【文献】
Int. J. Pharmaceutics, 2012, Vol.423, pp.45-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特にワクチンにおけるアジュバントとして又は免疫療法において使用するための、粒子状実体、例えばナノ粒子又はコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、
i.iNKT細胞アゴニスト、例えば原型iNKT細胞リガンドα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)、
ii.場合により、1つ以上の抗原決定基(群)、例えば腫瘍抗原(群)又は病原体由来の抗原(群)、及び
iii.インビボにおいて該iNKT細胞アゴニスト(群)及び場合により該1つ以上の抗原決定基(群)を、樹状細胞、例えばヒトBDCA3+樹状細胞にターゲティングする標的化剤
を含む、粒子状実体に関する。
【0002】
発明の背景
癌に対する免疫療法は依然として、腫瘍増殖を制御する有望なアプローチであり、抗腫瘍免疫の誘導に大いに有望である。
【0003】
インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞は、「自然免疫(innate)に似た」機能を有し、癌、感染、炎症、及び自己免疫疾患をはじめとする数多くの病態においてプラス及びマイナスの役割を果たす、非定型的Tリンパ球の集団を示す
1−3。インバリアントNKT細胞は、NK系統受容体、及び、少数のVβ鎖と対を形成するセミインバリアントTCRα鎖を発現する。この細胞集団は、そのTCRを通して、抗原提示細胞(APC)によって発現されるCD1d分子によって提示される自己及び外来性の脂質抗原を認識する
4,5。原型iNKT細胞アクチベーターであるα−ガラクトシルセラミド(αGalCer)に応答して、iNKT細胞は、IFN−γ及びIL−4をはじめとする多種多様な免疫刺激サイトカインを産生し、いくつかの共刺激分子をアップレギュレートする
2。これらの事象は、APCの相互成熟、例えば樹状細胞(DC)によるIL−12の放出、並びに、NK細胞、γδT細胞、並びにB及びTリンパ球の下流における活性化に寄与し、免疫応答に対して重要な結果を及ぼす
1〜3,6。この活性化カスケードを通して、α−GalCer及びα−GalCer類似体は、癌におけるワクチン又は療法のための強力なアジュバントと見なされる
1,2,7。
【0004】
通常型DC(DCと呼ばれる)は、α−GalCerに応答したiNKT細胞応答の開始、及び、バイスタンダー細胞の下流における活性化における、主な役者であると考えられている
8〜12。樹状細胞は異種性であり、その表現型、組織内分布及び機能に従って異なるサブタイプに分類され得る
13,14。血液によって運ばれる抗原に対する免疫応答の重要な部位である脾臓における樹状細胞は、主に、CD8α−DC(CD4+及びCD4−サブセットを包含する)、並びにCD103及びCD207分子を発現している又は発現していないCD8α+DCから構成される
16,17。CD8α+DC、最も特定するとCD207+画分は交差提示のために特殊化され、一方、CD8α−DCは、MHCクラスII上で抗原を提示するのがより効率的である
13,16,18,19。iNKT細胞応答の開始に関与するDCサブセットの性質は大部分が依然として知られていない。以前の研究は、α−GalCerの全身投与後、CD207+CD8α+DCは、iNKT細胞の初期活性化に不必要であるが、それらは、IL−12p70の放出を通して、NK細胞によるIFN−γの産生に重要な役割を果たすことを示した
18,20。
【0005】
マウスにおける以前の研究は、α−GalCerの単回投与が、二回目の刺激時にIFN−γを増殖及び産生することができないことによって定義される、iNKT細胞アネルギーを誘導することを示した
10、11。この特性は、ヒトにおけるα−GalCerの臨床使用を強く妨げる
21,22。いくつかの報告は、Bリンパ球をはじめとする不適切なCD1dを有するAPCによるα−GalCerの提示は、iNKT細胞アネルギーに至り得ることを示唆した
10,11,23。対照的に、DCによるα−GalCerの提示は、iNKT細胞アネルギーを回避するようであるが
10,11、これには近年疑問が投げ掛けられている
23。従って、iNKT細胞アネルギーにおけるDCの役割は依然として未解決の問題である。
【0006】
本発明の目的は、特に癌患者における、改善された、免疫をベースとした療法及びワクチンを提供することである。より具体的には、本発明は、効率的なiNKT活性化のための、及び後の時点における効率的なiNKT細胞性適応免疫応答のための、場合により1つ以上の腫瘍抗原(群)と一緒に、iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCerの、特定のAPCへの制御された送達に基づく。
【0007】
発明の要約
本発明は、
i.iNKT細胞アゴニスト、
ii.場合により、1つ以上の抗原決定基(群)、及び
iii.インビボにおいて該iNKT細胞アゴニスト及び場合により該1つ以上の抗原決定基(群)を、ヒト樹状細胞にターゲティングする標的化剤
を含む、粒子状実体に関する。
【0008】
1つの具体的な実施態様において、該iNKT細胞アゴニストはα−GalCer分子又はその機能的誘導体である。別の具体的な実施態様において、該抗原決定基(群)は、腫瘍又は病原体に由来する抗原である。別の具体的な実施態様において、該標的化剤は、該iNKT細胞アゴニストをヒトBDCA3+樹状細胞にターゲティングする。より具体的な実施態様において、該粒子状実体はCD1d分子を含まない。
【0009】
従って、1つの好ましい実施態様において、本発明は、
i.α−ガラクトシルセラミド又はインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞を活性化することのできるその機能的誘導体からなるα−GalCer化合物、及び
ii.場合により、1つ以上の抗原決定基、例えば腫瘍抗原(群)又は病原体に由来する抗原(群)、
iii.インビボにおいて該α−GalCer及び場合により該1つ以上の抗原決定基(群)を、ヒトBDCA3+樹状細胞にターゲティングする標的化剤
を含む、粒子状実体に関する。
【0010】
1つの実施態様において、該粒子状実体は、直径10〜2000nmのサイズを有するナノ粒子である。典型的には、該ナノ粒子は、ポリマーを含有するコア、及びコーティングを含み、該標的化剤は、該コーティングの表面に共有結合的に連結している。特に関連した実施態様において、ナノ粒子の該コアは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はそれらのコポリマーを含む。
【0011】
別の実施態様において、該粒子状実体は、場合によりリンカーを介して、標的化剤に共有結合的に連結した、該iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物からなるコンジュゲートである。
【0012】
α−ガラクトシルセラミドは、(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3,4−オクタデカントリオール又はiNKT細胞を活性化するその機能的誘導体からなり得る。
【0013】
前の実施態様と合わせられ得る実施態様において、該標的化剤は、BDCA−3+樹状細胞をはじめとするヒト樹状細胞の細胞表面マーカーに特異的に結合する結合分子を含む。BDCA3+樹状細胞は、Lin−(CD3、C14、CD16、CD19、CD20、CD56)、HLA−DR+、BDCA3+(CD141としても知られる)、Clec9A+、XCR−1+、TLR3+、CD11c+である。従って、1つの具体的な実施態様において、該標的化剤は、BDCA−3+樹状細胞に特異的な細胞表面マーカーに結合する分子である。例えば、BDCA3+樹状細胞に特異的な該マーカーは、XCR−1及びCLEC9A(DNGR−1としても知られる)からなる群より選択される。
【0014】
前の実施態様と合わせられ得る他の実施態様において、標的化剤として使用するための結合分子は、ヒトBDCA−3+樹状細胞に特異的な細胞表面マーカーの少なくとも1つに特異的に結合する抗体である。
【0015】
前の実施態様と合わせられ得る具体的な実施態様において、該粒子状実体は、CD1d分子を含まない。
【0016】
別の実施態様において、粒子状実体はさらに、抗原決定基を含む。該抗原決定基は、感染剤、病原体、真菌細胞、細菌細胞、ウイルス粒子、又は腫瘍細胞に特異的であり得る。
【0017】
本発明はまた、上記されているような粒子状実体及び1つ以上の生理学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物に関する。該組成物はさらに、iNKT細胞アゴニストを、抗原決定基、及び/又は他の免疫刺激剤(Toll様受容体及び/又はNOD様受容体ファミリーのアゴニストを含むがこれらに限定されない)と共に含み得る。
【0018】
本発明による粒子状実体又は医薬組成物は、
i.ワクチン組成物におけるアジュバントとして;
ii.癌若しくは感染症の予防若しくは治療において;又は
iii.自己免疫疾患及び炎症疾患、例えば喘息などの予防又は治療において
のいずれかに特に有用である。
【0019】
より具体的には、本発明の粒子状実体又は組成物は、腫瘍発症又は感染症の予防又は治療のための方法に使用され得る。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明者らは実際に、抗体(Ab)を備えたナノ粒子(NP)を用いて、能動的にインビボにおいてα−GalCer及び抗原を樹状細胞にターゲティングすることが、iNKT細胞依存性免疫応答を改善し得るという可能性を調べた。その表面上にCD8α+マウスDCへの標的化剤を担持したPLGAをベースとしたナノ粒子を使用して、本発明者らは初めて、CD8α+DCへのα−GalCer化合物及び抗原のインビボにおける送達は、iNKT細胞の初期活性化を増強し、後の時点でiNKT細胞性適応免疫応答(B及びT細胞応答)を増強するだけでなく、iNKT細胞が、さらなる再刺激に応答することを可能とし、癌療法及びワクチン接種のための新規戦略への道を開拓することを示す。
【0021】
従って、1つの態様において、本発明は、
i.インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞アゴニスト、及び
ii.場合により、1つ以上の抗原決定基、及び
iii.インビボにおいて該iNKT細胞アゴニスト及び場合により該1つ以上の抗原決定基(群)を樹状細胞にターゲティングする標的化剤
を含む、粒子状実体を提供する。
【0022】
iNKT細胞アゴニスト
本明細書において使用される「iNKT細胞アゴニスト」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、典型的には抗原提示細胞(APC)によってCD1dのコンテクストにおいて提示され、かつiNKT細胞を活性化、すなわち、特異的に、iNKT細胞によるサイトカイン産生を促進することのできる、脂質から導かれた任意の誘導体又は類似体を指す。典型的には、iNKT細胞アゴニストはα−ガラクトシルセラミド化合物である。
【0023】
本明細書において使用される「α−ガラクトシルセラミド化合物」又は「α−GalCer化合物」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、可変長のアシル及びスフィンゴシン鎖を有するセラミド脂質にα結合によって付着したガラクトース炭水化物を含む、スフィンゴ糖脂質から導かれた任意の機能的誘導体又は類似体を指す(Van Kaer L. α-Galactosylceramide therapy for autoimmune diseases: Prospects and obstacles. Nat. Rev. Immunol. 2005; 5: 31-42)。
