(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記着色剤濃縮物を調製することが、着色剤および任意要素の相乗剤を溶融ワックスで塗らし、分散させるか、または溶解することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
前記着色剤ワックス分散物は、顔料で着色したワックス分散物中の顔料およびワックスの合計重量を基準として、少なくとも25重量%の顔料を含有するミクロン未満の顔料で着色した水性ワックス分散物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
前記着色剤は、マゼンタ顔料、シアン顔料、イエロー顔料、ブラック顔料およびこれらの混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される顔料である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
前記工程(c)の配合は、(c1)90〜170℃の温度、100〜1,000rpm、300〜1,000psiで0.1〜1.5時間、前均質化することと;次いで、(c2)90〜170℃の温度、100〜1,000rpm、4,000〜8,000psiで0.5〜5時間均質化することとを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
顔料で着色したワックスまたは染料で着色したワックス粒子を含有する水性インクジェットインク組成物を調製するためのプロセスを含む方法および装置が記載される。本明細書の水性インクは、種々の印刷技術に適しており、いくつかの実施形態において、本発明の水性インクは、特に、サーマルドロップオンデマンド式またはピエゾ型ドロップオンデマンド式のインクジェット印刷技術に適している。水性インク組成物を調製するためのプロセスは、(1)着色剤濃縮物を調製することと;(2)(a)乾燥着色剤を少なくとも1種類のワックスとともに溶融し、混合して着色剤濃縮物を作製し、この着色剤濃縮物が、少なくとも25重量%の着色剤を含有することと;(b)工程(a)の着色剤濃縮物を粉砕し、粉砕した着色剤濃縮物を作製することと;(c)(b)の粉砕した着色剤濃縮物と水とを合わせ、分散させ、ワックスシェルに囲まれた着色剤コアを含む複数の着色剤ワックス粒子を含む着色剤ワックス分散物を作製し、着色剤ワックス粒子が、約150ナノメートルから約300ナノメートル未満の粒度分布を示し;工程(a)の溶融し、混合すること、および工程(b)の粉砕することは、含浸メディアミルまたは水平型ミルで行われ、工程(c)の合わせることは、ピストンホモジナイザを用いて行われる、着色剤ワックス分散物を調製することと;(3)着色剤ワックス分散物と、水性インク媒剤および任意要素のインク添加剤とをブレンドし、水性インク組成物を作製することと;水性インク組成物を濾過することとを含む。工程(3)のブレンドは、共溶媒とのブレンドをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、工程(a)の溶融し、混合すること、および工程(b)の粉砕することは、含浸メディアミルで行われ、工程(c)の合わせることは、ピストンホモジナイザを用いて行われる。
【0011】
ワックスは、典型的には、良好な剥離特性を有する。本実施形態において、着色剤は、ワックスに封入されている。特定の実施形態において、ワックスに包まれた顔料が提供される。他の実施形態において、ワックスに包まれた染料が提供される。着色剤は、顔料であっても、または染料であっても、ワックスに封入される。ワックスに包まれた着色剤、いくつかの実施形態において、ワックスに包まれた顔料またはワックスに包まれた染料を用いて調製された本発明の水性インク組成物は、本発明のワックスに包まれた着色剤を含まない従来の同様のインクと比べ、印刷媒体に対する転写性が向上し、いくつかの実施形態において、完全な転写性を示す。ワックスは、通常は、顔料または水よりも軽い。本発明のプロセスは、「覆われていない」顔料(すなわち、ワックスに封入されていない顔料)よりも沈降しにくいワックスに包まれた顔料を使用するこの現象を利用する。本発明のワックスに包まれた顔料も、ワックスに封入されていない顔料よりも凝集の低下を示す。
【0012】
水性インク組成物を調製するためのプロセスは、着色剤濃縮物を調製することと;ナノメートルサイズの着色剤ワックスの安定な分散物を調製することと;インクをブレンドすることと;濾過することとを含む。いくつかの実施形態において、着色剤濃縮物は、顔料濃縮物または染料濃縮物であり、ナノメートルサイズの着色剤ワックスの安定な分散物は、顔料で着色したワックス分散物または染料ワックス分散物である。従って、本発明のプロセスは、顔料で着色したワックスまたは染料で着色したワックス粒子を含有する中間体を調製することを含む。水性インクプロセスは、3つの主なプロセスを含む。
プロセス1。着色剤濃縮物、いくつかの実施形態において、顔料濃縮物または染料濃縮物を、いくつかの実施形態において、含浸メディアミルを用いて調製する。
プロセス2。ピストンホモジナイザを用い、顔料で着色したワックス分散物または染料ワックス分散物を調製する。
プロセス3。インクジェットによるブレンドおよび濾過を用い、水性インクジェットインク組成物を調製する。
【0013】
いくつかの実施形態において、着色剤濃縮物を調製することは、着色剤をワックス基剤に分散し、粉砕し、安定化することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、着色剤濃縮物を調製することは、着色剤および任意要素の相乗剤を溶融ワックスで濡らし、分散し、または溶解することを含む。
【0015】
顔料を、Z−平均またはD50が直径で約130ナノメートルになるように粉砕してもよい。
【0016】
顔料で着色したワックス粒子の粒径は、任意の多くの適切な動的光散乱装置、例えば、Malvern Zetasizerを用いて測定することができる。例えば、時間経過に伴うZ−平均粒径を監視し、高温(例えば、約120℃)に維持しながら顔料粒子の安定性を評価することができる。顔料で着色したワックス粒子は、平均粒径が、約80〜約300ナノメートル、または約100〜約250ナノメートル、または約170〜約230ナノメートルである。特定の実施形態において、顔料で着色したワックス粒子は、約150ナノメートル〜約230ナノメートル未満、または約150ナノメートル〜約200ナノメートル未満の粒度分布を示す。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス粒子は、Z平均粒径が約200ナノメートルである。平均粒径は、例えば、Nanotrac(商標)252(Microtrac、モンゴメリービル、PA、USA)粒径分析機を用い、任意の適切な様式または望ましい様式で測定することができる。
【0017】
