特許第6456518号(P6456518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456518特に高圧燃料ポンプの吐出量を制御するための電磁操作可能な量制御弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456518
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】特に高圧燃料ポンプの吐出量を制御するための電磁操作可能な量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/36 20060101AFI20190110BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20190110BHJP
   F02M 59/46 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   F02M59/36 F
   F02M59/44 B
   F02M59/46 Y
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-550133(P2017-550133)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-513300(P2018-513300A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016052574
(87)【国際公開番号】WO2016150607
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】102015205430.6
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ビューザー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ハラー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ロート
(72)【発明者】
【氏名】ルートハート ボン
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−266728(JP,A)
【文献】 特開2012−154297(JP,A)
【文献】 特開2002−106740(JP,A)
【文献】 特開2002−349745(JP,A)
【文献】 特開2003−314738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁操作可能な量制御弁(14)であって、
電磁石(15)と、
前記量制御弁(14)の開閉のための軸方向に移動可能な弁要素(26)と、さらに、
前記電磁石(15)によって生成され軸方向で前記弁要素(26)に作用する作用力を伝達するためのアーマチュアシャフト(16)と、を備えており、
前記アーマチュアシャフト(16)は、前記弁要素(26)の方に向いているニードル領域(162)と、前記弁要素(26)とは反対側のアーマチュア領域(161)とを有し、
前記ニードル領域(162)および前記アーマチュア領域(161)は、共に一体的に形成されている、電磁操作可能な量制御弁(14)において、
前記アーマチュアシャフト(16)の強度を高めるための少なくとも1つの手段(167,168)が設けられており、
前記ニードル領域(162)は、前記アーマチュア領域(161)よりも小さな直径を有し、前記少なくとも1つの手段は、前記ニードル領域(162)と前記アーマチュア領域(161)との間の移行部(165)に存在するエッジ(166)の丸み(167)であり、
前記丸み(167)は、前記ニードル領域(162)の方に向いていてかつ第1の曲率半径(r1)を有する第1の部分的丸み(167a)と、前記アーマチュア領域(161)の方に向いていてかつ第2の曲率半径(r2)を有する第2の部分的丸み(167b)とを有しており、前記第1の曲率半径(r1)は、前記第2の曲率半径(r2)とは異なっており、
前記第1の曲率半径(r1)は、前記第2の曲率半径(r2)の少なくとも5倍の値を有しており、
前記第1の部分的丸み(167a)および/または前記第2の部分的丸み(167b)は、前記ニードル領域(162)が前記エッジ(166)において所定の角度(α)で前記アーマチュア領域(161)に移行する当該所定の角度(α)に関連して、前記エッジ(166)を、それぞれ少なくとも1/4まで丸みづけ、
前記少なくとも1つの手段は、少なくとも前記アーマチュアシャフト(16)の表面の一部に沿って設けられた層(168)であり、当該層(168)の硬度は、前記アーマチュアシャフト(16)の基材(169)の硬度よりも大きく、
