特許第6456427号(P6456427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456427
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】コンバイナ、及び、レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/28 20060101AFI20190110BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20190110BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20190110BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G02B6/28 R
   G02B6/26
   G02B6/42
   H01S5/022
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-89538(P2017-89538)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189696(P2018-189696A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2017年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−190714(JP,A)
【文献】 特開平11−121843(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/077069(WO,A1)
【文献】 特開2017−028185(JP,A)
【文献】 特開2009−271108(JP,A)
【文献】 米国特許第05892868(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力ファイバからなる入力ファイバ束と、
上記入力ファイバ束から出射したビーム束が入射するGIファイバ部、及び、入射端面が上記GIファイバ部の出射端面に接続されたSIファイバ部を有し、出射端面の直径が入射端面の直径よりも小さいブリッジファイバと、を備え、
上記GIファイバ部は、上記入力ファイバ束から出射したビーム束を集束し、
上記SIファイバ部は、コア径が出射端面に近づくに従い次第に小さくなる縮径部を含み、
上記GIファイバ部にて集束されたビーム束は、上記SIファイバ部のコアを伝搬する、
ことを特徴とするコンバイナ。
【請求項2】
上記GIファイバ部は、上記ブリッジファイバの出射端面の中心又は中心近傍において、上記入力ファイバ束から出射した複数のビームが交差するように、上記ビーム束を集束する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイナ。
【請求項3】
上記入力ファイバ束を構成する少なくとも1つの入力ファイバと上記ブリッジファイバとの間に介在するGIファイバであって、該入力ファイバから出射されるビームの発散角を小さくするGIファイバを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイナ。
【請求項4】
上記GIファイバは、上記少なくとも1つの入力ファイバから出射されるビームをコリメートする、
ことを特徴とする請求項に記載のコンバイナ。
【請求項5】
上記GIファイバ部の出射端面は、上記SIファイバ部の入射端面に融着されている、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のコンバイナ。
【請求項6】
上記ブリッジファイバの出射端面は、平坦である、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のコンバイナ。
【請求項7】
上記ブリッジファイバから出射した上記ビーム束が入射する出力ファイバを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコンバイナ。
【請求項8】
記GIファイバ部は、上記出力ファイバの入射端面の中心又は中心近傍において、上記入力ファイバ束から出射した複数のビームが交差するように、上記ビーム束を集束する、
ことを特徴とする請求項に記載のコンバイナ。
【請求項9】
上記出力ファイバは、コアと、上記コアの外側面を覆うクラッドとを備え、
上記出力ファイバの入射端面におけるコアと、上記ブリッジファイバの出射端面におけるコアとが少なくとも融着されている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のコンバイナ。
