(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スタブは、当該スタブを有する前記無給電アンテナの共振状態と、当該スタブを有する当該無給電アンテナの隣に設けられている前記給電アンテナを挟んで反対側に存在するアンテナの共振状態と、が同じとなるように設定された長さを有している請求項1に記載のアンテナユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、従来のモノパルス方式用のアンテナユニットの一例を示す説明図である。このアンテナユニットは、一対のアンテナ91,92を有している。
図9は、
図8に示す一対のアンテナ91,92それぞれの指向性を説明するためのシミュレーション結果を示すグラフである。
図9において、細い実線が第1アンテナ91の結果であり、太い実線が第2アンテナ92の結果である。なお、比較のために
図9には、第1アンテナ91と形状が同じであるアンテナを一つのみ有する場合の指向性のシミュレーション結果を、破線により示している。
【0006】
アンテナが一つである場合(
図9の破線)、基準角度(0°)を中心として左右対称の指向性が得られる。これに対して、
図8に示すように一対のアンテナ91,92を並べて構成した場合、第1アンテナ91の指向性(
図9の細い実線)はプラスの角度側で利得が最も高く、第2アンテナ92の指向性(
図9の太い実線)はマイナスの角度側で利得が最も高くなっている。つまり、第1アンテナ91の指向性がプラス側に歪み、第2アンテナ92の指向性がマイナス側に歪んでいる。これにより、
図9に示すアンテナユニットの場合、第1アンテナ91の指向性と第2アンテナ92の指向性とは、基準角度(0°)を中心として左右非対称となる。
【0007】
このように指向性が歪む理由は、2つのアンテナ91,92が接近して設けられていることから、これらアンテナ間のアイソレーションの影響によるものと考えられる。つまり、給電していない一方のアンテナ(92)側においても、給電している他方のアンテナ(91)とのアイソレーションの影響で、給電する場合と同様に共振することが原因であると考えられる。
【0008】
ここで、前記のようなモノパルス方式で用いられるアンテナユニットでは、
図8に示すように、一対のアンテナ91,92を並べて配置する必要があるが、第1アンテナ91の指向性が一方側(プラス側)に歪み、第2アンテナ92の指向性が他方側(マイナス側)に歪み、これらアンテナ91,92の指向性が基準角度(0°)を中心として左右非対称になっていると、電波(反射波)の到来角度の検出誤差が大きくなる可能性がある。例えば、一対のアンテナ91,92の指向性が非対称となっていることで、一方のアンテナ91では正確に検知できる反射波を、他方のアンテナ92では正確に検知できない可能性がある。
【0009】
したがって、
図10に示すように、アイソレーションは、隣り合うアンテナの間隔が広くなると改善されることから、
図8に示すアンテナユニットにおいても、アンテナ91,92の間隔Dを大きくすればよい。しかし、この場合、アイソレーションの改善に反して、モノパルス方式のセンシングでは電波(反射波)の到来角度の検出範囲が狭くなってしまうという問題が生じる。
つまり、レーダーとして検出範囲を広くするためにはアンテナの間隔を狭くするのが好ましいが、この間隔を狭くするとアンテナそれぞれの指向性に歪が生じてレーダーとしての性能を低下させてしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、アンテナの間隔が狭くなっていても、各アンテナの指向性の歪みが生じにくくなるアンテナユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアンテナユニットは、基板の面内に並んで設けられている複数の給電アンテナと、当該面内において当該複数の給電アンテナの両側に設けられている無給電アンテナと、を備え、前記給電アンテナのそれぞれは、給電線路及び当該給電線路から給電される複数の放射素子を有するアンテナ本体部を備え、前記無給電アンテナのそれぞれは、その隣に設けられている前記給電アンテナの前記アンテナ本体部と同じアンテナ形状を有する無給電本体部と、当該無給電本体部の端部から延在しているスタブと、を備えている。
【0012】
本発明によれば、給電アンテナの間隔が狭くなっていても、各給電アンテナにおいて、その隣に存在している無給電アンテナによる影響と、その給電アンテナを挟んで反対側に存在しているアンテナによる影響とが同等となることで、各給電アンテナの指向性の歪が生じにくくなる。
【0013】
