(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機化合物(α)が、フッ素原子含有(メタ)アクリレートとアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートを少なくとも1種類ずつ共重合成分として含む重量平均分子量1000以上の共重合体(I)である請求項1〜4のいずれかに記載の親水撥油性付与剤。
共重合体(I)におけるアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートのフッ素原子含有(メタ)アクリレートに対するモル比率が30〜1500モル%である請求項5〜7のいずれか1項に記載の親水撥油性付与剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<親水撥油性付与剤>
本発明の親水撥油性付与剤は親水撥油性を付与することができる表面改質剤であって、樹脂材料の添加剤の分野で最小単位として取り引きされ得る添加剤である。詳しくは、本発明の親水撥油性付与剤は、溶媒に溶解させて塗布することにより、該親水撥油性付与剤自体が親水撥油性を備えた塗膜を形成することもできるし、塗膜や成形体中へ添加することにより、塗膜や成形体の表面に親水撥油性を発現させることもできる。
【0012】
本発明の親水撥油性付与剤は以下で説明する特定の有機化合物(α)と特定のリン酸エステル化合物(β)からなる。本発明の親水撥油性付与剤は、親水撥油性を付与する限り、有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)のみからなっていてもよいし、またはこのような有機化合物(α)およびリン酸エステル化合物(β)以外に、親水撥油性に影響を与えない他の成分をさらに含有してもよい。
【0013】
[有機化合物(α)]
有機化合物(α)は分子中、フッ素原子およびアルキレンオキサイド基を有する有機化合物である。フッ素原子およびアルキレンオキサイド基はそれぞれ通常、有機化合物(α)の分子中、共有結合により結合されている。
【0014】
フッ素原子は通常、フッ素原子含有炭化水素基、例えば、フッ素原子含有アルキル基、フッ素原子含有アルケニル基またはこれらの混合基から由来する。
【0015】
フッ素原子含有アルキル基は、炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9のアルキル基において、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは半数以上、最も好ましくは全ての水素原子がフッ素原子により置換された基である。撥油性の観点から好ましいフッ素原子含有アルキル基はパーフルオロアルキル基である。
【0016】
フッ素原子含有アルキル基、特にパーフルオロアルキル基、は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。パーフルオロアルキル基の具体例としては、例えば、CF
3−、C
2F
5−、n−C
3F
7−、iso−C
3F
7−、n−C
4F
9−、iso−C
4F
9−、sec−C
4F
9−、tert−C
4F
9−、CF
3(CF
2)
m1−(m1は4〜10の整数)、(CF
3)
2CF(CF
2)
m2−(m2は1〜8の整数)等を挙げることができる。好ましいパーフルオロアルキル基はCF
3(CF
2)
m3−(m3は2〜8の整数)である。
【0017】
フッ素原子含有アルケニル基は、炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9のアルケニル基において1以上、好ましくは2以上、より好ましくは半数以上、最も好ましくは全ての水素原子がフッ素原子により置換された基である。撥油性の観点から好ましいフッ素原子含有アルケニル基はパーフルオロアルケニル基である。
【0018】
フッ素原子含有アルケニル基、特にパーフルオロアルケニル基、は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、好ましくは分枝鎖状である。パーフルオロアルケニル基の具体例としては、例えば、C
m4F
2(m4)−1−(m4は上記パーフルオロアルケニル基の炭素原子数と同じ値である)で表される1価の基が挙げられる。好ましいパーフルオロアルケニル基は下記式(i)〜(iii)で表される基であり、より好ましいパーフルオロアルケニル基は下記式(i)および(ii)で表される基の混合基である(下記式において*は当該基の結合手を示す:
【0020】
有機化合物(α)は、撥油性のさらなる向上の観点から、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基またはこれらの混合基を有することが好ましい。
【0021】
有機化合物(α)の分子量に占めるフッ素原子の合計量の割合は通常、3重量%以上、特に3〜70重量%であり、好ましくは3〜60重量%である。当該フッ素原子の割合は、有機化合物(α)の分子量として後述の分子量を用いた値である。
【0022】
有機化合物(α)が有するアルキレンオキサイド基は、炭素原子数2〜5、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基である。アルキレンオキサイド基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、2種類以上のアルキレンオキサイド基が組み合わさっていても良い。アルキレンオキサイド基の具体例としては、例えば−CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2O−、−CH
2CH
2CH
2O−、−CH(CH
2CH
3)CH
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2CH
2O−等が挙げられる。好ましいアルキレンオキサイド基は−CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2O−、−CH(CH
2CH
3)CH
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2CH
2O−、またはこれらの混合基である。より好ましいアルキレンオキサイド基は−CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2O−、またはこれらの混合基である。
【0023】
アルキレンオキサイド基は通常、上記アルキレンオキサイド基が複数個で連結されたポリアルキレンオキサイド基として有機化合物(α)中、含有される。ポリアルキレンオキサイド基は、上記したアルキレンオキサイド基からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。ポリアルキレンオキサイド基が2種以上のアルキレンオキサイド基の混合基である場合、当該2種以上のアルキレンオキサイド基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましいポリアルキレンオキサイド基は、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0024】
有機化合物(α)の分子量に占めるアルキレンオキサイド基の合計量の割合は通常、10重量%以上、特に10〜85重量%であり、好ましくは10〜80重量%である。当該アルキレンオキサイド基の割合は、有機化合物(α)の分子量として後述の分子量を用いた値である。
【0025】
有機化合物(α)は、フッ素原子およびアルキレンオキサイド基以外のあらゆる基をさらに有していてもよい。
【0026】
有機化合物(α)の重量平均分子量は通常、300以上、特に300〜100000であり、好ましくは300〜30000である。本明細書中、重量平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーにより測定された値である。
【0027】
有機化合物(α)として、以下に説明する共重合体(I)もしくは有機化合物(II)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
(共重合体(I))
共重合体(I)はフッ素原子含有(メタ)アクリレートとアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートを少なくとも1種類ずつ共重合成分として含む共重合体である。
【0029】
フッ素原子含有(メタ)アクリレートはフッ素原子および(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するラジカル重合性モノマーであれば特に制限されず、例えば、下記式(Ia)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
式(Ia)中、Rfはフッ素原子含有炭化水素基、例えば、有機化合物(α)の説明において前記したフッ素原子含有アルキル基もしくはフッ素原子含有アルケニル基またはこれらの混合基である。望ましい実施形態においてRfは、有機化合物(α)の説明において前記したパーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基または混合基である。より望ましい実施形態においてRfは炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。Rfは上記した基からなる群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。
【0032】
式(Ia)においてパーフルオロアルキル基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
パーフルオロアルケニル基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のパーフルオロアルケニル基が挙げられる。
【0033】
Y
1は、単結合、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−CONH−または−NHCO−)、スルホン酸エステル結合(−SO
2−O−または−O−SO
2−)、スルホンアミド結合(−SO
2NH−または−NHSO
2−)、エーテル結合(−O−)またはチオエーテル結合(−S−)を示す。好ましいY
1は、単結合またはエーテル結合である。
【0034】
R
1は水素原子またはメチル基を示す。
R
2は炭素原子数が1〜50、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜18、最も好ましくは2〜10のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状または分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。アルキレン基としては、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
mは0〜2の整数である。
【0035】
R
3は炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜6のアルキレン基、または炭素原子数6〜12、好ましくは6〜10のアリーレン基である。アルキレン基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。アルキレン基としては、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。アルキレン基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、フェニル基またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。アリーレン基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、フェニル基またはナフチル基等のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。
【0036】
Y
2は、単結合、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−CONH−または−NHCO−)、スルホン酸エステル結合(−SO
2−O−または−O−SO
2−)、スルホンアミド結合(−SO
2NH−または−NHSO
2−)、エーテル結合(−O−)またはチオエーテル結合(−S−)を示す。好ましいY
2は、エステル結合である。
【0037】
式(Ia)で表される化合物の具体例として下記式で表される化合物が挙げられる。下記式中、Rf’は共通して前記式(i)で表される基と前記式(ii)で表される基との混合基であり、Phはフェニレン基である。
【0039】
式(Ia)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。例えば、化合物(ia−2)、化合物(ia−3)は特開2009−197080号公報に記載の製造方法で製造することができる。具体的には、4−ヒドロキシブチルアクリレートとヘキサフルオロプロペントリマーを反応させることにより化合物(ia−3)を製造することができる。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとC
9F
17O−C
6H
4−C(=O)Clを反応させることにより、化合物(ia−2)を製造することができる。式(Ia)で表される化合物の市販品として、ダイキン工業社製2−(perfluorohexyl)ethyl acrylate(化合物(ia−5))、ダイキン工業社製2−(perfluorohexyl)ethyl methacrylate(化合物(ia−6))等が入手可能である。
【0040】
アルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートは、アルキレンオキサイド基および(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するラジカル重合性モノマーであれば特に制限されず、例えば、下記式(Ib)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
式(Ib)中、R
4は水素原子またはメチル基を示す。
AOは有機化合物(α)の説明において前記したアルキレンオキサイド基である。望ましい実施形態においてAOは炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0043】
nは2〜25、好ましくは2〜16の範囲内の値を示すが、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。nが1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。
【0044】
(AO)nで表されるポリアルキレンオキサイド基は、上記したAO基からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(AO)nで表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(AO)nは、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0045】
Wは炭素原子数1〜4、好ましくは1〜2のアルコキシ基、炭素原子数6〜12、好ましくは6〜10のアリール基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、またはメルカプト基を示す。アルコキシ基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。アルコキシ基としては、例えばCH
3O−、CH
3CH
2O−、CH
3CH(CH
3)O−、CH
3CH
2CH
2O−、CH
3CH
2CH
2CH
2O−等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、置換基としてハロゲン原子、アリール基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等の置換基を有しても良い。好ましいWは炭素原子数1〜4、特に1〜2のアルコキシ基、または水酸基である。
【0046】
式(Ib)で表される化合物の具体例として下記化合物が挙げられる:
ポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒10) (ib−1);
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒10) (ib−2);
メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒9) (ib−3);
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒9) (ib−4);
ポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒4.5) (ib−5);
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2) (ib−6);
ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n≒9) (ib−7);
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n≒9) (ib−8);
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n≒6) (ib−9);
ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n≒7)(EOの繰り返し単位数≒5、POの繰り返し単位数≒2) (ib−10);
ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート(n≒7) (ib−11);
ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタクリレート(n≒15) (ib−12);
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒4) (ib−13)。
【0047】
式(Ib)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。式(Ib)で表される化合物の市販品として、日油(株)社製ブレンマーAE−400(ib−1)、日油(株)社製ブレンマーAME−400(ib−3)、日油(株)社製ブレンマーAE−200(ib−5)、日油(株)社製ブレンマーPP−500(ib−7)、日油(株)社製ブレンマー70PEP−350B(ib−10)、日油(株)社製ブレンマー55PET−800(ib−12)、日油(株)社製ブレンマーPME−400(ib−4)、日油(株)社製フェノキシポリエチレングリコール−メタクリレート(ブレンマーPAE50、PAE100等)、フェノキシポリエチレングリコール−アクリレート(ブレンマーAAE50、AAE300等)、フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(ブレンマー43APE−600B等)、ダイセル・オルネクス(株)社製EBECRYL110、新中村化学工業(株)社製AM−90G、AM−130G、M−90G、M−230G、フェノキシエチレングリコールメタクリレート(NKエステル PHE−1G等)、フェノキシエチレングリコールアクリレート(NKエステル AMP−10G等)、フェノキシポリエチレングリコール−アクリレート(NKエステル AMP−20GY等)、大阪有機化学工業(株)社製V−MTG、V#190、東亞合成(株)社製M−102、M−113、共栄社化学(株)社製ライトエステルBC、ライトエステルMTG、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、日立化成工業(株)製FA−400M、等が挙げられる。
【0048】
共重合体(I)においてフッ素原子含有(メタ)アクリレートとアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートとの共重合比は、当該共重合体(I)を後述するリン酸エステル化合物(β)とともに使用することにより、親水撥油性を発現させ得る限り特に制限されない。アルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートのフッ素原子含有(メタ)アクリレートに対するモル比率は通常、30〜1500モル%であり、好ましくは100〜1200モル%、より好ましくは200〜1000モル%である。フッ素原子含有(メタ)アクリレートおよびアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートはそれぞれ独立して、構造が異なる2種以上のものを共重合成分として共重合体(I)に含有させてもよく、その場合、それらの合計量について上記モル比率を満たせば良い。
【0049】
共重合体(I)にはフッ素原子含有(メタ)アクリレートおよびアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレート以外に、他のラジカル重合性単量体を共重合成分として含有させてもよい。他のラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基等からなる群から選択される少なくとも1種のラジカル重合性基を有する限り特に限定されるものではない。
【0050】
他のラジカル重合性単量体としては、例えば、親水性基含有単量体、炭化水素基含有単量体等が挙げられる。
【0051】
親水性基含有単量体としては、カルボキシル基、リン酸基、水酸基、スルホニル基、アミノ基、アンモニウム塩基等の親水性基を含有する(メタ)アクリレート単量体である。
【0052】
親水性基含有単量体の具体例として、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(化合物(ic−1))、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(化合物(ic−2))、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学工業(株)製:NKエステル SAおよびNKエステル A−SA等)、メタクリル酸およびアクリル酸(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートHOA−MSおよびHOA−HH)、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーGLM等)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(日油(株)製:ブレンマーE、大阪有機化学工業(株)製:HEA等)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(日油(株)製:ブレンマーP、大阪有機化学工業(株)製:HPA等)、N、N、N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド(日油(株)製:ブレンマーQA等)、カチオン系アクリルモノマー(興人(株)製:DMAEA、DMAEA−Q、DMAPAAおよびDMAPAA−Q)、アニオン系アクリルモノマー(2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(新中村化学工業(株)製:NKエステル ACB−3等))、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学工業(株)製:NKエステル SAおよびNKエステル A−SA等)、メタクリル酸、アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製:M−5400、共栄社化学(株)製:ライトアクリレートHOA−MS、HOA−HHならびにライトエステルP−1MおよびP−1A、)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成(株)製:4HBA、大阪有機化学工業(株)製:4−HBA等)、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。
親水性基含有単量体としては、後述するリン酸エステル化合物(β)において例示される式(a3)で表される化合物を使用することもできる。
【0053】
親水性基含有単量体を共重合体(I)に含有させることにより、親水性基を共重合体(I)に導入することができるので、従来公知の極性溶剤成分、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、カービトール類、グリコール類、アセテート類等の溶媒に対する共重合体(I)の溶解度が向上する。
【0054】
炭化水素基含有単量体としては、アルキル基、アルケニル基、ベンジル基、フェニル基、シクロアルキル基等の炭化水素基を含有する(メタ)アクリレート単量体である。
【0055】