少なくとも前記アーマチュアシャフト(16)の表面の一部に沿った前記硬度は、少なくとも900HVであり、
少なくとも前記アーマチュアシャフト(16)の表面の一部に沿って、炭素および/または窒素含有量が、前記アーマチュアシャフト(16)の前記基材(169)に比べて高められており、
前記層(168)は、5μmから50μmの深さまで前記アーマチュアシャフト(16)内に浸透しており、
前記アーマチュアシャフト(16)の前記基材(169)は、磁性鋼、冷間加工硬化鋼、フェライト鋼、または、鉄−コバルト合金である、ことを特徴とする、電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項2】
前記丸み(167)の曲率半径は、前記ニードル領域(162)から前記アーマチュア領域(161)に向かう方向で減少する、請求項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項3】
前記丸み(167)の曲率半径は、前記ニードル領域(162)から前記アーマチュア領域(161)に向かう方向で連続的に減少する、請求項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項4】
前記アーマチュアシャフト(16)は、前記アーマチュア領域(161)において、軸方向に延在する1つ以上の貫通孔部(164)を有している、請求項1からのいずれか1項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項5】
前記アーマチュアシャフト(16)は、前記アーマチュア領域(161)において、軸方向に延在する2つの貫通孔部(164)を有している、請求項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項6】
前記量制御弁(14)は、ハウジングを有しており、該ハウジングには、ストッパ(163,17)が位置固定されて設けられており、当該ストッパには、前記アーマチュアシャフト(16)が軸方向に移動した場合に当接する、請求項1からのいずれか1項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項7】
前記アーマチュアシャフト(16)の基材(169)は、均質である、請求項1からのいずれか1項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項8】
前記量制御弁(14)は、高圧燃料ポンプ(3)の吐出量を制御するための量制御弁(14)である、請求項1からのいずれか1項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の電磁操作可能な量制御弁(14)を備えた燃料ピストンポンプ(3)であって、前記電磁操作可能な量制御弁(14)は、前記燃料ピストンポンプ(3)の吸込弁であることを特徴とする、燃料ピストンポンプ(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば欧州特許出願公開第2453122号明細書から既に基本的に公知であるような電磁操作可能な量制御弁に関する。
【0002】
発明の開示
本発明は、量制御弁において使用される一体的に構成されたアーマチュアシャフトには、同時に高い磁気的要件と高い強度的要件とが出され、さらにアーマチュアシャフトには、限られた構成部品サイズおよび構成部品質量の周辺条件が課せられていることに基づいている。
【0003】
例えばアーマチュアシャフトの材料の選択のような従来方式の手段によれば、これらの要件および周辺条件は、一部しか、同時に満足のいく結果を得ることはできない。なぜなら、良好な磁気特性を有する材料は、通常は、適度な強度しか有しておらず、良好な強度を有する材料は、通常は、適度な磁気特性しか有していないからである。
【0004】
それ故に、本発明によれば、アーマチュアシャフトの強度を高めるための手段が設けられている。
【0005】
「強度」との概念は、本願では基本的に広く解釈されるべきである。例えばそれは、アーマチュアシャフトの、弾性変形および/または塑性変形に対する抵抗特性を特徴付ける特性パラメータ、すなわち例えば引っ張り強度、押圧強度、圧縮強度、曲げ強度、捻れ強度、せん断強度および/または疲労強度であってもよい。さらに強度は、摩耗に対する耐性、特に硬度および/または表面硬度であってもよい。この耐性との概念は、アーマチュアシャフトが破損することなく、例えば折れることなく、一定の荷重に耐えることができる持続時間に向けられていてもよい。
【0006】
「手段」との概念は、本願では基本的に広く解釈されるべきである。例えばそれは、形状付与または材料選択または局所的な材料変更、特にアーマチュアシャフトの表面の一部の領域または全表面の領域における変更であってもよい。
【0007】
