(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端側加工手段と前記第2端側加工手段とは、回転中心軸からの距離が異なる位置に配置されて回転する刃部を木材に接触させて切削加工を行う工具によって構成され、
前記第1端側加工手段は、前記第2端側加工手段と比べて回転中心軸から近い位置に設置された刃部によって構成され、当該刃部によって前記接合用部材の第1端側における接合部の周面を形成することを特徴とする請求項1に記載の木材加工装置。
前記第2切断手段は、前記柱状の材料から複数の前記接合用部材を製造する場合に、先に製造される一部の接合用部材とは別の前記接合用部材の接合部における前記別の部分が残された状態の前記柱状の材料を切断して前記第2端側に端面を形成することを特徴とする請求項4に記載の木材加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数本の柱を連なった状態にして加工をする場合、柱状の材料に対して接合部が形成される部分は細く形成されるために、その部分の強度が低くなる。柱の長さが短いと、加工の際に材料を一定位置に保持する位置(クランプ位置)と、加工位置との間に、接合部が介在した状態となることがあり、この場合には加工によって材料に入力される力により、強度の低い接合部付近が破損する可能性がある。
【0006】
また、連なった状態とする柱の数が多い場合には、クランプ位置と加工位置との間に介在する接合部の数が多くなる場合があり、この場合には、接合部付近の破損の可能性が高まる。このため、加工の速度を低速にすることが必要となったり、使用可能な工具が制限されたりするなど、両端側に接合部を有する複数本の柱を製造することが難しい場合があるという問題点があった。
【0007】
また、接合部が形成された部分は細く形成されるために剛性が低く、クランプ位置から接合部を間に介在して離れた加工位置に入力される力によって材料の位置ずれが生じる可能性がある。このため、加工の速度を低速にしなければ、両端側に接合部を有する複数本の柱を一定以上の精度で製造することが難しく、加工の時間が長くかかってしまう状況が生じ得るという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、両端側に接合部が設けられる木材を好適に加工可能な木材加工装置、木材加工装置の制御装置、及び、木材加工プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1に記載の木材加工装置は、
他の木材との接合部が両端側に設けられた接合用部材を製造する木材加工装置において、前記接合用部材より長く形成された柱状の材料を一定位置に保持する保持手段と、その保持手段によって一定位置に保持された前記柱状の材料を当該材料の長手方向に交差する平面状に切断して前記接合用部材の一端側に端面を形成する第1切断手段と、その第1切断手段によって前記接合用部材の一端側に端面が形成された第1端側における前記柱状の材料の長手方向に沿って連続する周面に対して切削加工を行って前記接合用部材の第1端側における接合部の周面を少なくとも形成する加工を行う第1端側加工手段と、その第1端側加工手段によって前記第1端側に接合部が形成された前記柱状の材料に対して、前記接合用部材の前記第1端側とは反対側の第2端側に相当する位置に溝状の切削加工を行って前記接合用部材の第2端側における接合部の周面の少なくとも一部を形成する加工を
少なくとも行う第2端側加工手段と、その第2端側加工手段によって前記第2端側の接合部の周面が形成された前記柱状の材料を当該材料の長手方向に交差する平面状に切断して前記接合用部材の前記第2端側に端面を形成する第2切断手段と
、前記保持手段と、前記第1切断手段と、前記第1端側加工手段と、前記第2端側加工手段と、前記第2切断手段の動作を制御する制御手段とを備え
、その制御手段は、1の柱状の材料から2つ以上の接合用部材を製造する制御を行うものであって、1つの接合用部材について、両端側の接合部の周面を形成する加工が行われた後に、前記第2切断手段によって前記第2端側に端面を形成して、当該1つの接合用部材を製造し、当該1つの接合用部材を製造した後に、当該1つの接合用部材とは別の接合用部材について、前記第1端側加工手段によって前記第1端側における接合部の周面を形成して、当該別の接合用部材を製造する制御を行うことを特徴とする。
【0010】
この請求項1に記載の木材加工装置によれば、柱状の材料は、保持手段に保持された状態で第1切断手段によって切断され、接合用部材の一端側に相当する第1端側に端面が形成される。その端面が形成された柱状の材料の第1端側に対して第1端側加工手段が加工を行い、第1端側における接合部の周面が形成される。
【0011】
第1端側に接合部の周面が形成された柱状の材料は、第2端側加工手段によって、第1端側とは反対側の第2端側に対して加工が行われ、第2端側における接合部の周面が形成される。第2端側の接合部の周面が形成された柱状の材料は、第2切断手段によって材料の長手方向に交差する平面状に切断され、接合用部材の第2端側に端面が形成される。この第2端側に端面が形成されることで、柱状の材料から接合用部材の部分が切断されて、1つの接合用部材が製造される。
【0012】
請求項2に記載の木材加工装置は、請求項1に記載の木材加工装置において、前記第1端側加工手段と前記第2端側加工手段とは、回転中心軸からの距離が異なる位置に配置されて回転する刃部を木材に接触させて切削加工を行う工具によって構成され、前記第1端側加工手段は、前記第2端側加工手段と比べて回転中心軸から近い位置に設置された刃部によって構成され、当該刃部によって前記接合用部材の第1端側における接合部の周面を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の木材加工装置は、請求項1又は2に記載の木材加工装置において、
前記制御手段は、前記
別の接合用部材について、前記第1端側加工手段によって前記第1端側に対して前記接合部の周面を形成する切削加工が行われる前に、
前記第2端側加工手段によって前記第2端側に相当する位置に前記接合部の周面の一部分を形成する切削加工を行い、前記第1端側に対して切削加工が行われた後に、
前記第2端側加工手段によって前記第2端側の接合部の周面であって前記一部分とは別の部分を形成する切削加工を
行って当該別の接合用部材を製造する制御を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の木材加工装置は、請求項3に記載の木材加工装置において、前記保持手段によって保持される前記柱状の材料を長手方向を中心にして回転させる回転手段を備え、前記第2端側加工手段は、複数の前記接合用部材における前記第2端側に相当する複数箇所に対して溝状の切削加工を行い、各接合用部材における前記第2端側の接合部の周面の一部分を形成し、当該第2端側の接合部の周面の一部分が複数箇所に形成された前記柱状の材料が前記回転手段によって回転させられた後であって、前記第1端側加工手段によって前記第1端側に対して1の前記接合用部材に対する前記接合部の切削加工が行われた後に、当該切削加工が行われた前記1の接合用部材に対して溝状の切削加工を行い、前記第2端側の接合部の前記別の部分を形成することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の木材加工装置は、請求項4に記載の木材加工装置において、前記第2切断手段は、前記柱状の材料から複数の前記接合用部材を製造する場合に、先に製造される一部の接合用部材とは別の前記接合用部材の接合部における前記別の部分が残された状態の前記柱状の材料を切断して前記第2端側に端面を形成する。