本発明の水性インク組成物を調製するためのプロセスは、着色剤ワックス分散物、いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物または染料ワックス分散物を調製することを含む。いくつかの実施形態において、水性インク組成物は、D50が約140ナノメートル〜約220ナノメートルのワックスに包まれた着色剤の分散物、いくつかの実施形態において、顔料または染料の分散物を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物は、ワックスシェルに包まれた顔料コアを含む複数の顔料で着色したワックス粒子を含むミクロン未満の水性顔料で着色したワックス分散物であり、顔料で着色したワックス粒子は、150ナノメートル〜300ナノメートル未満の粒度分布を示す。
【0019】
顔料で着色したワックス分散物は、(a)乾燥顔料を少なくとも1種類のワックスとともに溶融し、混合して着色剤濃縮物を作製し、この顔料濃縮物が、少なくとも25重量%の着色剤を含有することと;(b)工程(a)の顔料濃縮物を粉砕し、粉砕した顔料濃縮物を作製することと;(c)(b)の粉砕した顔料濃縮物と水とを合わせ、分散させ、ワックスシェルに囲まれた顔料コアを含む複数の顔料で着色したワックス粒子を含む顔料で着色したワックス分散物を作製し、顔料で着色したワックス粒子が、150ナノメートルから約300ナノメートル未満の粒度分布を示し;工程(a)の溶融し、混合すること、および工程(b)の粉砕することは、含浸メディアミルで行われ、工程(c)の合わせることは、ピストンホモジナイザを用いて行われることを含むプロセスによって調製することができる。
【0020】
顔料で着色したワックス分散物を調製するための本発明のプロセスは、(a)乾燥顔料を少なくとも1種類のワックスとともに溶融し、混合して顔料濃縮物を作製し、この顔料濃縮物が、少なくとも25重量%の着色剤を含有することと;(b)工程(a)の顔料濃縮物を粉砕し、粉砕した顔料濃縮物を作製することと;(c)(b)の粉砕した顔料濃縮物と水とを合わせ、分散させ、ワックスシェルに囲まれた顔料コアを含む複数の顔料で着色したワックス粒子を含む顔料で着色したワックス分散物を作製することを含み、顔料で着色したワックス粒子が、約150ナノメートルから約300ナノメートル未満の粒度分布を示し;工程(a)の溶融し、混合すること、および工程(b)の粉砕することは、含浸メディアミルで行われ、工程(c)の合わせることは、ピストンホモジナイザを用いて行われる。顔料で着色したワックス粒子は、平均粒径が、約80〜約300ナノメートル、または約100〜約250ナノメートル、または約170〜約230ナノメートルである。特定の実施形態において、顔料で着色したワックス粒子は、約150ナノメートル〜約230ナノメートル未満、または約150ナノメートル〜約200ナノメートル未満の粒度分布を示す。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス粒子は、Z平均粒径が約200ナノメートルである。平均粒径は、例えば、Nanotrac(商標)252(Microtrac、モンゴメリービル、PA、USA)粒径分析機を用い、任意の適切な様式または望ましい様式で測定することができる。
【0021】
顔料分散プロセスは、任意の適切な装置または望ましい装置で行うことができる。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散プロセスは、ジャケット付容器で包まれたミル、いくつかの実施形態において、ジャケット付容器で包まれたバスケットミルまたは含浸メディアミルの設定で行われる。一般的に、ミルは、加熱ジャケットを備える容器、相変化担体および任意要素の分散剤を混合し、相変化担体および任意要素の分散剤および顔料を後で混合して顔料を濡らすための分散ブレード、または顔料を分散させるための研磨媒体(いくつかの実施形態において、セラミック研磨媒体)を含む含浸ミルヘッド(バスケットアセンブリ)を含むだろう。
【0022】
一実施形態において、溶融し、混合し、濡らし、分散することは、すべて同じ容器で行われ、混合ブレードが、含浸ミルまたはバスケットミルと置き換えられる。別の実施形態において、溶融し、混合し、濡らすことは、異なる容器で行われ、次いで、濡らされた混合物を含浸ミルに移す。
【0023】
いくつかの実施形態において、工程(a)の溶融し、混合すること、および工程(b)の粉砕することは、含浸メディアミルまたは水平型メディアミルで行われる。
【0024】
いくつかの実施形態において、工程(c)の合わせることは、ピストンホモジナイザを用いて行われる。
【0025】
濡れた顔料を研磨するための含浸メディアミル、いくつかの実施形態において、Hockmeyer含浸メディアミルを用いることを含む本発明のプロセスによって達成される利点は、含浸メディアミルが、顔料を分散し(濡らし)、粉砕する操作に必要な塔がたった1つであることである。従って、単純化されたプロセスが提供される。以前、濡れた顔料の研磨は、供給塔、供給ポンプ、供給塔と粉砕チャンバとの間を、材料を再循環させるための接続管を必要とする水平型メディアミルを用いて行われていた。さらに、工程(a)および(b)のために含浸メディアミルを用いる本発明のプロセスは、含浸メディアミルが、粉砕バスケットを支え、インペラを回転させるためのオーバーヘッドドライブを使用するという利点を有する。このプロセスは、大気圧で操作することができ、駆動シャフトのための機械的な密封を必要としない。水平型メディアミルは、100psiまでの加圧下で動き、駆動シャフトのための機械的な密封を必要とする。本発明のプロセスのさらなる利点は、含浸メディアミルにおいて、粉砕が含浸バスケットの中で行われることである。小さな粉砕バスケットは、少量の研磨媒体を必要とし、大きなインペラ速度を達成するための電力が少なくてすむ。
【0026】
ジャケット付容器内部の高剪断分散ブレードまたはインペラ部品を用い、乾燥顔料を少なくとも1つのワックスで溶融し、混合することができる。インペラの回転速度(rpm)、先端速度(フィート/秒)および温度は、任意の適切な速度または温度、または望ましい速度または温度であってもよく、いくつかの実施形態において、100℃より高い温度で、120℃より高い温度で、100〜約170℃、110〜170℃、または110〜160℃の温度で、約500〜約5,500rpm、または500〜約5,000rpm、または3,000〜約5,200rpmの回転数で、4〜40フィート/秒または23フィート/秒〜40フィート/秒の先端速度であってもよい。
【0027】
任意の適切な温度または望ましい温度で、乾燥顔料を少なくとも1つのワックスで溶融し、混合することができる。いくつかの実施形態において、工程(a)の溶融し、混合することは、約90〜約180℃、または約90〜約170℃、または約100〜約145℃、または約120〜約140℃の温度で行われる。
【0028】
任意の適切な時間または望ましい時間で、乾燥顔料を少なくとも1つのワックスで溶融し、混合することができる。いくつかの実施形態において、工程(a)の溶融し、混合することは、約0.1〜約10時間、または約4〜約10時間、または約5〜約8時間、または約6〜約7時間行われる。具体的な実施形態において、工程(a)の溶融し、混合することは、約1〜約4時間行われる。
【0029】
工程(a)の混合することは、任意の適切なプロセスまたは望ましいプロセスで行うことができる。いくつかの実施形態において、工程(a)の混合することは、毎分約500回転〜約5,500回転、毎分約1,500回転〜約4,000回転、または毎分約2,000回転〜約3,000回転に設定した分散ブレードを用いて行われる。
