特許第6456457号(P6456457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456457接着性極薄防水通気性フィルムの製造における熱可塑性デンプンおよびTPEのアロイの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456457
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】接着性極薄防水通気性フィルムの製造における熱可塑性デンプンおよびTPEのアロイの使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20190110BHJP
   C08L 3/04 20060101ALI20190110BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20190110BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20190110BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20190110BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20190110BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20190110BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20190110BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20190110BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20190110BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20190110BHJP
   D03D 15/02 20060101ALI20190110BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20190110BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20190110BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20190110BHJP
【FI】
   C08J5/18CEP
   C08L3/04
   C08L75/08
   C08L77/12
   C08L23/26
   B32B27/12
   B32B9/02
   B29C47/10
   B29C47/14
   B29C47/20 Z
   D03D1/00 Z
   D03D15/02 A
   D03D15/00 A
   B29K105:04
   B29L7:00
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-212469(P2017-212469)
(22)【出願日】2017年11月2日
(62)【分割の表示】特願2015-519281(P2015-519281)の分割
【原出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-90778(P2018-90778A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】1256143
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ブリュル
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ル
(72)【発明者】
【氏名】ペリーヌ・ババン
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・ベ・カルティエ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・マレ
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−213119(JP,A)
【文献】 特開平08−003329(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02721320(FR,A1)
【文献】 特表2001−505945(JP,A)
【文献】 特表昭60−501645(JP,A)
【文献】 特表2015−529696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 47/10
B29C 47/14
B29C 47/20
B32B 9/02
B32B 27/12
C08L 3/04
C08L 23/26
C08L 75/08
C08L 77/12
D03D 1/00
D03D 15/00
D03D 15/02
B29K 105/04
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性極薄防水通気性フィルムの製造における熱可塑性デンプンの使用であって、前記熱可塑性デンプンが、親水性TPEであって、TPEの重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、好ましくは少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも40重量%の、好ましくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコール(PEG)を含むTPEとのアロイの形態で提供される、使用であって、
親水性TPEは、
−ポリウレタンブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(TPU)ならびに、
−ポリアミドブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(PEBA)、ポリエステルブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(COPE)ならびにこれのブレンドから選ばれる少なくとも1つの他の親水性TPE
を含み、
フィルムが、不飽和カルボン酸、不飽和無水カルボン酸、ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびこれらの混合物から成る群より選ばれるモノマーによるグラフト化を含む官能化ポリオレフィンをさらに含み、
フィルムが25μm以下の、好ましくは5から25μmの範囲内の厚さを有する、使用。
