(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから単体の第1油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する単体の第1方向制御弁と、前記単体の第1方向制御弁を駆動するためのパイロット圧を生成して出力する一対の第1電磁比例弁と、前記複数の油圧ポンプから単体の第2油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する複数の第2方向制御弁と、前記複数の第2方向制御弁をそれぞれ駆動するためのパイロット圧を生成して出力する複数対の第2電磁比例弁と、前記第1油圧アクチュエータを操作するための第1操作信号を出力するとともに、前記第2油圧アクチュエータを操作するための第2操作信号を出力する少なくとも1つの電気レバー方式の操作装置と、前記操作装置からの第1操作信号に応じて前記第1電磁比例弁を駆動するための第1指令電流を出力するとともに、前記操作装置からの第2操作信号に応じて前記第2電磁比例弁を駆動するための第2指令電流を出力する制御装置と、を備えた建設機械であって、
前記制御装置は、前記操作装置の中立位置からの操作開始時に、予め設定された所定時間、前記操作装置の操作量に対応する目標電流より大きくなるように指令電流を補正する補正機能を有し、
前記制御装置の前記補正機能は、前記第1指令電流を補正対象として前記第2指令電流を補正対象としないか、若しくは、前記第1指令電流の補正値が前記第2指令電流の補正値より大きくなるように補正することを特徴とする建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す斜視図であり、部分的に透視して搭載機器を示す。
【0018】
本実施形態の油圧ショベルは、自走可能な下部走行体10と、下部走行体10の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体11と、上部旋回体11の前側に連結された作業装置12とを備えている。
【0019】
下部走行体10は、上方から見て略H字形状のトラックフレームと、このトラックフレームの左側及び右側に設けられたクローラ式の走行装置13a,13b(図中、左側の走行装置13aのみ示す)とを備えている。左側の走行装置13aでは、左走行モータ3aの前方向又は後方向の回転により、左クローラ(履帯)が前方向又は後方向に回転する。同様に、右側の走行装置13bでは、右走行モータ3b(
図1では示さないものの、後述の
図2で示す)の前方向又は後方向の回転により、右クローラ(履帯)が前方向又は後方向に回転する。これにより、下部走行体10が走行するようになっている。
【0020】
上部旋回体11は、旋回モータ4の回転によって、左方向又は右方向に旋回するようになっている。上部旋回体11の前部には運転室14が設けられ、上部旋回体11の後部にはエンジン15等の機器が搭載されている。運転室14内には、走行用操作装置1a,1bと、作業用操作装置2a,2bが設けられている。また、運転室14の乗降口には、上下に操作可能なゲートロックレバー16(
図1では便宜上示さないものの、後述の
図2で示す)が設けられている。ゲートロックレバー16は、上昇位置に操作された場合にオペレータの乗降を許容し、下降位置に操作された場合にオペレータの乗降を妨げるようになっている。
【0021】
作業装置12は、上部旋回体11の前側に回動可能に連結されたブーム17と、ブーム17に回動可能に連結されたアーム18と、アーム18に回動可能に連結されたバケット19とを備えている。ブーム17は、ブームシリンダ5の伸長又は伸縮により、上方向又は下方向に回動する。アーム18は、アームシリンダ6の伸長又は伸縮により、クラウド方向(引込み方向)又はダンプ方向(押出し方向)に回動する。バケット19は、バケットシリンダ7の伸長又は伸縮により、クラウド方向又はダンプ方向に回動する。
【0022】
図2は、本実施形態における油圧ショベルの駆動システムの構成を表す図である。なお、この
図2においては、便宜上、メインリリーフ弁、ロードチェック弁、リターン回路、及びドレン回路等の図示を省略している。
【0023】
本実施形態の駆動システムは、大別して、主油圧制御回路とパイロット圧制御回路で構成されている。
【0024】
主油圧制御回路は、エンジン15によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ8a,8b,8cと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した左走行モータ3a、右走行モータ3b、旋回モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及びバケットシリンダ7)と、複数の油圧パイロット方式の方向制御弁(詳細には、左走行用方向制御弁21、右走行用方向制御弁22、旋回用方向制御弁23、ブーム用方向制御弁24a,24b、アーム用方向制御弁25a,25b、及びバケット用方向制御弁26)とを備えている。油圧ポンプ8a,8b,8cには、ポンプ容量をそれぞれ変化させるレギュレータ9a,9b,9cが設けられている。
【0025】
全ての方向制御弁は、センタバイパス型の方向制御弁であって、油圧ポンプ8aの吐出側に接続された第1の弁グループと、油圧ポンプ8bの吐出側に接続された第2の弁グループと、油圧ポンプ8cの吐出側に接続された第3の弁グループに分類される。
【0026】
