特許第6456574号(P6456574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456574診断装置、センサデータ収集装置、診断方法、診断プログラム、および、診断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6456574
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】診断装置、センサデータ収集装置、診断方法、診断プログラム、および、診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20190110BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20190110BHJP
   B66B 27/00 20060101ALI20190110BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   B66B5/00 D
   B66B27/00 C
   G01H17/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-550005(P2018-550005)
(86)(22)【出願日】2018年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2018014420
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】寺島 英明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 芳春
(72)【発明者】
【氏名】志賀 諭
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 匡史
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−325229(JP,A)
【文献】 特開2011−098803(JP,A)
【文献】 特開平05−070053(JP,A)
【文献】 特開2005−247470(JP,A)
【文献】 特開2015−161577(JP,A)
【文献】 特開平10−197555(JP,A)
【文献】 特開2010−018385(JP,A)
【文献】 特開2010−030740(JP,A)
【文献】 特開2007−200070(JP,A)
【文献】 特開平04−332835(JP,A)
【文献】 特開2006−023204(JP,A)
【文献】 特開昭54−147882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
B66B 5/00
B66B 27/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータを含む往路センサデータおよび復路センサデータを取得する、往復データ取得部と、
前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、前記往路センサデータと前記復路センサデータとを統合し、前記診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部
とを備えた診断装置。
【請求項2】
前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータまたは前記復路センサデータのいずれか一方を時間方向に反転させて反転後センサデータを生成する時間反転部を備え、
前記統合部は、前記時間反転部が生成した前記反転後センサデータと、前記往路センサデータまたは前記復路センサデータのうち前記時間反転部によって時間反転されなかった方のセンサデータとを、互いに同一の時間方向に沿って統合し、前記診断用データを生成する
ことを特徴とする請求項1記載の診断装置。
【請求項3】
前記往復データ取得部は、
前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される際の往路において当該同一経路の始点に到達した時点から当該同一経路の終点に到達した時点までの複数のセンサデータ、および、前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される際の復路において当該同一経路の始点に到達した時点から当該同一経路の終点に到達した時点までの複数のセンサデータを、それぞれ、前記往路センサデータおよび前記復路センサデータとして取得する
ことを特徴とする請求項1記載の診断装置。
【請求項4】
前記往復データ取得部は、さらに、前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動されてセンサデータが収集される間に生成された、前記同一経路上の複数の位置を示す往路位置データおよび復路位置データを取得するものであり、
前記統合部は、前記往復データ取得部が取得した前記往路位置データと前記復路位置データとが示す位置に基づき、前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の診断装置。
【請求項5】
前記統合部は、
前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士のそれぞれについて、加算平均または最小値の選択を行うことで、前記往路センサデータと前記復路センサデータとの統合を行う
ことを特徴とする請求項1記載の診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の診断装置と、
1つ以上のセンサを有し、前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される間に、複数のデータ収集位置において、前記往路センサデータとしての複数のセンサデータおよび前記復路センサデータとしての複数のセンサデータを収集するセンサ部と、
前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される際の自己位置を推定し、位置データとする自己位置推定部とを備え、
前記往復データ取得部は、前記センサ部が収集した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータを取得する
ことを特徴とするセンサデータ収集装置。
【請求項7】
自走する駆動部を備えたことを特徴とする請求項6のセンサデータ収集装置。
【請求項8】
前記1つ以上のセンサのうち少なくとも1つは、集音センサである
ことを特徴とする請求項6記載のセンサデータ収集装置。
【請求項9】
前記1つ以上のセンサのうち少なくとも1つは、振動センサである
ことを特徴とする請求項6記載のセンサデータ収集装置。
【請求項10】
前記自己位置推定部が推定した自己位置に基づき、前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される際の往路において当該同一経路の始点に到達したこと、および、前記往路において前記同一経路の終点に到達したこと、並びに、前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される復路において当該同一経路の始点に到達したこと、および、前記復路において前記同一経路の終点に到達したことを推定する、乗下車推定部を備えた
ことを特徴とする請求項6記載のセンサデータ収集装置。
【請求項11】
往復データ取得部が、診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータを含む往路センサデータおよび復路センサデータを取得するステップと、
統合部が、前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、前記往路センサデータと前記復路センサデータとを統合し、前記診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成するステップ
とを備えた診断方法。
【請求項12】
コンピュータを、
診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータを含む往路センサデータおよび復路センサデータを取得する往復データ取得部と、
前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、前記往路センサデータと前記復路センサデータとを統合し、前記診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部
として機能させるための診断プログラム。
【請求項13】
1つ以上のセンサを有し、診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に、複数のデータ収集位置において、往路センサデータとしての複数のセンサデータおよび復路センサデータとしての複数のセンサデータを収集するセンサ部と、
前記診断対象設備が前記同一経路を往復駆動される際の自己位置を推定し、対象位置データとする自己位置推定部とを有するセンサデータ収集装置と、
前記センサ部が収集した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータを取得する往復データ取得部と、
前記往復データ取得部が取得した前記往路センサデータおよび前記復路センサデータのそれぞれに含まれる前記複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、前記往路センサデータと前記復路センサデータとを統合し、前記診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部とを有する診断装置
とを備えた診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、往復駆動される搬送設備の異常を診断する診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータ、動く歩道、エレベータ等の往復駆動される搬送設備を診断の対象として、当該搬送設備の異常を診断する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、エスカレータまたは動く歩道等の乗客コンベアの異常を診断する異常診断システムが開示されている。
この異常診断システムは、乗客コンベアの稼動音を集音し、踏み段が複数回周回する間に集音された複数周分の乗客コンベア稼動音の音データを加工して診断用データを生成し、生成した診断用データを用いて乗客コンベアに異常が発生しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−30740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、診断用データを生成するための音データを収集する際、乗客コンベアの踏段を複数回周回させる必要がある。そのため、当該音データを収集する際に時間がかかるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、往復駆動される搬送設備の異常を診断する際に用いる診断用データ(以下、単に「診断用データ」という。)を生成するためのデータを収集する時間を、従来よりも短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る診断装置は、診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータを含む往路センサデータおよび復路センサデータを取得する、往復データ取得部と、往復データ取得部が取得した往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、往路センサデータと復路センサデータとを統合し、診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、診断用データを生成するためのデータを収集する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る診断装置が異常を診断する対象となるエスカレータの概略を説明するための図である。
図2】実施の形態1に係る診断装置を搭載したセンサデータ収集装置の構成例を示す図である。
