特許第6456558号(P6456558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456558
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】立体像表示装置及び立体像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20190110BHJP
   H04N 13/315 20180101ALI20190110BHJP
   G03B 35/24 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G02B27/22
   H04N13/315
   G03B35/24
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-525059(P2018-525059)
(86)(22)【出願日】2017年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2017022360
(87)【国際公開番号】WO2018003555
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-127416(P2016-127416)
(32)【優先日】2016年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−191838(JP,A)
【文献】 特開2002−287089(JP,A)
【文献】 特開平09−101482(JP,A)
【文献】 特開平09−033858(JP,A)
【文献】 特開2003−050375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22 − 27/26
G03B 35/24
H04N 13/30 − 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像を並べて表示して、該各小画像から該三次元表示データを光線に変換して出力するディスプレイと、
前記ディスプレイの前面に当接され又は前記ディスプレイと一体化して該ディスプレイの前面に設置され、前記ディスプレイの画素と同等のサイズの第1の微小メカニカルシャッターが該ディスプレイの画素の配置に合わせて並べられた第1のメカニカルシャッターパネルと、
前記第1のメカニカルシャッターパネルの前方に所定の距離を置いて配置され、前記ディスプレイの画素と同等のサイズの第2の微小メカニカルシャッターが該ディスプレイの画素の配置に合わせて並べられた第2のメカニカルシャッターパネルとを有し、
前記第1のメカニカルシャッターパネルは、前記ディスプレイに表示される前記小画像に設定された複数の部分領域の表示範囲にそれぞれ対応する範囲に位置する前記第1の微小メカニカルシャッターを第1のメカニカルシャッターとして機能させ、前記各小画像に対して前記第1のメカニカルシャッターは、時分割でオンオフして、前記光線を前記複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し前方に透過させ、
前記第2のメカニカルシャッターパネルは、前記ディスプレイに表示される前記小画像の位置に対応する前記第2の微小メカニカルシャッターを第2のメカニカルシャッターとして機能させ、該第2のメカニカルシャッターは前記各小画像に設定された複数の前記部分領域の中から順次、選択される該部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターのオンタイム時にオンタイムとなり、前記小画像毎に時分割で取り出された前記部分光線を前方に透過させ前記光線として再構成させながら、再構成された該各光線を前方で集光させて三次元像を形成することを特徴とする立体像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の立体像表示装置において、前記各小画像に対応する前記第2のメカニカルシャッターは、対応する該小画像の中央部を通る光軸上に配置されることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の立体像表示装置において、前記各小画像に対応する前記第2のメカニカルシャッターのオンタイム時に、該各小画像に設定された前記複数の部分領域の中のいずれか一つの部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターがオンタイムとなることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の立体像表示装置において、前記各小画像に対応する前記第2のメカニカルシャッターのオンタイム時に、該各小画像に設定された前記複数の部分領域の中の離れた位置にある複数の部