第1の弁グループは、右走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁26、及びブーム用方向制御弁24aを有している。右走行用方向制御弁22は、バケット用方向制御弁26及びブーム用方向制御弁24aに対してタンデムに、かつ、油圧ポンプ8aから供給される圧油の流れに対し上流側に接続されている。バケット用方向制御弁26及びブーム用方向制御弁24aは、互いにパラレルに接続されている。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油がバケット用方向制御弁26及びブーム用方向制御弁24aよりも優先的に右走行用方向制御弁22に供給される。
【0027】
第2の弁グループは、ブーム用方向制御弁24b及びアーム用方向制御弁25aを有している。ブーム用方向制御弁24b及びアーム用方向制御弁25aは、互いにパラレルに接続されている。第3の弁グループは、旋回用方向制御弁23、アーム用方向制御弁25b、及び左走行用方向制御弁21を有している。旋回用方向制御弁23、アーム用方向制御弁25b、及び左走行用方向制御弁21は、互いにパラレルに接続されている。
【0028】
パイロット圧制御回路は、エンジン15によって駆動されるパイロットポンプ27と、油圧パイロット方式の走行用操作装置1a,1bと、電気レバー方式の作業用操作装置2a,2bと、制御装置(コントロールユニット)100と、複数の電磁比例弁(詳細には、旋回用電磁比例弁41a,41b、ブーム用電磁比例弁42a,42b,42c,42d、アーム用電磁比例弁43a,43b,43c,43d、及びバケット用電磁比例弁44a,44b)とを備えている。
【0029】
左側の走行用操作装置1aは、前後方向に操作可能な操作レバーと、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する第1及び第2のパイロット弁(図示せず)とを有している。
【0030】
第1のパイロット弁は、操作レバーの中立位置からの前側の操作量に応じたパイロット圧を生成し、パイロットラインP1を介し左走行用方向制御弁21の一方側の操作部(受圧部)にパイロット圧を出力して、左走行用方向制御弁21のスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8cからの圧油が左走行用方向制御弁21を介し左走行モータ3aに供給されて、左走行モータ3aが前方向に回転する。
【0031】
第2のパイロット弁は、操作レバーの中立位置からの後側の操作量に応じたパイロット圧を生成し、パイロットラインP2を介し左走行用方向制御弁21の他方側の操作部にパイロット圧を出力して、左走行用方向制御弁21のスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8cからの圧油が左走行用方向制御弁21を介し左走行モータ3aに供給されて、左走行モータ3aが後方向に回転する。
【0032】
同様に、右側の走行用操作装置1bは、前後方向に操作可能な操作レバーと、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する第3及び第4のパイロット弁(図示せず)とを有している。
【0033】
第3のパイロット弁は、操作レバーの中立位置からの前側の操作量に応じたパイロット圧を生成し、パイロットラインP3を介し右走行用方向制御弁22の一方側の操作部にパイロット圧を出力して、右走行用方向制御弁22のスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油が右走行用方向制御弁22を介し右走行モータ3bに供給されて、右走行モータ3bが前方向に回転する。
【0034】
第4のパイロット弁は、操作レバーの中立位置からの後側の操作量に応じたパイロット圧を生成し、パイロットラインP4を介し右走行用方向制御弁22の他方側の操作部にパイロット圧を出力して、右走行用方向制御弁22のスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油が右走行用方向制御弁22を介し右走行モータ3bに供給されて、右走行モータ3bが後方向に回転する。
【0035】
左側の作業用操作装置2aは、前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバーと、第1〜第4のポテンションメータ(図示せず)とを有している。第1のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの前側の操作量に応じて操作信号(電気信号)を生成し、制御装置100に出力する。第2のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの後側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。第3のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの左側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。第4のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの右側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。
【0036】
同様に、右側の作業用操作装置2bは、前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバーと、第5〜第8のポテンションメータ(図示せず)とを有している。第5のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの前側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。第6のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの後側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。第7のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの左側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。第8のポテンションメータは、操作レバーの中立位置からの右側の操作量に応じて操作信号を生成し、制御装置100に出力する。
