特許第6456384号(P6456384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456384超臨界流体クロマトグラフィーシステム用の移動相コントローラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456384
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】超臨界流体クロマトグラフィーシステム用の移動相コントローラ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20190110BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G01N30/02 N
   G01N30/32 A
【請求項の数】24
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-534622(P2016-534622)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公表番号】特表2016-527525(P2016-527525A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】US2014050353
(87)【国際公開番号】WO2015023533
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】61/864,856
(32)【優先日】2013年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュリーブ,ジョシュア・エイ
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−157361(JP,A)
【文献】 特開昭61−176851(JP,A)
【文献】 特開平04−332863(JP,A)
【文献】 特開平04−009661(JP,A)
【文献】 特開平01−007906(JP,A)
【文献】 特開昭63−032366(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/201222(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラと、
カラムと、
カラム上流に位置する第1センサおよびカラム下流に位置する第2センサであって、両方ともコントローラとシグナル通信しており、第1センサがシステムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能であり、第2センサがシステムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である、第1センサおよび第2センサと、
コントローラにより使用される一式の命令であって、コントローラが移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である、命令とを含む、
二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の平均密度または圧力を調整する装置。
【請求項2】
第1センサが、システムにおける移動相の第1密度を測定可能な第1密度センサであり、第2センサが、システムにおける移動相の第2密度を測定可能な第2密度センサである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1センサが、システムにおける移動相の第1圧力を測定可能な第1圧力センサであり、第2センサが、システムにおける移動相の第2圧力を測定可能な第2圧力センサである、請求項1記載の装置。
【請求項4】
移動相の平均密度が、第1および第2移動相の圧力測定値およびカラム温度から算出される、請求項3記載の装置。
【請求項5】
システムが、ポンプを含み、第1圧力センサが、ポンプに収容されているか、または、ポンプに接続されている、請求項3記載の装置。
【請求項6】
システムが、背圧調整器を含み、第2圧力センサが、背圧調整器に収容されているか、または、背圧調整器に接続されている、請求項3記載の装置。
【請求項7】
システムが、背圧調整器を含み、少なくとも1つの調整されるシステムコンポーネントまたはパラメータが、背圧調整器である、請求項1記載の装置。
【請求項8】
移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より低い場合、背圧調整器が、より高い圧力をシステムに生じさせるように調整され、移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より高い場合、背圧調整器が、より低い圧力をシステムに生じさせるように調整される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際、システムにおける移動相の密度または圧力が平衡状態にある、請求項1記載の装置。
【請求項10】
移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際、システムにおける移動相の密度または圧力が平衡状態にない、請求項1記載の装置。
【請求項11】
ポンプと、
ポンプ下流に位置するカラムと、
カラム下流に位置する少なくとも1つの背圧調整器と、
カラム上流に位置する第1センサであって、第1センサがシステムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能である、第1センサと、
カラム下流に位置する第2センサであって、第2センサがシステムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である、第2センサと、
第1および第2センサとシグナル通信しているコントローラと、
コントローラにより使用される一式の命令であって、コントローラが移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である、命令とを含む、
二酸化炭素ベースの分離システム。
【請求項12】
カラム上流に位置する第1センサおよびカラム下流に位置する第2センサによって測定された分離システムにおける移動相の密度または圧力の測定値を平均化して、分離システムにおける移動相の平均密度または圧力を決定することと、
移動相の平均密度または圧力を移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、
移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、
二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の密度または圧力を制御する方法。
【請求項13】
移動相の第1密度または圧力および移動相の第2密度または圧力が、同時に測定される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの調整されるシステムコンポーネントまたはパラメータが、背圧調整器である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より低い場合、背圧調整器が、より高い圧力をシステムに生じさせるように調整され、移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より高い場合、背圧調整器が、より低い圧力をシステムに生じさせるように調整される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調整される際、システムにおける移動相の密度または圧力が平衡状態にある、請求項12記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調整される際、システムにおける移動相の密度または圧力が平衡状態にない、請求項12記載の方法。
【請求項18】
移動相の所定の平均密度または圧力が達成されるまで、決定、比較および調整の工程を繰り返すことを更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータの連続する調整間の時間が、約10秒未満である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第1センサが、システムにおける移動相の第1圧力を測定可能な第1圧力センサであり、第2センサが、システムにおける移動相の第2圧力を測定可能な第2圧力センサである、請求項12記載の方法。
【請求項21】
第1圧力センサが、ポンプに収容されているか、または、ポンプに接続されている、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第2圧力センサが、背圧調整器に収容されているか、または、背圧調整器に接続されている、請求項20記載の方法。
【請求項23】
第1センサが、システムにおける移動相の第1密度を測定可能な第1密度センサであり、第2センサが、システムにおける移動相の第2密度を測定可能な第2密度センサである、請求項12記載の方法。
【請求項24】
カラム上流に位置する第1センサおよびカラム下流に位置する第2センサによって測定された分離システムにおける移動相の密度または圧力の測定値を平均化して、分離システムにおける移動相の平均密度または圧力を決定することと、
場合により、システムにおける移動相の平均温度を決定することと、
移動相の平均密度または圧力を、移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、
場合により、移動相の平均温度を、移動相の所定の平均温度と比較することと、
移動相の所定の平均密度、圧力または場合により温度を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、
二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の溶媒和力を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年8月12日付けで出願された米国仮出願第61/864,856号の優先権を主張する。同出願は、その全体が参照により本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、超臨界流体クロマトグラフィーシステムおよび/または二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムにおける移動相の平均密度または圧力を制御する装置に関する。本装置および関連する方法は、クロマトグラフィーシステム中の所望の領域における平均溶媒特性を近似または維持する移動相の密度または圧力調整に関係する。
【背景技術】
【0003】
