(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のフッ素樹脂、前記第2のフッ素樹脂または両方が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロプロピルビニルエーテル)、フッ化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の定着アッセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記図面のいくらかの詳細は簡易化されており、厳密な構造的正確性、詳細および寸法を維持するよりもむしろ、本技術の理解を容易にするために描かれていることに留意されたい。
【0012】
ここで、本技術の例示となる実施形態に対する詳細において、参照がなされるであろう。その例は、添付の図面において図示される。可能な限り、同じ参照符号は、同様、類似または同じ部分を意味するように、前記図面全体にわたって使用されるであろう。
【0013】
本願明細書で使用する時、特に断らない限り、「プリンタ」の語は、任意の目的で印刷出力機能を行う任意の装置、例えば、デジタルコピー機、製本機、ファクシミリ機、多機能機、静電複写装置等を包含する。前記図面において示された構造は、単純化のために示されていない更なる機構を含んでもよいこと、一方、示された構造が除去または修飾をされてもよいことが理解されるであろう。
【0014】
図1は、開示された1つ以上の実施形態に基づく、定着アッセンブリのローラ上に塗工された例示となるコーティング100の第1または下側層110の分散の、走査電子顕微鏡(「SEM」)により撮影された写真を示す。第1の層110を形成するのに塗工されるコーティング組成物は、1つ以上の材料から構成される分散液であり得る。少なくとも1つの実施形態では、前記分散液は、ナノカーボン材料、フッ素樹脂、分散剤および溶媒を含み得る。さらに、前記分散液は、コーティング品質を補助するために、他の材料、例えば、増粘剤も含み得る。
【0015】
第1の層110は、(
図1において明確に視認できない)ナノカーボン材料、例えば、カーボンナノチューブ(「CNT」)、グラフェンまたはそれらの組み合わせを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記ナノカーボン材料は、約0.1wt%から約5wt%、約0.3wt%から約3wt%または約0.5wt%から約1wt%の範囲の量で、第1の層110に存在し得る。
【0016】
第1の層110は、フッ素樹脂116も含み得る。フッ素樹脂116は、フッ素ポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」、例えば、TEFLON(登録商標))、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロプロピルビニルエーテル)、フッ化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)またはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、フッ素樹脂116は、約10wt%から約60wt%、約20wt%から約50wt%または約30wt%から約40wt%の範囲の量で、第1の層110に存在し得る。加熱前に、フッ素樹脂116は、約1μmから約20μm、約3μmから約15μmまたは約5μmから約10μmの平均粒径(例えば、断面長さまたは直径)を有し得る。このサイズの粒子は、第1の層110のクラッキングを低下させ得る。
【0017】
第1の層110は、均一なコーティングのための前記ナノカーボン材料の分散を補助するために、(
図1において明確に視認できない)分散剤も含み得る。前記分散剤は、制限されず、ポリアクリル酸、スルホン化フッ素ポリマーまたはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記分散剤は、約0.01wt%から約4wt%、約0.05wt%から約2wt%、約0.20wt%から約1wt%の範囲の量で、第1の層110に存在し得る。
【0018】
第1の層110は、溶媒も含み得る。前記溶媒は、前記複合コーティングを支持するために使用される。前記溶媒は、水、アセトン、イソプロパノール、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エステルアルコールまたはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記溶媒は、約30wt%から約80wt%、約30wt%から約55wt%または約55wt%から約80wt%の範囲の量で、第1の層110に存在し得る。