【0030】
工程(b)の粉砕することは、任意の適切なプロセスまたは望ましいプロセスで行うことができる。いくつかの実施形態において、工程(b)の粉砕することは、研磨工程を含む。粉砕する工程(b)のために含浸ミルまたはバスケットミルを使用してもよい。バスケットミルは、側面および底部に適切な開口部(例えば、0.1ミリメートルの開口部)を有するふるいを含んでいてもよく、研磨媒体(例えば、セラミック研磨媒体、いくつかの実施形態において、直径が0.3ミリメートルの球状ジルコニア研磨媒体)で満たされていてもよい。バスケットミルは、溶融混合した顔料およびワックス粒子をミルに引き込むためのオージェを使用してもよい。ロータおよび研磨媒体によって発生する遠心力は、スラリーをふるいの側面および底部を通って外に押し出す。粉砕は、望ましい粒度分布が達成されるまで、任意の適切な時間または望ましい時間、いくつかの実施形態において、数時間行うことができる。
【0031】
本発明のプロセスに任意の適切なミルまたは望ましいミルを選択することができる。いくつかの実施形態において、ミルは、米国特許第7,559,493号に記載されるようなものであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、Hockmeyer Equipment Corporationから入手可能なミクロミルであるHockmeyer HCPN Dispermill(登録商標)を用いて行うことができる。これは、材料(例えば、顔料)の粒径を小さくするための研磨媒体を利用する垂直型バスケットミルを含む含浸ミルである。
【0032】
任意の適切な媒体粉砕材料または望ましい媒体粉砕材料、例えば、ビーズまたはショットが、含浸ミルヘッド(バスケットアセンブリ)に含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、粉砕工程のためのミルヘッドに、直径が0.3ミリメートルのジルコニア40ミリリットルが配置される。
【0033】
いくつかの実施形態において、粉砕する工程(b)は、約90〜約170℃、または約100〜約145℃、または約120〜約140℃の温度で行われる。
【0034】
粉砕する工程(b)は、任意の適切な時間または望ましい時間行われてもよく、いくつかの実施形態において、粉砕する工程(b)は、約0.1〜約8時間、または約1〜約8時間、または約2〜約6時間、または約3〜約6時間、または約3〜約4時間、または約2〜約4時間行われる。具体的な実施形態において、工程(a)の溶融し、混合することは、約0.1〜約4時間行われる。
【0035】
工程(b)の粉砕した顔料濃縮物をすぐに使用してもよく、後の使用のために貯蔵してもよい。いくつかの実施形態において、工程(b)の粉砕した顔料濃縮物をアルミニウム皿に取り出す。
【0036】
合わせる工程(c)は、任意の適切なプロセスまたは望ましいプロセスで行うことができる。いくつかの実施形態において、合わせる工程(c)は、(1)前均質化、次いで、(2)均質化を含む。例えば、いくつかの実施形態において、合わせる工程(c)は、(1)約90〜約170℃の温度、約100〜約1,000rpm、約300〜約1,000psiで約0.1〜約1.5時間、前均質化すること;次いで、(2)約90〜約170℃の温度、約100〜約1,000rpm、約4,000〜約8,000psiで約0.5〜約5時間均質化することを含む。
【0037】
このプロセスは、さらに、(d)顔料で着色したワックス分散物を任意の適切な温度または望ましい温度まで冷却することと、(e)顔料で着色したワックス分散物を濾過することと、(f)顔料で着色したワックス分散物を取り出すこととを含んでいてもよい。
【0038】
冷却する工程(d)は、顔料で着色したワックス分散物を任意の適切な温度または望ましい温度まで冷却することを含んでいてもよく、いくつかの実施形態において、約20〜約50℃の温度まで冷却することを含んでいてもよい。
【0039】
濾過する工程(e)は、任意の適切なプロセスまたは望ましいプロセスによって行われてもよい。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物を濾過することは、約100〜約300マイクロメートルのフィルタ孔を有するフィルタによって濾過することを含む。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物を、20〜約50℃の温度で150ミクロンのナイロンフィルタによって濾過してもよい。
【0040】
顔料で着色したワックス分散物粒子は、粒径が小さなワックス顔料分散物を与える。顔料で着色したワックス粒子の粒径は、任意の数の適切な動的光散乱装置、例えば、Malvern Zetasizerを用いて測定することができる。例えば、時間経過に伴うZ−平均粒径を監視し、高温(例えば、約120℃)に維持しながら顔料粒子の安定性を評価することができる。いくつかの実施形態において、本発明の顔料で着色したワックス粒子は、Z平均粒径が、約80〜約300ナノメートル、または約100〜約250ナノメートル、または約120〜約230ナノメートル、または約170〜約230ナノメートルである。
【0041】
顔料で着色したワックス分散物は、水性インク組成物中に任意の適切な量または望ましい量で存在していてもよい。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物は、水性インク組成物中に、水性インク組成物の合計重量を基準として約0〜約70重量%、または約10〜約60重量%、または約25〜約45重量%の量で存在する。染料系ワックス分散物を使用する場合、染料系ワックス分散物も、水性インク中に任意の適切な量または望ましい量で存在していてもよい。いくつかの実施形態において、染料で着色したワックス分散物は、水性インク組成物中に、水性インク組成物の合計重量を基準として約0〜約70重量%、または約10〜約60重量%、または約25〜約45重量%の量で存在する。
【0042】
水性インク組成物は、水性液体媒剤を含有する。液体媒剤の合計量は、任意の適切な量または望ましい量で与えられてもよい。いくつかの実施形態において、液体媒剤は、水性インク組成物中に、水性インク組成物の合計重量を基準として、約75〜約97重量%、または約80〜約95重量%、または約85〜約95重量%の量で存在する。
【0043】