優れたクロマトグラフィー分離の開発には、通常、広範な方法の開発を必要とする。このような方法の開発には、多くの場合、数多くの変数の評価および最適化が関係している。これらの変数としては、クロマトグラフィーシステム、例えば、二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー、SFC、HPLC、GCの選択、移動相の選択、カラム化学およびカラム寸法の選択、検出器の選択等をあげることができる。優れたクロマトグラフィー分離が開発されると、それは、常に、異なるクロマトグラフィーシステムへの移行および同システムでの実行が必要であろう。例えば、分析規模でのSFC分離は、調製規模でのSFCシステムへの移行および同システムで実行が必要な場合がある。
【0004】
液体クロマトグラフィーについて、異なるシステムまたはカラム構成間での方法を移行するための理論および理解は、一般的には、十分理解されている。LC法を移行するためのガイドラインは容易である。LC条件下での方法の移行は、典型的には、更なる最適化を必要としない。一方、SFCおよび/または二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーには、方法の移行を容易にするのに適したこのような装置または方法は、現在存在していない。一方のクロマトグラフィーシステムから他方のクロマトグラフィーシステムに移行される、移動相として二酸化炭素を使用するクロマトグラフィー分離は、典型的には、元のクロマトグラフィーシステムで達成されたのと同じ優れた分離を達成するために、再開発される必要がある。再開発には、時間がかかり、高価で、無駄が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、超臨界流体クロマトグラフィーシステムおよび/または二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムにおける移動相の密度または圧力を制御する装置および関連する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本開示は、コントローラと、コントローラとシグナル通信している第1センサおよび第2センサ両方と、コントローラにより使用される一式の命令とを有する、二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の密度または圧力を調整する装置に関する。第1センサは、システムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能である。第2センサは、システムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である。コントローラは、移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、ポンプと、ポンプ下流に位置するカラムと、カラム下流に位置する少なくとも1つの背圧調整器と、カラム上流に位置する第1センサと、カラム下流に位置する第2センサと、第1および第2センサとシグナル通信しているコントローラと、コントローラにより使用される一式の命令とを有する、二酸化炭素ベースの分離システムに関する。第1センサは、システムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能である。第2センサは、システムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である。コントローラは、移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、システムにおける移動相の平均密度または圧力を決定することと、移動相の平均密度または圧力を移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、上記された二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成する方法に関する。
【0009】
本開示の実施形態では、センサは、システムにおける移動相の密度を測定するための密度センサででもよいし、または、システムにおける移動相の圧力を測定するための圧力センサででもよい。第1センサは、ポンプに収容されていてもよいし、または、同ポンプに接続されていてもよいし、カラム前端に収容されていてもよいし、または、同前端に接続されていてもよいし、または、間のどこかに配置されていてもよい。第2センサは、背圧調整器に収容されていてもよいし、または、同背圧調整器に接続されていてもよいし、カラム後端に収容されていてもよいし、または、同後端に接続されていてもよいし、または、間のどこかに配置されていてもよい。一部の実施形態では、移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際、または、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調製される際、システムにおける移動相の密度または圧力は、平衡状態にあってもよい。他の実施形態では、移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際、または、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調整される際、システムにおける移動相の密度または圧力は、平衡状態になくてもよい。
【0010】
本開示の装置および方法は、超臨界流体クロマトグラフィーシステムおよび/または二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムにおける移動相の密度または圧力の制御を可能にする。本装置および方法は、異なるシステムおよび/またはカラム構成間での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の効率的な移行も可能にする。本開示の装置および方法を使用して、あるシステムにおけるのと同じ優れた分離が、第2システムにおける第2分離を再度最適化するのに費やされる過剰な時間、費用または資力を掛けることなく、第2システムに移行され得る。本装置および方法は、異なる圧力プロファイルを有する異なるシステム、例えば、異なるカラム構成および/または動作条件、例えば、異なるカラム温度を有する二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステム間の方法の移行を容易にする。
【0011】
本開示により提供される前述および他の特徴ならびに利点は、添付の図面と共に読んだ際、下記発明を実施するための形態の典型的な実施形態からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、移動相の密度または圧力センサ、例えば、トランスデューサとコントローラとが配置されることができ、密度および圧力値が決定されることができる、分離システムおよび典型的な配置の2つの実施形態(1Aおよび1B)を示す。
図2A図2aは、分離についての平均密度または平均圧力のプロファイルを一致させるかどうかによる、1.7μm粒子で展開された方法のより大きい5μm粒子への移行を説明する。この分離について、流速は、最適な線速度に変えなかった。
図2B図2bは、平均密度を一致させるかどうかによる、カラム長にわたる移動相の密度シミュレーションの比較を示す。
図3図3は、分離についての平均密度または平均圧力のプロファイルを一致させるかどうかによる、粒径5μmについてより小さい最適線速度に流速を変えしながら、1.7μm粒子で展開された方法のより大きい5μm粒子への移行を説明する。
図4A図4aは、分離についての平均密度プロファイルを一致させながら、同じ平均カラム圧力を有するが、移動相の流速が異なる分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた分離の比較を示す。密度を一致させることなく、流速における変化は、分離についての密度プロファイルにおけるかなりの差異をもたらすであろう。この差異は、分離間でのクロマトグラフィー完全性の損失をもたらすであろう。
図4B図4bは、平均密度を一致させての、カラム長にわたる移動相の密度シミュレーションの比較を示す。
図5図5および図6は、同じ平均カラム圧を有する分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムおよび調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた分離の比較を示す。
図6図5および図6は、同じ平均カラム圧を有する分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムおよび調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた分離の比較を示す。
図7図7は、同じ平均カラム圧を有するが、注入量およびサンプル検体濃度が異なる、同じ分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた分離の比較を示す。
図8図8は、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムでの勾配分離を示す。
図9図9は、同じ平均カラム圧を有するが、注入量およびサンプル検体濃度が異なる、同じ分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた勾配分離の比較を示す。
図10図10は、類似する平均カラム圧を有する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムおよび調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムで得られた勾配分離の比較を示す。
図11図11および図12は、異なる圧力条件下における2種類の二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムについてのk’値の比較を示す。
図12図11および図12は、異なる圧力条件下における2種類の二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムについてのk’値の比較を示す。
図13図13および図14は、システム圧における小さな変化への応答における検体保持への影響と、分離についての圧力プロファイルを一致させることによるそれらの影響の相関性とを示す。
図14図13および図14は、システム圧における小さな変化への応答における検体保持への影響と、分離についての圧力プロファイルを一致させることによるそれらの影響の相関性とを示す。
図15A図15Aは、多数の検体に対する密度変化の、保持時間(図15A)における影響を示す。
図15B図15Bは、多数の検体に対する密度変化の、保持時間(図15B)における影響を示す。
図16A図16Aは、多数の検体に対する密度変化の、選択性(図16A)における影響を示す。