また、前記スタブは、当該スタブを有する前記無給電アンテナの共振状態と、当該スタブを有する当該無給電アンテナの隣に設けられている前記給電アンテナを挟んで反対側に存在するアンテナの共振状態と、が同じとなるように設定された長さを有しているのが好ましい。
このようにスタブの長さを設定することで、各給電アンテナにおいて、その隣に存在している無給電アンテナによる影響と、その給電アンテナを挟んで反対側に存在しているアンテナによる影響とが、同等となるようにすることが可能となる。
【0014】
また、本発明のアンテナユニットは、基板の面内に並んで設けられている複数の給電アンテナと、当該面内において当該複数の給電アンテナの両側に設けられている無給電アンテナと、を備え、前記無給電アンテナのそれぞれは、その隣に設けられている前記給電アンテナを挟んで反対側に存在するアンテナと、共振状態が同じとなるように設定されたアンテナ形状を有している。
【0015】
本発明によれば、給電アンテナの間隔が狭くなっていても、各給電アンテナにおいて、その隣に存在している無給電アンテナによる影響と、その給電アンテナを挟んで反対側に存在しているアンテナによる影響とが同等となることで、各給電アンテナの指向性の歪が生じにくくなる。
【0016】
また、前記無給電アンテナのそれぞれは、その隣に設けられている前記給電アンテナのアンテナ本体部と同じアンテナ形状を有する無給電本体部と、当該無給電本体部の端部から延在しているスタブと、を有していることによって、その隣に設けられている前記給電アンテナを挟んで反対側に存在するアンテナと、共振状態が同じとなるように設定されている。
このような無給電アンテナの形状とすることで、各給電アンテナの指向性の歪が生じにくくなるアンテナユニットが得られる。
【0017】
また、前記スタブは、下記に定義する長さを有しているのが好ましい。
前記スタブの長さ=L+n×(λ/2)
ただし、0<L<λ/2
n=0以上の整数
λ=前記無給電アンテナを伝播する電波の波長
このようにスタブの長さを設定することで、各給電アンテナにおいて、その隣に存在している無給電アンテナによる影響と、その給電アンテナを挟んで反対側に存在しているアンテナによる影響とが、同等となるようにすることが可能となる。
また、このようにスタブの長さを設定することによって、無給電アンテナの終端に吸収体を設けて反射を抑えるためのマッチングを行う必要がなく、アンテナユニットの構成を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアンテナユニットによれば、アンテナの間隔が狭くなっていても、アンテナそれぞれの指向性の歪みが生じにくくなる。この結果、本発明のアンテナユニットを、例えばモノパルス方式の受信アンテナとして用いる場合、給電アンテナの間隔を狭くして、電波(反射波)の到来角度の検出範囲を広くすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態のアンテナユニット5は、二つの給電アンテナ10,20を備えており、これら給電アンテナ10,20が受信した電波の位相差に基づいて電波の到来角度を検出するモノパルス方式用の受信アンテナユニットである。特に、このアンテナユニット5は、図外の送信アンテナから送信された電波の反射波を受信するレーダー用のアンテナユニットであり、給電アンテナ10,20はマイクロストリップアンテナからなる。
図1は、このアンテナユニット(受信アンテナユニット)5の概略構成を示す説明図である。
【0021】
アンテナユニット5は、第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とを備えている。第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とは、基板7の面内に並んで設けられている。これらアンテナ10,20が並んで設けられている方向(
図1において左右方向)を横方向と定義する。前記基板7は板状の誘電体からなり、以下において、この基板7を誘電体基板7という。
【0022】
第1給電アンテナ10は、第1の変換器1から延びる線路1aと繋がっている給電線路11、及びこの給電線路11から給電される複数の放射素子12を有している。第2給電アンテナ20は、第2の変換器2から延びる線路2aと繋がっている給電線路21、及びこの給電線路21から給電される複数の放射素子22を有している。本実施形態の第1給電アンテナ10は、10個の放射素子12を有しており、第2給電アンテナ20は、10個の放射素子22を有している。
【0023】
第1の変換器1と第2の変換器2とは同じ構成であり、これら変換器1,2は、図外の第1及び第2の導波管の端部に設けられている。変換器1(2)は、前記導波管及び線路1a(2a)間で電力変換を行っており、線路1a(2a)を介する給電線路11(21)への給電点となる。
