(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456267
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】エレベータドア装置およびエレベータ閉込救出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 13/14 20060101AFI20190110BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
B66B13/14 H
B66B5/02 S
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-202723(P2015-202723)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-75016(P2017-75016A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 政人
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−052883(JP,A)
【文献】
特開2005−112511(JP,A)
【文献】
特開昭56−161286(JP,A)
【文献】
特開平09−309682(JP,A)
【文献】
特開昭54−006259(JP,A)
【文献】
特開2012−218912(JP,A)
【文献】
特開2013−035625(JP,A)
【文献】
特開平04−112182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 1/52
B66B 5/00− 5/28
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご出入口を開閉するかごドアと、
前記かごドアを移動させるドア駆動部と
を備え、
前記ドア駆動部は、前記かごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、前記かごドアを戸開方向に移動させるための力である救出時戸開力および前記かごドアを戸閉方向に移動させるための力である救出時戸閉力のそれぞれを互いに異なるタイミングでそれぞれについて予め設定された時間だけ出力し、
前記救出時戸開力の大きさは、エレベータの運転が通常運転である場合に前記ドア駆動部が出力する前記かごドアを戸開方向に移動させるための力である通常時戸開力の大きさよりも大きく、
前記救出時戸閉力の大きさは、前記エレベータの運転が通常運転である場合に前記ドア駆動部が出力する前記かごドアを戸閉方向に移動させるための力である通常時戸閉力の大きさよりも大きく、
前記ドア駆動部は、前記救出時戸開力および前記救出時戸閉力のそれぞれを交互に複数回繰り返して出力するエレベータドア装置。
【請求項2】
前記救出時戸開力が出力される時間は、前記通常時戸開力が出力される時間よりも短く、
前記救出時戸閉力が出力される時間は、前記通常時戸閉力が出力される時間よりも短く、
前記かごドアは、前記救出時戸開力および前記救出時戸閉力によって、間口方向について振動する請求項1に記載のエレベータドア装置。
【請求項3】
前記ドア駆動部は、前記救出時戸開力の出力を繰り返す度に前記救出時戸開力の大きさを段階的に大きくする請求項1または請求項2に記載のエレベータドア装置。
【請求項4】
前記ドア駆動部は、前記救出時戸閉力の出力を繰り返す度に前記救出時戸閉力の大きさを段階的に大きくする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベータドア装置。
【請求項5】
乗場に設けられた乗場表示装置をさらに備え、
前記乗場表示装置は、前記ドア駆動部が前記救出時戸閉力および前記救出時戸開力のそれぞれを交互に繰り返して出力する場合に、前記救出時戸閉力および前記救出時戸開力のそれぞれの大きさを表示する請求項1から請求項4までの何れか一項に記載のエレベータドア装置。
【請求項6】
かご出入口を開閉するかごドアと、前記かごドアを移動させるドア駆動部と、前記かごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したか否かを判定するエレベータ制御盤とを備えたエレベータにおけるエレベータ閉込救出方法であって、
前記かごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したと前記エレベータ制御盤が判定する閉込故障判定工程と、
前記閉込故障判定工程の後、前記かごドアを戸開方向に移動させるための力である救出時戸開力を前記ドア駆動部が出力する救出時戸開力出力工程と、
前記閉込故障判定工程の後、前記かごドアを戸閉方向に移動させるための力である救出時戸閉力を前記ドア駆動部が出力する救出時戸閉力出力工程と
を備え、
前記救出時戸開力の大きさは、前記エレベータの運転が通常運転である場合に前記ドア駆動部が出力する前記かごドアを戸開方向に移動させるための力である通常時戸開力の大きさよりも大きく、
前記救出時戸閉力の大きさは、前記エレベータの運転が通常運転である場合に前記ドア駆動部が出力する前記かごドアを戸閉方向に移動させるための力である通常時戸閉力の大きさよりも大きく、