図16B図16Bは、多数の検体に対する密度変化の、選択性(図16B)における影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー分離における検体保持係数は、移動相の密度に影響を受ける。移動相の密度は、等温条件下における圧力の変化により著しく変化し得る。圧力変化は、特に比較的非圧縮性の流体、例えば、ポンプ下流の改質剤と組み合わせた場合、その密度がポンピング事象中に広い範囲にわたって変化する理由の1つである。二酸化炭素は、標準的な動作条件下において非常に圧縮性である。典型的には、移動相の密度(または圧力)が増大すると、保持係数は低下する。
【0014】
しかしながら、一部の検体は、システム構成における変化の結果としての移動相の密度における変化に対して異なって応答する場合がある。例えば、標的検体の選択性および解像度は、システム条件、例えば、移動相の密度またはシステム圧における同じ変化に対して、それぞれ異なって応答すると、不釣り合いに影響を受ける場合がある。この差動的な応答は、分離の一致性を最適化するのに対する難題、または、分離についての移動相密度またはカラム圧のプロファイルにおける変化を含む異なる二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステム間での方法の移行を試みる際の難題を引き起こし得る。
【0015】
例えば、カラム長または粒径における変化は、システムの密度および圧力のプロファイル全体に影響を及ぼし得る。一般的な例は、粒径2μm以下の固定相を使用して展開される分析規模での分離の粒径5μmの固定相を使用する調製規模での分離への規模拡大である。分析用システムと調製用システムとの間において、カラムにわたる密度および圧力のプロファイルにおける差異は、非常に異なるクロマトグラフィーをもたらし得る。
【0016】
任意の特定の理論に拘束されるものではないが、特定の標的検体が2つの分離システム間で経験する移動相の密度プロファイルを一致させ、同じカラム化学を使用することにより、検体保持係数および分離効率が維持され得ると考えられる。したがって、任意の分離に特徴付けられた移動相密度プロファイルを有するのが有益であろう。例えば、平均密度プロファイルは、分離の最適化または異なるシステムおよび/もしくはカラム構成間での方法の移行中に維持され得る。
【0017】
移動相密度を測定する機器は高価である。多くの場合、分離に使用される温度、圧力、移動相の組成および粘性が変化するために、密度算出は困難である。近似値として、カラム圧、例えば、ポンプにおいて測定されたシステム圧および背圧調整器出口圧(ABPR)が、分離についての平均カラム圧を算出するのに使用され得る。これらの圧力測定は、密度測定より容易に得られる。分離間のこの平均カラム圧の維持は、分離にわたる移動相の平均密度の維持に非常に近似している。2つの二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー分離間での移動相の平均密度または平均カラム圧のいずれかを一致させることは、類似する選択性および保持係数特性を有する標的検体を有する分離をもたらし得る。
【0018】
一実施形態では、本開示は、コントローラと、第1センサおよび第2センサであって、両方ともコントローラとシグナル通信しており、第1センサがシステムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能であり、第2センサがシステムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である、第1センサおよび第2センサと、コントローラにより使用される一式の命令であって、コントローラが移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である、命令とを有する、二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の平均密度または圧力を調整する装置に関する。
【0019】
本開示は、二酸化炭素ベースの分離をシステム間で効率的に移行することにも関する。本願明細書で提供される場合、二酸化炭素ベースの分離の「効率的に移行すること」の表現は、分離のクロマトグラフィー完全性を維持、例えば、少なくとも1つの標的検体、好ましくは2つ以上の標的検体の保持係数および選択性を保持しながら、二酸化炭素ベースの分離システム間での分離、方法または方法パラメータを移行することの概念を意味する。効率的に移行された分離は、第1システム上で得られた分離のクロマトグラフィー完全性を、第2システム上で実質的に再現することである。例えば、効率的に移行された分離は、第2システムで行われた第2の二酸化炭素ベースの分離が、第1システムで行われた第1の二酸化炭素ベースの分離と実質的に同じ保持係数(k’)または選択性を有する、1つ以上の標的検体を有するものである。
【0020】
本願明細書で提供される場合、「移動相の所定の平均圧力または密度」の用語は、第1分離システムから決定もしくは算出された移動相の平均圧力または密度、または、第1分離のクロマトグラフィー完全性またはシミュレーション値/近似値が第2分離システムまたは以降の分離システムにおいて実質的に維持されるシミュレーション値/近似値を意味する。
【0021】
本願明細書で提供される場合、「保持係数」または「(k’)」の用語は、均一濃度条件または勾配条件下のいずれかにおいて、検体が移動相に保持される時間に対する検体が固定相に保持される時間の比を意味する。効率的に移行された二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法について、第1および第2システム間での任意の所定の標的検体に対する保持係数における差異は最小化されるべきである。好ましくは、第1および第2システム間での標的検体に対する保持係数における差異は、約10%未満である。より好ましくは、第1および第2システム間での標的検体に対する保持係数における差異は、約5%未満である。更により好ましくは、第1および第2システム間での標的検体に対する保持係数における差異は、約1%未満である。
【0022】
複数の標的検体について、第1および第2分離間での各標的検体に対する保持係数における差異もそれぞれ最小化されるべきである。複数の標的検体は、2つ以上の標的検体、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個等を含み得る。好ましくは、標的検体の全部または大部分が、第1および第2分離間における実質的に同じ保持係数を有する。全ての検体がシステム変化に対して異なって応答するために、全ての標的検体が、第1および第2分離間において、実質的に同じ保持係数を有しない場合がある。好ましくは、第1および第2分離間での複数の各標的検体に対する保持係数における差異はそれぞれ、約10%未満である。より好ましくは、第1および第2分離間での複数の各標的検体に対する保持係数における差異はそれぞれ、約5%未満である。更により好ましくは、第1および第2分離間での複数の各標的検体に対する保持係数における差異はそれぞれ、約1%未満である。
【0023】
本願明細書で提供される場合、「選択性」もしくは「選択係数」または「α」の用語は、分離における2つの検体の分離度合いを意味する。例えば、2つの検体であるAおよびBについての選択係数は、AがBの前に溶出する条件における、その各保持係数の比、例えば、α=k’/k’である。
【0024】
第1および第2分離間での2つの標的検体間での選択性は維持されるべきである。好ましくは、第1および第2分離間での2つの標的検体に対する選択性における変化は、約10%未満である。より好ましくは、第1および第2分離間での2つの標的検体に対する選択性における変化は、約5%未満である。更により好ましくは、第1および第2分離間での2つの標的検体環に対する選択性における変化は、約1%未満である。
【0025】
本願明細書で提供される場合、「二酸化炭素ベースの分離手法」の表現は、特定の二酸化炭素ベースの分離システム上で標的検体の分離を制御または実施するために、特定の二酸化炭素ベースの分離システムに使用されるシステム要求、方法パラメータおよび/または設定を意味する。二酸化炭素ベースの分離またはクロマトグラフィーシステムにおける移動相は、少なくとも部分的に二酸化炭素を含む。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、ポンピング温度および圧力において二酸化炭素と同様の圧縮特性を有する他の移動相溶媒または組成、例えば、フレオンを使用するクロマトグラフィーシステムおよびクロマトグラフィー分離に関する。好ましくは、他の移動相溶媒または組成は、移動相の密度または圧力における変化による検体挙動において、本願明細書に記載されたのと同じまたは類似する作用を示す。
【0027】
本願明細書で提供される場合、「分離システム」の表現は、標的検体の分離および検出を行うのに使用される、手段または機器、例えば、ポンプ、カラム、検出器および付属品を意味する。一部の構成では、分離システムは、1つ以上のこれらのコンポーネント、例えば、ポンプまたは検出器を除外し得る。
【0028】
異なる分離システム、例えば、第1分離システムおよび第2分離システム間の区別は、移動相の動作平均密度または平均カラム圧全体における変化もたらす、システム構成における任意の変化を含む場合がある。例えば、異なる分離システム間の区別は、異なる機器、例えば、二酸化炭素ベースの分析用クロマトグラフィーシステム、例えば、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から商品名ACQUITY(R)UPCシステムとして市販されているシステムと、二酸化炭素ベースの調製用クロマトグラフィーシステム、例えば、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から商品名Prep 100 SFCシステムとして市販されているシステムとの使用であり得る。この区別は、同じ機器の1つ以上のコンポーネントにおける変化、例えば、システム構成の変化でもあり得る。例えば、この区別は、カラム構成、例えば、長さ、内径もしくは粒径における変化または配管、例えば、長さもしくは内径または配管弁の存在における変化であり得る。この区別は、分離パラメータまたは条件、例えば、流速または温度における変化でもあり得る。好ましくは、本開示は、移動相の動作平均密度または平均カラム圧全体における約10%より大きい変化をもたらす、異なる分離システム間における任意の変化または区別、例えば、機器、カラム粒径、カラム長、流速等に適用され得る。より好ましくは、本開示は、移動相の動作平均密度または平均カラム圧全体における約5%より大きい変化をもたらす、任意の変化または区別に適用され得る。更により好ましくは、本開示は、移動相の動作平均密度または平均カラム圧全体における約1%より大きい変化をもたらす、任意の変化または区別に適用され得る。
【0029】
