特許第6456719号(P6456719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456719
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】楽器ホルダー
(51)【国際特許分類】
   G10G 5/00 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   G10G5/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-32750(P2015-32750)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156863(P2016-156863A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】515050057
【氏名又は名称】小野寺 妙子
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 妙子
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−316151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右肩に沿うような状態で掛けられる右肩肩掛け部と、
前記右肩肩掛け部の一端部から下方に延びて、少なくともその一部が、伸縮自在であり、且つ、曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能な右用ホルダー支持体と、
前記右用ホルダー支持体の下端部に配置されて、骨盤に当接する右側下方保持部と、
を備える右用ホルダーと、
左肩に沿うような状態で掛けられる左肩肩掛け部と、
前記左肩肩掛け部の一端部から下方に延びて、少なくともその一部が、伸縮自在であり、且つ、曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能な左用ホルダー支持体と、
前記左用ホルダー支持体の下端部に配置されて、骨盤に当接する左側下方保持部と、
を備える左用ホルダーと、
柔軟な材料により構成され、一端側の部分が前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられると共に、他端側の部分が楽器に係合される楽器係合部と、
を備える楽器ホルダー。
【請求項2】
前記楽器係合部は、前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられた部分から、右肩及び左肩に沿って前記右肩肩掛け部の一端部及び前記左肩肩掛け部の一端部へ近づく方向へ配置されるホルダー側使用位置と、前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられた部分から、右肩及び左肩に沿って前記右肩肩掛け部の一端部及び前記左肩肩掛け部の一端部から遠ざかる方向へ配置される反ホルダー側使用位置と、のいずれかに配置されて使用可能であることを特徴とする請求項1に記載の楽器ホルダー。
【請求項3】
前記右肩肩掛け部の他端部と前記左肩肩掛け部の他端部とのうちの少なくとも一方は、前記右肩肩掛け部が右肩にかけられたとき、前記左肩肩掛け部が左肩にかけられたときに、右肩、左肩のうちの少なくとも一方に対して位置ずれしにくい状態で右肩、左肩のうちの少なくとも一方に当接可能な弾性部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の楽器ホルダー。
【請求項4】
前記右側下方保持部と、前記左側下方保持部とのうちの少なくとも一方は、前記骨盤に対して位置ずれしにくい状態で骨盤に当接可能な弾性部材を有するパッド部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の楽器ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着され、サクスフォン(saxophone)等の管楽器等を保持することが可能な楽器ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
サクスフォン等の管楽器の演奏者の演奏の邪魔にならず、しかも長時間にわたる演奏を可能とし且つやる気の失せない演奏を可能とする支持具が知られている(例えば、特許文献1参照)。支持具は、Y字形フレームを形成する3本のアームを有しており、3本のアームのうちの上方に突き出た2本のアームの自由端部は、弓形部として形成されている。これら2本のアームは、演奏者の肩に掛けられる。下方に突き出た残りの1本のアームの自由端部は、演奏者の腹部領域に位置して当該腹部領域に当接し、支持部は、演奏者の腹部によって支持される。