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターがオンタイムとなることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1記載の立体像表示装置において、前記第2のメカニカルシャッターはピンホール状であることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1記載の立体像表示装置において、前記第2のメカニカルシャッターはスリット状であることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1記載の立体像表示装置において、前記第1、第2の微小メカニカルシャッターはそれぞれMEMSシャッターからることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1記載の立体像表示装置において、前記三次元表示データは撮像手段で得られた画像データから作成されることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1記載の立体像表示装置において、前記三次元表示データはコンピュータグラフィックスを用いて作成されることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項10】
それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像を並べてディスプレイに表示して、該各小画像から該三次元表示データを光線に変換して出力する工程と、
前記ディスプレイの前面に当接され又は前記ディスプレイと一体化して該ディスプレイの前面に設置された第1のメカニカルシャッターパネルに配置され、前記ディスプレイに表示される前記小画像に設定された複数の部分領域に対応する位置にそれぞれ設けられた第1のメカニカルシャッターの1又は複数を時分割でオンオフして、前記光線を、前記小画像に設定された複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し前方に透過させる工程と、
前記第1のメカニカルシャッターパネルの前方に所定の距離を置いて配置された第2のメカニカルシャッターパネルに配置され、前記ディスプレイに表示される前記小画像の位置に対応して設けられた第2のメカニカルシャッターを、該各小画像に設定された複数の前記部分領域の中から順次、選択される該部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターのオンタイム時にオンタイムにして、前記小画像毎に時分割で取り出された前記部分光線を前方に透過させ前記光線として再構成させながら、再構成された該各光線を前方で集光させて三次元像を形成する工程とを有することを特徴とする立体像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な眼鏡を用いず、日常生活と同様の感覚で立体像(三次元像)を見ることが可能な立体像表示装置及び立体像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体像表示方法は、両眼視差と輻輳を再現することにより立体視を実現する2眼方式を採用する方法、横に並んだ多視点の画像をレンチキュラーレンズ等を用いて左右の目に提示する多眼方式を採用する方法、及び対象物の光学的な空間像を記録したデータ(画像)を用いて空間に立体像を結像させる空間像再生方式を採用する方法に大別される(例えば、非特許文献1参照)。
これらの方法の中で、空間像再生方式を採用する方法は、人間が視覚機能に基づいて立体感を知覚する要因を全て満足する理想的な立体像の表示方法とされている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
空間像再生方式を採用して広い視野角で鮮明な立体像を表示する方法として、例えば、特許文献1には、多数の微小透光部を有する表示制御パネルを設けてその背後に、それぞれの微小透光部の位置から見た対象物の多数の小画像を表示する複数の画像表示パネルを有する画像表示パネル群を配置し、微小透光部を高速度で逐次選択的に透光可能にして、それと同時に透光可能となった微小透光部に対応した画像表示パネル上の位置に小画像を表示する立体画像表示方法が提案されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、各々は、立体像の基となる多数の小画像が非重複状態で並べて同時表示されていると共に、実質的に少しずつ異なる位置から対象物を見た複数の群画像をそれぞれ表示する複数の画像再生パネルと、複数の画像再生パネルにそれぞれ表示された群画像を、時分割で順次表示する画像表示パネルと、画像表示パネルの前側に配置され、時分割で画像表示パネルに表示された群画像の各小画像に同期して開閉する複数の群微小透光部を備えた表示制御パネルとを有し、群微小透光部はピンホール状又はスリット状の多数の微小透光部を有する三次元立体画像表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−33858号公報