【0016】
請求項6に記載の木材加工装置の制御装置は、請求項1から5のいずれかに記載の木材加工装置を制御して前記柱状の材料から前記接合用部材を形成することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の木材加工プログラムは、請求項1から5のいずれかに記載の木材加工装置の動作を制御する制御装置の演算処理を実行させて前記柱状の材料から前記接合用部材を形成する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の木材加工装置によれば、第1切断手段によって柱状の材料が平面状に切断された第1端側に対して第1端側加工手段が切削加工を行う。このため、柱状の材料の第1端側には広い作業空間を生じさせることができる。よって、作業空間が広い状況を利用して短時間に高精度で第1端側の接合部の周面の加工を行い易くすることができるという効果がある。
【0019】
また、第2端側加工手段は、第2端側における接合部の周面の加工の少なくとも一部を、第1端側加工手段による加工の後に行う。このため、第1端側加工手段による加工の際には第2端側加工手段による切削加工が行われていない部分(以下、第2端側未加工部分ともいう)が柱状の材料に残されている。よって、保持手段によって保持される柱状の材料を保持する位置の自由度を高めることができる。従って、例えば、第2端側未加工部分を保持手段によって柱状の材料を保持する部位の一部として利用することができるという効果がある。
【0020】
また、第1端側加工手段による加工の位置に対して第2端側における接合部の周面が位置するより遠く離れた部位において保持手段により材料が保持される状況であっても、第2端側未加工部分が設けられることによって一定以上の強度と剛性を柱状の材料に持たせることができる。このため、保持手段によって材料を保持する位置の自由度を高めつつ第1端側加工手段による加工として一定以上の精度による加工を短時間で行い易く、加工の際の破損も生じ難くすることができるという効果がある。
【0021】
請求項2に記載の木材加工装置によれば、請求項1に記載の木材加工装置の奏する効果に加え、第1端側加工手段は、第2端側加工手段と比べて回転中心軸から近い位置に設置された刃部によって構成されている。このため、回転トルクに対して刃部に生じる切削力を高く設定しつつ、切削による刃部の位置ずれを低く抑えて高精度の加工を行うことができ、且つ、接合部の周面を加工する場合における移動距離も短くして短時間で高精度の加工を実現し易くすることができる。そして、この加工の速さの設定は、必要な大きさ分の第2端側未加工部分を設けることで実現でき、例えば、第2端側未加工部分を多く設定することで、第1端側加工手段の加工を一定以上の精度で短時間に行う設定を可能とすることができるという効果がある。
【0022】
請求項3に記載の木材加工装置によれば、請求項1又は2に記載の木材加工装置の奏する効果に加え、第1端側加工手段による第1端側に対して接合部の周面を形成する切削加工が行われる前と、その切削加工が行われた後とに分けて、第2端側加工手段によって第2端側に相当する位置に接合部の周面が形成される加工が行われる。このため、第2端側における接合部の形成については、第2端側加工手段の仕様に応じた加工のし易い設定を採用し易くすることができるという効果がある。
【0023】
請求項4に記載の木材加工装置によれば、請求項3に記載の木材加工装置の奏する効果に加え、第1端側加工手段による切削加工が行われる前に、柱状の材料における長手方向に交差する方向側であって第2端側加工手段が配置し易い一面側(例えば、下面側)に対して、複数の接合用部材における第2端側に相当する複数箇所の加工をまとめて行うことができる。そして、回転手段による回転の後には、接合用部材における第2端側未加工部分の加工を、第2端側加工手段が配置し易い一面側から再び実行することができる。よって、第2端側加工手段の移動範囲を少なく設定しつつ、複数の接合用部材における第2端側の加工を効率良く行うことができるという効果がある。
【0024】
請求項5に記載の木材加工装置によれば、請求項4に記載の木材加工装置の奏する効果に加え、柱状の材料から複数の接合用部材を製造する場合に、先に製造される一部の接合用部材とは別の接合用部材の接合部における別の部分(第2端側未加工部分)が残された状態の柱状の材料を第2切断手段により切断して、接合用部材の第2端側に端面が形成される。このため、第2切断手段による第2端側の端面の切断加工においても、一定以上の強度と剛性を柱状の材料に持たせて加工することができ、保持手段による材料の保持位置の自由度を高めつつ、第2切断手段による加工を短時間で精度良く行い易く、加工の際の破損も生じ難くすることができるという効果がある。
【0025】
請求項6に記載の木材加工装置の制御装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の木材加工装置と同様の効果を奏する木材加工装置の制御装置を提供することができるという効果がある。
【0026】
請求項7に記載の木材加工プログラムによれば、請求項1から5のいずれかに記載の木材加工装置と同様の効果を奏する木材加工装置の動作を制御する制御装置の演算処理を実行させて柱状の材料から接合用部材を形成する木材加工プログラムを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る木材加工装置1の構成の一例を模式的に示すブロック図であり、
図2は、材料木材9から製造される第1接合用部材10及び第2接合用部材20の一例を示す斜視図である。
【0029】
木材加工装置1は、
図1に示すように、柱状の材料としての材料木材9を加工する木材加工機2と、駆動制御機器3と、加工情報処理機器4とを備えている。木材加工装置1は、木造住宅の平面図や立面図等をCADにより製図することで生成される加工データを利用して木材の機械加工を行うための装置である。また、木材加工装置1は、木造住宅に使用される柱や梁、羽柄材などの木材(建築材)を加工する木材プレカット加工装置の一部として使用可能な装置であり、
図1に模式的に示す構成以外に他の工具や装置を備えていてもよいし、他の工具や多関節ロボットを備えた木材加工装置と組み合わせて木材プレカット加工装置を構成してもよいし、単独の加工装置として木材加工に用いてもよい。
【0030】
木材加工機2は、モータ等の電気制御や油圧、空圧等の流体が通過する電磁弁の制御等によって動作し、この動作制御は、駆動制御機器3によって行われる。駆動制御機器3は、木材加工機2の動作を制御するための機器である。
