特許第6456482号(P6456482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456482電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456482
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20190101AFI20190110BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190110BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20190110BHJP
【FI】
   G01R31/36 AZHV
   H02J7/00 Q
   !B60L3/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-511733(P2017-511733)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公表番号】特表2017-528710(P2017-528710A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015065336
(87)【国際公開番号】WO2016030065
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年4月27日
(31)【優先権主張番号】102014217087.7
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ ヴァーラディ
(72)【発明者】
【氏名】ガーボル バーラーニュ
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト シュトルチェンベルガー
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/118005(WO,A1)
【文献】 特開2012−42429(JP,A)
【文献】 特開2011−137681(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281559(US,A1)
【文献】 特開2007−24740(JP,A)
【文献】 特表2002−530987(JP,A)
【文献】 特開平7−128418(JP,A)
【文献】 特開平6−30528(JP,A)
【文献】 特開昭63−108284(JP,A)
【文献】 特開昭58−151556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H01M10/42−10/48
B60L 1/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗(R)を特定するための方法であって、
順次実行される以下の方法ステップ、すなわち、
a.デジタル電圧値(U)及びデジタル電流値(I)を得るために、前記電気的エネルギー蓄積器のアナログ電圧信号(Uanalog)及びアナログ電流信号(Ianalog)をアナログ/デジタル変換するステップと、
b.フィルタリングされた電圧値(Ufilt)及び電流値(Ifilt)を得るために、前記デジタル電圧値(U)及び前記デジタル電流値(I)を、バンドパスフィルタにより、零相周波数(fzp)付近でフィルタリングするステップと、
c.以下の計算条件が満たされているかどうかを検査するステップ、すなわち、
I.バンドパスフィルタが初期化されているかどうか、
II.対応するその時点(t)での電流ピーク値(I)が、フィルタリングされた前記電流値(Ifilt)から求められているかどうか、
III.前記電流ピーク値(I)の絶対値が、閾値電流値(Ith)の絶対値よりも大きいかどうか、但し、前記閾値電流値(Ith)の絶対値は、実際の内部抵抗(R)からの所定の最大偏差を有する零相抵抗(Rzp)を算出できる最小閾値電流値(Ith,min)の絶対値よりも大であり、
IV.事前に求められた時点(t)でのフィルタリングされた電圧値(Ufilt)が電圧ピーク値(U)であるかどうか、
V.前記電流ピーク値(I)及び前記電圧ピーク値(U)が同じ極性を有しているかどうか、
を検査するステップと、
但し、これらの計算条件は順次検査されるが、前記計算条件Iは、前記方法ステップcにおける任意の他の箇所でも検査可能であり、これらの計算条件のうちの1つが満たされない場合には前記方法は終了され、
d.前記方法が事前にまだ終了されていない場合に、前記電圧ピーク値(U)及び前記電流ピーク値(I)から前記零相抵抗(Rzp)を算出するステップと、
e.前記方法が事前にまだ終了されていない場合に、前記電気的エネルギー蓄積器の特定すべき内部抵抗(R)として前記零相抵抗(Rzp)を提供するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
以下のさらなる方法ステップ、すなわち、