【特許文献2】特許第4744743号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岩舘祐一、「3次元映像技術の概要」NHK技研R&D、2014年3月、第144巻、p4−9
【非特許文献2】三科智之、「インテグラル方式の概要」NHK技研R&D、2014年3月、第144巻、p10−17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された立体画像表示方法では、高精細な立体像を形成するために、多数の小画像を眼の残像保持時間内に表示する必要がある。つまり、画像表示パネルに表示される小画像を短時間で切替えなければならないが、画像表示パネルの画像表示切替速度に制約が存在するため、表示制御パネルの背後に複数の画像表示パネルを有する画像表示パネル群を配置して、予め小画像をそれぞれ表示している画像表示パネルの中から表示制御パネルの微小透光部に対応する小画像を表示している画像表示パネルを選択するようにしている。
また、特許文献2に記載された三次元立体画像表示装置においても、特許文献1の場合と同様に群画像をそれぞれ表示する画像再生パネルを画像表示パネルの背面側に複数配置している。
このため、特許文献1に記載された立体画像表示装置では表示制御パネルの背面側が大型化し、特許文献2に記載された三次元立体画像表示装置では画像表示パネルの背面側が大型化するという問題が生じる。このため、装置の使用(利用)に関して、場所的及び時間的な制約が生じるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、高画質で高情報量を有する立体像(三次元像)を、特殊な眼鏡を用いず、日常生活と同様の感覚で見ることが可能な立体像表示装置及び立体像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る立体像表示装置は、それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像を並べて表示して、該各小画像から該三次元表示データを光線に変換して出力するディスプレイと、
前記ディスプレイの前面に当接され又は前記ディスプレイと一体化して該ディスプレイの前面に設置され、前記ディスプレイの画素と同等のサイズの第1の微小メカニカルシャッターが該ディスプレイの画素の配置に合わせて並べられた第1のメカニカルシャッターパネルと、
前記第1のメカニカルシャッターパネルの前方に所定の距離を置いて配置され、前記ディスプレイの画素と同等のサイズの第2の微小メカニカルシャッターが該ディスプレイの画素の配置に合わせて並べられた第2のメカニカルシャッターパネルとを有し、
前記第1のメカニカルシャッターパネルは、前記ディスプレイに表示される前記小画像に設定された複数の部分領域の表示範囲にそれぞれ対応する範囲に位置する前記第1の微小メカニカルシャッターを第1のメカニカルシャッターとして機能させ、前記各小画像に対して前記第1のメカニカルシャッターは、時分割でオンオフして、前記光線を前記複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し前方に透過させ、
前記第2のメカニカルシャッターパネルは、前記ディスプレイに表示される前記小画像の位置に対応する前記第2の微小メカニカルシャッターを第2のメカニカルシャッターとして機能させ、該第2のメカニカルシャッターは前記各小画像に設定された複数の前記部分領域の中から順次、選択される該部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターのオンタイム時にオンタイムとなり、前記小画像毎に時分割で取り出された前記部分光線を前方に透過させ前記光線として再構成させながら、再構成された該各光線を前方で集光させて三次元像を形成す
ここで、三次元表示データから変換された光線とは、三次元物体の表面上の1つの物点(三次元位置)から様々な方向に射出される光線として、空間内の通過位置及び方向に関する光線経路情報と、物点に関する色情報とを有する光線のことである。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る立体像表示方法は、それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像を並べてディスプレイに表示して、該各小画像から該三次元表示データを光線に変換して出力する工程と、