前記救出時戸開力出力工程および前記救出時戸閉力出力工程のそれぞれは、交互に複数回繰り返されるエレベータ閉込救出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご内に閉じ込められた乗客を救出するエレベータドア装置およびエレベータ閉込救出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かごと、一端部がかごに接続された主ロープと、主ロープの他端部に接続されたつり合い重りと、主ロープが巻き掛けられた綱車、綱車を回転させる電動機および綱車を制動するブレーキ装置を有した巻上機とを備え、かごが中間階に停止して乗客がかご内に閉じ込められた場合に、ブレーキ装置による綱車の制動を解除してかごを乗場に移動させることによって、かご内に閉じ込められた乗客を救出するエレベータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−20786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かごドアの位置が全閉位置でない場合にはブレーキ装置による綱車の制動を解除することができないので、かごを乗場に移動させることができず、かご内に閉じ込められた乗客を救出することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、かご内に閉じ込められた乗客をより確実に救出することができるエレベータドア装置およびエレベータ閉込救出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータドア装置は、かご出入口を開閉するかごドアと、かごドアを移動させるドア駆動部とを備え、ドア駆動部は、かごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、かごドアを戸開方向に移動させるための力である救出時戸開力およびかごドアを戸閉方向に移動させるための力である救出時戸閉力のそれぞれを互いに異なるタイミングでそれぞれについて予め設定された時間だけ出力し、救出時戸開力の大きさは、エレベータの運転が通常運転である場合にドア駆動部が出力するかごドアを戸開方向に移動させるための力である通常時戸開力の大きさよりも大きく、救出時戸閉力の大きさは、エレベータの運転が通常運転である場合にドア駆動部が出力するかごドアを戸閉方向に移動させるための力である通常時戸閉力の大きさよりも大き
く、ドア駆動部は、救出時戸開力および救出時戸閉力のそれぞれを交互に複数回繰り返して出力する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータドア装置によれば、かごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、かごドアを戸開方向に移動させるための力である救出時戸開力およびかごドアを戸閉方向に移動させるための力である救出時戸閉力のそれぞれを互いに異なるタイミングでそれぞれについて予め設定された時間だけドア駆動部が出力するので、例えば、敷居溝に異物が進入することによってかごドアの位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、かごドアに救出時戸閉力および救出時戸開力を加えることによって、敷居溝に進入した異物を移動させたりまたは敷居溝に進入した異物を破壊したりして、かごドアの位置を全閉位置に移動させることができる。その結果、かご内に閉じ込められた乗客をより確実に救出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータを示すブロック図である。
【
図2】
図1のエレベータの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータを示すブロック図である。図において、エレベータは、かごを昇降させる巻上機1と、巻上機1の駆動を制御するエレベータ制御盤2と、かごに設けられたエレベータドア装置3とを備えている。
【0010】
巻上機1は、主ロープが巻き掛けられる綱車(図示せず)と、綱車を回転させる電動機(図示せず)と、綱車を制動するブレーキ装置(図示せず)とを有している。綱車が回転することによって、主ロープが移動し、かごが昇降する。
【0011】
エレベータ制御盤2は、電動機およびブレーキ装置の動きを制御する。エレベータ制御盤2は、かごを昇降させる場合には、ブレーキ装置による綱車の制動を解除させ、電動機を駆動させる。一方、エレベータ制御盤2は、かごを停止させる場合には、電動機の駆動を停止させて、ブレーキ装置により綱車を制動させる。
【0012】
エレベータドア装置3は、かごに形成されたかご出入口を開閉するかごドア31と、かごドア31を戸閉方向および戸開方向に移動させるドア駆動部32と、ドア駆動部32の駆動を制御する駆動制御部33とを有している。エレベータ制御盤2から駆動制御部33には、戸開信号、戸閉信号、戸開強化信号、戸閉強化信号が入力される。
【0013】
駆動制御部33には、エレベータの運転が通常運転である場合であって、かごドア31を全閉位置から全開位置に変位させる場合に、戸開信号が入力される。駆動制御部33に戸開信号が入力された場合にかごドア31を全閉位置から全開位置に変位させるためにドア駆動部32が出力する力を通常時戸開力とする。駆動制御部33は、駆動制御部33に戸開信号が入力されると、かごドア31が全閉位置から全開位置に変位するまで通常時戸開力を出力する。