【0024】
機能的誘導体は、iNKT細胞を活性化する能力を保持する。
【0025】
様々な刊行物が、α−GalCer化合物及びその合成を記載している。例示的であって決して網羅的なものではない、このような参考文献のリストとしては、Morita, et al., J. Med. Chem., 25 38:2176 (1995); Sakai, at al., J. Me d. Chem., 38:1836 (1995); Morita, et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 5:699 (1995); Takakawa, etal., Tetrahedron, 54:3150 (1998); Sakai, at al., Org. Lett., 1:359 (1998); Figueroa-Perez, et al., Carbohydr. Res., 328:95 (2000); Plettenburg, at al., J. Org. Chem., 67:4559 (2002); Yang, at al., Angew. Chem., 116:3906 (2004); Yang, at al., Angew. Chem. Int. Ed., 43:3818 (2004); and, Yu, etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102(9):3383-3388 (2005)が挙げられる。
【0026】
α−GalCer化合物の例を記載した特許及び特許出願の例としては、米国特許5,936,076号;米国特許第6,531,453号、米国特許第5,S53,737号、米国特許第8,022,043号、米国特許出願第2003030611号、米国特許出願第20030157135号、米国特許出願第20040242499号、米国特許出願第20040127429号、米国特許出願第20100104590号、欧州特許第EP0609437号及び国際特許出願第W02006026389号が挙げられる。
【0027】
典型的なα−GalCer化合物はKRN7000((2S,3S,4R)−1−0−(α−D−ガラクトピラノシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3,4−オクタデカントリオール))(KRN7000、a novel immunomodulator, and its antitumor activities. Kobayashi E, Motoki K, Uchida T, Fukushima H, Koezuka Y. Oncol Res. 1995;7(10-11):529-34)である。
【0028】
他の例としては、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−2−ドコサノイルアミノ(docosanoylamina)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−イコサノイルアミノ−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−オクタデカノイルアミノ−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−2−デカノイルアミノ−1−(α−D−40ガラクトピラノシルオキシ)−3−オクタデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3−テトラデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−3−ヘキサデカノール、
(2R,3S)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−3−ヘキサデカノール、
(2S,3S)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−3−ヘキサデカノール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3−オクタデカノール、
(2S,3R,4E)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−オクタデカノイルアミノ−4−オクタデセン−3−オール、
(2S,3R,4E)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−4−オクタデセン−3−オール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3,4−オクタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3,4−ペンタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラコサノイルアミノ−3,4−ウンデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−ヘキサコサノイルアミノ−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−オクタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−ペンタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−ウンデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシヘキサコサノイルアミノ]−3,4−オクタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシヘキサコサノイルアミノ]−3,4−ノナデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシヘキサコサノイルアミノ(hydroxyhexacosanoylamina)]−3,4−イコサンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(S)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−3,4−ヘキサデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(S)−2−ヒドロキシテトラコサノイルアミノ]−16−メチル−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−16−メチル−2−テトラコサノイルアミノ−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシトリコサノイルアミノ]−16−メチル−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−[(R)−2−ヒドロキシペンタコサノイルアミノ]−16−メチル−3,4−オクタデカンジオール、
(2S,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−オレオイルアミノ−3−オクタデカノール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−ヘキサコサノイルアミノ−3,4−オクタデカンジオール、
(2S,3S,4R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−オクタコサノイルアミノ−3,4−ヘプタデカンジオール、
(2R,3R)−1−(α−D−ガラクトピラノシルオキシ)−2−テトラデカノイルアミノ−3−ヘキサデカノール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−2−(4−ヘキシル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−3,4−ジヒドロキシオクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−2−(4−ヘプチル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−3,4−ジヒドロキシオクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−2−(4−ヘキサデシル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−3,4−ジヒドロキシオクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−トリコシル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−テトラコシル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−ペンタコシル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−(6−フェニルヘキシル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−(7−フェニルヘプチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
(2S,3R,4S,5R)−2−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(4−(8−フェニルオクチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)オクタデシルオキシ)−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−3,4,5−トリオール、
11−アミノ−N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−28−ピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)ウンデカンアミド、
12−アミノ−N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−オキシ)オクタデカン−2−イル)ドデカンアミド、
N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2Hピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)−11−ヒドロキシウンデカンアミド、
N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2Hピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)−12−ヒドロキシドデカンアミド、
8−(ジヘプチルアミノ)−N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)オクタンアミド、
N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2Hピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)−11−(ジペンチルアミノ)ウンデカンアミド、
11−(ジヘプチルアミノ)−N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)ウンデカンアミド、