【0019】
第1の層110は、さらに、コーティング性能を達成するために、(
図1において明確に視認できない)増粘材料を含み得る。前記増粘材料は、小分子、ポリマーまたはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。例えば、前記増粘材料は、エステルアルコール、例えば、TEXANOL(登録商標)、ポリマー、例えば、ポリビニルブチラール、ポリ(アルキレンカーボネート)等またはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記増粘材料は、約0.1wt%から約10wt%、約0.5wt%から約5wt%または約1wt%から約3wt%の範囲の量で、第1の層110に存在し得る。
【0020】
第1の層110における前記ナノカーボン材料の実質的に均一な分布を達成するために、前記ナノカーボン材料を含む粉末が、第1の混合物を形成するために、音波処理または超音波処理により、分散剤、例えば、スルホン化フッ素ポリマー(例えば、NAFION(登録商標))を含むイソプロパノール溶液(「IPA」)に分散され得る。フッ素樹脂116(例えば、PTFEまたはPFA)を含む粉末も、第2の混合物を形成するために、イソプロパノール溶液に分散され得る。前記第1および第2の混合物は、第3の混合物を形成するために、更なる音波処理により組み合わせおよび混合をされ得る。分散品質は、
図1に示され得る。前記ナノカーボン材料とフッ素樹脂116とは、実質的に均質な分散液を実質的に均一に形成するように、互いに会合され得る。
【0021】
図2は、開示された1つ以上の実施形態に基づく、前記定着アッセンブリのローラ上の(
図1に示された)第1の層110にわたって塗工された例示となるコーティング100の第2または上側層120の分散液の、走査電子顕微鏡(「SEM」)により撮影された写真を示す。第2の層120を形成するために塗工されるコーティング組成物は、1つ以上の材料から構成される分散液(例えば、水性分散液)であり得る。より具体的には、前記分散液は、ナノカーボン材料、フッ素樹脂、分散剤および溶媒を含み得る。
【0022】
第2の層120は、第1の層110に関連して上記されたものに類似するナノカーボン材料122を含み得る。ただし、第2の層120は、第1の層110より少ない(例えば、wt%による)充填量のナノカーボン材料122を有し得る。少なくとも1つの実施形態では、前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、ナノカーボン材料122は、約2wt%以下の量で、第2の層120に存在し得る。例えば、ナノカーボン材料122は、約0wt%から約3wt%、約0.1wt%から約2wt%または約0.5wt%から約1wt%の量で、第2の層120に存在し得る。このため、加熱前および/または加熱後に、コーティング100中のナノカーボン材料122の濃度は、コーティング100の基部近く(例えば、ローラの外側表面近く)に存在する前記ナノカーボン材料のより高い濃度と、コーティング100の外側表面近くのナノカーボン材料122のより低い濃度とを有する勾配であり得る。
【0023】
第2の層120は、フッ素樹脂126も含み得る。例えば、フッ素樹脂126は、フッ素ポリマー、パーフルオロアルコキシ(「PFA」、例えば、Dupont PFA TE7224)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」、例えば、TEFLON(登録商標))、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロプロピルビニルエーテル)、フッ化エチレンプロピレンコポリマー(「FEP」)またはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。フッ素樹脂126は、第1の層110におけるフッ素樹脂116に類似し得る。加熱前に、フッ素樹脂126は、約10nmから約1000nm、約50nmから約500nmまたは約100nmから約300nmの範囲の平均粒径(例えば、断面長さまたは直径)を有し得る。このサイズの粒子は、均一で薄い第2の層120を作製するのに役立ち得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、フッ素樹脂126は、約1wt%から約20wt%、約2wt%から約15wt%または約3wt%から約10wt%の範囲の量で、第2の層120に存在し得る。