【請求項10】
上記入力ファイバ束を構成する入力ファイバのうち、上記ブリッジファイバの中心から最も離れた入力ファイバの断面の外周に外接する円であって、中心が上記GIファイバ部の中心近傍の一部と少なくとも重なる位置に接続される入力ファイバの中心位置と一致する円の直径をD、上記ブリッジファイバの上記SIファイバ部の長さをLとして、上記出力ファイバが受光可能な入射角の最大値は、tan−1((D/2)/L)よりも大きい、
ことを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載のコンバイナ。
【請求項11】
上記ブリッジファイバの出射端面は、上記出力ファイバの入射端面に融着されている、
ことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載のコンバイナ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のコンバイナと、複数のレーザ光源とを備え、上記複数のレーザ光源から出力されたレーザ光を上記コンバイナにて合成する、
ことを特徴とするレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源の各々から出力された光を合成するコンバイナに関する。また、そのようなコンバイナを備えたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレーザ光を合成することによって、ハイパワーなレーザ光を得るための光部品として、コンバイナが広く用いられている。例えば、複数のレーザダイオードを備えたファイバレーザにおいては、各レーザダイオードから出力されたレーザ光を合成するために、コンバイナ(励起コンバイナ)が用いられる。この場合、コンバイナにて得られた合成光は、励起光としてファイバ共振器に入力される。また、複数のファイバレーザを備えたファイバレーザシステムにおいては、各ファイバレーザから出力されたレーザ光を合成するために、コンバイナ(出力コンバイナ)が用いられている。この場合、コンバイナにて得られた合成光は、出力光として加工対象物に照射される。
【0003】
ファイバレーザシステムの出力コンバイナは、パワーの高いレーザ光を合成することから、発熱を抑制するために、光損失が小さいことが要求される。また、出力コンバイナにて得られる合成光についても、発散角が小さくビームプロファイルが良好であることなどが求められる。
【0004】
ファイバレーザシステムの出力コンバイナとして利用される従来のコンバイナ4を図4に示す。図4において、(a)は、コンバイナ4の斜視図であり、(b)は、コンバイナ4の断面図である。コンバイナ4は、複数の入力ファイバ41−1〜41−7からなる入力ファイバ束41と、ブリッジファイバ43と、出力ファイバ44とを備えている。入力ファイバ束41を介してコンバイナ4に入力されたレーザ光は、ブリッジファイバ43において合成され、出力ファイバ44を介して外部に出力される。
【0005】
ブリッジファイバ43においては、出力ファイバ44が接続される出射端面におけるコア径を、入力ファイバ束41が接続される入射端面におけるコア径よりも小さくする必要がある。このため、ブリッジファイバ43には、出射端面に近づくに従ってコア径が次第に小さくなる縮径部が設けられる。ブリッジファイバ43の縮径比=(入射端面におけるコア径)/(出射端面におけるコア径)を大きくするほど、ブリッジファイバ43から出力ファイバ44に入射する合成光のパワー密度を大きくすることができる。その結果、より加工能力の高いファイバレーザシステムを実現することが可能になる。
【0006】
ただし、入力ファイバ束41を構成する各入力ファイバ束からブリッジファイバ43に入射したビームは、ブリッジファイバ43の縮径部を伝播する過程で、ブリッジファイバ43のコア−クラッド境界にて反射され、その伝播角を増大させる。このとき、ブリッジファイバ43の縮径比を大きくするほど、伝播角の増大度が大きくなる。したがって、ブリッジファイバ43の縮径比を大きくするほど、ブリッジファイバ43から出力ファイバ44に入射する合成光における高NA(Numerical Aperture)成分が増加する。ブリッジファイバ43から出力ファイバ44に入射する合成光のうち、出力ファイバ44のNAを超えるNAを持つ成分は、出力ファイバ44のコアに閉じ込めることができないので、出力ファイバ44のコアから漏出して、出力ファイバ44の被覆等を発熱させる。その結果、コンバイナ4の低損失性及び信頼性が損なわれる。
【0007】