N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2Hピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)−11−メルカプトウンデカンアミド、
N−((2S,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4,5−ジヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2Hピラン−2−イルオキシ)オクタデカン−2−イル)−12−メルカプトドデカンアミドが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施態様において、α−GalCer化合物はPEG化されている。本明細書において使用される「PEG化」という用語は、化合物部分(すなわちα−GalCer化合物)と、少なくとも1つのポリアルキレン単位を含有するコンジュゲート部分(群)とのコンジュゲーションを指す。特に、PEG化という用語は、化合物部分(すなわちα−GalCer化合物)と、少なくとも1つのポリエチレングリコール単位を有するコンジュゲート部分とのコンジュゲーションを指す。
【0030】
α−ガラクトシルセラミドの誘導体はまた、別の分子との化学的カップリング(コンジュゲーション)のために修飾された、α−ガラクトシルセラミドの機能的誘導体を含む。
【0031】
「iNKT細胞を活性化する」又は「iNKT免疫応答を誘導する」という語句は類似の意味を有し、例えば、α−GalCer化合物によるiNKT細胞におけるIFN−γなどのサイトカインの産生の観察される誘導を指す。iNKT細胞によるサイトカイン(例えばIFN−γ)産生の分析は、PBS−57のローディングされたCD1dテトラマー及びTCRβ抗体を使用した細胞内フローサイトメトリーによって実施され得る。
【0032】
1つの具体的な実施態様において、本発明よる粒子状実体は、(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3,4−オクタデカントリオール又はその機能的誘導体を含む。
【0033】
標的化剤
特定の樹状細胞、特にマウスCD8α+又はヒトにおいて相当するBDCA3+樹状細胞に、場合により1つ以上の抗原決定基(群)と共に、α−GalCer化合物などのiNKT細胞アゴニストを効率的に送達することは、iNKT細胞の早期活性化を増強することを可能とさせ、かつiNKT細胞がさらなる再刺激に対して応答することを可能とすることは、本発明の重要な発見である。
【0034】
従って、本発明の粒子状実体は、インビボにおいて該iNKT細胞アゴニストを、場合により1つ以上の抗原決定基(群)、例えば腫瘍抗原又は病原体に由来する抗原と一緒に、樹状細胞に、例えばヒトBDCA3+樹状細胞、又は類似の表現型を有する他の哺乳動物種の関連細胞、例えばマウス種のCD8α+樹状細胞にターゲティングする標的化剤を含む。
【0035】
1つの実施態様において、該標的化剤は、ヒト樹状細胞の細胞表面マーカーに特異的に結合する分子である。具体的な実施態様において、該標的化剤は、ヒトBDCA3+樹状細胞の細胞表面マーカーに特異的に結合する。
【0036】
1つの実施態様において、ヒトBDCA3+樹状細胞の「細胞表面マーカー」は、BDCA3+細胞の外表面上に発現される、ヒトBDCA3+樹状細胞のタンパク質又は生体分子を指す。より具体的には、それは、BDCA3+樹状細胞の表面上に発現され、抗体によって特異的に認識され得る、BDCA3+細胞の抗原決定基に相当し得る。好ましくは、標的化剤は、BDCA3+細胞に特異的である、すなわち、他の樹状細胞上に発現されていない(又は低いレベルで発現されている)細胞表面マーカーに結合する。1つの具体的な実施態様において、該標的化剤は、BDCA3+細胞に特異的な細胞表面マーカーに結合し、該細胞表面マーカーは、CLEC9A陰性細胞には発現されていない。
【0037】
1つの実施態様において、ヒトBDCA3+樹状細胞の細胞表面マーカーに特異的に結合する分子は、ヒトBDCA3+樹状細胞の該細胞表面マーカーの細胞外ドメインに1000μM以下、10μM以下、1μM以下、100nM以下、又は10nM以下のK
Dで結合する分子である。本明細書において使用されるK
Dという用語は、K
dとK
aの比(すなわちK
d/K
a)から得られ、モル濃度(M)として表現される、解離定数を指すことが意図されている。K
D値は、当技術分野において十分に確立された方法を使用して決定され得る。分子、例えばタンパク質又は抗体のK
Dを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによる、又はビアコア(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0038】
BDCA3+樹状細胞は、Lin−(CD3、C14、CD16、CD19、CD20、CD56)、HLA−DR+、BDCA3+(CD141としても知られる)、Clec9A+、XCR−1+、TLR3+、CD11c+である。従って、1つの具体的な実施態様において、該標的化剤は、CLEC9A(例えば配列番号1のヒトCLEC9A)又はXCR−1(例えば配列番号2のヒトXCR−1)からなる群より選択されるBDCA−3+樹状細胞に特異的な細胞表面マーカーに結合する分子である。従って、1つの実施態様において、粒子状実体は、標的化剤として、CLEC9A及び/又はXCR−1に、典型的には、CLEC9Aの細胞外ドメイン又はXCR−1の細胞外ドメインに特異的に結合する分子を含む。
【0039】
ヒト樹状細胞の細胞表面マーカーに対する、好ましくはヒトBDCA3+特異的細胞表面マーカーに対する結合特異性を有することが知られる任意の分子を、本発明の粒子状実体の調製に使用することができる。抗体が特に適切である。なぜなら、所望の結合特異性を有する抗体は、例えば、抗体ライブラリーを所望の標的に対してスクリーニングすることによって、ルーチン的に生成され得るからである。スクリーニング法としては、例えば、ファージディスプレイ技術又は当技術分野において公知の他の関連した技術が挙げられ得る。このような抗体はまた、ナノ粒子に容易に移植され得るか、又は、慣用的な化学的カップリング技術を使用して、α−GalCer化合物などのiNKT細胞アゴニストに直接コンジュゲートされ得る。
【0040】
それ故、好ましい実施態様において、本発明の粒子状実体は、標的化剤として、ヒトBDCA3+樹状細胞の細胞表面タンパク質に、例えば少なくとも100μM以下、10μM以下、1μM以下、100nM以下、又は10nM以下のK
Dで、特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、例えば抗XCR−1抗体又は抗CLEC9A抗体を含む。
【0041】
本明細書において使用される抗体という用語は、完全長抗体及びその任意の抗原結合フラグメント又は一本鎖を含む。「完全長」抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(VHと略称される)、並びに3つのドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと略称される)、並びに1つのドメインを含む軽鎖定常領域(CL)を含む。VHドメイン及びVLドメインはさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域の介在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変性領域にさらに細分される。各VH及びVLは、それ故、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で並んだ3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0042】
市販されている抗体又はその誘導体を、本発明の粒子状実体に使用し得る。抗CLEC9A抗体は、例えば、Miltenyi Biotec (Germany)から入手できる。
【0043】
iNKT細胞アゴニスト、場合により抗原決定基(群)及び標的化剤を担持したナノ粒子
標的化剤による、iNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)及び場合により抗原決定基(群)の効率的なターゲティングのために、該iNKT細胞アゴニスト及び場合により該抗原決定基(群)を、間接的又は直接的なカップリングのいずれかによって標的化剤にカップリングさせて、粒子状実体を形成しなければならない。間接的なカップリングの一例は、iNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)、場合により抗原決定基(群)の、該iNKT細胞アゴニスト及び場合により該抗原決定基(群)を適切な樹状細胞に適切にインビボにおいて送達するための、標的化剤をさらに担持するナノ粒子への封入である。このような実施態様において、iNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)、場合により1つ以上の抗原決定基(群)、及び標的化剤は、同じ粒子状実体、すなわちナノ粒子に物理的に関連付けられている。
【0044】
理想的には、ナノ粒子は、以下の特徴を有し得る:
− それは生体適合性である、
− それは、iNKT細胞アゴニスト、場合により抗原決定基(群)、及び標的化剤を、共有結合又は非共有結合的な連結を介して物理的にカップリングさせ得る。
【0045】
「物理的カップリング」は、標的化剤及び/又はiNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)及び場合により抗原決定基(群)のナノ粒子の構成成分への共有結合、或いは、静電気的相互作用又はイオン相互作用などの非共有結合的な相互作用のいずれかから生じ得る。
【0046】
ヒトにおける活性成分のインビボ送達のために当技術分野において記載された任意のナノ粒子を使用し得る。このようなナノ粒子としては、例えば、リポソーム及びミセル、ナノスフィア又はナノ粒子、ナノチューブ、ナノ結晶、ヒドロゲル、カーボンベースのナノ粒子などが挙げられる(例えばPeer et al., 2007, Nature nanotechnology, vol. 2, pp751-760参照)。
【0047】
適切なナノ粒子の例はまた、Cruz et al J Control Release 2010, 144(2):118-26にも記載されている。
【0048】
好ましくは、本発明によるナノ粒子は、直径1〜2000nm、例えば10〜500nm又は10〜200nmの平均直径を有する。
【0049】
本明細書において使用される、ナノ粒子のサイズは、Cruz et al, 2011, Cruz et al.,2010
30,31に記載のような動的光散乱測定の10回の測定値の平均値±SDに相当し得る。
【0050】
本発明のナノ粒子は、半導体、金属(例えば金、銀、銅、チタン、ニッケル、白金、パラジウム及び合金)、金属酸化物ナノ粒子(例えばCr
2O
3、CO
3O
4、NiO、MnO、CoFe
2O
4及びMnFeO
4)などの、ただしこれらに限定されない、無機コアを含み得る。
【0051】
他の実施態様において、ナノ粒子は、1つ以上のポリマー、又はそれらのコポリマー、例えば1つ以上のデキストラン、カルボキシメチルデキストラン、キトサン、トリメチルキトサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ無水物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド(polyacylamide)、セルロース、ヒプロメロース(hydromellose)、デンプン、デンドリマー、ポリアミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−コ−プロピレングリコール、脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、及びそれらのコポリマー、例えば乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)、又はポリ(ε−カプロラクトン)を有する、少なくとも1つのコアを含む。