【0003】
3本のアームの基端部は、連結部材によって連結されている。肩に掛けられる2本のアームは、連結部材に対して回動可能に構成されている。管楽器は、3本のアームの連結部材に接続されたコード又はバンド(ストラップ)によって吊り下げられる。
【0004】
また、特許文献1に記載された発明と同様に、左右の肩に掛ける部材を有する楽器の支持具が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014−503848号公報
【特許文献2】実用新案登録第3184155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の管楽器用支持具では、腹部への押圧力が比較的大きい。このため、楽器演奏中に腹式呼吸をする際に、不快感を覚える恐れがある。また、支持具が肩からずれたり外れたりし易く、楽器演奏の際に障害となる恐れがある。上記特許文献2に記載の支持具では、肩のみに楽器の荷重が作用し、肩への負担が大きい。
【0007】
本発明は、身体にかかる負担を軽減して局所的な疲労蓄積やこりを低減し、腹部への押圧力が比較的大きくなることを回避するとともに、肩からずれたり外れたりしにくい楽器ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、右肩に沿うような状態で掛けられる右肩肩掛け部と、前記右肩肩掛け部の一端部から下方に延びて、少なくともその一部が、伸縮自在であり、且つ、曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能な右用ホルダー支持体と、前記右用ホルダー支持体の下端部に配置されて、骨盤に当接する右側下方保持部と、を備える右用ホルダーと、左肩に沿うような状態で掛けられる左肩肩掛け部と、前記左肩肩掛け部の一端部から下方に延びて、少なくともその一部が、伸縮自在であり、且つ、曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能な左用ホルダー支持体と、前記左用ホルダー支持体の下端部に配置されて、骨盤に当接する左側下方保持部と、を備える左用ホルダーと、柔軟な材料により構成され、一端側の部分が前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられると共に、他端側の部分が楽器に係合される楽器係合部と、を備える楽器ホルダーに関する。
【0009】
また、前記楽器係合部は、前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられた部分から、右肩及び左肩に沿って前記右肩肩掛け部の一端部及び前記左肩肩掛け部の一端部へ近づく方向へ配置されるホルダー側使用位置と、前記右肩肩掛け部と前記左肩肩掛け部とにそれぞれ吊り下げられた部分から、右肩及び左肩に沿って前記右肩肩掛け部の一端部及び前記左肩肩掛け部の一端部から遠ざかる方向へ配置される反ホルダー側使用位置と、のいずれかに配置されて使用可能であることが好ましい。
【0010】
また、前記右肩肩掛け部の他端部と前記左肩肩掛け部の他端部とのうちの少なくとも一方は、前記右肩肩掛け部が右肩にかけられたとき、前記左肩肩掛け部が左肩にかけられたときに、右肩、左肩のうちの少なくとも一方に対して位置ずれしにくい状態で右肩、左肩のうちの少なくとも一方に当接可能な弾性部材を有することが好ましい。
【0011】
また、前記右側下方保持部と、前記左側下方保持部とのうちの少なくとも一方は、前記骨盤に対して位置ずれしにくい状態で骨盤に当接可能な弾性部材を有するパッド部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、身体にかかる負担を軽減して局所的な疲労蓄積やこりを低減し、腹部への押圧力が比較的大きくなることを回避するとともに、肩からずれたり外れたりしにくい楽器ホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000の右肩肩掛け部110の使用状態を説明する図であり、(a)は、身体前方に右用ホルダー100を配置させて楽器を身体前方で保持する際の吊り下げベルト115の状態を説明する概略図であり、(b)は、身体後方に右用ホルダー100を配置させて楽器を身体前方で保持する際の吊り下げベルト115の状態を説明する概略図である。