このような問題を解消することを目的として開発されたコンバイナとして、特許文献1に記載の光ファイバコンバイナ(以下、「コンバイナ5」と記載)が知られている。特許文献1に記載のコンバイナ5を図5に示す。図5において、(a)は、コンバイナ5の斜視図であり、(b)は、コンバイナ5の断面図である。コンバイナ5は、複数の入力ファイバ51−1〜51〜7からなる入力ファイバ束51と、複数のGI(Graded Index)ファイバ52−1〜52−7からなるGIファイバ束52と、ブリッジファイバ53と、出力ファイバ54とを備えている。従来のコンバイナ4との相違点は、入力ファイバ束51を構成する各入力ファイバとブリッジファイバ53との間にGIファイバが挿入されている点である。このGIファイバは、入力ファイバから入射したビームの発散角を低下させるGRINレンズとして機能する。これにより、ブリッジファイバ53から出力ファイバ54に入射する合成光のパワー密度を低下させることなく、ブリッジファイバ53から出力ファイバ54に入射する合成光における高NA成分を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−190714号(公開日:2013年9月26日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のコンバイナ5においても、GIファイバ束52を構成する各GIファイバからブリッジファイバ53に入射したビームが、ブリッジファイバ53の縮径部を伝播する過程で伝播角を増大させる点に変わりはない。特に、GIファイバ束52を構成するGIファイバ52−1〜52−7のうち、周辺部に配置されたGIファイバ52−2〜52−7(中心部に配置されたGIファイバ52−1の周囲に配置されたGIファイバ52−2〜52−7)からブリッジファイバ53に入射したビームは、図5に示したように、ブリッジファイバ53のコア−クラッド境界において繰り返し反射されるため、ブリッジファイバ53から出力ファイバ54に入射する合成光において高NA成分を増加させる要因となる。ブリッジファイバ53から出力ファイバ54に入射する合成光において高NA成分が増加すると、コンバイナ5の低損失性及び信頼性が損なわれることは上述した通りである。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも低損失性及び信頼性に優れたコンバイナを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係るコンバイナは、複数の入力ファイバからなる入力ファイバ束と、上記入力ファイバ束から出射したビーム束が入射するGIファイバ部を有し、出射端面の直径が入射端面の直径よりも小さいブリッジファイバと、を備え、上記GIファイバ部は、上記入力ファイバ束から出射したビーム束を集束する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコンバイナにおいて、上記GIファイバ部は、上記ブリッジファイバの出射端面の中心又は中心近傍において、上記入力ファイバ束から出射した複数のビームが交差するように、上記ビーム束を集束する、ことが好ましい。また、本発明に係るコンバイナは、上記ブリッジファイバから出射した上記ビーム束が入射する出力ファイバを更に備え、上記GIファイバ部は、上記出力ファイバの入射端面の中心又は中心近傍において、上記入力ファイバ束から出射した複数のビームが交差するように、上記ビーム束を集束する、ことが好ましい。
【0013】
本発明に係るコンバイナにおいて、上記ブリッジファイバは、入射端面が上記GIファイバ部の出射端面に接続されたSIファイバ部を更に有し、上記SIファイバ部は、コア径が出射端面に近づくに従い次第に小さくなる縮径部を含み、上記GIファイバ部にて集束されたビーム束は、上記SIファイバ部のコアを伝搬する、ことが好ましい。
【0014】
本発明に係るコンバイナにおいて、上記出力ファイバは、コアと、上記コアの外側面を覆うクラッドとを備え、上記出力ファイバの入射端面におけるコアと、上記ブリッジファイバの出射端面におけるコアとが少なくとも融着されている、ことが好ましい。
【0015】
本発明に係るコンバイナは、上記入力ファイバ束を構成する少なくとも1つの入力ファイバと上記ブリッジファイバとの間に介在するGIファイバであって、該入力ファイバから出射されるビームの発散角を小さくするGIファイバを更に備えている、ことが好ましい。
【0016】
本発明に係るコンバイナにおいて、上記GIファイバは、上記少なくとも1つの入力ファイバから出射されるビームをコリメートする、ことが好ましい。
【0017】
本発明に係るコンバイナにおいて、上記出力ファイバが受光可能な入射角の最大値は、tan−1((D/2)/L)よりも大きい、ことが好ましい。ここで、Dは、上記ブリッジファイバの中心から最も離れた入力ファイバの断面の外周に外接する円であって、中心が上記GIファイバ部の中心近傍の一部と少なくとも重なる位置に接続される入力ファイバの中心位置と一致する円の直径であり、L(発明を実施するための形態における「L2」に相当)は、上記ブリッジファイバのSIファイバ部の長さである。