図3】実施の形態1に係るセンサデータ収集装置による「データ収集処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】実施の形態1において、「データ収集処理」後、記録部に記録されている各種情報の内容の一例を示す図であって、図4Aは、記録部に記録されている、音データおよび位置データに関する情報の内容の一例を示しており、図4Bは、記録部に記録されている、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報の内容の一例を示している。
図5】実施の形態1に係るセンサデータ収集装置による「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図6図6A図6Bは、実施の形態1に係る診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る診断装置による「データ収集処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図8】実施の形態2に係る診断装置による「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】実施の形態3に係る診断装置を搭載したセンサデータ収集装置の構成例を示す図である。
図10】実施の形態3に係る診断装置による「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
【0010】
実施の形態1に係る診断装置は、往復駆動される搬送設備の異常を診断する。往復駆動される搬送設備とは、エスカレータ、動く歩道またはエレベータ等の、往路と復路とで同一の経路上を移動する可動部分(例えば、踏み段または乗りかご)を有する搬送設備である。往復駆動される搬送設備における搬送対象は、乗客または荷物等である。以下、往復駆動される搬送設備を、単に「搬送設備」ともいう。また、以下、診断装置が異常を診断する対象となる搬送設備を、「診断対象設備」ともいう。
以下の説明においては、一例として、診断対象設備をエスカレータとする。
また、以下の説明においては、一例として、実施の形態1に係る診断装置は、後述するセンサデータ収集装置に搭載されているものとして説明する。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る診断装置が異常を診断する対象となるエスカレータの概略を説明するための図である。図1は、エスカレータの側面図を示している。
エスカレータは、図1に示すように、上部乗り場1001と下部乗り場1002とを有している。上部乗り場1001と下部乗り場1002との間には、主枠1003が設けられている。主枠1003は、無端状に連結された複数の踏み段1004を支持している。踏み段1004は、上部乗り場1001と下部乗り場1002との間に連続して配置されている。
また、主枠1003上には、主枠1003の長手方向に沿って延びる一対の欄干1005が立設されている。各欄干1005の周縁部には、無端状の手摺1006が設けられている。
【0012】
主枠1003の上端部には、駆動装置(図示省略)と、当該駆動装置によって回転される上部スプロケット(図示省略)が設置されている。一方、主枠1003の下端部には、下部スプロケット(図示省略)が設置されている。上部スプロケットと下部スプロケットの間に無端状の踏み段チェーン(図示省略)が掛け渡されている。踏み段チェーンは、複数の踏み段1004を無端状に連結している。踏み段チェーンは、上部スプロケットによって駆動され、踏み段1004を循環させる。
【0013】
また、踏み段1004の両側には、上部乗り場1001から下部乗り場1002に渡って、踏み段1004と僅かな間隙を有して対向するように、スカートガード1007が配置されている。
なお、以下の説明において、上部乗り場1001と下部乗り場1002とをまとめて、単に「乗り場」ともいうものとする。
【0014】
後述するセンサデータ収集装置は、図1に示すようなエスカレータの踏み段1004上に載置されて、踏み段1004とともに上昇移動および下降移動の往復移動をして、エスカレータの異常を診断するための診断用データを生成するもととなるデータ(以下「センサデータ」という。)を収集する。そして、実施の形態1に係る診断装置は、センサデータに基づき、診断用データを生成し、診断用データに基づきエスカレータの異常を診断する。診断装置は、例えば、手摺1006、踏み段1004または踏み段チェーン等の可動部の異常状態を診断する。また、診断装置は、例えば、スカートガード1007と踏み段1004の接触または両者間の間隙への異物混入等の異常状態を診断する。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る診断装置20を搭載したセンサデータ収集装置10の構成例を示す図である。
センサデータ収集装置10は、センサ部101と、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、駆動部104と、記録部105と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108とを備える。これらのうち、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108とにより、診断装置20の要部が構成されている。
位置推定部102は、自己位置推定部1021と乗下車推定部1022を有する。
信号処理部106は、往復データ取得部1061と、FFT部1062と、統合部1063を有する。
【0016】
センサ部101は、少なくとも1つのセンサを有しており、エスカレータが同一経路を往復駆動される間に、複数のデータ収集位置において、往路センサデータとしての複数のセンサデータおよび復路センサデータとしての複数のセンサデータを収集する。センサの種類として、例えば、マイクロフォン(以下、「マイク」という。)等の集音センサ、または、振動センサがあげられる。以降の説明では、センサ部101は、少なくとも1つのマイクを有し、センサ部101は、センサデータとして、マイクでの受音強度を示す音データを収集するものとする。センサ部101は、収集した音データを、当該音データを収集した時刻と対応付けて記録部105(後述する)に記録させる。
なお、上述のとおり、実施の形態1では、センサ部101が有するセンサをマイクとし、センサデータとして音データが収集されるものとするが、これは一例に過ぎない。例えば、センサ部101が有するセンサを振動センサとし、センサデータとして、例えば、3軸方向の加速度データが収集されるものとしてもよい。
【0017】
位置推定部102は、センサデータ収集装置10の位置を推定する。
位置推定部102の自己位置推定部1021は、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の、センサデータ収集装置10の自己位置(以下、単に「自己位置」という。)を推定する。自己位置推定部1021は、予め設定された一定時間ごとに自己位置を推定する。予め設定された一定時間は、ユーザ等により適宜設定される。
実施の形態1において、自己位置とは、センサデータ収集装置10の中心が存在する位置、または、センサデータ収集装置10の進行方向に対して当該センサデータ収集装置10の前面部に設けられた前面パネルの中心が存在する位置等をいう。なお、これは一例に過ぎず、センサデータ収集装置10におけるどの部位を、自己位置を推定するための部位とするかは適宜設定可能である。
【0018】
自己位置推定部1021は、具体的には、例えば、カメラ等のイメージセンサ、または、GPS(Global Positioning System)等を用いて、自己位置を推定する。また、自己位置推定部1021は、例えば、Wi−Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等を用いて、アクセスポイントまたはビーコンからの電波強度から、自己位置を推定してもよい。また、自己位置推定部1021は、例えば、駆動部104(後述する)から、センサデータ収集装置10がどの程度移動したかの情報を取得して、取得した情報と、予め決められている移動開始位置の情報とから、自己位置の推定に利用できるものとしてもよい。
自己位置推定部1021は、推定した自己位置の情報を位置データとして、当該位置データを推定した時刻と対応付けて、記録部105に記録させる。位置データは、例えば、GPS座標、または、エスカレータのある特定点を原点とした3次元座標等であらわされる。特定点は、任意の点とすることができる。例えば、エスカレータを構成するいずれかの部位を特定点とする場合、下部乗り場1002と踏み段1004との境界線上における、上部乗り場1001方向に向かって左側の端の一点等を特定点とすることができる。
【0019】
乗下車推定部1022は、自己位置推定部1021が推定した自己位置に基づき、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の往路において当該同一経路の始点に到達したこと、および、当該往路において当該同一経路の終点に到達したことを推定する。また、乗下車推定部1022は、自己位置推定部1021が推定した自己位置に基づき、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の復路において当該同一経路の始点に到達したこと、および、当該復路において当該同一経路の終点に到達したことを推定する。
具体的には、乗下車推定部1022は、自己位置推定部1021により推定された自己位置が、乗り場と踏み段1004との境界の鉛直上方の位置(以下、単に「境界上」という。)に達したかどうかを判定する。例えば、自己位置を推定するための部位が、前面パネルの中心に設定されている場合、乗下車推定部1022は、前面パネルの中心が、乗り場と踏み段1004との境界上に達したと判定すると、その旨の情報を、乗下車時刻設定部103(後述する)に出力する。
【0020】
乗下車時刻設定部103は、乗下車推定部1022から出力された情報に基づき、センサデータ収集装置10が踏み段1004上に載置された状態でエスカレータが往復駆動される際の、往路および復路のそれぞれにおける、センサデータ収集装置10のエスカレータへの乗車時刻または下車時刻を設定する。
具体的には、乗下車時刻設定部103は、センサデータ収集装置10のエスカレータへの往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻を設定する。
【0021】
例えば、センサデータ収集装置10が、下部乗り場1002から、上昇運転中のエスカレータに乗車し、上部乗り場1001に到達して下車した後、エスカレータが下降運転に切り替わり、当該センサデータ収集装置10が、上部乗り場1001から、下降運転中のエスカレータに乗車し、下部乗り場1002まで戻って下車するとする。
この場合、往路乗車時刻とは、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002からエスカレータに乗車し上部乗り場1001まで移動する往路において、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達した時刻をいう。
また、往路下車時刻とは、上述の往路において、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001に到達して下車する際に、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達した時刻をいう。
また、復路乗車時刻とは、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001からエスカレータに乗車し下部乗り場1002まで戻ってくる復路において、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達した時刻をいう。
また、復路下車時刻とは、上述の復路において、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002に到達して下車する際に、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達した時刻をいう。
なお、ここでは、上述のとおり、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻は、日時を含めた一般的な時刻とするが、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻は、位置データの記録開始からの経過時間としてもよい。
【0022】
乗下車時刻設定部103は、設定した、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻を、記録部105に記録する。