【0031】
駆動制御機器3は、各種の演算を行う演算処理装置と、各種のプログラムや駆動制御の情報を記憶したり、プログラムの実行に必要な情報を記憶したりする記憶装置と、外部機器、例えば、木材加工機2や加工情報処理機器4とのデータ転送を行う入出力装置と、作業者が木材の加工順序などを入力操作可能なマウスやキーボードなどの操作装置と、木材の加工順序や加工結果等の情報を表示する表示装置とを備えた機器によって構成されている。木材の加工データは、入出力装置の一部(例えば、記憶媒体としてのCD−ROMのデータを読み出し可能なドライブ装置)によって駆動制御機器3に入力され、入力された木材の加工データに基づいて木材加工機2の搬送部31や切断部33等の動作が制御される。
【0032】
駆動制御機器3の記憶装置には、木材加工機2の各部の動作を制御する駆動情報や、木材加工機2によって材料木材9を加工するためのプログラムが記憶されている。後述する接合用部材加工処理のプログラムは、駆動制御機器3の記憶装置に記憶されている。
【0033】
加工情報処理機器4は、木造住宅を設計して生成された木材の加工データを駆動制御機器3に入力するための機器であり、例えば、記憶媒体としてのCD−ROMによって構成される。加工情報処理機器4には、木造住宅に必要となる柱や梁、束等の建築材の形状や個数等に関する加工情報が記憶されており、それらの加工情報の全部又は一部が、適宜に、駆動制御機器3から読み出される。駆動制御機器3は、その加工情報に基づいて、木材加工機2を駆動して材料木材9を1本ずつ加工し、接合用部材10,20を含む建築材を製造する。
【0034】
なお、加工情報処理機器4は、単に情報を記憶する記憶装置によって構成してもよいし、パーソナルコンピュータなどの演算処理装置を有するものにより構成してもよい。また、加工情報処理機器4と、駆動制御機器3とは、有線の通信ケーブルによって直接的に接続しても、他の通信機器を介して間接的に接続してもよいし、無線通信によって接続してもよい。また、駆動制御機器3と加工情報処理機器4とを一体的な装置(例えば、パーソナルコンピュータ)によって構成してもよく、また、駆動制御機器3は、木材加工機2とは別の木材加工機を含む複数の木材加工機の動作を制御するように構成してもよい。
【0035】
ここで、木材加工装置1によって加工される材料木材9と、材料木材9から製造される複数の接合用部材10,20について説明する。材料木材9は、
図2に示すように、前端面9F及び後端面9Bの一辺の長さがTAの略正方形の断面を有し、長手方向の長さがLAの木材である。この1本の材料木材9から、第1接合用部材10と、第2接合用部材20とを含む複数の接合用部材が製造される。なお、材料木材9は、必ずしも略正方形の断面を有する形状とする必要はなく、長方形状や六角形状などの別の断面形状を有するように形成してもよい。
【0036】
第1接合用部材10は、他の木材と接合される接合部としての「ほぞ」が両端側に形成された部材である。第1接合用部材10は、柱部分としての本体部11と、本体部11に対して柱の連続する方向に沿った両端側に設けられて本体部11より断面積が小さく形成された凸部によって構成される接合部12,13とを備えている。接合部12,13としては、第1接合用部材10の一端側である第1端側としての本体部11の前端側に形成された前端側接合部12と、本体部11の他端側である第2端側としての後端側に形成された後端側接合部13とを有している。
【0037】
ここで、理解の容易のために、材料木材9から先に製造される第1接合用部材10が位置する側を前側、第1接合用部材10に対して第2接合用部材20が位置する側を後側として説明する。また、材料木材9が搬送される搬送方向に対しては、材料木材9の前側(第1接合用部材10の前端側接合部12が位置する側)が上流側、材料木材9の後側が下流側となるようにして材料木材9を加工する場合について説明するが、材料木材9を加工する位置を逆にし、搬入方向の下流側を材料木材9の前側に設定して、接合用部材10,20を製造してもよい。
【0038】
本体部11は、柱部分を構成する本体部11の長さLBが材料木材9の長さLAよりも短く、柱部分の断面形状が材料木材9の断面形状と一致するように一辺の長さTAの正方形状に形成されている。なお、本体部11としての柱部分の断面形状は、必ずしも材料木材9の断面形状と一致させる必要はなく、切削加工によって材料木材9よりも短い一辺の長さを有する長方形状の断面としたり、六角形状などの別の断面形状とするなど、他の形状に形成してもよい。また、本体部11の長さLBとして、長手方向に沿った両側に接合部12,13が形成される構成に限らず、本体部11の長さLBが短く、本体部11の短手方向に沿った両側に接合部が形成されるように構成してもよい。
【0039】
前端側接合部12は、前側に突出する端側の端面(前端面12F)における一辺の長さTB,TCが本体部11における一辺の長さTAよりも短い長方形状に形成され、柱の連続する方向の長さがLCである直方体形状に形成されている。また、前端側接合部12は、本体部11の前側の端面(前端面11F)から前側に突出し、また、本体部11の連続する方向の中心軸(材料木材9の長手方向の中心軸)と同一直線上に中心軸が位置するように形成されている。後端側接合部13は、前端側接合部12と同一形状であり、本体部11の後端面11Bから後側に突出し、本体部11の連続する方向の中心軸と同一直線上に中心軸が位置するように形成されている。
【0040】
なお、前端側接合部12と後端側接合部13とは、必ずしも同一形状とする必要はなく、異なる形状としてもよい。また、前端側接合部12と後端側接合部13は、直方体状に限らず、他の形状としてもよく、例えば、八角形状の断面を有する角柱状としてもよい。また、前端側接合部12と後端側接合部13は、本体部11の中心軸と同一直線上に中心軸が位置するように形成する必要はなく、中心軸がずれた位置から突出する形状としてもよいし、長さLCの範囲内で断面形状が変化するようにしてもよい。
【0041】
第2接合用部材20は、第1接合用部材10と同一の形状に形成されている。なお、第1接合用部材10と第2接合用部材20は、他の木材と接合される接合部としての凸部が本体部11の両端側に設けられた接合用部材であればよく、接合用部材10,20の本体部11,21の長さや接合部12,13,22,23の形状など、少なくとも一部が異なる形状としてもよく、1つの材料木材9から製造される接合用部材の数も2つに限らず、3以上の接合用部材を製造するようにしてもよい。
【0042】
木材加工機2は、
図1に示すように、材料木材9をその長手方向に沿って適宜に移動させる搬送部31と、材料木材9を一定位置に保持する保持手段としての上流側保持部32と、材料木材9をその長手方向に交差する平面状に切断する第1切断手段及び第2切断手段としての切断部33と、材料木材9の長手方向に沿って連続する周面に対して切削加工を行う第1端側加工手段としての上流側切削部34と、材料木材9に対して周面の一部に溝状の切削加工を行う第2端側加工手段としての下流側切削部35と、材料木材9をその長手方向を中心にして回転させる回転手段としての回転部36と、切断部33に対して上流側保持部32とは反対側(下流側)において、上流側保持部32と同様に材料木材9を一定位置に保持する保持手段としての下流側保持部37とを備えている。