本明細書のインク組成物は、水のみからなっていてもよく、または、水と水溶性または水混和性の有機成分(共溶媒、保水剤などとも呼ばれる(以下、共溶媒))との混合物を含んでいてもよく、共溶媒は、例えば、アルコールおよびアルコール誘導体(脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジアール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、長鎖アルコール、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2−アルコール、1,3−アルコール、1,5−アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、メトキシル化グリセロール、エトキシル化グリセロール、ポリエチレングリコールアルキルエーテルのもっと高級な同族体などを含む)であり、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3,−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−メトキシブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,4−ヘプタンジオールなどが挙げられ、さらに、アミド、エーテル、尿素、置換尿素、例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素およびジアルキルチオ尿素、カルボン酸およびこれらの塩、例えば、2−メチルペンタン酸、2−エチル−3−プロピルアクリル酸、2−エチル−ヘキサン酸、3−エトキシプロパン酸など、エステル、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン(例えば、スルホラン)、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、ヒドロキシエーテル、アミノアルコール、ケトン、N−メチルピロリジノン、2−ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、アミド、スルホキシド、ラクトン、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ベタイン、糖類、例えば、1−デオキシ−D−ガラクチトール、マンニトール、イノシトールなど、置換および非置換のホルムアミド、置換および非置換のアセトアミドおよび他の水溶性または水混和性の物質、およびこれらの混合物も適している。いくつかの実施形態において、共溶媒は、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、メトキシル化グリセロール、エトキシル化グリセロールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。水と水溶性または水混和性の有機液体の混合物が液体媒剤として選択される場合、水と有機物の比率の範囲は、任意の適切な範囲または望ましい範囲であってもよく、いくつかの実施形態において、約100:0〜約30:70、または約97:3〜約40:60、または約95:5〜約60:40であってもよい。液体媒剤の非水成分は、一般的に、沸点が水(100℃)より高い保水剤または共溶媒として役立つ。インク媒剤の有機成分は、インクの表面張力を変え、インクの粘度を変え、着色剤を溶解または分散し、および/またはインクの乾燥特徴に影響を与えるためにも役立つだろう。
【0044】
特定の実施形態において、共溶媒は、スルホラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、2−ピロリジノン、グリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。水性インク媒剤は、2種類以上のグリコール型共溶媒から選択される共溶媒を含んでいてもよい。
【0045】
他の実施形態において、本発明の水性インク組成物は、水と、2種類以上のグリコール型共溶媒から選択される共溶媒と、ワックスシェルに包まれた着色剤コアを含む複数の着色剤ワックス粒子を含むミクロン未満の水性顔料とを含み、着色剤ワックス粒子は、約150ナノメートル〜約300ナノメートル未満の粒度分布を示す。特定の実施形態において、着色剤は、顔料である。具体的な実施形態において、グリコール共溶媒の少なくとも1つは、グリセロールである。具体的な実施形態において、共溶媒は、グリセロールおよび1,3プロパンジオールであり、グリセロールおよび1,3プロパンジオールは、それぞれ6:1〜1:2の比率で存在する。別の具体的な実施形態において、共溶媒は、グリセロールおよび1,3プロパンジオールであり、グリセロールおよび1,3プロパンジオールは、それぞれ2:1〜5:1の比率で存在し、共溶媒の合計量は、インクの合計重量を基準として約35重量%未満から、インクの合計重量を基準として10重量%より多い。
【0046】
液体媒剤の合計量は、任意の適切な量または望ましい量で与えられてもよい。いくつかの実施形態において、液体媒剤は、伸縮性インク組成物中に、伸縮性インク組成物の合計重量を基準として約75〜約97重量%、または約80〜約95重量%、または約85〜約95重量%の量で存在する。
【0047】
本発明の顔料で着色したワックス分散物は、任意の適切な顔料着色剤または望ましい顔料着色剤を含有していてもよい。着色剤は、顔料または染料であってもよい。具体的な実施形態において、着色剤は、顔料である。具体的な実施形態において、着色剤は、マゼンタ顔料、シアン顔料、イエロー顔料、ブラック顔料およびこれらの混合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される顔料である。顔料で着色したワックス分散物を、相乗剤および分散剤によって安定化してもよい。従って、本発明の着色剤ワックス分散物は、さらに、相乗剤、分散剤、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0048】
適切な顔料の例としては、PALIOGEN(登録商標)Violet 5100(BASF);PALIOGEN(登録商標)Violet 5890(BASF);HELIOGEN(登録商標)Green L8730(BASF);LITHOL(登録商標)Scarlet D3700(BASF);SUNFAST(登録商標)Blue 15:4(Sun Chemical);Hostaperm(登録商標)Blue B2G−D(Clariant);Hostaperm(登録商標)Blue B4G(Clariant);SPECTRA(登録商標)PAC C Blue 15:4(Sun Chemical);Permanent Red P−F7RK;Hostaperm(登録商標)Violet BL(Clariant);LITHOL(登録商標)Scarlet 4440(BASF);Bon Red C(Dominion Color Company);ORACET(登録商標)Pink RF(BASF);PALIOGEN(登録商標)Red 3871 K(BASF);SUNFAST(登録商標)Blue 15:3(Sun Chemical);PALIOGEN(登録商標)Red 3340(BASF);SUNFAST(登録商標)Carbazole Violet 23(Sun Chemical);LITHOL(登録商標)Fast Scarlet L4300(BASF);SUNBRITE(登録商標)Yellow 17(Sun Chemical);HELIOGEN(登録商標)Blue L6900、L7020(BASF);SUNBRITE(登録商標)Yellow 74(Sun Chemical);SPECTRA(登録商標)PAC C Orange 16(Sun Chemical);HELIOGEN(登録商標)Blue K6902、K6910(BASF);SUNFAST(登録商標)Magenta 122(Sun Chemical);HELIOGEN(登録商標)Blue