「高める」との概念は、増加させること、例えば特性パラメータの増大を意味する。このことは特に、固定的な出発点なしでその手段が、少なくとも基本的にはアーマチュアシャフトの強度を高めることに適しているというふうに解釈することができる。この強度を高めることの出発点として、他方では、冒頭に述べた従来技術から公知の量制御弁のアーマチュアシャフトの強度から出発することも可能である。
【0008】
本発明によれば、量制御弁は、量制御弁の開閉のための軸方向に移動可能な弁要素を備えている。この場合それは、板状の若しくは少なくとも実質的に板状の弁要素であってもよく、この板状の弁要素は、例えば環状のシールシートに当接し、それによって量制御弁の閉鎖が可能である。
【0009】
本発明によれば、アーマチュアシャフトは、アーマチュア領域とニードル領域とを有している。特にアーマチュアシャフトは、ニードル領域とアーマチュア領域とからなっており、この場合ニードル領域およびアーマチュア領域は、特に軸方向で相前後して配置されており、好ましくは相互に同軸に若しくは少なくとも実質的に同軸に配置されている。特にニードル領域およびアーマチュア領域は、特に相互に一体的に形成された円筒形の若しくは実質的に円筒形の区分であってもよい。
【0010】
好ましくは、ニードル領域の直径は、アーマチュア領域の直径よりも小さく、例えば最大でもその半分の大きさである。好ましくは、ニードル領域の長さは、アーマチュア領域の長さよりも長く、例えば少なくともその2倍の長さである。
【0011】
本発明によれば、アーマチュアシャフト若しくはアーマチュアシャフトのニードル領域およびアーマチュア領域は、共に一体的に形成されている。この「一体的に形成されている」とは、本願では特に次のことを理解されたい。すなわち、特につなぎ合わせまたは接合によってではなく、特に例えば回転部品としてまたは金属射出成形とその後の焼結により、1個の部材から得られる統合化された連続的なワークピースが存在していることを理解されたい。このアーマチュアシャフトにはさらに特にさらなる構成部品は固定されず、そのためこのアーマチュアシャフトは、特に従来技術から、例えば独国特許出願公開第102010062451号明細書から同様に公知である、プレス加工によって製造されたアーマチュアおよびニードルからなる複合体に、機能的に完全に置き換わる。
【0012】
本発明の第1の態様では、ニードル領域は、アーマチュア領域よりも小さな直径を有し、手段は、ニードル領域とアーマチュア領域との間の移行部に存在するエッジの丸みである。
【0013】
エッジとは、好ましくはニードル領域とアーマチュア領域との間の移行部に存在する内部エッジであってもよい。これは例えば90°のエッジであってもよい。
【0014】
「丸み」との概念は、基本的には広く解釈されるべきであり、その限りでは該当するエッジは鋭利なエッジではない。「鋭利さ」に関する概念は、ドイツ工業規格のDINISO13715:2000を参照されたい。特にエッジが、理想的に鋭利なエッジから50μm以下の偏差しか有さない場合には、そのエッジは鋭利なものとして解釈される。その限りでは、それ以外の全てのエッジは、丸みを帯びているものとして有効であり、これは実際の輪郭が、数学的な観点において厳密に丸くなっているかどうか、あるいはそれが鋭利な輪郭から出発して丸みのある輪郭に単に近似しているだけかどうかには依存しない。特に斜面も丸みを表し得る。
【0015】
丸みは、ニードル領域とアーマチュア領域との間の曲げ応力を減少させ得るかまたは良好に伝達させ得る技術的効果を有している。このようにして、ニードル領域とアーマチュア領域との間の移行部における破断が効果的に回避され得る。
【0016】
丸みとは、例えば一定の曲率半径を有する丸みであってもよい。それによりこの丸みは、特に簡単な製造が可能になる。曲率半径は、このケースでは、例えば0.5mm以上であってもよい。
【0017】
他方、アーマチュアシャフトの強度、特に曲げ応力に耐えるその能力は、丸みに沿った曲率半径が一定でない場合に、特に良好に改善できることが観察された。好ましくは曲率半径が、ニードル領域からアーマチュア領域に向かう方向で減少することが想定される。その場合この減少は、連続的または段階的に想定されていてもよい。
【0018】
すなわち曲率半径の段階的な減少の場合には、特にニードル領域の方に向かっている第1の部分的丸みは、第1の曲率半径を想定され、アーマチュア領域の方に向かっている第2の部分的丸みは、第2の曲率半径を想定され、この場合第1の曲率半径は、第2の曲率半径よりも大きく、例えば第2の曲率半径よりも少なくとも5倍またはさらに少なくとも10倍大きい。例えば第1の曲率半径は、1mmよりも大きいか、またはさらに2mmより大きくてもよい。それに対して第2の曲率半径は、1mmよりも小さいか、またはさらに0.6mmより小さいものであってもよい。
【0019】
直角のエッジの場合、2つの部分的丸みの各々は、45°の移行部を示すかまたはそれぞれ少なくとも22.5°の移行部を示し得る。