図3】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000の右用ホルダー支持体120及び左用ホルダー支持体220が折り畳まれた状態を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が用いられて演奏が行われている状態を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が身体前方に配置されて使用されている状態を示す図であり、(a)は、右側下方保持部130及び左側下方保持部230が骨盤の側部に当接している状態を示す正面図であり、(b)は、左側下方保持部230が骨盤の側部に当接している状態を示す側面図であり、(c)は、左側下方保持部230が骨盤の後部に当接している状態を示す側面図であり、(d)は、右側下方保持部130及び左側下方保持部230が、骨盤の後部に当接している状態を示す背面図である。
図6】本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が身体後方に配置されて使用されている状態を示す図であり、(a)は、背面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による楽器ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000を示す概略図である。以下の説明において、「骨盤」や「肩甲骨」等の部位に部材が「当接」等する旨のいずれの記載も、骨盤や肩甲骨等の「骨」に部材が直接「当接」等することを意味しない。これらの骨を覆う皮膚の部分や、当該皮膚を覆う衣類に「当接」等することを意味する。
また、図1における上方向を上方向とし、図1における下方向を下方向とし、上下方向定義する。
【0015】
図1に示すように、実施形態にかかる楽器ホルダー1000の右用ホルダー100は、右肩に掛けられる右肩肩掛け部110と、右肩肩掛け部110の一端部としての下端を構成する連結部材113から下方へ延びる右用ホルダー支持体120とを備える。また、楽器ホルダー1000は、骨盤に当接する右側下方保持部130を備える。右側下方保持部130は、右用ホルダー支持体120の下端部に配置される。
【0016】
右肩肩掛け部110は、第1フレーム111と第2フレーム112との弧状のフレキシブルフレームを備える。弧状のフレキシブルフレームは、これら2つに限定されない。また、第1フレーム111と第2フレーム112とは、共に、装着者の肩の形状にフィットし、右肩に沿うような状態で掛けられるように変形可能であることが好ましく、フレキシブルな材料、例えば、スチールパイプ、スポンジ、ポリエチレン・ABS(樹脂メッキ)、ジャバラや弾性部材等で被覆されたワイヤー、針金や可撓性合成樹脂等により構成されてもよい。
【0017】
右肩肩掛け部110の他端部を構成する第1フレーム111の一端116には、低反発ウレタンや高反発ウレタン、スポンジやゴムを含めた合成樹脂等であって、衣服等を介した身体接触でも身体に優しい素材で形成された弾性部材が設けられている。また、右肩肩掛け部110の他端部を構成する第2フレーム112の一端117にも、第1フレーム111の一端116と同様に弾性部材が設けられている。一端116と一端117とは、装着時に装着者の右肩の肩甲骨に当接するように構成されてよい。また、弾性部材は、右肩肩掛け部110が右肩に掛けられて着衣や身体皮膚等に当接する場合に、適度な摩擦力により滑り難く右肩に対して位置ずれしにくい状態となるものであることが好ましい。
【0018】
フレーム111の一端116の弾性部材は、第1フレーム111の直径よりも直径が大きな球状を有することにより、先端が身体や着衣に密着して滑りにくい構成が好ましい。フレーム111の一端116の弾性部材は、一定のマッサージ効果があるものが好ましく、肩甲骨に対して押圧力を加えるものであることがさらに好ましい。フレーム111の一端116の弾性部材は、いわゆる「ツボ押し」効果の機能を有してもよく、電気振動機能(電気振動によるマッサージ効果)を発揮してもよい。即ち、球状の表面に複数の小さな突起が形成されていてもよい。また、フレーム111の一端116の弾性部材は、滑りに難くするために、弾性部材の表面には、凹凸や任意形状の突起、ディンプルやテーパ等が設けられることが好ましい。
【0019】
また、右用ホルダー支持体120は、上部骨格部121と、下部フレキシブル部122とを有する。上部骨格部121は容易に変形しない樹脂等の材料により構成された棒状の部材により構成されている。下部フレキシブル部122は、伸縮自在且つ曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能なフレキシブルな構成とされる。伸縮機能は、ジャバラ方式により実現しても良いし、入れ子方式で実現してもよいし、その他任意の公知の構成を採用し得る。
【0020】