【請求項2】
熱可塑性デンプンのパーセンテージがアロイの重量の10%から90%、好ましくは30%から80%、より好ましくは40%から70%、より好ましくはアロイの重量の50%から70%に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
接着性極薄防水通気性フィルムであって、熱可塑性デンプンおよび親水性TPEのアロイを含み、前記TPEがTPEの重量に対して、少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、好ましくは少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも40重量%の、好ましくは50重量%のポリエチレングリコール(PEG)を含むことを特徴とする、接着性極薄防水通気性フィルムであって、
親水性TPEは、
−ポリウレタンブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(TPU)ならびに、
−ポリアミドブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(PEBA)、ポリエステルブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(COPE)ならびにこれのブレンドから選ばれる少なくとも1つの他の親水性TPE
を含み、
フィルムが、不飽和カルボン酸、不飽和無水カルボン酸、ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびこれらの混合物から成る群より選ばれるモノマーによるグラフト化を含む官能化ポリオレフィンをさらに含み、
フィルムが25μm以下の、好ましくは5から25μmの範囲内の厚さを有する、フィルム。
【請求項4】
アロイの重量に対して、
熱可塑性デンプンのパーセンテージが10%から90%に相当し、
親水性TPEのパーセンテージが90%から10%に相当する、
請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
官能化ポリオレフィンがエチレン/アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン/アクリル酸エステル/グリシジルメタクリレートコポリマーから成る群より選ばれる、請求項に記載の防水通気性フィルム。
【請求項6】
フィルムが25μm以下の、好ましくは5から25μmの範囲内の厚さを有する、請求項からの一項に記載の防水通気性フィルム。
【請求項7】
請求項からの一項に記載のフィルムの製造方法であって、
a)デンプン、可塑剤および水のブレンドを利用可能にすること;
b)請求項1または3で定義した親水性TPEを利用可能にすること;
c)段階a)のブレンド押出して、次に押出終了時に段階b)のTPEをブレンドに添加すること;
d)フィルムを形成するためにブレンドを延伸すること
を含むフィルムの製造方法であって、
親水性TPEは、
−ポリウレタンブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(TPU)ならびに、
−ポリアミドブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(PEBA)、ポリエステルブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(COPE)ならびにこれのブレンドから選ばれる少なくとも1つの他の親水性TPE
を含み、
フィルムが、不飽和カルボン酸、不飽和無水カルボン酸、ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびこれらの混合物から成る群より選ばれるモノマーによるグラフト化を含む官能化ポリオレフィンをさらに含み、
フィルムが25μm以下の、好ましくは5から25μmの範囲内の厚さを有する、製造方法。
【請求項8】
ブレンドを延伸する段階を押出/ブロー成形によって行う、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ブレンドを延伸する段階をキャストフィルム押出によって行う、請求項に記載の方法。
【請求項10】
段階c)を100℃から300℃の、好ましくは150℃から250℃の範囲内の温度で行う、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの織物材料および請求項からの一項に記載の少なくとも1つの防水通気性フィルムを含む積層生成物であって、前記フィルムが前記織物材料の少なくとも1つの表面に0.5から50Nの、好ましくは0.5から10Nの範囲内の剥離強度で接着している、積層生成物。
【請求項12】
少なくとも1つの織物材料が多孔性膜の、製織織物の、または不織織物の形態で提供される、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
少なくとも1つの織物材料が合成繊維、特に生物起源出発材料から得た合成繊維、天然繊維、天然出発材料から作製した人工繊維、無機繊維および/または金属繊維を含む、請求項11または12に記載の積層体。
【請求項14】
少なくとも1つの織物材料がフェルト、フィルタ、フィルム、ガーゼ、クロス、包帯、層、布、ニットウェア製品、衣類製品、衣服、寝具製品、家具製品、カーテン、コンパートメントカバー、機能性テクニカルテキスタイル、ジオテキスタイルおよび/またはアグロテキスタイルを構成する、請求項11から13のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項15】
医療分野、衛生、旅行携行品、衣類産業、衣服産業、家庭または家事用品、家具、敷き詰めカーペット、自動車産業、産業、特に産業用濾過、農業および/または建築産業における、請求項からのいずれか一項に記載のフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関連する分野は、織物分野で使用する防水通気性フィルムの分野である。
【0002】
このような防水通気性フィルムは、水蒸気には透過性であり、同時に水には不透過性である。
【背景技術】
【0003】
改善された長期にわたる防水通気性特性を有する織物を必要とする技術分野が多数ある。特に医療分野、医療機器、手術衣、カーペット、マットレス、包帯、防護服;農業、農業用フィルム;包装、梱包;軍装備品、海軍装備品、特に海軍用カバーリング;運輸、航空、自動車産業;スポーツ、レジャー活動;コンピューティング、エレクトロニクス、家具;装飾;乳児および小児用品;エクステリア用品;建物の壁用断熱材、ルーフ・デッキ・フィルムが挙げられる。
【0004】