【0024】
図2は、
図1に示すアンテナユニット5の給電側の部分を示す説明図である。第1給電アンテナ10において、給電線路11は、最も給電側の放射素子12aまでの線路であり、この給電線路11と10個の放射素子12とを含む部分を第1給電アンテナ10の「アンテナ本体部15」と定義する。また、第2給電アンテナ20において、給電線路21は、最も給電側の放射素子22aまでの線路であり、この給電線路21と10個の放射素子22とを含む部分を第2給電アンテナ20の「アンテナ本体部25」と定義する。
【0025】
第1給電アンテナ10は、線路1a、変換器1(
図1参照)及び前記導波管を介して、図外の集積回路(モノリシックマイクロ波集積回路)と接続されており、第2給電アンテナ20は、線路2a、変換器2(
図1参照)及び前記導波管を介して、図外の集積回路(モノリシックマイクロ波集積回路)と接続されている。そして、本実施形態では、第1給電アンテナ10及び第2給電アンテナ20の線路内を伝播する電波の波長をλとする。
【0026】
また、第1給電アンテナ10は、反射を抑制するために、線路1aの途中にマッチングパターン部13を更に有している。これと同様に、第2給電アンテナ20は、反射を抑制するために、線路2aの途中にマッチングパターン部23を更に有している。
【0027】
第1給電アンテナ10において(
図1参照)、給電線路11は、平面線路であり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。放射素子12は平面アンテナであり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。放射素子12の長さ寸法X1はλ/2であり、隣り合う放射素子12,12間における給電線路11の長さ寸法X11はλ/2である。長さ寸法X1,X11は、給電線路11の線路延伸方向の寸法である。
【0028】
第2給電アンテナ20において(
図1参照)、給電線路21は、平面線路であり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。放射素子22は平面アンテナであり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。放射素子22の長さ寸法X2はλ/2であり、隣り合う放射素子22,22間における給電線路21の長さ寸法X21はλ/2である。長さ寸法X2,X21は、給電線路21の線路延伸方向の寸法である。
【0029】
第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とは横方向に並んで設けられている。なお、前記横方向は、給電線路11,21の線路延伸方向に直交する方向となる。また、このアンテナユニット5を例えば車両の車体に設置した状態では、前記線路延伸方向は上下方向となり、横方向は水平方向となる。
【0030】
本実施形態の第1給電アンテナ10では、給電線路11を中心として放射素子12が設けられており、アンテナ本体部15は、給電線路11を中心として左右対称の形状を有している。また、第2給電アンテナ20では、給電線路21を中心として放射素子22が設けられており、アンテナ本体部25は、給電線路21を中心として左右対称の形状を有している。そして、第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とは同じ形状であり、アンテナユニット5の中心線Pを挟んで左右対称の配置にある。
【0031】
アンテナユニット5は、一対の給電アンテナ10,20の他に、一対の無給電アンテナ30,40を備えている。第1無給電アンテナ30と第2無給電アンテナ40とは、誘電体基板7の面内において第1及び第2給電アンテナ10,20の横方向の両側に設けられている。つまり、誘電体基板7の一つの面に、第1無給電アンテナ30、第1給電アンテナ10、第2給電アンテナ20、及び第2無給電アンテナ40が、この順で横方向に並んで設けられている。
【0032】
第1無給電アンテナ30は、無給電線路31、及びこの無給電線路31と繋がっている複数の無給電素子32を有している。無給電線路31は、その横方向隣に位置する給電線路11と同じ形状を有する平面線路であり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。第1無給電アンテナ30は、放射素子12と同数(10個)の無給電素子32を有している。各無給電素子32は、その横方向隣に位置する放射素子12と同じ形状を有した導電性薄膜からなり、誘電体基板7に形成されている。