【0052】
一般的に、ナノ粒子の表面はまた、溶解度、生体適合性などの所望の物理的特性を生じさせるために、及び他の生体分子(例えばiNKT細胞アゴニスト、抗原決定基(群)、又は標的化剤)との化学的連結を促進するために、官能基化又はコーティングされていてもよい。
【0053】
例えば、ナノ粒子の表面は、カルボキシル基、アミン基、カルボキシル/アミン、ヒドロキシル基、ポリマー、例えばシラン、デキストラン、若しくはPEG、又はその誘導体などの、ただしこれらに限定されない、1つ以上の化学的リンカーを取り込むことによって官能基化されていてもよい。
【0054】
具体的な実施態様において、ナノ粒子は、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、又はその混合物からなる群より選択されるポリマーを含むコアを有する。別の具体的な実施態様において、ナノ粒子は乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)を含む。
【0055】
他の適切なポリマーは、ポリ(g−グルタミン酸)、ポリ(a−アスパラギン酸)、ポリ(e−リジン)、ポリ(a−グルタミン酸)、ポリ(a−リジン)、ポリ−アスパラギン、又はその誘導体、及びその混合物からなる群より選択されるポリアミノ酸を含み得る。
【0056】
具体的な実施態様において、本発明のナノ粒子は、ポリマーを含有するコア、及びコーティングを含み、標的化剤は、コーティングの表面への共有結合的な連結によってナノ粒子に付着している。さらなる具体的な実施態様において、ナノ粒子は、
(i)その表面上にコーティングを有する、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はそれらのコポリマーから作られたコア、
(ii)有効量のiNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物、
(iii)場合により、有効量の1つ以上の抗原決定基(群)、例えば腫瘍抗原又は病原体に由来する抗原、
(iv)ナノ粒子のコーティングに共有結合的に付着した抗体
を含み、該抗体は、BDCA3+樹状細胞に特異的に結合する。
【0057】
1つの具体的な実施態様において、ナノ粒子に含まれる該抗体は、CLEC9A陰性又はXCR1陰性樹状細胞に結合しない。
【0058】
より具体的な実施態様において、該抗体は、BDCA3+樹状細胞上に発現されるCLEC9A又はXCR1細胞表面マーカーに特異的に結合する。
【0059】
他の適切なナノ粒子は、場合により有機又は無機安定化剤、例えばシラン、デキストラン又はPEGを用いてコーティングされた、酸化物及びハイブリッドナノ構造、例えば酸化鉄ナノ粒子又はポリマーベースのナノ粒子を含む(例えば、S. Chandra et al. / Advanced Drug Delivery Rev (2011), doi:10.1016/j.adr.2011.06.003参照)。
【0060】
iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物、及び/又は場合により1つ以上の抗原決定基(群)、例えば腫瘍細胞によって又は病原体によって発現される抗原、及び/又は標的化剤を、ナノ粒子に封入又は化学的にカップリングさせるための方法は当技術分野において公知である。例えば、ナノ粒子は、α−GalCer化合物及び場合により1つ以上の抗原決定基(群)と一緒に調製され、α−GalCer化合物及び場合により該1つ以上の抗原決定基(群)はナノ粒子に封入される(非共有結合によって保持される)。あるいは、ナノ粒子を調製し、iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物、及び場合により、該1つ以上の抗原決定基(群)を、慣用的なカップリング技術を介して、ナノ粒子の官能基化された表面に化学的に連結させる。α−GalCerの封入された、PLGAをベースとしたナノ粒子の調製例は、Cruz et al, 2011 [Mol Pharm 2011, 8:520-531]及びCruz et al. 2010 [J Control Release 2010, 144:118-126]に記載されている。
【0061】
1つの具体的な実施態様において、ナノ粒子は、ナノ粒子1mgあたり0.01〜1000ngの量で封入されたα−GalCerを含む。具体的な実施態様において、ナノ粒子1mgあたり1ngから1000ngのiNKT細胞アゴニストが使用される。具体的な実施態様において、本発明のナノ粒子はさらに、次の節により詳細に記載されるように、抗原決定基を含む。このような抗原決定基は、標的化剤と同様に、封入又はナノ粒子の表面に付着され得る。
【0062】
コンジュゲート
あるいは、本発明の粒子状実体は、iNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)の、標的化剤への、直接的か又は場合によりリンカーを介してかのいずれかでの化学的カップリングによりコンジュゲートを形成することからもたらされる。
【0063】
それ故、このようなコンジュゲートは、iNKT細胞アゴニストを標的化剤と、場合によりリンカーを介して、カップリング(共有結合的又は非共有結合的なカップリングのいずれかによる)させることによって得られる。
【0064】
iNKT細胞アゴニストと標的化剤との間の共有結合的な連結は、典型的には、その機能性を維持しつつ又は切断を可能としつつ、両方の分子の共有結合のためのカップリング剤又は架橋剤及び場合によりリンカーの使用を介して得られる。様々なカップリング剤又は架橋剤を、本発明のコンジュゲートの作製のために使用し得る。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky ef a/. , 1984 J. Exp. Med. 160: 1686; Liu, MA ef a/., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648参照)。他の方法としては、Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78,1 18-132; Brennan ef a/. , 1985 Science 229:81 -83、及びGlennie ef a/. , 1987 J. Immunol. 139: 2367- 2375に記載のものが挙げられる。リンカーの種類の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、及びペプチド含有リンカーが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、リソソーム区画内の低いpHによる切断を受けやすい又はプロテアーゼによる切断を受けやすいリンカーが選択され得る。
【0065】
他の化合物にα−GalCer化合物をカップリングさせる方法についての参考文献については、例えば、Bioorg Med Chem Lett. 2004 14(2):495-8及びDaoudi et al, 1999, Bioconjug Chem. 10(6):1021-31を参照されたい。
【0066】
標的化剤へのα−GalCer化合物の共有結合的コンジュゲーションのために、ビオチン化α−GalCer化合物を、ストレプトアビジン−抗体又はアビジン−抗体と結合(associate)させ得る(McReynolds et al, Bioconjugate Chem., 1999, 10 (6), pp 1021-1031 DOI: 10.1021/bc990050x)。
【0067】
1つの具体的な実施態様において、該コンジュゲートは、標的化剤として、iNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)と共有結合的にコンジュゲートした、少なくとも1つの抗体分子を含む。抗体分子を含むコンジュゲート(これはまた、イムノコンジュゲート又はADC(抗体−薬物−コンジュゲート、antibody-drug-conjugates)とも称される)を調製するための方法は、当技術分野において広く記載されている。
【0068】
治療剤をタンパク質、特に抗体にコンジュゲートさせるための技術は、当技術分野において周知であり、例えばFlygare et al (Chem Biol Drug Des 2013; 81: 113-121)に記載されている。
【0069】
1つの実施態様において、該コンジュゲートは、1分子の標的化剤(例えば抗CLEC9A又は抗CXR1抗体)にコンジュゲートした1分子のiNKT細胞アゴニスト(例えばα−GalCer化合物)を含む。具体的な実施態様において、該コンジュゲートは、複数の標的化剤にコンジュゲートした複数のα−GalCer化合物を含んでいてもよい。
【0070】
具体的な実施態様において、本発明のコンジュゲートは、1つ以上の抗XCR−1抗体又は抗CLEC9A抗体に共有結合的に連結した、1つ以上のiNKT細胞アゴニスト、例えば1つ以上のα−GalCer化合物を含む。
【0071】
抗原決定基
本発明の粒子状実体は、アジュバントとして、すなわち、抗原決定基に対する免疫応答を増強させるために使用され得る。従って、本発明の粒子状実体は、抗原と共に、2つの別々の医薬組成物として、又は同組成物の一部として、又は同じ粒子状実体の一部としてのいずれかとして投与され得る。別々に投与されるならば、両方の組成物は、順次又は同時に投与され得る。具体的な実施態様において、抗原及び粒子状実体は同時に投与され、例えば、同組成物に製剤化される。他の実施態様において、該抗原は、ナノ粒子又はコンジュゲートなどの粒子状実体に含まれる。
【0072】
抗原決定基を有する得られた粒子状実体又は組成物は免疫原性であり得、このことは、該抗原決定基に関して、体液性又は細胞性免疫応答、好ましくはその両方を誘起できることを意味する。好ましくは、抗原決定基は、単独で投与された場合には、免疫エフェクター応答を誘導できない。従って、本明細書において使用される「抗原決定基」又は「抗原」という用語は、免疫系を有する宿主又は動物又はヒトに導入された場合に、免疫系の抗原認識分子、例えば免疫グロブリン(抗体)又はT細胞抗原受容体(TCR)と特異的に相互作用ことのできる任意の物質(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖、糖タンパク質、糖脂質、核酸、又はその組合せ)を指す。抗原はそれ自体免疫原性でなくてもよく、本発明の粒子状実体、例えばナノ粒子又はコンジュゲートは、アジュバントとして使用され、すなわち共投与された場合に抗原決定基に対する宿主免疫応答を増大(増強)させることができる。
【0073】
抗原決定基は、B細胞又はT細胞又はその両方によって認識される抗原の一部からなる「エピトープ」を含む。例えば、このようなエピトープと、免疫グロブリン(抗体)又はT細胞抗原受容体(TCR)の抗原認識部位との相互作用により、抗原特異的免疫応答が誘導される。
【0074】