防水通気性フィルムは可撓性フィルムであり、これの役割は一方では、外部因子、例えばほこり、花粉、砂、雨および雪が織物を通じて侵入するのを防止することであり、他方では、例えばヒトの活動によって生成される水分が織物に蓄積するのを防止することである。このフィルムによって、織物から水蒸気を排出することが可能となる。防水通気性フィルムを使用することにより、通気性があり、ゆえにこれを使用する人々にとって健康的である織物を有することができる。
【0005】
水蒸気に対する透過性は、パラメータMVTR(水蒸気透過速度)を使用して評価する。特に防水通気性フィルムは、23℃、50%の湿度、25μmのフィルム厚にて24時間で少なくとも70g/mの、ASTM E96規格によって測定されたMVTR値を示すことが望ましい。上記の用途のためには、使用したフィルムが織物表面に接着している場合には、同じ測定条件下での最低透過率が少なくとも350g/mであることが望ましい。織物の使用時に、特に温度上昇が著しい場合に排出される水蒸気の量がより大きいときに、フィルムの織物への接着が悪化しないことも望ましい。即ち、水分に長期にわたって暴露されることで容易に分解しない防水性通気性織物製品に関する研究が進行中である。さらに、織物の可撓性または繊度(厚さ)を損なうような防水性通気性特性の向上およびフィルムの織物への接着が生じてはならない。このため防水性通気性織物製品であって、織物の連続性を確保するために、水蒸気に対する高い透過性および良好な寿命を示し、同時に特定の処理を行わずに「素の」織物の外観を有する、防水性通気性織物製品(以下、処理織物または積層製品)に関する研究が進行中である。
【0006】
公知のフィルムは合成ポリマーから製造される。実際に、合成ポリマーは非再生可能出発材料から製造される。防水通気性フィルムの製造におけるこの量を制限する試みが行われている。ゆえに目的は、少なくとも部分的に天然(または生物起源)出発材料から得られ、合成ポリマーから得られ、フィルムと少なくとも同程度の透過率を示すフィルムを見出すことである。特に、目的は、少なくとも部分的に天然出発材料から得られ、上に示した透過性要件を満足するフィルムを見出すことである。
【0007】
最後に、従来技術のフィルムは、これの防水性通気性特性が公知の各種のポリマーを含むブレンドを成形することによって得られる。成形は公知のいずれかの押出方法、例えばフラットダイ押出カレンダー処理、押出−アクリル樹脂コーティング/ブロー成形に従って行うことができる。一般に、高い加熱力にもかかわらず、厚さ25μm未満のフィルムを得ることはできない。ゆえに目的は、従来の熱可塑性フィルム製造用装置を用いて、100℃から300℃の範囲内の、好ましくは150℃から250℃の範囲内の加熱または押出温度にて容易に製造できる防水通気性フィルムを見出すことである。
【発明の概要】
【0008】
従って本発明は、特に少なくとも1つの織物材料の表面に接着性の接着性極薄防水通気性フィルムの製造における熱可塑性デンプンの使用に関し、前記熱可塑性デンプンは、親水性TPEであって、TPEの重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、好ましくは少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも40重量%の、好ましくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコール(PEG)を含む親水性TPEとのアロイの形態で提供される。
【0009】
本発明によるアロイにおいて使用できる熱可塑性エラストマーポリマー(本明細書ではTPEと呼ぶ。)は、(a)ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを含むコポリマー(以下、COPEまたはコポリエーテルエステル)、(b)ポリウレタンブロックおよびポリエーテルまたはポリエステルブロックを含むコポリマー(熱可塑性ポリウレタンの省略形であるTPUとしても公知)ならびに(c)ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含むコポリマー(IUPACによるPEBAとしても公知)から選ぶことができる。
【0010】
親水性TPEは、TPEの重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、好ましくは少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも40重量%の、好ましくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコール(PEG)を含むTPEを意味すると理解される。
【0011】
(a)COPE、即ちコポリエーテルエステルに関して、これらはポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを含むコポリマーである。これらは、ポリエーテルジオールから生じる軟質ポリエーテルブロックおよび少なくとも1つのジカルボン酸と少なくとも1つの連鎖延長短ジオール単位との反応から生じる剛性ポリエステルブロックで構成される。ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックは、ジカルボン酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応から生じるエステル結合を介して結合されている。ポリエーテルと二酸との結合によって軟質ブロックが形成されるのに対して、グリコールまたはブタンジオールと二酸との結合によってコポリエーテルエステルの剛性ブロックが形成される。連鎖延長短ジオールは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールおよび式HO(CHOH(式中、nは2から10の値を有する整数である。)の脂肪族グリコールから成る群より選ぶことができる。
【0012】
好都合には、二酸は8から14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸の最大50mol%を8から14個の炭素原子を有する、少なくとも1つの他の芳香族ジカルボン酸で置き換えられ、および/または最大20mol%を2から14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で置き換えることができる。
【0013】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ビ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、エチレンビス(p−安息香酸)、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香酸)、エチレンビス(p−オキシ安息香酸)または1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香酸)が挙げられる。