f.前記デジタル電圧値(U)及び前記デジタル電流値(I)の有効性を検査し、その際に前記方法ステップaが適正に実施された場合には、前記デジタル電圧値(U)及び前記デジタル電流値(I)が有効とみなされ、無効なデジタル電圧値(U)又は無効なデジタル電流値(I)の場合には、前記方法が終了されるさらなる方法ステップを含み、前記さらなる方法ステップfは、前記方法ステップaの後で、かつ、前記方法ステップeの前に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電流ピーク値(I)及び/又は前記電圧ピーク値(U)は、FIFO原理を用いて求められる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電流ピーク値(I)及び/又は前記電圧ピーク値(U)は、3要素によるFIFO原理を用いて求められる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
以下のさらなる方法ステップ、すなわち、
g.算出された零相抵抗(Rzp)の妥当性を検査し、その際に算出された零相抵抗(Rzp)が、理論上の最小限界値(Ri,min)と理論上の最大限界値(Ri,max)との間にある場合には、妥当性ありとみなされ、妥当性なしの零相抵抗(Rzp)の場合には、前記方法が終了されるさらなる方法ステップを含み、前記方法ステップgは、前記方法ステップdと前記方法ステップeとの間で実行される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法ステップdにおける前記零相抵抗(Rzp)の計算は、前記電圧ピーク値(U)及び前記電流ピーク値(I)からの商形成によって行われる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下のさらなる方法ステップ、すなわち、
h.算出された零相抵抗(Rzp)をローパスフィルタリングするさらなる方法ステップを含み、前記方法ステップhは、前記方法ステップdと前記方法ステップeとの間で実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法ステップhでは、算出された零相抵抗(Rzp)を、当該零相抵抗(Rzp)の標準偏差を低減するためのフィルタリング素子を用いてローパスフィルタリングする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法ステップdにおける前記零相抵抗(Rzp)の計算は、前記電圧ピーク値(U)の二乗平均及び前記電流ピーク値(I)の二乗平均からの商形成によって行われる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エネルギー蓄積器の内部抵抗は、様々な方法で特定することが可能である。車両分野では、通常は微分抵抗、零相抵抗又はオーム抵抗が算出され、そこから内部抵抗が特定される。微分抵抗の計算を用いて内部抵抗を特定するための方法は、国際公開第2006/037694号(WO2006037694A1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開第2006/037694号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の開示
本発明は、電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための方法に関する。本発明によれば、内部抵抗は、零相抵抗を算出することで特定され、この零相抵抗も、特定すべき内部抵抗として提供される。ここでは以下の方法ステップが順次実行される。すなわち、
a.デジタル電圧値及びデジタル電流値を得るために、電気的エネルギー蓄積器においてアナログ電圧信号及びアナログ電流信号をアナログ/デジタル変換するステップと、
b.フィルタリングされた電圧値及び電流値を得るために、デジタル電圧値及びデジタル電流値を、バンドパスフィルタによって、零相周波数付近でフィルタリングするステップと、
c.以下の計算条件が満たされているかどうかを検査するステップ、すなわち、
I.バンドパスフィルタが初期化されているかどうか、
II.対応するその時点での電流ピーク値が、フィルタリングされた電流値から求められているかどうか、
III.電流ピーク値の絶対値が、閾値電流値の絶対値よりも大きいかどうか、但し、この閾値電流値の絶対値は、実際の内部抵抗からの所定の最大偏差を有する零相抵抗を算出できる最小閾値電流値の絶対値よりも大であり、
IV.事前に求められた時点でフィルタリングされた電圧値が電圧ピーク値であるかどうか、
V.電流ピーク値及び電圧ピーク値が同じ極性を有しているかどうか、
を検査するステップと、
但し、これらの計算条件は順次検査されるが、計算条件Iは、方法ステップcにおける任意の他の箇所でも検査可能であり、これらの計算条件のうちの1つが満たされない場合にはこの方法は終了され、
d.この方法が事前にまだ終了されていない場合に、電圧ピーク値及び電流ピーク値から零相抵抗を算出するステップと、
e.この方法が事前にまだ終了されていない場合に、電気的エネルギー蓄積器の特定すべき内部抵抗として零相抵抗を提供するステップと、
が順次実行される。
【0004】