【0020】
それらの曲率半径が相互に少なくとも部分的に異なり、特にニードル領域からアーマチュア領域の方向に向かって減少している3つ以上の部分的丸みを有している丸みも、基本的には可能ではあるが、ここでの丸みは、特に2つの部分的丸みからなり得る。
【0021】
本発明の第1の態様に対して付加的または代替的な本発明の第2の態様では、手段は、少なくともアーマチュアシャフトの表面の一部に沿って設けられた層であることが想定される。その硬度は、アーマチュアシャフトの基材の硬度よりも大きい。
【0022】
そのような層によって、アーマチュアシャフトの磨耗を効果的に低減することができる。さらに出願人による実験では、この層によって疲労強度の増加が、例えば初期値に対する20%乃至30%の増加が測定された。
【0023】
硬度は、例えば0.01kpの検査応力と、12秒の負荷時間とによって測定され得る、例えばHV単位で測定された特性パラメータであってもよい。例えば前述した非常に小さな負荷により、複数の測定点が、1μm乃至10μmの間隔のレートにおいて検出される、いわゆるナノインデンテーション法が使用されてもよい。
【0024】
そのように測定された硬度によって、ワークピースの表面の圧縮残留応力が推論可能になり、これは自身側で構成部品の疲労強度に対する尺度として使用可能である。
【0025】
層は、アーマチュアシャフトの全表面に沿って設けられていてもよい。特にこの層が、少なくともアーマチュアシャフトの表面の次のような箇所、すなわち量制御弁の動作中に当該量制御弁の例えば弁要素若しくはハウジングに固定されたストッパなどの他の構成要素と当接する箇所に設けられることが想定され、例えばアーマチュアシャフト上の2つの軸方向平面図において見える箇所に設けられる。
【0026】
特に層の硬度は、少なくとも900HV、特に少なくとも900HV0.01かまたはさらに少なくとも1000HV、特に少なくとも1000HV0.01であることが想定される。特に、アーマチュアシャフトの基材の硬度は、著しく低いことが想定され、例えば最大で400HVかまたはさらに最大でも200HVにしかすぎず、これらはフェライト鋼に対する通常の値である。
【0027】
この層を製造することができる方法は多数存在しているけれども、好ましいのは低温拡散法である。なぜなら低温拡散法は、層の製造中にアーマチュアシャフトが全体として変形すること、例えば反りを生じることがなく、(安全に)アーマチュアシャフトに適用することができるからである。好ましい低温拡散法は、軟窒化処理とコールスタライジング処理である。このようにして、炭素および/または窒素含有量が、アーマチュアシャフトの基材に比べて高められた層が得られる。この場合通常は、構造的変化は発生せず、その他に当該層は、硬度測定および顕微鏡写真における色の変化、特に茶色がかった変色部による元素分析によって識別可能である。さらに層内で増加した炭素および/または窒素含有量は、導入された圧縮残留応力に基づいて、時には複雑であっても、少なくとも基本的には証明できる。
【0028】
低温拡散法とは、本願では特に次のような熱化学法と理解されたい。すなわち、アーマチュアシャフトが、例えば炭素および/または窒素を含有する雰囲気にさらされ、特に650℃以下の温度またはさらに350℃以下の温度のもとで、その雰囲気から原子、例えば炭素原子および/または窒素原子が、アーマチュアシャフトの表面層内へおよび/またはアーマチュアシャフト内へ拡散する熱化学法である。
【0029】
この層は、好ましくは5μm乃至50μmの深さを有し、例えば10μm乃至15μmの深さを有する。この層の下方には、特にアーマチュアシャフトの基材が配置されている。
【0030】
基材は、好ましくは、フェライト鋼および/または冷間加工硬化鋼および/または磁性鋼である。さらにそれは鉄−コバルト合金であってもよい。
【0031】
アーマチュアシャフトの質量は、3グラム未満であり、好ましくはさらに2グラム未満であり、それによって量制御弁の高い動特性が保証される。
【0032】
好ましい改善構成は従属請求項に示されている。さらに本発明にとって重要な特徴は、以下の説明および図面において明らかになる。この場合これらの特徴は、それについての再度の明示的な示唆なしでも、単独の態様においても、本発明のための様々な組み合わせにおいても、重要となり得る。
【0033】
以下では、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】内燃機関の燃料噴射システムの概略図
図2】本発明に係る量制御弁
図3図2からの量制御弁のアーマチュアシャフト
図4図3からの量制御弁のアーマチュアシャフトの顕微鏡写真
【0035】
実施形態