カラム固定相は、化学、ベース粒子、リガンド、結合密度、末端保護、孔径等に関して異なる場合がある。カラム製造業者は、典型的には、複数の異なる粒径およびカラム寸法構成において、同じ固定相、例えば、同じ化学、同じベース粒子、同じリガンド、同じ結合密度、同じ末端保護および同じ孔径を有するカラムを製造している。一実施形態では、2種類の分離システムは、第1および第2の各カラムを有する。この場合、第1および第2カラムは、同様の固定相を有する。同様の固定相は、少なくとも同じ化学、同じベース粒子、同じリガンド、同じ結合密度、同じ末端保護または同じ孔径を有する場合がある。好ましくは、同様の固定相は、同じ化学を有する。
【0030】
本開示は、分析規模でのシステム、調製規模でのシステムおよびそれらの組み合わせ間における分離を移行するのに有用であり得る。例えば、本開示は、分析規模でのシステムから調製規模でのシステム、または、調製規模でのシステムから分析規模でのシステムに分離を移行するのに有用であり得る。本開示は、一方の分析規模でのシステムから他方の分析規模でのシステム、または、一方の調製規模でのシステムから他方の調製規模でのシステムに分離を移行するのにも有用であり得る。本開示が適用可能であり得るシステムの列記としては、制限されず、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から商品名ACQUITY(R)UPCで市販されている二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステム、Method Station SFC、Resolution SFC MS、Preparative SFC Instruments(例えば、Investigator SFC、Prep 100 SFC、SFC 80/200/350 Preparative Systems)、UPCおよびSFCカラムがあげられ、例えば、キラルおよびアキラルの固定相を含む。
【0031】
別の実施形態では、本開示は、ポンプと、ポンプ下流に位置するカラムと、カラム下流に位置する少なくとも1つの背圧調整器と、カラム上流に位置する第1センサであって、第1センサがシステムにおける移動相の第1密度または圧力を測定可能である、第1センサと、カラム下流に位置する第2センサであって、第2センサがシステムにおける移動相の第2密度または圧力を測定可能である、第2センサと、第1および第2センサとシグナル通信しているコントローラと、コントローラにより使用される一式の命令であって、コントローラが移動相の第1および第2密度または圧力測定値を平均化して、移動相の平均密度または圧力値を決定し、移動相の平均密度または圧力値に応じて、システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整可能である、命令とを有する、二酸化炭素ベースの分離システムに関する。
【0032】
本開示は、システムにおける移動相の平均密度または圧力を決定することと、移動相の平均密度または圧力を移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成する方法にも関する。システムにおける移動相の平均密度または圧力は、第1センサにおいて移動相の第1密度または圧力を測定し、第2センサにおいて移動相の第2密度または圧力を測定して、第1セットの測定値を生成することと、第1セットの測定値から移動相の平均密度または圧力を算出することとにより決定され得る。この方法は、第1セットの測定値をコントローラに伝達して、システムにおける移動相の平均密度または圧力を算出することも含み得る。
【0033】
一実施形態では、本開示は、第1センサにおいて移動相の第1密度または圧力を測定し、第2センサにおいて移動相の第2密度または圧力を測定して、第1セットの測定値を生成することと、第1セットの測定値をコントローラに伝達することと、第1セットの測定値から移動相の平均密度または圧力を算出することと、第1セットの測定値からの移動相の平均密度または圧力を移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、本願明細書に記載された二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の所定の平均密度または圧力を達成する方法にも関する。移動相の第1密度または圧力および移動相の第2密度または圧力は、同時に測定されてもよい。
【0034】
一実施形態では、この方法は、更に、移動相の所定の平均密度または圧力が達成されるまで、1つ以上の上記工程、例えば、測定から調整を繰り返すことを含む。移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定され、調整がシステムに対して行われる、すなわち、システムが動的に調整され得る際に、システムにおける移動相の密度または圧力は平衡状態になくてもよい。連続的な測定と少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータの調整との間の時間は、先の調整後に平衡化するシステムの密度および/または圧力についての時間未満である。好ましくは、この時間は、約10秒未満、より好ましくは約5秒未満、および更により好ましくは約1秒未満である。
【0035】
本開示は、特定の標的検体が2つの分離システム間で経験する移動相の平均密度プロファイルまたは平均カラム圧プロファイルを一致または実質的に一致させることを含む。一部の実施形態では、本開示は、複数の標的検体が2つの分離システム間で経験する移動相の平均密度プロファイルまたは平均カラム圧プロファイルを一致または実質的に一致させることを含む。二酸化炭素ベースの分離システムでは、システムにおける最も大きい密度または圧力変化は、通常、カラムにわたる密度または圧力低下である。移動相の平均密度、例えば、移動相の平均カラム密度を決定することは、カラム上流および下流の密度センサを使用して行われ得る。一部の実施形態では、他のコンポーネント、例えば、背圧調整器の前に位置する一部の検出器、配管または配管弁も、コンポーネントにわたる密度または圧力低下をもたらす場合がある。これらのコンポーネントにわたる密度または圧力低下も、移動相の平均密度に関与する。密度または圧力測定は、これらの他のコンポーネントの上流、下流または同コンポーネントにわたって行われてもよい。
【0036】
一実施形態では、第1センサは、システムにおける移動相の第1密度を測定可能な第1密度センサである。第2センサは、システムにおける移動相の第2密度を測定可能な第2密度センサである。別の実施形態では、第1センサは、システムにおける移動相の第1圧力を測定可能な第1圧力センサである。第2センサは、システムにおける移動相の第2圧力を測定可能な第2圧力センサである。例えば、簡易な二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムは、ポンプまたはシステムの開始においてシステム圧を測定する圧力センサ、および、ABPRまたはシステム末端において平均カラム圧を近似させる別のセンサを有してもよい。第1圧力センサ(または密度センサ)は、ポンプに収容されているか、または、同ポンプに接続されていてもよい。第2圧力センサ(または密度センサ)は、背圧調整器に収容されているか、または、同背圧調整器に接続されていてもよい。このシステムでは、大部分のシステム圧低下は、カラムにおいて起こる。より複雑なシステムでは、更なるシステム圧低下が、他のコンポーネント、例えば、配管弁よる圧力低下により起こる場合がある。より複雑な計算が、例えば、種々のセンサからの圧力測定値の重み係数を変化させる変更により、これらの更なる低下を説明するために行われ得る。
【0037】
カラムに関連しないシステムにおける更なる圧力低下は、数多くの異なる方策により取り組まれてもよい。一実施形態では、最も単純な方策は、測定条件における非カラム圧低下を測定する検査を行い、ポンプ圧からカラム前圧低下を差し引き、カラム後圧低下をABPR圧に加えることである。この方策は、正確な値の非カラム圧低下を提供するが、時間がかかり、更なる検査を必要とする。別の実施形態では、別の方策は、システムを全体的に特徴付ける検査を行うことである。特徴付けは、任意の所定条件についての低下を、完全に複雑なモデルまたは完全モデルの単純化されたバージョンのいずれかに基づいて推測する基本モデルに入力され得る。システム全体的な特徴付けは、カラムバイパスを含むシステムを実行することにより行われ得る(例えば、CM−A中でカラムをバイパスするカラム選択弁を使用し得る)。システム情報と組み合わせた非カラム圧低下全体は、測定圧に対して必須の調整の正確な推定値を提供し得る。最後に、別の実施形態では、更なる方策は、システム構成を入力し、公知の配管を使用して、方法条件を含む完全または単純化されたモデルに基づいて圧力を算出することである。方法において選択され得るか、または、ユーザが各機器についてのデータを手入力し得る一式の標準的な構成が、使用されおよび特徴付けられ得る。
【0038】
図1は、本開示の一実施形態を示す。分離システムは、ポンプ(10)と、ポンプ(10)の下流に位置するカラム(20)と、カラム(20)の下流に位置する検出器(30)と、検出器(30)の下流に位置する能動的背圧調整器(40)とを含む。図1Aに示されるように、ポンプ(10)とカラム(20)との間の任意の位置またはポンプ(10)およびカラム(20)に、第1センサ(50)が配置されてもよい。また、カラム(20)とABPR(40)との間の任意の位置またはカラム(20)およびABPR(40)に、第2センサ(52)が配置されてもよい。図1Bに示されるように、センサ(50、52)はそれぞれ、ポンプ(10)とカラム(20)との間およびカラム(20)と検出器(30)との間(すなわち、ABPRの上流)に位置している。センサ(50、52)は、コントローラ(60)に接続されており、コントローラ(60)とシグナルまたはデータ通信している。コントローラ(60)は、新たなパラメータまたはシステム設定もしくは条件を算出するのに使用され得る一式の命令(70)を収容しているか、または、インプットされている。コントローラ(60)は、ポンプ(10)およびABPR(40)にも接続されており、ポンプ(10)およびABPR(40)ともシグナルまたはデータ通信している。コントローラ(60)は、これらの接続を介してデータもしくはシグナルを受信可能であり、および/または、それが接続されている全てまたは大部分のコンポーネントに、これらの接続を介してデータもしくはシグナルを送信可能である。
【0039】
好ましくは、第1システムにおける密度または圧力を測定する位置は、第2システムにおける位置と類似または同等である。例えば、第1システムについてのカラム上流の密度または圧力を測定する位置がポンプにある場合、例えば好ましくは、第2システムについてのカラム上流の密度または圧力を測定する位置もポンプにある。第1システムについてのカラム下流の密度または圧力を測定する位置が背圧調整器にある場合、例えば好ましくは、第2システムについてのカラム下流の密度または圧力を測定する位置も背圧調整器にある。
【0040】