【0024】
第2の層120は、分散剤および/または溶媒も含み得る。前記分散剤は、ポリアクリル酸、スルホン化フッ素ポリマーまたはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記分散剤は、約0wt%から約3wt%、約0.5wt%から約2.5wt%または約1wt%から約2wt%の範囲の量で、第2の層120に存在し得る。前記溶媒は、水、アセトン、イソプロパノール、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エステルアルコールまたはそれらの組み合わせであり得るか、または、それらを含み得る。前記ローラに塗工される時点で(すなわち、加熱前)、前記溶媒は、約50wt%から約95wt%、約60wt%から約90wt%または約70wt%から約85wt%の範囲の量で、第2の層120に存在し得る。
【0025】
第2の層120を形成するために、ナノカーボン材料122を含む粉末が、第1の混合物を形成するために、音波処理または超音波処理により、前記ポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸))の水溶液中に分散され得る。前記第1の混合物は、剥離ナノカーボン材料/水分散液であり得るか、または、それらを含み得る。フッ素樹脂126(例えば、PTFEまたはPFA)の分散体が、第2の混合物を形成するために、前記第1の混合物と組み合わせられ得る。前記第2の混合物は、
図2に示されたように、均質なコーティング分散液であるか、または、それを含み得る。
【0026】
図3〜6は、プリンタの定着アセンブリのローラ300上への、コーティング100の第1および第2の層110、120の塗工を図示する。より具体的には、
図3および4は、開示された1つ以上の実施形態に基づく、定着アッセンブリのローラ300の外側表面(側面)310に塗工されたコーティング100の第1または下側層110の、模式的な側面図および端面図をそれぞれ示す。
【0027】
ローラ300の外側表面310は、下塗りされたシリコーン基材を含み得る。ローラ300は、中心長手方向軸を中心に、約50RPMから約200RPM、約75RPMから約175RPMまたは約100RPMから約150RPMの範囲の速度で回転され得る。
【0028】
第1の層110は、フローコーティングにより、ローラ300の外側表面310上に塗工され得る。第1の層110の(軸方向の)コーティング速度は、約0.5mm/sから約6mm/s、約1mm/sから約4mm/sまたは約1.5mm/sから約3mm/sの範囲であり得る。前記軸方向コーティング速度の方向は、矢印312により示される。ローラ300の外側表面310上での第1の層110の流量は、約1ml/分から約10ml/分、約2ml/分から約8ml/分または約3ml/分から約6ml/分であり得る。
【0029】
ブレード320の位置は、ローラ300の表面に対して、約−4mmから約0mm、約−3mmから約−0.25mmまたは約−2mmから約−0.5mmであり得る。これは、ブレード320が、圧力が高くなり過ぎずに、ローラ300と固体接触を有することを可能にし得る。第1の層110がローラ300の外側表面310に塗工された時点で、ローラ300は、少なくとも部分的に乾燥させられ得る(例えば、風乾)。
【0030】
図5および6は、開示された1つ以上の実施形態に基づく、前記定着アッセンブリのローラ300上のコーティング100の第1または下側層110上または同層110にわたって塗工された、コーティング100の第2または上側層120の、模式的な側面図および端面図をそれぞれ示す。第1の層110がローラ300の外側表面310上で少なくとも部分的に乾燥された時点で、第2の層120が、第1の層110上または同層110にわたって、少なくとも部分的に塗工され得る。ローラ300は、上で開示されたのと実質的に同じ速度で回転され得る。例えば、ローラ300は、約50RPMから約200RPM、約75RPMから約175RPMまたは約100RPMから約150RPMで回転され得る。
【0031】
第2の層120の(軸方向の)コーティング速度は、第1の層110の(軸方向の)コーティング速度より速くあり得る。前記軸方向コーティング速度は、約1mm/sから約20mm/s、約3mm/sから約15mm/sまたは約5mm/sから約10mm/sの範囲であり得る。前記軸方向コーティング速度の方向は、矢印314により示される。前記軸方向コーティング速度は、第1および/または第2の層110、120がローラ300の長さ(の少なくとも一部)に沿って(すなわち、ローラ300の長手方向軸に平行に)塗工される軸方向の速度を意味する。