ここでの利点は、小さな電流変動又は電圧変動が、電気的エネルギー蓄積器にとって、電気的エネルギー蓄積器の零相抵抗の計算とそれに伴う内部抵抗の特定のためのきっかけ(以下では励起とも称する)として既に十分であることにあり、このことは例えば走行中やエンジン停止の場合のようなケースに値する。そのためエンジン始動に基づくような電気的エネルギー蓄積器の強い励起は、もはや内部抵抗を特定し得るための前提条件ではなくなる。このことは特にオーソドックスなエンジン始動を伴わないハイブリッド車両や電気自動車にとって利点となる。さらにこの方法は、内部抵抗を特定するための他の方法、例えば内部抵抗が離散フーリエ変換によって特定されるスペクトル方式を用いた方法に比べて僅かな計算コストしか必要としない。その他にもこの方法は、組み込まれたシステム内での使用、例えばバッテリセンサ内での使用に対しても最適化され、内部抵抗の能動的特定にも受動的特定にも使用することが可能である。ここでの能動的特定とは、特定周波数のもとで制御された交流電圧による電気的エネルギー蓄積器の励起を指す。主要な利点は、内部抵抗が連続的にかつ電源網電圧に依存することなく算出できることにある。しかしながら、能動的特定には、パワーエレクトロニクスを備えた複雑なハードウェアが必要とされ、さらにバッテリにも負担をかける。一方受動的特定とは、交流発電機の電源網電圧や負荷による電気的エネルギー蓄積器の励起を指す。これによりハードウェアへの要求は低くなる。なぜなら、エネルギー蓄積器の電流と電圧のうちの一方の測定しか必要とされないからである。このことは、例えばシャント又はホールセンサによって置き換え可能である。但し、この受動的特定の場合にエネルギー蓄積器の励起は、直接制御されないので、内部抵抗は、計算条件が満たされない場合には更新されない。またさらに、閾値電流値の変更により、内部抵抗の特定の精度を設定することが可能である。
【0005】
本発明による方法の好ましい実施形態では、方法ステップaと方法ステップeとの間でさらなる方法ステップfが実行され、この方法ステップfでは、デジタル電圧値及びデジタル電流値の有効性が検査されることが想定される。ここでは、方法ステップaが適正に実施された場合には、デジタル電圧値及びデジタル電流値が有効とみなされる。それに対して無効なデジタル電圧値又は無効なデジタル電流値の場合には、この方法は終了する。好ましくはここでは、この方法が、有効な測定値によってのみ、すなわちエラーのない測定値によってのみ継続される。これにより、一方では、エラーを含んだ測定値の場合の計算コストが低減され、他方では、エラーを含んだ零相抵抗が内部抵抗として提供されることが回避され得る。
【0006】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、電流ピーク値又は電圧ピーク値も、ファーストインファーストアウト(FIFO)原理を用いて、特に3要素によるファーストインファーストアウト(FIFO)原理を用いて求められることが想定される。好ましくはここでは、FIFO原理が、複数の値から1つのピーク値を求めるための簡単な手段を表す。これにより、この方法ステップに必要とされる計算能力が少なくて済む。
【0007】
本発明による方法の好ましい実施形態では、方法ステップdと方法ステップeとの間で、さらなる方法ステップgが実行され、この方法ステップgでは、零相抵抗の妥当性が検査されることが想定される。ここでは、零相抵抗が、想定すべき内部抵抗の理論上の最小限界値と理論上の最大限界値との間にある場合には、当該零相抵抗が妥当性ありとみなされる。そうでない場合には、この方法は終了される。好ましくはここでは、算出された零相抵抗は、当該算出された零相抵抗が妥当性ありと評価された場合にのみ、方法ステップeにおいて、内部抵抗として提供される。これにより、エラーを含んだ零相抵抗が内部抵抗として提供されることが回避され得る。
【0008】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、方法ステップdにおける零相抵抗の計算は、電圧ピーク値及び電流ピーク値からの商形成によって行われることが想定される。好ましくはここでは、これが零相抵抗を計算するための簡単な手段を表し、それによって僅かな計算容量しか必要にならない。
【0009】
本発明による方法の好ましい実施形態では、方法ステップdと方法ステップeとの間でさらなる方法ステップhが実行され、この方法ステップhでは、算出された零相抵抗が特にPT1素子を用いて、ローパスフィルタリングされることが想定される。好ましくはここでは、このフィルタリングにより、例えば測定ノイズに基づいて発生する標準偏差が低減され得る。
【0010】
本発明による方法のさらに好ましい実施形態では、方法ステップdにおける零相抵抗の計算は、電圧ピーク値の二乗平均に対する電流ピーク値の二乗平均の商形成によって行われる。好ましくはここでは、零相抵抗の計算の際の精度がこの計算手法によって再度向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第1の実施形態。
図2】電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第2の実施形態。
図3】電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第3の実施形態。
