【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によると、そのように堆積された単数の機能層、または、そのように堆積された各機能層は互いに結合された小島の形状で、小島間に覆われていない区域がある組織構造を示す自己構造化層である。
【0021】
金属機能層がスタックの単一の金属機能層であるとき、または、スタック内に複数の金属機能層があるときに各金属機能層が不連続のときの金属機能層であるときのように、それによって、銀を主成分とする、または、銀製の単数の金属機能層、または、各金属機能層を囲む層の間に、直接接触を有することができる。これらの区域は、強い付着力を有する。最も弱い境界面、したがって、銀および隣接する層間の境界面で場合によっては生じる溝は、また、二つの反射防止層間に広がり、進行するであろうが、それがより高いエネルギーを要求する。したがって、この方法によって、スタックの全体の付着エネルギーがかなり向上されるとみられる。
【0022】
薄層スタックが銀を主成分とするまたは銀製の連続した金属機能層を全く含まないことは、少なくとも一つのそのような連続層の存在がこの連続金属機能層または各連続金属機能層の二つの境界面での付着エネルギーを減少させ、その結果、「弱いリンク(maillon faible)」現象によってスタック全体の抵抗特性を減少させるので、重要である。
【0023】
本発明の意味において、「不連続層」によって、本発明によるスタックの表面でのいずれかのサイズの方形を考慮するとき、そのとき、この方形では、不連続機能層は方形の表面の50%〜98%、さらに方形の表面の53%〜83%、さらに各々63%〜83%しか占めないことが理解される必要がある。
【0024】
考慮する方形は、コーティングの主要な部分に位置する。本発明の範囲内では、特定の縁部、または、それに加えて最終的な使用では隠される特定の輪郭を実現することは重要ではない。
【0025】
不連続性とは、従来技術によって無限ではない面抵抗率を測定することができるようなものである。したがって、層を構成する金属材料の集積がこの材料の全欠如体積によって分離されているが、互いに結合している不連続機能層(または各不連続機能層)を得ることが重要である。
【0026】
本発明によると、自己構造化機能層(単数または複数)を備えるこのタイプのスタックは連続機能層(単数または複数)を備えるスタックより高い付着エネルギーを示し、それらの光学的特性(光透過率、光反射率および放射率)は、主に暑いまたは温暖な気候の地域でのいくつかの特定の用途で許容できる範囲にとどまりながら、減少し、その地域では、約20%〜30%の放射率はふさわいものでありえる。
【0027】
本発明の意味での「コーティング」とは、単一層または異なる材料の複数の層がコーティングの内部に存在することがあることを理解しなければならない。
【0028】
「スタック」とは、互いに堆積された薄層の集合を意味し、これらの層の間には無機基板(ガラスなど)または有機基板(プラスチック材料シートなど)が挟まれていないことを理解する必要がある。
【0029】
従来のように、「材料を主成分とする層」とは、その層の大部分がこの材料からなり、すなわち、材料の化学元素、または場合によってはその安定したストイキメトリーで考慮される材料の製品が、考慮される層の原子百分率で少なくとも50%を構成することを理解する必要がある。
【0030】
また、従来のように、本発明の意味での「反射防止層」とは、その性質の観点から、材料は「非金属」であり、すなわち、金属ではないことを理解する必要がある。本発明の文脈では、この語は可視光の波長の範囲全体(380nm〜780nm)で5以上のn/k比を示す材料を意味する。
【0031】
nは所定の波長での材料の実際の屈折率を意味し、kは所定の波長での屈折率の虚数部分を示し、n/k比は所定の波長で算出されることが喚起される。
【0032】
本明細書中に表示される屈折率の値は、従来のように波長550nmで測定された値である。
【0033】
本発明によると、前記または各不連続金属機能層は、下記の厚さe:
‐二酸化チタンTiO
2を主成分とする層上に堆積された1.0≦e≦4.5nm、さらに1.0≦e≦4.0nm、または2.0≦e≦4.5nm、さらに2.0≦e≦4.0nm、または、
‐酸化亜鉛錫SnZnO
xを主成分とする層上に堆積された1.0≦e≦4.5nm、さらに1.0≦e≦4.0nm、または2.0≦e≦4.5nm、さらに2.0≦e≦4.0nm、または、
‐酸化亜鉛ZnOを主成分とする層上に堆積された1.0≦e≦5.0nm、さらに1.0≦e≦4.5nm、または2.0≦e≦5.0nm、さらに2.0≦e≦4.5nm、または、