【0018】
なお、上記コンバイナと、複数のレーザ光源とを備え、上記複数のレーザ光源から出力されたレーザ光を上記コンバイナにて合成する、ことを特徴とするレーザ装置も本発明の範疇に含まれる。このようなレーザ装置としては、例えば、(1)上記コンバイナ(励起コンバイナ)と、複数のレーザダイオードを備え、励起光として上記複数のレーザダイオードから出力されたレーザ光を上記コンバイナにて合成するファイバレーザ、又は、(2)上記コンバイナ(出力コンバイナ)と、複数のファイバレーザを備え、出力光として上記複数のファイバレーザから出力されたレーザ光を上記コンバイナにて合成するファイバレーザシステムが挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来のコンバイナと比べて、ブリッジファイバから出力ファイバに入射する合成光における高NA成分が生じ難くなる。したがって、従来のコンバイナよりも低損失性及び信頼性に優れたコンバイナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るコンバイナの構成を示す図である。(a)は、そのコンバイナの斜視図であり、(b)は、そのコンバイナの断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るコンバイナの構成を示す図である。(a)は、そのコンバイナの斜視図であり、(b)は、そのコンバイナの断面図である。
図3図1又は図2に示すコンバイナの利用例を示す図である。(a)は、そのコンバイナを励起コンバイナとして備えたファイバレーザのブロック図であり、(b)は、そのコンバイナを出力コンバイナとして備えたファイバレーザシステムのブロック図である。
図4】従来のコンバイナの構成を示す図である。(a)は、そのコンバイナの斜視図であり、(b)は、そのコンバイナの断面図である。
図5】従来のコンバイナの構成を示す図である。(a)は、そのコンバイナの斜視図であり、(b)は、そのコンバイナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、以下の説明において、GIファイバは、GI(Graded Index)型の光ファイバのことを指し、SIファイバは、SI(Step Index)型の光ファイバのことを指す。
【0022】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るコンバイナ1の構成について、図1を参照して説明する。図1において、(a)は、コンバイナ1の斜視図であり、(b)は、コンバイナ1の断面図である。
【0023】
コンバイナ1は、複数の光源(不図示)の各々から出力された光を合成することによって、合成光を生成するための光部品であり、図1に示すように、入力ファイバ束11と、GIファイバ束12と、ブリッジファイバ13と、出力ファイバ14と、を備えている。
【0024】
入力ファイバ束11は、複数の入力ファイバ11−1〜11−nからなる(nは、2以上の自然数)。特に、本実施形態においては、入力ファイバ束11が、1つの入力ファイバ11−1と、入力ファイバ11−1の周りを取り囲むように配置された6つの入力ファイバ11−2〜11−7と、からなる。各入力ファイバ11−i(i=1〜7)は、SIファイバであり、円柱状のコア11aと、コア11aの外側面を覆う円筒状のクラッド11bと、を備えている。コア11a及びクラッド11bは、石英ガラスを主成分として構成されており、コア11aとクラッド11bとの屈折率差は、コア11aに添加されたアップドーパント(屈折率を上昇させるためのドーパント)及びクラッド11bに添加されたダウンドーパント(屈折率を低下させるためのドーパント)の一方又は両方により与えられている。
【0025】
なお、各入力ファイバ11−iは、更に、クラッド11bの外側面を覆う円筒状の樹脂被覆(不図示)を備えていてもよい。ただし、各入力ファイバ11−iの出射端面近傍においては、図1に示すように、樹脂被覆が除去されており、クラッド11−ibの外側面が露出している。これは、各入力ファイバ11−iの出射端面を対応するGIファイバ12−iの入射端面に融着するためである。
【0026】