炭化水素基含有単量体の具体例として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーG等)、シクロヘキシルメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーCHMA等)、シクロヘキシルアクリレート(日油(株)製:ブレンマーCHA等)、2−エチルヘキシルメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーEHMA−25等)、4−tert−ブチルヘキシルメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーTBCHMA等)、4−tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート(日油(株)製:ブレンマーTBCHA等)、t−ブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製:TBA等)、イソオクチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製:IOAA)、デシルメタクリレート(日油(株)製:ブレンマーDMA等)、ラウリル(メタ)アクリレート(日油(株)製:ブレンマーLMA、SLMAおよびブレンマーLA、新中村化学工業(株)製:NKエステル LA、大阪有機化学工業(株)製:LA等)、セチル(メタ)アクリレート(日油(株)製:ブレンマーCMAおよびブレンマーCA等)、ステアリル(メタ)アクリレート(日油(株)製:ブレンマーSMAおよびブレンマーSA、新中村化学工業(株)製:NKエステル S、S−1800MおよびS−1800A、大阪有機化学工業(株)製:STA等)、ベヘニル(メタ)アクリレート(日油(株)製 商品名:ブレンマーVMA等)、ベヘニルアクリレート(日油(株)製:ブレンマーVA、新中村化学工業(株)製:NKエステル A−BH等)、イソボロニル(メタ)アクリレート(新中村化学工業(株)製:NKエステルおよびIB、A−IB、大阪有機化学工業(株)製:IBXA等)、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(日油(株)製:ブレンマー50POPE−800B等)、ラウロキシポリエチレングリコール−メタクリレート(日油(株)製:ブレンマーPLE200等)、ラウロキシポリエチレングリコール−アクリレート(日油(株)製:ブレンマーALE等)、ステアロキシポリエチレングリコール−メタクリレート(日油(株)製:ブレンマーPSE400およびPSE1300等)、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成工業(株)製:FA−511A等)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製:FA−513MおよびFA−513A等)、ジシクロペンテニルオキシエシルエチル(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製:FA−512M、FA−512MTおよびFA−512A等)、ベンジル(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製:FA−BZMおよびFA−BZA等)、ノニルフェノキシ−ポリエチレングリコール−アクリレート(日油(株)製:ブレンマーANE1300、日立化成工業(株)製:FA−314AおよびFA−318A等)、ノニルフェノキシ−ポリプロピレングリコール−アクリレート(日油(株)製:ブレンマーANP300等)、ノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)−アクリレート(日油(株)製:ブレンマー75ANEP−600等)、ペンタメチルピペリジルメタクリレート(日立化成工業(株)製:FA−711MM等)、テトラメチルピペリジルメタクリレート(日立化成工業(株)製:FA−712HM等)等が挙げられる。
【0056】
炭化水素基含有単量体を共重合体(I)に含有させることにより、炭化水素基を共重合体(I)に導入することができるので、従来公知の極性溶剤成分、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、カービトール類、グリコール類、アセテート類等の溶媒に対する共重合体(I)の溶解度が向上する。
【0057】
他のラジカル重合性単量体のフッ素原子含有(メタ)アクリレートに対するモル比率は通常、1000モル%以下、好ましくは400モル%以下である。共重合体(I)には構造が異なる2種以上の他のラジカル重合性単量体を共重合成分として含有させてもよく、その場合、それらの合計量について上記モル比率を満たせば良い。
【0058】
共重合体(I)の重量平均分子量は通常、1000以上、特に1000〜100000であり、好ましくは3000〜30000である。
【0059】
共重合体(I)の分子量に占めるフッ素原子の合計量の割合は、親水撥油性のさらなる向上の観点から、3〜40重量%が好ましく、より好ましくは3〜30重量%であり、最も好ましくは5〜18重量%である。
【0060】
共重合体(I)の分子量に占めるアルキレンオキサイド基の合計量の割合は、親水撥油性のさらなる向上の観点から、20〜80重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%であり、最も好ましくは40〜80重量%である。
【0061】
共重合体(I)は、所定のモノマーを公知の方法で重合させることにより製造することができる。重合方法は特に制限されないが、具体例として、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられる。溶液重合法が特に好ましい。
【0062】
(有機化合物(II))
有機化合物(II)は、フッ素原子およびアルキレンオキサイド基を有する有機化合物であって、下記式(II)で表される化合物である。
【0064】
式(II)中、R
10は、炭素原子数1〜12、好ましくは1〜8の1〜4価アルコールの水酸基から水素原子を取り除いた残基、炭素原子数2〜6、好ましくは3〜4のモノまたはジカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を取り除いた残基またはこれらの混合基である。
【0065】
残基R
10を提供するアルコールは飽和または不飽和脂肪族炭化水素化合物に1〜4個の水酸基を導入したものであり、エーテル基を含有していてもよい。当該アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の1価飽和脂肪族アルコール;アリルアルコール、クロチルアルコール等の1価不飽和脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール等の2価飽和脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタグリセロール等の3価飽和脂肪族アルコール;ペンタエリスリトール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテル[ジグリセリン]等の4価飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。当該アルコールが2〜4価アルコールの場合、R
10は、当該アルコールの全部の水酸基から水素原子を取り除いた残基である。残基R
10を提供する好ましいアルコールは、1価飽和脂肪族アルコール、2価飽和脂肪族アルコール、3価飽和脂肪族アルコール、4価飽和脂肪族アルコールまたはこれらの混合物である。
【0066】
残基R
10を提供するモノまたはジカルボン酸は飽和または不飽和脂肪族のモノまたはジカルボン酸である。当該カルボン酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、trans−2−ブテン酸、cis−2−ブテン酸、3−ブテン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。当該カルボン酸がジカルボン酸の場合、R
10は、当該ジカルボン酸の全部のカルボキシル基から水素原子を取り除いた残基である。残基R
10を提供する好ましいカルボン酸は、不飽和脂肪族モノカルボン酸またはその混合物である。
【0067】
A
10Oは有機化合物(α)の説明において前記したアルキレンオキサイド基である。望ましい実施形態においてA
10Oは炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0068】
n1はアルキレンオキサイド基の繰り返し単位数であり、有機化合物(II)の分子中に含まれるアルキレンオキサイド基の繰り返し単位の合計数が2〜60、好ましくは2〜45となるような値であればよい。後述するn3が2以上の場合、複数のn1はそれぞれ独立して通常、0〜60、好ましくは2〜25の範囲内の値を示すが、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。有機化合物(II)の分子中に含まれるアルキレンオキサイド基の繰り返し単位の合計数が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。
【0069】
(A
10O)
n1で表されるポリアルキレンオキサイド基は、上記したA
10Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
10O)
n1で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
10O)
n1は、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0070】
Y
10は2価または3価の有機基である。
2価のY
10として、例えば、単結合、−O−、−C(=O)−、−SO
2−、フェニレン基、−Ph−O−、−O−Ph−O−、−O−Ph−C(=O)−O−、−O−Ph−C(=O)−、−Ph−C(=O)−、−O−Ph−Ph−C(=O)−[式中、Phはフェニレン基である]、−O−NAP−C(=O)−[式中、NAPはナフチレン基である]等が挙げられる。好ましい2価のY
10は単結合である。
【0071】
3価のY
10として、例えば、下記式(r);
【化7】
で表される基が挙げられる。上記式において*は当該基の結合手を示す。上記式(r)において結合手を提供するカルボニル基およびエーテル基はベンゼン環のいずれの炭素原子に結合していてもよく、好ましくはベンゼン環の1,3および5位の炭素原子にそれぞれ結合している。カルボニル基により提供される結合手はA
10Oに結合されることが好ましく、エーテル基により提供される結合手は後述のRf
10に結合されることが好ましい。
【0072】
好ましいY
10は単結合または上記式(r)の基である。
【0073】
n2はY
10の価数によって決まる値であり、Y
10の価数をk(kは2または3である)としたとき、k−1である。すなわち、n2は1または2であり、Y
10が2価のとき、n2は1であり、Y
10が3価のとき、n2は2である。
【0074】
Rf
10はフッ素原子含有炭化水素基、例えば、有機化合物(α)の説明において前記したフッ素原子含有アルキル基もしくはフッ素原子含有アルケニル基またはこれらの混合基である。望ましい実施形態においてRf
10は、有機化合物(α)の説明において前記したパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である)。より望ましい実施形態においてRf
10は炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。Rf
10は上記した基からなる群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。n2が2のとき、2つのRf
10はそれぞれ独立して上記範囲内から選択されればよい。
【0075】
式(II)においてパーフルオロアルキル基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
パーフルオロアルケニル基の具体例としては、有機化合物(α)の説明において前記した同様のパーフルオロアルケニル基が挙げられる。
【0076】
n3は残基R
10を提供するアルコールまたはカルボン酸の価数によって決まる値であり、詳しくは当該アルコールまたはカルボン酸の価数と同値である。
【0077】
n3が2以上の場合、複数の−[(A
10O)
n1−Y
10−(Rf
10)
n2]は、同一であっても、または異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0078】
有機化合物(II)として、以下に示す式(IIa)〜(IIe)で表される化合物またはそれらの混合物が挙げられる。有機化合物(II)の分子量は通常、4000以下、特に300〜4000であり、好ましくは800〜4000である。有機化合物(II)の分子量は分子構造式から算出された値を用いている。
【0080】
式(IIa)中、R
110は炭素原子数1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4の1価アルコールの水酸基から水素原子を取り除いた残基、炭素原子数2〜6、好ましくは3〜4のモノカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を取り除いた残基、またはこれらの混合基である。
【0081】
残基R
110を提供する1価アルコールは飽和または不飽和脂肪族炭化水素化合物に1個の水酸基を導入したものである。当該アルコールとして、式(II)の説明において前記した同様の1価飽和脂肪族アルコールおよび1価不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。残基R
110を提供する好ましい1価アルコールは1価飽和脂肪族アルコール、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールである。
【0082】
残基R
110を提供するモノカルボン酸は飽和または不飽和脂肪族モノカルボン酸である。当該カルボン酸として、式(II)の説明において前記した同様の飽和脂肪族モノカルボン酸および不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。残基R