該組成物中に使用される又は本発明による粒子状実体と共に使用される抗原決定基は、腫瘍細胞から導かれ得るか、又は腫瘍細胞に特異的であり得、すなわちそれは腫瘍抗原である。本明細書において使用される「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍特異的抗原(TSA)及び腫瘍関連抗原(TAA)の両方を含む。腫瘍特異的抗原は、腫瘍細胞によってのみ発現される抗原として知られるが、一方、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞上に発現されるが、いくつかの正常な細胞上にも発現され得る。腫瘍特異的抗原及び腫瘍関連抗原は、当技術分野において記載されている。このような腫瘍抗原は、ヒト上皮細胞ムチン(Muc−1:乳癌細胞及び膵癌細胞上に存在する、Muc−1糖タンパク質についての20アミノ酸のコアのリピート)、Ha−ras発癌遺伝子産物、p53、癌胎児抗原(CEA)、raf発癌遺伝子産物、GD2、GD3、GM2、TF、sTn、MAGE−1、MAGE−3、チロシナーゼ、gp75、メランA/Mart−1、gp100、HER2/neu、EBV−LMP1及び2、HPV−F4、6、7、前立腺血清抗原(PSA)、α−胎児タンパク質(AFP)、CO17−1A、GA733、gp72、p53、ras発癌遺伝子産物、プロテイナーゼ3、ウィルムス腫瘍抗原−1、テロメラーゼ、HPV E7及びメラノーマガングリオシド、並びに現在公知の又は将来に同定される任意の他の腫瘍抗原であり得るがこれらに限定されない。
【0075】
他の抗原決定基としては、寄生虫又は真菌(例えばカンジダ、白癬菌)、細菌細胞(例えばブドウ球菌、肺炎球菌又は連鎖球菌細胞、ボレリア、シュードモナス、リステリア)、ウイルス粒子(例えばHIV、HBV、HPV、HSV、HVT、CMV、HTLV、C型肝炎ウイルス、ロタウイルス、フラビウイルス、ラウス関連ウイルス、又はSARSウイルス、黄熱病ウイルス、又はデング熱ウイルス)の抗原、又は任意のその一部を含むがこれらに限定されない。
【0076】
具体的な実施態様において、該抗原決定基は、病原体に由来する抗原である。本明細書において使用される病原体に由来する抗原は、病原体によって発現されるが哺乳動物細胞上、特にヒト細胞上には発現されない抗原を指す。例えば、それはウイルス、細菌、又は哺乳動物の真菌病原体によって発現される抗原である。
【0077】
医薬組成物
本発明は、前の節に記載のように、iNKT細胞アゴニスト、場合により抗原決定基、及び樹状細胞への標的化剤を含有する本発明の粒子状実体並びに、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0078】
1つの具体的な実施態様において、本発明は、粒子状実体を、前の節に記載の少なくとも以下の3つの成分
− iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物、
− 場合により、1つ以上の抗原決定基(群)、
− 樹状細胞、好ましくは特にBDCA3+樹状細胞への標的化剤
と共に含む医薬組成物に関し、該組成物は、該抗原に対する免疫応答を誘導することができる。
【0079】
本発明の組成物は、免疫刺激を必要とする(例えば、感染症、癌及び/又はアレルギー疾患を治療又は予防するために)個体への投与に特に有用であり、有効量の本発明による粒子状実体、例えば、前の節に記載されたナノ粒子又はコンジュゲートを含む。
【0080】
本発明の組成物は、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤を使用して製剤化され得る。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、無菌等張水性緩衝液など及びその組合せである。さらに、所望であれば、製剤はまた、補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、免疫刺激剤、又は、医薬組成物若しくはワクチンの効力を増強させる他のアジュバントを含み得る。非経口及び経口薬物送達のための賦形剤並びに製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences 19
th Ed. Mack Publishing (1995)に示されている。
【0081】
例えば、本発明のワクチン及び医薬組成物は、経皮送達による、又は経粘膜送達による(経口、頬側、鼻腔内、眼内、膣内、直腸内、脳内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下経路を含むがこれらに限定されない)、吸入による、又は任意の他の標準的な免疫化経路による投与のために製剤化される。
【0082】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、非経口送達のために、すなわち、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、皮下(s.d.)又は皮内による送達のために製剤化され得る。
【0083】
特定の投与計画、すなわち、投与量、タイミング及び反復は、特定の個体及びその個々の病歴に依存する。
【0084】
本発明はまた、医薬組成物又はワクチン組成物の調製のための、以下の1つ以上の成分で充填された1つ以上の容器を含むキットに関する:
− iNKT細胞アゴニスト、例えばα−GalCer化合物、
− 樹状細胞、好ましくはBDCA3+樹状細胞への標的化剤、
− 場合により、1つ以上の抗原決定基(群)、
− 1つ以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤、
− 場合により、1つ以上の補助物質。
【0085】
本発明によるキット又は組成物には、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の注意書き、及び/又は、ワクチン又は医薬組成物をすぐに使用できるように調製する方法に関する説明書が添付されていてもよい。
【0086】
ワクチン組成物において、該組成物はさらに、他の適切なアジュバント又は賦形剤を含み得る。
【0087】
使用法
本発明の粒子状実体及び医薬組成物は、例えば、様々な感染症を防ぎ、及び/又は処置するのに、或いは、腫瘍又は癌を治療又は予防するのに有用である。
【0088】
本明細書において使用される「処置する」という用語は、このような疾患を患う被験者における、疾患の少なくとも1つの症状を予防、低減、寛解、又は抑制することを意味する。
【0089】
例えば、本発明の粒子状実体及び/又は医薬組成物は、ウイルス感染(例えばインフルエンザウイルス、白血病ウイルス、免疫不全ウイルス、例えばHIV、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ポックスウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス[CMV]、エプシュタイン・バーウイルス)、細菌感染(例えばブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、淋菌、ボレリア、シュードモナスなど)、及び真菌感染(例えばカンジダ、アスペルギルス属、白癬菌、ピチロスポルムなど)を治療又は予防するために使用され得る。
【0090】
本発明の粒子状実体及び/又は医薬組成物は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、大腸癌、メラノーマ、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌、腎臓(renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肉腫、血液系の癌(白血病)、星状細胞腫、及び頭頸部癌を含むがこれらに限定されない、腫瘍又は癌を治療又は予防するのに使用され得る。
【0091】
例えば、本発明は、癌、感染症、並びに/又は炎症疾患(例えば喘息)及び自己免疫疾患を患う被験者を処置する方法に関し、該方法は、該被験者に、治療有効量の本発明の粒子状実体又は本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0092】
より具体的には、本発明の粒子状実体及び/又は医薬組成物は、癌、感染症、炎症疾患(例えば喘息)及び自己免疫疾患を処置するのに使用され得る。
【0093】
以下において、本発明は、以下の実施例及び図面を用いて説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】DCは、iNKT細胞の初回活性化のために、及びiNKT細胞アネルギーの防止のために重要である。(A)トランスジェニックCD11c.DTRマウスに、PBS又はDTを注射し、24時間後にα−GalCerを接種した(100ng/マウス)。(B)脾臓DCをCD11c発現に基づいて選別し、α-GalCer(25ng/ml)を用いて2時間かけて感作した。その後、マウスに、α−GalCer感作DC又は遊離α−GalCer(100ng/マウス)を注射した。A及びB、マウスを、α−GalCer(A及びB)又はDC/α−GalCer(B)の接種(初回活性化、灰色)から3時間後に安楽死させたか、又は2回目のα−GalCer(100ng/マウス)の静脈内注射を7日後に受けた(リコール応答、黒色)。これらの後者の群においては、動物をα−GalCerによるチャレンジから3時間後に屠殺した。その後、脾臓iNKT細胞を細胞内IFN−γの産生について分析した。2回の(A)又は3回の(B)の中1つの実験が代表として示されている(平均値±SD)(n=4)。
**p<0.01、
*p<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図2】CD8α
+及びCD8α
−DCは、iNKT細胞を活性化するその能力において異なる。A、B及びC、マウスに、α−GalCer(2μg)を静脈内注射した。2時間後、脾臓CD8α
+及びCD8α
−DCを、CD11c、CD11b及びCD8の発現に基づいて選別し(A)、選別されたNKT細胞(B)と共に、又は抗原提示の読み出し情報としてのα−GalCer応答性IL−2産生iNKT細胞ハイブリドーマDN32.D3(C)と共に培養した。B及びC、サイトカイン産生をELISAによって定量した。結果は、4回の実験の平均値±SDを示す。D、CD8α
+及びCD8α
−DC上のCD1d発現をフローサイトメトリーによって評価した。アイソタイプ対照を用いての染色は、両方のDCサブセットにおいて同一であった。3回の中1つの実験が代表として示されている。E、レシピエントマウスに、Cy5のコンジュゲートしたα−GalCer、又は対照としてのコンジュゲートしていないα−GalCer(20μg)を静脈内注射し、CD8α
+DC(灰色)及びCD8α
−DC(黒色)によるCy5の取り込みを2時間後にフローサイトメトリーによって分析した。2回の独立した実験の中の代表的なヒストグラムが示されている。
***p<0.001、
*p<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図3】NP/DEC205へのα−GalCerの封入はCD8α
+DCをターゲティングし、インビトロにおいてiNKT細胞を効率的に活性化する。A、BM−DC(5×10
5個の細胞/ウェル)を、抗DEC205抗体(NP/DEC205)又はアイソタイプ対照(NP/IgG)抗体を備えたAlexaFluor647標識PLGA粒子の存在下又は非存在下で2時間曝露し、洗浄し、抗CD11c抗体及び抗DEC205抗体を用いて標識した。その後、DEC205
+及びDEC205
−BM−DCにおけるAlexaFluor647標識をフローサイトメトリーによって評価した。2回中1回の実験の代表的なヒストグラムが示されている。B、脾臓MNC(1×10
6個の細胞/ウェル)を、AlexaFluor647標識NP/DEC205又はNP/IgGの存在下又は非存在下で2時間インキュベートした。その後、CD8α
−及びCD8α