【0037】
制御装置100は、第1のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、旋回用電磁比例弁41aのソレノイド部へ指令電流を出力して、旋回用電磁比例弁41aを駆動させる。旋回用電磁比例弁41aは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP5を介し旋回用方向制御弁23の一方側の操作部にパイロット圧を出力して、旋回用方向制御弁23のスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8cからの圧油が旋回用方向制御弁23を介し旋回モータ4に供給されて、旋回モータ4が一方向に回転する。
【0038】
また、制御装置100は、第2のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、旋回用電磁比例弁41bのソレノイド部へ指令電流を出力して、旋回用電磁比例弁41bを駆動させる。旋回用電磁比例弁41bは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP6を介し旋回用方向制御弁23の他方側の操作部にパイロット圧を出力して、旋回用方向制御弁23のスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8cからの圧油が旋回用方向制御弁23を介し旋回モータ4に供給されて、旋回モータ4が反対方向に回転する。
【0039】
なお、パイロットラインP5、P6(言い換えれば、旋回用電磁比例弁41a,41bの二次圧側)には旋回用圧力センサ31a,31bが設けられており、各圧力センサで検出された実パイロット圧が制御装置100に出力されている。
【0040】
制御装置100は、第3のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、アーム用電磁比例弁43a,43bのソレノイド部へ指令電流を出力して、アーム用電磁比例弁43a,43bを駆動させる。アーム用電磁比例弁43aは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP11を介しアーム用方向制御弁25aの一方側の操作部にパイロット圧を出力して、アーム用方向制御弁25aのスプールを他方側に駆動させる。アーム用電磁比例弁43bは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP12を介しアーム用方向制御弁25bの一方側の操作部にパイロット圧を出力して、アーム用方向制御弁25bのスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8bからの圧油がアーム用方向制御弁25aを介しアームシリンダ6のロッド側に供給され、かつ、油圧ポンプ8cからの圧油がアーム用方向制御弁25bを介しアームシリンダ6のロッド側に供給されて、アームシリンダ6が縮短する。
【0041】
また、制御装置100は、第4のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、アーム用電磁比例弁43c,43dのソレノイド部へ指令電流を出力して、アーム用電磁比例弁43c,43dを駆動させる。アーム用電磁比例弁43cは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP13を介しアーム用方向制御弁25aの他方側の操作部にパイロット圧を出力して、アーム用方向制御弁25aのスプールを一方側に駆動させる。アーム用電磁比例弁43dは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP14を介しアーム用方向制御弁25bの他方側の操作部にパイロット圧を出力して、アーム用方向制御弁25bのスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8bからの圧油がアーム用方向制御弁25aを介しアームシリンダ6のボトム側に供給され、かつ、油圧ポンプ8cからの圧油がアーム用方向制御弁25bを介しアームシリンダ6のボトム側に供給されて、アームシリンダ6が伸長する。
【0042】
なお、パイロットラインP11,P12,P13,P14(言い換えれば、アーム用電磁比例弁43a,43b,43c,43dの二次圧側)にはアーム用圧力センサ33a,33b,33c,33dが設けられており、各圧力センサで検出された実パイロット圧が制御装置100に出力されている。
【0043】
制御装置100は、第5のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、ブーム用電磁比例弁42a,42bのソレノイド部へ指令電流を出力して、ブーム用電磁比例弁42a,42bを駆動させる。ブーム用電磁比例弁42aは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP7を介しブーム用方向制御弁24aの一方側の操作部にパイロット圧を出力して、ブーム用方向制御弁24aのスプールを他方側に駆動させる。ブーム用電磁比例弁42bは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP8を介しブーム用方向制御弁24bの一方側の操作部にパイロット圧を出力して、ブーム用方向制御弁24bのスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油がブーム用方向制御弁24aを介しブームシリンダ5のロッド側に供給され、かつ、油圧ポンプ8bからの圧油がブーム用方向制御弁24bを介しブームシリンダ5のロッド側に供給されて、ブームシリンダ5が縮短する。