110を提供する好ましいモノカルボン酸は不飽和脂肪族モノカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、trans−2−ブテン酸、cis−2−ブテン酸、3−ブテン酸である。
【0083】
A
110Oは式(II)の説明において前記したA
10Oと同様である。望ましい実施形態においてA
110Oは炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、式(II)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0084】
n10は2〜60、好ましくは2〜25であり、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。n10が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。
【0085】
(A
110O)
n10で表されるポリアルキレンオキサイド基は、上記したA
110Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
110O)
n10で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
110O)
n10は、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0086】
Rf
110は式(II)の説明において前記したRf
10と同様である。より望ましい実施形態においてRf
110は炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。最も望ましい実施形態においてRf
110はパーフルオロアルケニル基、特に前記式(i)のパーフルオロアルケニル基を示す。Rf
110は上記した基からなる群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。
【0087】
式(IIa)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0089】
化合物(iia−1)〜(iia−12)において、記号は以下の通り。
Rf
111は前記式(i)のパーフルオロアルケニル基である。
n101、n102、n107、n108、n113、n114はそれぞれ独立して2〜30である。
n103、n104、n105、n106、n109、n110、n111、n112、n115、n116、n117、n118、n119、n120、n121、n122、n123、n124はそれぞれ独立して1〜15である。
n103+n104、n105+n106、n109+n110、n111+n112、n115+n116、n117+n118、n119+n120、n121+n122、n123+n124はそれぞれ独立して2〜30である。
【0090】
式(IIa)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。例えば、R
110−(A
110O)
n10−H(式中、R
110、A
110およびn10は前記式(IIa)においてと同様である)で表される化合物と、Rf
110F(式中、Rf
110は前記式(IIa)においてと同様である)で表される化合物とを反応させることにより、式(IIa)で表される化合物を製造することができる。一例として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iia−5)〜式(iia−12)および式(iia−14)〜式(iia−15)の化合物を製造することができる(特開2011−057589号公報参照)。別の一例として、1価のアルコールのアルキレンオキサイド付加物と、ヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iia−1)〜式(iia−4)および式(iia−13)の化合物を製造することができる。
【0092】
式(IIb)中、R
120は式(IIa)の説明において前記したR
110と同様である。最も好ましい態様においてR
120は、炭素原子数2〜6、好ましくは3〜4の不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を取り除いた残基、またはこれらの混合基である。残基R
120を提供する好ましいモノカルボン酸は不飽和脂肪族モノカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸である。
【0093】
A
120Oは式(IIa)の説明において前記したA
110Oと同様である。望ましい実施形態においてA
120Oは炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、式(II)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0094】
n20は2〜60、好ましくは2〜25であり、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。n20が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。
【0095】
(A
120O)
n20で表されるポリアルキレンオキサイド基は、上記したA
120Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
120O)
n20で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
120O)
n20は、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0096】
Rf
120およびRf
121はそれぞれ独立して式(II)の説明において前記したRf
10と同様である。より望ましい実施形態においてRf
120およびRf
121はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。但し、Rf
120またはRf
121の少なくとも一方、好ましくは両方はパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。最も望ましい実施形態においてRf
120およびRf
121は同時にパーフルオロアルケニル基を示す。
【0097】
式(IIb)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0099】
化合物(iib−1)〜(iib−4)において、記号は以下の通り。
n201〜n204はそれぞれ独立して2〜25である。
【0100】
式(IIb)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。例えば、(Rf
120O)(Rf
121O)−C
6H
4−C(=O)Cl(式中、Rf
120およびRf
121は前記式(IIb)においてと同様である)と、R
120−(A
120O)
n20−H(式中、R
120、A
120およびn20は前記式(IIb)においてと同様である)で表される化合物とを反応させることにより、式(IIb)の化合物を製造することができる。一例として、(C
9F
17O)
2−C
6H
4−C(=O)Clとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとを反応させることにより、式(iib−1)〜式(iib−4)の化合物を製造することができる(特開昭52−007882号公報参照)。
【0102】
式(IIc)中、R
130は、炭素原子数1〜4、好ましくは1〜3の2価アルコールの水酸基から水素原子を取り除いた残基、炭素原子数2〜6、好ましくは3〜6のジカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を取り除いた残基またはこれらの混合基である。
【0103】
残基R
130を提供するアルコールは飽和または不飽和脂肪族炭化水素化合物に2個の水酸基を導入したものであり、エーテル基を含有していてもよい。当該アルコールとして、式(II)の説明において前記した同様の2価飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。残基R
130を提供する好ましいアルコールは、2価飽和脂肪族アルコールまたはこれらの混合物である。残基R
130を提供する好ましい2価アルコールは、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコールである。
【0104】
残基R
130を提供するジカルボン酸は飽和脂肪族ジカルボン酸である。当該カルボン酸として、式(II)の説明において前記した同様の飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。残基R
130を提供する好ましいジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸またはその混合物である。
【0105】
A
130OおよびA
131Oはそれぞれ独立して式(IIa)の説明において前記したA
110Oと同様である。望ましい実施形態においてA
130OおよびA
131Oはそれぞれ独立して炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、式(II)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0106】
n30+n31の合計数は2〜60、好ましくは2〜45、より好ましくは5〜45であり、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。当該合計数が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。n30およびn31それぞれの値は特に限定されるものではないが、通常は0〜60、好ましくは2〜25である。
【0107】
(A
130O)
n30および(A
131O)
n31で表されるポリアルキレンオキサイド基は、それぞれ独立して上記したA
130OおよびA
131Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
130O)
n30または(A
131O)
n31で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
130O)
n30および(A
131O)
n31はそれぞれ独立して、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0108】
Rf
130およびRf
131はそれぞれ独立して式(II)の説明において前記したRf
10と同様である。より望ましい実施形態においてRf
130およびRf
131はそれぞれ独立して炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。但し、Rf
130またはRf
131の少なくとも一方、好ましくは両方はパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。最も望ましい実施形態においてRf
130およびRf
131は同時にパーフルオロアルケニル基を示す。
【0109】
式(IIc)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0111】
化合物(iic−1)〜(iic−2)において、記号は以下の通り。
Rf
301〜Rf
304は前記式(i)のパーフルオロアルケニル基である。
n301〜n304はそれぞれ独立して2〜25である。
【0112】
式(IIc)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。 例えば、H−(OA
130)
n30−R
130−(A
131O)
n31−H(式中、R
130、A
130、A
131、n30およびn31は前記式(IIc)においてと同様である)で表される化合物と、Rf
130FおよびRf
131F(式中、Rf
130およびRf
131は前記式(IIc)においてと同様である)で表される化合物とを反応させることにより、式(IIc)の化合物を製造することができる。一例として、ポリアルキレングリコールとヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iic−1)〜式(iic−2)の化合物を製造することができる(特開昭52−041182号公報参照)。
【0114】
式(IId)中、R
140は、炭素原子数2〜12、好ましくは2〜6の3価アルコールの水酸基から水素原子を取り除いた残基またはこれらの混合基である。
【0115】
残基R
140を提供するアルコールは飽和または不飽和脂肪族炭化水素化合物に3個の水酸基を導入したものであり、エーテル基を含有していてもよい。当該アルコールとして、式(II)の説明において前記した同様の3価飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。残基R