【0023】
駆動部104は、例えば、センサデータ収集装置10を移動させるための車輪等で構成される。実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10は、充電池を有しており、当該充電池から駆動部104に電力が供給されることで、ワイヤレスで自走することができる。
なお、ここでは、駆動部104は、センサデータ収集装置10に備えられるものとするが、これに限らず、駆動部104は、センサデータ収集装置10と着脱可能な別の装置として構成され、当該センサデータ収集装置10と無線または有線で通信可能に接続されるようにしてもよい。
駆動部104は、センサデータ収集装置10がどの程度移動したかの情報を、自己位置推定部1021に送信することができる。
【0024】
記録部105は、センサ部101が収集した音データ、自己位置推定部1021が推定した位置データ、および、乗下車時刻設定部103が設定した乗車時刻または下車時刻等を記録する。
なお、実施の形態1では、図2に示すように、記録部105は、センサデータ収集装置10に備えられるものとするが、これに限らず、記録部105は、センサデータ収集装置10の外部の、センサデータ収集装置10および診断装置20が参照可能な場所に備えられるようにしてもよい。
【0025】
信号処理部106は、記録部105に記録されている各種データ、または、時間反転部107(後述する)から出力された対象音データおよび反転後対象音データに対して、各種処理を行う。
信号処理部106の往復データ取得部1061は、記録部105に記録されている、音データ、位置データ、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報を取得する。また、往復データ取得部1061は、記録部105から取得した上記データおよび上記情報に基づき、エスカレータの異常を診断する際に用いる診断用データを生成するために必要な音データ、および、位置データを抽出する。
具体的には、往復データ取得部1061は、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の往路において当該同一経路の始点に到達した時点から当該同一経路の終点に到達した時点までの複数の音データおよび位置データを抽出する。また、往復データ取得部1061は、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の復路において当該同一経路の始点に到達した時点から終点に到達した時点までの複数の音データおよび位置データを抽出する。
往復データ取得部1061は、記録部105にそれぞれ記録されている音データおよび位置データの時間軸を合わせることで同期をとることができる。例えば、往復データ取得部1061は、音データ、および、位置データを抽出する際に、例えば、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001から踏み段1004に移動する瞬間の位置データと音データとを対応付けて抽出することができる。
実施の形態1において、診断用データを生成するために必要な音データ、および、位置データを、それぞれ、対象音データ、および、対象位置データともいう。
往復データ取得部1061は、抽出した、往路の対象音データ、復路の対象音データ、往路の対象位置データ、および、復路の対象位置データを、時間反転部107に出力する。
【0026】
信号処理部106のFFT部1062は、時間反転部107から出力された対象音データおよび反転後対象音データを、それぞれ、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)により周波数データに変換し、振幅スペクトログラムを取得する。
実施の形態1では、FFT部1062が周波数データに変換して取得した、対象音データおよび反転後対象音データの振幅スペクトログラムを、それぞれ、周波数音データおよび反転後周波数音データともいう。
FFT部1062は、周波数音データおよび反転後周波数音データを、対象位置データとあわせて、信号処理部106の統合部1063に出力する。
【0027】
統合部1063は、FFT部1062が取得した、周波数音データと反転後周波数音データとを、互いのデータ収集位置が一致するデータ同士を対応させて、統合する。
統合部1063は、平均値算出方式、または、最小値選択方式等を用いて、周波数音データと反転周波数音データとを統合する。
実施の形態1において、統合部1063が周波数音データと反転後周波数音データの統合を行うことで生成された統合後の対象音データを、統合音データともいう。
統合部1063は、生成した統合音データを対象位置データと紐付けて、診断用データとして、記録部105に記録させる。
【0028】
時間反転部107は、往復データ取得部1061から対象音データおよび対象位置データを取得し、取得した対象音データについて、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのいずれか一方を時間方向に反転(以下「時間反転」という。)させて、反転後対象音データを生成する。
実施の形態1において、往路の対象音データまたは復路の対象音データのうち、時間反転部107が時間反転させて生成した対象音データを反転後対象音データともいう。
例えば、時間反転部107は、往復データ取得部1061から10秒間の対象音データを取得した場合、当該対象音データを、中間地点である5秒地点を基点として対称に反転させて、反転後対象音データを生成する。時間反転とは、このような反転処理のことである。
具体例として、例えば、10秒間の対象音データのサンプリング周期が48kHzであり、当該対象音データに含まれるサンプルデータ数が480000点であるとする。この対象音データを時間反転させる場合、時間反転部107は、0秒地点を示す1点目のサンプルデータと、10秒目を示す480000点目のサンプルデータを入れ替える。また、時間反転部107は、2点目のサンプルデータと、479999点目のサンプルデータを入れ替え、3点目のサンプルデータと、479998点目のサンプルデータを入れ替え、同様の入れ替えを時系列的に並んだ複数のサンプルデータすべてに対して行う。このようなサンプルデータの入れ替えによって、時間反転部107は、対象音データに含まれる時系列的に並んだサンプルデータのうち中間地点のサンプルデータを基点として、対象音データを対称に反転させる。
【0029】
時間反転部107は、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのいずれか一方を時間反転させた反転後対象音データを、両者のうち時間反転させなかった方の対象音データおよび対象位置データと共に、信号処理部106に出力する。
なお、時間反転部107は、往路の対象音データまたは復路の対象音データのうち、時間反転させなかった方の対象音データについては、そのまま信号処理部106に出力する。
【0030】
診断部108は、記録部105を参照し、信号処理部106が記録させた統合音データを用いて、エスカレータの異常診断を実施する。診断部108は、例えば、機械学習等、既存の方法を用いて異常診断を実施すればよい。具体的な方法については、既存の方法であるため詳細な説明を省略する。
また、診断部108は、外部の装置等に対して、異常診断結果に関する情報を送信することもできる。外部の装置等とは、例えば、ディスプレイ等の表示装置、スピーカ等の音声出力装置、または、サーバ等である。
【0031】
次に、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10の動作について説明する。
センサデータ収集装置10は、「データ収集処理」と「診断処理」とを行う。
「データ収集処理」において、センサデータ収集装置10は、エスカレータの異常を診断するための診断用データを生成するもととなる、音データまたは位置データ等を取得し記録部105に記録させる。
「診断処理」において、センサデータ収集装置10は、「データ収集処理」にて記録部105に記録させた音データまたは位置データ等に基づき、エスカレータの異常を診断するための診断用データの生成、および、異常診断の実施を行う。
以下、「データ収集処理」および「診断処理」の具体的な動作について、それぞれ、説明する。
【0032】
まず、「データ収集処理」の具体的な動作を説明する。
図3は、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10による「データ収集処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
なお、以下の説明においては、エスカレータは、まず、下部から上部へ上昇運転され、次に上部から下部へ下降運転されて、一往復だけ、往復駆動されるものとする。これは一例に過ぎず、反対に、エスカレータは、上部から下部へ下降運転された後、下部から上部へ上昇運転されるようにしてもよい。エスカレータが下降運転の後、上昇運転されるようにする場合も、以下に説明する動作と同様の動作となる。
【0033】
設備管理者または設備点検業者等のユーザ(以下、単に「ユーザ」という。)は、センサデータ収集装置10をエスカレータの下部乗り場1002に設置する。
なお、ユーザは、センサデータ収集装置10を、踏み段1004に向けて自走するよう、下部乗り場1002に設置するようにする。
また、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002に設置される、当該下部乗り場1002上の位置は、予め決められているものとする。具体的には、ユーザは、例えば、下部乗り場1002と踏み段1004との境界線から、当該境界線に対して垂直な方向かつ下部乗り場1002の上面と平行な方向に、設定された距離だけ離れた下部乗り場1002上に、センサデータ収集装置10を設置する。
下部乗り場1002に設置されると、センサデータ収集装置10は、動作指示を受け付けるまで待機する(ステップST301)。
【0034】
センサ部101は、音データの収集、および、収集した音データの記録部105への記録を開始する。また、自己位置推定部1021は、センサデータ収集装置10の自己位置の推定、および、推定した自己位置の情報の、記録部105への記録を開始する(ステップST302)。
具体的には、ユーザは、例えば、リモートコントローラ(以下「リモコン」という。)を操作して、センサデータ収集装置10に対して、音データの記録を開始させる音データ記録開始指示、および、自己位置の記録を開始させる自己位置記録開始指示を送信する。センサデータ収集装置10の制御部(図示省略)は、音データ記録開始指示を受け付け、制御部の制御に基づき、センサ部101は、音データの収集、および、収集した音データの記録を開始する。また、制御部は、自己位置記録開始指示を受け付け、制御部の制御に基づき、自己位置推定部1021は、自己位置の推定、および、推定した自己位置の情報の記録を開始する。
【0035】
なお、センサ部101による音データの記録の開始は、自己位置推定部1021によるセンサデータ収集装置10の自己位置の情報の記録の開始と、同時であることが望ましい。しかし、センサ部101による音データの記録の開始と、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録の開始は、必ずしも同時である必要はなく、何等かの方法で音データと自己位置の同期がとれるようになっていればよい。音データと自己位置の同期をとるとは、例えば、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002から踏み段1004に移動したときに記録された音データが特定できる等、センサデータ収集装置10がある地点に存在した際のセンサデータ収集装置10の自己位置と、当該自己位置において記録された音データとを対応付けることができることをいう。
【0036】
そして、センサデータ収集装置10は、踏み段1004に向けて移動を開始する。具体的には、センサデータ収集装置10は、駆動部104の制御に基づき、踏み段1004に向けて移動する。
センサデータ収集装置10は、駆動制御部(図示省略)を有している。
ユーザは、例えば、センサデータ収集装置10を上部乗り場1001上に設置し、音データの収集および自己位置の推定を開始させると、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10に対して、踏み段1004上まで移動させる走行指示を送信する。駆動制御部は、走行指示を受け付け、センサデータ収集装置10が前進するよう、駆動部104を制御する。