右側下方保持部130は、右用ホルダー支持体120の下端部において、骨盤の一部に当接するパッド部131を有する。パッド部131は、低反発ウレタンや高反発ウレタン、スポンジやゴムを含めた合成樹脂等の、衣服等を介した身体接触でも身体に優しい素材で形成された弾性部材を用いることができる。また、弾性部材は、着衣や身体皮膚等に当接する場合に、適度な摩擦力により滑りにくく骨盤に対して位置ずれしにくい状態となるものであることが好ましい。滑りにくくするために、弾性部材の表面には、凹凸や任意形状の突起、ディンプルやテーパ等を設けることが好ましい。
【0021】
また、パッド部131は、その向きや並び方向や身体位置に対する高さ及び互いの間隔を任意に調節可能に、適宜不図示のヒンジ部や係合部を介して右用ホルダー支持体120に設けられてもよい。
【0022】
同様に、図1に示すように、実施形態にかかる楽器ホルダー1000の左用ホルダー200は、左肩に掛けられる左肩肩掛け部210と、左肩肩掛け部210の一端部としての下端を構成する連結部材213から下方へ延びる左用ホルダー支持体220とを備える。また、楽器ホルダー1000は、骨盤に当接する左側下方保持部230を備える。左側下方保持部230は、左用ホルダー支持体220の下端部に配置される。
【0023】
左肩肩掛け部210は、第1フレーム211と第2フレーム212との弧状のフレキシブルフレームを備える。弧状のフレキシブルフレームは、これら2つに限定されない。また、第1フレーム211と第2フレーム212とは、共に、装着者の肩の形状にフィットし、左肩に沿うような状態で掛けられるように変形可能であることが好ましく、フレキシブルな材料、例えば、スチールパイプ、スポンジ、ポリエチレン・ABS(樹脂メッキ)、ジャバラや弾性部材等で被覆されたワイヤー、針金や可撓性合成樹脂等により構成されてもよい。
【0024】
左肩肩掛け部210の他端部を構成する第1フレーム211の一端216には、低反発ウレタンや高反発ウレタン、スポンジやゴムを含めた合成樹脂等の衣服等を介した身体接触でも身体に優しい素材で形成された弾性部材が設けられている。また、左肩肩掛け部210の他端部を構成する第2フレーム212の一端217にも、第1フレーム211の一端216と同様に弾性部材が設けられている。一端216と一端217とは、装着時に装着者の左肩の肩甲骨に当接するように構成されてよい。また、弾性部材は、左肩肩掛け部210が左肩に掛けられて着衣や身体皮膚等に当接する場合に、適度な摩擦力により滑り難く左肩に対して位置ずれしにくい状態となるものであることが好ましい。
【0025】
フレーム211の一端216の弾性部材は、第1フレーム211の直径よりも直径が大きな球状を有することにより、先端が身体や着衣に密着して滑りにくい構成が好ましい。フレーム211の一端216の弾性部材は、一定のマッサージ効果があるものなら好ましく、肩甲骨に対して押圧力を加えるものであることがさらに好ましい。フレーム211の一端216の弾性部材は、いわゆる「ツボ押し」効果の機能を有してもよく、電気振動機能(電気振動によるマッサージ効果)を発揮してもよい。即ち、球状の表面に複数の小さな突起が形成されていてもよい。また、フレーム211の一端216の弾性部材は、滑りに難くするために、弾性部材の表面には、凹凸や任意形状の突起、ディンプルやテーパ等が設けられることが好ましい。
【0026】
また、左用ホルダー支持体220は、上部骨格部221と、下部フレキシブル部222とを有する。上部骨格部221は容易に変形しない樹脂等の材料により構成された棒状の部材により構成されている。下部フレキシブル部222は、伸縮自在且つ曲げられることが可能で曲げられた状態を維持可能なフレキシブルな構成とされる。伸縮機能は、ジャバラ方式により実現しても良いし、入れ子方式で実現してもよいし、その他任意の公知の構成を採用し得る。
【0027】
左側下方保持部230は、左用ホルダー支持体220の下端部において、骨盤の一部に当接するパッド部231を有する。パッド部231は、低反発ウレタンや高反発ウレタン、スポンジやゴムを含めた合成樹脂等の衣服等を介した身体接触でも身体に優しい素材で形成された弾性部材を用いることができる。また、弾性部材は、着衣や身体皮膚等に当接する場合に、適度な摩擦力により滑りにくく骨盤に対して位置ずれしにくい状態となるものであることが好ましい。滑りにくくするために、弾性部材の表面には、凹凸や任意形状の突起、ディンプルやテーパ等を設けることが好ましい。
【0028】
また、パッド部231は、その向きや並び方向や身体位置に対する高さ及び互いの間隔を任意に調節可能に、適宜不図示のヒンジ部や係合部を介して左用ホルダー支持体220に設けられてもよい。
【0029】