140を提供する好ましいアルコールは、3価飽和脂肪族アルコールまたはこれらの混合物である。残基R
140を提供する好ましい3価アルコールは、特にグリセリン、ペンタグリセロールである。
【0116】
A
140O、A
141OおよびA
142Oはそれぞれ独立して式(IIa)の説明において前記したA
110Oと同様である。望ましい実施形態においてA
140O、A
141OおよびA
142Oはそれぞれ独立して炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、式(II)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0117】
n40+n41+n42の合計数は2〜60、好ましくは2〜45、より好ましくは5〜45であり、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。当該合計数が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。n40、n41およびn42それぞれの値は特に限定されるものではないが、通常は0〜60、好ましくは2〜25である。
【0118】
(A
140O)
n40、(A
141O)
n41および(A
142O)
n42で表されるポリアルキレンオキサイド基は、それぞれ独立して上記したA
140O、A
141OおよびA
142Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
140O)
n40、(A
141O)
n41または(A
142O)
n42で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
140O)
n40、(A
141O)
n41および(A
142O)
n42はそれぞれ独立して、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基であり、より好ましくはポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0119】
Rf
140、Rf
141およびRf
142はそれぞれ独立して式(II)の説明において前記したRf
10と同様である。より望ましい実施形態においてRf
140、Rf
141およびRf
142はそれぞれ独立して炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。但し、Rf
140、Rf
141またはRf
142の少なくとも1つの基、好ましくは全ての基はパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。最も望ましい実施形態においてRf
140、Rf
141およびRf
142は同時にパーフルオロアルケニル基を示す。
【0120】
式(IId)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0122】
化合物(iid−1)〜(iid−2)において、記号は以下の通り。
Rf
401〜Rf
406は前記式(i)のパーフルオロアルケニル基である。
n401〜n406はそれぞれ独立して2〜25である。
【0123】
式(IId)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。例えば、R
140{(A
140O)
n40−H}{(A
141O)
n41−H}{(A
142O)
n42−H}(式中、R
140、A
140、A
141、A
142、n40、n41およびn42は前記式(IId)においてと同様である)で表される化合物と、Rf
140F、Rf
141FおよびRf
142F(式中、Rf
140、Rf
141およびRf
142は前記式(IId)においてと同様である)で表される化合物とを反応させることにより、式(IId)の化合物を製造することができる。一例として、グリセリンアルキレンオキサイド付加物とヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iid−1)〜式(iid−2)の化合物を製造することができる(特開平04−145041号公報参照)。
【0125】
式(IIe)中、R
150は、炭素原子数2〜12、好ましくは3〜7の4価アルコールの水酸基から水素原子を取り除いた残基またはこれらの混合基である。
【0126】
残基R
150を提供するアルコールは飽和または不飽和脂肪族炭化水素化合物に4個の水酸基を導入したものであり、エーテル基を含有していてもよい。当該アルコールとして、式(II)の説明において前記した同様の4価飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。残基R
150を提供する好ましいアルコールは、4価飽和脂肪族アルコールまたはその混合物である。残基R
150を提供する好ましい4価飽和脂肪族アルコールは、特にペンタエリスリトール、ジグリセリンである。
【0127】
A
150O、A
151O、A
152OおよびA
153Oはそれぞれ独立して式(IIa)の説明において前記したA
110Oと同様である。望ましい実施形態においてA
150O、A
151O、A
152OおよびA
153Oはそれぞれ独立して炭素原子数2〜4、好ましくは2〜3の2価のアルキレンオキサイド基を示す。アルキレンオキサイド基の具体例としては、式(II)の説明において前記した同様のアルキレンオキサイド基が挙げられる。
【0128】
n50+n51+n52+n53の合計数は2〜60、好ましくは2〜45、より好ましくは5〜45であり、平均付加モル数として当該範囲内の値を示せばよい。当該合計数が1のとき、本発明の効果のうち、親水性が悪化する。n50、n51、n52およびn53それぞれの値は特に限定されるものではないが、通常は0〜60、好ましくは2〜25である。
【0129】
(A
150O)
n50、(A
151O)
n51、(A
152O)
n52および(A
153O)
n53で表されるポリアルキレンオキサイド基は、それぞれ独立して上記したA
150O、A
151O、A
152OおよびA
153Oの具体例からなる群から選択される1種の基のみから構成されていてもよいし、当該群から選択される2種以上の基の混合基であってもよい。(A
150O)
n50、(A
151O)
n51、(A
152O)
n52または(A
153O)
n53で表されるポリアルキレンオキサイド基が2種以上の基の混合基である場合、当該2種以上の基はブロック状に結合していてもよいし、またはランダム状に結合していてもよい。好ましい(A
150O)
n50、(A
151O)
n51、(A
152O)
n52および(A
153O)
n53はそれぞれ独立して、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基、ポリブチレンオキサイド基またはこれらの混合基であり、より好ましくはポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基またはこれらの混合基である。
【0130】
Rf
150、Rf
151、Rf
152およびRf
153はそれぞれ独立して式(II)の説明において前記したRf
10と同様である。より望ましい実施形態においてRf
150、Rf
151、Rf
152およびRf
153はそれぞれ独立して炭素原子数1〜11、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8のパーフルオロアルキル基、または炭素原子数3〜9、好ましくは4〜9、より好ましくは6〜9のパーフルオロアルケニル基を示す。但し、Rf
150、Rf
151、Rf
152またはRf
153の少なくとも1つの基、好ましくは全ての基はパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。最も望ましい実施形態においてRf
150、Rf
151、Rf
152およびRf
153は同時にパーフルオロアルケニル基を示す。
【0131】
式(IIe)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【0134】
化合物(iie−1)〜(iie−4)において、記号は以下の通り。
Rf
501〜Rf
516は前記式(i)のパーフルオロアルケニル基である。
n501〜n516はそれぞれ独立して2〜25である。
【0135】
式(IIe)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。例えば、R
150{(A
150O)
n50−H}{(A
151O)
n51−H}{(A
152O)
n52−H}{(A
153O)
n53−H}(式中、R
150、A
150、A
151、A
152、A
153、n50、n51、n52およびn53は前記式(IIe)においてと同様である)で表される化合物と、Rf
150F、Rf
151F、Rf
152FおよびRf
153F(式中、Rf
150、Rf
151、Rf
152およびRf
153は前記式(IIe)においてと同様である)で表される化合物とを反応させることにより、式(IIe)の化合物を製造することができる。一例として、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物とヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iie−1)〜式(iie−2)の化合物を製造することができる(特開2008−133245号公報参照)。別の一例として、ジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物とヘキサフルオロプロペントリマーとを反応させることにより、式(iie−3)〜式(iie−4)の化合物を製造することができる。
【0136】
有機化合物(II)の分子量に占めるフッ素原子の合計量の割合は、親水撥油性のさらなる向上の観点から、通常3〜70重%であり、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。
【0137】
有機化合物(II)の分子量に占めるアルキレンオキサイド基の合計量の割合は、親水撥油性のさらなる向上の観点から、通常10〜85重量%であり、10〜80重量%が好ましく、より好ましくは15〜70重量%である。
【0138】
[リン酸エステル化合物(β)]
リン酸エステル化合物(β)は下記式で表される。
【0140】
式(A)中、Zは炭素原子数2〜4、特に2〜3のアルキレン基であり、該アルキレン基は無置換であっても、該アルキレン基が有する1以上、特に1〜3の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。アルキレン基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基等が挙げられる。アルキレン基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0141】
pは0〜8、特に0〜7の範囲内の値である。
Xは炭素原子数1〜30、特に1〜20のアルキルオキシ基、炭素原子数2〜30、特に2〜20のアルケニルオキシ基、または(メタ)アクロイルオキシ基である。アルキルオキシ基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキルオキシ基としては、C
nH
2n+1−O−(nは上記アルキルオキシ基の炭素原子数と同じ値である)で表される1価の基が挙げられる。アルケニルオキシ基は直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。アルケニルオキシ基としては、C
nH
2n−1−O−(nは上記アルケニルオキシ基の炭素原子数と同じ値である)で表される1価の基が挙げられる。(メタ)アクロイルオキシ基はアクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基とを包含して意味する。
【0142】
好ましいリン酸エステル化合物(β)として、下記式(a1)〜(a3)で表される化合物が挙げられる。より好ましいリン酸エステル化合物は下記式(a1)または下記式(a3)で表される化合物またはこれらの混合物である。
【0144】
式(a1)中、Zおよびpは上記式(A)においてと同様である。好ましいZはエチレン基またはプロピレン基であり、無置換であっても、または1〜3の水素原子がハロゲン原子、特に塩素原子で置換されていてもよい。好ましいpは0〜5の範囲内の値であり、より好ましくは0〜3の範囲内の値である。
nは1〜30、好ましくは1〜18の整数である。
C
nH
2n+1はアルキル基であり、直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよい。
【0145】
式(a1)で表される化合物の具体例として以下の化合物が挙げられる。
【化21】
【0147】