センサデータ収集装置10による音データの収集および自己位置の推定の開始は、センサデータ収集装置10による踏み段1004に向けての移動の開始と、同時であっても、互いに前後してもよい。ただし、センサデータ収集装置10による音データの収集および自己位置の推定は、センサデータ収集装置10が踏み段1004に到達する前には開始されていることが望ましい。
なお、駆動制御部は、ネットワークを介して、リモコンからの各種指示を受け付ける。
また、駆動制御部は、駆動部104が備えるようにしてもよい。
【0037】
位置推定部102の乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が、下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達したかどうかを判定する(ステップST303)。具体的には、乗下車推定部1022は、例えば、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達したかどうかを判定する。
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達していないと判定した場合(ステップST303の“NO”の場合)、ステップST303を繰り返し、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002から踏み段1004に到達するまで待機する。なお、この間も、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録は継続している。
【0038】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達したと判定した場合(ステップST303の“YES”の場合)、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を、乗下車時刻設定部103に出力する。このとき、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達したと判定された時刻を、あわせて乗下車時刻設定部103に出力する。以下の説明において、乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が乗り場と踏み段1004との境界上に達したと判定した時刻を、「到達判定時刻」という。
【0039】
乗下車時刻設定部103は、ステップST303において、乗下車推定部1022から、センサデータ収集装置10は下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を取得すると、到達判定時刻を往路乗車時刻に設定し、記録部105に記録させる(ステップST304)。なお、乗下車時刻設定部103は、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を取得した時刻を、往路乗車時刻に設定するようにしてもよい。
【0040】
なお、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002から踏み段1004上まで移動すると、センサデータ収集装置10は踏み段1004上で停止する。具体的には、センサデータ収集装置10は、駆動制御部の制御によって駆動部104が停止することで、踏み段1004上で停止する。
例えば、ユーザは、センサデータ収集装置10が踏み段1004上まで移動すると、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10に対して、停止させる停止指示を送信する。駆動制御部は、停止指示を受け付け、センサデータ収集装置10が停止するよう駆動部104を制御する。
センサデータ収集装置10は、エスカレータによって、上部乗り場1001まで搬送される。
【0041】
次に、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が、踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したかどうかを判定する(ステップST305)。具体的には、乗下車推定部1022は、例えば、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したかどうかを判定する。
【0042】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達していないと判定した場合(ステップST305の“NO”の場合)、ステップST305を繰り返し、センサデータ収集装置10が踏み段1004から上部乗り場1001に到達するまで待機する。なお、この間も、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録は継続している。
【0043】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したと判定した場合(ステップST305の“YES”の場合)、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達した旨の情報を、乗下車時刻設定部103に出力する。このとき、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したことを検出した到達判定時刻を、あわせて乗下車時刻設定部103に出力する。
【0044】
乗下車時刻設定部103は、ステップST305において、乗下車推定部1022から、センサデータ収集装置10は踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達した旨の情報を取得すると、到達判定時刻を往路下車時刻に設定し、記録部105に記録させる(ステップST306)。なお、乗下車時刻設定部103は、センサデータ収集装置10が踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達した旨の情報を取得した時刻を、往路乗車時刻に設定するようにしてもよい。
【0045】
センサデータ収集装置10は、エスカレータの運転方向が反転されるのを待機し、エスカレータの運転が反転されると、上部乗り場1001から踏み段1004に向けて移動を開始する(ステップST307)。
ユーザは、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001に到達すると、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10を踏み段1004から上部乗り場1001に移動させる。そして、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001上まで移動すると、ユーザは、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10を停止させる。ユーザからの指示に基づき、センサデータ収集装置10が移動または停止する動作については、説明済みであるため、重複した説明を省略する。
さらに、ユーザは、エスカレータの運転方向を反転させる。具体的には、ユーザは、例えば、エスカレータの駆動装置に対して、上部スプロケットの駆動を制御させ、踏み段1004を循環させる方向を反転させる。
【0046】
その後、ユーザは、センサデータ収集装置10を、踏み段1004に向けて自走するよう、上部乗り場1001上に設置しなおす。
ユーザがセンサデータ収集装置10を設置しなおす具体的な動作としては、例えば、ユーザは、リモコン等を操作して、センサデータ収集装置10が踏み段1004へ向けて自走する向きとなるよう、センサデータ収集装置10の向きを180度回転させるよう制御する。また、例えば、ユーザは、自ら手動でセンサデータ収集装置10の向きを180度回転させるようにしてもよい。
なお、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001に設置される際の、当該上部乗り場1001上の位置は、予め決められているものとする。具体的には、ユーザは、例えば、上部乗り場1001と踏み段1004との境界線から、当該境界線に対して垂直な方向かつ上部乗り場1001の上面と平行な方向に、設定された距離だけ離れた上部乗り場1001上に、センサデータ収集装置10を設置する。このときの設定された距離とは、ステップST301においてユーザがセンサデータ収集装置10を設置する際の設定された距離と、同じ長さとする。
そして、ユーザは、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10に対して、踏み段1004まで移動させる走行指示を送信する。センサデータ収集装置10は、走行指示を受け付けると、上部乗り場1001から踏み段1004に向けて移動を開始する。センサデータ収集装置10が移動する具体的な動作は、ステップST301で説明した動作と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0047】
なお、ステップST305において、乗下車時刻設定部103が、センサデータ収集装置10が踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したと判定した時点から、ステップST307において、センサデータ収集装置10が、上部乗り場1001から踏み段1004に向けて移動開始するまでの間も、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021によるセンサデータ収集装置10の自己位置の情報の記録は、継続させたままとしてよい。
また、ステップST305において、乗下車時刻設定部103が、センサデータ収集装置10が踏み段1004と上部乗り場1001の境界上に達したと判定した際に、センサ部101による音データの記録および自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録を一時停止し、ステップST307において、センサデータ収集装置10が、上部乗り場1001から踏み段1004に向けて移動開始する際に、当該音データおよび自己位置の情報の記録を再開するようにしてもよい。
ここでは、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録は、エスカレータの往路および復路において継続させたままにしておくものとする。
【0048】
乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が、上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達したかどうかを判定する(ステップST308)。具体的には、乗下車推定部1022は、例えば、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達したかどうかを判定する。
【0049】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達していないと判定した場合(ステップST308の“NO”の場合)、ステップST308を繰り返し、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001から踏み段1004に到達するまで待機する。なお、この間も、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録は継続している。
【0050】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達したと判定した場合(ステップST308の“YES”の場合)、自己位置推定部1021は、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を、乗下車時刻設定部103に出力する。このとき、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達したと判定した到達判定時刻を、あわせて乗下車時刻設定部103に出力する。
【0051】
乗下車時刻設定部103は、ステップST308において、乗下車推定部1022から、センサデータ収集装置10は上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を取得すると、到達判定時刻を復路乗車時刻に設定し、記録部105に記録させる(ステップST309)。なお、乗下車時刻設定部103は、センサデータ収集装置10が上部乗り場1001と踏み段1004の境界上に達した旨の情報を取得した時刻を、往路乗車時刻に設定するようにしてもよい。