【0044】
また、制御装置100は、第6のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、ブーム用電磁比例弁42c,42dのソレノイド部へ指令電流を出力して、ブーム用電磁比例弁42c,42dを駆動させる。ブーム用電磁比例弁42cは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP9を介しブーム用方向制御弁24aの他方側の操作部にパイロット圧を出力して、ブーム用方向制御弁24aのスプールを一方側に駆動させる。ブーム用電磁比例弁42dは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP10を介しブーム用方向制御弁24bの他方側の操作部にパイロット圧を出力して、ブーム用方向制御弁24bのスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油がブーム用方向制御弁24aを介しブームシリンダ5のボトム側に供給され、かつ、油圧ポンプ8bからの圧油がブーム用方向制御弁24bを介しブームシリンダ5のボトム側に供給されて、ブームシリンダ5が伸長する。
【0045】
なお、パイロットラインP7,P8,P9,P10(言い換えれば、ブーム用電磁比例弁42a,42b,42c,42dの二次圧側)にはブーム用圧力センサ32a,32b,32c,32dが設けられており、各圧力センサで検出された実パイロット圧が制御装置100に出力されている。
【0046】
制御装置100は、第7のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、バケット用電磁比例弁44aのソレノイド部へ指令電流を出力して、バケット用電磁比例弁44aを駆動させる。バケット用電磁比例弁44aは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP15を介しバケット用方向制御弁26の一方側の操作部にパイロット圧を出力して、バケット用方向制御弁26のスプールを他方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油がバケット用方向制御弁26を介しバケットシリンダ7のボトム側に供給されて、バケットシリンダ7が伸長する。
【0047】
また、制御装置100は、第8のポテンションメータからの操作信号に応じた指令電流を生成し、バケット用電磁比例弁44bのソレノイド部へ指令電流を出力して、バケット用電磁比例弁44bを駆動させる。バケット用電磁比例弁44bは、パイロットポンプ27からの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成し、パイロットラインP16を介しバケット用方向制御弁26の他方側の操作部にパイロット圧を出力して、バケット用方向制御弁26のスプールを一方側に駆動させる。これにより、油圧ポンプ8aからの圧油がバケット用方向制御弁26を介しバケットシリンダ7のロッド側に供給されて、バケットシリンダ7が縮短する。
【0048】
なお、パイロットラインP15,P16(言い換えれば、バケット用電磁比例弁44a,44bの二次圧側)にはバケット用圧力センサ34a,34bが設けられており、各圧力センサで検出された実パイロット圧が制御装置100に出力されている。
【0049】
制御装置100は、各電磁比例弁の指令電流とその二次圧側の圧力センサで検出された実パイロット圧に基づき、各電磁比例弁に異常が生じているか否かを判定する。そして、電磁比例弁に異常が生じていると判定した場合は、電磁比例弁の異常状態を表示装置50に表示させて、オペレータに通知する。
【0050】
パイロットポンプ27の吐出側にはリリーフ弁28が設けられており、パイロットポンプ27の吐出圧の上限値を規定するようになっている。また、パイロットポンプ27と上述した第1〜第4のパイロット弁及び電磁比例弁41a,41b,42a〜42d,43a〜43d,44a,44bとの間には、ゲートロック弁29が設けられている。
【0051】
ゲートロックレバー16が上昇位置(ロック位置)に操作された場合は、スイッチが開成され、ゲートロック弁29のソレノイド部が励磁されないため、ゲートロック弁29が図中下側の中立位置となる。これにより、パイロットポンプ27から上述した第1〜第4のパイロット弁及び電磁比例弁41a,41b,42a〜42d,43a〜43d,44a,44bへの圧油供給を遮断する。したがって、油圧アクチュエータが作動不能となる。一方、ゲートロックレバー16が下降位置(ロック解除位置)に操作された場合は、スイッチが閉成され、ゲートロック弁29のソレノイド部が励磁されるため、ゲートロック弁29が図中上側の切替位置となる。これにより、パイロットポンプ27から上述した第1〜第4のパイロット弁及び電磁比例弁41a,41b,42a〜42d,43a〜43d,44a,44bへ圧油を供給する。したがって、油圧アクチュエータが作動可能となる。
【0052】
次に、本実施形態の要部である制御装置100の詳細について説明する。
図3は、本実施形態における制御装置100の機能的構成を表すブロック図である。
【0053】
本実施形態の制御装置100は、上述した第1〜第8のポテンションメータにそれぞれ対応する8個の(