前記ディスプレイの前面に当接され又は前記ディスプレイと一体化して該ディスプレイの前面に設置された第1のメカニカルシャッターパネルに配置され、前記ディスプレイに表示される前記小画像に設定された複数の部分領域に対応する位置にそれぞれ設けられた第1のメカニカルシャッターの1又は複数を時分割でオンオフして、前記光線を、前記小画像に設定された複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し前方に透過させる工程と、
前記第1のメカニカルシャッターパネルの前方に所定の距離を置いて配置された第2のメカニカルシャッターパネルに、前記ディスプレイに表示される前記小画像の位置に対応して設けられた第2のメカニカルシャッターを、該各小画像に設定された複数の前記部分領域の中から順次、選択される異なる該部分領域の位置に対応する前記第1のメカニカルシャッターのオンタイム時にオンタイムにして、前記小画像毎に時分割で取り出された前記部分光線を前方に透過させ前記光線として再構成させながら、再構成された該各光線を前方で集光させて三次元像を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る立体像表示装置及び第2の発明に係る立体像表示方法においては、小画像を表示するディスプレイは一つだけなので、立体像表示装置をコンパクトにすることができる。また、小画像から出力される光線を第1のメカニカルシャッターにより、複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線として時分割して高速で取り出すことができる。このため、立体像表示装置の使用において、また立体像表示方法の適用において、場所的及び時間的な制約を低減することが可能になる。
【0012】
また、第1の発明に係る立体像表示装置及び第2の発明に係る立体像表示方法においては、第1のメカニカルシャッターを用いて小画像から出力される光線を、小画像の部分領域から出力される部分光線として時分割で取り出すので、ディスプレイに表示される隣り合う小画像の部分領域からそれぞれ出力される部分光線同士が空間で重なり合うことを防止でき、ノイズ成分が含まれない部分光線を取り出すことができる。その結果、部分光線から再構成した光線にもノイズ成分が含まれないため、歪みのない立体像を形成することが可能になる。
【0013】
更に、第1のメカニカルシャッターを用いて部分光線を取り出すので、部分光線の色調変化を防止し、光量の減衰を抑制することができ、第2のメカニカルシャッターを用いて部分光線から光線を再構成するので光線の色調変化を防止し、光量の減衰を抑制することができ、正確な色調を有する明るい立体像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る立体像表示装置のブロック図である。
図2】同立体像表示装置の構成を示す斜視図である。
図3】同立体像表示装置の別の構成を示す斜視図である。
図4】同立体像表示装置の更に別の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施例に係る立体像表示装置10は、それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像11を並べて表示して、各小画像11から三次元表示データを光線に変換して出力するディスプレイ12を有している。各小画像11には複数の部分領域13が設定されており、ディスプレイ12の前方には、ディスプレイ12に表示される小画像11の位置に対応させて配置された第1のメカニカルシャッター14を備えた第1のメカニカルシャッターパネル15が設置されている。第1のメカニカルシャッター14は、各小画像11から出力される光線を、複数の部分領域13からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し前方に透過させる。また、第1のメカニカルシャッター14の前方には、ディスプレイ12に表示される小画像11の位置に対応させて配置された第2のメカニカルシャッター16を備えた第2のメカニカルシャッターパネル17が設置されている。第2のメカニカルシャッター16は、小画像11毎に時分割で取り出された部分光線を前方に透過させ光線として再構成させながら、再構成された各光線を前方で集光させて立体像(三次元像)を形成する。
【0016】
更に、立体像表示装置10は、三次元表示データを備えた小画像11をディスプレイ12に表示させる画像表示手段18と、ディスプレイ12に表示された小画像11の位置に合わせて第1のメカニカルシャッター14の位置決めを行うと共に、第1のメカニカルシャッター14のオンオフ操作(開閉操作)を行う第1のメカニカルシャッター操作手段19と、ディスプレイ12に表示される小画像11の中央部に光軸Lが存在するように第2のメカニカルシャッター16の位置決めを行って、第2のメカニカルシャッター16のオフタイム(閉時)が、第1のメカニカルシャッター14のオフタイムに同期するように第2のメカニカルシャッター16のオンオフ操作を行う第2のメカニカルシャッター操作手段20と、三次元表示データを備えた小画像11を作成する小画像作成手段21とを備えた制御部22を有している。以下、詳細に説明する。