一実施形態では、移動相の平均密度または平均カラム圧は、(i)カラム前端で測定された移動相の入口密度または圧力および(ii)カラム基部で測定された移動相の出口密度または圧力から算出された移動相の平均密度または圧力である。別の実施形態では、移動相の平均密度または平均カラム圧は、(i)ポンプ出口で測定された移動相の密度または圧力および(ii)ABPR入口で測定された移動相の密度または圧力から算出された移動相の平均密度または圧力である。これらの実施形態の組み合わせも、移動相の平均密度または平均カラム圧を決定するのに使用される場合がある。
【0041】
本開示は、均一濃度分離および勾配分離の両方に適用可能である。均一濃度分離についての移動相の平均密度または平均カラム圧を決定することは、システムにわたる、例えば、カラムおよび/またはシステムの密度または圧力に影響を及ぼす任意の更なるコンポーネントにわたる圧力測定値を平均化することにより行われてもよい。検出器がシステムにおける密度または圧力の著しい変化を引き起こさない単純な分離システム構成において、測定は、カラムの上流および下流で行われてもよい。これらの測定値は、均一濃度分離についての移動相の平均密度または平均カラム圧を得るのに平均化される。
【0042】
勾配分離についての移動相の平均密度または平均カラム圧を決定することは、最初の勾配条件および最後の勾配条件の両方において行われたシステムにわたる圧力測定値を平均化することにより行われてもよい。例えば、二酸化炭素ベースの分離は、二酸化炭素移動相中に5% 修飾剤から開始し、40% 修飾剤で終了する勾配を使用し得る。好ましくは、勾配は、線形で連続的である。測定は、最初の条件、すなわち、5% 修飾剤において行われる。例えば、背圧調整器の圧力値は、2,000psiである場合があり、カラム上流の圧力値は、3,500psiである場合がある。更なる測定は、最終的な条件、すなわち、40% 修飾剤で行われる。例えば、背圧調整器の圧力値は、2,000psiである場合があり、カラム上流の圧力値は、4,500psiである場合がある。最初の条件(3,500psiおよび2,000psi)についての平均測定値は、2,750psiである。最終的な条件(4,500psiおよび2,000psi)についての平均測定値は、3,250psiである。これらの平均測定値(2,750psiおよび3,250psi)の平均は、3,000psiである。勾配分離から第2分離システムにおける第2分離法への移行において、第2分離は、3,000psiの平均カラム圧で行われるべきである。第2分離システムにおける平均カラム圧は、第2分離手法が均一濃度条件または勾配条件下において行われるかどうかに応じて、上記と同様の手法を使用して算出されるべきである。
【0043】
第1システムにおける第1分離についての移動相の平均密度または平均カラム圧が測定または決定された後に、第2システムにおける第2分離は、測定または決定された移動相の平均密度または平均カラム圧で行われるべきである。第2分離システムにおける移動相の平均密度または平均カラム圧を達成することは、ルーチンな最適化により達成され得る。例えば、第1システムにおける第1分離について測定または決定された移動相の所定の平均密度または平均カラム圧に対して、第2分離システムが平衡化および調整された後に、システムパラメータは段階的に変化され得る。本開示の1つの利点は、最適化が1つの主要パラメータ、例えば、第2システムにおける第2分離を最適化するために、例えば、試行錯誤による全ての変数を最適化することよりむしろ反復により、移動相の平均密度または平均カラム圧に集中されていることである。第2分離システムにおける移動相の平均密度または平均カラム圧も、コントローラを使用することにより達成され得る。
【0044】
別の実施形態では、本開示は、ポンプと、ポンプ下流に位置するカラムと、カラム下流に位置する背圧調整器と、少なくとも2つの密度または圧力センサであって、移動相の平均密度または圧力を測定するために、一方がカラム上流に位置しており、もう一方がカラムの下流に位置しているセンサと、少なくとも2つのセンサと通信しており、少なくとも2つのセンサからの密度または圧力測定値に応じて移動相の所定の平均密度または圧力を達成するように、システムパラメータを調整可能な密度または圧力コントローラとを含む二酸化炭素ベースの分離システムに関する。センサの数および位置は、システムにおける実質的な密度または圧力低下を引き起こし得る更なるコンポーネント、例えば、検出器の存在に基づいて調整され得る。なお、更なるセンサが、これらのコンポーネント上流、同コンポーネントにわたっておよび同コンポーネント下流の密度または圧力を測定するのに存在してもよい。単純なシステムでは、2つのセンサ(圧力または密度)のみが必要とされる。理想的には、これらのセンサは、カラムの入口および出口に位置している。ポンプとカラム入口との間の圧力低下は最少である。同様に、カラム出口とABPRとの間の圧力低下は最少である。これらのセンサは、ポンプ出口およびABPRにも位置してもよい。例えば、システム圧センサおよびABPRセンサが使用されてもよい。
【0045】
コントローラは、1つ以上の圧力または密度センサからのシグナルを受信し、受信されたシグナルを使用して算出を実行し、少なくとも1つのシステムコンポーネントにシグナルを送信して、同コンポーネントまたはシステムパラメータに影響を及ぼすことが可能である任意のデバイスであり得る。コントローラにより実行される計算は、単純でもよいし(例えば、加算、減算、平均化)、または、複雑でもよい(例えば、非線形方程式の適用)。一実施形態では、この計算は、システムパラメータ、例えば、圧力および温度を使用して、二酸化炭素固有の非線形密度特性が存在する条件下において、移動相の平均密度を決定するのに使用され得る。これらの計算は、多次元探索または1つの式、圧力(温度、平均圧力、圧力低下)、圧力(温度、入口圧力、出口圧力)または温度および密度に関する圧力の平均化積算に基づいてもよい。式および計算は、動作領域における二酸化炭素の公知の特性に基づいている。計算およびシグナル制御は、一式の命令、例えば、コードまたはソフトウェアによりある程度制御される。一式の命令は、クロマトグラフィーシステムにわたる専用の制御のためにユーザにより改良されてもよい。これらは、配管圧低下、密度を算出するカラム温度およびパラメータに関連する他のシステム構成または方法を説明するシステム構成等の項目を含んでもよい。これらのパラメータは、カラムにおける移動相の特性をより正確にモデル化または算出するのに使用される。
【0046】
二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムでは、二酸化炭素の特定は、終始変動する。分離の一貫性を最適化するために、コントローラは、所望の点において所望の特性を少なくとも制御しているべきである。ほとんどの場合、これは、カラムにおける平均溶媒和力(溶出性強度:elutropic strength)である。一実施形態では、調整される少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータは、背圧調整器である。移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より低い場合、背圧調整器は、システムにおけるより高い圧力を生じさせるのに調整され得る。更に、移動相の平均密度または圧力値が移動相の所定の平均密度または圧力より高い場合、背圧調整器は、システムにおけるより低い圧力を生じさせるのに調整され得る。背圧調整器を調整することは、平均システム圧を変化させる圧力設定点を変化させることを含んでもよい。
【0047】
既存のシステムは、カラム温度およびシステム後端圧を制御している。システムまたはカラムの特性の直接的な制御は利用できない。本開示は、これらのパラメータ、例えば、移動相の密度およびシステム圧にわたって制御可能である。これらのパラメータを制御することにより、より一致した検体挙動が得られる。コントローラは、パラメータを自動的または連続的に調整するセンサ測定値に基づいて、種々の位置において、システムパラメータ、例えば、圧力または温度を調整して、移動相の所望平均密度または平均カラム圧を得るように構成されてもよい。移動相の所望平均密度または平均カラム圧を得る前の調整は、システムが平衡に達する前に行われてもよい。例えば、システムは、平均カラム圧:
平均カラム圧=[(ポンプにおけるシステム圧+ABPR圧)/2]
をモニターし、ABPR設定を自動的に調整して、平均カラム圧を一定値に維持してもよい。
【0048】
一実施形態では、移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際に、システムにおける移動相の密度または圧力は平衡状態にある。別の実施形態では、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調整される際に、システムにおける移動相の密度または圧力は平衡状態にある。別の実施形態では、移動相の第1および第2密度または圧力測定値が第1および第2センサにより測定される際に、システムにおける移動相の密度または圧力は平衡状態にない。更に別の実施形態では、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータが調整される際に、システムにおける移動相の密度または圧力は平衡状態にない。
【0049】
移動相の平均密度または平均カラム圧を制御することは、二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーの規模を拡大可能にする。移動相の密度が温度および圧力両方の要因(factor)であるため、検体保持時間および他の挙動も温度に関連する。一部の実施形態では、分離システム(例えば、カラム)の温度は、移動相の平均密度または平均カラム圧を達成または維持するように制御される。コントローラは、カラムまたはシステム温度を制御して、一致または所定の密度または圧力値を達成または維持する能力を有してもよい。一実施形態では、本開示の装置および方法は、分離システムの温度を決定するための、または特に、分離システムにおける任意の所定位置(例えば、カラム入口、カラム出口)での移動相の温度を決定するための、ならびに、カラム温度を決定するめの1つ以上の温度センサを含む。他の実施形態では、本開示の装置および方法は、システム温度を調整する1つ以上の分離システムヒータ(例えば、カラムヒータ)を含む。システムまたはカラムの温度は、ソフトウェアもしくはハードウェア設置を使用して設定され、ソフトウェアもしくは温度プログラムを使用して命令され、または、1つ以上の温度センサを使用して決定され得る。温度センサおよびヒータは、コントローラに接続されており、経路圧力が制御されるのと同様に、同コントローラにより制御されることができる。一部の実施形態では、分離システムの圧力および温度は両方とも、移動相の平均密度または平均カラム圧を達成または維持するように制御される。一実施形態では、移動相の平均密度は、第1および第2移動相の圧力測定値およびカラム温度から算出される。
【0050】