【0014】
グリコールの例としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを含むコポリマーは、例えばポリエーテルジオール、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール(PO3G)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)に由来するポリエーテル単位、ジカルボン酸単位、例えばテレフタル酸、およびグリコール(エタンジオール)または1,4−ブタンジオール単位を有するコポリマーである。このようなコポリエーテルエステルは、EP 402 883およびEP 405 227に記載されている。これらのポリエーテルエステルは熱可塑性エラストマーである。これらは可塑剤を含むことができる。
【0015】
(b)TPUに関して、ポリエーテルジオールである軟質ポリエーテルブロックと、芳香族ジイソシアネート(例えば、MDI、TDI)および脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDIまたはヘキサメチレンジイソシアネート)より選ぶことができる少なくとも1つのジイソシアネートと少なくとも1つの短ジオールとの反応より生じる剛性ポリウレタンブロックとの縮合より生じる、ポリエーテルウレタンが挙げられる。連鎖延長短ジオールは、コポリエーテルエステルの記載で上述したグリコールより選ぶことができる。ポリウレタンブロックおよびポリエーテルブロックは、イソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応から生じる結合を介して結合されている。
【0016】
ポリエステルジオールである軟質ポリエステルブロック、少なくとも1つのジイソシアネートと少なくとも1つの短ジオールとの反応から生じる剛性ポリウレタンブロックとの縮合から生じるポリエステルウレタンも挙げられる。ポリエステルジオールは、好都合には2から14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸から選ばれるジカルボン酸と、コポリエーテルエステルの記載で上述したグリコールから選ばれる連鎖延長短ジオールであるグリコールとの縮合から生じる。これらは可塑剤を含むことができる。
【0017】
(c)「PEBA」、即ちポリエーテルブロックおよびポリアミドブロックを含むコポリマーに関して、これらは、反応性末端を含むポリアミドブロックと、反応性末端を含むポリエーテルブロックとの、例えば特に、
1)ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックとジカルボキシル鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックとの;
2)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとして公知の脂肪族α,ω−ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素添加より得られる、ジアミン鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックとの;
3)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ポリエーテルエステルアミドである、この特定の場合に得られた生成物であるポリエーテルジオールとの、重縮合から生じる。
【0018】
ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば連鎖制限ジカルボン酸の存在下でのポリアミドの前駆体の縮合から生じる。ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば連鎖制限ジアミンの存在下でのポリアミドの前駆体の縮合から生じる。
【0019】
ポリアミドブロックの数平均分子量Mnは、400から20000g/mol、好ましくは500から10000g/molである。
【0020】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含むポリマーは、ランダム分散単位も含むことができる。
【0021】
3種類のポリアミドブロックを好都合に使用してよい。
【0022】
第1の種類により、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、特に4から20個の炭素原子を有するジカルボン酸、好ましくは6から18個の炭素原子を有するジカルボン酸と、脂肪族または芳香族ジアミン、特に2から20個の炭素原子を有するジアミン、好ましくは6から14個の炭素原子を有するジアミンとの縮合から生じる。
【0023】
ジカルボン酸の例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン−ジカルボン酸およびオクタデカンジカルボン酸ならびテレフタル酸およびイソフタル酸、さらに二量体化脂肪酸が挙げられる。
【0024】
ジアミンの例としては、テトラ−メチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)およびジ(パラ−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)の異性体、ならびにイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジン(Pip)が挙げられる。
【0025】
以下のブロック、PA4.12、PA4.14、PA4.18、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA6.18、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14およびPA10.18が好都合に存在し、最初の数字がジアミンの炭素原子数を示し、2番目の数字がジカルボン酸の炭素原子数を示す。
【0026】
第2の種類によると、ポリアミドブロックは、4個から12個の炭素原子を有するジカルボン酸またはジアミンの存在下での、1つ以上のα,ω−アミノカルボン酸および/または6個から12個の炭素原子を有する1つ以上のラクタムの縮合から生じる。ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。α,ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。
【0027】
好都合には、第2の種類のポリアミドブロックは、ポリアミド11の、ポリアミド12の、またはポリアミド6のポリアミドブロックである。
【0028】