【0032】
第1の層110上での第2の層120の流量は、第1の層110がローラ300の外側表面310に塗工される流量より多くあり得る。少なくとも1つの実施形態では、第2の層120の流量は、約1ml/分から約12ml/分、約2ml/分から約10ml/分または約4ml/分から約8ml/分であり得る。第2の層120として、第1の層110上に噴霧される前に、(上記された)第2の混合物の噴霧圧力は、約5ポンド毎平方インチ(「PSI」)から約50PSI、約10PSIから約40PSIまたは約15PSIから約30PSIの範囲であり得る。
【0033】
第1の層110および/またはローラ300上に塗工された時点で、第2の層120は、少なくとも部分的に乾燥させられ得る(例えば、風乾)。第2の層120が少なくとも部分的に乾燥させられた時点で、ローラ300は、任意の残留した溶媒を除去するために、第1の温度に加熱(例えば、ベーク)され得る。少なくとも1つの実施形態では、前記第1の温度は、約80℃から約200℃、約80℃から約150℃または約80℃から約125℃であることができ、ローラ300は、約15分から約4時間、約30分から約2時間または約45分から約1.5時間、前記第1の温度に加熱され得る。
【0034】
前記第1の温度に加熱された時点で、ローラ300は、硬化させるために、フッ素樹脂116、126(例えば、PTFEまたはPFA)の融点より高い第2の温度に加熱(またはベーク)され得る。少なくとも1つの実施形態では、前記第2の温度は、約200℃から約400℃、約250℃から約380℃または約285℃から約350℃であることができ、ローラ300は、約2分から約1時間、約5分から約30分間または約10分から約20分間、前記第2の温度に加熱され得る。
【0035】
前記第1および/または第2の温度での加熱中に、前記第1の層および第2の層のコーティングに使用された前記溶媒は、(例えば、蒸発または分解により)除去され得る。さらに、コーティング100が塗工された時点で、最初にコーティング100に存在する前記1つ以上の分散剤(例えば、ポリアクリル酸および/またはパーフルオロスルホン酸)は、化学構造が変化するか、または、分解により除去されることができるため、加熱後のコーティング100にもはや存在しないようにすることができる。さらに、前記加熱は、コーティング100中のフッ素樹脂粒子116、126を溶融させて、前記加熱中に均質なポリマー層を形成し得る。
【0036】
加熱が完了した時点で、コーティング100中のナノカーボン材料122の濃度は、コーティング100の基部近く(例えば、ローラの外側表面近く)に存在する前記ナノカーボン材料のより高い濃度と、コーティング100の外側表面近くのナノカーボン材料122のより低い濃度とを有する勾配であり得る。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、加熱後に、第1の層110は、約2wt%から約50wt%、約5wt%から約40wt%または約10wt%から約30wt%の量で存在するナノカーボン材料を含み得る。加熱後に、前記第2の層は、約5wt%以下、約2wt%以下または約1wt%以下の量で存在するナノカーボン材料を含み得る。さらに、フッ素樹脂116、126の平均熱伝導性に対する、第1の層110と第2の層120とを含む二重層複合コーティング100の平均熱伝導性の比は、約1:1から約5:1または約1.5:1から約3:1であり得る。コーティング100は、約5mN/m
2から約25mN/m
2または約10から約20mN/m
2の表面エネルギーを有し得る。
【0038】
加熱が完了した時点で、第1の層110は、約5μmから約20μm、約10μmから約50μmまたは約15μmから約30μmの範囲の厚みまたは深さを有することができ、第2の層120は、約10μm以下、約5μm以下または約2μm以下の平均厚みまたは深さを有することができる。
【0039】
より高い充填量のナノカーボン材料を有する第1の層110をフローコーティングすることにより、コーティング100についての熱伝導性を生じさせることができ、より低い充填量のナノカーボン材料122を有する第2の層120を噴霧することにより、トナー放出を改善することができる。これは、良好な画像品質を維持しながら、プリンタ速度を向上させ、最低定着温度を低下させ得る。これは、高い熱伝導性および良好なトナー放出を提供するための単層に対する要求を切り離すこともできる。