【0043】
搬送部31は、木材加工機2によって加工可能な加工位置に材料木材9を搬送(移送)する装置である。搬送部31は、多数の回転体によって構成される搬送台や、搬送台上に載置された材料木材9を把持するクランプ、材料木材9を前後方向(
図1における左右方向)に移動させる回転ローラやモータ(図示せず)を備え、切断部33、上流側切削部34、及び、下流側切削部35によって加工すべき箇所に材料木材9が位置するように搬送した状態にして接合用部材10,20を製造(形成)するために使用される。
【0044】
上流側保持部32は、切断部33、上流側切削部34及び下流側切削部35によって木材を加工する際に、搬送部31によって加工可能な位置に搬送された材料木材9を把持して一定位置に保持し、加工時の位置ずれや振動等の発生を抑制する。下流側保持部37は、上流側保持部32と同様の構成とされ、上流側保持部32に対して搬送部31の搬送方向に沿った下流側に設けられ、材料木材9の先端側(第1接合用部材10の前端面12Fが位置する側)に対して切断や切削を行う場合に用いられる。なお、必ずしも切断部33、上流側切削部34及び下流側切削部35に対して上流側と下流側との両側に保持部32,37を設ける必要はなく、保持部を片側のみに設けてもよいし、または、切断部33と上流側切削部34との間にも保持部を設けるなど、3つ以上の保持部を設けてもよい。
【0045】
切断部33は、材料木材9を長手方向に交差する平面状に切断する切削工具33Aと、切削工具33Aを回転させる駆動装置(図示せず)と、切削工具33Aを移動させる移動機構(図示せず)とを備えた装置によって構成されている。切削工具33Aは、材料木材9の切断を可能とするために十分な長さとして半径の長さがR3に設定された円盤状の工具であり、その外周部分には鋸状の刃部が設けられている。この切削工具33Aを回転させつつ移動させることにより、材料木材9が切断される。
【0046】
切断部33は、第1接合用部材10(前端側接合部12)の前端面12Fと、第2接合用部材20(前端側接合部22)の前端面22Fとを形成するために用いられる。また、切断部33は、第1接合用部材10(後端側接合部13)の後端面13Bと、第2接合用部材20(後端側接合部23)の後端面23Bを形成するために用いられる。
【0047】
なお、詳細は後述するが、材料木材9から第1接合用部材10と第2接合用部材20とを切り出す位置として、第1接合用部材10(後端側接合部13)の後端面13Bと、第2接合用部材20(前端側接合部22)の前端面22Fとを、切断部33による1回の切断加工によって同時に形成してもよく、この場合には、製造時間の短縮や端材の削減を実現できる。
【0048】
また、各接合用部材10,20の両端面を1つの切断部33によって形成する構成に限らず、切断部33とは異なる他の切断部を1つ以上備える構成であってもよい。また、切断部33は、材料木材9を、その長手方向に交差する形状に切断できればよく、他の形状に切断する構成を用いることができる。例えば、長手方向と垂直に交わる垂直面を形成するように切断する構成に限らず、長手方向と垂直以外の角度で交わる傾斜面を形成するように切断して前端面12F,22F及び後端面13B,23Bの少なくともいずれかを形成する構成であってもよい。更に、切断部33は、長手方向と所定の角度のみで交差する平面を形成できる構成に限らず、長手方向と交差する角度を1つでなく複数有する形状とするようにしてもよく、例えば、接合用部材の端面を、屈曲して連続する複数の平面によって形成してもよいし、曲面を含むように形成してもよい。
【0049】
上流側切削部34は、回転する刃部を木材に接触させつつ移動させることで平面状の部位を形成可能な切削加工を行う装置であり、回転中心軸から距離R4の位置に刃部が設けられた切削工具34Aと、切削工具34Aを回転させる駆動装置(図示せず)と、切削工具34Aを移動させる移動機構(図示せず)とを備えている。この上流側切削部34は、切断部33及び下流側切削部35の刃部より材料木材9の長手方向において加工可能な範囲が大きく、また、切断部33及び下流側切削部35よりも回転中心から刃部までの距離が短く設定され、刃部の位置ずれが少なく、高速に且つ高精度で広範囲の平面を形成する切削加工が可能に構成されている。
【0050】
上流側切削部34の切削工具34Aは、材料木材9の長手方向に沿った端側から、前端側接合部12,22を切削加工可能な大きさに構成され、回転動作によって略円柱状の外周部分の範囲内に入った木材を加工する。また、切削工具34Aは、下流側切削部35の切削工具35Aよりも、材料木材9の長手方向に沿った長さが長く形成され、下流側切削部35よりも長い部分(すなわち広い範囲)の切削加工が可能に構成されている。
【0051】
また、上流側切削部34の移動機構によって、切削工具34Aは、その回転中心軸が材料木材9の長手方向に沿って連続する周面(材料木材9の長手方向に沿った両側の端面9F,9Bを除く全側面であり、側面9m、側面9n、側面9M及び側面9Nの四面で構成される外周面)の外側を、切削工具34Aの回転中心軸が移動可能に移動可能範囲が設定されている(
図6(c)参照)。また、切削工具34Aは、回転中心軸の軸方向に所定の範囲に亘って移動可能に移動可能範囲が設定され、前端側接合部12,22の長さLCが異なる場合にも加工がし易く構成されている。
【0052】
なお、切削工具34Aにおいて、刃部を、円柱状の周面だけでなく、回転軸方向に沿った方向を向く外面にも形成してもよく、直径の異なる円柱形状を連続させた段付き形状の外面によって刃部を形成し、例えば、接合用部材10の接合部12の周面と前端面12Fとを同時に形成可能としてもよい。また、上流側切削部34の移動機構は、必ずしも材料木材9の外周面の外側を、切削工具34Aの回転中心軸が移動可能に構成する必要はなく、その外周面のうちの一部(例えば、二面のみ)を加工可能であって、回転部36の回転によって残り部分を加工可能に移動可能範囲が設定される構成としてもよい。
【0053】
下流側切削部35は、上流側切削部34と同様に、回転する刃部を木材に接触させつつ移動させることで平面状の部位を形成可能な切削加工を行う装置であり、上流側切削部34とは、回転中心軸から刃部までの距離が異なる構成とされている。具体的には、下流側切削部35は、切削工具35Aと、切削工具35Aを回転させる駆動装置(図示せず)と、切削工具35Aを移動させる移動機構(図示せず)とを備えている。また、下流側切削部35は、回転中心軸から刃部までの距離R5が上流側切削部34における距離R4より長く設定され、材料木材9の長手方向に交差する方向側から溝状の加工をする場合などにおいて、上流側切削部34よりも加工可能な形状の自由度が高いものとなっている。この上流側切削部34と下流側切削部35とを使い分けることで、効率良く、材料木材9から多種の形状をした接合用部材を含む建築材を製造することができる。
【0054】