第3の種類によれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのα,ω−アミノカルボン酸(または1つのラクタム)、少なくとも1つのジアミンおよび少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から生じる。
【0029】
この場合、ポリアミドPAブロックは、
X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族または芳香族ジアミンまたはジアミン;
Y個の炭素原子を有する1つ以上のジカルボン酸;ならびに
Z個の炭素原子を有するラクタムおよびα,ω−アミノカルボン酸ならびにX1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジアミンおよびY1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジカルボン酸の等モル混合物((X1、Y1)は(X、Y)とは異なる。)より選ばれる1つ以上のコモノマー{Z}であって
前記配合されたポリアミド前駆体モノマーに対して最大50%に、好ましくは最大20%に、より好都合にはなお最大10%に及ぶ重量割合で導入される1つ以上のコモノマー{Z}の重縮合によって;
ジカルボン酸から選ばれる連鎖制限剤の存在下で調製される。
【0030】
好都合には、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が使用され、ジアミンまたはジアミンの化学量論に対して過剰に導入される。
【0031】
この第3の種類の代替的な形態によって、ポリアミドブロックは、少なくとも2つのα,ω−アミノカルボン酸または6個から12個の炭素原子を有する少なくとも2つのラクタムまたは同数の炭素原子を有さないラクタムおよびアミノカルボン酸の縮合から、場合により連鎖制限剤の存在下で生じる。脂肪族α,ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノ−ドデカン酸が挙げられる。ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。脂環式二酸の例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。脂肪族二酸の例としては、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、好ましくは少なくとも98%の二量体含有率を有する;好ましくは、これらは水素添加されている;これらはユニケマ(Uniqema)から商品名プリポール(Pripol)(登録商標)で、またはヘンケル(Henkel)から商品名エンポール(登録商標)で販売されている。)およびポリオキシアルキレン−α,ω−二酸が挙げられる。芳香族二酸の例としては、テレフタル酸(T)酸およびイソフタル(I)酸が挙げられる。脂環式ジアミンの例としては、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)ならびにジ(パラ−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)が挙げられる。よく使用される他のジアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンであることができる。
【0032】
第3の種類のポリアミドブロックの例としては、以下が挙げられる。
【0033】
6.6がアジピン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミン単位を示し、6がカプロラクタムの縮合から生じる単位を示す6.6/6。
【0034】
6.6がアジピン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミン単位を示し、6.10がセバシン酸と縮合されたヘキサメチレンジアミンを示し、11がアミノウンデカン酸の縮合から生じる単位を示し、12がラウリルラクタムの縮合から生じる単位を示す6.6/6.10/11/12。
【0035】
好ましくは、ポリマーは1%から80重量%のポリエーテルブロックおよび20%から99重量%のポリアミドブロック、好ましくは4%から80重量%のポリエーテルブロックおよび20%から96重量%のポリアミドブロック、より好ましくは30%から60重量%のポリエーテルブロックおよび40%から70重量%のポリアミドブロックを含む。ポリエーテルブロックの分子量Mnは100から6000g/mol、好ましくは200から3000g/molである。
【0036】
ポリエーテルブロックは、アルキレンオキシド単位より成る。これらの単位は、例えばエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位またはテトラヒドロフラン単位(ポリテトラメチレングリコール配列を生じる。)であることができる。ゆえにPEG(ポリエチレングリコール)ブロック、即ちエチレンオキシド単位より成るブロック、PPG(ポリプロピレングリコール)ブロック、即ちプロピレンオキシド単位より成るブロック、PO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロック、即ちポリトリメチレンエーテルグリコール単位より成るブロック(ポリトリメチレンエーテルブロックとのこのようなコポリマーは、文献US 6 590 065に記載されている。)およびPTMGブロック、即ちポリテトラヒドロフランブロックとしても公知のテトラメチレングリコール単位より成るブロックが使用される。PEBAコポリマーは、これの鎖内に複数の種類のポリエーテルを含むことができ、コポリエーテルがブロックまたはランダムコポリエーテルであることが可能である。PEBAコポリマーの水蒸気の透過率は、ポリエーテルブロックの量と共に上昇し、これらのブロックの性質の関数として変化する。良好な透過率を示すPEBAを得ることが可能とする、ポリエチレングリコールポリエーテルブロックを有することが好ましい。
【0037】
ポリエーテルブロックは、エトキシ化第1級アミンより成ることもできる。エトキシ化第1級アミンの例としては、式の生成物が挙げられ、
【0038】
【化1】
式中mおよびnは1から20であり、xは8から18である。これらの生成物は、CECAから商品名ノラモックス(Noramox)(登録商標)およびクラリアント(Clariant)から商品名ゲナミン(Genamin)(登録商標)で市販されている。
【0039】
軟質ポリエーテルブロックは、NH鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、このようなブロックはポリエーテルジオールとして公知の脂肪族α,ω−ジヒドロキシ化ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることができる。より詳細には、ジェファーミン(Jeffamine)(例えばジェファーミン(登録商標)D400、D2000、ED 2003またはXTJ 542、ハンツマン(Huntsman)の市販品、特許JP 2004346274、JP 2004352794およびEP 1 482 011の文献にも記載)を使用してよい。