+DC集団を、CD11c、CD11b及びCD8の発現に基づいて区別し、フローサイトメトリーによって分析した。示されているのは、2回の独立した実験(n=4)のAlexaFluor647陽性DCの代表的なヒストグラム(左パネル)及び平均比率±SD(右パネル)である。特に、NP/IgGを脾臓細胞と共にインキュベートした場合に、2つのDCサブセット間に差異は観察されなかった。C、BM−DC(1×10
5個の細胞/ウェル)を、iNKT細胞ハイブリドーマDN32.D3(1×10
5個の細胞/ウェル)と共に様々な用量の遊離α−GalCer又はNP/DEC205若しくはNP/IgGにベクター化されたα−GalCerの存在下で24時間共培養した。特に、BM−DCのみとインキュベートした場合、α−GalCerのローディングされた又はローディングされていないNP/DEC205及びNP/IgGは、DCの成熟を誘導できなかった(示されていない)。D、WT及びCD1d
−/−マウスからのBM由来DCを、DN32.D3と共に、遊離又はベクター化α−GalCer(25ng/ml)の存在下で24時間培養した。C及びD、IL−2の産生は、ELISAによって定量された。データは、4回(C)及び3回(D)の独立した実験の平均値±SDを示す。B−D、
**p<0.01、
*p<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図4】NP/DEC205へのα−GalCerの封入は、インビボにおいてiNKT細胞を効率的に活性化する。マウスに、PBSのみ、或いは、遊離可溶形又はNP/DEC205若しくはNP/IgGに封入されたα−GalCer(5ngのα−GalCer/マウス)を静脈内注射した。A、3時間後、マウスから採血し、脾臓iNKT細胞(TCRβ
+PBS57のローディングされたCD1dテトラマー
+)を細胞内IFN−γ産生についてスクリーニングした(左パネル)。IFN−γについて陽性のiNKT細胞の平均比率±SDが示されている。血清中のIL−4の産生を、ELISAによって定量した(右パネル)(n=3〜8)。B、トランスジェニックCD11c.DTRマウスに、PBS又はDTを注射し、24時間後にNP/DEC205/α−GalCer(5ng/マウス)を接種した。IFN−γ
+iNKT細胞の出現頻度±SDが示されている(n=3)。C、IFN−γ
+NK細胞(CD3ε
−NK1.1
+)及びγδTリンパ球(CD3ε
+TCRγδ
+)の出現頻度±SDが示されている(刺激から4時間後)。DC(DC11c
hi)によるCD86の発現(平均蛍光強度として表現)が示されている。2回の中の代表的な実験(平均値±SD)が示されている(n=4)。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図5】CD8α
+DCへのα−GalCerのターゲティングは、インビボにおいてiNKT細胞アネルギーを防ぐ。マウスに、PBS、遊離α−GalCer(100ng/マウス)、又はNP/DEC205若しくはNP/IgGに封入されたα−GalCer(5ng/マウス)を静脈内注射した。A、3時間後、マウスから採血し、脾臓iNKT細胞を細胞内IFN−γ産生についてスクリーニングした。IFN−γについて陽性のiNKT細胞の平均比率±SDが示されている(左パネル)。血清中のIL−4の産生をELISAによって定量した(右パネル)。B、マウスは7日後に遊離α−GalCer(100ng/ml)の2回目の注射を受け、脾臓iNKT細胞を細胞内IFN−γ産生について3時間後にスクリーニングした。特に、7日前にNP/IgG/α−GalCerで処置されたマウスは、α−GalCerでチャレンジされた場合にIFN−γを産生した。これは、使用された用量において、NP/IgG/α−GalCerが初期iNKT細胞活性化をトリガーできなかったという事実と一致する(
図4A)。2回の中の代表的な実験が示されている(平均値±SD)(n=3)。C、PD−1を発現しているiNKT細胞の比率±SDが示されている(α−GalCerによる刺激から7日後)。2回の中の代表的な実験が示されている(n=4)。
**p<0.01、
*p<0.05(対応のないスチューデントt検定)。
【
図6】NP/DEC205へのα−GalCer及びOVAの共封入は、CD8
+T細胞応答及び抗体応答を増強させる。A、CFSE標識OT−I細胞が以前に注射されたマウスに、遊離又はNP/IgG若しくはNP/DEC205に共封入されたα−GalCer(5ng/マウス)及びOVA(250ng/マウス)を皮下接種した。3日後、膝窩リンパ節におけるCFSE標識Vα2TCR
+CD8α
+の増殖を、フローサイトメトリーによって決定した(平均値±SD、n=4)。B、免疫化から6日後、マウスに、CFSE標識SIINFEKLで刺激された脾臓細胞(標的)及びPKH26で標識された刺激されていない脾臓細胞(対照)を移植した。データは、比溶解率±SEMを示す(n=6〜8)。C及びD、マウスに、遊離又はNP/IgG若しくはNP/DEC205に共封入されたα−GalCer(100ng/マウス)及びOVA(5μg/マウス)を2回(0日目及び21日目)注射した。C、脾臓細胞を、2か月後にSIINFEKL(10μg/ml)を用いて48時間かけて再刺激し、上清中のIFN−γ産生を定量した(平均値±SD、n=5)。D、血液を28日目に採取し、抗OVAIgG力価を決定した(平均値±SD、n=7〜9)。2回の中の1回の代表的な実験が示されている。
***P<0.001、
**P<0.01、
*P<0.05。
【
図7】A及びB、CFSE標識OT−I細胞(5×10
6個の細胞/マウス)が以前に注射されたマウスに、遊離又はNP/IgG若しくはNP/DEC205に共封入されたα−GalCer(5ng/マウス)及びOVA(250ng/マウス)を皮下接種した。A、3日後、膝窩リンパ節におけるCFSE標識Vα2TCR
+CD8α
+の増殖をフローサイトメトリーによって決定した。B、膝窩LN細胞を、MHCクラスI拘束OVAペプチドSIINFEKLを用いて再刺激し、Vα2TCR
+CD8α
+によるIFN−γの発現を、細胞内FACS染色によって18時間後に評価した。2回の独立した実験の中の代表的なヒストグラム(A)及びドットプロット(B)が示されている。
【
図8】NP/DEC205へのα−GalCer及びOVAの共封入は、強力な抗腫瘍応答をトリガーする。マウスに、NP/DEC205又はNP/IgGにベクター化されたα−GalCer(20ng)及びOVA(1μg)を注射し、7日後、動物に、OVAを発現するB16F10細胞を静脈内注射した。遊離α−GalCer(200ng/マウス)及びOVA(10μg/マウス)の注射されたマウスを陽性対照として使用した。B16F10結節の平均数±SEMが示されている(n=5)。2回の中の1回の代表的な実験が示されている。
*P<0.05。
【0095】
実施例
材料及び方法
マウス
6〜8週令の雄の野生型C57BL/6マウスは、Janvier (Le Genest-St-Isle, France)から、RAG2
−/− x OTIは、Jackson laboratory (St. Germain sur l'Arbresle, France)から購入した。CD1d
−/−及びCD11c−DTRマウスの作製はすでに記載されている
27,28。マウスを、本発明者ら自身の施設で病原体を含まない条件で飼育した。動物は、パスツール研究所の動物管理使用委員会の指針に沿って取扱い及び飼った。
【0096】
試薬及び抗体
α−GalCerは、以前に記載のように合成された(51)。Vybrant CFDA SE Cell Tracer KitはLife technologies(St Aubin, France)から購入した。PKH−26標識キット及びオボアルブミン(OVA)はSigma-Aldrich(St Quentin-Fallavier, France)から購入した。シアニン(Cy)5にコンジュゲートしたα−GalCerは記載のように合成された
29。マウスCD5、CD11c、CD86に対するAPCにコンジュゲートしたモノクローナル抗体、PEにコンジュゲートした抗NK1.1抗体、抗TCRγδ抗体、FITCにコンジュゲートした抗CD8α抗体、抗TCRβ抗体、抗CD3ε抗体、PerCpCy5.5にコンジュゲートした抗CD11b抗体、eFluor450にコンジュゲートした抗Vα2 TCR抗体、PE−Cy7にコンジュゲートした抗CD11c抗体、抗CD8α抗体、抗PD−1抗体、ビオチンにコンジュゲートした抗CD1d抗体、AlexaFluor700にコンジュゲートしたストレプトアビジン、及びアイソタイプ対照は、BD Pharmingen (Le Pont de Claix, France)又はOzyme/Biolegend (Saint-Quentin-en-Yvelines, France)から購入した。PerCP−eFluor710抗CD205抗体はeBioscience (Paris, France)から購入した。IFN−γ(AlexaFluor647のコンジュゲートした)及びアイソタイプ対照は全てOzyme/Biolegendから購入した。PEにコンジュゲートしたPBS−57糖脂質のローディングされたCD1dテトラマーはNIAID Tetramer Facility (Emory University, Atlanta, GA)製であった。NPに備えるために使用された抗DEC205抗体(CD205)及びアイソタイプ対照(IgG2b)抗体は、BIO-X-CELL (West Lebanon, NH)製であった。
【0097】
PLGAをベースとした粒子の調製及びキャラクタリゼーション
脂質−PEGでコーティングされかつ抗体を担持するナノ粒子は、前記されているように乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)を使用して作製された
30、31。簡潔に言えば、エンドトキシンを含まないOVA(5mg、Sigma-Aldrich)及び/又はα−GalCer(50μg)を、PLGA100mgに封入した。抗DEC205抗体及びそのアイソタイプ対照を、以前に記載のように脂質−PEG層に付着させた
30。粒子表面上の抗体の存在は、クーマシー色素タンパク質アッセイによって決定された(表1)。PLGA NPは、動的光散乱及びゼータ電位によってキャラクタライズされた(表1)。
【0098】
【表1】
【0099】
表1:ナノ粒子は、動的光散乱及びゼータ電位の測定によってキャラクタライズされた。ナノ粒子サイズのデータは、動的光散乱の測定の10回の測定値の平均値±SDを示す
30,31。ゼータ電位データは、5回の測定値の平均値±SDを示す。NPの内部に封入されたOVA抗原の量は、クーマシー色素タンパク質アッセイによって決定され、2回の実験の平均値±SDとして示される。NPへのKRNの取り込みは、その疎水性に因り完全であった。NPに導入された抗体の量は、クーマシープラスタンパク質アッセイ試薬(Pierce)によって決定された。
【0100】
DC及びDC−iNKT共培養液によるNP取り込みの分析
DCがPLGAをベースとしたNPに結合/取り込む能力を評価するために、骨髄由来DC(BM−DC)(5×10
5個の細胞/ウェル)
32又は脾臓単核細胞(MNC)(1×10
6個の細胞/ウェル)を、37℃で2時間、AlexaFluor647で標識された粒子(それぞれ10μg/ml及び100μg/ml)に曝した。十分に洗浄した後、BM−DC(CD11c
+DEC205
+/−)及び脾臓CD8α
+及びCD8α
−DCをフローサイトメトリーによって分析した。BM−DC(1×10
5個の細胞/ウェル)を、iNKT細胞ハイブリドーマDN32.D3(1×10
5個の細胞/ウェル)と共に、段階付をした用量の遊離又は封入されたα−GalCerの存在下で24時間共培養した。CD8α
+及びCD8α
−DCのエクスビボにおける刺激能を試験するために、マウスに、α−GalCer 2μgを静脈内注射し、2時間後、DCサブセットをFACSAria(Becton Dickinson, MD, USA)を使用して選別し、選別された肝NKT細胞(CD5
