(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂と、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含む樹脂塗料を塗布することにより形成される樹脂層と、
前記樹脂層に積層され、水酸基を有する樹脂と、当該樹脂に含まれる当該水酸基を架橋する架橋剤として金属キレート化合物とを含む粘着剤塗料を塗布することにより形成される粘着層と
を備える粘着テープ。
前記樹脂層に含まれる前記酸価を有する樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
前記粘着層に含まれる前記水酸基を有する樹脂は、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着テープ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[粘着テープの構成]
図1は、本実施の形態が適用される粘着テープ10の構成の一例を示した図である。
図1に示すように、本実施の形態の粘着テープ10は、樹脂層11と、樹脂層11に積層される粘着層12とを有している。また、本実施の形態では、粘着テープ10の両面には、
図1に示すように、樹脂層11、粘着層12に対して離型性を有する第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22が設けられている。
ここで、本実施の形態の粘着テープ10は、後述する種々の方法により形成され、樹脂層11および粘着層12のいずれもが、樹脂塗料および粘着剤塗料を塗布、乾燥することにより、あるいは樹脂塗料を塗布、放射線硬化することにより形成される、塗布型の粘着テープである。なお、本明細書において「塗布型」とは、塗料を塗布する工程を含む方法により形成されていることを意味する。
【0011】
また、詳細については後述するが、本実施の形態の粘着テープ10は、樹脂層11の一部の領域に印刷が施され、携帯電話やスマートフォン等に用いられる液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の表面に設けられる透明パネル(カバーガラス)に、粘着層12側が貼り付けられて使用される。
【0012】
本実施の形態の粘着テープ10は、樹脂層11と粘着層12とを合わせた全厚さが、25μm以下であることが好ましい。樹脂層11と粘着層12とを合わせた全厚さが薄いほど、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合に、表示装置を薄くすることができるため好ましい。一方、粘着テープ10の粘着層12による粘着力を維持し、また粘着テープ10の強度を保つためには、樹脂層11と粘着層12とを合わせた全厚さは、10μm以上であることが好ましい。
【0013】
本実施の形態の粘着テープ10において、樹脂層11の厚さは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。樹脂層11の厚さが10μmよりも厚い場合、粘着テープ10の全厚さを薄くすることが困難になる。
また、樹脂層11の厚さは、5μm以上であることが好ましい。樹脂層11の厚さが5μm未満である場合、樹脂層11の物性を維持することができない場合がある。
【0014】
本実施の形態の粘着テープ10のヘイズ((拡散光透過率/全光線透過率)×100)は、1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましい。詳細については後述するが、粘着テープ10のヘイズが1.5%よりも大きい場合、粘着テープ10に入射した光が拡散しやすくなり、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合に、表示装置の視認性が低下するおそれがある。なお、粘着テープ10のヘイズは、表示装置に使用した場合の光の拡散を抑制する観点から、低いほど好ましい。
【0015】
また、本実施の形態の粘着テープ10の全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。粘着テープ10の全光線透過率が90%未満の場合、粘着テープ10の透明性が低下し、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合に、表示装置の視認性が低下するおそれがある。なお、粘着テープ10の全光線透過率は、表示装置の視認性の低下を抑制する観点から、高いほど好ましい。
【0016】
本実施の形態の粘着テープ10では、粘着層12側のガラス板に対する粘着力が、1.5N/10mm以上であることが好ましく、4N/10mm以上であることがより好ましい。ここで、本実施の形態において、ガラス板に対する粘着力とは、JIS Z0237(2009)に規定される粘着力試験と同様の方法で測定したガラス板に対する180°引き剥がし粘着力をいう。
粘着テープ10における粘着層12側のガラス板に対する粘着力が、1.5N/10mmよりも小さい場合、粘着テープ10を、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の透明パネル等に貼り付けた場合に、粘着テープ10が剥がれたりずれたりするおそれがある。