【0040】
ポリエーテルジオールブロックは、そのままで使用されてカルボキシル末端を含むポリアミドブロックと共重縮合されるか、またはポリエーテルジアミンに変換するためにアミノ化されてカルボキシル末端を含むポリアミドブロックと縮合されるかのいずれかである。PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーの2段階調製の一般的な方法は公知であり、例えば仏国特許FR 2 846 332に記載されている。PAブロックとPEブロックとの間にアミン結合を有する本発明のPEBAコポリマーの調製の一般的な方法公知であり、例えば欧州特許EP 1 482 011に記載されている。ポリエーテルブロックはまた、ランダム分散単位を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含むポリマーを調製するために、ポリアミド前駆体および連鎖制限二酸と混合されてもよい(1段階方法)。
【0041】
もちろん、本発明の本明細書における名称PEBAは、アルケマ(Arkema)が販売するPEBAX(登録商標)製品に、エボニック(Evonik)(登録商標)が販売するベスタミド(Vestamid)(登録商標)製品に、EMSが販売するグリルアミド(Grilamid)(登録商標)製品に、DSMが販売するケラフレックス(Kellaflex)(登録商標)製品に、または他の供給者による他のいずれのPEBAにも等しく良好に関連付けられる。
【0042】
好都合には、PEBAコポリマーは、PA6の、PA11の、PA12の、PA6.12の、PA6.6/6の、PA10.10のおよび/またはPA6.14のPAブロック、好ましくはPA11および/またはPA12ブロック;ならびにPTMGの、PPGのおよび/またはPO3GのPEブロックを有する。主にPEGより成るPEブロックをベースとするPEBAは、親水性PEBAの範囲内に分類されるものである。主にPTMGより成るPEブロックをベースとするPEBAは、疎水性PEBAの範囲内に分類されるものである。
【0043】
好都合には、本発明の組成物で使用される前記PEBAは、少なくとも部分的には生物起源の出発材料から得られる。再生可能起源または生物起源出発材料の出発材料は、生物起源の炭素または再生可能起源の炭素を含む物質を意味すると理解される。具体的には、化石材料から生じる物質とは異なり、再生可能出発材料より成る物質は14Cを含む。「再生可能起源の炭素の含有率」または「生物起源炭素の含有率」は、規格ASTM D 6866(ASTM D 6866−06)およびASTM D 7026(ASTM D 7026−04)の適用によって決定される。一例として、ポリアミド11をベースとするPEBAは、少なくとも一部は生物起源出発材料から生じ、少なくとも1%の生物起源炭素を示し、これは少なくとも1.2×10−1412C/14C同位体比に相当する。好ましくは、本発明によるPEBAは、炭素の総重量に対して少なくとも50重量%の生物起源炭素、これは少なくとも0.6×10−1212C/14C同位体比に相当する。再生可能起源の出発材料から生じる、PA11ブロックならびにPO3G、PTMGおよび/またはPPGを含むPEブロックを含むPEBAの場合、この含有率は好都合にはより高く、特に最大100%であり、これは1.2×10−1212C/14C同位体比に相当する。
【0044】
本発明の好都合な実施形態により、親水性TPEは、親水性TPEの重量に対して、
1%から100%の、好ましくは50%から100%の、ポリウレタンブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(TPU)ならびに
99%から0%の、好ましくは50%から0%の、ポリアミドブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(PEBA)、ポリエステルブロックおよびPEGブロックを含むコポリマー(COPE)ならびにこれのブレンドから選ばれる少なくとも1つの他の親水性TPEを含む。
【0045】
本発明の好都合な実施形態により、本発明で使用するアロイは、少なくとも1つの官能化ポリオレフィンと場合によりブレンドされた、これらのTPEの少なくとも1つを含む。具体的な実施形態により、本発明によるアロイおよび続いてフィルムは、官能化ポリオレフィン、即ち不飽和カルボン酸、不飽和無水カルボン酸、ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびこれらの混合物から成る群より選ばれるモノマーによるグラフト化を含むポリオレフィンをさらに含む。好ましくは(官能化)ポリオレフィンは、エチレン/アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン/アクリル酸エステル/グリシジルメタクリレートコポリマーから成る群より選ばれ、これらのコポリマーは上記のようにグラフト/官能化されている。好都合には、使用する官能化ポリオレフィンは、特許出願FR2959939A1で記載および請求されているものから選ばれる。
【0046】
熱可塑性デンプンは、以下「TPS」として公知であり、少量の水の存在下での可塑化による加工可能な材料に転化された未変性デンプンを意味すると理解される。可塑化デンプンは、「熱可塑性デンプン」として公知であり、特に非揮発性可塑化剤、例えばグリセロールを用いて得られる。この材料は多くの利点、例えばこれのコスト、これの生分解性性質および豊富な再生可能資源から生じるこれの起源を有する。この材料はプラスチック技術の従来の装置を用いて加工できる。可塑化デンプンはあいにく、幾つかの重大な制限、例えば水に対するこれの高い感受性、従来の熱可塑性物質と比べて制限された機械的特性および接着特性ならびにこれの加工後およびこれの特性の安定化(老化または緻密化の現象)前に非常に長いエージングを有する。本発明によるアロイの形態で可塑化デンプンを使用すると、デンプンと他の化合物との調合および本発明による方法のために、これらの欠点を克服することが可能となる。好ましい実施形態により、使用するアロイ中の熱可塑性デンプンのパーセンテージは、アロイの重量の10%から90%、好ましくは30%から80%、より好ましくは40%から70%、より好ましくはアロイの重量の50%から70%に相当する。
【0047】
いずれの種類のデンプンも本発明で使用できる。デンプンはトウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、タピオカまたはエンドウマメのデンプンであることができる。デンプンは化学基をグラフトすることによって修飾できる。デンプンは以下の各種形態で用いることができる。