図1は、非常に簡略化した描写で内燃機関の燃料噴射システム1を示している。燃料タンク9は、吸込管路4、吐出ポンプ5、および低圧管路7を介して(より詳細には説明しない)高圧ポンプ3に接続されている。この高圧ポンプ3には、高圧管路11を介して高圧蓄積器13(「コモンレール」)が接続されている。量制御弁14は、電磁式操作装置15(以下では単に電磁石/電磁コイル15とも称する)と共に、吐出ポンプ5と高圧ポンプ3との間の低圧管路7の途中に油圧的に配置されている。その他の要素、例えば高圧ポンプ3の弁は、図1には示されていない。ここでは量制御弁14が、高圧ポンプ3を備えたユニットとして構成されてもよいことが理解できる。例えばこの量制御弁14は、高圧ポンプ3の入口弁であってもよい。
【0036】
燃料噴射システム1の動作中に、吐出ポンプ5は、燃料タンク9からの燃料を低圧管路7内に吐出する。その際に量制御弁14は、高圧ポンプ3に供給する燃料量を決定する。
【0037】
図2は、図1の量制御弁14の断面図を示す。この量制御弁14は、長手軸線12に対して実質的に回転対称に構成されている。この量制御弁14は、高圧ポンプ3の図示されていないハウジング内に固定され、高圧ポンプ3の入口弁を形成している。
【0038】
量制御弁14は、磁極コア17の周りに巻回された電磁コイル15とアーマチュアシャフト16とを含み、この場合磁極コア17とアーマチュアシャフト16との間でアーマチュアばね22が張っている。磁力の作用とアーマチュアばね22の復元力とによって、アーマチュアシャフト16は、磁極コア17と、ハウジングに固定されたストッパ163との間で軸方向に移動可能である。
【0039】
アーマチュアシャフト16は、磁極コア17の方に向いているアーマチュア領域161と、磁極コア17とは反対側のニードル領域162とからなっており、他の構成部品と恒久的に接続されることなく、一体的に構成されている。
【0040】
アーマチュアシャフト16は、その磁極コア17とは反対側の端面側が、量制御弁14の弁要素26に当接し、さらに量制御弁14はこのようにして、例えば量制御弁14の開口方向に抗して高圧ポンプ3の作動室31から低圧管路7内への燃料の逆流を可能にするために、弁ばね40の弾性力に抗して強制的に開くことが可能である。特定の実施形態では、アーマチュアシャフトは、付加的に弁要素26と一体的に構成されていてもよく、つまりその機能を同時に引き継いでいてもよい。
【0041】
弁要素26は、本願では、実質的に板状の構成を有し、閉鎖された量制御弁14において環状のシールシート27に当接している。
【0042】
アーマチュアシャフト16は、図3において拡大された斜視図で示されている。アーマチュア領域161およびニードル領域162の両方は、実質的に円筒状の形態を有しており、それらは軸方向で相前後して配置されている。この場合アーマチュア領域161は、ニードル領域162の直径の2倍よりも大きい直径を有し、さらにこの場合アーマチュア領域161は、ニードル領域162の長さの半分よりも短い長さを有する。アーマチュアシャフト16は、例えば10乃至30mmの範囲の全長を有する。
【0043】
アーマチュアシャフト16は、この例では軸方向にアーマチュア領域161を通って延在する2つの貫通孔部164を有しており、その機能は、アーマチュアシャフト16の移動中に燃料を、アーマチュアシャフト16のアーマチュア領域161を通って誘導可能なことからなる。
【0044】
ニードル領域162とアーマチュア領域161との間の移行部165には、内部エッジとして構成された径方向に完全に延在するエッジ166が存在しており、これは図2のような断面図において、ニードル領域162に、アーマチュア領域161を直角αに接続させている。この例では、エッジ166は、丸み167を有しており、この丸みは、第1の部分的丸み167aおよび第2の部分的丸み167bからなっている。これらの部分的丸みの各々は、直角のエッジ166に、ほぼ半分の丸み、すなわち45°の丸みを持たせている。
【0045】
第1の部分的丸み167aは、丸み167のニードル領域162に面する部分を示し、比較的大きな曲率半径r1、例えば6.5mmを有している。それには、アーマチュア領域161に面する段部および折曲部なしの第2の部分的丸み167bが続いており、これは比較的小さな曲率半径r2、例えば0.45mmを有している。
【0046】
アーマチュアシャフト16の基材169は均質であり、冷間加工硬化されたフェライト材料からなるかまたは代替的に鉄−コバルト合金からなっている。この基材169の硬度は、150HVである。アーマチュアシャフト16の表面には、硬化層168が形成され、この層は、15μmの深さまでアーマチュアシャフト内に浸透し、1000HVの硬度を有する。この層は、低温拡散法によって、例えば軟窒化処理またはコールスタライジング処理によって生成されたものである。この層では、炭素および/または窒素の含有量は、基材169に比べて増加している。顕微鏡写真(図4)では、この層168は、それ以外は影響を受けていない金属構造のもとで茶色がかった変色部として識別可能である。
図1
図2
図3
図4