‐窒化ケイ素Si
3N
4を主成分とする層上に堆積された1.0≦e≦7.0nm、さらに1.0≦e≦6.0nm、または2.0≦e≦7.0nm、さらに2.0≦e≦6.0nm、または、
‐ニッケルを主成分とする層上に堆積された1.0≦e≦5.0nm、さらに1.0≦e≦4.0nm、または2.0≦e≦5.0nm、さらに2.0≦e≦4.0nm
を示すことがある。
【0034】
好ましくは、本発明によるスタックは基板の面上に直接堆積される。
【0035】
本発明による単一の不連続金属機能層を備えるスタックとしては、下記のものがある。
‐本発明の一実施態様では、面と前記金属機能層との間に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が1.8〜2.2である材料製の、屈折率が中程度の反射防止層を備え、この層は好ましくは酸化物を主成分とする。この屈折率が中程度の反射防止層の物理的厚さは、5〜35nmであることがある。
‐さらに、前記金属機能層の下方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が2.3〜2.7である材料製の、屈折率が高い反射防止層を備え、この屈折率が高い反射防止層は好ましくは酸化物を主成分とし、および/または、この屈折率が高い反射防止層の物理的厚さは、好ましくは、5〜25nmであることが可能である。
‐本発明の別の実施例では、面から反対側の前記金属機能層の上方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が1.8〜2.2である材料製の、屈折率が中程度の反射防止層を備え、この層は好ましくは酸化物を主成分とする。この屈折率が中程度の反射防止層の物理的厚さは、好ましくは、5〜35nmである。
【0036】
さらに、前記金属機能層の上方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が2.3〜2.7である材料製の、屈折率が高い反射防止層を備え、この屈折率が高い反射防止層は好ましくは酸化物を主成分とし、および/または、この屈折率が高い反射防止層の物理的厚さは、好ましくは5〜25nmである。前記スタックは、銀を主成分とするまたは銀製の不連続な二つの金属機能層および三つの反射防止コーティングだけを備えることがあり、各金属機能層は二つの反射防止コーティング間に配置されている。
【0037】
前記スタックは、銀を主成分とするまたは銀製の不連続な三つの金属機能層および四つの反射防止コーティングだけを備えることがあり、各不連続金属機能層は二つの反射防止コーティング間に配置されている。
【0038】
本発明による複数の不連続金属機能層を備えるスタックとしては、下記のものがある。
‐本発明の一実施態様では、面と第一の金属機能層との間に配置された、または各々の金属機能層の下方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が1.8〜2.2である材料製の、屈折率が中程度の反射防止層を備え、この層は好ましくは酸化物を主成分とする。この屈折率が中程度の反射防止層の物理的厚さは、5〜35nmであることがある。
‐さらに、第一の、または各々の、金属機能層の下方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が2.3〜2.7である材料製の、屈折率が高い反射防止層を備え、この屈折率が高い反射防止層は好ましくは酸化物を主成分とし、および/または、この屈折率が高い反射防止層の物理的厚さは、好ましくは5〜25nmであることが可能である。
‐本発明の別の実施例では、最後の、または、各々の、面から反対側の金属機能層の上方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が1.8〜2.2である材料製の、屈折率が中程度の反射防止層を備え、この層は好ましくは酸化物を主成分とする。この屈折率が中程度の反射防止層の物理的厚さは、好ましくは5〜35nmである。
‐さらに、最後の、または、各々の、金属機能層の上方に配置された前記反射防止コーティングは、屈折率が2.3〜2.7である材料製の、屈折率が高い反射防止層を備え、この屈折率が高い反射防止層は好ましくは酸化物を主成分とし、および/または、この屈折率が高い反射防止層の物理的厚さは、好ましくは5〜25nmである。
【0039】