図4】電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第4の実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第1の実施形態を示す。この方法は、スタートSにおいて開始する。まず方法ステップaにおいて、電気的エネルギー蓄積器のアナログ電圧信号Uanalog及びアナログ電流信号Ianalogが、デジタル電圧値U及びデジタル電流値Iに変換される。このアナログ/デジタル変換は、方法ステップaにおいて、第1のサブステップa1及び第2のサブステップa2によって行われる。第1のサブステップa1では、アナログ電圧信号Uanalog及びアナログ電流信号Ianalogが、ローパスフィルタリングされ、これは例えばアナログローパスフィルタを用いて行われる。さらに第2のサブステップa2では、ローパスフィルタリングされたアナログ電圧信号Uanalog及びローパスフィルタリングされたアナログ電流信号Ianalogが、デジタル電圧値U及びデジタル電流値Iを得るためにサンプリングされる。ここではアナログ電圧信号Uanalog及びアナログ電流信号Ianalogのためのサンプリングは、サンプリング周波数fTastが、最大零相周波数fzp,maxの少なくとも2倍の大きさである条件のもとで、同期して行われる。その際のローパスフィルタリングは、サンプリングすべき信号の帯域幅を、サンプリングレートに合わせるために使用される。さらにサンプリング周波数fTastのための前提条件によって、ナイキストシャノンサンプリング定理が守られる。デジタル電圧値U及びデジタル電流値Iは、それに続く方法ステップbにおいてフィルタリングされる。ここでのフィルタリングは、バンドパスフィルタを用いて行われ、このバンドパスフィルタは、零相周波数fzp付近のフィルタリングを行う。この零相周波数fzpの場合、インピーダンス角度はほぼゼロになる。零相周波数fzpは、例えばエネルギー蓄積器のタイプ、温度及び充電状態に依存する。鉛蓄電池の場合の零相周波数fzpは、典型的には300Hzから1kHzの間にある。このバンドパスフィルタリングによって、フィルタリングされた電圧値Ufiltとフィルタリングされた電流値Ifiltが得られる。さらなる方法ステップcでは、引き続き複数の計算条件が順次検査される。これらの計算条件のうちの1つだけが満たされていなくても直ちにこの方法は早期時点で終了される。この終了はここでは、エンドEとして示されている。この方法は、典型的には、この終了の後で、スタートSにおいて再び開始される。計算条件Iに基づいて、バンドパスフィルタが初期化されているかどうかが検査される。そのため、例えばn次のバンドパスフィルタでは、n個のサンプリングされた値の後でバンドパスフィルタが初期化される。nは、ここではゼロよりも大きい自然数を表している。計算条件IIによれば、電流ピーク値Iが、フィルタリングされた電流値Ifiltから求められ得るかどうかが検査される。この電流ピーク値Iは、例えばFIFO原理を用いて、特に3要素によるFIFO原理を用いて求められる。ここでは最後にサンプリングされ引き続きフィルタリングされた電流値Ifiltが相互に比較される。ここではフィルタリングされた電流値Ifiltのうちの1つが電流ピーク値Iとして認識され得るのであれば、電流ピーク値Iの時間的発生は、時点tとして定められる。一方、電流ピーク値Iが何も特定できないときには、次の方法の実行において、少なくとも1つの最も古い、フィルタリングされた電流値Ifiltが、少なくとも1つの新しくフィルタリングされた電流値Ifiltによって置き換えられ、既存の値と新しい値とから、電流ピーク値Iを求めることが試みられる。第3の計算条件IIIとして、電流ピーク値Iの絶対値が、閾値電流値Ithの絶対値よりも大きいかどうかが検査される。ここでは閾値電流値Ithの絶対値が最小閾値電流値Ith,minの絶対値よりも常に大きいことを前提条件とすれば、閾値電流値Ithは、方法を実行する毎に変更可能であり、この最小閾値電流値Ith,minを用いれば、さらに電気的エネルギー蓄積器の実際の内部抵抗Rから所定の最大偏差を有している零相抵抗Rzpが算出可能になる。そのため例えば、バッテリセンサを用いて特定される内部抵抗Rと、本来の内部抵抗実際値Rとの間の最大偏差は10%を超えるべきではない。閾値電流値Ithの変更により、零相抵抗Rzpの計算の精度は、その計算の頻度の負担に基づいて適合化可能になる。ここでは、閾値電流Ithが高ければ高いほど、算出された零相抵抗Rzp、及びそれに伴い提供される内部抵抗Rもより正確になり、一方、零相抵抗の計算自体は、よりまれになるということがいえる。続いて計算条件IVを用いて、時点tでのフィルタリングされた電圧値Ufiltが、電圧ピーク値Uであるかどうかが検査される。このことは、例えば再びFIFO原理を用いて置き換えられる。続いてその後の計算条件Vによって、電流ピーク値I及び電圧ピーク値Uが同じ極性を有しているかどうかが検査される。これらの計算条件及びバンドパスフィルタリングにより、電流ピーク値Iも、電圧ピーク値Uも、実質的に実数部分からなること、及び、それに伴い虚数部分は存在しないか、又は、あっても非常に僅かであることが達成される。このことは、サンプリングされたアナログの電流信号及び電圧信号の位相角がほぼ0°になるか又はほぼ180°になることを意味する。