+NK1.1
+細胞、純度は98%超)又はDN32.D3(1×10
5個の細胞/ウェル)と共にそれぞれ48時間及び24時間共培養した。培養上清中のIFN−γ、IL−4及びIL−2の産生を、ELISA(R&D systems)によって測定した。
【0101】
FACS分析
細胞を、抗体の適切な組合せ中に再懸濁することにより、DCサブセット(抗CD11c抗体、抗CD8α抗体、抗CD11b抗体)、iNKT細胞(抗TCRβ抗体、PBS−57のローディングされたCD1dテトラマー)、NK細胞(抗CD3ε抗体、抗NK1.1抗体)、又はγδTリンパ球(抗TCRγδ抗体、抗CD3ε抗体)の同定を可能とした。その後、抗PD−1抗体、抗CD86抗体、抗CD1d抗体、又はアイソタイプ対照を必要である場合には加えた。細胞内IFN−γの発現を以前に記載されているように分析した
32。脾臓DCサブセットによるCy5−α−GalCer取り込みを測定するために、マウスに、Cy5にコンジュゲートしたα−GalCer(20μg)を静脈内注射し、2時間後、脾臓DCサブセットによるCy5の取り込みをフローサイトメトリーによって分析した。
【0102】
インビボにおけるiNKT細胞活性化及びアネルギーにおけるDCの役割
マウスに、5ngの遊離(又は対照として100ng)又は封入されたα−GalCerを含有するPBS200μlを静脈内投与した。CD11c−DTRマウスには、記載のように
27、α−GalCer投与の24時間前に、ジフテリア毒素(DT)を注射した。脾臓DCを選別し(CD11c
+細胞)、25ng/mlのα-GalCerを用いて感作し、マウスに静脈内注射した。リコール応答を分析するために、マウスは1週間後に遊離α−GalCer(100ng/マウス)の2回目の静脈内注射を受けた。動物から採血し、処置から3時間後に屠殺した。脾臓iNKT細胞を、細胞内IFN−γ発現について分析し、血清中のIFN−γ及びIL−4の濃度をELISAによって決定した。
【0103】
CD8
+T細胞及び抗体応答の分析
マウスは、RAG2
−/−xOT−Iマウスから精製された5×10
6個のCFSEで標識されOVA特異的であるCD8
+T細胞を受けた。1日後、マウスの足蹠に、α−GalCer(5ng/マウス)及びOVA(250ng/マウス)の両方を含有するNPを、又は、同量の遊離α−GalCer及びOVAを注射した。3日後、膝窩リンパ節(LN)におけるCFSE標識細胞の増殖をフローサイトメトリーによって測定した。Vα2 TCR
+CD8α
+細胞によるIFN−γの発現を、膝窩LN細胞をMHCクラスI拘束OVAペプチドSIINFEKL(10μg/ml)でインビトロで18時間かけて再刺激した後に決定した。インビボにおけるCTLアッセイのために、マウス動物に、NPを用いての免疫化から6日後に、CFSE標識SIINFEKLで刺激された脾臓細胞及びPKH−26で標識された刺激されていない脾臓細胞(2×10
7個の細胞/マウス)の混合物を静脈内注射した。脾臓を2日後に収集し、CFSE及びPKH−26で標識された細胞の数を、フローサイトメトリーによって決定した。特異的溶解率を、以下のように決定した:[1−(刺激されていない割合/刺激された割合)]×100(式中、割合は、PHK−26で標識された細胞/CFSEで標識された細胞の数に等しい)。体液性応答及び記憶T細胞応答を分析するために、マウスに、遊離又はNPに共封入されたα−GalCer(100ng/マウス)及びOVA(5μg/マウス)を2回(0日目及び21日目)静脈内注射した。血液を28日目に採取し、抗OVA全IgG力価をELISAによって決定した。脾臓MNCを、2回目の免疫化から2か月後に調製し、SIINFEKLを用いて48時間インビトロで再刺激した。
【0104】
B16F10肺転移モデル
マウスに、遊離又はベクター化OVA及びα−GalCerの接種から7日後にOVAを発現している2.5×10
5個のB16F10メラノーマ細胞を注射した。マウスを18日目に殺滅し、肺転移を顕微鏡を用いて計数した。
【0105】
統計
結果は、平均値±SD又はSEMとして表現される。実験群間の差の統計学的有意性は、対応のないスチューデント両側t検定によって計算された(GraphPad Prism 4 software, San Diego, CA)。0.05未満のp値を有する結果を有意と判断した。
【0106】
結果
樹状細胞は、インビボにおいてアネルギーを誘導することなく、iNKT細胞を効率的に活性化する
本発明者らはまず、トランスジェニックCD11c.DTRマウスを使用して、初回及び二次iNKT応答に対するDC枯渇の結果を調べた。DTによる処置は脾臓DCを枯渇させ(データは示されていない)、IFN−γ陽性iNKT細胞の出現頻度の減少によって(
図1A)及び血清中のサイトカインの早期放出の減少によって(示されていない)例証されるように、初回iNKT細胞活性化の程度を強く低下させた。DCコンピテント動物においては、iNKT細胞は、α−GalCerによる再刺激時にIFN−γを産生する能力の低下を示したが、リコール応答は、初回iNKT細胞刺激時にDCが欠失していた場合には、完全に鈍っていた(
図1A)。この効果は、脾臓においてDCの再増殖異常に起因するものではなかった(データは示されていない)。さらに、α−GalCerを経験していない動物においては、この新規に再増殖したDC集団は、α−GalCer接種後早期にiNKT細胞応答を促進することができた(データは示されていない)。総合すると、初期iNKT細胞活性化時におけるDCの欠失により、顕著なiNKT細胞の無応答性がもたらされ、これによりDCは、α−GalCerによる反復チャレンジ時のiNKT細胞応答の正の制御因子ということになる。この所見を確認するために、本発明者らは、DCによるiNKT細胞の初期活性化がiNKT細胞アネルギーを防ぐことができるかどうかを調べた。本発明者らの実験条件においては、遊離α−GalCer及びインビトロでα−GalCerのローディングされたDCは、同じようなiNKT細胞の初期活性化をトリガーした(
図1B)。注目すべきことに、遊離α−GalCerは、予想されたiNKT細胞アネルギーを誘導したが、α−GalCerのローディングされたDCが以前に接種されたマウスからのiNKT細胞は、再活性化する能力を維持していた。特に、遊離α−GalCerは、iNKT細胞アネルギーを引き起こす阻害分子である、iNKT細胞上のPD−1の増強された発現を誘導したが
33〜35、α−GalCerのローディングされたDCは誘導しなかった(データは示されていない)。従って、DCによるα−GalCerの提示により、その後のチャレンジ時にアネルギーを誘導することなくiNKT細胞活性化がもたらされる。
【0107】
インビボにおいてα−GalCerのローディングされた脾臓CD8α
+DCは、iNKT細胞を強力に活性化する
その後、本発明者らは、iNKT細胞の活性化におけるCD8α
−及びCD8α
+DCサブセットのそれぞれの役割を調べた。この問題に取り組むために、マウスにα−GalCerを接種し、2時間後、脾臓CD8α
−及びCD8α
+DCを精製し(
図2A)、NKT細胞と共に培養した。CD8α
−DCと比べて、CD8α
+DCは、IFN−γ及びIL−4のはるかにより強力な分泌を促進した(
図2B)。同様に、CD8α
+DCは、iNKT細胞ハイブリドーマDN32.D3によるより高いIL−2の産生をトリガーしたが、その活性化は、CD1d/抗原により媒介されるTCRトリガーのみに依存する(
図2C)。フローサイトメトリー分析は、CD8α
−DCと比べて脾臓CD8α
+DC上でのより高度なCD1dの発現を明らかにした(
図2D)。この差異はα−GalCerのインビボにおける取り込みの相違にも起因し得るという可能性を調べるために、Cy5のコンジュゲートしたα−GalCerを投与した。CD8α
−DCと比べて、Cy5のコンジュゲートしたα−GalCerの取り込み率は、CD8α
+DCにおいてより重要であった(
図2E)。逆に、脾臓細胞を、Cy5のコンジュゲートしたα−GalCerにインビトロで曝すと、CD8α
−及びCD8α
+DCの両方による同等の取り込みが行なわれた(データは示されていない)。まとめると、遊離α−GalCerの全身接種時に、CD8α
+DCはiNKT細胞の強力な活性化因子である。
【0108】
CD8α
+DCへのα−GalCerの送達は、インビトロ及びインビボにおいてiNKT細胞活性化を改善する
エンドサイトーシスC型レクチン受容体DEC205は、脾臓及びLNのCD8α
+DCの細胞表面上に発現されている
36。本発明者らはこの特性を利用して、α−GalCerをCD8α
+DCにターゲティングした。そのために、本発明者らは、DEC205を認識する抗体でコーティングされたPLGAをベースとしたNP(NP/DEC205)中にα−GalCerを製剤化した(NPの物理的及び生化学的な特徴については、表1を参照されたい)。
図3Aが示すように、DEC205
+BM−DCは、DEC205
−BM−DCとは対照的に、ここで陰性対照として使用されたNP/IgGと比べて、NP/DEC205を取り込んだ(
図3A)。より重要なことには、脾臓細胞と共にインキュベートした場合、CD8α
+DCは、CD8α
−DCと比べてNP/DEC205をより効率的に取り込んだ(
図3B)。その後、本発明者らは製剤の生物学的活性を比較した。段階付をした用量のNP/DEC205/α−GalCerと共にインキュベートされたBM−DCは、遊離のベクター化されていないα−GalCerと比較して、特にNP/IgG/α−GalCerと比較して、より高度にiNKT細胞活性化をトリガーした(
図3C)。
図3Dに示されているように、効果はCD1dに依存的であった。これらのデータは、まとめると、NP/DEC205へのα−GalCerの封入は、CD8α
+DCを選択的にターゲティングし、インビトロにおいてiNKT細胞を効率的に活性化することを示す。
【0109】
インビボにおいて、NP/DEC205/α−GalCerは、遊離Gal−Cerと比較して、特にNP/IgG/α−GalCer(5ngのα−GalCer/マウス)と比較して、より高度にiNKT細胞活性化を促進した(
図4A)。特に、DC枯渇は、NP/DEC205/α−GalCer投与後に強力にiNKT細胞活性化を低減させた(
図4B)。iNKT細胞の初期活性化により、NK細胞、γδT細胞及びDCをはじめとする他の細胞型のトランス活性化が起こる
7,37。
図4Cに示されているように、NP/DEC205/α−GalCerは、遊離α−GalCerと比較して、NK細胞及びγδT細胞によるより高いレベルのIFN−γ産生を誘導した。より低い程度で、NP/DEC205/α−GalCerは、DCによるより高いレベルのCD86発現をトリガーした。従って、CD8α
+DCへのα−GalCerのインビボでの送達は、自然免疫細胞のiNKT細胞をベースとしたトランス活性化をトリガーするのに特に強力である。
【0110】
CD8α
+DCへのα−GalCerのターゲティングは、インビボにおいてiNKT細胞アネルギーを防ぐ
CD8α
+DCへのα−GalCerのインビボにおける送達は、iNKT細胞の初期活性化を増強することが確立されたので、本発明者らは次に、リコール応答時のその応答性に影響を及ぼし得るかどうかを調べた。この問題に取り組むために、マウスに、NP/DEC205に封入された低用量のα−GalCer(5ng/マウス)又は高用量の遊離α−GalCer(100ng/マウス)のいずれかを注射し、両方共に、同等な初期iNKT細胞活性化をもたらした(
図5A)。注目すべきことに、遊離α−GalCerはiNKT細胞アネルギーを誘導したが、NP/DEC205/α−GalCerは誘導しなかった(
図5B)。この条件において、IFN−γ陽性iNKT細胞の出現頻度は、高用量のα−GalCerを1回注射された動物と同等であったことが注目に値する。最後に、遊離α−GalCerはiNKT細胞上でPD−1の発現を誘導したが、これは、NP/DEC205/α−GalCer投与後には当てはまらなかった(
