)が大きくなった時に空間部28に可燃性ガス塊が発生したと判断する。また、吸収波長とリファレンス波長の赤外線A-IR,R-IRの放射強度(比率)がそれぞれ略同一で減衰されない時に空間部28に介在物がないと判断し、さらに吸収波長とリファレンス波長の赤外線A-IR,R-IRの放射強度がそれぞれ略同一に減衰されかつ減衰が小さい時に空間部28に粉塵が存在すると判断し、減衰が極めて大きい時に被破砕物が存在すると判断する。これにより、破砕機の空間部28で被破砕物と粉塵と可燃性ガスとが混在することがあっても、可燃性ガス塊を精度良く判別して検出することができる。
【0037】
また赤外線の光軸IRを格子状に配置することにより、検出された赤外線投・受光器32,33の光軸IRに基づいてその交差位置から可燃性ガス塊の発生位置を特定することができる。これにより可燃性ガス塊に対する希釈を迅速かつ効果的に行うことができる。
【0038】
さらに防爆装置41によれば、略同一平面上で格子状に配置された赤外線の光軸IRにおいて、可燃性ガスを検出した光軸IRの交差位置に存在する可燃性ガス塊に向かって、選択された防爆用ガスノズル42から希釈用ガスを噴射することができる。したがって、少ない量の希釈用ガスにより、効果的かつ迅速に可燃性ガス塊を希釈することができ、可燃性ガスの着火や燃焼、爆発を未然に防止することができる。
【0039】
さらにまた、気流が滞留しやすい破砕用回転体であるロータ25やノッカ23の被破砕物投入口側近傍の略平面上に、赤外線の光軸IRを交差状に配置することにより、可燃性ガス塊を精度良く検出することができ、少ない量の希釈用ガスにより効果的に可燃性ガスを希釈することができる。
【0040】
なお、実施例1では、基台フレーム11に破砕機本体13と駆動モータ12と並列配置したが、駆動軸15の上端部に駆動モータ12を取り付けて、破砕機本体13と駆動モータ12を一体とした構造であってもよい。
[実施例2]
本発明に係る可燃性ガス検出装置を備えた防爆装置を有する二軸式横型破砕機を、
図6および
図7を参照して説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
この破砕機50は、実施例1の一軸式竪型破砕機に比較して小型のもので、ケーシング54内に、互いに平行な駆動軸51R,51Lに複数枚の破砕刃52R,52Lがそれぞれ取り付けられている。そして、図示しない駆動モータにより、駆動軸51R,51Lが破砕刃52R,52Lが中央上部で噛み合う相対方向に回転駆動される。またケーシング54には、破砕刃52R,52Lにそれぞれ噛み合う固定刃 53が設けられている。
【0042】
この破砕機50では、ケーシング54上方に被破砕物投入口55が開口されるとともに、ケーシング54下方に破砕物排出口56が開口されている。そして排出口56を負圧として被破砕物の投入口55から排出口56に向かって気流が形成されている。気流が滞留しやすい破砕刃52R,52Lの下方の空間部28で、略水平面上に赤外線の光軸IRをそれぞれ交差する配置するように、赤外線投光器32と赤外線受光器33がケーシング54に設置されている。もちろん、仮想線で示すように、破砕刃52R,52Lの上方の空間部で、略水平面上に赤外線の光軸IRをそれぞれ交差する配置するように赤外線投・受光器32,33を配置してもよい。また、破砕刃52R,52Lの上方と下方の空間部に赤外線投・受光器32,33をそれぞれ配置することもできる。
【0043】
その他の可燃性ガス検出装置および防爆装置は同一に構成され、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
[可燃性ガス検出装置の他の実施例]
実施例1,2の赤外線受光器33では、波長選択フィルタ35A,35Rを用いたが、
図8に示すように、可燃性ガスの吸収波長の赤外線A−IRを照射するLEDまたは半導体レーザ62Aと、可燃性ガスのリファレンス波長の赤外線R−IRを照射するLEDまたは半導体レーザ62Rと、からなる赤外線投光器62としてもよい。この場合、赤外線受光器63は、吸収波長の赤外線A−IRを受光する吸収波長受光素子63Aと、リファレンス波長の赤外線R−IRを受光するリファレンス波長受光素子63Rとで構成される。なお、LEDまたは半導体レーザなどは、狭い波長の赤外線が発生されるので、複数種類の可燃性ガスに対応する場合、必要に応じて複数の吸収波長の赤外線A−IRや複数のリファレンス波長の赤外線R−IRを投、受光するように赤外線投・受光器を構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
IR 赤外線
A−IR 吸収波長の赤外線
R−IR リファレンス波長の赤外線
10 破砕機
15 駆動軸
20 ケーシング
21 被破砕物投入口
22 破砕物排出口
23 ノッカ(破砕用回転体)
24 グラインダ(破砕用回転体)
25 ロータ(破砕用回転体)
26 スイーパ(破砕用回転体)
27 シェルライナ
28 空間部
31 可燃性ガス検出装置
32 赤外線投光器
33A,33R 赤外線受光器
34 ガス検出判断部
35A,35R 波長選択フィルタ
41 防爆装置
42 防爆用ガスノズル
43 防爆制御部