コントローラについてのソフトウェアは、クロマトグラフィーシステム、例えば、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)からの商品名Convergence Manager for ACQUITY(R)UPCとして市販されているシステムを制御または管理するのに使用される、ソフトウェア、プログラミングまたはオペレーティングシステムに組み込まれてもよい。
【0051】
本願明細書に記載されたように、移動相の平均密度は、システム圧測定値を使用して、直接的に測定、算出または近似のいずれかがされてもよい。平均圧力プロファイルは、分離間で平均密度プロファイルを複製するための近い近似値として使用されてもよい。このような測定または算出が、この方法の実施において利用可能な場合、実際の密度測定またはそれらの密度の算出を使用するのは、本開示の範囲内である。一実施形態では、一式の命令は、移動相の平均密度を算出または推定し、システムを調整して、所定の密度値を得ることができる。
【0052】
本開示は、異なるシステム間で生じるシステム圧における小さな差異を補償することにより、システムの堅牢性を改善することも証明されている。先に記載されたように、圧力を変化させるシステムの任意のコンポーネントは、分離に影響を及ぼす場合がある。例として、カラム出口と検出器との間の配管における小さな圧力低下が存在する場合がある。汚染により配管が部分的に遮断された場合、これは、配管の一部にわたって圧力低下の増大をもたらすであろうし、この分離全体についての圧力プロファイルを変化させ得るため、検体の保持および選択性を変化する場合がある。手動または自動の方法のいずれかにおいて平均圧力を維持することにより、配管遮断によるこの増大した圧力を補償することは、配管遮断前の分離に類似する結果をもたらすこの分離のクロマトグラフィー完全性を維持し得る。
【0053】
本開示は、二酸化炭素ベースのクロマトグラフィーシステムおよび関連するシステムにおける溶媒パラメータ(例えば、密度)を制御することを対象にする。これらのシステムでは、密度を直接制御することまたは圧力および/もしくは温度を制御することにより密度を間接的に制御することは、検体溶解性(例えば、移動相の溶媒和力)を制御する1つの手段である。一態様では、本開示は、システムパラメータ、例えば、密度、圧力および/または温度の制御による移動相の溶媒和力の制御に関する。一実施形態では、本開示は、システムにおける移動相の平均密度または圧力を決定することと、場合により、システムにおける移動相の平均温度を決定することと、移動相の平均密度または圧力を移動相の所定の平均密度または圧力と比較することと、場合により、移動相の平均温度を移動相の所定の平均温度と比較することと、移動相の所定の平均密度、圧力または場合により温度を達成するように、少なくとも1つのシステムコンポーネントまたはパラメータを調整することとを含む、二酸化炭素ベースの分離システムにおける移動相の溶媒和力を制御する方法に関する。
【0054】
本発明は、更に、下記実施例において定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例証としてのみ与えられると理解されるべきである。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の必須の特徴を確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更および修飾を行って、種々の用途および条件にそれを適合させることができる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
この実施例は、システム間の相違点がカラム粒径である、2つの分析規模でのシステム間の二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の効率的な移行を説明する。
【0056】
カフェイン(1)、カルバマゼピン(2)、ウラシル(3)、ヒドロコルチゾン(4)、プレドニゾロン(5)およびスルファニルアミド(6)を含むサンプル混合物が、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(2.1×150mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で分離された。10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、1.4mL/分の流速および40℃において行われた。伝統的な手段を使用して、分離は最適化された。図2aに示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有した。圧力センサは、カラムの上流および下流に配置された。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、3,694psiであった。
【0057】
次いで、その分離手法は、カラム固定相粒径以外は第1システムと同一の第2システムに移行された。第2システムは、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(2.1×150mm、粒径5μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)からなる。第2カラムの粒径は、1.7μmとは対照的に、5μmであった。全ての他のシステム条件は同じにした。10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、1.4mL/分の流速および40℃において行われた。最初に、第2分離は、第1システムのABPR設定において、すなわち、1,500psiで行われた。ABPRは、システム出口圧を設定し、移動相の密度を維持する。一部の実施形態において、同じABPR設定が、第1分離の圧力状態を最初から繰り返すのに使用される。これは、1,752psiの第2システムにおける平均カラム圧をもたらした。図2aに示される得られたクロマトグラフ(中段のクロマトグラフ)は、最適下限であった。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、10.3から15.7に増大した。
【0058】
第2システムにおける圧力設定は、第2システムについての平均カラム圧(すなわち、3,693psi)が第1システムの平均カラム圧(すなわち、3,694psi)と一致するように段階的に調整された。図2aに示される最後のクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2)−(図示せず)。図2bは、平均密度一致の有無によるカラム長にわたる移動相密度のシミュレーションの比較を示す。
【0059】
ABPRの調整を行わない、より大きい5μmの粒径の使用は、最初の1.7μmでの分離に対してより低い圧力プロファイルをもたらし、異なる選択性および保持係数を生じる分離をもたらした。選択性の変化は、ピーク2および3の共溶出をもたらすほど十分劇的である。1.7μm分離と同様の分離圧プロファイルを提供するようにABPRが調整された場合、1.7μmの粒子での最初の分離に類似する選択性および保持係数を伴って、ピーク2および3の分離が回復する。5μm分離の効率(N、理論段数)は、1.7μm分離に対してより低い。このことは、より大きい粒径に予測され、従来のLC条件下において観察されるであろうものに類似する。
【0060】
(実施例2)
この実施例は、システム間の相違点がカラム粒径および流速である、2つの分析規模でのシステム間の二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の効率的な移行を説明する。
【0061】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用された。第1分離は、実施例1で使用されたのと同じ手法および分離システムを使用した。第1システムにおける第1分離は、図3(上段のクロマトグラフ)に示される。粒径は、1.7μmとした。流速は、1.4mL/分とした。ABPRは、1,500psiに設定された。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、3,694psiであった。
【0062】
次いで、その分離手法は、カラム粒径および流速の2つを除いて、第1システムと同一の第2システムに移行された。第2システムは、5μmの粒径を有するカラムと、0.48mL/分の流速を含んだ。流速は、最適な線速度を維持するように、粒径比に基づいて流速を調整することにより、粒径の差異を説明するために調整された。
【0063】
流速×(dp1/dp2)=1.4mL/分×(1.7μm/5μm)=0.48mL/分
最初に、第2分離は、第1システムのABPR設定において、すなわち、1,500psiで行われた。これは、1,572psiの第2システムにおける平均カラム圧をもたらした。図3に示される得られたクロマトグラフ(中段のクロマトグラフ)は、最適下限であった。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、10.3から15.7に増大した。
【0064】
第2システムにおける圧力設定は、第2システムについての平均カラム圧(すなわち、3,688psi)が第1システムの平均カラム圧(すなわち、3,694psi)と実質的に一致するように段階的に調整された。図3に示される最後のクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2)。
【0065】
(実施例3)
この実施例は、システム間の相違点が流速である、3つの分析規模でのシステム間の二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の効率的な移行を説明する。
【0066】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用された。Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(2.1×150mm、粒径5μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で、混合物が分離された。10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、0.48mL/分の流速および40℃において行われた。伝統的な手段を使用して、分離が最適化された。図4aに示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、3,600psiのABPR設定を有する。2つの圧力センサから算出した平均カラム圧は、3,688psiであった。
【0067】
平均カラム圧が一定に固定された場合に、異なる分離手法についての異なる流速およびABPR設定の影響を評価するのに、流速およびABPRが調整された。第1システム(3,688psi)と実質的に同様の平均カラム圧(すなわち、3,693psi)を達成するように、流速は、1.4mL/分に調整され、ABPRは、3,390psiに調整された。図4aに示される得られたクロマトグラフ(中段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2)。