D6840、D7080(BASF);Sudan Blue OS(BASF);NEOPEN(登録商標) Blue FF4012(BASF);PV Fast Blue B2GO1(Clariant);IRGALITE(登録商標)Blue GLO(BASF);PALIOGEN(登録商標)Blue 6470(BASF);Sudan Orange G(Aldrich);Sudan Orange 220(BASF);PALIOGEN(登録商標)Orange 3040(BASF);PALIOGEN(登録商標)Yellow 152、1560(BASF);LITHOL(登録商標)Fast Yellow 0991 K(BASF);PALIOTOL(登録商標) Yellow 1840(BASF);NOVOPERM(登録商標)Yellow FGL(Clariant);Ink Jet Yellow 4G VP2532(Clariant);Toner Yellow HG(Clariant);Lumogen(登録商標)Yellow D0790(BASF);Suco−Yellow L1250(BASF);Suco−Yellow D1355(BASF);Suco Fast Yellow D1355、D1351(BASF);HOSTAPERM(登録商標)Pink E 02(Clariant);Hansa Brilliant Yellow 5GX03(Clariant);Permanent Yellow GRL 02(Clariant);Permanent Rubine L6B 05(Clariant);FANAL(登録商標)Pink D4830(BASF);CINQUASIA(登録商標)Magenta(DU PONT);PALIOGEN(登録商標)Black L0084(BASF);Pigment Black K801(BASF);およびカーボンブラック、例えば、REGAL 330(商標)(Cabot)、Nipex 150(Evonik)Carbon Black 5250およびCarbon Black 5750(Columbia Chemical)など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
顔料で着色したワックス分散物は、任意の適切なワックスまたは望ましいワックスを含有していてもよい。ワックスは、望ましい最終製品に従って選択されるだろう。
【0050】
いくつかの実施形態において、ワックスは、ポリオレフィン、カルナバワックス、米ろう、カンデリラろう、木ろう、ホホバ油、みつろう、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、微結晶性ワックス、Fischer−Tropschワックス、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、グリセリドモノステアレート、グリセリドジステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジグリセリルジステアレート、トリグリセリルテトラステアレート、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレンワックス、エステルワックス、アミドワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
従って、ワックスシェルに包まれた顔料コアを含む複数の顔料で着色したワックス粒子を含む、ミクロン未満の水性顔料で着色したワックス分散物が提供され、顔料で着色したワックス粒子は、約150ナノメートル〜約300ナノメートル未満の粒度分布を示す。
【0052】
いくつかの実施形態において、ミクロン未満の水性顔料で着色したワックス分散物は、顔料で着色したワックス分散物中の顔料およびワックスの合計重量を基準として、少なくとも25重量%の顔料を含有する。
【0053】
ミクロン未満の水性顔料で着色したワックス分散物は、水に近い粘度を有する低粘度分散物である。いくつかの実施形態において、ミクロン未満の水性顔料で着色したワックス分散物は、粘度が約1.2〜約12センチポイズである。いくつかの実施形態において、水性インク組成物は、約20℃〜約40℃の温度範囲での粘度が約1.2〜約12センチポイズである。
【0054】
いくつかの実施形態において、ワックスに包まれた顔料の安定な水性分散物は、D50が約140ナノメートル〜約220ナノメートルであり、いくつかの実施形態において、高圧ピストンホモジナイザを用いて調製される。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書に使用するワックスは、融点が約50℃〜約100℃であってもよい。特定の実施形態において、ワックスは、異なる分子量を有し、約60℃未満〜約100℃の融点を有するポリメチレンワックスまたはポリエチレンワックスであってもよい。分散物の固体含有量は、さまざまであってもよい。いくつかの実施形態において、顔料で着色したワックス分散物は、固体含有量が、顔料分散物の合計重量を基準として、約15重量%〜約35重量%の顔料である。
【0056】
開示するインクは、さらに界面活性剤を含有していてもよい。適切な界面活性剤の例としては、イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な界面活性剤の例としては、アルキルポリエチレンオキシド、アルキルフェニルポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、アセチレン系ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド(ジ)エステル、ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミン、プロトン化ポリエチレンオキシドアミド、ジメチコーンコポリオール、置換アミンオキシドなどが挙げられ、具体例としては、一級、二級、三級アミンの塩化合物、例えば、ラウリルアミン、ココナツアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンの塩酸塩、酢酸塩;四級アンモニウム塩型化合物、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリドなど;ピリジニウム塩型化合物、例えば、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミドなど;非イオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アセチレンアルコール、アセチレングリコール;他の界面活性剤、例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン;フルオロ界面活性剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。非イオン系界面活性剤のさらなる例としては、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、Rhone−PoulencからIGEPAL CA−210(商標)、IGEPAL CA−520(商標)、IGEPAL CA−720(商標)、IGEPAL CO−890(商標)、IGEPAL C0−720(商標)、IGEPAL C0−290(商標)、IGEPAL CA−21O(商標)、ANTAROX 890(商標)、ANTAROX 897(商標)が挙げられる。