下流側切削部35の切削工具35Aは、材料木材9の外周面の外側から後端側接合部13,23の周面(後端面13B,23Bを除く外周面)を形成可能な大きさに構成され、回転動作によって略円柱状の外周部分の範囲内に入った木材を加工することができる。また、切削工具35Aは、上流側切削部34の切削工具34Aよりも、材料木材9の長手方向に沿った長さが短く形成され、上流側切削部34では加工不能な短い長さの溝などを形成可能な構成とされている。
【0055】
また、下流側切削部35の移動機構によって、切削工具35Aは、材料木材9の長手方向に沿った外周面のうち一部の面のみに対して外側から切削加工が可能に、移動可能範囲が設定されている。具体的には、切削工具35Aは、上流側切削部34の切削工具34Aと比べて外形が大きい分、材料木材9に対する加工において回転中心軸を材料木材9から離間させる必要があり、材料木材9の周面のうち隣接する一部の側面(例えば、側面9m及び側面9nの組合せや、側面9M及び側面9Nの組合せ)に対しての切削加工が可能に移動可能範囲が設定されている(
図6(a)及び
図6(d)参照)。
【0056】
ここで、上流側切削部34の切削工具34Aは、その回転中心軸から刃部が設けられる箇所までの距離R4を切削工具35Aにおける距離R5よりも短くなるように構成しているので、上流側切削部34の切削工具34Aによって切削する場合において、材料木材9の切削による抵抗力によって生じる位置ずれを、下流側切削部35の切削工具35Aによる切削の場合よりも小さくすることが可能となる。また、材料木材9の外周面のうち複数の方向側を向く面(例えば、一方側の側面と下面)を切削するために必要な移動距離についても、上流側切削部34の切削工具34Aの方が下流側切削部35の切削工具35Aによる場合よりも短くすることが可能となる。即ち、上流側切削部34の切削工具34Aによって切削する場合に、材料木材9を高精度で短時間に加工することが可能となる。
【0057】
なお、上流側切削部34の切削工具34Aと下流側切削部35の切削工具35Aとは、互いに独立して動作する構成であってもよいし、それらが一体化されて動作する構成であってもよい。例えば、共通の回転軸上に2つの切削工具34A,35Aが並んで設けられて、共通の駆動装置によって回転し、共通の移動機構によって移動動作するものであってもよいし、または、材料木材9の長手方向に沿った移動と材料木材9の長手方向に交差する方向への移動との少なくとも一方のみが独立して動作する構成であってもよい。また、必ずしも上流側切削部34と下流側切削部35との2つの切削部を設ける必要はなく、例えば、下流側切削部35のみとするなど、1つの切削部を有して1種類の切削工具によって切削加工する構成としてもよいし、3つ以上の切削部を有して3種類以上の切削工具によって切削加工をする構成としてもよい。また、下流側切削部35は、材料木材9の周面の一部のみを切削可能とする構成に必ずしもする必要はなく、材料木材9の周面の全周にわたって移動可能とし、材料木材9の周面の全てに対して切削加工が可能な構成としてもよい。
【0058】
回転部36は、材料木材9を、その長手方向を中心にして90度の角度で回転可能な構成とされており、回転回数を複数回とすることで、材料木材9の長手方向に交差する方向側を向く各側面9m,9n,9M,9Nが特定の方向に向くように配置することができる。例えば、材料木材9を反転させる場合には、90度の回転を2回行えばよい。
【0059】
なお、回転部36は、材料木材9を予め設定した角度で回転できるものであればよく、1回の動作で180度回転させる構成であってもよいし、断面が八角形や六角形の柱などにおいて、1回の動作で45度や60度で回転させる構成であってもよく、複数種類の回転角度(例えば、45度と60度と90度)の中から切削加工に適した角度を選択して回転可能に構成してもよい。また、木材加工機2に必ずしも回転部36を設ける必要はなく、切削部34,35の移動可能な範囲と、製造する接合用部材10,20の接合部12,13,22,23の形状及び形成位置の設定によっては、その製造過程で材料木材9を回転させなくてもよい構成とすることもできる。例えば、下流側切削部35を、材料木材9の外周面のすべてに対して切削加工が可能な範囲で移動可能に構成し、製造過程で材料木材9を回転させなくても外周面の全てに対しての加工を行うことができるようにしてもよい。
【0060】
次に、接合用部材10,20の製造工程について、
図3から
図6を参照しながら説明する。
図3は、材料木材9を加工して接合用部材10,20が形成される位置を説明するための図であり、
図3(a)は、材料木材9の上面図であり、
図3(b)は、材料木材9の正面図である。また、
図4は、接合用部材10,20を製造するための接合用部材加工処理を示すフローチャートであり、
図5は、材料木材9から接合用部材10,20が製造される過程を工程別に示した正面図である。
【0061】
ここで、
図5(a)〜
図5(j)の各図においては、材料木材9の搬送方向の上流側を右側、下流側を左側として、搬送方向に交差する側方側から観た状態を示している。また、
図5(a)には、部分切削工程S2による加工後の状態を示し、
図5(b)には、部分切削工程S3による加工後の状態を示し、
図5(c)には、反転工程S4の後の状態を示し、
図5(d)には、切断工程S5による加工後の状態を示している。また、
図5(e)には、形成工程S6による加工後の状態を示し、
図5(f)には、残部切削工程S7による加工後の状態を示し、
図5(g)には、分離工程S8による加工後の状態を示している。また、
図5(h)には、形成工程S9による加工後の状態を示し、
図5(i)には、残部切削工程S10による加工後の状態を示し、
図5(j)には、分離工程S11による加工後の状態を示している。
【0062】
図6は、第1接合用部材10の接合部12,13の製造過程を示す断面図であり、
図6(a)〜
図6(d)の各図には、
図3のA−A切断線及びB−B切断線によって第1接合用部材10の接合部12,13を切断した断面形状であって各工程における加工後の形状を示している。また、
図6(a)には、部分切削工程S3による加工後の形状を示し、切削工具35Aの移動経路を併せて示している。同様に、
図6(b)には、反転工程S4による反転後の断面形状と、材料木材9の回転方向とを示し、
図6(c)には、形成工程S6による加工後の形状と、切削工具34Aの移動経路を示し、
図6(d)には、残部切削工程S7による加工後の形状と、切削工具35Aの移動経路とを示している。
【0063】
なお、
図6には、第1接合用部材10の接合部12,13についてのみ図示し、第2接合用部材20の接合部22,23については、第1接合用部材10に対する切削加工と加工後の形状が同一であるために図示を省略し、接合用部材加工処理における工程の番号のみを括弧書きで示している。
【0064】
材料木材9を加工して接合用部材10,20が製造される工程は、駆動制御機器3によって木材加工機2の動作が制御されることにより行われ、この制御は、駆動制御機器3に記憶されるプログラムの一部としての接合用部材加工処理に従って行われる。また、接合用部材加工処理によって、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、実線で示した材料木材9から、一点鎖線で示した形状の接合用部材10,20が製造される。