そして、この第1無給電アンテナ30において、10個の無給電素子32と無給電線路31とを含む部分を第1無給電アンテナ30の「無給電本体部35」と定義する。以上より、第1無給電アンテナ30は、その隣に設けられている第1給電アンテナ10のアンテナ本体部15と同じアンテナ形状を有する無給電本体部35を有している構成となる。
【0033】
更に、この第1無給電アンテナ30は、この無給電本体部35の端部35a(
図2参照)から延在しているスタブ36を有している。スタブ36は、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。本実施形態のスタブ36は、端部35aに位置する無給電素子32(32a)から延在しており、無給電線路31の延長線に沿って所定長さを有するようにして形成されている。このスタブ36の長さLについては後に説明する。
【0034】
第2無給電アンテナ40は、無給電線路41、及びこの無給電線路41と繋がっている複数の無給電素子42を有している。無給電線路41は、その横方向隣に位置する給電線路21と同じ形状を有する平面線路であり、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなる。第2無給電アンテナ40は、放射素子22と同数(10個)の無給電素子42を有している。各無給電素子42は、その横方向隣に位置する放射素子22と同じ形状を有した導電性薄膜からなり、誘電体基板7に形成されている。
そして、この第2無給電アンテナ40において、10個の無給電素子42と無給電線路41とを含む部分を第2無給電アンテナ40の「無給電本体部45」と定義する。以上より、第2無給電アンテナ40は、その隣に設けられている第2給電アンテナ20のアンテナ本体部25と同じアンテナ形状を有する無給電本体部45を有している構成となる。
【0035】
更に、この第2無給電アンテナ40は、この無給電本体部45の端部45a(
図2参照)から延在しているスタブ46を有している。スタブ46は、誘電体基板7に形成された導電性薄膜からなり、本実施形態のスタブ46は、端部45aに位置する無給電素子42(42a)から延在しており、無給電線路41の延長線に沿って所定長さを有するようにして形成されている。なお、このスタブ46の長さLについては後に説明する。第1無給電アンテナ30のスタブ36と、第2無給電アンテナ40のスタブ46とは、同じ形状である。
【0036】
第1無給電アンテナ30及び第2無給電アンテナ40は、給電アンテナ10,20のように変換器1,2に接続されておらず、前記スタブ36及び前記スタブ46が終端となっており、これら無給電アンテナ30,40に対しては給電が行われていない。つまり、無給電アンテナ30,40は、実質的にレーダーとして使用しないアンテナである。
【0037】
また、本実施形態のアンテナユニット5では、
図1に示すように、第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20との横方向の間隔寸法をD
0とすると、第1無給電アンテナ30と第1給電アンテナ10との横方向の間隔寸法もD
0であり、また、第2無給電アンテナ40と第2給電アンテナ20との横方向の間隔寸法もD
0である。つまり、全てのアンテナは等間隔に設けられている。
【0038】
以上の構成を備えたアンテナユニット5によれば、給電アンテナ10,20が並んで設けられており、しかも、これら給電アンテナ10,20の間隔D
0が狭いことから、相互で影響を及ぼし合って、給電アンテナ10,20それぞれにおいて指向性の歪が生じるはずであるが、これら給電アンテナ10,20の隣に無給電アンテナ30,40が設けられていることで、このような歪を生じにくくしている。
すなわち、給電アンテナ10,20の間隔D
0が狭くなっていても、第1給電アンテナ10において、その左隣に存在している第1無給電アンテナ30による影響と、この第1給電アンテナ10を挟んで反対側(
図1の場合、右側)に存在している第2給電アンテナ20(及び第2無給電アンテナ40を含むアンテナ群)による影響とを同等としている。これにより、第1給電アンテナ10の指向性の歪が生じにくくなる。つまり、第1給電アンテナ10の水平面における指向性を、略0°とすることができる(指向性の歪がなくなる)。
【0039】
そして、第2給電アンテナ20においても、その右隣に存在している第2無給電アンテナ40による影響と、この第2給電アンテナ20を挟んで反対側(
図1の場合、左側)に存在している第1給電アンテナ10(及び第1無給電アンテナ30を含むアンテナ群)による影響とを同等としている。これにより、第2給電アンテナ20の指向性の歪が生じにくくなる。つまり、第2給電アンテナ20の水平面における指向性を、略0°とすることができる(指向性の歪がなくなる)。