本発明の別の一実施態様では、少なくとも一つの機能層は、機能層と機能層の下方にある反射防止コーティングとの間に配置された下方遮断コーティング上に直接堆積され、および/または、少なくとも一つの機能層は機能層と機能層の上方にある反射防止コーティングとの間に配置された上方遮断コーティング下に直接堆積され、また下方遮断コーティングおよび/または上方遮断コーティングはニッケルまたはチタンを主成分とする薄層を備え、その物理的厚さe’は0.2nm≦e’≦2.5nmである。
【0040】
上方にある反射防止コーティングの最後の層、基板から最も遠い層は酸化物を主成分とすることがあり、そのとき、好ましくはストイキメトリーで堆積される。層は、特に二酸化チタン(TiO
x)を主成分とするか、あるいは、亜鉛および錫の混合酸化物(Sn
zZn
yO
x)を主成分とすることがある。
【0041】
そのように、スタックは、好ましくはストイキメトリーで堆積された最後の層(英語では「overcoat」)、すなわち保護層を備えることがある。この層は堆積後スタック内でストイキメトリー的に実質的に酸化されている。
【0042】
本発明は、また、シャーシ構造によって共に保持される少なくとも二つの基板を備える多重グレージングユニットに関するものであり、前記グレージングユニットは外部空間および内部空間の間に分離を実現し、その内部では少なくとも一つの挿入ガス層が二つの基板の間に配置され、一つの基板は本発明によるものである。
【0043】
ある変形形態では、本発明によるスタックはグレージングユニットの面4に配置される。
【0044】
本発明によるグレージングユニットは、本発明によるスタックを支持する少なくとも一つの基板を組み込み、それは場合によっては少なくとも一つの他の基板に組み合わされている。各基板は透明でも着色されていてもよい。基板の一つは少なくとも特にバルク着色されたガラス製のことがある。着色の種類の選択は製造が終了したグレージングユニットに求める光透過率のレベルおよび/または求める比色分析のアスペクトによって変化する。
【0045】
本発明によるグレージングユニットは少なくとも一つの熱可塑性ポリマーシートによって特に少なくとも二つのガラスタイプの剛性基板に組み合わされた薄層化された構造を示すことがあり、その結果、ガラス/薄層スタック/シート(単数または複数)/ガラス/ガラスシートのタイプの構造を示す。ポリマーは特にポリビニルブチラールPVB、エチレン酢酸ビニルEVA、ポリエチレンテレフタレートPET、ポリ塩化ビニルPVCを主成分とすることがある。
【0046】
本発明は、また、薄層スタックでコーティングされた基板および特に本発明による基板を作製するための少なくとも一つの銀を主成分とするまたは銀製の金属機能層および二つの反射防止コーティングの使用に関するものであり、前記(すなわち、スタックが銀を主成分とするまたは銀製の単一の金属機能層を備えるときのスタックの単一の金属機能層)、または、各(すなわち、スタックが銀を主成分とするまたは銀製の複数の金属機能層を備えるときのスタックの全部の金属機能層)金属機能層は、表面占有率50%〜98%、さらに53%〜83%、さらに63%〜83%の不連続層である。
【0047】
本発明は、また、薄層スタックでコーティングされた基板および特に本発明による基板を作製するための少なくとも一つの銀を主成分とするまたは銀製の金属機能層および二つの反射防止コーティングの堆積方法に関するものであり、前記(すなわち、スタックが銀を主成分とする、または、銀製の単一の金属機能層を備えるときのスタックの単一の金属機能層)、または、各(すなわち、スタックが銀を主成分とする、または、銀製の複数の金属機能層を備えるときのスタックの全部の金属機能層)金属機能層は、表面占有率50%〜98%、さらに53%〜83%、さらに63%〜83%の不連続層である。
【0048】
好ましくは、本発明によって、そのように、透明基板上に堆積され、可視光領域での光透過率T
L>50%および可視光内光反射率(スタック側)R
Lが20%未満で、透過および反射においても比較的ニュートラルな色であるが、基板だけの場合よりも低い放射率を示す機能単層の薄層スタックを作製することができる。
【0049】
好ましくは、本発明によって、そのように、銀を主成分とするまたは銀製の全部の金属機能層が不連続であり、それによって、スタックが高い機械抵抗および/または高い化学抵抗を示す、薄層1、2、3、4、さらにより多くの金属機能層(単数または複数)のスタックを作製することができる。
【0050】
本発明の詳細および好ましい特徴は、下記の添付図面を参照しておこなう下記の実施例の説明から明らかになるであろう。但し、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。