適切な非イオン系界面活性剤の他の例としては、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられ、SYNPERONIC(商標)PE/F、例えば、SYNPERONIC(商標)PE/F 108として市販されるものが挙げられる。適切なアニオン系界面活性剤の他の例としては、サルフェートおよびスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルサルフェートおよびスルホネート、酸、例えば、Sigma−Aldrichから入手可能なアビエチン酸、第一工業製薬株式会社から入手可能なNEOGEN R(商標)、NEOGEN SC(商標)、これらの組み合わせなどが挙げられる。適切なアニオン系界面活性剤の他の例としては、Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネートDOWFAX(商標)2A1、および/またはTayca Corporation(日本)製の分枝鎖ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートTAYCA POWER BN2060が挙げられる。通常は正に帯電している適切なカチオン系界面活性剤の他の例としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、C12,C15,C17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化したポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Companyから入手可能)、Kao Chemicalから入手可能なSANIZOL(商標)(ベンザルコニウムクロリド)など、およびこれらの混合物が挙げられる。任意の2種類以上の界面活性剤を使用してもよい。
【0057】
任意要素の界面活性剤は、任意の望ましい量または効果的な量で存在していてもよく、いくつかの実施形態では、界面活性剤は、インク組成物の合計重量を基準として約0.01〜約5重量%の量で存在する。ある場合には、界面活性剤を分散剤と呼ぶことを注記しておくべきである。
【0058】
インク組成物は、さらに添加剤を含んでいてもよい。インク組成物に含まれてもよい任意要素の添加剤としては、殺生物剤、抗真菌剤、pH制御剤、例えば、酸または塩基、リン酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、アミン塩、バッファー溶液など、捕捉剤、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、粘度調整剤、レベリング剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
顔料で着色したワックス粒子または染料で着色したワックス粒子を含む本発明の水性インク組成物は、顔料で着色したワックス粒子または染料で着色したワックス粒子を含まない従来の水性インク組成物よりも向上した剥離特性を有する。顔料および染料がワックスに包まれているため、ワックスに包まれた顔料を用いて製造されたインクは、「スキン」を生じるか、または生じずに、紙に完全に転写される可能性が高い。顔料がワックスに包まれるため、凝集はほとんど起こらないだろう。それに加え、ワックスに包まれた顔料は、顔料(ワックスに包まれていない顔料または顔料単独)よりも軽く、従って、沈降しにくいと思われる。
【0060】
本発明の水性ワックスを含有するインクを用いて作られた印刷物は、改良された光沢特徴を有し、広範囲の色自由度を示し、ワックスに包まれた顔料またはワックスに包まれた染料を用いて配合していないインクよりも長い貯蔵寿命を有する。顔料で着色したワックス粒子分散物を含有する本発明の水性インク組成物は、転写固定インクジェットプリンタで使用される場合、顕著に改良された「剥離」効率を有し、広範囲の印刷媒体に適したインクジェットインクを与える。
【0061】
いくつかの実施形態において、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックまたは他の特注の顔料で着色した顔料または染料を含有するワックス分散物を含む本発明の水性インク組成物が提供される。
【0062】
いくつかの実施形態において、インク組成物は、低粘度組成物である。「低粘度」という用語は、粘度が少なくとも1,000センチポイズ(cP)である傾向を有する従来の高粘度インク(例えば、スクリーン印刷用インク)との比較で用いられる。具体的な実施形態において、本明細書に開示するインクは、約30℃の温度での粘度が約100cP以下、約50cP以下、または約20cP以下、または約2〜約30cPであるが、粘度は、これらの範囲から外れていてもよい。インクジェット印刷用途に使用される場合、インク組成物は、一般的に、前記インクジェット印刷プロセスで使用するために適した粘度を有する。例えば、サーマルインクジェット印刷用途について、室温(すなわち、約25℃)で、インクの粘度は、少なくとも約1センチポイズ、約10センチポイズ以下、約7センチポイズ以下、または約5センチポイズ以下であるが、粘度は、これらの範囲からなる群から外れていてもよい。圧電式インクジェット印刷では、吐出温度で、インク粘度は、少なくとも約2センチポイズ、少なくとも約3センチポイズ、約20センチポイズ以下、約15センチポイズ以下、または約10センチポイズ以下であるが、粘度は、これらの範囲から外れていてもよい。吐出温度は、約20〜25℃程度の低温であってもよく、約70℃程度、約50℃程度、または約40℃程度の高温であってもよいが、吐出温度は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0063】
特定の実施形態において、本発明のインク組成物は、約30〜約50℃の吐出温度での粘度が約2〜約20センチポイズである。
【0064】
本発明のインク組成物は、間接的な印刷用途に適した濡れ特性および剥離特性を与える選択された表面張力特徴を有する。いくつかの実施形態において、インク組成物は、圧電式インクジェット印刷ヘッドで使用するために適した表面張力、粘度および粒径を与えるように選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明のインク組成物は、表面張力が、約15〜約50ダイン/センチメートル、または約18〜約38ダイン/センチメートル、または約20〜約35ダイン/センチメートルであるが、表面張力は、これらの範囲から外れていてもよい。
【0066】
インク組成物は、任意の適切なプロセスによって、例えば、成分を単純に混合することによって調製することができる。あるプロセスは、すべてのインク成分を一緒に混合し、混合物を濾過してインクを得ることを伴う。インクは、成分を混合し、所望な場合に加熱し、濾過し、次いで、混合物に任意の望ましいさらなる添加物を加え、均質な混合物が得られるまで(いくつかの実施形態において、約5〜約10分)、中程度に攪拌しつつ、室温で混合することによってインクを調製することができる。または、インク調製プロセス中に任意要素のインク添加剤を他のインク成分と混合してもよく、この混合は、任意の望ましい手順に従って、例えば、すべての成分を混合し、所望な場合に加熱し、濾過することによって行われる。