図3では代表して1個のみ示す)目標パイロット圧演算部110と、電磁比例弁41a,41b,42a〜42d,43a〜43d,44a,44bにそれぞれ対応する12個の(
図3では代表して1個のみ示す)指令電流演算部111とを有している。
【0054】
各目標パイロット圧演算部110は、
図4で示すような操作レバーの操作量(言い換えれば、操作信号)と目標パイロット圧の関係を用いて、対応するポテンションメータから入力された操作信号に対し目標パイロット圧を演算し、対応する1個又は2個の指令電流演算部111へ目標パイロット圧を出力する。なお、操作レバーの操作量と目標パイロット圧の関係は、油圧パイロット方式の操作装置を採用した場合と同様のものを用いることが好ましい。
【0055】
各指令電流演算部111は、
図5で示すような目標パイロット圧と目標電流の関係を用いて、対応する目標パイロット圧演算部110から入力された目標パイロット圧に対し目標電流を演算し、対応する電磁比例弁のソレノイド部へ指令電流として目標電流を出力する。
【0056】
ここで、本実施形態の大きな特徴として、バケットシリンダ7に係わる(すなわち、バケット用電磁比例弁44a,44bにそれぞれ対応する)2個の指令電流演算部111のみ、指令電流を補正する機能を有している。詳細には、作業用操作装置2bの中立位置からの左側又は右側の操作開始時に、予め設定された所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する機能を有している。すなわち、作業用操作装置2bの中立位置からの左側又は右側の操作開始時に、
図6(及び後述の
図8)で示すように、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定された指令電流の補正値(以降、プリチャージ電流という)yを、バケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へ出力するようになっている。この補正機能に関する処理手順を、
図7を用いて説明する。
【0057】
まず、ステップS210において、バケットシリンダ7に係わる指令電流演算部111は、バケット用圧力センサ34a又は34bで検出された実パイロット圧(言い換えれば、バケット用電磁比例弁44a又は44bで生成されたパイロット圧)が予め設定された所定の閾値x[MPa]以下であるかを判定する。バケット用圧力センサ34a又は34bで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である場合は、ステップS210の判定がYESとなり、ステップS220に進み、タイマ時間をカウントアップする。その後、ステップS230に進み、目標パイロット圧演算部110から入力された目標パイロット圧が0より大きく、かつ、タイマ時間が予め設定された所定の時間t以上であるかを判定する。目標パイロット圧が0である場合、若しくはタイマ時間が所定の閾値t未満である場合は、ステップS230の判定がNOとなり、前述のステップS210に戻って上記同様の手順を繰り返す。
【0058】
なお、ステップS210にてバケット用圧力センサ34a又は34bで検出された実パイロット圧が所定の閾値xより大きい場合は、その判定がNOとなり、ステップS240に進み、タイマ時間をリセットする。
【0059】
そして、目標パイロット圧が0より大きく、かつ、タイマ時間が所定の閾値t以上となれば、ステップS230の判定がYESとなり、ステップS250に移る。ステップS250では、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。すなわち、バケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へプリチャージ電流yを所定時間出力する。
【0060】
次に、本実施形態の動作を、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8及び
図9は、バケットシリンダ7に係わる操作レバーの操作量、目標パイロット圧、実パイロット圧、及び指令電流の経時変化を表すタイムチャートである。なお、
図8においては、指令電流を補正しない場合(言い換えれば、プリチャージ電流yを出力しないで、目標電流を出力する場合)の指令電流及び実パイロット圧の経時変化も表している。
【0061】
図8では、操作レバーが中立位置にあって目標パイロット圧が0であり、実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続している(時刻t1’以前)。すなわち、電磁比例弁のスプールが閉じきるため、スプールの初動が遅くなる状態である。そして、時刻t1’で操作レバーが操作されると、ポテンションメータ及び目標パイロット圧演算部110による時間遅れにて、時刻t2’で目標パイロット圧が指令電流演算部111に入力される。そして、上述の
図9のステップS230の判定がYESとなってステップ250に進み、指令電流演算部111からバケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へプリチャージ電流yを所定時間出力し、その後、目標電流を出力する。これにより、プリチャージ電流yを出力しないで、最初から目標電流を出力する場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、バケットシリンダ7の初動応答を早くすることができる。
【0062】
図9では、操作レバーが所定の操作位置から中立位置に戻される間に(時刻t3’から時刻t4’の間に)、目標パイロット圧が減少する。実パイロット圧も減少して、所定の閾値x以下となる。しかし、操作レバーが中立位置に戻されてから、すぐに再操作されるので、実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続しない。すなわち、電磁比例弁のスプールが閉じきらないため、スプールの初動が遅くならない状態である。そして、上述の