図1において、第1フレーム111と第2フレーム112との間、及び第1フレーム211と第2フレーム212との間には、シート114,214が張られている。シート114,214には吊り下げベルト115,215の一端が係止される。これにより、楽器係合部の一端側の部分を構成する吊り下げベルト115,215は、右肩肩掛け部110、左肩肩掛け部210にそれぞれ吊り下げられる。また、吊り下げベルト115,215の他端には、バックル310、楽器係止具311、楽器係止側ベルト312が設けられる。吊り下げベルト115、215、楽器係止側ベルト312は、革または鎖・布製のベルトでもよく、紐や任意太さ・任意形状のワイヤーであってもよい。また、吊り下げベルト115,215の一端は、シート114,214に直接係止されていなくてもよい。例えば、吊り下げベルト115,215の一端は、環状の部材を介して、シート114,214に係止されてもよい。即ち、環状の部材の一端側に、吊り下げベルト115,215の一端が係止され、環状の部材の他端側に、シート114,214の一部が係止されてもよい。
【0030】
また、吊り下げベルト115,215、楽器係止側ベルト312は、楽器を吊下するために必要とされる程度の強度を有する。また、吊り下げベルト115,215、バックル310、楽器係止具311、及び、楽器係止側ベルト312は、楽器係合部を構成する。また、楽器係合部は、全体として楽器吊り下げの機能を発揮できるものであればよく、このための最少限の要素のみで構成でき、任意の形状や素材、材質等であってよいし、各要素間の係合方法についても、上記構成に限定されない。
【0031】
図2は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000の右肩肩掛け部110の使用状態を説明する図であり、(a)は、身体前方に右用ホルダー100を配置させて楽器を身体前方で保持する際の吊り下げベルト115の状態を説明する概略図であり、(b)は、身体後方に右用ホルダー100を配置させて楽器を身体前方で保持する際の吊り下げベルト115の状態を説明する概略図である。
図2では、説明の便宜上及び重複説明を避けるために、楽器ホルダー1000の右肩肩掛け部110のみについて説明しているが、左肩肩掛け部210も右肩肩掛け部110と同様の構成を有する。
【0032】
図2(a)に示すように、シート114は、皮または布等で構成されており、第1フレーム111と第2フレーム112との間に、配置されている。右肩肩掛け部110の下端を構成する連結部材113を支点として、第1フレーム111と第2フレーム112とは、それぞれ回動可能である。この回動により、第1フレーム111、第2フレーム112は、V字開状態及びI字閉状態とされる。図2(a)はV字開状態を示している。図2(a)に示すように、V字開状態では、シート114がいっぱいまで張られるので、シート114は、それ以上開かれることが制限されるとともに、シート114の撓みが制限される。これにより、吊り下げベルト115とシート114との係止位置が安定する。また、第1フレーム111と第2フレーム112とを回動させて互いに寄り添わせて、I字閉状態とした場合には、シート114が撓んで折り畳まれてもよい。また、V字開状態からI字閉状態への状態の変化は、第1フレーム111がそのままで第2フレーム112が第1フレーム111に接近することにより行われてもよいし、第2フレーム112がそのままで第1フレーム111が第2フレーム112に接近することにより行われてもよい。また、V字開状態からI字閉状態への状態の変化は、第1フレーム111と第2フレーム112とが共に両者の中央に向けて寄り添って、該中央付近で形成されるようにして行われてもよく、右肩肩掛け部110の下端を構成する連結部材113の係合構成として適宜公知の構成を採用して行われてもよい。
【0033】
吊り下げベルト115は、図2(a)に示すように、右肩肩掛け部110の下端方向(連結部材113の方向)に延伸されて身体前方(図2(a)の左方)で楽器を保持することも可能である。また、図2(b)に示すように、右肩肩掛け部110の下端を構成する連結部材113が身体後方(図2(a)の左方)へ位置するように、右肩肩掛け部110を肩に掛けた場合には、吊り下げベルト115は、第1フレーム111の一端116の方向、第2フレーム112の一端117の方向に延びて、身体の前方(図2(a)の右方)で楽器を保持することも可能である。
【0034】
より具体的には、楽器係合部を構成する吊り下げベルト115,215とバックル310、楽器係止具311及び楽器係止側ベルト312は、右肩肩掛け部110と左肩肩掛け部210とにそれぞれ吊された部分から、右肩及び左肩に沿って右肩肩掛け部110の一端部を構成する連結部材113及び左肩肩掛け部210の一端部下端を構成する連結部材213へ近づく方向へ配置されるホルダー側使用位置(図5(a)〜図5(d)に示す位置)に配置されて使用される。