GIファイバ束12は、複数のGIファイバ12−1〜12−nからなる。特に、本実施形態においては、GIファイバ束12が、1つのGIファイバ12−1と、GIファイバ12−1の周りを取り囲むように配置された6つのGIファイバ12−2〜12−7と、からなる。各GIファイバ12−i(i=1〜7)は、直径が対応する入力ファイバ11−iの直径と等しい円柱形状を有する。各GIファイバ12−iの入射端面は、対応する入力ファイバ11−iの出射端面に接続(例えば、融着接続)されている。例えば、GIファイバ12−1の入射端面は、対応する入力ファイバ11−1の出射端面に接続されている。各GIファイバ12−iは、対応する入力ファイバ11−iから入射したビームの発散角を小さくするGRINレンズとして機能する。なお、各GIファイバ12−iを、入射したビームの発散角を小さくするGRINレンズとして機能させるためには、仮にビームを定常波として考えると、入射端において「節」となるビームの「節」に出射端が位置しないように、GIファイバ12−iの長さL0を、m×P0/2(mは1以上の任意の整数)以外の値に設定すればよい。ここで、P0は、GIファイバ12−iのピッチ長(ビーム径変動周期×2)である。
【0027】
ブリッジファイバ13は、GIファイバ部131とSIファイバ部132とを備えている。GIファイバ部131は、直径がGIファイバ12−1〜12−7の出射端面の外接円の直径Dよりも大きい円柱形状を有する。GIファイバ部131の入射端面には、GIファイバ12−1〜12−7の出射端面が接続(例えば、融着接続)されている。GIファイバ部131は、GIファイバ束12から入射したビーム束を集束するGRINレンズとして機能する。なお、GIファイバ部131を、入射したビーム束を集束する(入射したビームの発散角を大きくする)GRINレンズとして機能させるためには、入射端において平行束であるビーム束が出射端において収斂束となるように、換言すれば、仮にビームを定常波として考えると、入射端において「腹」となるビームの「腹」から「節」までの区間に出射端が位置するように、GIファイバ部131の長さL1を、m×P1/2<L1<m×P1/2+P1/4(mは0以上の任意の自然数)に設定すればよい。ここで、P1は、GIファイバ部131のピッチ長である。
【0028】
SIファイバ部132は、入射端面の直径がGIファイバ部131の直径と等しく、出射端面の直径がGIファイバ部131の直径よりも小さいSIファイバであり、断面が円形状のコア132aと、コア132aの外側面を覆う、断面が円環形状のクラッド132bと、を備えている。コア132a及びクラッド132bは、石英ガラスを主成分として構成されており、コア132aとクラッド132bとの屈折率差は、コア132aに添加されたアップドーパント又はクラッド132bに添加されたダウンドーパントにより与えられている。SIファイバ部132のうち、入射端面を含む区間132cは、コア径及びクラッド径が一定の円柱形状を有しているのに対して、出射端面を含む区間132dは、出射端面に近づくに従ってコア径及びクラッド径が次第に小さくなる円錐台形状を有している。区間132dは、「縮径部」と呼ばれることもある。SIファイバ部132の入射端面は、GIファイバ部131の出射端面と接続(例えば、融着接続)されている。なお、クラッド132bは、省略されていてもよい。この場合、コア132aの外側面を覆う空気がクラッド(エアクラッド)として機能する。
【0029】
出力ファイバ14は、SIファイバであり、円柱状のコア14aと、コア14aの外側面を覆う円筒状のクラッド14bと、を備えている。コア14a及びクラッド14bは、石英ガラスを主成分として構成されており、コア14aとクラッド14bとの屈折率差は、コア14aに添加されたアップドーパント又はクラッド14bに添加されたダウンドーパントにより与えられている。出力ファイバ14のコア径は、出射端面におけるブリッジファイバ13のコア径と等しい。出力ファイバ14の入射端面におけるコア14aは、ブリッジファイバ13の出射端面におけるコア132aに接続(例えば、融着接続)されており、出力ファイバ14の入射端面におけるクラッド14bは、ブリッジファイバ13の出射端面におけるクラッド132bに接続(例えば、融着接続)されている。
【0030】
なお、出力ファイバ14は、更に、クラッド14bの外側面を覆う円筒状の樹脂被覆(不図示)を備えていてもよい。ただし、出力ファイバ14の入射端面近傍においては、図1に示すように、樹脂被覆が除去されており、クラッド14bの外側面が露出している。これは、出力ファイバ14の入射端面を対応するブリッジファイバ13の出射端面に融着するためである。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るコンバイナ1において、ブリッジファイバ13は、GIファイバ束12から入射したビーム束を集束するGIファイバ部131を含んでいる。GIファイバ部131は、その屈折率がGIファイバ部131の内側に向かうにつれて大きくなり、その屈折率がGIファイバ部131の外側に向かうにつれて小さくなるという性質を有する。また、GIファイバ部131は、その内外方向における屈折率の変化率(傾き)がGIファイバ部131の外側に向かうにつれ大きくなるという性質を有する。