【0067】
具体的な実施形態において、インクは、以下のように調製される。(1)(a)乾燥顔料を少なくとも1種類のワックスとともに溶融し、混合して顔料濃縮物を作製し、この顔料濃縮物が、少なくとも25重量%の顔料を含有することと;(b)工程(a)の顔料濃縮物を粉砕し、粉砕した顔料濃縮物を作製することと;(c)(b)の粉砕した顔料濃縮物と水とを合わせ、分散させ、ワックスシェルに囲まれた顔料で着色したコアを含む複数の顔料で着色したワックス粒子を含む顔料で着色したワックス分散物を作製し、顔料で着色したワックス粒子が、約150ナノメートルから約300ナノメートル未満の粒度分布を示すことによる、顔料で着色したワックス分散物の調製;(2)顔料で着色したワックス分散物と水性インク媒剤との混合;(4)場合により、混合物の濾過;(5)他の要素、例えば、さらなる水、共溶媒および任意要素の添加剤の添加;および(6)場合により、組成物の濾過。
【0068】
本明細書には、本明細書に開示するインク組成物を画像状のパターンで基材に塗布することを含むプロセスも開示される。
【0069】
インク組成物を、インク組成物をインクジェット印刷装置に組み込み、インク液滴を画像状のパターンになるように基材に放出することを含むプロセスに使用することができる。具体的な実施形態において、印刷装置は、ノズル内のインクが画像状のパターンになるように選択的に加熱され、それによって、インク液滴が画像状のパターンになるように放出されるサーマルインクジェットプロセスを使用する。別の実施形態において、印刷装置は、音響ビームによってインク液滴を画像状のパターンになるように放出する音響インクジェットプロセスを使用する。さらに別の実施形態において、印刷装置は、圧電式インクジェットプロセスを利用し、圧電式振動要素の振幅によって、インク液滴を画像状のパターンになるように放出する。任意の適切な基材を使用してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、本明細書に開示したように調製したインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インク液滴を画像状のパターンになるように中間転写体に放出することと、画像を加熱し、溶媒を部分的または完全に除去することと、画像状のパターンのインクを中間転写体から最終的な記録基材へと転写することとを含む。具体的な実施形態において、中間転写体を、最終的な記録シートの温度より高く、印刷装置内のインクの温度より低い温度まで加熱する。ある具体的な実施形態において、印刷装置は、圧電式振動要素の振幅によって、インク液滴を画像状のパターンになるように放出する圧電式印刷プロセスを利用する。
【0071】
具体的な実施形態において、本発明の水性インク組成物を用いる水性インクジェット印刷プロセスは、水性インク組成物をインクジェット印刷装置に組み込み、水性インク組成物が、水と、共溶媒と、ワックスシェルに包まれた着色剤コアを含む複数の着色剤ワックス粒子を含むミクロン未満の水性着色剤ワックス分散物とを含み、着色剤ワックス粒子は、約150ナノメートル〜約300ナノメートル未満の粒度分布を示すことと;インク液滴を画像状のパターンになるように中間転写体に放出することと;場合により、画像を加熱して溶媒を部分的または完全に除去することと;画像状のパターンのインクを中間転写体から最終的な記録基材へと転写すること、または、インク液滴を画像状のパターンになるように最終的な画像受け入れ基材に直接放出することとを含む。特定の実施形態において、着色剤は、顔料である。別の具体的な実施形態において、グリコール共溶媒の少なくとも1つは、グリセロールである。さらに別の具体的な実施形態において、共溶媒は、グリセロールおよび1,3プロパンジオールであり、グリセロールおよび1,3プロパンジオールは、それぞれ、6:1〜1:2の比率で存在する。
【0072】
普通紙、例えば、XEROX(登録商標)4024紙、XEROX(登録商標)Image Series紙、Courtland 4024 DP紙、罫線付ノート紙、ボンド紙、シリカでコーティングされた紙、例えば、Sharp Companyシリカコーティング紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT(登録商標)紙など、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマー膜、無機基板(例えば、金属および木材)などの任意の適切な基材または記録シートを最終的な記録シートとして使用することができる。
【0073】
以下の実施例は、本開示のさまざまな種類をさらに定義するために提示されている。これらの実施例は、単なる実例であることを意図しており、本開示の範囲を限定することは意図していない。さらに、部および割合(%)は、特に指示のない限り、重量基準である。
【0074】
図1は、Cytech(登録商標)FNP−80ワックス(48.75重量%)を用いて調製された顔料で着色したワックス分散物の透過型電子顕微鏡画像である。
図2は、Clariant(登録商標)Cyan BG10顔料(25重量%)を用いて調製された顔料で着色したワックス分散物の透過型電子顕微鏡画像である。ワックス領域は、約200ナノメートルであり、それぞれの領域の中に小さな顔料凝集物を含む。
【0075】
(実施例1)
2重量%のシアン顔料を含む水性シアンインク。表1の要素を表1に示す量で混合し、シアン顔料で着色したワックス分散物を含有する水性シアンインクを与えた。
【表1】
【0076】
PEI−1は、米国特許第7,973,186号に記載されるポリエチレンイミン分散剤であり、いくつかの実施形態において、以下の式を有する。
【化1】
【0077】
Sunflo(登録商標)SFD−B124は、Sun Chemicalから入手可能な誘導体化されたスルホン酸化銅フタロシアニンである。
【0078】
Cytech(登録商標)FNP−0080は、Cytec(登録商標)から入手可能なパラフィンワックスである。
【0079】
実施例1の水性インクのレオロジープロットを
図3、
図4および
図5に示す。実施例1のインクを、2重量%のClariant(登録商標)Cyan BG10顔料および3.9重量%Cytech(登録商標)FNP−80ワックスと共に配合した。異なる印刷ヘッドを用いることによって効果的に吐出するために、もっと高い粘度または低い粘度を有するようにインクを配合してもよい。
【0080】
(実施例2)
2重量%のマゼンタ顔料を含有する水性マゼンタインク。表2の要素を表2に示す量で混合し、マゼンタ顔料で着色したワックス分散物を含有する水性マゼンタインクを与えた。
【表2】
【0081】
Dimatix(登録商標)プリンタを用い、実施例1のインクを用いて試験印刷物を調製した。
【0082】