また、楽器係合部を構成する吊り下げベルト115,215とバックル310、楽器係止具311及び楽器係止側ベルト312は、右肩肩掛け部110と左肩肩掛け部210とにそれぞれ吊された部分から、右肩及び左肩に沿って右肩肩掛け部110の一端部を構成する連結部材113及び左肩肩掛け部210の一端部下端を構成する連結部材213から遠ざかる方向へ配置される反ホルダー側使用位置(図6(a)〜図6(b)に示す位置、即ち、演奏者の身体を挟んで背中側に右用ホルダー支持体120及び左用ホルダー支持体220が配置され、身体の前側に、楽器係合部を構成する吊り下げベルト115,215とバックル310、楽器係止具311及び楽器係止側ベルト312が配置される位置)と、のいずれかに配置されて使用される。
【0035】
また、図2においては、説明の便宜上右用ホルダー100のみを示してこれに基づいて詳細な説明をしたが、左用ホルダー200においても右用ホルダー100と同様であるので、左用ホルダー200の説明は省略する。
【0036】
図3は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000の右用ホルダー支持体120及び左用ホルダー支持体220が折り畳まれた状態を示す概略図である。
【0037】
図3から明らかなように、楽器ホルダー1000は、右用ホルダー支持体120と左用ホルダー支持体220とがそれぞれ略中央にて折り畳み可能に構成されている。即ち、右用ホルダー支持体120は、上部骨格部121と、下部フレキシブル部122との接続部において、折り畳み可能である。また、左用ホルダー支持体220は、上部骨格部221と、下部フレキシブル部222との接続部において、折り畳み可能である。また、右用ホルダー支持体120は、図3に示す右用ホルダー100の状態のように、連結部材113に対して着脱可能である。左用ホルダー支持体220も、右用ホルダー100と同様に、連結部材213に対して着脱可能である。この構成により、楽器ホルダー1000を、持ち運びに便利な構成とするとともに旅行鞄等へコンパクトに収納することができる。
【0038】
例えば、右用ホルダー支持体120と左用ホルダー支持体220とを、それぞれ被覆されたフレキシブル金属棒等で形成することで折り畳み可能な構成としてもよい。また、それぞれ二本の棒状体の中央接合部を、折り曲げや折り畳み及び延伸自在に調整可能な接合部構成としてもよく、公知の仕組みを適宜採用してよい。例えば、公知の仕組みとしては、例えば、折り畳み傘の骨組みの折り畳み方法や構成、傘軸の延伸方法や構成を採用してもよい。
【0039】
また、フレキシブルカメラ三脚の脚部等に採用されている公知のジャバラ状の変形自在構成等を、下部フレキシブル部122と下部フレキシブル部222とに採用してもよい。ジャバラ状の被覆材等の外面を比較的弾力性のある素材、例えば合成樹脂等で構成することにより、楽器と触れた際に異音が発生したり、楽器を傷付けたりすることを防止できる。
【0040】
また、図4は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が用いられて演奏が行われている状態を示す模式図である。
図4から明らかなように、数キログラム程度の比較的重量のあるサクスフォン500等であっても、楽器ホルダー1000は、右肩部、左肩部、及び、骨盤における2つの部分で、サクスフォン500等を保持する。従って、楽器ホルダー1000を用いることにより、身体への負担は相当に軽減されるものとなり、長時間の演奏でも疲労を軽減して正しい姿勢を保つことに資する。また、これにより演奏者の首等でサクスフォン500を保つ必要がないので、演奏者の体力的な負担が軽減されて演奏に集中することができる。
【0041】
また、楽器ホルダー1000においては、右用ホルダー支持体120と左用ホルダー支持体220とが一体的に構成されておらず、右用ホルダー支持体120は、左用ホルダー支持体220に対して別個独立した部材で構成されている。吊り下げベルト115,215は、柔軟な材料により構成されている。このため、右用ホルダー支持体120に作用する力は、左用ホルダー支持体220に影響を与えにくく、また、左用ホルダー支持体220に作用する力は、右用ホルダー支持体120に影響を与えにくい。このため、身体を大きく動かしながら演奏を行った場合であっても、右用ホルダー支持体120が右肩部から外れにくく、同様に、左用ホルダー支持体220が左肩部から外れにくい。このため、安定して、楽器ホルダー1000により楽器を保持することができる。
【0042】