図5C)。まとめると、CD8α
+DCへのα−GalCerのインビボにおける送達はiNKT細胞アネルギーを防ぐ。
【0111】
CD8α
+DCへのα−GalCer及びOVAの共送達は、CD8
+T細胞及び抗体応答を最適化する
マウスにおける数多くの研究が、DEC205を介して抗原をCD8α
+DCにターゲティングする利点、特に、抗原交差提示を促進し、CD8T細胞を刺激する利点を示した
38,39。α−GalCerと抗原とを互いに近接させた状態でCD8α
+DCにターゲティングする効果は、依然として調査されていない。それをするために、CFSEで標識されたOT−I細胞で再構成されたマウスに、α−GalCer及びモデル抗原オボアルブミン(OVA)の両方を含有するNP/DEC205を接種した。NP/DEC205/OVA/α−GalCerは、NP/IgG/OVA/α−GalCerを用いて又は可溶性α−GalCerとOVA、又はOVA単独を用いて接種されたマウスと比較して、OVA特異的OT−I細胞のより高度な増殖を誘導した(
図6A及び
図7)。さらに、インビトロにおけるペプチドによる再刺激時に、IFN−γを発現しているOVA特異的CD8
+Tリンパ球の出現頻度は、他の動物群と比較して、NP/DEC205/OVA/α−GalCerを受けたマウスにおいてより高かった(
図S1B)。NP/DEC205/OVA/α−GalCerはまた、標的細胞溶解の測定によって評価したところ、より高い細胞障害性T細胞活性を惹起した(
図6B)。最後に、最後の免疫化から2か月後のリコール応答は他の群においてはほぼ検出不可能であったが、NP/DEC205/OVA/α−GalCerを投与されたマウスは、長期間持続するCD8
+T細胞記憶応答を示した(
図6C)。DEC205のターゲティングはまた、体液性応答も促進し得る
40,41。
【0112】
実際に、OVAプラスα−GalCerと比較して、NP/DEC205/OVA/α−GalCerは、OVA特異的IgGのより高い力価を促進した(
図6D)。従って、OVA及びα−GalCerを同じ粒子中で合わせて、DEC205を介してCD8α
+DCをターゲティングすることは、細胞性及び体液性免疫応答を増強するのに明らかに利点がある。
【0113】
α−GalCer及び抗原を取り込んだNPは、腫瘍の発症を防御する
腫瘍発症の制御に対するα−GalCer及び抗原のベクター化の結果を調べるために、マウスにNP/DEC205/OVA/α−GalCerを用いてワクチン接種し、その後、OVAを発現しているB16F10メラノーマ細胞を接種した。陽性対照として、マウスは、高用量の遊離α−GalCerとOVA(10倍以上)を受けた。
図8が示しているように、NP/IgG/OVA/α−GalCerを受けているマウスと比較して、ワクチン接種を受けたマウスは、肺転移の発症から完全に防御された。
【0114】
考察
α−GalCerは、治療目的及びワクチン開発に対して非常に有望である強力な免疫刺激分子である
1,2,7,42。しかしながら、いくつかの懸念がその臨床使用を制限する。その中で、α−GalCerがターゲティングする細胞の性質が依然として不明であること、及び従ってそれが促進する制御不能の応答は、依然として大きな問題である。最も重要なことは、α−GalCerが誘導する顕著かつ長期なiNKT細胞の不応答性であり、効果的な(例えば抗腫瘍)応答を発達させるため複数回の免疫学的な刺激を必要とする患者にとっては大きなハードルである
22,24,26,43。iNKT細胞機能をよりうまく制御する可能性は、適切なAPC、例えばDCへのα−GalCerの受動的又は能動的な送達に見出し得る。この戦略はまた、iNKT細胞性免疫応答の強度及び品質を増強させ得る。本発明者ら及び他の者は、PLGAをベースとしたNP
32若しくはリポソーム(データは示されていない)中にベクター化された又はウイルス様粒子
44に含まれたα−GalCerは、iNKT細胞を活性化したが、再刺激時にそのアネルギーを防ぐことができなかったことを示した。それ故、α−GalCerの制御された送達は、iNKT細胞応答を最適化するための必要条件である。本発明において、本発明者らは初めて、CD8α
+DCへのα−GalCerの特異的送達が、iNKT細胞の初期活性化を増強し、iNKT細胞アネルギーを回避するために役立つことを実証する。平行して、CD8α
+DC(同じDCであるようである)へのα−GalCer及び抗原の共送達は、細胞性及び体液性免疫応答を非常に増幅(exacerbate)させる。
【0115】
データは、他の報告と一致して
8〜12、DCは、ベクター化されていないα−GalCerの全身投与後のiNKT細胞活性化の主要な(primary)開始因子であることを示した。脾臓からの樹状細胞は異種であり、近年の研究により、DCサブセットは、iNKT細胞を刺激するその能力において異なり得ることが示唆された
18,20,29。例えば、CD8α
−DCサブセットの中で、CD4
−DCは、CD4
+DCと比較して、iNKT細胞の活性化においてより効率的であったことが以前に報告されていた
29。インビボにおけるより高いα−GalCer取り込み率及び増強したレベルの細胞表面CD1dと一致して、結果は、CD8α
−DCと比較して、CD8α
+DCは、iNKT細胞活性化の強力なトリガーであることを示す。大量のCD8α
+DC及びiNKT細胞が、脾臓の辺縁帯に共局在するという事実は
12,36,45,46、このような観察と一致する。その後、免疫応答に対するCD8α
+DCへのα−GalCerの送達の影響を調べた。NP/DEC205は脾臓CD8α
+(DEC205
+)DCを特異的にターゲティングし、NP/DEC205にベクター化されたα−GalCerは、CD1d上にローディングされ得、かつ、iNKT細胞に提示され得、そしてiNKT細胞を活性化し得る。重要なことには、NP/DEC205/α−GalCerは、遊離α−GalCer及びNP/IgG/α−GalCerと比較して、インビトロ及びインビボにおいてiNKT細胞を活性化するのにはるかにより効率的であり、このプロセスはDCに依存していた(
図4B)。増強されたiNKT細胞応答は、おそらく、CD8α
+DCによる、NPの、従ってα−GalCerの、急速な取り込みに起因する。また、DEC205により媒介されるNPの取り込みは、DCのエンドソーム/リソソーム中で、CD1d分子にα−GalCerが近づくことを促進するようである。興味深いことには、CD8α
+DCへのα−GalCerの送達はまた、NK、γδTリンパ球及びDCのトランス活性化を増加させた。従って、DEC205を通してのCD8α
+DCへのターゲティングは、iNKT細胞により媒介される自然免疫応答を最適化する。
【0116】
初期活性化後、iNKT細胞は、長期間持続する低応答性を発達させ、これによりα−GalCerへの反復曝露時の活性化を妨げる
11。iNKT細胞アネルギーにおけるDCによって果たされる可能性ある役割は依然として議論されている
10,11,23。2つの相補的な戦略を使用したところ(CD11c−DTRマウス及びDC導入)、結果は、DCによるα−GalCerの提示は(初期iNKT細胞活性化)、2回目の刺激後のiNKT細胞アネルギーをもたらさないことを明瞭に示しているが、これは他の研究と一致する
10,11。これと並行して、NP/DEC205を用いてCD8α
+DCへとα−GalCerをターゲティングすることは、iNKT細胞非応答性を促進せず、このことは、二回目のiNKT細胞活性化の維持にDCによって果たされる重要な役割を確認する。従って、α−GalCerのローディングされたCD8α
+DCは、iNKT細胞におけるTCRシグナリングを効率的にトリガーするだけでなく(初回刺激)、チャレンジ後の二次活性化も維持する。初期iNKT細胞活性化の最中に、表面に結合した可溶性の共刺激及び/又は阻害性分子からの複数のシグナルが協奏して機能して、iNKT細胞応答を刺激及び微調整する。従って、CD1dに加えて、CD8α
+DCは、CD11cを発現していない細胞(例えばBリンパ球)に存在しない追加のシグナルを与えることにより、二次iNKT細胞活性化を維持するようである。
【0117】
抗原及びアジュバントをDC(CD8α
+DCを含む)へと共送達することは、最適なT及びB細胞性免疫応答を誘導することが示された
47〜49。DCの特定のサブセットへのα−GalCer及び抗原の共送達が免疫応答に影響を及ぼすかどうかは、依然として研究されていない。TLRアゴニストは、直接的なDC成熟を誘導することによってアジュバント効果を発揮し、このプロセスは、抗原の取り込みを低下させるが、ナイーブT細胞を効率的に刺激するのに重要である。α−GalCerの場合、DC成熟は間接的であり、初回活性化後に産生されたiNKT細胞因子に依拠する。TLRアゴニストと比較して、α−GalCerに応答したDCの遅延成熟は、DCの抗原取り込み能を延長させ得、従って、増幅された免疫応答がもたらされ得る。本発明者らは、CD8α
+DCへのα−GalCer及びOVAの共送達は、非標的化形で与えられた同量のα−GalCer及びOVAと比較して、初期及び後期CD8
+T細胞応答を増幅させたことを示した。CD8α
+DCはMHCクラスI交差提示に優れており、iNKT細胞は、CD4
+T細胞の非存在下でさえ、交差提示(cross priming)のためにCD8α
+DCを直接ライセンスすることが示された
50。本発明者らの知識の限りでは、本報告は、CD8
+T細胞応答を増強するために、CD8α
+DCへのα−GalCer及び抗原の共送達の利点を実験的に証明した最初のものである。同様に、OVA特異的抗体応答は、同粒子に挿入されかつCD8α
+DCにターゲティングされたα−GalCer及び抗原に応答して大いに増大された。従って、TLRアゴニストについて示されているように
49、CD8α
+DCへのα−GalCerのターゲティングは、α−GalCerのアジュバント活性を向上させる。これはいまだ完全に実証されていないが、本発明者らは、CD8α
+DCへのα−GalCer/抗原の共送達は、TLRアゴニスト/抗原の共送達と比較して優れた効果を有し得るという仮説を立てている。実際に、TLRアゴニストは、直接的なDCの成熟を誘導することによってアジュバント効果を発揮するが、このプロセスは抗原の取り込みを低下させるが、ナイーブT細胞を効率的に刺激するのに重要である。α−GalCerの場合、DC成熟は間接的であり、初回活性化後に産生されたiNKT細胞因子に依拠する。TLRアゴニストと比較してα−GalCerに応答したDCの遅延した成熟は、DCの抗原取り込み能を延長させ得、従って、増幅された免疫応答がもたらされ得る。iNKT細胞がCD4
+Tヘルパー細胞の代用になり、T細胞及びB細胞応答を誘導するという事実は、多くの状況におけるiNKT細胞をベースとしたアジュバント特性の結果を調べるための新たな手段をもたらす。本発明者らのデータはさらに、CD8α+DCへのα−GalCer/抗原の共送達は、強力な抗腫瘍応答をトリガーすることを明らかとする。
【0118】
結論すると、本発明者らは、iNKT細胞が効率的な適応免疫応答及び抗腫瘍免疫応答を促進する能力を最大化しつつ、制御不能のiNKT細胞活性化という望ましくない作用を最小化するために、その表面上にDC特異的抗体を担持したPLGAをベースとしたNPの使用に基づいた能動的ターゲティング戦略の設計及び着手を行った。本発明者らは初めて、CD8α+DCへのα−GalCerのインビボにおける送達が、iNKT細胞の初期活性化を増強させるが、またこれらの細胞がさらなる再刺激に応答することを可能とすることを示す。重要なことには、CD8α+DCへの、NPにより媒介されるα−GalCer及びタンパク質抗原の両方の同時の共送達は、マウス系において、最適なCD8+T細胞応答及び抗腫瘍応答を誘導する。
【0119】
【表2】