【0065】
ここで、接合用部材10,20の製造時においては、切断部33、上流側切削部34及び下流側切削部35による材料木材9に対しての各加工の前や、回転部36による材料木材9の回転の前等において、搬送部31によって材料木材9が搬送される処理(工程)が含まれるが、一般的な処理を適用できるものであり、その説明は省略する。また、上流側保持部32及び下流側保持部37のいずれか又は両方によって材料木材9が保持されて、各工程における加工が可能な位置にて固定される処理(工程)や、接合用部材10,20や切削後に発生する端材を搬送部31から取り出す処理(工程)などの処理についても一部の説明を省略する。
【0066】
また、以下の説明においては、材料木材9の外周面(4つの側面9m,9n,9M,9N)のうち、投入時と、接合用部材10,20の完成時とにおいて搬送部31の台上に載置された状態で、鉛直方向の上側を向く面を側面9N、下側を向く面を側面9nとし、材料木材9が搬送される方向の上流側を右側、下流側を左側として観て手前側を向く面を側面9mとして説明する。
【0067】
接合用部材加工処理においては、
図4に示すように、まず、材料木材の反転工程S1の処理が行われる。具体的には、木材加工装置1に投入された材料木材9は、その長手方向の中心軸周りに回転部36によって回転させられる。この回転としては、90度の回転を2度実行し、搬送部31に支持される下側の面が側面9nから側面9Nとなり、また、手前側を向く面が側面9mから側面9Mとなるように反転させる。これによって、材料木材9は、投入時と比べて、長手方向を中心に材料木材9が逆転して裏返しにした状態(
図5(a)の状態)となり、材料木材9の外周面の一部(側面9M,9N)に対しての下流側切削部35による切削加工が可能となる。
【0068】
材料木材の反転工程S1の処理の後には、
図4に示すように、第2接合用部材20の後端側接合部23を形成するための部分切削工程S2の処理が行われる。部分切削工程S2においては、第2接合用部材20の後端側接合部23の形成予定位置に対して下流側切削部35による加工が可能な位置に、下流側保持部37によって材料木材9が固定され、その固定された状態で、下流側切削部35によって、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、側面9Mに対する溝状の切削と、側面9Nに対する溝状の切削とが行われる。これによって、後端側接合部23の一側面をなす側面23Mとその一側面に連続する側面23Nとが形成される。また、これによって、本体部21の後端面21Bの一部分21B’が形成される。
【0069】
部分切削工程S2の処理の後には、第1接合用部材10の後端側接合部13を形成するための部分切削工程S3の処理が行われ、部分切削工程S2と同様の加工が行われる。具体的には、第1接合用部材10の後端側接合部13の形成予定位置に対して下流側切削部35による加工が可能な位置に、下流側保持部37によって材料木材9が固定され、その固定された状態で、下流側切削部35によって、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、側面9Mに対する溝状の切削と、側面9Nに対する溝状の切削とが行われる。これによって、後端側接合部13の一側面をなす側面13Mとその一側面に連続する側面13Nとが形成される。また、これによって、本体部11の後端面11Bの一部分11B’が形成される。
【0070】
なお、各接合用部材10,20の後端側接合部13,23を部分的に形成する際に、材料木材9の前端側の端部が上流側保持部32まで達している場合には、上流側保持部32と下流側保持部37との双方で材料木材9を固定してもよい。また、部分切削工程S2,S3は、順序を逆にしてもよい。
【0071】
部分切削工程S3の処理の後には、材料木材9を回転部36によって回転させる材料木材の反転工程S4の処理が行われる。具体的には、
図5(c)及び
図6(b)に示すように、材料木材9をその長手方向の中心軸周りに、90度の回転を2度実行し、搬送部31に支持される下側の面が側面9Nから側面9nとなり、また、手前側を向く面が側面9Mから側面9mとなるように反転させる。これによって、下流側切削部35によって、側面9m側の切削と側面9n側の切削とが可能になり、反転工程S4の前と後の加工によって材料木材9の長手方向に連続する全ての周面に対しての切削が可能となる。
【0072】
また、反転工程S1によって裏返しの状態となった材料木材9は、再び反転工程S4によって反転させることで投入時と同じ向きに材料木材9が配置される。このため、上流側切削部34による加工は、投入時と同一の向きで切削加工を行うことができる。よって、材料木材9を裏返しにする反転工程S1の必要がない木材(例えば、柱材)の加工と同じ向きで前端側接合部12,22の加工を行うことができ、接合部の加工等のプログラムの共通化を図り易くすることができる。
【0073】
また、材料木材9の外周面の中から基準面(例えば、投入時における上向きの側面9N)を予め設定した場合でも、2回の反転工程S1,S4によって投入時と同一の向きにして接合用部材10,20の加工を進めることができる。このため、接合用部材10,20の加工を進める上での基準面の向きは、他の柱材などと一致させ易くすることができる。従って、接合用部材10,20や他の柱材に印字を行う場合に、上側を向く基準面に印字をし易くしたり、反りを考慮して材料木材9を投入した場合における加工の際の基準面の向きを接合用部材10,20と他の柱材等とにおいて一致させ易くして加工の精度を高め易くすることができる。
【0074】
反転工程S4の処理の後には、第1接合用部材10の前端側に対しての切断工程S5の処理が行われる。具体的には、
図5(d)に示すように、材料木材9の前端側の端部に対して中心軸方向の幅が「LD」となる部分を切断して除去する。これによって、第1接合用部材10の前端側接合部12の前端面12Fが形成される。なお、材料木材9の前端面9Fが前端側接合部12の前端面12Fと平行に予め面出ししておき、前端側接合部12の前端面12Fと、材料木材9の前端面9Fとが一致するようにしてもよく、この場合には、切断工程S5を省略することができる。
【0075】
切断工程S5の処理の後には、第1接合用部材10の前端側接合部12の形成工程S6の処理が行われる。具体的には、第1接合用部材10の前端側接合部12の形成予定位置に対して上流側切削部34による加工が可能な位置に、下流側保持部37によって材料木材9を固定した状態で、上流側切削部34によって、
図5(e)及び
図6(c)に示すように、第1接合用部材10の前端面12Fの側(材料木材9の前端面9Fの側)から側面9m、側面9n、側面9M及び側面9Nに沿って周回するように、切削加工が行われる。この形成工程S6によって、前端側接合部12の周面の全体をなす側面12m、側面12n、側面12M及び側面12Nが順に形成される。また、形成工程S6によって、本体部11の前端面11Fが形成される。