【0068】
別の分離では、第1システム(3,688psi)と実質的に同様の平均カラム圧(すなわち、3,694psi)を達成するように、流速は、4.0mL/分に調整され、ABPRは、2,322psiに調整された。図4aに示される得られたクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムおよび第2システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2 vs 8.7)。LC法について同様に観察されるように、分離効率(N)全体の低下が、最適線速度(この本構成では粒径5μmについて〜0.48mL/分)より速い流速で観察される。図4bは、平均密度を一致させたカラム長にわたる移動相の密度シミュレーションの比較を示す。
【0069】
(実施例4)
この実施例は、分析規模での機器を使用して展開される二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の、調製用SFC機器への効率的な移行を説明する。
【0070】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用された。最初の分離は、実施例1で使用されたのと同じ手法および分離システムを使用した。図5に示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有する。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、3,694psiであった。
【0071】
次いで、その分離手法は、カラム粒径および流速の2つ以外は、第1システムと同一の第2システムに移行された。第2システムは、5μmの粒径を有するカラムと、0.48mL/分の流速を含んだ(実施例3を参照のこと。)。図5に示される図3における最後のクロマトグラフ(中段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2)。
【0072】
次いで、その分離手法は、第3システム、すなわち、調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるPrep100 SFC)に移行された。第3システムは、先の分離と同じカラム化学(BEH 2−EP(R))を使用したが、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できる、より大きい構成(19×150mm、粒径5μm)とした。6% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、80g/分の流速および40℃において行われた。ほとんどの分析用機器は、体積に関する流速(mL/分)を測定するが、多くの調製用SFC機器は、g/分の単位を有する質量における流速を測定する。調製用クロマトグラフィーに使用された密度において、80g/分は、約83mL/分に相関する。調製用分離に使用された注入量240μLは、2つのシステムについてのカラム体積比により、分析用分離(注入量2μL)からの大きさとした。
【0073】
2μL注入×(体積219×150/体積13.0×50)=240μL注入
第3システムにおける圧力設定は、第3システムについての平均カラム圧(すなわち、3,678psi)が第1システムの平均カラム圧(すなわち、3,694psi)と実質的に一致するように段階的に調整された。図5に示される第3システムについてのクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムおよび第2システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(10.3 vs 9.2 vs 7.9)。
【0074】
(実施例5)
この実施例は、分析規模での機器を使用して展開される二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の、調製用SFC機器への効率的な移行を説明する。
【0075】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用された。第1システムは、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)とした。6% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、3.0mL/分の流速および40℃において行われた。注入量は、1μLとした。伝統的な手段を使用して、分離は最適化された。圧力センサが、カラムの上流および下流に配置された。図6に示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有し、3,576psiのカラム上流のシステム圧を有する。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、2,538psiであった。
【0076】
次いで、その分離手法は、第2システム、すなわち、調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるPrep100 SFC)に移行された。LC法の移行についてのカラムと同様に、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できる、同じカラム化学、BEH 2−EP(R)(3.0×50mm、1.7μmのカラム規模から19×100mm、粒径5μmのカラム)を使用して、第2システムについて、粒径に対するカラム長の比(L/d)が維持された。
【0077】
6% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、80g/分の流速および40℃において行われた。先の実施例と同様に、調製用分離についての注入量は、240μLの大きさにした。第2システムにおける圧力設定は、第2システムについての平均カラム圧(すなわち、2,531psi)が第1システムの平均カラム圧(すなわち、2,538psi)と実質的に一致するように段階的に調整された。図6に示される第2システムについてのクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(24.4 vs 26.9)。
【0078】
分析用条件から調製用条件への方法の移行について、2つのカラムについての粒径に対するカラム長の比(L/d)が維持された。これにより、分離についての同じ平均圧力プロファイルを維持する、ABPRの調整後の類似する選択性および保持係数がもたらされる。ただし、方法の移行について、カラム長/粒径比を一致させる必要はない。この比の維持は、分離間での同じ効率を生じさせる。本実施例では、100mmのカラムが、かなり良好な成功を伴って使用されているが、元の分離より効率が低い。観察された効率の差異は、分析用分離に対して調製用分析に使用された粒径の差異およびより速い線速度にある程度起因し得る。この能力は、調製用クロマトグラフィーへの最終的な方法の直接的な移行を伴って、より速い分析規模での方法の素早いスクリーニングを可能にする。これにより、時間および移動相のかなりの節約がもたらされる。
【0079】
(実施例6)
この実施例は、一定の平均カラム圧での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の分離能における注入量およびサンプル濃度の影響を説明する。
【0080】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用される。Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で、混合物は分離された。6% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用して、分離は均一濃度とし、3.0mL/分の流速および40℃において行われた。注入量は、1μLとした。混合物中の各検体濃度は、0.2mg/mLとした。伝統的な手段を使用して、分離が最適化された。図7に示される最適化された分離(下段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有する。圧力センサは、カラムの上流および下流に配置された。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、2,538psiであった。
【0081】
異なる分離手法を使用して、分離が繰り返された。濃度は、3.75mg/mLに調整された。平均カラム圧は、2,538psiで一定のままであった。図7に示される得られた分離(中段のクロマトグラフ)は、同様の分離を示した。別の分離手法を使用した分離も繰り返された。注入量は、2μLに調整され、サンプル濃度はそれぞれ、3.75mg/mLに調整された。平均カラム圧は、2,538psiで一定のままであった。図7に示される得られた分離(上段のクロマトグラフ)は、同様の分離を示した。注入量およびサンプル濃度における変化は、一定の平均カラム圧において、SFC法の分離能にほとんど影響を有さないと思われる。
【0082】
(実施例7)
この実施例は、二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー分離のための勾配分離についての平均カラム圧の算出を説明する。
【0083】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用される。Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で、混合物は分離された。分離は、3分間にわたる勾配条件下において調整された、2−10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用した。流速は、3.0mL/分とした。伝統的な手段を使用して、分離は最適化された。図8に示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有する。圧力センサは、カラムの上流および下流に配置された。システム圧測定値は、図8(下段のトレース)に示される。最初の勾配条件、すなわち、2% 修飾剤において、カラム上流のシステム圧は、3,529psiであり、カラム下流のシステム圧は、1,500psiであった。最初の勾配条件における平均カラム圧は、2,514psiと算出された。この平均カラム圧は、3,529psiと1,500psiとの平均である。最終的な勾配条件、すなわち、10% 修飾剤において、カラム上流のシステム圧は、3,678psiであり、カラム下流のシステム圧は、1,500psiであった。最終的な勾配条件における平均カラム圧は、2,589psiと算出された。この平均カラム圧は、3,678psiと1,500psiとの平均である。その後、勾配分離についての平均カラム圧は、2,551psiであると算出された。この平均カラム圧は、2,514psiと2,589psiとの平均である。