【0040】
図7は、1つ以上の実施形態に基づいて、従来の単層コーティングおよびこの開示に記載された二重層コーティングについての「光沢対定着温度」を示すグラフを示す。見られ得るように、本願明細書に開示された均質で均一な二重層コーティング100は、エマルジョン凝集トナーについての改善された定着性能を示す。ホットオフセット温度は、前記従来の単層コーティングから二重層コーティング100において、約165℃から約195℃に向上した。このため、より広い定着自由度が、前記二重層プロセスにより達成され得る。
【0041】
図8は、1つ以上の実施形態に基づく、例示となるプリンタ800の模式図を示す。プリンタ800は、電子写真方式プリンタであることができ、電子写真方式光受容器802および、電子写真方式光受容器802を均一に充電するための充電スタンド804を含み得る。電子写真方式光受容器802は、
図8に示されたドラム光受容器またはベルト光受容器(図示せず)であり得る。プリンタ800は、元のドキュメント(図示せず)が、電子写真方式光受容器802上で潜像を形成するために光源(図示せず)に露光され得る、画像化スタンド806も含み得る。プリンタ800は、さらに、電子写真方式光受容器802上で、前記潜像を可視画像に変換するための現像サブシステム808、および、媒体812(例えば、紙)上に前記可視画像を転写するための転写サブシステム810を含み得る。プリンタ800は、媒体812上に前記可視画像を固定するための定着アッセンブリ814(例えば、オイルレス定着アッセンブリ)も含み得る。定着アッセンブリ814は、1つ以上の第1または定着ローラ816、第2または圧力ローラ818、注油サブシステム(図示せず)および洗浄ウェブ(図示せず)を含み得る。第1および/または第2のローラ816、818は、中空で円筒体であるか、または、それを含み得る。
【実施例】
【0042】
下記実施例は、定着ローラ用の単層および二重層のコーティングを調製するための例示となる方法を記載する。本実施例は、限定することを意図していない。
【0043】
実施例1−単層コーティング
0.4グラムの多層カーボンナノチューブ(「CNT」)を、3.2グラムのNAFION(登録商標)117溶液(Sigma、混合H
2O/IPAにおける5wt%)を含む、40グラムのイソプロパノール(「IPA」)溶液に分散させた。このCNT/IPA分散液を、超音波処理機の60%出力で、3時間音波処理した。約3グラムのPFA粉末(MP320、E.I.du Pont de Nemours,Inc.から入手)を、6グラムの前記CNT/IPA分散液と分散させ、複数回音波処理して、2% CNT/PFA複合分散液を形成した。0.15グラムのTEXANOL(登録商標)(エステルアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート Sigma−Aldrich)を、前記複合分散液に添加して、均質なコーティング分散液を形成した。これは、
図1に見られ得る。
【0044】
前記均質なコーティング分散液を、定着ローラ(例えば、
図8における定着ローラ816)上に、約2mm/sのコーティング速度を有する2〜3ml/分の流量での、フローコーティングにより塗工して、前記定着ローラ上に(単層)コーティングを形成した。前記定着ローラは、シリコーン層およびフッ素ポリマープライマーでコートされた金属コアを含んだ。前記定着ローラを、100℃で60分間加熱(例えば、ベーク)し、続けてさらに、330℃で15分間ベークして、2% CNT/PFAコーティング層(例えば、第1の層)を有する定着ローラを形成した。前記コーティング層は、おおよそ20〜30μmの厚みであった。
【0045】
実施例2
前記実施例1で調製した2% CNT/PFA分散液を、定着ローラ(例えば、
図8における定着ローラ816)上に、2mm/sのコーティング速度を有する2〜3ml/分の流量での、フローコーティングにより塗工して、第1(例えば、底部)のコーティング層を形成した。第2のコーティングを、希釈したPFA水性エマルジョン(5wt% DUPONT(登録商標)TE7224)を、前記定着ローラ内に挿入された加熱素子(例えば、約50℃)を含む第1のコーティング層上に、7mm/sのコーティング速度を有する3ml/分の流量で、スプレーコーティングすることにより調製した。前記定着ローラを、100℃で60分間ベークし、続けてさらに、330℃で15分間ベークして、二重層CNT/PFA複合コーティングを有する定着ローラを形成した。前記二重層コーティングは、おおよそ20〜30μmの厚みであった。