【0040】
そして、第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とは同じ構成であり、これら第1給電アンテナ10と第2給電アンテナ20とは同じ特性を有することから、0°の位置で、第1給電アンテナ10の利得と第2給電アンテナ20の利得とを同等とさせる(一致させる)ことが可能となる。
以上より、2つの給電アンテナ10,20それぞれの指向性を、基準角度(0°)を中心として対称とすることができ、従来のように(
図8及び
図9参照)一対のアンテナ91,92の指向性が非対称となっていることで、一方のアンテナ91では検知できる反射波を、他方のアンテナ92では検知できないというような不具合の発生を防止することが可能となる。
【0041】
ここで、
図3は、前記アンテナユニット5に含まれる第1給電アンテナ10の指向性を説明するためのシミュレーション結果を示すグラフである。
図3において、実線が、
図1に示すアンテナユニット5に含まれる第1給電アンテナ10の結果を示している。このアンテナユニット5(
図1参照)は、前記のとおり、無給電アンテナ30,40を備えており、各無給電アンテナ30(40)は、その隣に設けられている給電アンテナ10(20)のアンテナ本体部15(25)と同じアンテナ形状を有する無給電本体部35(45)と、この無給電本体部35(45)の端部35a(45a)から延在しているスタブ36(46)とを有している。そして、
図1に示すアンテナユニット5では、アンテナの間隔寸法D
0が2mmであり、この場合のスタブ36(46)の長さ寸法L(最適値)は0.72mmである。
図3に示す実線のグラフによれば、0.72mmのスタブ36(46)を有する無給電アンテナ30(40)を設けることにより、給電アンテナ10の指向性は基準角度(0°)を中心として対称となる。なお、他方の給電アンテナ20の指向性も同様に、基準角度(0°)を中心として対称となる。
【0042】
これに対して、
図3の破線で示すグラフは、給電アンテナ10,20の横方向両側に、
図1に示す無給電本体部35(45)のみを有する無給電アンテナを設けた場合の結果である。つまり、
図3に示す破線のグラフは、
図1に示すスタブ36(46)が設けられていない場合の結果であり、この場合、給電アンテナの指向性には歪が生じている。この
図3に示すシミュレーション結果によれば、無給電アンテナ30(40)は、所定長さに設定されたスタブ36(46)が必要である。
【0043】
スタブ36(46)の長さLについて更に説明する。なお、第1無給電アンテナ30のスタブ36と第2無給電アンテナ40のスタブ46とは同じ形状であることから、ここでは、第1無給電アンテナ30のスタブ36の長さLについて
図2により説明する。
スタブ36は、第1給電アンテナ10に給電した場合に、このスタブ36を有する第1無給電アンテナ30の共振状態と、この第1無給電アンテナ30の隣に設けられている第1給電アンテナ10を挟んで反対側に存在するアンテナ20,40の共振状態と、が同じとなるように設定された長さLを有している。このように第1給電アンテナ10の横方向両側のアンテナにおける共振状態を同じとするためには、本実施形態(
図1参照)の場合、スタブ36の長さLを0.72mmとすればよい(
図3参照)。
【0044】
このスタブ36の長さLは、アンテナユニット5に含まれる各アンテナの形状に応じて設定される値であり、第1給電アンテナ10において、その隣に存在している第1無給電アンテナ30による影響と、この第1給電アンテナ10を挟んで反対側に存在しているアンテナ20,40による影響とを、同等とするためには、長さLを0(ゼロ)よりも大きく、λ/2よりも小さい範囲の所定の値に設定される(0<L<λ/2)。つまり、本実施形態では、長さLは、0(ゼロ)よりも大きく1.335mm(=λ/2=2.67mm/2)よりも小さい値として、0.72mmに設定されている。
【0045】
なお、本実施形態において、スタブ36の長さLを、0.72mmに設定する以外に、この長さL(0.72mm)に、(λ/2)の整数倍を加えた長さとすることができる。
つまり、スタブ36は、下記式(1)に定義する長さKを有していればよい。
スタブ36の長さK=L+n×(λ/2) ・・・(1)
ただし、0<L<λ/2
n=0以上の任意の整数
λ=無給電アンテナ30を伝播する電波の波長
本実施形態では、Lは0.72mmであり、λは、無給電アンテナ30を伝播する電波の波長として、スタブ36内の波長(λ=2.67mm)である。
【0046】
図4は、スタブ36の長さK(横軸)と、給電アンテナの指向性の歪み程度(縦軸)とを示すグラフ(シミュレーション結果)である。