【0014】
駆動制御部33には、エレベータの運転が通常運転である場合であって、かごドア31を全開位置から全閉位置に変位させる場合に、戸閉信号が入力される。駆動制御部33に戸閉信号が入力された場合にかごドア31を全開位置から全閉位置に変位させるためにドア駆動部32が出力する力を通常時戸閉力とする。駆動制御部33は、駆動制御部33に戸閉信号が入力されると、かごドア31が全開位置から全閉位置に変位するまで通常時戸閉力を出力する。
【0015】
駆動制御部33には、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、戸開強化信号が入力される。駆動制御部33に戸開強化信号が入力された場合にかごドア31を戸開方向に移動させるためにドア駆動部32が出力する力を救出時戸開力とする。救出時戸開力の大きさは、通常時戸開力の大きさよりも大きくなっている。また、救出時戸開力の大きさは、変更可能となっている。駆動制御部33は、駆動制御部33に戸開強化信号が入力されると、予め設定された時間だけ救出時戸開力を出力する。駆動制御部33に戸開強化信号が入力されてドア駆動部32が救出時戸開力を出力する時間は、駆動制御部33に戸開信号が入力されたドア駆動部32が通常時戸開力を出力する時間よりも短くなっている。具体的には、駆動制御部33に戸開強化信号が入力されてドア駆動部32が救出時戸開力を出力する時間は、かごドア31が数cm程度だけ移動するのに必要な時間となっている。
【0016】
駆動制御部33には、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、戸閉強化信号が入力される。駆動制御部33に戸閉強化信号が入力された場合にかごドア31を戸閉方向に移動させるためにドア駆動部32が出力する力を救出時戸閉力とする。救出時戸閉力の大きさは、通常時戸閉力の大きさよりも大きくなっている。また、救出時戸閉力の大きさは、変更可能となっている。駆動制御部33は、駆動制御部33に戸閉強化信号が入力されると、予め設定された時間だけ救出時戸閉力を出力する。駆動制御部33に戸閉強化信号が入力されてドア駆動部32が救出時戸閉力を出力する時間は、駆動制御部33に戸閉信号が入力されたドア駆動部32が通常時戸閉力を出力する時間よりも短くなっている。具体的には、駆動制御部33に戸閉強化信号が入力されてドア駆動部32が救出時戸閉力を出力する時間は、かごドア31が数cm程度だけ移動するのに必要な時間となっている。
【0017】
また、このエレベータは、かごドア31の位置が全閉位置であることを検出する全閉検出装置4と、管理室が設置されている階の乗場に設けられた閉込救出操作装置5と、エレベータの各機器に電力を供給するエレベータ電源装置6とをさらに備えている。
【0018】
全閉検出装置4は、かごに設けられている。全閉検出装置4からエレベータ制御盤2には、かごドア31の位置が全閉位置である場合に、かごドア31の位置が全閉位置であることを示す全閉信号が入力される。
【0019】
閉込救出操作装置5からエレベータ制御盤2には、閉込救出操作装置5が操作されることによって閉込救出信号が入力される。閉込救出操作装置5は、スプリングバックスイッチから構成されている。具体的には、閉込救出操作装置5は、ON位置とOFF位置との間で変位するレバーと、レバーの位置がOFF位置となるようにレバーを付勢するばねとを有している。したがって、閉込救出操作装置5は、操作者がばねの付勢力に逆らってレバーの位置をON位置にしている場合にのみ閉込救出信号を出力し、操作者によるレバーへの力か解除されレバーの位置がOFF位置となった場合には、閉込救出信号を出力しない。なお、閉込救出操作装置5は、管理室が設置されている階の乗場に限らず、その他の場所に設けられてもよい。
【0020】
エレベータ制御盤2からエレベータ電源装置6には、電源リセット信号が入力される。エレベータ電源装置6は、電源リセット信号が入力された場合に、エレベータの各機器への電力の供給を一時的に停止する。これにより、エレベータの各機器がリセットされる。エレベータの各機器がリセットされると、ソフトウエア上の安全検出保持が解除される。これにより、エレベータが動作可能となる。なお、ソフトウエア上の安全検出保持を解除することができる構成であれば、エレベータの各機器をリセットしなくてもよい。
【0021】
また、このエレベータは、乗場に設けられた乗場表示装置7と、かごに設けられたかご表示装置8と、かごに設けられ、管理室に設けられた管理室通話装置100との間で通話可能であるかご通話装置9とを備えている。
【0022】
エレベータ制御盤2から乗場表示装置7には、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、エレベータの状況を示す情報が入力される。乗場表示装置7は、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、エレベータの状況を示す情報を表示する。
【0023】
エレベータ制御盤2からかご表示装置8には、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、エレベータの状況を示す情報が入力される。かご表示装置8は、エレベータの運転が閉込救出運転である場合に、エレベータの状況を示す情報を表示する。