【0052】
なお、センサデータ収集装置10が踏み段1004上まで移動すると、センサデータ収集装置10は、踏み段1004上で停止する。具体的には、センサデータ収集装置10は、例えば、ユーザからの停止指示を受け付け、駆動制御部の制御によって駆動部104が停止することで、踏み段1004上で停止する。
センサデータ収集装置10は、エスカレータによって、下部乗り場1002まで搬送される。
【0053】
次に、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が、踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達したかどうかを判定する(ステップST310)。具体的には、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達したかどうかを判定する。
【0054】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達していないと判定した場合(ステップST310の“NO”の場合)、ステップST310を繰り返し、センサデータ収集装置10が踏み段1004から下部乗り場1002に到達するまで待機する。なお、この間も、センサ部101による音データの記録、および、自己位置推定部1021による自己位置の情報の記録は継続している。
【0055】
乗下車推定部1022が、センサデータ収集装置10は踏み段1004と上部乗り場1002の境界上に達したと判定した場合(ステップST310の“YES”の場合)、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10が踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達した旨の情報を、乗下車時刻設定部103に出力する。このとき、乗下車推定部1022は、センサデータ収集装置10の前面パネルの中心が、踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達したと判定した到達判定時刻を、あわせて乗下車時刻設定部103に出力する。
【0056】
乗下車時刻設定部103は、ステップST310において、乗下車推定部1022から、センサデータ収集装置10は踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達した旨の情報を取得すると、到達判定時刻を復路下車時刻に設定し、記録部105に記録させる(ステップST311)。なお、乗下車時刻設定部103は、センサデータ収集装置10が踏み段1004と下部乗り場1002の境界上に達した旨の情報を取得した時刻を、往路乗車時刻に設定するようにしてもよい。
【0057】
センサ部101は、音データの取得、および、取得した音データの記録部105への記録を終了する。また、自己位置推定部1021は、自己位置の推定、および、推定した自己位置の情報の、記録部105への記録を終了する(ステップST312)。
具体的には、ユーザは、例えば、リモコンを操作して、センサデータ収集装置10に対して、音データの記録を停止させる音データ記録停止指示、および、自己位置の記録を停止させる自己位置記録停止指示を送信する。センサデータ収集装置10の制御部は、音データ記録停止指示を受け付け、センサ部101は、制御部の制御に基づき、音データの取得、および、取得した音データの記録を終了する。また、制御部は、自己位置記録停止指示を受け付け、自己位置推定部1021は、制御部の制御に基づき、自己位置の推定、および、推定した自己位置の情報の記録を終了する。
【0058】
また、センサデータ収集装置10が下部乗り場1002上まで移動すると、センサデータ収集装置10は、下部乗り場1002上で停止する。具体的には、センサデータ収集装置10は、例えば、ユーザからの停止指示を受け付け、駆動制御部の制御によって駆動部104が停止することで、下部乗り場1002上で停止する。
【0059】
以上のように、センサデータ収集装置10は、「データ収集処理」において、エスカレータの異常を診断するための診断用データを生成するもととなる音データまたは位置データ等を取得し記録部105に記録させる。
【0060】
ここで、図4は、実施の形態1において、「データ収集処理」後、記録部105に記録されている各種情報の内容の一例を示す図である。
図4Aは、記録部105に記録されている、音データおよび位置データに関する情報の内容の一例を示しており、図4Bは、記録部105に記録されている、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報の内容の一例を示している。
【0061】
図4Aに示すように、「データ収集処理」後、記録部105には、音データが、当該音データが取得された時刻と対応付けて記録されている。また、記録部105には、位置データが、当該位置データが推定された時刻と対応付けて記録されている。
音データと位置データとが同時に取得または推定される場合、記録部105において、音データと位置データとが紐付けて記録されるようにしてもよい。
【0062】
また、図4Bに示すように、「データ収集処理」後、記録部105には、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報が記録されている。
【0063】
次に、「診断処理」の具体的な動作を説明する。「診断処理」は、診断装置20が行う処理である。
「診断処理」は、当該「診断処理」が実施される前に、「データ収集処理」が実施されていることを前提とする。以下の動作説明では、一例として、「データ収集処理」実施後、記録部105には、図4で示したような内容の情報が記録されているものとする。
【0064】
図5は、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10による「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
往復データ取得部1061は、記録部105から、音データ、位置データ、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報を取得する(ステップST501)。
【0065】
往復データ取得部1061は、ステップST501にて取得した音データおよび位置データから、対象音データおよび対象位置データを抽出する(ステップST502)。
往復データ取得部1061は、ステップST501にて取得した、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報に基づき、対象音データおよび対象位置データを抽出する。
【0066】
具体的には、往復データ取得部1061は、ステップST501にて取得した音データおよび位置データのうち、往路乗車時刻から往路下車時刻までの間に取得または推定された音データおよび位置データを、それぞれ、対象音データおよび対象位置データとして抽出する。対象音データおよび対象位置データのうち、往復データ取得部1061が抽出する、往路乗車時刻から往路下車時刻までの間の対象音データおよび対象位置データを、それぞれ、往路対象音データ、および、往路対象位置データともいうものとする。
【0067】
また、往復データ取得部1061は、ステップST501にて取得した音データおよび位置データのうち、復路乗車時刻から復路下車時刻までの間に取得または推定された音データおよび位置データを、それぞれ、対象音データおよび対象位置データとして抽出する。対象音データおよび対象位置データのうち、往復データ取得部1061が抽出する、復路乗車時刻から復路下車時刻までの間の対象音データおよび対象位置データを、それぞれ、復路対象音データ、および、復路対象位置データともいうものとする。
【0068】
往復データ取得部1061は、抽出する音データおよび位置データを、当該音データおよび位置データに対応付けられて記録されている時刻と、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、または、復路下車時刻とを付き合わせることによって特定すればよい。
【0069】
ここでは、記録部105には、図4で示したような内容の情報が記録されているものとしているので、まず、往復データ取得部1061は、ステップST501において、図4Aで示すような音データおよび位置データと、図4Bに示すような往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報とを、記録部105から取得する。そして、往復データ取得部1061は、ステップST502において、取得した音データおよび位置データから、それぞれ、往路対象音データ、および、往路対象位置データとして、2018/3/1 9:00:00〜2018/3/1 9:00:10の間の音データおよび位置データを抽出する。
また、往復データ取得部1061は、復路対象音データ、および、復路対象位置データとして、2018/3/1 9:03:00〜2018/3/1 9:03:10の間の音データおよび位置データを抽出する。
【0070】
往復データ取得部1061は、抽出した対象音データおよび対象位置データを、時間反転部107に出力する。
【0071】
時間反転部107は、往復データ取得部1061から対象音データおよび対象位置データを取得し、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのいずれか一方を時間反転させて、反転後対象音データを生成する(ステップST503)。
実施の形態1では、一例として、時間反転部107は、復路対象音データを時間反転させるものとする。なお、これは一例に過ぎず、時間反転部107は、往路対象音データを時間反転させるようにしてもよく、時間反転部107は、往路または復路のいずれか一方の対象音データを時間反転させるようになっていればよい。
【0072】
ここでは、復路対象音データは、10秒間のデータであるので、時間反転部107は、復路対象音データについて、5秒地点である、2018/3/1 9:03:05に対応付けられた復路対象音データを基点として、当該復路対象音データを、対称に反転させる。
その結果、例えば、反転前には2018/3/1 9:03:10に対応付けられていた復路対象音データは、反転後、2018/3/1 9:03:00に対応付けられるようになる。
【0073】
時間反転部107は、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのうち、時間反転させた対象音データを、時間反転させなかった方の対象音データおよび対象位置データと共に、信号処理部106に出力する。
上述のとおり、実施の形態1において、時間反転部107が対象音データを反転させて生成したデータを、反転後対象音データともいう。
実施の形態1において、反転後対象音データのうち、往路対象音データを反転させて生成した反転後対象音データを反転後往路対象音データともいい、復路対象音データを反転させて生成した反転後対象音データを反転後復路対象音データともいうものとする。
【0074】
ここでは、時間反転部107は、反転後復路対象音データ、および、往路対象音データを、信号処理部106に出力する。
なお、時間反転部107は、反転後復路対象音データ、および、往路対象音データを、記録部105に記録させるようにしてもよい。その場合、信号処理部106のFFT部1062は、後述の動作を、記録部105に記録されている、反転後復路対象音データ、および、往路対象音データに基づいて行う。
【0075】
FFT部1062は、ステップST503にて時間反転部107から出力された対象音データおよび反転後対象音データを、FFTにより周波数データに変換し、振幅スペクトログラムを取得する(ステップST504)。FFT部1062は、取得した、対象音データおよび反転後対象音データの振幅スペクトログラムを、それぞれ、周波数音データおよび反転後周波数音データとする。
【0076】
実施の形態1において、周波数音データのうち、往路の周波数音データを往路周波数音データ、復路の周波数音データを復路周波数音データともいうものとする。また、実施の形態1において、反転周波数音データのうち、往路の反転後周波数音データを反転後往路周波数音データ、復路の反転後周波数音データを反転後復路周波数音データともいうものとする。
ここでは、FFT部1062は、往路周波数音データおよび反転後復路周波数音データを取得する。
なお、時間反転された音データであってもFFTを行うことができる。
【0077】
振幅スペクトログラムとは、音データをN点(2のべき乗数)ごとに窓関数を適用した後にFFTし、その結果を時系列順に並べたものであり、時間と、周波数と、振幅またはパワーの3次元からなるデータである。ユーザは、Nを、2のべき乗数であり音データの点数より少ない範囲であれば、自由に設定することができる。