図4では、前記歪み程度(縦軸)を指向性の「対称度」として示しており、本実施形態では、プラス側20°の利得とマイナス側20°の利得との差としている。
図4において、スタブ36の長さKが0.72mmでは、これら利得の差(対称度)はゼロであり、対称性を有していることを示している。この
図4において、スタブ36の長さKがλ/2の長さ毎に変化しても、同じ指向性を有していることから、前記式(1)を満たすことが、
図4に示すシミュレーション結果から明らかである。
【0047】
以上より、スタブ36の長さK(L)を設定することで、第1給電アンテナ10において、その左隣に存在している無給電アンテナ30による影響と、この第1給電アンテナ10を挟んで反対側(右側)に存在しているアンテナ20,40による影響とが、同等となり、第1給電アンテナ10の指向性の歪が生じにくくなる。また、他方の第2給電アンテナ20においても同様に、第2無給電アンテナ40の存在により、指向性の歪が生じにくくなる。
また、このようにスタブの長さK(L)を設定することにより、無給電アンテナ30(40)の終端に吸収体を設けて反射を抑えるためのマッチングを行う必要がなく、また、無給電アンテナ30(40)には、給電アンテナ10,20のように変換器1,2までの線路1a,2a(配線)が不要であるため、アンテナユニット5の構成を簡素化、及び省スペース化することが可能となる。
【0048】
ここで、前記のとおり、所定の長さK(L)を有するスタブ36,46を備えた無給電アンテナ30,40を、第1及び第2給電アンテナ10,20の両側に設けることで、各給電アンテナの指向性に歪が生じにくくなる理由は、以下のように推測される。これについて
図5を参照して説明する。なお、ここでは、第1給電アンテナ10の指向性に関して説明するが、第2給電アンテナ20の指向性においても同様である。
【0049】
図5は、第1無給電アンテナ30、第2給電アンテナ20、及び第2無給電アンテナ40それぞれで共振する(各アンテナを伝播する)高周波信号を複素数で表現(フェーザ表示)した図である。
図5(A)は、第1無給電アンテナ30において放射される電波の振幅と位相のベクトルS1を示し、
図5(B)は、第2給電アンテナ20において放射される電波の振幅と位相のベクトルS2を示し、
図5(C)は、第2無給電アンテナ40において放射される電波の振幅と位相のベクトルS3を示している。
図5(D)は、第2給電アンテナ20において放射される電波の振幅と位相のベクトルS2と、第2無給電アンテナ40において放射される電波の振幅と位相のベクトルS3とを合成したものである。
【0050】
この合成したベクトルS4(
図5(D)参照)は、
図5(A)に示す第1無給電アンテナ30におけるベクトルS1と一致している。すなわち、第1給電アンテナ10を挟んで、右側に存在している第2給電アンテナ20において放射される電波と第2無給電アンテナ40において放射される電波とを合成したと想定して得られる合成電波と、左側に存在している第1無給電アンテナ30において放射される電波とは、振幅と位相が同じ(共振状態が同じ)となるように構成されている。これらアンテナ30,20,40における電波の放射は、アンテナ10に給電している状態において不要放射となるものである。
【0051】
そして、第1無給電アンテナ30では、スタブ36の長さを変更することで、
図5(A)の破線矢印aで示すように、この第1無給電アンテナ30のアンテナ特性(共振特性)は変化することから、また、第2無給電アンテナ40では、スタブ46の長さを変更することで、
図5(C)の破線矢印bで示すように、この第2無給電アンテナ40のアンテナ特性(共振特性)は変化することから、前記合成アンテナのベクトルS4と、第1無給電アンテナ30のベクトルS1とを一致させるためには、スタブ36,46の長さを所定の値に設定すればよい。
これにより、第1給電アンテナ10の横方向一方側の第1無給電アンテナ30による不要放射と横方向他方側の前記合成アンテナによる不要放射とが同等となり(アンテナ10にとっては自身の左側と右側とに同じアンテナが存在すると錯覚する状態となり)、この第1給電アンテナ10の指向性が所望の基準角度(0°)となる。
【0052】
前記合成ベクトルS4に関して、前記のとおり、第1給電アンテナ10の右隣に位置する第2給電アンテナ20のみならず、更に右隣りの第2無給電アンテナ40の影響(ベクトル)についても考慮している理由は、次のとおりである。
図6は、
図1に示すアンテナユニット5に関する、第1給電アンテナ10に給電している状態での電界強度部分布を示している。