【0046】
実施例3
1%グラフェンと0.4% NAFION(登録商標)/IPAとの分散液を、3.2グラムのNAFION(登録商標)117溶液(Sigma、混合H
2O/IPAにおける5wt%)を含む、40グラムのイソプロパノール(「IPA」)溶液における約0.4グラムのグラフェン粉末(STREM 06−0210)と分散させることにより調製した。前記分散液を、超音波処理機の60%出力で、3時間音波処理した。約33wt%のPFA粉末(10グラム)(MP320、E.I.du Pont de Nemours,Inc.から入手)を、20グラムの前記(1%グラフェン/0.4% NAFION(登録商標)/IPA)分散液に添加し、複数回音波処理して、2%グラフェン/PFA複合分散液を形成した。0.5グラムのTEXANOL(登録商標)(Sigma538221)を、回転させながら前記複合分散液に添加して、均質なコーティング分散液を形成した。第1(例えば、底部)コーティング層を、実施例1に記載されたコーティング法を使用して、下塗りされたシリコーン定着ローラ上に、前記複合分散液をフローコーティングすることにより作製した。第2(例えば、上部)のコーティング分散液を、CNT水性分散液をPFA水性エマルジョン(DUPONT(登録商標)TE7224)と混合して、10パーセントのPFAを含む1% CNT/PFA分散液を形成することにより調製した。前記分散液の品質を、
図2に示されたSEM画像により確認した。前記分散液を、前記定着ローラ内に挿入された加熱素子(例えば、約50℃)を含む第1(例えば、底部)のコーティング層上に、7mm/sのコーティング速度を有する3ml/分の流量で噴霧して、前記第2(例えば、上部)のコーティング層を形成した。ついで、二重層グラフェン/PFAコーティングでコートされた定着ローラを、前記実施例1と同じベーキング処理を使用して作製した。
【0047】
実施例4
1%グラフェンおよび1% CNTを含む複合コーティング分散液を、10グラムのPFA粉末を10グラムの1% CNT/IPA分散液および10グラムの1%グラフェン/IPA分散液と混合することにより調製した。この複合分散液を、60%の出力で60分間音波処理した。0.5グラムのTEXANOL(登録商標)(Sigma538221)を、前記複合分散液に添加して、均質なコーティング分散液を形成した。前記第1(例えば、底部)層を、上記実施例におけるのと同じコーティング条件を使用して、下塗りされた定着ローラ(例えば、
図8における定着ローラ816)上に、前記コーティング分散液をフローコーティングすることにより調製した。第2(例えば、上部)のコーティング層を、希釈したPFA水性エマルジョン(5wt% DUPONT(登録商標)TE7224)を、前記同じ処理条件により第1のコーティング層上にスプレーコーティングすることにより調製した。二重層である1% CNT/1%グラフェン/PFA複合コーティングを、上記実施例と同じベーキング処理により作製した。
【0048】
定着性能の評価
実施例1および実施例2から取得した定着ローラを、コントロールとして、市販のXEROX(登録商標)DC700定着器を使用する定着固定により試験した。前記コントロール定着ローラは、(実施例1および2における)実験の定着ローラに類似する、金属コアおよびシリコーン層を有するが、純粋なPFA表面層を適用する。DC700トナーの未定着画像を生成し、前記実験の定着ローラにより前記固定器に送った。前記定着ローラの温度を、定着された画像サンプルにおける光沢および折り目の測定のために、コールドオフセット(紙に対する接着の喪失)からホットオフセット(トナーが前記定着ローラに接着)に変動させた。BYK−GARDNER(登録商標)75°光沢メータを、定着ローラの温度の関数として、定着された画像の光沢を測定するのに使用した。
図7に示されたように、実施例1における単層コーティングを有する定着ローラは、170℃付近のホットオフセット温度を示した。一方、実施例2における二重層コーティングを有する定着ローラは、前記コントロール定着ローラに近い、205℃付近のオフセット温度を有した。前記二重層コーティングを有する定着ローラの向上したホットオフセット温度は、前記二重層コーティングを有する定着ローラが、前記単層コーティングを有する定着ローラと比較して、広がった定着自由度を有することを示す。さらに、最低定着温度(「MFT」)を、内部画像分析システムを使用して、前記定着画像上での折り目領域測定により決定した。二重層コーティングを有する定着ローラは、単層PFAコーティングを有するDC700定着ローラと比較して、約10℃のMFT低下を示した。これは、前記二重層コーティングが、純粋なPFAコーティングに対して、顕著に向上した熱伝導性を有することを説明する。