このため、GIファイバ部131の内側ほどビームが該ビームの伝搬方向に対して相対的に小さく曲げられ、GIファイバ部131の外側ほどビームが該ビームの伝搬方向に対して相対的に大きく曲げられる。したがって、上記ビーム束を構成する複数のビームは、GIファイバ部131に入射した後、以下の通り伝搬する。すなわち、GIファイバ束12を構成するGIファイバ12−1〜12−7のうち、周辺部に配置されたGIファイバ12−2〜12−7からブリッジファイバ部131に入射したビームは、GIファイバ部131内において、ブリッジファイバ13の内側に向かって該ビームの伝搬方向に対して相対的に大きく曲げられた後、出力ファイバ14の入射端面に向かって直線状に伝搬する。また、GIファイバ束12を構成するGIファイバ12−1〜12−7のうち、中心部に配置されたGIファイバ12−1からブリッジファイバ部13に入射したビームは、GIファイバ部131内において、ブリッジファイバ13の内側に向かって該ビームの伝搬方向に対して相対的に小さく曲げられるか、もしくは直線状に伝搬された後、出力ファイバ14の入射端面に向かって直線状に伝搬する。以上より、上記ビーム束を構成する複数のビームは、GIファイバ部131における上記の光屈折作用によって、GIファイバ部131から出射した後は、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界に到達しない様、出力ファイバ14の入射端面に向かって直線状に伝搬し易くなる。このため、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界で反射され難くなり、上記ビーム束を構成する複数のビームの伝搬角は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程で増加し難くなる。このため、ブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する合成光において、高NA成分が生じ難くなる。すなわち、本実施形態によれば、ブリッジファイバ13がGIファイバ部131を含んでいない場合と比べて、低損失性及び信頼性に優れたコンバイナ1を実現することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係るコンバイナ1において、ブリッジファイバ13のGIファイバ部131は、ブリッジファイバ13の出射端面の中心において、GIファイバ束12から入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束させる。ことが好ましい。これにより、上記ビーム束を構成する複数のビームは、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界で更に反射され難くなり、上記ビーム束を構成する複数のビームの伝搬角は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程で更に増加し難くなる。このため、ブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する合成光において、高NA成分が更に生じ難くなる。
【0033】
なお、ブリッジファイバ13の出射端面の中心において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束させるためには、GIファイバ部131の長さL1及びSIファイバ部132の長さL2を、関係式L2=1/(n・g・tan(g・L1))を満たすように設定すればよい。ここで、nは、SIファイバ部132に対するGIファイバ部131の中心部の比屈折率であり、gは、GIファイバ部131の勾配係数である。GIファイバ部131の勾配係数gは、GIファイバ部131のピッチ長P1を用いてg=2π/P1により定義される。また、ここでは、n≒1とすることもできるので、上記関係式は、L2=1/(g・tan(g・L1))と簡単化することもできる。例えば、P1=40mmの場合、g=0.157となるので、L1=2mm、L2=19.6mmとすれば、簡単化した関係式が満たされる。すなわち、ブリッジファイバ13の出射端面の中心において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束させることができる。
【0034】