図9のステップS230の判定がNOとなるため、指令電流演算部111からバケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へ目標電流を出力する。
【0063】
以上のような本実施形態においては、バケットシリンダ7の初動応答のみを早くすることができる。したがって、油圧パイロット方式を採用した場合とほぼ同様に、油圧アクチュエータの種類に応じて異なる初動応答を確保することができる。その結果、オペレータが違和感なく、操作することができる。
【0064】
本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0065】
本実施形態の制御装置100では、バケットシリンダ7に係わる(すなわち、バケット用電磁比例弁44a,44bにそれぞれ対応する)2個の指令電流演算部111だけでなく、アームシリンダ6に係わる(すなわち、アーム用電磁比例弁43a〜43dにそれぞれ対応する)4個の指令電流演算部111、ブームシリンダ5に係わる(すなわち、ブーム用電磁比例弁42a〜42dにそれぞれ対応する)4個の指令電流演算部111、及び旋回モータ4に係わる(すなわち、旋回用電磁比例弁41a,41bにそれぞれ対応する)2個の指令電流演算部111も、指令電流を補正する機能を有している。以下、詳述する。
【0066】
バケットシリンダ7に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置2bの中立位置からの左側又は右側の操作開始時に(詳細には、第1の実施形態と同様、バケット用圧力センサ34a又は34bで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、予め設定された所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。すなわち、
図10で示すように、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y1を、バケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y1を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、バケットシリンダ7の初動応答を早くすることができる。
【0067】
アームシリンダ6に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置2aの中立位置からの左側又は右側の操作開始時に(詳細には、アーム用圧力センサ33a,33b又は33c,33dで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。すなわち、
図10で示すように、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y2(但し、y1>y2)を、アーム用電磁比例弁43a,43b又は43c,43dのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y2を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、アームシリンダ6の初動応答を早くすることができる。
【0068】
ブームシリンダ5に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置2bの中立位置からの前側又は後側の操作開始時に(詳細には、ブーム用圧力センサ32a,32b又は32c,32dで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。すなわち、
図10で示すように、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y3(但し、y2>y3)を、ブーム用電磁比例弁42a,42b又は42c,42dのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y3を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、ブームシリンダ5の初動応答を早くすることができる。
【0069】
旋回モータ4に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置2aの中立位置からの前側又は後側の操作開始時に(詳細には、旋回用圧力センサ31a又は31bで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。すなわち、図示しないが、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y0(但し、y0はy3と同じくらい)を、旋回用電磁比例弁41a又は41bのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y0を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、旋回モータ4の初動応答を早くすることができる。
【0070】
そして、上述したプリチャージ電流の関係(y1>y2>y3)から、バケットシリンダ7の初動応答>アームシリンダ6の初動応答>ブームシリンダ5の初動応答の関係、すなわち油圧パイロット方式の操作感と同様の操作感を実現する初動応答の関係を得ることができる。したがって、油圧パイロット方式を採用した場合とほぼ同様に、油圧アクチュエータの種類に応じて異なる初動応答を確保することができる。その結果、オペレータは、電気レバー方式の操作装置を用いても、油圧パイロット方式を採用した場合と比べ違和感なく、操作することができる。