【0076】
ここで、形成工程S6においては、材料木材9の前端面9Fの側から、材料木材9の各側面9m,9n,9M,9Nに対して順に上流側切削部34の切削工具34Aの先端部分(刃部)を当接させて切削加工が行われる。この切削工具34Aの刃部は、材料木材9の各面に沿って直線的な移動をし、その後に、進行方向を変化させて周回するように移動させる。この周回による切削において、上流側切削部34の刃部の幅が前端側接合部12の長さLCより短ければ、材料木材9の長手方向に沿った移動を加えた加工を行い、長さLCとなるまで、周回による切削を繰り返す。
【0077】
また、形成工程S6における上流側切削部34による切削は、下流側保持部37による固定箇所から最も離れた位置での加工となるが、この加工箇所よりも固定箇所側に対して先に行われた各接合用部材10,20の後端側接合部13,23用の切削において、後端側接合部13,23の一部の側面13m,13n,23m,23nに対する切削を行わないことによって、固定箇所から加工箇所までの材料木材9の強度と剛性の低下を抑制している。このため、加工精度を大幅に落とすことなく一定以上の高速の加工によって、前端側接合部12を形成することができる。更に、上流側切削部34の切削工具34Aは、回転中心軸から刃部が設けられる箇所までの距離R4を、下流側切削部35の切削工具35Aにおける距離R5よりも短い構成としているために、前端側接合部12を形成する際に、切削工具34Aを支持する部位の位置ずれを、下流側切削部35によって切削する場合よりも小さくでき、高速の切削加工においても加工精度を高く維持することができる。
【0078】
形成工程S6の処理の後には、第1接合用部材10の後端側接合部13のための残部切削工程S7の処理が行われる。具体的には、部分切削工程S3と同様に、第1接合用部材10の後端側接合部13の形成予定位置に対して下流側切削部35による加工が可能な位置に、下流側保持部37によって材料木材9を固定した状態で、下流側切削部35によって、
図5(f)及び
図6(d)に示すように、側面9mに対する溝状の切削と、側面9nに対する溝状の切削とが行われる。これによって、後端側接合部13の一側面をなす側面13mとその一側面に連続する側面13nとが形成される。また、これによって、本体部11の後端面11Bの残部が形成されて、その後端面11Bの全体が形成される。
【0079】
残部切削工程S7の処理の後には、第1接合用部材10の分離工程S8の処理が行われる。具体的には、
図5(g)に示すように、第1接合用部材10の後端側接合部13の後端面13B側の切断予定位置に対して切断部33による加工が可能な位置に、上流側保持部32によって材料木材9を固定した状態で、後端側接合部13の後端側の端部に対して中心軸方向の幅が「LE」となるように切断する加工を行う。これによって、第1接合用部材10が材料木材9から分離され、第1接合用部材10の後端側接合部13の後端面13Bが形成された状態となって第1接合用部材10の製造が完了する。なお、分離工程S8によって、材料木材9から分離された後の第1接合用部材10に対して他の加工を行うことで第1接合用部材10の製造が完了するようにしてもよく、例えば、後端側接合部13の後端面13Bの角部分に面取り加工を施すことで第1接合用部材10の製造が完了するようにしてもよい。
【0080】
ここで、後端側接合部13の後端面13Bと第2接合用部材20の前端側接合部22の前端面22Fとの間隔は、切断部33による切削シロと同一となるように設計され、後端側接合部13の後端面13Bの形成と共に、前端側接合部22の前端面22Fも形成される。なお、必ずしも後端側接合部13の後端面13Bの形成と共に、前端側接合部22の前端面22Fも形成されるようにする必要はなく、中心軸方向の幅としての「LE」の長さを切断部33による切削シロよりも長く設定し、前端側接合部22の前端面22Fは、その後の別の切断加工によって先端側の一部分を切除して形成するようにしてもよい。
【0081】
分離工程S8の処理の後には、第2接合用部材20の前端側接合部22の形成工程S9の処理が行われる。形成工程S9は、
図5(h)及び
図6(c)に示すように、第1接合用部材10の前端側接合部12の形成工程S6と同様の加工が行われ、上流側切削部34による切削によって、前端側接合部22の周面の全体をなす側面22m、側面22n、側面22M及び側面22Nが順に形成される。また、この形成工程S9によって、本体部21の前端面21Fが形成される。
【0082】
形成工程S9の処理の後には、第2接合用部材20の後端側接合部23の残部切削工程S10の処理が行われる。残部切削工程S10は、
図5(i)及び
図6(d)に示すように、第1接合用部材10の後端側接合部13用の残部切削工程S7と同様の加工が行われ、下流側切削部35による切削によって、後端側接合部23の一側面をなす側面23mと、その一側面に連続する側面23nとが形成される。また、この残部切削工程S10によって、本体部21の後端面21Bの残部が形成されて、その後端面21Bの全体が形成される。
【0083】
残部切削工程S10の処理の後には、第2接合用部材20の分離工程S11の処理が行われる。分離工程S11は、
図5(j)に示すように、第1接合用部材10の分離工程S8と同様の加工が行われ、切断部33による切断によって、材料木材9から第2接合用部材20を分離して、第2接合用部材20の製造が完了する。なお、分離工程S11によって、材料木材9から分離された後の第2接合用部材20に対して他の加工を行うことで第2接合用部材20の製造が完了するようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、接合用部材加工処理による加工を行う木材加工装置1によれば、切断工程S5(又は分離工程S8)において切断部33が材料木材9を平面状に切断した先端側(第1端側)に対して、形成工程S6(又は形成工程S9)において上流側切削部34が切削加工を行って前端側接合部12(又は前端側接合部22)を形成する。このため、材料木材9の前端側接合部12を形成する側には広い作業空間を生じさせることができる。よって、この作業空間が広い状況を利用して上流側切削部34により短時間に高精度で前端側接合部12の周面の加工を行うことができる。
【0085】
また、下流側切削部35は、後端側接合部13(又は後端側接合部23)の周面の加工の少なくとも一部を、上流側切削部34が前端側接合部12(又は前端側接合部22)を形成する形成工程S6(又は形成工程S9)による加工の後に行う。このため、上流側切削部34によって前端側接合部12(又は前端側接合部22)を形成する加工の際には、下流側切削部35による後端側接合部13(又は、後端側接合部23)の切削加工が行われていない未加工部分が材料木材9に残されている。よって、下流側保持部37によって保持される材料木材9を保持する位置の自由度を高めることができる。例えば、後端側接合部13の未加工部分を下流側保持部37によって材料木材9を保持する部位の一部として利用することができる。
【0086】