【0017】
ディスプレイ12の画素数は、横(水平)方向に4000画素以上、縦(垂直)方向に2000画素以上(即ち、4K以上、更に好ましくは8K以上の画素数を有するディスプレイ)であることが好ましい。これによって、一つのディスプレイ12に、高精細な小画像(大きな三次元表示データを備えた小画像)を、数多く並べて表示することができ、解像度の高い三次元像を形成することが可能になる。
【0018】
第1のメカニカルシャッター14は複数のMEMSシャッター(Micro Electro−Mechanical System技術を応用した微小メカニカルシャッター)から構成されている。このため、第1のメカニカルシャッターパネル15に、例えば、ディスプレイ12の画素と同等のサイズのMEMSシャッターを、ディスプレイ12の画素の配置に合わせて並べる(ディスプレイ12の画素密度と同等密度で配置する)ことができる。従って、第1のメカニカルシャッターパネル15内に配置された複数のMEMSシャッターの中から、小画像11に設定された部分領域13の位置と面積(形状)に合わせて、幾つかのMEMSシャッターを選択することにより、部分領域13と同一形状の第1のメカニカルシャッター14として機能させることができる。
【0019】
第2のメカニカルシャッター16は複数のMEMSシャッターから形成されている。これによって、第2のメカニカルシャッターパネル17に、例えば、ディスプレイ12の画素と同等のサイズのMEMSシャッターをディスプレイ12の画素の配置に合わせて並べることができる。従って、第2のメカニカルシャッターパネル17内に配置された複数のMEMSシャッターの中から、ディスプレイ12に表示された小画像11の中央部に位置する幾つかのMEMSシャッターを選択することにより、小画像11の中央部を光軸Lが通過するように位置決めされた第2のメカニカルシャッター16として機能させることができる。
【0020】
第1のメカニカルシャッター14を光シャッターとして用いることで、小画像11から出力される光線から、色調変化が防止され、光量減衰が抑制された部分光線を取り出すことができる。また、第2のメカニカルシャッター16を光シャッターとして用いることで、部分光線を、色調変化を防止し、光量減衰を抑制して第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に透過させることができる。これにより、各小画像11から取り出した部分光線を用いて、各小画像11から出力される光線と比較して、色調変化がなく、しかも光量減衰の抑制された光線を再構成すると共に、それぞれ集光させることができる。
【0021】
小画像11に設定された部分領域13から出力される部分光線を時分割で正確に取り出すために、ディスプレイ12に対して第1のメカニカルシャッターパネル15は当接、あるいはディスプレイ12に対して500μm以下の隙間となるように近接配置することが好ましい。
【0022】
また、ディスプレイ12と第2のメカニカルシャッターパネル17との距離は、各小画像11の有する三次元表示データの中の光線光路情報に基づいて(各小画像11の部分領域13から出力される部分光線が、第2のメカニカルシャッター16を介して第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に一様に透過できるように)決定される。
【0023】
ここで、図2に示すように、第2のメカニカルシャッター16のオンタイム時(開状態時)に、小画像11に設定された複数の部分領域13の中から選択された1つの部分領域13の位置に対応する一つの第1のメカニカルシャッター14がオンタイムとなるようにする。つまり、第2のメカニカルシャッター16のオンオフが切り替わる度に、小画像11に設定された複数の部分領域13の中から、順次、異なる部分領域13を選択し、それに対応した一つの第1のメカニカルシャッター14が、第2のメカニカルシャッター16のオンタイムに同期してオンタイムとなるようにする。これにより、小画像11に設定された複数の部分領域13の中から選択された1つの部分領域13の部分光線だけを時分割で取り出すようにすることができる。
【0024】
あるいは、図3に示すように、第2のメカニカルシャッター16のオンタイム時に、離れた位置(例えば、少なくとも隣接していない位置)にある複数(図3では4つ)の部分領域13aの位置に対応する第1のメカニカルシャッター14aがオンタイムとなるようにして、上記と同様に第2のメカニカルシャッター16のオンオフが切り替わる度に、順次、異なる位置で離れた位置にある複数の第1のメカニカルシャッター14aを選択し、第2のメカニカルシャッター16と同期してオンタイムとなるようにしてもよい。この場合、小画像11aに設定された複数の部分領域13aから同時選択されたそれぞれ離れた位置にある2つ以上(図3では4つ)の部分領域13aの部分光線を時分割で取り出すことができる。このように第2のメカニカルシャッター16のオンタイム時に、離れた位置にある複数の第1のメカニカルシャッター14aをオンタイムとすることにより、小画像11aに多くの部分領域13aを設定しても、眼の残像保持時間(例えば、1/60〜1/30秒)内に全ての部分領域13aからの部分光線を取り出すことが可能になる。