【0071】
本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1及び第2の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0072】
図11は、本実施形態における制御装置の機能的構成を表すブロック図である。
【0073】
本実施形態の制御装置100Aは、上記制御装置100と同様、目標パイロット圧演算部110と、指令電流演算部111とを有している。さらに、モード制御部112を有し、手動制御モードと自動制御モードを選択的に実行する機能を有している。
【0074】
運転室14内の設定装置113は、オペレータの操作により、手動制御モード及び自動制御モードのうちの一方を選択するとともに、自動制御モードを選択した場合の制御パラメータを入力可能としている。手動制御モードが選択された場合、設定装置113からモード制御部112及び各指令電流演算部111に手動制御モードの設定指令が出力され、自動制御モードが選択された場合、設定装置113からモード制御部112及び各指令電流演算部111に自動制御モードの設定指令が出力される。
【0075】
手動制御モードとは、操作装置2a,2bの操作通りに、旋回モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及びバケットシリンダ7を駆動させるためのモードである。自動制御モードとは、操作装置2a,2bの操作に基づき、上部旋回体11、ブーム17、アーム18、及びバケット19のうちのいずれかの動作を制限又は調整するように旋回モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及びバケットシリンダ7を駆動させるモードである。自動制御モードの具体例としては、バケット19の移動範囲を制限するモードや、バケット19の移動軌跡を調整するモードがある。
【0076】
モード制御部112は、手動制御モードが設定されていれば、作業用操作装置2a,2bからの操作信号をそのまま、各目標パイロット圧演算部110に出力する。一方、自動制御モードが設定されていれば、センサの検出値に基づいて上部旋回体11、ブーム17、アーム18、バケット19のうちのいずれかの動作位置を演算する。さらに、作業用操作装置2a,2bからの操作信号に基づき、上部旋回体11、ブーム17、アーム18、及びバケット19のうちのいずれかの動作を制限又は調整するための指令信号を演算し、演算した指令信号を対応する目標パイロット圧演算部110に出力する。
【0077】
バケットシリンダ7に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置の中立位置からの操作開始時に(詳細には、バケット用圧力センサ34a又は34bで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、予め設定された所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。このとき、手動制御モードが設定されていれば、第2の実施形態と同様、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y1を、バケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へ出力する。一方、自動制御モードが設定されていれば、
図12で示すように、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y4(但し、y4>y1)を、バケット用電磁比例弁44a又は44bのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y1又はy4を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、バケットシリンダ7の初動応答を早くすることができる。
【0078】
アームシリンダ6に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置の中立位置からの操作開始時に(詳細には、アーム用圧力センサ33a,33b又は33c,33dで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。このとき、手動制御モードが設定されていれば、第2の実施形態と同様、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y2(但し、y1>y2)を、アーム用電磁比例弁43a,43b又は43c,43dのソレノイド部へ出力する。一方、自動制御モードが設定されていれば、所定時間、プリチャージ電流y4(但し、y4>y2)を、アーム用電磁比例弁43a,43b又は43c,43dのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y2又はy4を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、アームシリンダ6の初動応答を早くすることができる。
【0079】