また、形成工程S6において上流側切削部34による加工の位置に対して後端側接合部13の周面が位置するより遠く離れた部位において下流側保持部37により材料木材9が保持される状況であっても、後端側接合部13の未加工部分が設けられることによって一定以上の高い強度と剛性を材料木材9に持たせることができる。このため、下流側保持部37によって材料木材9を保持する位置の自由度を高めつつ上流側切削部34による加工として一定以上の精度による加工を短時間で行い易く、加工の際の破損も生じ難くすることができる。
【0087】
また、上流側切削部34(切削工具34A)は、下流側切削部35(切削工具35A)と比べて回転中心軸から近い位置に設置された刃部によって構成されている。このため、回転トルクに対して刃部に生じる切削力を高く設定しつつ、切削による刃部の位置ずれを低く抑えて高精度の加工を行うことができ、且つ、前端側接合部12,22の周面を加工する場合における移動距離も短くして短時間で高精度の加工を実現し易くすることができる。そして、この加工の速さの設定は、必要な大きさ分の後端側接合部13,23の未加工部分を設けることで実現でき、例えば、後端側接合部13,23の未加工部分を多く設定することで、上流側切削部34の加工を一定以上の精度で短時間に行う設定を可能とすることができる。
【0088】
また、上流側切削部34による前端側接合部12(又は前端側接合部22)の周面を形成する切削加工が行われる前と、その切削加工が行われた後とに分けて、下流側切削部35によって後端側接合部13(又は後端側接合部23)の周面が形成される加工が行われる。この場合に、上流側切削部34による前端側接合部12(又は前端側接合部22)の切削加工が行われる前に、部分切削工程S2,S3によって、材料木材9の長手方向に交差する方向側であって下流側切削部35が配置し易い側(例えば、
図5における材料木材9の下側及び手前側)に対して、2つの接合用部材10,20における後端側接合部13,23に相当する複数箇所の加工がまとめて行われる。そして、反転工程S4における回転部36による材料木材9の回転の後には、接合用部材10,20における後端側接合部13,23の未加工部分の加工を、下流側切削部35が配置し易い側から再び実行することができる。よって、下流側切削部35の移動範囲を少なく設定しつつ、2つの接合用部材10,20における後端側接合部13,23の加工を効率良く行うことができる。これにより、後端側接合部13,23の形成については、下流側切削部35の仕様に応じた加工のし易さと効率の良い設定を組み合わせて採用することができる。
【0089】
また、材料木材9から2つの接合用部材10,20を製造する場合に、先に製造される第1接合用部材10とは別の第2接合用部材20の後端側接合部23の未加工部分が残された状態の材料木材9が分離工程S8における切断部33の加工により切断されて、第1接合用部材10の後端側接合部13の後端面13Bが形成される。このため、分離工程S8における切断部33による後端側接合部13の後端面13Bの切断加工においても、一定以上の高い強度と剛性を材料木材9に持たせて加工することができ、下流側保持部37による材料木材9の保持位置の自由度を高めつつ、切断部33による加工を短時間で精度良く行い易く、加工の際の破損も生じ難くすることができる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよく、この場合に、以下に記載する各構成を上記実施形態に対して適用してもよく、以下に記載する複数の構成を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0091】
上記実施形態においては、
図4に示す接合用部材加工処理として、1本の材料木材9から2つの接合用部材(接合用部材10,20)を製造する場合について説明しているが、1本の材料木材9から1つの接合用部材を製造する構成であってもよく、この場合には、第2接合用部材20に関する各種の工程(部分切削工程S2,形成工程S9,残部切削工程S10及び分離工程S11)は行わなくてもよい。また、1本の材料木材9から第1接合用部材10及び第2接合用部材20に加えて1又は複数の他の接合用部材を製造する構成としてもよく、この場合には、第1接合用部材10の前端側接合部12の形成工程S6より前に、他の接合用部材の後端側接合部用の部分切削工程を行い、また、第2接合用部材20の分離工程S11よりも後に、他の接合用部材に対しての、形成工程S6〜分離工程S8と同様の一連の工程を1回又は複数回繰り返して、他の接合用部材の製造を完了する構成としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、第1接合用部材10の後端側接合部13用の部分切削工程S3の前に、第2接合用部材20の後端側接合部23用の部分切削工程S2を行う構成としているが、後端側接合部13,23の部分切削工程S2,S3の順序は逆にしてもよいし、材料木材9から3つ以上の接合用部材を製造する場合であっても、各接合用部材に対する部分切削工程の順序は適宜に設定できる。但し、材料木材9から3つ以上の接合用部材を製造する場合には、材料木材9の一端側から他端側に向かう順序で各接合用部材の後端側接合部用の部分切削工程を行って、搬送部31による材料木材9の移動量を低減することが好ましい。
【0093】
また、上記実施形態においては、各部分切削工程S2,S3において、下流側切削部35が材料木材9の長手方向に沿った2つの側面を切削する構成としたが、他の構成としてもよい。例えば、一側面のみを部分切削工程S2において切削加工し、残りの3面を残部切削工程S7,S10において切削加工する構成としてもよい。すなわち、各接合用部材の前端側接合部の形成よりも前に、その接合用部材の後端側接合部の周面の一部が残った状態となるようにして切削加工を行えばよく、1つの側面の切削を完全には行わずに、一部の側面の切削を途中まで行う等の局所的な切削を行って、材料木材9の周面の一部を残す構成としてもよく、または、接合用部材の後端側接合部の切削加工のすべてを、当該接合用部材の前端側接合部を形成した後に行うようにしてもよい。
【0094】
上記実施形態において、駆動制御機器3は、加工情報処理機器4から取得した複数(多数)の接合用部材の加工データを読み出して、1本の材料木材9から加工可能な複数の接合用部材の組合せを選択するプログラムを含む構成としてもよく、その組合せの候補を作業者に表示装置の表示を通じて提示し、作業者の決定操作によって作業の実行を決定するプログラムを含む構成としてもよい。また、1つの材料木材9から2つ以上製造できる部材として、接合用部材と、接合用部材とは別の部材とを含むように組合せを選択するプログラムを含む構成としてもよい。
【解決手段】 木材加工装置の接合用部材加工処理によって、切断工程S5において材料木材9が平面状に切断された一端側に対して、形成工程S6において切削加工を行って前端側接合部12を形成する。また、後端側接合部13の周面の加工の少なくとも一部は、前端側接合部12を形成する形成工程S6による加工の後の残部切削工程S7にて行う。このため、前端側接合部12を形成する加工の際には、後端側接合部13の未加工部分が材料木材9に残されて、材料木材9の剛性が高い状態で加工をすることができる。