【0078】
FFT部1062は、往路周波数音データおよび反転後復路周波数音データを、対象位置データとあわせて、統合部1063に出力する。
FFT部1062は、往路周波数音データ、および、反転後復路周波数音データを、記録部105に記録させるようにしてもよい。その場合、信号処理部106の統合部1063は、後述の動作を、記録部105に記録されている往路周波数音データ、および、反転後復路周波数音データに基づいて行う。
【0079】
信号処理部106の統合部1063は、ステップST504においてFFT部1062が取得した、周波数音データと反転後周波数音データとを統合し、統合音データを生成する(ステップST505)。ここでは、統合部1063は、往路周波数音データと、反転後復路周波数音データとを統合して、統合音データを生成する。
具体的には、統合部1063は、平均値算出方式、または、最小値選択方式等を用いて、往路周波数音データと反転後復路周波数音データとを統合する。
例えば、平均値算出方式を採用する場合、統合部1063は、往路周波数音データと反転後復路周波数音データの時間要素および周波数要素ごとに振幅値の足し合わせを行った後、2で除算することによって、往路周波数音データと反転後復路周波数音データの振幅値に関する平均値を求めることで、往路周波数音データと反転後復路周波数音データを統合する。
例えば、最小値選択方式を採用する場合、統合部1063は、往路周波数音データと反転後復路周波数音データの時間要素および周波数要素ごとに小さい振幅値を抽出し、往路周波数音データと反転後復路周波数音データの最小値のみから構成されるデータを作成することで、往路周波数音データと反転後復路周波数音データを統合する。
なお、上述の例は一例に過ぎず、信号処理部106は、往路周波数音データの振幅スペクトログラムと反転後復路周波数音データの振幅スペクトログラムを統合し、かつ、外乱を低減できる方法であれば、他の方法を用いて往路周波数音データと反転後復路周波数音データとの統合を行うようにしてもよい。
【0080】
実施の形態1において、統合部1063は、上述のように、往路周波数音データと反転後復路周波数音データとを、互いに同一の時間方向に沿って統合する。これにより、統合部1063は、往路周波数音データと反転後復路周波数データとを、互いのデータ収集位置が一致するデータ同士を対応させて統合するようにしている。
統合部1063は、生成した統合音データを、対象位置データと紐付けて、診断用データとして、記録部105に記録させる。
【0081】
診断部108は、記録部105を参照し、信号処理部106が記録させた統合音データを用いて、エスカレータの異常診断を実施する(ステップST506)。診断部108は、例えば、機械学習等、既存の方法を用いて異常診断を実施すればよい。
エスカレータの異常発生箇所を求める場合には、診断部108は、異常として診断した統合音データの発生時刻と対応する、反転させなかった方の対象音データに紐付く対象位置データに基づき、当該対象位置データ上でどこに該当するか求める。例えば、ここでは、ステップST503にて時間反転部107は復路対象音データを時間反転させるものとしているので、診断部108は、異常として診断した統合音データについて、当該統合音データの発生時刻と対応する、往路対象位置データ上の該当の位置を、異常発生箇所として求める。なお、統合音データと、反転させなかった方の対象音データに紐付く対象位置データとは、対応付けられている時刻によって対応がとれる。
診断部108は、外部の装置等に対して、異常診断結果に関する情報を送信することもできる。
【0082】
以上のように、センサデータ収集装置10は、「診断処理」において、エスカレータの異常を診断するための診断用データを生成し、生成した診断用のデータに基づき、エスカレータの異常診断を実施する。
【0083】
以上説明したように、実施の形態1に係る診断装置20は、エスカレータにおいて踏み段1004が一往復する間に取得した音データを時間反転させて統合することで、エスカレータの異常を診断するための診断用データを生成するようにした。よって、エスカレータにおいて踏み段1004が1回往復する分のみのデータに基づき、エスカレータの診断用データを生成することができる。その結果、踏み段1004を複数回往復させる必要がなく、診断用データを生成するためのデータ収集時間を短縮することができる。
また、診断装置20は、エスカレータの同一箇所にて発生する異常音のマイク受音強度に影響を与えることなく診断用データを生成することができるとともに、突発的に発生した外乱を低減した診断用データを生成することができる。具体的には、例えば、エスカレータに診断装置20が載置されて踏み段1004が一往復する間に、エスカレータの同一箇所にて、往路および復路の両方で異常音が発生している場合、診断装置20は、踏み段1004が一往復する間に取得した音データを時間反転させて統合し、平均をとることにより、異常音の減衰を防ぐことができる。一方、往路のある位置において外乱音が発生し、復路の同じ位置では当該外乱音が発生しなかった場合、診断装置20は、踏み段1004が一往復する間に取得した音データを時間反転させて統合し、平均をとることにより、当該外乱音を低減させることができる。
【0084】
なお、以上の説明では、時間反転部107が、往路または復路のいずれか一方の対象音データを時間反転させた(図5のステップST503)後、FFT部1062が、対象音データおよび反転後対象音データを、周波数データに変換する(図5のステップST504)ようにした。しかし、これに限らず、ステップST503の動作とステップST504の動作の順序は逆であってもよい。
つまり、FFT部1062は、対象音データを周波数データに変換した後、時間反転部107が、周波数データを時間反転させるようにしてもよい。
この場合、時間反転部107は、例えば、振幅スペクトログラムの時間軸に対して、周波数データの反転を行うようにする。例えば、周波数データの時間要素が1000点あった場合、時間軸において1点目の周波数振幅列と時間軸において1000点目の周波数振幅列を入れ替え、時間軸において2点目の周波数振幅列と時間軸において999点目の周波数振幅列を入れ替える、というように、時間反転部107は、全ての時間要素に属する周波数データに対して、周波数データの反転を行う。
【0085】
また、以上の説明では、「データ収集処理」において、記録部105には、センサ部101が収集した音データそのものが記録されるものとした。
しかし、これに限らず、「データ収集処理」において、センサ部101が収集した音データを周波数データに変換した後、記録部105に記録させておくようにしてもよい。
具体的には、FFT部1062が、センサ部101から音データを取得し、当該音データをFFTして周波数データに変換後、音データの収集日時と対応付けて記録部105に記録させておくようにする。
この場合、その後の「診断処理」において、図5のステップST504は省略可能である。
また、以上の説明では、診断装置20がFFT部1062を有するものとしたが、診断装置20はFFT部1062を有しないものとしてもよい。その場合、診断装置20は、FFTを行わず、統合部1063は、時間反転部107から出力された対象音データおよび反転後対象音データを統合する。
【0086】
また、以上の説明では、センサデータ収集装置10は駆動部104を備え、自走するものとした。
しかし、これに限らず、センサデータ収集装置10は駆動部104を備えないものとしてもよい。
その場合、ユーザは、「データ収集処理」において、センサデータ収集装置10を踏み段1004上で往復移動させる際、センサデータ収集装置10を踏み段1004上に手動で設置する、または、センサデータ収集装置10を踏み段1004上から手動で撤去する。
また、この場合、ユーザは、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻も、例えば、センサデータ収集装置10の踏み段1004への設置し、音データおよび自己位置の情報の記録を開始した後、エスカレータの運転を開始した時刻、または、エスカレータの運転を終了した時刻として、手動で記録部105に記録させるようにする。
【0087】
図6A図6Bは、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
実施の形態1において、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108の機能は、処理回路601により実現される。すなわち、センサデータ収集装置10は、音データまたは位置データ等を取得し、エスカレータ等の設備の異常診断を行うための診断用データの生成処理および異常診断処理の制御を行うための処理回路601を備える。
処理回路601は、図6Aに示すように専用のハードウェアであっても、図6Bに示すようにメモリ608に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)607であってもよい。
【0088】
処理回路601が専用のハードウェアである場合、処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0089】
処理回路601がCPU607の場合、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、または、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。すなわち、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108は、HDD(Hard Disk Drive)602、メモリ608等に記憶されたプログラムを実行するCPU607、またはシステムLSI(Large−Scale Integration)等の処理回路により実現される。また、HDD602、またはメモリ608等に記憶されたプログラムは、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ608とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)等の、不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0090】
なお、位置推定部102と、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、位置推定部102については専用のハードウェアとしての処理回路601でその機能を実現し、乗下車時刻設定部103と、信号処理部106と、時間反転部107と、診断部108については処理回路がメモリ608に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
また、駆動部104は、モータ、ローラ等の駆動装置605から構成される。
また、センサ部101は、マイクまたは振動センサ等のセンサ606から構成される。
また、記録部105は、メモリ608を使用する。なお、これは一例であって、記録部105は、HDD602、SSD(Solid State Drive)、または、DVD等によって構成されるものであってもよい。
また、センサデータ収集装置10は、リモコンまたは表示装置等の外部機器との通信を行う、入力インタフェース装置603、および、出力インタフェース装置604を有する。
【0091】
以上のように、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10に搭載された診断装置20は、診断対象設備(エスカレータ)が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータ(音データ)を含む往路センサデータ(往路対象音データ)および復路センサデータ(復路対象音データ)を取得する、往復データ取得部1061と、往復データ取得部1061が取得した往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、往路センサデータと復路センサデータとを統合し、診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部1063とを備えるように構成されている。そのため、同一経路を往復駆動される搬送設備の異常を診断する際に用いる診断用データを生成するためのデータ収集時間を短縮することができる。また、搬送設備の特定箇所にて発生する異常音のマイク受音強度に影響を与えることなく、突発的に発生した外乱を低減した診断用データを生成することができる。
【0092】
実施の形態2.