また、図5は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が身体前方に配置されて使用されている状態を示す図であり、(a)は、右側下方保持部130及び左側下方保持部230が骨盤の側部に当接している状態を示す正面図であり、(b)は、左側下方保持部230が骨盤の側部に当接している状態を示す側面図であり、(c)は、左側下方保持部230が骨盤の後部に当接している状態を示す側面図であり、(d)は、右側下方保持部130及び左側下方保持部230が、骨盤の後部に当接している状態を示す背面図である。
【0043】
図5から理解できるように、第1フレーム111の一端116,第2フレーム112の一端117,第1フレーム211の一端216,第2フレーム212の一端217は、肩甲骨に対応するように形成されて、長さ等が調整されてもよい。どの位置が最も身体への負担が軽いかについては、個人個人の身体的特徴によっても個々に異なるので、装着者の好み等に応じて適宜調整可能であることが好ましい。同様に、楽器ホルダー1000は、場合によっては、図5(b)に示すように、左側下方保持部230が骨盤の側部に当接している状態で使用され、また、場合によっては、図5(d)に示すように、右側下方保持部130及び左側下方保持部230が、骨盤の後部に当接している状態で使用されてもよい。
【0044】
図6は、本発明の実施形態による楽器ホルダー1000が身体後方に配置されて使用されている状態を示す図であり、(a)は、背面図であり、(b)は正面図である。
楽器ホルダー1000は、既に説明したように、背中側に装着された場合においても、図6に示すように、演奏者の前方で楽器を保持することが可能である。演奏者の前方はその衣装等によっては楽器ホルダー1000を装着困難である場合も想定され、また、ビジュアル的な演奏会などにおいては観客に楽器ホルダー1000を過度に露出しないことが好ましい場合もある。このような場合でも、楽器ホルダー1000は、背中側に装着された状態で、すなわち弾性部材が設けられている第1フレーム111の一端116,第2フレームの一端117,第1フレームの一端216,第2フレームの一端217が肩の前側に当接した状態で、吊り下げベルト115,215を肩よりも身体の前側に吊り下げられるように前方の胸の辺りに延ばした状態で楽器を保持することが可能である。
【0045】
楽器ホルダー1000は、身体圧迫による肩等の痛みや神経痛、体調不良等の発生を予防し、これらを軽減することが可能である。また、楽器ホルダー1000は、身体にフィットし、身体への接触部位にはマッサージ効果等をも期待できる柔らかな素材が採用されることで、楽器等の重量が複数の支点で分散支持されることとの相乗効果により、身体への負担が少ないものとなる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想の範囲内において適宜変形が可能である。例えば、楽器ホルダーの各部の構成は、本実施形態による楽器ホルダー1000の各部の構成に限定されない。
例えば、右肩肩掛け部110は、第1フレーム111と第2フレーム112とを有していたが、この構成に限定されない。例えば、三本以上の弧状アームを有していてもよい。
また、上述した実施形態では、右用ホルダー100、左用ホルダー200は、それぞれ右肩、左肩から脱落しにくい構成を有しているが、脱落を不安に考える演奏者のために、より脱落しにくい構成を有していてもよい。
例えば、右用ホルダー100の下部フレキシブル部122、及び、左用ホルダー200の下部フレキシブル部222の、上端部から下端部までの間のいずれかの位置に、布製のベルトを設けてもよい。一方のベルトの一端部は、下部フレキシブル部122に接続され、一方のベルトの他端部は、連結部材を有する。同様に、他方のベルトの一端部は、下部フレキシブル部222に接続され、他方のベルトの他端部は、連結部材を有する。演奏時には、一方のベルトの他端部の連結部材と他方のベルトの他端部の連結部材とが互いに連結させられた状態で、楽器ホルダー1000は使用される。
一方のベルトの一端部、他方のベルトの一端部の、下部フレキシブル部122、222への接続は、着脱不能な固定による構成でもよいし、着脱可能な固定による構成でもよいし、コンパクトな巻き取り装置を有する構成として、ベルトの不使用時にはベルトを巻き取れる構成としてもよく、適宜必要に応じて、適切な構成が採用されればよい。
【符号の説明】
【0047】
100・・右用ホルダー、110・・右肩肩掛け部、120・・右用ホルダー支持体、130・・右側下方保持部、200・・左用ホルダー、210・・左肩肩掛け部、220・・左用ホルダー支持体、230・・左側下方保持部、310・・バックル、311・・楽器係止具、312・・楽器係止側ベルト、1000・・楽器ホルダー、
図1
図2
図3
図4
図5
図6