【0084】
(実施例8)
この実施例は、一定の平均カラム圧における二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の勾配分離能における注入量およびサンプル濃度の影響を説明する。
【0085】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用される。Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で、混合物は分離された。分離は、3分間にわたる勾配条件下において調整された、2−10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用した。流速は、3.0mL/分とした。注入量は、1μLとした。混合物中の検体濃度はそれぞれ、0.2mg/mLとした。伝統的な手段を使用して、分離は最適化された。図9に示される最適化された分離(下段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有する。圧力センサは、カラムの上流および下流に配置された。
【0086】
異なる分離手法を使用して、分離が繰り返された。濃度は、3.75mg/mLに調整された。平均カラム圧は、一定のままであった。図9に示される得られた分離(中段のクロマトグラフ)は、同様の分離を示した。別の分離手法を使用した分離も繰り返された。注入量は、2μLに調整され、サンプル濃度はそれぞれ、3.75mg/mLに調整された。図9に示される得られた分離(上段のクロマトグラフ)は、同様の分離を示した。注入量およびサンプル濃度における変化は、一定の平均カラム圧において、勾配SFC法の分離能にほとんど影響を有さないと思われる。
【0087】
(実施例9)
この実施例は、分析規模での機器を使用して展開される勾配二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー法の、調製用二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器への効率的な移行を説明する。
【0088】
実施例1で使用されたのと同じサンプル混合物が使用された。最初の分離は、実施例7で使用されたのと同じ手法および分離システムを使用した。図10に示される最適化された分離(上段のクロマトグラフ)は、1,500psiのABPR設定を有する。2つの圧力センサから算出された平均カラム圧は、2,551psiであった。
【0089】
次いで、その分離手法は、第2システム、すなわち、調製規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるPrep100 SFC)に移行された。第2システムは、先の分離と同じカラム化学(BEH 2−EP(R))を使用したが、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できる、より大きい構成(19×150mm、粒径5μm)とした。分離は、13.5分間にわたる勾配の2−10% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用した。13.5分の勾配時間は、約83mL/分の流速における勾配中での同じカラム体積の移動相を維持するために、元の条件(3mL/分において3分)から拡大された長さである。注入量は、240μLとした。第2システムにおける圧力設定は、第2システムについての平均カラム圧(すなわち、2,325psi)が第1システムの平均カラム圧(すなわち、2,551psi)とおおよそ一致するように段階的に調整された。図10に示される第2システムについてのクロマトグラフ(下段のクロマトグラフ)は、第1システムにおいて最適化された分離に類似する分離を示した。スルファニルアミドについての保持係数は、例えば、比較できる(24.0 vs 16.6)。ここで、観察された保持係数の不一致は、主に、これらの評価において補正されなかった2つのシステム間のシステム体積全体の差異による。
【0090】
(実施例10)
この実施例は、一定のシステム圧を維持するシステムについてのk’対する流速の影響を説明する。
【0091】
実施例1に記載されたのと同じサンプル混合物および分離システムが使用された。低い背圧カラム(約300psiデルタ)および高い背圧カラム(約2,000psiデルタ)の両方を使用して、分離が行われた。各カラムについての結果は同じであった。
【0092】
各システムについて、3種類のシナリオで分離が行われた。第1シナリオは、流速が0.5mL/分から2mL/分に変動させられた際に、約2,500psiのポンプで一定圧力を維持した。一定値でシステム圧を維持するために、ABPR圧力設定が低下されて、より速い流速でより高い圧力に補償した。第2シナリオは、流速が0.5mL/分から2mL/分に変動させながら、約2,200psiのABPRで一定圧力を維持した。これらの条件下において、システム圧は、流速の増加の結果として増加された。第3シナリオは、流速が0.5mL/分から2mL/分に変動させられた際に、約2,350psiのカラムにわたる一定の平均圧力を維持した。結果は、図11および図12に示される。ピーク3(ウラシル)についてのk’値は、他の検体に対する性能の代表例である。示されるように、カラムにわたる平均圧力を一定に維持することにより、k’値は、ほぼ一定のままである。観察されたk’のバリエーションは、平均圧力では説明されない配管による圧力低下による可能性がある。システム、例えば、ポンプまたはABPRにおける一点のみにおいて圧力を一定に維持することにより、最初の2つの設定についてのシステム圧は、一定のままでない。
【0093】
種々の流速における各検体についてのk’を一定に維持することは、分離時間にわたる制御も可能にする。各検体についての一定のk’は、検体が互いに移動するのを避け、溶出順序を維持する。分離は、より素早く行われ得る。2つのシステム間の方法の移行もより早くなり得る。
【0094】
(実施例11)
この実施例は、システム圧における小さな変化に対する応答での検体保持における影響を説明する。システム圧におけるこれらの小さな変化は、システム間のバリエーションの結果であり得る。それらは、配管の内径または長さの変化により、故意に導入され得る。または、それらは、故意ではなく、多くの場合明らかでない場合がある。これは、システムに留まった汚染物質の結果であり得る。汚染物質の滞留は、動作圧の小さな上昇をもたらす流路の小さな制限を引き起こす。この制限は、動作圧全体の低下を引き起こす非常に小さな漏出の結果でもあり得る。多くの場合、これらの問題は、特定が困難であり、システム間または経時的なクロマトグラフィーの不一致をもたらし得る。
【0095】
平均密度または平均カラム圧のプロファイルを一致させる本方法を使用することは、システム圧におけるこれらの小さな変化による保持における変化を緩和し得る。図13および図14は、システム配管における変化に対するこの概念を説明する。内径0.007’’のカラム出口配管は、内径0.004’’の新たな配管に置き換えられた。配管内径の低下は、システム圧全体に400psiの上昇をもたらした。この圧力上昇の影響は、図13に示され得る。同図において、より小さい内径の配管によるより高い圧力において収集されたピークは、より小さいk’値にシフトされる。保持におけるこのシフトは、図14に示されるように、平均カラム圧を維持することにより緩和され得る。これにより、ほぼ同一の保持係数を有するピークをもたらされる。
【0096】
(実施例12)
この実施例は、システム密度における変化に対する応答での検体保持係数および選択性における影響を説明する。
【0097】
フラボン、カフェインおよびチミンを含むサンプル混合物は、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を使用する、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)で分離された。分離は、5% メタノール修飾剤を含む二酸化炭素移動相を使用し、4種類の流速、4種類の圧力および3種類の温度で行われた。合計48種類の条件が使用された。移動相の密度は、各セットの条件に対して決定された。検体の保持挙動をマップするのに、分離が使用された。図15および図16は、多数の検体についての密度変化における保持時間(図15)および選択性(図16)への影響を示す。
【0098】
これらの試験結果は、温度が密度におけるその独立した影響を有さないことを示唆している。このため、特定密度を達成するために、温度および圧力の両方に影響を及ぼすのに、コントローラが使用され得る。
【0099】
(実施例13)
本開示の方法および装置は、一連の分離中における移動相の平均圧力を制御するのに使用される。実験は、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手できるBEH 2−EP(R)カラム(3.0×50mm、粒径1.7μm)を備える、分析規模での二酸化炭素ベースのクロマトグラフィー機器(すなわち、ACQUITY(R)UPC、Waters Technologies Corporation(Milford、MA)から入手)を含む。図1Aまたは図1Bに示されるように、システムは、少なくとも2つの圧力センサおよび一式の命令を含むコントローラも含む。検体混合物、例えば、カフェイン(1)、カルバマゼピン(2)、ウラシル(3)、ヒドロコルチゾン(4)、プレドニゾロン(5)およびスルファニルアミド(6)を含むサンプル混合物の分離が行われる。平均カラム圧は、第1セットの条件/第1システム(すなわち、所定カラム圧)下において、この混合物の最適化された分離に対して決定される。第2セットの条件/第2システム下におけるその後の分離が行われる。この場合、所定の平均カラム圧を達成するように、平均カラム圧が(反復的または動的に)調整される。これは、第1最適化分離の品質を再現する第1選択の近似である。更なる最適化の努力は、より容易であるか、または、努力が減らされる。
【0100】
平均カラム圧は、サンプル注入前に達成される。サンプル注入後および第2セットの条件/第2システム下におけるその後の分離が進行するのと同時では、平均カラム圧は変化し得る。平均カラム圧は、数多くの要因、例えば、存在する温度勾配、二酸化炭素源からの二酸化炭素圧の低下(すなわち、タンクが減少している場合がある。)のために変化する場合があり、または、移動相は、第2セットの条件に対して非線形応答を受ける。本開示の方法および装置は、第2分離中の平均カラム圧を調整して、所定のカラム圧に戻すまたは同カラム圧を維持するのに使用される。調整は、ABPRに対して、約1秒未満であり得る間隔においてなされる。第2分離中の平均カラム圧は、第2分離全体を通して、所定の平均圧の約5%以内に保持される。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B