なお、ブリッジファイバ13の出射端面の中心において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束する構成に代えて、以下のような構成を採用しても同様の効果が得られる。(1)ブリッジファイバ13の出射端面の中心近傍において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束する構成。(2)出力ファイバ14の入射端面の中心において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束する構成。(3)出力ファイバ14の入射端面の中心近傍において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束する構成。ここで、ブリッジファイバ13の出射端面の中心近傍とは、当該中心からの距離が、ブリッジファイバ13の径方向に関して、ブリッジファイバ13の入射端面(又はブリッジファイバ13の最大径部分)の半径と比べて十分に小さく(例えば、1/10以下)、ブリッジファイバ13の軸方向に関して、ブリッジファイバ13のSIファイバ部132の長さL2と比べて十分に小さい(例えば、1/10以下)点の集合のことを指す。また、出力ファイバ14の入射端面の中心近傍とは、出力ファイバ14の入射端面において該入射端面の中心からの距離が該入射端面の半径と比べて十分に小さい(例えば、1/10以下)点の集合のことを指す。
【0035】
また、本実施形態に係るコンバイナ1においては、各入力ファイバ11−iとブリッジファイバ13との間に、該入力ファイバ11−iから入射したビームの発散角を小さくするGIファイバ12−iが介在している。したがって、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射したビーム束は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程で広がり難くなる。その結果、上記ビーム束を構成する複数のビームは、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界で更に反射され難くなり、上記ビーム束を構成する複数のビームの伝搬角は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程で更に増加し難くなる。このため、ブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する合成光において、高NA成分が更に生じ難くなる。
【0036】
なお、本実施形態に係るコンバイナ1において、各入力ファイバ11−iとブリッジファイバ13との間に介在するGIファイバ12−iは、該入力ファイバ11−iから入射したビームをコリメートする(発散角を0°にする)ことが好ましい。これにより、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射したビーム束は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程で発散角が広がることなくブリッジファイバ13の出射端面に到達する。その結果、上記ビーム束を構成する複数のビームは、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界でより一層反射され難くなり、上記ビーム束を構成する複数のビームの伝搬角は、ブリッジファイバ13を伝搬する過程でより一層増加し難くなる。このため、ブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する合成光において、高NA成分がより一層生じ難くなる。
【0037】
なお、入力ファイバ11−iからGIファイバ12−iに入射したビームをコリメートするためには、当該ビームがGIファイバ12−iの入射端面の中心付近に集光されている場合、GIファイバ12−iの長さL0を、k×P0/4(kは任意の奇数)に設定すればよい。ここで、P0は、GIファイバ12−iのピッチ長である。
【0038】
本実施形態に係るコンバイナ1においては、(1)GIファイバ12−iによって、入力ファイバ11−iからGIファイバ12−iに入射したビームをコリメートする構成と、(2)ブリッジファイバ13のGIファイバ部131によって、ブリッジファイバ13の出射端面の中心において、GIファイバ束12からブリッジファイバ13に入射した複数のビームが交差するように、ビーム束を集束する構成と、が併用されている。したがって、上記ビーム束を構成する複数のビームを、ブリッジファイバ13のコア−クラッド境界で反射されることなく、ブリッジファイバ13の出射端面の中心に到達させることができる。この場合、上記ビーム束を構成する複数のビームがブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する際の入射角は、tan−1((D/2)/L2)よりも小さくなる。ここで、Dは、入力ファイバ11−1〜11−7のうち、接続されるブリッジファイバ13の中心から最も離れた入力ファイバの断面の外周に外接する円であって、この円の中心が、GIファイバ部131の中心近傍の一部と少なくとも重なる位置に接続される入力ファイバ11−1(GIファイバ12−1)の中心位置と一致する円の直径であり、L2は、ブリッジファイバ13のSIファイバ部132の長さである。