【0048】
未変性(未修飾)デンプン:デンプン粒は、アミロースおよびアミロペクチンである2つの構成要素ポリマーの半晶質組織の部位である。重合度およびアミロースの割合は、デンプンの植物源に応じて異なる。
【0049】
アルファ化デンプン:水性媒体中で80℃付近にて加熱する間に、デンプンは水和して膨潤する。アミロースの部分、次にアミロペクチンの部分が溶解状態に変化する(デンプン化)。懸濁物は次に粘性となり、デンプンはより水和しやすくなる。
【0050】
ゲル化デンプン−老化デンプン:水溶液の温度が低下するとき、系はゲル化して、次に半晶質構造へと再組織化される(老化)。これらの再組織化分子は、アミロース結晶、アミロペクチン結晶および混合アミロース/アミロペクチン結晶で形成されている。
【0051】
アミロースおよびアミロペクチンポリマーが分散した形態である、破壊(destructured)デンプン。
【0052】
天然材料であるデンプンの使用に加えて、少なくとも部分的に生物起源ポリアミドおよび/またはポリエーテルブロックから調製されたPEBAポリマーの使用によって、本発明によるフィルム中の天然材料の量をさらに増加させることが可能となる。
【0053】
本発明によるアロイは、熱可塑性デンプンならびに本発明による前記少なくとも1つの親水性TPEならびに場合により添加剤および/または相溶化剤を含む密接または均質ブレンドを得ることができるようにするいずれの方法、例えば溶融配合、押出、圧縮またはロールミルによっても調製することができる。
【0054】
より詳細には、本発明によるアロイは、すべての成分(デンプン、可塑剤、水、TPEおよび任意の相溶化剤および添加剤を「直接」法でブレンドすることによって調製される。TPSマトリクスを形成するためにデンプン、可塑剤および水の濃縮ブレンドを調製することに存する第1段階と、次にTPEマトリクスとブレンドすることによってTPSを希釈することに存する第2段階との2段階法によって、アロイを調製することも可能である。
【0055】
好都合には、熱可塑性物質工業のブレンドおよび混練用の通常の装置、例えば押出機、二軸型押出機、特にセルフクリーニング式噛合型共回転二軸押出機および混練機、例えばブース(Buss)ブランドの共混練機またはインターナルミキサが使用される。本方法において、成分を乾式ブレンドして、フィードホッパーに導入することができるか、またはさもなければサイドフィードを介して親水性TPEをTPS中にまたは事前に溶融させたデンプン+可塑剤+水ブレンド中に導入することができるかのいずれかである。
【0056】
本発明のアロイの調製(配合)およびこれの処理は、温度および剪断速度に関して最も穏やかな条件下で行うことが推奨される。これを行うために、参考文献のO.Schacker,Plastics Additives and Compounding,April 2002,pages 28−33を参照してよい。
【0057】
本発明によるアロイは、新規防水性通気性材料を得るために、優れた性能/コスト比を示す。性能差は、使用したTPE/TPS比に従って得られる。ブレンドの相溶性を改善するために、相溶化剤の添加。後者は本発明において好ましい。
【0058】
可塑化デンプンおよび熱可塑性ポリマーの共押出によって製造された多層とは対照的に、本発明によるアロイには、ダイ内でひとまとめにされた材料の化学的挙動およびレオロジーの違いによる界面の不安定性の問題はない。さらに本発明によるアロイには、バイオ複合材で一般に起きる、親水性特性が低下する問題がない。これはリグノセルロース繊維をバイオポリエステル中または可塑化デンプンマトリクス中に導入することによって、より疎水性の繊維が存在することに関連して、親水性特性の低下が生じるためである。
【0059】
本発明の別の主題は、接着性極薄防水通気性フィルムであって、熱可塑性デンプンおよび親水性TPEのアロイを含み、前記TPEがTPEの重量に対して少なくとも10重量%の、好ましくは少なくとも20重量%の、好ましくは少なくとも30重量%の、好ましくは少なくとも40重量%の、好ましくは少なくとも50重量%のポリエチレングリコール(PEG)を含むことを特徴とする、接着性極薄防水通気性フィルムである。好都合にはフィルム中のアロイの重量に対して、熱可塑性デンプンのパーセンテージは10%から90%に相当し、親水性TPEのパーセンテージは90%から10%に相当する。
【0060】
一実施形態により、本発明の防水通気性フィルムは、アロイの製造直後に、以下の段階、TPEと熱可塑性デンプン(またはデンプン、水および可塑剤)とのブレンドを調製すること、次に、アロイの形態の均質ブレンドを形成するために、ポリマーの融点より高いおよびデンプンの融点より高い温度まで加熱することによってブレンドを溶融させることによって調製される。フィルムを形成するために、得られた熱可塑性アロイを次に延伸する。TPEの加熱は、デンプンを加熱する段階とは別に行うことができ、溶融したTPEおよびデンプンが続いてブレンドされる。
【0061】
本発明の方法の好ましい実施形態により、以下の段階、
a)デンプン、可塑剤および水のブレンドを利用可能にすること;
b)上で定義した親水性TPEを利用可能にすること;
c)段階a)のブレンドを押出して、次に押出終了時に、一般に段階a)のポリマーの融点より高いおよびデンプンの融点より高い温度にて段階b)のTPEをブレンドに添加すること;
d)フィルムを形成するためにブレンドを延伸すること
が行われる。
【0062】
好ましくは、段階c)は100℃から300℃の、好ましくは150℃から250℃の範囲内の温度で行う。
【0063】
一実施形態により、ブレンドを延伸する段階は、押出/ブロー成形によって行う。代替的な実施形態により、ブレンドを延伸する段階は、キャストフィルム押出によって行う。
【0064】
本発明の方法によって、デンプンおよびTPEの分解のリスクを制限すると共に、極薄の、即ち25μm以下の厚さを有するフィルムを得るために、TPEを親水性TPEの融点より高い、十分に高い温度にて維持することが可能である。好ましくは、フィルムを延伸する前の加熱または押出温度は、100℃から300℃の、好ましくは150℃から250℃の範囲内である。
【0065】
好都合には、本発明による防水通気性フィルムは25μm以下の、好ましくは5から25μmの範囲内の厚さを有する。
【0066】
本発明の別の主題は、少なくとも1つの織物材料および本発明による少なくとも1つの防水通気性フィルムを含む積層生成物(以下、積層体)であって、前記フィルムが織物材料の少なくとも1つの表面に0.5から50Nの、好ましくは0.5から10Nの剥離強度で接着している、積層生成物である。
【0067】