【0024】
かご通話装置9は、エレベータの閉込故障が発生した場合に、管理室通話装置100との間で通話可能となる。なお、かご通話装置9は、管理室通話装置100ではなく、情報センタとの間で通話可能となってもよい。
【0025】
次に、このエレベータを用いたエレベータ閉込救出方法について説明する。
図2は
図1のエレベータの動作を示すフローチャートである。まず、エレベータ制御盤2は、全閉検出装置4の検出結果を用いて、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したか否か、つまり、閉込故障の有無を判定する(閉込故障判定工程)(ステップS101)。ステップS101で、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止していないとエレベータ制御盤2が判定すると、ステップS101が繰り返される。
【0026】
一方、ステップS101で、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したとエレベータ制御盤2が判定すると、エレベータ制御盤2は、閉込救出操作装置5が操作されたか否か、つまり、閉込救出操作装置5から閉込救出信号が入力されたか否かを判定する(閉込救出信号入力工程)(ステップS102)。ステップS102で、閉込救出操作装置5から閉込救出信号が入力されていないとエレベータ制御盤2が判定すると、ステップS101が繰り返される。また、ステップS101で、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したとエレベータ制御盤2が判定すると、乗場表示装置7およびかご表示装置8は、閉込故障が発生した旨を表示し、かご通話装置9は、管理室通話装置100との間で通話が可能となる。なお、かご通話装置9は、かご内に設けられた通話釦が乗客に操作されることによって管理室通話装置100との間で通話が可能となる構成であってもよい。
【0027】
一方、ステップS102で、閉込救出操作装置5から閉込救出信号が入力されたとエレベータ制御盤2が判定すると、エレベータ制御盤2はエレベータ電源装置6に電源リセット信号を入力して、エレベータの各機器がリセットされる(電源リセット工程)(ステップS103)。このとき、乗場表示装置7は、エレベータの各機器がリセットされた旨を表示する。
【0028】
その後、エレベータ制御盤2から駆動制御部33に戸開強化信号および戸閉強化信号が交互に複数回繰り返して入力される。これにより、ドア駆動部32は、救出時戸開力および救出時戸閉力のそれぞれを互いに異なるタイミングでそれぞれについて予め設定された時間だけ出力される(救出時戸開力出力工程、救出時戸閉力出力工程)(ステップS104)。その結果、かごドア31が間口方向について振動する。ここで、救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程は、閉込救出操作装置5からエレベータ制御盤2に閉込救出信号が入力されている間のみ行われる。救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程では、ドア駆動部32は、救出時戸開力の出力を繰り返す度に救出時戸開力の大きさを段階的に大きくし、救出時戸閉力の出力を繰り返す度に救出時戸閉力の大きさを段階的に大きくする。このとき、乗場表示装置7は、救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程が行われている旨と、救出時戸開力および救出時戸閉力の大きさとを表示する。救出時戸開力および救出時戸閉力の大きさの情報は、保守員がエレベータの動作確認を行う際に用いられる。
【0029】
救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程では、短い周期でかごドア31に力が加えられる。かごドア31に加えられる力は、従来、保守員が手動でかごドア31に力を加えていたのと同様の力となっている。
【0030】
救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程では、ドア駆動部32が救出時戸開力および救出時戸閉力を何度か繰り返して出力した後、一度、かごドア31の位置が全閉位置となるようにドア駆動部32が通常時戸閉力を出力する。その後、かごドア31の位置が全閉位置でない場合には、再び救出時戸開力出力工程および救出時戸閉力出力工程が行われる。救出時戸開力および救出時戸閉力を出力と、通常時戸閉力の出力とは、予め設定された回数だけ繰り返される。
【0031】
その後、エレベータ制御盤2は、かごドア31の位置が全閉位置となるように戸閉信号を駆動制御部33に入力し、全閉検出装置4の検出結果を用いて、かごドア31の位置が全閉位置であるか否かを判定する(閉込故障判定工程)(ステップS105)。ステップS105で、かごドア31の位置が全閉位置ではないとエレベータ制御盤2が判定すると、閉込救出運転を停止し、そのまま終了する。このとき、乗場表示装置7およびかご表示装置8は、閉込救出運転を停止する旨を表示する。
【0032】