実施の形態1では、自己位置推定部1021にてセンサデータ収集装置10の自己位置を推定し、常に位置データを記録部105に記録させていた。
実施の形態2では、自己位置の記録を常には行わない実施の形態について説明する。
【0093】
実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10の構成は、実施の形態1において図2を用いて説明した構成と同様であるため、重複した説明を省略する。
ただし、実施の形態2では、「データ収集処理」において、センサデータ収集装置10の自己位置推定部1021は、常には位置データの記録は行わない。また、実施の形態2では、「診断処理」において、センサデータ収集装置10は、エスカレータの異常診断のための診断用データを生成する際に、エスカレータが同一経路を往復駆動される際の往路における始点および終点と、当該同一経路を往復駆動される際の復路における始点および終点以外の位置データは用いない。
実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10のハードウェア構成は、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明した構成と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0094】
次に、実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10の動作について説明する。
実施の形態2においても、センサデータ収集装置10は、「データ収集処理」と「診断処理」とを行う。
以下、「データ収集処理」および「診断処理」の具体的な動作について、それぞれ、説明する。
【0095】
まず、「データ収集処理」の具体的な動作を説明する。
なお、実施の形態2においても、実施の形態1同様、一例として、エスカレータは、まず、下部から上部へ上昇運転され、次に、上部から下部へ下降運転されるものとする。
図7は、実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10による「データ収集処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図7において、ステップST701,ステップST703〜ステップST711の具体的な動作は、それぞれ、実施の形態1において説明した、図3のステップST301,ステップST303〜ステップST311の具体的な動作と同様であるため、重複した説明を省略し、図7のステップST702およびステップST712の具体的な動作について以下説明する。
【0096】
ステップST702において、センサ部101は、音データの取得、および、取得した音データの記録部105への記録を開始する。
実施の形態2では、ステップST702において、自己位置推定部1021は、センサデータ収集装置10の自己位置の推定は行うが、推定した自己位置の情報の、記録部105への記録は行わない。
ステップST712において、センサ部101は、音データの取得、および、取得した音データの記録部105への記録を終了する。
また、自己位置推定部1021は、自己位置の推定を終了する。
【0097】
次に、「診断処理」の具体的な動作を説明する。
実施の形態2においても、実施の形態1同様、「診断処理」は、当該「診断処理」が実施される前に、「データ収集処理」が実施されていることを前提とする。
【0098】
図8は、実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10aによる「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図8において、ステップST804の具体的な動作は、実施の形態1において説明した、図5のステップST504の具体的な動作と同様であるため、重複した説明を省略し、図8のステップST801〜ステップST803、および、ステップST805〜ステップST806の具体的な動作について以下説明する。
【0099】
往復データ取得部1061は、記録部105から、音データ、往路乗車時刻、往路下車時刻、復路乗車時刻、および、復路下車時刻の情報を取得する(ステップST801)。
実施の形態2では、記録部105には位置データは記録されていないため、往復データ取得部1061は、位置データは取得しない。往復データ取得部1061が位置データを取得しない点を除いて、ステップST801の具体的な動作は、図5のステップST501の具体的な動作と同様である。
【0100】
往復データ取得部1061は、ステップST801にて取得した音データから、対象音データを抽出する(ステップST802)。
実施の形態2では、往復データ取得部1061は、対象位置データの抽出は行わない。往復データ取得部1061が対象位置データの抽出を行わない点を除いて、ステップST802の具体的な動作は、図5のステップST502の具体的な動作と同様である。
往復データ取得部1061は、抽出した対象音データを、時間反転部107に出力する。
【0101】
時間反転部107は、往復データ取得部1061から対象音データを取得し、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのいずれか一方を時間反転させて、反転後対象音データを生成する(ステップST803)。
ステップST803の具体的な動作は、図5のステップST503の具体的な動作と同様である。
時間反転部107は、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのうち、時間反転させて生成した反転後対象音データを、時間反転させなかった方の対象音データと共に、信号処理部106に出力する。
ここでは、時間反転部107は、復路対象音データを反転するものとし、時間反転部107は、反転復路対象音データおよび往路対象音データを、信号処理部106に出力するとする。
【0102】
信号処理部106の統合部1063は、ステップST804においてFFT部1062が取得した、周波数音データと反転後周波数音データとを統合し、統合音データを生成する(ステップST805)。ここでは、信号処理部106は、往路周波数音データと、反転後復路周波数音データとを統合して、統合音データを生成する。
ステップST805の具体的な動作は、図5のステップST505の具体的な動作と同様である。
統合部1063は、生成した統合音データを、診断用データとして、記録部105に記録させる。
【0103】
診断部108は、記録部105を参照し、信号処理部106が記録部105に記録させた統合音データを用いて、エスカレータの異常診断を実施する(ステップST806)。
実施の形態2において、診断部108は、対象位置データを用いた異常診断は実施しない。診断部108は、エスカレータの異常発生箇所を診断する場合には、統合音データの、往路乗車時刻または復路乗車時刻からの経過時間、および、エスカレータの踏み段1004の移動速度を用いて診断する。なお、エスカレータの踏み段1004の移動速度は予めわかっているものとする。
診断部108は、対象位置データを用いた異常診断は実施しない点を除いて、ステップST806の具体的な動作は、図5のステップST506の具体的な動作と同様である。
【0104】
なお、実施の形態2においても、実施の形態1同様、時間反転部107が、往路または復路のいずれか一方の対象音データを時間反転させる動作(図8のステップST803)と、FFT部1062が、対象音データおよび反転後対象音データを、周波数データに変換する動作(図8のステップST804)の順序は逆であってもよい。
また、診断装置20がFFT部1062を有しないものとしてもよい。
【0105】
また、実施の形態2においても、実施の形態1同様、「データ収集処理」において、センサ部101が取得した音データを周波数データに変換した後、記録部105に記録させておくようにしてもよい。
【0106】
また、実施の形態2においても、実施の形態1同様、センサデータ収集装置10は駆動部104を備えず、自走しないものとしてもよい。
【0107】
以上のように、実施の形態2に係るセンサデータ収集装置10に搭載された診断装置20は、実施の形態1同様、診断対象設備(エスカレータ)が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータ(音データ)を含む往路センサデータ(往路対象音データ)および復路センサデータ(復路対象音データ)を取得する、往復データ取得部1061と、往復データ取得部1061が取得した往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、往路センサデータと復路センサデータとを統合し、診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部1063とを備えるように構成されている。そのため、往復可能に駆動し、物体を連続的に一定の距離搬送可能な設備の異常を診断する際に用いる診断用データを生成するためのデータ収集時間を短縮することができる。
また、実施の形態2に係る診断装置20は、自己位置の記録を常には行わないようにしたため、診断用データを生成するためのデータ収集時間を短縮するとともに、より少ないデータに基づき、突発的に発生した外乱を低減した診断用データを生成することができる。
【0108】
実施の形態3.