好都合には、本発明によるフィルムは特に、織物材料にいずれの公知の方法によっても、好ましくはフィルムと織物との間に接着剤を使用せずに適用する。例としては、織物上へのアロイフィルムの押出コーティング、またはフィルムが含浸され、織物の繊維を捕捉するのに十分な温度における、織物上もしくは2枚の織物間へのフィルムのホットプレス(熱積層化または接着剤を用いた積層化)が挙げられる。別の実施形態または先行する実施形態と組合せた実施形態により、接着接合剤、好ましくは水ベースの、即ち接着接合組成物に対して5重量%未満の溶媒を含む接着接合剤を使用する接着接合も挙げられる。本発明によるアロイを使用するフィルムは、既存の防水通気性フィルムと比較して、接着剤なしでも織物に対してより良好な接着を示すことがわかる。
【0068】
好ましい実施形態により、本発明による防水性通気性材料および積層体を製造するために使用するアロイを処理する方法は、5μmの最小厚を有するフィルムを形成するために、キャスト押出またはブロー押出上に溶融状態で少なくとも120℃の温度にて適用されることを特徴とする。この種の方法によって、様々な割合で希釈され、微穿孔を有さない本発明による材料のライン内ブレンドから生じる、できるだけ薄い、好都合には厚さが5から50μmの、好ましくは5から25μmの範囲の厚さを有するフィルムを調製するために変形条件を最適化することも可能になる。ラインの温度および延伸速度パラメータを変化させることによって、フィルム厚を制御することができる。別の好ましい実施形態により、本発明による防水通気性フィルムおよび積層体を製造するために使用する組成物を処理する方法は、少なくとも坪量が少なくとも5g/mの複合体を形成するために、溶融状態の組成物を押出コーティングライン上で織物、例えば繊維材料および/または紙を含む他のいずれかの織物材料で作られた不織布に、または押出積層ライン上で2枚の織物の間に適用することを特徴とする。公知の方法により、本発明によるフィルムを溶融状態で押出し、次にフィルム上にコーティングする。好ましくは、フィルムは5から50μmの、好ましくは約5から10μmの厚さを示す。好都合には、押出コーティングによる適用の状況において、10から50g/mの熱可塑性フィルムを織物上に付着させる。
【0069】
本発明の記載において、
「織物材料」または「織物」は、少なくとも300の長さ/厚さ比を特徴とする多孔性膜を形成する、繊維またはフィラメントおよび紙を含むいずれかの材料から製造されるいずれの材料をも意味することが理解される;
「繊維」は、少なくとも300の長さ/厚さ比を特徴とするいずれの合成または天然材料をも意味すると理解される;
「フィラメント」は、無限長のいずれの繊維をも意味すると理解される。
【0070】
織物としては、特に繊維のマット(包帯、フィルタまたはフェルト)、粗紡糸(包帯)、紡糸(製縫、製編または製織用)、ニットウェア品(ストレート(straight)、丸編またはフルファッション)、製織製品(トラディショナル(traditional)、ジャカード、マルチプル(multiple)、両面、多軸、2Dおよびセミ3D)およびその他多数が挙げられる。本発明の好ましい実施形態により、前記少なくとも1つの織物材料は、多孔性膜の、製織織物の、または不織織物の形態で提供される。
【0071】
好都合には、前記少なくとも1つの織物材料は、合成繊維、特に生物起源出発材料から得た合成繊維、天然繊維、天然出発材料から作製した人工繊維、無機繊維および/または金属繊維を含む。
【0072】
好都合には、前記織物は生物起源出発材料から得た合成繊維、例えばポリアミド繊維、特にポリアミド11繊維を含む。好都合には、前記織物は、天然繊維、例えば綿、ウールおよび/もしくは絹、天然出発材料から作製された人工繊維または無機繊維、例えば炭素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維および/またはマグネシウム繊維をさらに含む。
【0073】
好ましくは、前記織物材料はいずれの形態においても、以下の材料、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエステルおよび/または綿の少なくとも1つから作製される。
【0074】
織物は特に、布または織物表面、例えば製織、製編、不織またはマット表面から選ばれる。これらの物品は例えば、敷き詰めカーペット、カーペット、家具カバー、表面カバー、ソファー、カーテン、寝具類、マットレスおよび枕、衣類および医療用織物材料であることができる。
【0075】
本発明による織物は、好都合にはフェルト、フィルタ、フィルム、ガーゼ、クロス、包帯、層、布、ニットウェア製品、衣類製品、衣服、寝具製品、家具製品、カーテン、コンパートメントカバー、機能性テクニカルテキスタイル、ジオテキスタイルおよび/またはアグロテキスタイルを構成する。
【0076】
前記織物は、好都合には医療分野、衛生、旅行携行品、衣類産業、衣服産業、家庭または家事用品、家具、敷き詰めカーペット、自動車産業、産業、特に産業用濾過、農業および/または建築産業で使用される。
【0077】
このようなフィルムは、良好な耐久性と改善された水蒸気透過率の両方を示す。フィルムは、織物に浸透するおそれのある外部要素に対するバリア特性を経時的に保持する。フィルムの水蒸気に対する透過率の改善によって、織物の通気性が促進される。
【実施例】
【0078】
防水通気性フィルムは、TPU、コポリエーテル−ブロック−アミドPEBA、官能化ポリオレフィンおよび熱可塑性デンプンを各種の割合で含むブレンドから調製した。以下の実施例で使用するTPUは、バイエル(Bayer)が販売しているデスモパン(Desmopan)DP9370Aグレードである。実施例で使用するTPEは、アルケマが販売している一連の親水性PEBAおよび特にポリエーテルブロックがポリエチレングリコールに由来するものに属している。この例では、TPEはペバックス(Pebax)(登録商標)MV3000である。官能化ポリオレフィンは、20%のアクリレート重量含有率にて8g/10分(190℃/2.16kg)のMFIを有するエチレンとn−メチルアクリレートとのコポリマーである、ロトリル(Lotryl)(登録商標)20MA08である。使用するデンプンは、ロケット(Roquette)が販売している修飾デンプン(TPS3947)である。
【0079】
組成AからIを有する各種フィルムの耐水性−通気性(またはMVTR)を、規格ASTM E96、BW法、38℃/50%相対湿度に従って、25μmフィルムで測定する。
【0080】
基材の接着は、剥離強度に直接関連付けられている。剥離試験(規格ISO11339に従う)は、試験AからIそれぞれの積層体で、下塗りして、200mm/分の速度で延伸した積層体の15mm幅のストリップに対して行った。剥離試験は、好ましくは、不織ポリプロピレン織物への押出コーティングによる25μmの接着フィルムを含む積層体の製造後の2時間から48時間の期間内に行った。
【0081】
調製した各種のブレンドの組成を下の表1にまとめる。実施例AからEは比較である。実施例FからIは、本発明による。
【0082】
【表1】