【0025】
図2図3に示すように、第2のメカニカルシャッター16をピンホール状とすることも、あるいは、図4に示すように、第2のメカニカルシャッター16aをスリット状(光軸Lは小画像11の中央部を通過する)とすることもできる。
【0026】
第2のメカニカルシャッター16がピンホール状の場合、第2のメカニカルシャッター16の入口側(第1のメカニカルシャッターパネル15側)から入射した部分光線は、第2のメカニカルシャッター16の出口側から(第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に)出る際に光円錐状に広がる。このため、部分光線から再構成される光線も光円錐状に広がるので、水平、垂直、斜め方向と全方位にわたって視差情報を持つ立体像が形成される。
【0027】
一方、第2のメカニカルシャッター16aがスリット状の場合、第2のメカニカルシャッター16aの入口側から入射した部分光線は、第2のメカニカルシャッター16aの出口側から出る際に、スリットの幅方向に平行な面内で第2のメカニカルシャッター16aの出口側を基部とする扇形状に広がる。
このため、部分光線から再構成される光線も第2のメカニカルシャッター16aの長手方向に沿って扇形状に広がるので、第2のメカニカルシャッター16aの幅方向だけに視差情報を持つ立体像が形成される。従って、立体像を観察するためには、第2のメカニカルシャッター16aの幅方向に沿って両眼が並ぶように観察者が位置しなければならず、立体像の観察において制約が生じる。
【0028】
制御部22の画像表示手段18は、複数の三次元表示データを読み込み、それぞれ小画像表示用信号に変換してディスプレイ12に入力する小画像表示機能を備えたプログラムをコンピュータに搭載することにより構成される。なお、プログラムをコンピュータに搭載する代わりに、三次元表示データを小画像表示用信号に変換する専用回路をディスプレイ12の信号入力側に接続してもよい。専用回路を用いることで、小画像表示速度を高めることができる。
【0029】
制御部22の第1のメカニカルシャッター操作手段19は、画像表示手段18からディスプレイ12に表示された各小画像11の表示に使用されている画素の位置情報を入手して、第1のメカニカルシャッターパネル15内の各MEMSシャッターに対して、小画像11毎に設定された複数の部分領域13の表示範囲とそれぞれ対応する範囲に位置する複数のMEMSシャッターを第1のメカニカルシャッター14として時分割でオンすると共に、残りのMEMSシャッターを全てオフとする駆動信号を入力するMEMSシャッター操作機能を備えたプログラムをコンピュータに搭載することにより構成される。
【0030】
制御部22の第2のメカニカルシャッター操作手段20は、画像表示手段18からディスプレイ12に表示された各小画像11の表示に使用されている画素の位置情報を入手して、第2のメカニカルシャッターパネル17内の各MEMSシャッターに対して、各小画像11の中央部に対応する範囲に位置する複数のMEMSシャッターを、第1のメカニカルシャッター14を構成している複数のMEMSシャッターのオンオフに同期してオンオフするMEMSシャッター操作機能を備えたプログラムをコンピュータに搭載することにより構成される。
【0031】
制御部22の小画像作成手段21は、例えば、三次元空間内で仮想的なカメラを移動させて三次元物体の画像を作成して三次元表示データとするコンピュータグラフィックス機能をコンピュータに搭載することにより構成される。
なお、表示しようとする立体像の基となる物体を撮像手段(例えば、ステレオカメラ)で撮像して画像データを求め、画像データからステレオカメラの視点から見た物体の表面を構成する多角形を抽出し、抽出した多角形の頂点座標、隣り合う多角形の頂点の接続情報、各多角形の色情報を求めて三次元表示データとする機能をコンピュータに搭載することにより構成することもできる。
【0032】
続いて、本発明の一実施例に係る立体像表示装置10を適用した立体像表示方法について説明する。
図2に示すように、立体像表示方法は、それぞれ三次元表示データを備えた複数の小画像11を並べてディスプレイ12に表示して、各小画像11から三次元表示データを光線に変換して出力する工程と、ディスプレイ12に表示される小画像11の位置に対応させてディスプレイ12の前方に配置された第1のメカニカルシャッター14を用いて、光線を、小画像11に設定された複数の部分領域13からそれぞれ出力される部分光線として時分割で取り出し第1のメカニカルシャッターパネル15の前方に透過させる工程と、ディスプレイ12に表示される小画像11の位置に対応させて第1のメカニカルシャッター14の前方に配置される第2のメカニカルシャッター16を用いて、小画像11毎に時分割で取り出された部分光線を第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に透過させ光線として再構成させながら、再構成された各光線を集光させて立体像を形成する工程とを有している。