ブームシリンダ5に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置の中立位置からの操作開始時に(詳細には、ブーム用圧力センサ32a,32b又は32c,32dで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。このとき、手動制御モードが設定されていれば、第2の実施形態と同様、所定時間、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y3(但し、y2>y3)を、ブーム用電磁比例弁42a,42b又は42c,42dのソレノイド部へ出力する。一方、自動制御モードが設定されていれば、所定時間、プリチャージ電流y4(但し、y4>y3)を、ブーム用電磁比例弁42a,42b又は42c,42dのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y3又はy4を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、ブームシリンダ5の初動応答を早くすることができる。
【0080】
旋回モータ4に係わる指令電流演算部111は、作業用操作装置の中立位置からの操作開始時に(詳細には、旋回用圧力センサ31a又は31bで検出された実パイロット圧が所定の閾値x以下である状態が所定の時間t以上継続し、かつ、目標パイロット圧演算部から入力された目標パイロット圧が0より大きいときに)、所定時間、目標電流より大きくなるように指令電流を補正する。このとき、手動制御モードが設定されていれば、第2の実施形態と同様、目標電流より大きくなるように予め設定されたプリチャージ電流y0(但し、y0はy3と同じくらい)を、旋回用電磁比例弁41a又は41bのソレノイド部へ出力する。一方、自動制御モードが設定されていれば、所定時間、プリチャージ電流y4(但し、y4>y0)を、旋回用電磁比例弁41a又は41bのソレノイド部へ出力する。これにより、プリチャージ電流y0又はy4を出力しない場合と比べ、実パイロット圧の立上りを早めることができる。したがって、旋回モータ4の初動応答を早くすることができる。
【0081】
以上のような本実施形態においては、手動制御モードでは、第2の実施形態と同様、プリチャージ電流の関係(y1>y2>y3)から、バケットシリンダ7の初動応答>アームシリンダ6の初動応答>ブームシリンダ5の初動応答の関係、すなわち油圧パイロット方式の操作感と同様の操作感を実現する初動応答の関係を得ることができる。したがって、油圧パイロット方式を採用した場合とほぼ同様に、油圧アクチュエータの種類に応じて異なる初動応答を確保することができる。その結果、オペレータは、電気レバー方式の操作装置を用いても、油圧パイロット方式を採用した場合と比べ違和感なく、操作することができる。
【0082】
一方、自動制御モードでは、オペレータの操作性よりも、各油圧アクチュエータの応答性を優先している。すなわち、手動制御モードよりも、プリチャージ電流が大きく、各油圧アクチュエータの初動応答を高めることができる。したがって、作業効率を高めることができる。
【0083】
なお、第3の実施形態においては、バケットシリンダ7、アームシリンダ6、ブームシリンダ5、及び旋回モータ4にそれぞれ係わる指令電流演算部111は、自動制御モードが設定されていれば、プリチャージ電流y4を出力する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、バケットシリンダ7、アームシリンダ6、ブームシリンダ5、及び旋回モータ4にそれぞれ係わる指令電流演算部111のうちのいずれかは、自動制御モードが設定されていれば、プリチャージ電流y4を出力し、残りは、自動制御モードが設定されていても、手動制御モードと同じプリチャージ電流を出力してもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0084】
なお、第1〜第3の実施形態においては、油圧パイロット方式の走行用操作装置を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、電気レバー方式の走行用操作装置を備えてもよい。
【0085】
また、第1〜第3の実施形態においては、本発明の適用対象として油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、他の建設機械に適用してもよい。具体的には、例えばホイールローダであって、複数の油圧ポンプと、油圧ポンプから単体のバケットシリンダへの圧油の流れを制御する単体のバケット用方向制御弁と、単体のバケット用方向制御弁を操作するためのパイロット圧を生成して出力する一対のバケット用電磁比例弁と、複数の油圧ポンプから単体のアームシリンダへの圧油の流れを制御する複数のアーム用方向制御弁と、複数のアーム用方向制御弁をそれぞれ操作するためのパイロット圧を生成して出力する複数対のアーム用電磁比例弁と、バケットシリンダを操作するための第1操作信号を出力するとともに、アームシリンダを操作するための第2操作信号を出力する電気レバー方式の操作装置と、操作装置からの第1操作信号に応じてバケット用電磁比例弁を駆動するための第1指令電流を出力するとともに、操作装置からの第2操作信号に応じてアーム用電磁比例弁を駆動するための第2指令電流を出力する制御装置と、を備えたものに適用してもよい。
【0086】
上述したホイールローダに適用した場合、制御装置は、操作装置の中立位置からの操作開始時に、予め設定された所定時間、操作装置の操作量に対応する目標電流より大きくなるように指令電流を補正する補正機能を有している。そして、制御装置の補正機能は、第1の実施形態と同様、バケットシリンダを駆動するための第1指令電流を補正対象とし、アームシリンダを駆動するための第2指令電流を補正対象としなくてもよい。あるいは、第2の実施形態と同様、第1指令電流の補正値z1が第2指令電流の補正値z2より大きくなるように補正してもよい。さらに、第3の実施形態と同様、自動制御モードの場合に、第1指令電流及び第2指令電流を、補正値z1,z2よりも大きい補正値z3に補正してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。