一方、ステップS105で、かごドア31の位置が全閉位置であるとエレベータ制御盤2が判定すると、エレベータ制御盤2は、低速運転でかごを最寄階に移動させる(かご移動工程)(ステップS106)。このとき、乗場表示装置7およびかご表示装置8は、かごを低速運転で最寄階に移動させる旨を表示する。
【0033】
かごが最寄階に到着した後、かごドア31を全閉位置から全開位置に移動させる(戸開工程)(ステップS107)。このとき、乗場表示装置7およびかご表示装置8は、かごドア31を全閉位置から全開位置に移動させる旨を表示する。
【0034】
かごドア31が全閉位置から全開位置に移動してから予め設定された時間が経過した後、かごドア31が全開位置から全閉位置に移動して、エレベータの運転が休止される(エレベータ休止工程)(ステップS108)。以上により、エレベータを用いたエレベータ閉込救出方法が終了する。
【0035】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエレベータドア装置3によれば、かご出入口を開閉するかごドア31と、かごドア31を移動させるドア駆動部32とを備え、ドア駆動部32は、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、救出時戸開力および救出時戸閉力のそれぞれを互いに異なるタイミングでそれぞれについて予め設定された時間だけ出力し、救出時戸開力の大きさは、通常時戸開力の大きさよりも大きく、救出時戸閉力の大きさは、通常時戸閉力の大きさよりも大きいので、例えば、敷居溝に異物が進入することによってかごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、かごドア31に救出時戸閉力および救出時戸開力を加えることによって、敷居溝に進入した異物を移動させたりまたは敷居溝に進入した異物を破壊したりして、かごドア31の位置を全閉位置に移動させることができる。その結果、かご内に閉じ込められた乗客をより確実に救出することができる。
【0036】
また、ドア駆動部32は、救出時戸開力および救出時戸閉力のそれぞれを交互に複数回繰り返して出力するので、敷居溝に進入した異物を効果的に移動させたり、または、敷居溝に進入した異物を効果的に破壊したりすることができる。
【0037】
また、ドア駆動部32は、救出時戸開力の出力を繰り返す度に救出時戸開力の大きさを段階的に大きくするので、敷居溝に進入した異物をより確実に移動させたり、または、敷居溝に進入した異物をより確実に破壊したりすることができる。
【0038】
また、ドア駆動部32は、救出時戸閉力の出力を繰り返す度に救出時戸閉力の大きさを段階的に大きくする敷居溝に進入した異物をより確実に移動させたり、または、敷居溝に進入した異物をより確実に破壊したりすることができる。
【0039】
また、この発明の実施の形態1に係るエレベータ閉込救出方法によれば、かご出入口を開閉するかごドア31と、かごドア31を移動させるドア駆動部32と、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したか否かを判定するエレベータ制御盤2とを備えたエレベータにおけるエレベータ閉込救出方法であって、かごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止したとエレベータ制御盤2が判定する閉込故障判定工程と、閉込故障判定工程の後、救出時戸開力をドア駆動部32が出力する救出時戸開力出力工程と、閉込故障判定工程の後、救出時戸閉力をドア駆動部32が出力する救出時戸戸閉出力工程とを備え、救出時戸開力の大きさは、通常時戸開力の大きさよりも大きく、救出時戸閉力の大きさは、通常時戸閉力の大きさよりも大きいので、例えば、敷居溝に異物が進入することによってかごドア31の位置が全閉位置でない状態でかごが中間階に停止した場合に、かごドア31に救出時戸閉力および救出時戸開力を加えることによって、敷居溝に進入した異物を移動させたりまたは敷居溝に進入した異物を破壊したりして、かごドア31の位置を全閉位置に移動させることができる。その結果、かご内に閉じ込められた乗客をより確実に救出することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態1では、巻上機1の電動機を駆動させてかごを低速運転で最寄階に移動させ構成について説明したが、巻上機1のブレーキ装置による綱車の制動を調節することによってかごを低速運転で最寄階に移動させ構成であってもよい。
【0041】
また、上記実施の形態1では、ステップS107において、かごドア31を全閉位置から全開位置に移動させた後に、エレベータの運転が休止されるエレベータ閉込救出方法について説明したが、エレベータの運転を休止せず、エレベータの通常運転を再開させてもよい。この場合、かごドア31を低速で全開位置および全閉位置に移動させて、かごドア31が正常に移動することを確認する。かごドア31が正常に移動するか否かの確認中に乗客がかご内に乗ってきた場合には、かご表示装置8が、かごドア31が正常に移動するか否かの確認中であるので乗車できない旨を表示してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 巻上機、2 エレベータ制御盤、3 エレベータドア装置、4 全閉検出装置、5 閉込救出操作装置、6 エレベータ電源装置、7 乗場表示装置、8 かご表示装置、9 かご通話装置、31 かごドア、32 ドア駆動部、33 駆動制御部、100 管理室通話装置。