これにより、それに続く方法ステップdにおいて、零相抵抗Rzpを、内部抵抗Rに対する尺度として算出することが可能になる。その場合の零相抵抗Rzpの計算は、電圧ピーク値Uを、電流ピーク値Iによって除算することで行われる。続いて方法ステップeでは、算出された零相抵抗Rzpが、特定すべき内部抵抗Rとして提供され、続いてこの方法が終了される。エンドEの後では、この方法は、既述のように典型的には再び新たに開始される。このことは、内部抵抗Rをもはや特定しなくてもよいところまで続く。さらに通常のケースではこれらの複数の方法は、時間をずらして実行される。そのため例えば、アナログ電圧信号Uanalog及びアナログ電流信号Ianalogが所定の期間に亘ってサンプリングされ、そこからこの方法のさらなる経過において、それらの値を図示のように後続処理することで、エネルギー蓄積器の内部抵抗Rを特定することが試みられる。しかしながら、この後続処理の間に既にこの方法は新たに開始され、それによってアナログ電圧信号Uanalogもアナログ電流信号Ianalogもさらにサンプリングされ、そこから再び内部抵抗Rが特定される。
【0013】
図2は、電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第2の実施形態を示す。ここでのこの方法は、図1による方法と同一に実行される。いずれにせよ方法ステップaと方法ステップbとの間で、任意の方法ステップfが実施され、この方法ステップfでは、方法ステップaにおいて、アナログ/デジタル変換が適正に実施されたかどうかが検査される。このことが当て嵌まらない場合には、デジタル電圧値U又はデジタル電流値Iは無効とみなされ、この方法が終了される。エラーを含んだA/D変換に対する可能な理由は、例えば障害信号の発生又はA/D変換器の新たなコンフィグレーションである。例えばデジタル電圧値U及びデジタル電流値IがA/D変換の際に、A/D変換が適正であったかどうかを示す付加的なバイナリステータスフラグを含んでいることによって、妥当性検査への置き換えが可能である。さらにこの方法ステップfでは、それぞれの値のステータスフラグがセットされているかどうかしか検査する必要はない。
【0014】
図面に示されていない代替的な実施形態では、この方法ステップfは、方法ステップbの後で、但し、少なくとも方法ステップeの前に実施される。図面に示されていないさらなる実施形態では、この方法の終了時に、無効なデジタル電流値Iあるいはまた無効なデジタル電圧値Uに基づいて、A/D変換器及びローパスフィルタが、この方法の次回の開始前に、再度初期化される。
【0015】
図3は、電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第3の実施形態を示す。この実施形態は、図2による方法から出発して、任意のさらなる方法ステップgを有している。この方法ステップgは、方法ステップdと方法ステップeとの間で実施される。ここでのこの方法ステップgでは、算出された零相抵抗Rzpが、理論上の最小限界値Ri,minと理論上の最大限界値Ri,maxとの間にあるかどうかが検査される。このことが当て嵌まらない場合には、この方法は再び早期時点で終了される。鉛蓄電池に対しては、例えば最小限界値Ri,minは、約2mΩにあり、最大限界値Ri,maxは約50mΩにある。
【0016】
図示されていない代替的な実施形態では、この方法は、図1図2又は図3に示された実施形態のうちの1つと同一に経過する。この代替的な実施形態は、ただ方法ステップdにおいてのみ異なっている。そのためここでは、零相抵抗Rzpが、方法ステップdにおいて、電圧ピーク値Uの二乗平均を、電流ピーク値Iの二乗平均によって除算することで算出される。
【0017】
図4は、電気的エネルギー蓄積器の内部抵抗を特定するための本発明による方法の第4の実施形態を示す。この方法は、図3による方法から出発して、さらなる任意の方法ステップhを有している。この方法ステップhは、方法ステップdの後で、但し、方法ステップeの前に実施される。いずれにせよ、零相抵抗Rzpが、方法ステップdにおいて、電圧ピーク値U及び電流ピーク値Iからの商形成によって算出された場合に対してのみである。方法ステップhでは、算出された零相抵抗Rzpがローパスフィルタリングされ、このローパスフィルタリングはPT1素子を用いて機能する。
【0018】
図面には示されていない、さらなる代替的実施形態では、任意の方法ステップf,g及びhも、相互に依存することなく1つの方法において実行され得る。そのため、例えば、図1による方法から出発して、方法ステップdと方法ステップeとの間の方法ステップgだけは実行するが、しかしながら、方法ステップf及びhは実施されないようにすることも可能である。
【0019】
前述した実施形態では、零相抵抗Rzpを算出することによって内部抵抗Rを特定している。いずれにせよ算出された零相抵抗Rzpに基づけば、さらなる抵抗の定義が、例えば微分抵抗、1kHzの抵抗又はオーム抵抗などが近似的に特定可能になる。
【0020】
このことは、これらの全ての抵抗の定義の間では、偏差が所定の規模に限定されることに基づいている。それ故、例えば算出された零相抵抗Rzpからは、所定の許容誤差を有する微分抵抗も特定可能である。
図1
図2
図3
図4