【0033】
第1のメカニカルシャッター14を用いて各小画像11から出力される光線を、各小画像11の部分領域13から出力される部分光線として取り出すので、部分光線の色調変化が防止でき、更に、光量減衰を抑制することができる。そして、隣り合う小画像11が近接されてディスプレイ12に表示されていても、隣り合う小画像11の各部分領域13からそれぞれ出力される部分光線は光路が異なるため、空間で交差する(重なり合う)ことはなく、取り出した部分光線にはノイズ成分が含まれない。
そして、各小画像11から取り出した部分光線は、第2のメカニカルシャッター16を介して第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に透過するので、第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に透過した部分光線は、色調変化が防止され、光量減衰が抑制されている。
【0034】
小画像11に設定された複数の部分領域13からそれぞれ出力される部分光線を時分割で取り出す場合、全ての部分領域13からの部分光線が眼の残像保持時間内に取り出されるように、第1のメカニカルシャッター14の開閉速度を考慮して時分割数、即ち、部分領域13の個数を設定する。また、第2のメカニカルシャッター16のオフタイムを、第1のメカニカルシャッター14のオフタイムに同期させる。
【0035】
これにより、第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に、ディスプレイ12に表示された全ての小画像11からの部分光線を眼の残像保持時間内に全て取り出すことが可能になり、取り出した部分光線を用いて、各小画像11から出力される光線と同品質の光線(色調変化がなく、光量減衰が抑制され、ノイズ成分が含まれない光線)を再構成することができ、図2に示すように、再構成された光線を第2のメカニカルシャッターパネル17の前方の位置Sで集光させることができる。そして、各光線は位置Sで集光した後に前方に向けて拡散するので、拡散する各光線を正面から観察すると、各光線が集光した位置Sに拡散する各光線を射出する仮想物点が認められる。その結果、第2のメカニカルシャッターパネル17の前方に、仮想物点の集合体として立体像が観察できる。なお、仮想物点の集合体から拡散する光線は、各小画像11から出力される光線と同品質なので、観察される三次元像は明るく、歪みのない高精細なものとなる。
【0036】
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
例えば、ディスプレイと第1のメカニカルシャッターパネルを当接させる代わりに、ディスプレイと第1のメカニカルシャッターパネルを一体化して、即ち、ディスプレイの各画素の上にMEMSシャッターを設けて第1のメカニカルシャッターとして動作させる構成とすることもできる。これにより、小画像に設定された複数の部分領域からそれぞれ出力される部分光線を、精度よく時分割で取り出すことができる。
【0037】
また、以上の発明においては、第1、第2のメカニカルシャッター(例えば、MEMSシャッター)を用いて立体像表示装置及び立体像表示方法を構成しているが、第1、第2のメカニカルシャッターとして、液晶シャッターを用いることも考えられる(この場合は、
「メカニカルシャッター」を「液晶シャッター」と読み替える)が、現技術では、液晶シャッターに比較してメカニカルシャッターは応答性が早いので、より鮮明でより正確な立体像が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
静止画表示から動画表示まで適用の幅を広げ、立体テレビや立体映像提供サービスの実現に貢献することができ、ゲーム機用や医療用の立体像表示装置及びゲームセンター、アミューズメントパーク、映画館、医療現場等における立体像表示方法として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0039】
10:立体像表示装置、11、11a:小画像、12:ディスプレイ、13、13a:部分領域、14、14a:第1のメカニカルシャッター、15:第1のメカニカルシャッターパネル、16、16a:第2のメカニカルシャッター、17:第2のメカニカルシャッターパネル、18:画像表示手段、19:第1のメカニカルシャッター操作手段、20:第2のメカニカルシャッター操作手段、21:小画像作成手段、22:制御部
図1
図2
図3
図4