式(a1)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。式(a1)で表される化合物の市販品として、城北化学工業(株)製のJP−502、JP−504、JP−506H、JP−508およびJP−513、東京化成工業(株)製のエチルホスホン酸およびイソプロピルホスホン酸、和光純薬(株)製のドデシルホスホン酸、n−ヘキシルホスホン酸、1−オクチルホスホン酸、n−デシルホスホン酸、n−ドデシルホスホン酸、n−テトラデシルホスホン酸、n−ヘキサデシルホスホン酸およびオクタデシルホスホン酸等が入手可能である。特に、化合物(a1−5)は東邦化学社製BH−650として入手可能である。化合物(a1−8)は東邦化学社製GF−199として入手可能である。化合物(a1−13)は東邦化学社製RL−210として入手可能である。化合物(a1−14)〜(a1−17)の混合物は東邦化学社製RS−410として入手可能である。
【0149】
式(a2)中、Zおよびpは上記式(A)においてと同様である。(好ましいZはエチレン基またはプロピレン基であり、無置換であっても、または1〜3の水素原子がハロゲン原子、特に塩素原子で置換されていてもよい。好ましいpは0〜1の範囲内の値であり、より好ましくは0である。
nは1〜20、好ましくは16〜20の整数である。
C
nH
2n−1はアルケニル基であり、直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状である。
【0150】
式(a2)で表される化合物の具体例として以下の化合物が挙げられる。
【化24】
【0151】
式(a2)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。式(a2)で表される化合物の市販品として、城北化学工業(株)製のJP−518−O、東京化成工業(株)製のオレイルホスホン酸等が入手可能である。
【0153】
式(a3)中、Zおよびpは上記式(A)においてと同様である。好ましいZはエチレン基またはプロピレン基であり、無置換であっても、または1〜3の水素原子がハロゲン原子、特に塩素原子で置換されていてもよい。好ましいpは0〜8の範囲内の値であり、より好ましくは1〜6の範囲内の値である。
R
5は水素原子またはメチル基である。
【0154】
式(a3)で表される化合物の具体例として以下の化合物が挙げられる。
【化26】
【0156】
式(a3)で表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。式(a3)で表される化合物の市販品として、共栄社化学(株)社製 ライトアクリレートP−1A(a3−1)、共栄社化学(株)社製 ライトエステルP−1M(a3−2)、ユニケミカル(株)社製 Phosmer M(a3−2)、ユニケミカル(株)社製 Phosmer PE(a3−6)、ユニケミカル(株)社製 Phosmer PP(a3−8)、ユニケミカル(株)社製 Phosmer CL(a3−4)等が入手可能である。
【0157】
本発明の親水撥油性付与剤において、有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)の重量比は、当該親水撥油性付与剤の使用により、親水撥油性を発現させ得る限り特に制限されない。有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)の重量比は通常、1:2〜1:500であり、好ましくは1:2〜1:300である。有機化合物(α)およびリン酸エステル化合物(β)はそれぞれ独立して、一種単独で使用しても良いし、または二種以上を混合して使用しても良い。二種以上を混合して使用する場合、それらの合計量について上記重量比を満たせば良い。
【0158】
親水撥油性および透明性のより一層の向上の観点から好ましい有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせは以下の通りである:
有機化合物(α)=上記式(Ia)で表されるフッ素原子含有(メタ)アクリレートおよび上記式(Ib)で表されるアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリレートを少なくとも1種類ずつ共重合成分として含む共重合体(I)であって、式(Ib)において、Wは炭素原子数1〜4、特に1〜2のアルコキシ基であり、nは2〜6であり、R
4およびAOはそれぞれ上記範囲内である共重合体;
リン酸エステル化合物(β)=上記式(a3)で表される化合物、特に化合物(a3−2)。
【0159】
<親水撥油性付与剤の使用方法>
本発明の親水撥油性付与剤は、所定の成分を溶媒に溶解することにより得られる溶液の形態を有していてもよいし、または所定の成分を乾式混合することにより得られる乾式混合物の形態を有していてもよい。
【0160】
本発明の親水撥油性付与剤の使用に際しては、該親水撥油性付与剤を上記した溶液の形態で使用することができるし、または後述する組成物の形態で使用することもできる。
【0161】
本発明の親水撥油性付与剤を溶液の形態で使用する場合において、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒が挙げられる。溶媒は一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0162】
本発明の親水撥油性付与剤を溶液の形態で使用する場合、詳しくは、当該溶液を、例えば、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の支持体表面に塗布することにより、支持体表面に親水撥油性が付与された塗膜を形成させることができる。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、コーティング法、スプレー法等が挙げられる。塗布法の具体例として、例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等のコーティング方式が挙げられる。具体的には、該溶液を支持体表面に塗布した後、溶媒を蒸発させることにより、有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)を含む膜が形成される。該膜は、親水撥油性、透明性等を有する。溶媒の乾燥(蒸発)条件は、溶液中の溶媒の種類、量等によって変化するが、通常、室温〜200℃で、10秒間〜10分間程度乾燥させればよい。
【0163】
本発明の親水撥油性付与剤を溶液の形態で使用する場合、溶液中における有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)の合計濃度は、特に限定されないが、塗膜表面強度の向上および塗布むらの防止の観点から、0.1〜30重量%程度が好ましい。
【0164】
<組成物>
本発明は親水撥油性付与剤を含有する組成物も提供する。本発明の組成物に含有される親水撥油性付与剤は前記した親水撥油性付与剤と同様のものである。
【0165】
本発明の組成物は、親水撥油性付与剤以外に、親水撥油性付与剤以外のあらゆる成分・物質から選択される少なくとも1種の成分(以下、単に「成分(γ)」という)を含有する。
【0166】
成分(γ)としては、親水撥油性付与剤を構成する成分以外のものであれば、特に制限されず、例えば、硬化性モノマーおよびオリゴマー、非硬化性ポリマー、溶媒、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤、硬化反応開始剤等が挙げられる。以下、本発明の組成物を、成分(γ)として少なくとも硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーを含有する実施態様1、および成分(γ)として少なくとも非硬化性ポリマーを含有する実施態様2について、詳しく説明する。
【0167】
(実施態様1)
本実施態様に係る組成物は、親水撥油性付与剤ならびに硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーを含有するものであり、所望により、他の成分、例えば、非硬化性ポリマー、溶媒、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤、硬化反応開始剤等をさらに含有してもよい。このような組成物は通常、該組成物の硬化後において、得られる硬化物の表面に親水撥油性を発現させる。本明細書中、硬化性とは、放射線、電子線、紫外線、可視光線、熱線等のエネルギー線の照射により、重合性二重結合に基づく樹脂硬化物を形成し得る特性をいう。硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーは、放射線、電子線等の電磁波による硬化の場合、該電磁波のエネルギーが高いため、重合性二重結合のみで重合が可能である。紫外線、可視光線、熱線をエネルギー源とする場合には、組成物には重合開始剤を配合することが好ましい。以下、硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーを包含して「硬化性モノマー等」と呼ぶことがある。なお、オリゴマーは2個以上、特に2〜200個、好ましくは2〜100個のモノマーの結合体であって、いわゆるポリマーほどの結合数は有さない化合物を意味するものである。
【0168】
硬化性モノマー等は重合性二重結合に基づく硬化性を有するものであれば、特に限定されず、通常、光学用途の分野で使用されるハードコート膜や反射防止コート膜に用いられるエネルギー線硬化性のモノマー及びオリゴマーを任意に使用することができる。
【0169】
このような硬化性モノマー等としては、例えば、各種アクリレートやアクリルウレタン等のアクリル系モノマー、ウレタン系モノマー、エポキシ系モノマー、シリコーン系モノマー、およびそれらのオリゴマー等の反応性化合物が挙げられ、好ましくはアクリル系モノマーおよび/またはそれらのオリゴマーが用いられる。特に、本実施態様の組成物は、硬化膜の製造に用いられることが有用なため、2官能以上の反応性官能基を有する硬化性モノマー等を用いることが好ましい。
【0170】
2官能以上の反応性官能基を有する好ましい硬化性モノマー等は、例えば、多官能アクリレート系モノマーおよび多官能アクリルウレタン系モノマーならびにそれらのオリゴマーである。
【0171】
多官能アクリレート系モノマーは、一分子中、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する有機化合物である。多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーの具体例として、例えば、以下の化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびそれらのオリゴマー。多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーは、通常、用途に併せて取捨選択し、単一または複数の組合せで使用するものである。
【0172】
多官能アクリレート系モノマーおよびオリゴマーは市販品として入手可能である。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート等は、東亞合成(株)製 アロニックスシリーズ、新中村化学工業(株)製 Aシリーズ、大阪有機化学工業(株)製 ビスコートシリーズ、日立化成工業(株)製 ファンクリルシリーズとして市販されている。
【0173】
多官能アクリルウレタン系モノマーは、一分子中、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する有機化合物である。多官能アクリルウレタン系モノマーおよびオリゴマーの具体例として、例えば、以下の化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない:フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等。
【0174】
多官能アクリルウレタン系モノマーおよびオリゴマーは市販品として入手可能である。例えば、東亞合成(株)製 アロニックスシリーズ、新中村化学工業(株)製 NKシリーズ、共栄社化学(株)製 UA・A・UFシリーズ、日本合成化学工業(株)製 紫光シリーズ、根上工業(株)製 アートレジンシリーズ、荒川化学工業(株)製 ビームセットシリーズとして市販されている。
【0175】
硬化性モノマー等は1種類でも使用できるが、構造の異なる2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0176】
本実施態様において親水撥油性付与剤の配合量は、当該親水撥油性付与剤の配合により親水撥油性を発現させ得る限り特に制限されず、通常は硬化性モノマー等の合計量100重量部に対して0.01〜100重量部程度、好ましくは0.1〜80重量部程度、より好ましくは1〜70重量部程度である。なお、本実施態様の組成物全体量中(溶媒を使用する場合は、溶媒の量を除く)の硬化性モノマー等の含有量は、通常50〜99.9重量%程度、好ましくは60〜99.5重量%程度である。本明細書中、親水撥油性付与剤の配合量とは、前記した有機化合物(α)およびリン酸エステル化合物(β)の合計量のことである。
【0177】
本実施態様の組成物に含有させてもよい重合開始剤は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤および/または熱重合開始剤を使用することができる。好ましくは光重合開始剤が使用される。
【0178】