図1に示すアンテナユニット5の場合、第1給電アンテナ10は、横方向一方側(左側)に隣接する第1無給電アンテナ30の影響を受ける。また、横方向他方側(右側)では、その右隣に位置する第2給電アンテナ20の影響のみならず、更にその右隣に位置する第2無給電アンテナ40の影響も受けている。
したがって、本実施形態では、第1給電アンテナ10の右隣に位置する第2給電アンテナ20のみならず、更に右隣りの第2無給電アンテナ40を考慮した合成ベクトルS4を、第1無給電アンテナ30のベクトルS1と一致させるようにしている。
【0053】
以上より、スタブ36,46を所定の長さに設定すれば、前記合成アンテナのベクトルS4と、第1無給電アンテナ30のベクトルS1とを一致させることができ、第1給電アンテナ10の横方向両側におけるアンテナの影響を同等とすることによって、第1給電アンテナ10の指向性に歪が生じにくいようにすることが可能となる。
【0054】
前記実施形態(
図1)では、無給電アンテナ30は、その隣の第1給電アンテナ20のアンテナ本体部15と同じアンテナ形状を有する無給電本体部35を有する場合について説明したが、これ以外の形態を有していてもよい。つまり、前記のとおり、第1給電アンテナ10の指向性に歪が生じにくいようにするためには、前記合成アンテナのベクトルS4と、第1無給電アンテナ30のベクトルS1とを一致させればよく、このために、スタブ36,46を所定の長さに設定すればよい。したがって、第1無給電アンテナ30(無給電本体部35)は、アンテナ本体部15と完全に同じアンテナ形状を有しておらず、少なくとも一部で相違していてもよい。この場合であっても、無給電アンテナ30,40において、スタブ36,46を、ベクトルS4,S1を一致させることができる長さに設定すればよい。つまり、前記相違を解消できる長さにスタブ36,46を設定して、合成アンテナの共振状態と、第1無給電アンテナ30の共振状態とが同じとなるようにすればよい。
【0055】
以上より、第1無給電アンテナ30は、その隣に設けられている第1給電アンテナ10を挟んで反対側に存在するアンテナ20,40(アンテナ群;合成アンテナ)と、共振状態が同じとなるように設定されたアンテナ形状を有していればよく、また、第2無給電アンテナ40は、その隣に設けられている第2給電アンテナ20を挟んで反対側に存在するアンテナ10,30(アンテナ群;合成アンテナ)と、共振状態が同じとなるように設定されたアンテナ形状を有していればよい。
【0056】
図1では、給電アンテナ10,20の間隔D
0が2mmである場合に、スタブ36,46の長さLを0.72mmとした無給電アンテナ30,40を有しているアンテナユニット5について説明した。
この間隔D
0を変更した場合、給電アンテナ間のアイソレーションも変化し、スタブ36,46の長さLも変更される。例えば、給電アンテナ10,20の間隔D
0を2.35mmとした場合、
図7に示すように、スタブ36,46の長さLを、0.65mm(最適値)とすれば、給電アンテナ10(20)の指向性の歪が生じにくくなり、基準角度(0°)を中心として左右対称の指向性を有することができる。つまり、無給電アンテナ30(40)は、その隣に設けられている給電アンテナ10(20)を挟んで反対側に存在するアンテナ(アンテナ群)と、共振状態が同じとなるように、スタブ36,46の長さLが0.65mmに設定されたアンテナ形状を有していればよい。
図7は、アンテナユニット5に含まれる第1給電アンテナ10の指向性を説明するためのシミュレーション結果を示すグラフである。
図7の実線で示すグラフが、第1給電アンテナ10の結果を示しており、
図7の破線で示すグラフは、スタブ36(46)が設けられていない場合の結果である。
【0057】
以上のように、前記各形態のアンテナユニット5によれば、給電アンテナ10,20の間隔D
0が狭くても、各給電アンテナ10,20の指向性の歪が生じにくくなる。この結果、本実施形態のアンテナユニット5を、モノパルス方式用の受信アンテナとして用いる場合、給電アンテナ10,20の間隔D
0を狭くすることが可能となり、これにより、電波(反射波)の到来角度の検出範囲を広くすることが可能となる。
【0058】
本発明の受信アンテナは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、放射素子12,22の形状、及び無給電素子32,42の形状は図示した以外の形状であってもよい。
また、前記実施形態では、給電アンテナを2本とする場合について説明したが、3本以上であってもよく、この場合、これら3本(以上)の給電アンテナの横方向両側にそれぞれ無給電アンテナが設けられる。
また、アンテナユニット5の使用周波数帯は、マイクロ波帯やミリ波帯とすることができ、使用周波数帯に応じてアンテナ形状が設定される。