【0049】
本技術の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似であるにも関わらず、数値は、特定の実施例が可能な限り正確に報告されたことを説明する。ただし、任意の数値は、本質的に、そのそれぞれの試験測定において見出された標準偏差から必然的に生じる特定のエラーを含む。さらに、本願明細書に開示された全ての範囲は、その中に包含される任意および全ての部分範囲を包含すると理解されたい。例えば、「10未満」の範囲は、0の最小値と10の最大値との間の(および含む)任意および全ての部分範囲、すなわち、0以上の最小値および10以下の最大値を有する任意および全ての部分範囲、例えば、1から5を含み得る。
【0050】
本技術は1つ以上の実施に関して説明されてきたが、変更および/または修飾が、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、前記説明された実施例になされ得る。例えば、前記プロセスは、一例の動作または事象として記載されているが、本技術は、このような動作または事象の順序により限定されないことが理解され得る。一部の動作は、異なる順序および/または、本願明細書に記載されたものから離れた他の動作もしくは事象と同時に起こり得る。また、全てのプロセス段階が、本技術の1つ以上の態様または実施形態に基づく方法を実施するのに必要とされ得るわけではない。構造的構成要素および/またはプロセス段階が追加されることができ、または、既存の構造的構成要素および/またはプロセス段階が除去もしくは修飾され得ることが理解され得る。さらに、本願明細書に示された1つ以上の動作は、1つ以上の別々の動作および/または段階において行われ得る。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「伴って(with)」またはそれらの変形が、発明を実施するための形態および特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される範囲に対して、このような用語は、「含む(comprising)」の用語に類似する方法で含まれることを意図する。「少なくとも1つ(at least
one of)」の用語は、1つ以上の列記された項目が選択され得ることを意味するのに使用される。さらに、本願明細書における前記説明および特許請求の範囲において、2つの材料、他方「上(on)」の一方に関して使用される「上(on)」の用語は、前記材料間で少なくともいくらかの接触を意味する。一方、「にわたる(over)」は、前記材料が近接して存在するが、接触が必ずしも必要でない可能性があるように、潜在的に1つ以上の更なる介在材料を有することを意味する。本願明細書で使用する時、「上(on)」または「にわたる(over)」はいずれも、任意の有向性を伴わない。「適合(conformal)」の用語は、下にある材料の角度が適合材料により保持されているコーティング材料を説明する。「約(about)」の用語は、列記された値が、変化が説明された実施形態に対してプロセスまたは構造の不適合をもたらさない限り、いくらか変動し得ることを示す。最後に、「例示となる(exemplary)」または「例示となる(illustrative)」の用語は、その説明が、理想であることを伴うよりむしろ、例示として使用されることを示す。本技術の他の実施形態は、本明細書の考察および本願明細書の開示の実施から、当業者に明らかであり得る。前記明細書および実施例は、本技術の本来の範囲および精神が下記の特許請求の範囲により示されることを伴って、例示としてのみ考慮されることを意図する。
【0051】
この出願において使用される相対位置の用語は、従来の平面に対して平行な平面または加工中の部品の方向に関わらず、加工中の部品の作業面に基づいて規定される。この出願で使用する時、「水平」または「横方向」の用語は、従来の平面に対して平行な平面または加工中の部品の方向に関わらず、加工中の部品の作業面として規定される。「垂直」の用語は、前記水平に対して垂直な方向を意味する。例えば、「上(on)」、「側(side)」(「側壁」におけるように)、「上側(higher)」、「下側(lower)」、「にわたって(over)」、「上部(top)」および「下に(under)」の用語は、従来の平面または加工中の部品の方向に関わらず、加工中の部品の上面上にある作業面に関して規定される。