光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して使用すればよい。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、アントラキノン、アントロン、ジベンゾスベロン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、P−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、2−(P−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3−カルボニルービス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−フェニルー5−ベンゾイルチオ−テトラゾール等が挙げられる。
【0179】
重合開始剤を使用する場合、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。重合開始剤の添加量は、硬化性モノマー等の合計量100重量部に対して、通常0.1〜50重量部程度、好ましくは0.5〜40重量部程度、より好ましくは1〜30重量部程度とすればよい。
【0180】
溶媒としては、親水撥油性付与剤および硬化性モノマー等を溶解する限り特に限定されず、従来公知の溶媒を使用すればよい。例えば、親水撥油性付与剤の前記した有機溶媒が使用できる。好ましい溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等が挙げられる。溶媒は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
溶媒を使用する場合、本実施態様の組成物中の溶媒の使用量は、硬化性モノマー等の合計量100重量部に対して、通常25〜5000重量部程度、好ましくは40〜2000重量部程度、より好ましくは60〜1000重量部程度とすればよい。
【0181】
微粒子としては、カーボンナノチューブ、ナノシリカ粒子、金属粒子、セラミックス粒子、無機粒子等が挙げられる。
フィラーとしては、各種顔料、カーボンブラック、各種合成樹脂、有機無機複合体等が挙げられる。
着色剤としては、塗料の分野で使用される公知の顔料が挙げられる。
【0182】
本実施態様の組成物は塗液、下塗り剤として使用することができる。本明細書中、塗液とは、最終的に最表面に配置される塗膜を形成するための塗り剤をいうものとする。下塗り剤とは、最終的に最表面の塗膜の下に配置される塗膜、すなわち直上に別の塗膜が形成される塗膜、を形成するための塗り剤をいうものとする。下塗り剤はプライマーとも呼ばれる。
【0183】
本実施態様の組成物を、塗液または下塗り剤として使用することにより、表面に親水撥油性を有する塗膜(硬化膜)を製造することができる。すなわち、塗液としての本実施態様の組成物を基材に塗布した後、エネルギー線照射を行うことにより、表面に親水撥油性を有する硬化膜を得ることができる。特に、本実施態様の組成物を下塗り剤として使用した場合には、得られた塗膜の上に水性塗料を均一に塗布することができる。
【0184】
硬化膜を得るための具体的な手順としては、親水撥油性付与剤、硬化性モノマー等、さらに、必要に応じて、重合開始剤、溶媒、微粒子、フィラー、着色剤等を適当な配合比で混合溶解させて、本実施態様の組成物を塗液として調製する。ついで、基材上に塗液を一定の膜厚となるよう塗布し、温風乾燥、真空乾燥等により溶媒成分を除去した後、放射線、電子線、紫外線、可視光線、熱線等のエネルギー線を照射することにより硬化膜を得ることができる。
【0185】
塗液の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等が挙げられる。
【0186】
硬化膜を作製する基材としては、硬化膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、硬化膜および基材を光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらのシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
【0187】
硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
【0188】
(実施態様2)
本実施態様に係る組成物は、親水撥油性付与剤および非硬化性ポリマーを含有するものであり、所望により、他の成分、例えば、硬化性モノマーおよびオリゴマー、溶媒、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤、硬化反応開始剤等をさらに含有してもよい。このような組成物は、該組成物の成形後において、得られる成形体の表面に親水撥油性を発現させる。本明細書中、非硬化性とは、前記したような硬化性を示さない特性をいう。
【0189】
非硬化性ポリマーはとしては、プラスチック成形の分野で使用されるあらゆる熱可塑性ポリマー、非硬化性熱可塑材料、ポリシロキサン系化合物、非硬化性合成樹脂等が使用される。このような熱可塑性ポリマーとして、例えば、根上工業(株)製 ハイパールシリーズ、(株)T&K TOKA製 PAシリーズおよびTPAEシリーズ、等が挙げられる。
【0190】
非硬化性ポリマーの重量平均分子量は通常、1000〜2000000であり、好ましくは10000〜1500000である。
【0191】
非硬化性ポリマーは1種類でも使用できるが、構造の異なる2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0192】
本実施態様において親水撥油性付与剤の配合量は、当該親水撥油性付与剤の配合により親水撥油性を発現させ得る限り特に制限されず、通常は非硬化性ポリマー100重量部に対して0.001〜900重量部程度、好ましくは0.01〜800重量部程度、より好ましくは0.1〜700重量部程度である。なお、本実施態様の組成物全体量中(溶媒を使用する場合は、溶媒の量を除く)の非硬化性ポリマーの含有量は、通常50〜99.9重量%程度、好ましくは60〜99.5重量%程度である。
【0193】
本実施態様の組成物に含有させてもよい溶媒、微粒子、フィラーおよび着色剤は実施態様1においてと同様のものが例示できる。
本実施態様において、溶媒を使用する場合、本実施態様の組成物中の溶媒の使用量は、非硬化性ポリマー100重量部に対して、通常40〜900重量部程度、好ましくは150〜600重量部程度とすればよい。
【0194】
本実施態様の組成物は例えば、成形用材料またはコーティング用材料として使用することができる。
【0195】
本実施態様の組成物を、成形用材料として使用することにより、表面に親水撥油性を有する成形体を製造することができる。すなわち、成形用材料としての本実施態様の組成物を加熱・溶融し、所望の形状に成形した後、冷却を行うことにより成形体を得ることができる。成形体を得るための具体的な手順としては、親水撥油性付与剤、非硬化性ポリマー、さらに、必要に応じて、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤等を適当な配合比で混合させて、本実施態様の組成物を成形用材料として調製する。ついで、成形用材料を加熱して溶融させ、射出成形法、真空成型法、圧空成型法、押出成型法、ブロー成型法等により成形した後、冷却することにより成形体を得ることができる。
【0196】
本実施態様の組成物を、コーティング用材料として使用することにより、表面に親水撥油性を有する塗膜を製造することができる。すなわち、コーティング用材料としての本実施態様の組成物を加熱・溶融し、所望の領域に塗布した後、冷却を行うことにより塗膜を得ることができる。塗膜を得るための具体的な手順としては、親水撥油性付与剤、非硬化性ポリマー、さらに、必要に応じて、微粒子、フィラー、着色剤、各種添加剤等を適当な配合比で混合させて、本実施態様の組成物をコーティング用材料として調製する。ついで、コーティング用材料を加熱して溶融させ、グラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等により塗布した後、冷却することにより塗膜を得ることができる。
【0197】
<親水撥油性>
本発明の親水撥油性付与剤は、塗膜表面の水の接触角を、添加剤未添加の塗膜表面よりも、5度以上、好ましくは10度以上、より好ましくは20度以上、低下させることができる。本発明の親水撥油性付与剤を使用したときの水の接触角の下限値は特に限定されないが、当該水の接触角は通常、1度以上、特に3度以上である。
水の接触角は、親水撥油性付与剤26重量部を硬化性モノマー100重量部とともに有機溶媒に溶解させて得られた溶液を支持体にコーティング処理および乾燥した後、十分に硬化させる方法により形成された塗膜の表面での水の接触角を用いている。
添加剤未添加の塗膜とは、親水撥油性付与剤を使用しなかったこと以外、上記塗膜と同様の方法により形成された塗膜のことである。
【0198】
本発明の親水撥油性付与剤は、塗膜表面のオレイン酸の接触角を、添加剤未添加の塗膜表面よりも、5度以上、好ましくは10度以上、より好ましくは20度以上、増加させることができる。本発明の親水撥油性付与剤を使用したときのオレイン酸の接触角の上限値は特に限定されないが、当該オレイン酸の接触角は通常、90度以下、特に80度以下である。
オレイン酸の接触角は、水の代わりにオレイン酸を用いること以外、水の接触角と同様の方法により測定されたオレイン酸の接触角を用いている。
【実施例】
【0199】
本発明の内容を以下の実施例により詳しく説明するが、本発明の内容は実施例により限定して解釈されるものではない。
【0200】
<実験例A:有機化合物(α)としての共重合体(I)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせ>
[共重合体の合成]
(合成例1)
冷却管を備えた三つ口フラスコ(100mL)内に、Rf’O−Ph−C(=O)O−CH
2CH
2OC(=O)C(CH
3)=CH
2(化合物(ia−2))、ポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒10、(株)日油製ブレンマーAE−400、化合物(ib−1))7.68g(15mmol)、酢酸エチル10.48g、ラウリルメルカプタン0.45g(2.2mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.14g(0.6mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了を
1H−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。溶媒を留去し、目的の共重合体が定量的に得られた。
【0201】
(合成例2)
化合物(ia−2)および(ib−1)の割合を変更する以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0202】
(合成例3)
化合物(ia−1)の代わりに、含フッ素アクリレートRf’O−CH
2CH
2CH
2CH
2OC(=O)CH=CH
2 (化合物(ia−3))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0203】
(合成例4)
化合物(ia−1)の代わりに含フッ素アクリレートCF
3(CF
2)
5CH
2CH
2OC(=O)CH=CH
2(ダイキン工業社製2−(perfluorohexyl)ethyl acrylate:化合物(ia−5))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0204】
(合成例5)
化合物(ia−1)、(ib−1)の割合を変更する以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0205】
(合成例6)
化合物(ib−1)の代わりにメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒9、日油(株)社製ブレンマーAME−400:化合物(ib−3))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0206】
(合成例7)
化合物(ib−1)の代わりにポリエチレングリコールモノアクリレート(n≒4.5、日油(株)社製ブレンマーAE−200:化合物(ib−5))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0207】
(合成例8)
化合物(ib−1)の代わりにポリプロピレングリコールモノアクリレート(n≒9、日油(株)社製ブレンマーPP−500:化合物(ib−7))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0208】
(合成例9)
化合物(ib−1)の代わりにポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n≒7、日油(株)社製ブレンマー70PEP−350B;化合物(ib−10))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0209】
(合成例10)