このインクを、以下の試験の鍵となるパラメータを有するDimatix(登録商標)プリンタを用い、Xerox(登録商標)Digital Color Elite Gloss(登録商標)紙、Epson(登録商標)Premium Photo紙およびXerox(登録商標)4200紙基材を含む異なる基材に印刷した。
【0083】
試験の鍵となるパラメータ:液滴の質量:6.5ng;滴下速度:8m/s;周波数:5KHz;電圧:19〜24V。Digital Color Elite Gloss紙基材および4200紙基材に印刷した後、60℃の乾燥器で2分乾燥させた。
【0084】
印刷し、広げた後の印刷ドットの直径を表3に示す。これらの直径は、PIAS IIを用いて測定し、さらに、印刷物に対して直接、光学顕微鏡(非接触)によって測定した。PIAS−IIは、個人用画像分析システムであり、約3.2mm×2.4mmの視野を有するデジタルルーペおよび約5μm/ピクセルの高解像度光学モジュールを使用し、ドットの大きさおよび線の幅を測定した。
【表3】
【0085】
図6は、写真用紙基材に印刷した本開示の水性インク組成物を用いて印刷した印刷ドットの画像である。
【0086】
図7は、Xerox(登録商標)Digital Color Elite Gloss(登録商標)紙基材に印刷した本開示の水性インク組成物を用いて印刷した印刷ドットの画像である。
【0087】
図8は、Xerox(登録商標)4200紙基材に印刷した本開示の水性インク組成物を用いて印刷した印刷ドットの画像である。
【0088】
表4は、紙基材の上に線状に印刷した実施例1のインクにおいて、ミクロン単位での線の幅を示す。
【表4】
【0089】
図9は、写真用紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した印刷線の画像である。
【0090】
図10は、Xerox(登録商標)Digital Color Elite Gloss(登録商標)紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した印刷線の画像である。
【0091】
図11は、Xerox(登録商標)4200紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した印刷線の画像である。
【0092】
表5は、紙基材の上に実施例1のインクを用いて印刷したドットの光学顕微鏡によるドット真円度を示す。
【0093】
真円度を、SYSMEX(登録商標)FPIA−2100フロー型ヒストグラム分析機を用いて測定した。
【表5】
【0094】
図12は、写真用紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した真円度を示す印刷ドットの画像である。
【0095】
図13は、Xerox(登録商標)Digital Color Elite Gloss(登録商標)紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した真円度を示す印刷ドットの画像である。
【0096】
図14は、Xerox(登録商標)4200紙基材に印刷した実施例1の水性インク組成物を用いて印刷した真円度を示す印刷ドットの画像である。
【0097】
(実施例3)
25重量%のClariant(登録商標)Cyan BG10顔料を含有するシアン顔料濃縮物の調製
【表6】
【0098】
粉末分散機Hockmeyer高剪断分散機のインペラを用い、10〜15メートル/秒の先端速度で操作し、溶融したワックスおよび分散剤で顔料および相乗剤を濡らし、分散させることによって、顔料濃縮物を調製した。顔料で着色した液滴の平均粒径が所望のレベル(直径で約200ナノメートル未満)になったら、内容物をHockmeyer Model HCPN 1/16含浸メディアミルを用いて粉砕した。0.3ミリメートルのジルコニア研磨媒体を満たした0.2ミリメートルの粉砕バスケットを、顔料スラリーを粉砕するために使用した。110℃で操作したMalvern Zetasizer粒径分析機によって測定したときに、顔料で着色したもののZ平均が直径で約130ナノメートル、PDI(多分散指数)が約0.2になるまで粉砕したら、粉砕工程が終了したと考えた。室温で、生成物は、ワックスに分散した微細顔料を含有する安定な固体である。この生成物からペレットを作製し、使用準備ができるまで無期限に保存することができる。
【0099】
(実施例4)
ピストンホモジナイザを用い、顔料で着色したワックス分散物の調製
【表7】
【0100】
実施例3のシアン顔料を約120℃で、水中で溶融した。溶融した濃縮物を、ピストンホモジナイザに接続した4リットルのステンレスのジャケット付の攪拌した反応器を用いて分散させ、界面活性剤を用い、安定化された顔料で着色したワックス粒子を作製した。このプロセスは、120℃、加圧下、界面活性剤を含有する水中、実施例3の顔料濃縮物を溶融することを含んでいた。次いで、溶融した顔料濃縮物を含有するスラリーを、約6,000psiの圧力で操作するインラインピストンホモジナイザによって再循環させた。溶融した顔料濃縮物は、ホモジナイザの内側にあるセラミックピストンを通るとき、顕著な剪断力を受け、D50が約150〜約250ナノメートルの粒子に分散させた。再循環させ、内容物をホモジナイザに所定回数通過させた後、内容物を冷却し、液体として容器に取り出した。処理工程は、以下の通りであった。
【0101】
2リットルプラスチック瓶中、Tayca Power界面活性剤を脱イオン水に溶解させ、溶解するまでスパチュラを用いて攪拌した。
【0102】
顔料濃縮物および界面活性剤の溶液を、反応器01−08、Gaulin 15−MRを用い、120℃、500rpm、800psiで20分かけて前均質化しておいた。
【0103】
前均質化した顔料濃縮物および界面活性剤の溶液を、次いで、反応器01−08、Gaulin 15−MRを用い、120℃、500rpm、6,000psiで45分かけて均質化した。
【0104】
次いで、顔料で着色したワックス分散物を冷却し、約50℃で取り出し、100ミクロンのナイロンフィルタによって濾過した。
【0105】
生成物は、約20重量%の顔料で着色したワックス粒子を含有し、平均粒径D50が約150ナノメートル〜約220ナノメートルである、顔料で着色したワックスの安定で均質な水性分散物であった。
【0106】
(実施例5)
2重量%のClariant(登録商標)Cyan BG10顔料を含有する水性シアンインクジェットインクの調製。水性インクジェットインクのブレンドおよび濾過。最終プロセスは、顔料で着色したワックス分散物を含むインク要素をブレンドし、濾過することを含む。
【表8】
【0107】
水性インク要素を、磁気スターラーを設置したガラスビーカー内で合わせた。本発明の水性インク組成物を大スケールで製造するために、衛生的なステンレス攪拌塔を使用することができる。表8に示す原材料を混合容器内で秤量した。原材料は、顔料で着色したワックス分散物、潤滑剤、粘度調整剤、殺菌剤および他の任意要素の添加剤を含んでいてもよい。インク成分を加えた後、均質な混合物になるまで内容物をブレンドした。次いで、生成物を1つ以上のフィルタ膜によって濾過した。この膜は、印刷ヘッドの種類に依存して選択される。例えば、特定の用途のために、水性インク組成物を0.7ミクロンのフィルタ膜によって濾過する。これにより、濾過した水性インクは、使用可能な状態となる。