実施の形態1では、時間反転部107が、往路の対象音データ、または、復路の対象音データのいずれか一方を時間反転させるようにしていた。
実施の形態3では、対象音データについて、上述の、時間反転させる動作を行わない実施の形態について説明する。
【0109】
図9は、実施の形態3に係る診断装置20aを搭載したセンサデータ収集装置10aの構成例を示す図である。
図9において、実施の形態1で図2を用いて説明した、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10と同様の構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
図9に示すように、実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aは、実施の形態1に係るセンサデータ収集装置10とは、時間反転部107を備えない点が異なる。
実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aのハードウェア構成は、時間反転部107の構成を除いて、実施の形態1において図6Aおよび図6Bを用いて説明した構成と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0110】
次に、実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aの動作について説明する。
実施の形態3においても、センサデータ収集装置10aは、「データ収集処理」と「診断処理」とを行う。
ただし、実施の形態3では、「診断処理」において、センサデータ収集装置10aは、「データ収集処理」にて、エスカレータの異常診断のための診断用データを生成する際に、対象音データの時間反転は行わない。
実施の形態3における「データ収集処理」の具体的な動作は、実施の形態1で説明した「データ収集処理」の具体的な動作と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0111】
以下、「診断処理」の具体的な動作について説明する。
実施の形態3でも、実施の形態1同様、「診断処理」は、当該「診断処理」が実施される前に、「データ収集処理」が実施されていることを前提とする。
【0112】
図10は、実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aによる「診断処理」の動作を説明するためのフローチャートである。
図10において、ステップST1001〜ステップST1002,ステップST1005の具体的な動作は、実施の形態1において説明した、図5のステップST501〜ステップST502,ステップST506の具体的な動作と同様であるため、重複した説明を省略し、図10のステップST1003およびステップST1004の具体的な動作について以下説明する。
【0113】
ステップST1003において、FFT部1062は、往復データ取得部1061から対象音データを取得し、取得した対象音データをFFTし、往路周波数音データおよび復路周波数音データを取得する(ステップST1003)。そして、FFT部1062は、取得した往路周波数音データおよび復路周波数音データを、対象位置データとあわせて、統合部1063に出力する。
なお、ここでは、診断装置20aがFFT部1062を有するものとするが、診断装置20aはFFT部1062を有しないものとしてもよい。その場合、診断装置20aはFFTを行わず、統合部1063は、往復データ取得部1061から出力された往路対象音データおよび復路対象音データを統合する。
【0114】
統合部1063は、対象位置データに基づき、ステップST1003においてFFT部1062が取得した往路周波数音データおよび復路周波数音データを統合し、統合音データを生成する(ステップST1004)。
具体的には、統合部1063は、往路対象位置データと復路対象位置データとのつき合わせを行い、一致する位置の往路対象位置データと復路対象位置データのペアを検出する。そして、統合部1063は、当該一致する位置の往路対象位置データと復路対象位置データにそれぞれ対応付けられた時刻を特定する。統合部1063は、特定した時刻に対応付けられている往路周波数音データおよび復路周波数音データを特定し、特定した往路周波数音データおよび復路周波数音データを統合する。
例えば、往路対象位置データ上で、センサデータ収集装置10aが下部乗り場1002と踏み段1004との境界上に位置する場合、統合部1063は、当該往路対象位置データ上の位置と同じ位置を示す、復路対象位置データを特定する。そして、統合部1063は、センサデータ収集装置10aが下部乗り場1002と踏み段1004の境界上に位置する往路対象位置データに対応付く往路周波数音データと、特定した復路対象位置データに対応付く復路周波数音データとを統合する。
往路周波数音データと復路周波数音データの統合方法は、実施の形態1で説明した統合方法と同様の方法とすればよい。
実施の形態3において、統合部1063は、上述のように、往路周波数音データと復路周波数音データとを、往路対象位置データと復路対象位置データとに基づき、往路周波数音データと復路周波数音データのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致する周波数音データ同士を特定して、統合する。
【0115】
このように、実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aは、時間反転部107を備えず、対象音データおよび対象位置データについて、時間方向に反転させる処理を実施しないため、当該処理にかかる処理負荷を軽減することができる。
【0116】
以上のように、実施の形態3に係るセンサデータ収集装置10aに搭載された診断装置20aは、診断対象設備(エスカレータ)が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータ(音データ)を含む往路センサデータ(往路対象音データ)および復路センサデータ(復路対象音データ)を取得する、往復データ取得部1061と、往復データ取得部1061が取得した往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、往路センサデータと復路センサデータとを統合し、診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部1063とを備え、往復データ取得部1061は、診断対象設備が同一経路を往復駆動されてセンサデータが収集される間に生成された、同一経路上の複数の位置を示す往路位置データおよび復路位置データを取得するものであり、統合部1063は、往復データ取得部1061が取得した往路位置データと復路位置データとが示す位置に基づき、往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を特定するように構成されている。そのため、往復可能に駆動し、物体を連続的に一定の距離搬送可能な設備の異常を診断する際に用いる診断用データを生成するためのデータ収集時間を短縮するとともに、反転処理にかかる処理負荷を軽減することができる。
【0117】
また、実施の形態1および実施の形態3において、センサ部101が、往路乗車時刻または復路乗車時刻から音データの取得を開始し、往路下車時刻または復路下車時刻で音データの取得を停止するようになっており、自己位置推定部1021が、往路乗車時刻または復路乗車時刻から位置データの推定を開始し、往路下車時刻または復路下車時刻で位置データの推定を停止するようになっていて、記録部105には、往路乗車時刻から往路下車時刻まで、および、復路乗車時刻から復路下車時刻までの音データおよび位置データしか記録されていないのであれば、センサデータ収集装置10,10aは、乗下車推定部1022、乗下車時刻設定部103、および、往復データ取得部1061を備えない構成としてもよい。
また、実施の形態2において、センサ部101が、往路乗車時刻または復路乗車時刻から音データの取得を開始し、往路下車時刻または復路下車時刻で音データの取得を停止するようになっていて、記録部105には、往路乗車時刻から往路下車時刻まで、および、復路乗車時刻から復路下車時刻までの音データしか記録されていないのであれば、センサデータ収集装置10は、乗下車推定部1022、乗下車時刻設定部103、および、往復データ取得部1061を備えない構成としてもよい。
【0118】
また、以上の実施の形態1〜3では、診断装置20,20aは、センサデータ収集装置10,10aに搭載されているものとしたが、これに限らない。
診断装置20,20aは、センサデータ収集装置10,10aの外部に備えられ、センサデータ収集装置10,10aとネットワークを介して接続されるようにしてもよい。
つまり、診断装置20,20aとセンサデータ収集装置10,10aとで、診断システムを構成する。
この場合、診断装置20,20aは、センサデータ収集装置10,10aが記録させておいた音データまたは位置データを、ネットワークを介して取得し、取得した音データまたは位置データに基づき、診断対象設備の異常を診断する。
【0119】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0120】
この発明に係る診断装置は、設備の異常を診断する際に用いる診断用データについて、当該診断用データを生成するためのデータの収集時間を短縮し、外乱音を低減させた診断用データを生成することができるように構成したため、往復駆動される搬送設備の診断装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
10,10a センサデータ収集装置、20,20a 診断装置、101 センサ部、102 位置推定部、103 乗下車時刻設定部、104 駆動部、105 記録部、106 信号処理部、107 時間反転部、108 診断部、601 処理回路、602 HDD、603 入力インタフェース装置、604 出力インタフェース装置、605 駆動装置、606 センサ、607 CPU、608 メモリ、1021 自己位置推定部、1022 乗下車推定部、1061 往復データ取得部、1062 FFT部、1063 統合部。
【要約】
診断対象設備が同一経路を往復駆動される間に複数のデータ収集位置で収集された複数のセンサデータを含む往路センサデータおよび復路センサデータを取得する、往復データ取得部(1061)と、往復データ取得部(1061)が取得した往路センサデータおよび復路センサデータのそれぞれに含まれる複数のセンサデータのうち、互いのデータ収集位置が一致するセンサデータ同士を対応させて、往路センサデータと復路センサデータとを統合し、診断対象設備の異常を診断するための診断用データを生成する統合部(1063)とを備えた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10