ここで、GIファイバ部131の中心近傍とは、GIファイバ部131の中心位置およびGIファイバ部131の中心位置から、D/2の±5%以内の値だけずれた位置を指す。例えば、D/2=0.2mm、L2=40mmである場合、上記ビーム束を構成する複数のビームがブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射する際の入射角は、tan−1(0.2/40)≒0.3°よりも小さくなる。屈折率≒1.45とした場合、この入射角0.3°は、NA=1.45・sin(0.3°)≒0.007に相当し、通常のSIファイバのNAと比べて十分に小さい。この場合、出力ファイバ14が、受光可能な(閉じ込め可能な)入射角の最大値がtan−1((D/2)/L2)よりも大きいSIファイバであれば、ブリッジファイバ13から出力ファイバ14に入射したビームを、もれなく出力ファイバ14のコア14aに閉じ込めることができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るコンバイナ2の構成について、図2を参照して説明する。図2において、(a)は、コンバイナ2の斜視図であり、(b)は、コンバイナ2の断面図である。
【0040】
コンバイナ2は、複数の光源(不図示)の各々から出力された光を合成することによって、合成光を生成するための光部品であり、図2に示すように、入力ファイバ束21と、ブリッジファイバ23と、出力ファイバ24と、を備えている。
【0041】
第1の実施形態に係るコンバイナ1と第2の実施形態に係るコンバイナ2との相違点は、以下のとおりである。すなわち、第1の実施形態に係るコンバイナ1においては、入力ファイバ束11を構成する各入力ファイバ11−iがGIファイバ12−iを介してブリッジファイバ13の入射端面に接続されているのに対して、第2の実施形態に係るコンバイナ2においては、入力ファイバ束21を構成する各入力ファイバ21−iが直接(GIファイバ12−iを介さずに)ブリッジファイバ23の入射端面に接続されている。
【0042】
コンバイナ2は、上記の相違点を除いて第1の実施形態に係るコンバイナ1と同様に構成されている。すなわち、コンバイナ2が備える入力ファイバ束21、ブリッジファイバ23、及び出力ファイバ24は、それぞれ、第1の実施形態に係るコンバイナ1が備える入力ファイバ束11、ブリッジファイバ13、及び出力ファイバ14と同様に構成されている。
【0043】
本実施形態に係るコンバイナ2においても、ブリッジファイバ23は、入力ファイバ束21から入射したビーム束を集束するGIファイバ部231を含んでいる。したがって、上記ビーム束を構成する複数のビームは、ブリッジファイバ23のコア−クラッド境界で反射され難くなり、上記ビーム束を構成する複数のビームの伝搬角は、ブリッジファイバ23を伝搬する過程で増加し難くなる。このため、ブリッジファイバ23から出力ファイバ24に入射する合成光において、高NA成分が生じ難くなる。すなわち、本実施形態によれば、ブリッジファイバ23がGIファイバ部231を含んでいない場合と比べて、低損失性及び信頼性に優れたコンバイナ2を実現することができる。
【0044】
〔利用例〕
上述した各実施形態に係るコンバイナ1,2は、各種レーザ装置において利用することができる。例えば、図3の(a)に示す複数のレーザダイオードLD1〜LD6を備えたファイバレーザFLをレーザ装置として用いた場合において、上述した各実施形態に係るコンバイナ1,2は、励起光として上記複数のレーザダイオードLD1〜LD6の各々から出力されたレーザ光を合成する励起コンバイナPCとして利用することができる。また、図3の(b)に示す複数のファイバレーザFL1〜FL6を備えたファイバレーザシステムFLSにおいて、上述した各実施形態に係るコンバイナ1,2は、出力光として上記複数のファイバレーザFL1〜FL6の各々から出力されたレーザ光を合成する出力コンバイナOCとして利用することができる。
【0045】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 コンバイナ(第1の実施形態)
11 入力ファイバ束
11−1〜11−7 入力ファイバ
12 GIファイバ束
12−1〜12−7 GIファイバ
13 ブリッジファイバ
131 GIファイバ部
132 SIファイバ部
14 出力ファイバ
2 コンバイナ(第2の実施形態)
21 入力ファイバ束
21−1〜21−7 入力ファイバ
23 ブリッジファイバ
231 GIファイバ部
232 SIファイバ部
24 出力ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5