化合物(ib−1)の代わりにポリ(エチレングリコールーテトラメチレングリコール)モノメタクリレート(n≒15、日油(株)社製ブレンマー55PET−800:化合物(ib−12))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0210】
(合成例11)
化合物(ib−1)の代わりにメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒9、日油(株)社製ブレンマーPME−400:化合物(ib−4))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0211】
(合成例12)
2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学(株)社製ライトアクリレートHOA−HH:化合物(ic−1))をさらに追加する以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0212】
(合成例13)
2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)社製ライトエステルP−1M:化合物(ic−2))をさらに追加する以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0213】
(合成例14)
化合物(ib−1)の代わりに4−ヒドロキシブチルアクリレート(y−1)を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0214】
(合成例15)
化合物(ib−1)の代わりにグリセリンモノメタクリレート(日油(株)社製ブレンマーGLM:y−2)用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0215】
(合成例16)
化合物(ib−1)の代わりにn−ブチルアクリレート(y−3)を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0216】
(合成例17)
2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学(株)社製ライトアクリレートHOA−HH:ic−1)をさらに追加する以外、合成例16と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0217】
(合成例18)
2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)社製ライトエステルP−1M:ic−2)をさらに追加する以外、合成例16と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0218】
(合成例19)
化合物(ib−1)の代わりにメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒4、日油(株)社製ブレンマーPME−200:化合物(ib−13))を用いる以外、合成例1と同様の手順で、合成を実施した。化合物割合は表1に示したとおりである。
【0219】
【表1】
【0220】
[親水撥油性付与剤、親水撥油性組成物および塗膜の製造]
(実施例A1〜A15)
合成例で得られた共重合体(I)1重量部(固形分)(50重量%溶液品)、リン酸エステル化合物(共栄社化学(株)社製P−1M:化合物(a3−2)、共栄社化学(株)社製P−1A:化合物(a3−1)、ユニケミカル(株)社製PhosmerPE:化合物(a3−6)のいずれか)25重量部を混合し、親水撥油性付与剤とした。親水撥油性付与剤26重量部及び硬化性モノマーとしての多官能アクリレート系モノマー(東亞合成(株)製;アロニックスM−402)100重量部をメチルエチルケトン162重量部に加え、溶解させて親水撥油性組成物を得た。親水撥油性組成物を塗液として使用し、PETフィルム(100μm厚)にバーコーター(No.8)によりコーティング処理を施した。その後、100℃で1分間乾燥させた。その後、UV照射装置を用いて塗膜を十分に硬化させた。硬化後の塗膜を試験片として用い、評価を実施した。評価結果を表2に示す。硬化後の塗膜の膜厚は7〜8μmであった。
【0221】
(実施例A16〜A17)
共重合体(I)とリン酸エステル化合物(β)との重量比と配合量を変更すること以外、実施例A1と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比および配合量は表2に示したとおりである。
【0222】
(実施例A18〜A19)
硬化性モノマー100重量部に対する親水撥油性付与剤の配合量を変更すること以外、実施例A1と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比は表2に示したとおりである。
【0223】
(実施例A20)
硬化性モノマーとして多官能アクリレート系モノマーを使用する代わりに多官能ウレタンアクリレート(東亞合成(株)製;アロニックスOT−1002)を使用すること以外、実施例A5と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比および配合量、評価結果は表2に示したとおりである。
【0224】
(実施例A21)
リン酸エステル化合物としてリン酸2−エチルヘキシル(東京化成工業(株)製、化合物(a1−6))を使用すること以外、実施例A5と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比および配合量、評価結果は表2に示したとおりである。
【0225】
(実施例A22〜A26)
共重合体(I)として合成例19に記載の共重合体を使用すること、リン酸エステル化合物(β)として表2に示す所定の化合物を使用すること、およびこれらの重量比および配合量を変更すること以外、実施例A1と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比および配合量、評価結果は表2に示したとおりである。
リン酸エステル化合物(β)として、東邦化学社製BH−650(化合物(a1−5))、東邦化学社製GF−199(化合物(a1−8))、東邦化学社製RL−210(化合物(a1−13))、東邦化学社製RS−410(化合物(a1−14)〜(a1−17)の混合物)を使用した。
【0226】
(ブランク)
共重合体およびリン酸エステル化合物を添加しないこと以外、実施例A1またはA20と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。その測定結果を表2に示す。
【0227】
(比較例A1)
共重合体を添加しないこと以外、実施例A1と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。その測定結果を表3に示す。
【0228】
(比較例A2)
リン酸エステル化合物を添加しないこと以外、実施例A5と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。その測定結果を表3に示す。
【0229】
(比較例A3〜A7)
共重合体として合成例14〜18に記載の共重合体を使用すること以外は実施例A1と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。その測定結果を表3に示す。
【0230】
(比較例A8)
リン酸エステル化合物のかわりに共栄社化学(株)社製HOA−MPL(2−アクリロイロキシエチルフタル酸)を使用すること以外は実施例A1と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。
【0231】
(比較例A9)
リン酸エステル化合物のかわりに東亞合成(株)社製ATBS(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)を使用すること以外は実施例A1と同様の手順で試験片を作製し、評価を実施した。
【0232】
[評価方法]
(1)親水性
水の接触角を協和界面科学社製DropMaster700を用いて25℃で測定した。
評価基準:ブランク(添加剤未添加)における水の接触角(度)=Aw
水の接触角が「Aw−20度」以下=◎;
水の接触角が「Aw−20度」超「Aw−10度」以下=○;
水の接触角が「Aw−10度」超「Aw−5度」以下=△(実用上問題なし);
水の接触角が「Aw−5度」超「Aw」以下=×;
水の接触角が「Aw」超=××。
なお、各実施例/比較例において、Awは、同様の硬化性モノマーを使用したブランクのAwを用いた。
【0233】
(2)撥油性
オレイン酸の接触角を協和界面科学社製DropMaster700を用いて25℃で測定した。
評価基準:ブランク(添加剤未添加)におけるオレイン酸の接触角(度)=A
O
オレイン酸の接触角が「Ao+20度」以上=◎;
オレイン酸の接触角が「Ao+10度」以上「Ao+20度」未満=○;
オレイン酸の接触角が「Ao+5度」以上「Ao+10度」未満=△(実用上問題なし);
オレイン酸の接触角が「Ao」以上「Ao+5度」未満=×;
オレイン酸の接触角が「Ao」未満=××。
なお、各実施例/比較例において、Aoは、同様の硬化性モノマーを使用したブランクのAoを用いた。
【0234】
(3)透明性
試験片の透明性を目視で観察した。
評価基準:
著しく透明=◎;
十分に透明=○(実用上問題なし);
濁りあり=×。
【0235】
(4)塗膜硬度
JIS K 5600−5−4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、750g荷重で試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm以上動かした。塗膜にキズや凹み、破れのない最も硬い鉛筆の硬度記号を塗膜硬度とした。
【0236】
(5)防汚性I
硬化膜表面に指紋を付着させ、指紋が見えなくなるまで乾いたキムワイプにて指紋を拭き取り、その回数(往復で1回とする)を計測した。
評価基準:ブランク(添加剤未添加)における拭き取り回数=N
I
拭き取り回数<N
I=○;
拭き取り回数≧N
I または 拭き取れない=×。
【0237】
(6)防汚性II
硬化膜表面に油性マジックでランダムに線をひき、水で濡らしたキムワイプにてマジックの拭き取り可否を目視で確認した。
評価基準:
マジックが拭き取り可=○;
マジックが拭き取り不可=×。
【0238】
【表2】
【0239】
【表3】
【0240】
表2および表3から分かるように、本発明の親水撥油性付与剤は、親水性および撥油性に優れ、透明性、防汚性にも優れている。
硬化性モノマーを変更しても、本発明の親水撥油性付与剤を入れることでスジやハジキの抑制が出来、親水撥油性が発現する。
また、共重合体(I)またはリン酸エステル化合物(β)のどちらか一方でも使用しないと、比較例A1〜A2のように親水撥油性が発現しない。特に、共重合体(I)を使用しなかった場合(比較例A1)およびリン酸エステル化合物(β)を使用しなかった場合(比較例A2)には、いずれの場合も、親水性、撥油性および防汚性IIが比較的劣っていたが、それらの両方を使用した全ての実施例では、それらの特性は有意に向上した。このことより、共重合体(I)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせにより、これらの特性について相乗効果が得られたことが明らかである。
さらに、官能基としてリン酸の代わりにカルボン酸やスルホン酸を有する化合物を使用しても、比較例A8〜A9のように親水撥油性が発現せず、透明性や防汚性も劣る結果となる。
親水撥油性および透明性のより一層の向上の観点から最も好ましい有機化合物(α)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせは実施例A22の組合せである。
【0241】
<実験例B:有機化合物(α)としての有機化合物(II)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせ>
(実施例B1〜B16および比較例B1〜B2)
有機化合物(α)として表4に示す有機化合物(II)を使用すること、リン酸エステル化合物(β)として表4に示す化合物を使用すること、およびこれらの重量比および配合量を変更すること以外、実施例A1と同様の手順で、試験片を作製し、評価を実施した。重量比および配合量、評価結果は表4に示したとおりである。
評価項目および評価方法は実験例Aにおいてと同様である。
【0242】
【表4】
【0243】
表中、n101、n301+n302、n401+n402+n403、n509+n510+n511+n512、n501+n502+n503+n504、n107、n117、n118、n115、n116、n201は平均値を示し、分子量は該平均値に基づいて算出した値である。
【0244】
有機化合物(II)またはリン酸エステル化合物(β)のどちらか一方でも使用しないと、比較例B1〜B2のように親水撥油性が発現しないし、防汚性Iおよび防汚性IIが劣っていた。それらの両方を使用した全ての実施例では、それらの特性は有意に向上した。このことより、有機化合物(II)とリン酸エステル化合物(β)との組み合わせにより、これらの特性について相乗効果が得られたことが明らかである。