【0017】
また、粘着テープ10における粘着層12側のガラス板に対する粘着力は、8N/10mm以下であることが好ましい。粘着テープ10における粘着層12側のガラス板に対する粘着力が過度に大きい場合、粘着テープ10のリワーク性が低下するおそれがある。この場合、透明パネルを再利用する場合等において粘着テープ10を剥離するときに糊残りが生じる場合がある。
【0018】
本実施の形態の粘着テープ10では、樹脂層11における動的粘弾性測定により測定される23℃における貯蔵弾性率(以下、単に樹脂層11の貯蔵弾性率という)は、5×10
5Pa以上が好ましく、1×10
7Pa以上がより好ましい。樹脂層11の貯蔵弾性率が5×10
5Paよりも小さい場合、粘着テープ10の樹脂層11側に加飾印刷を施すことが困難になる場合がある。具体的には、例えば樹脂層11にスクリーン印刷により加飾印刷を施す場合に、スクリーン印刷版が樹脂層11から剥離しにくくなり、加飾印刷が正常に施されない場合がある。
【0019】
また、粘着テープ10における樹脂層11の貯蔵弾性率は、1×10
10Pa以下であることが好ましい。樹脂層11の貯蔵弾性率が1×10
10Paより大きい場合、粘着テープ10の柔軟性が低下したり、ハンドリング時に樹脂層11にひび割れや白化等が生じたりするおそれがある。そして、粘着テープ10の柔軟性が低下した場合、例えば粘着テープ10を巻き取ることが困難になったり、曲面部や凹凸を有する被着体等に粘着テープ10を貼り付ける際に、粘着テープ10の追従性が低下したりするおそれがある。また、樹脂層11にひび割れや白化が生じた場合、粘着テープ10の光透過性が低下するおそれがある。
【0020】
さらに、粘着テープ10における樹脂層11のガラス転移温度(Tg)は、−40℃以上であることが好ましく、−10℃以上であることがより好ましい。また、樹脂層11のガラス転移温度は、130℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が130℃よりも高い場合、粘着テープ10の柔軟性が低下したり、粘着テープ10の製造において架橋剤による硬化反応が進みにくくなったりするおそれがある。
【0021】
なお、
図1に示した例では、樹脂層11および粘着層12をそれぞれ1層構成としたが、例えば樹脂層11および粘着層12の一方又は双方が、複数の層から構成されていてもよい。言い換えると、粘着テープ10は、複数の樹脂層11を備えていてもよく、複数の粘着層12を備えていてもよい。また、樹脂層11と粘着層12との間に、他の層が設けられていてもよい。
【0022】
また、粘着テープ10は、樹脂層11側の第1剥離ライナー21を剥がした(粘着層12側の第2剥離ライナー22は剥がさない)状態で、カールが小さいことが好ましい。粘着テープ10のカールが大きい場合、樹脂層11へ加飾印刷を施す際に、印刷方法や印刷の設備によっては作業性が低下する場合がある。
粘着テープ10のカール量としては、±10mm以内であることが好ましく、±5mm以内であることがより好ましい。
【0023】
粘着テープ10のカールの測定方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
すなわち、粘着テープ10を210mm×150mmの大きさのシート状とし、これを平面板の上に置き、85℃で50分間、続いて常温×10分間の温度サイクル環境下で保存するプロセスを1サイクルとし、合計10サイクルの保存プロセスを繰り返して行う。そして、各サイクルが終了する毎に、シート状の粘着テープ10の4隅について平面板に対するカール量を測定し、それらの値を粘着テープ10のカール量とする方法がある。
【0024】
ところで、一般に、粘着テープにカールが生じる原因としては、粘着テープの製造条件、粘着テープに使用する材料の膨張率・収縮率、塗布厚さ、各層のガラス転移温度等が関連する場合がある。
本実施の形態においては、粘着テープ10に生じるカールは、樹脂層11のガラス転移温度との相関が高くなっている。本実施の形態では、加飾印刷の作業時等において粘着テープ10のカールを小さくする必要がある場合には、樹脂層11のガラス転移温度を低くすることが好ましい。具体的には、樹脂層11のガラス転移温度は、130℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
【0025】
また、本実施の形態において、粘着テープ10に生じるカールは、樹脂層11の厚さとも相関が高くなっている。本実施の形態では、粘着テープ10におけるカールを抑制する観点では、樹脂層11の厚さは10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
【0026】
続いて、粘着テープ10の各層の構成について具体的に説明する。
[樹脂層11]
本実施の形態の樹脂層11は、樹脂と架橋剤とを含む樹脂塗料により形成される。
【0027】
(樹脂)
本実施の形態の樹脂層11に用いられる樹脂は、50mg/g以上130mg/g以下の範囲の酸価を有する樹脂である。樹脂層11に用いられる樹脂の酸価は、60mg/g以上120mg/g以下の範囲であることが好ましく、70mg/g以上110mg/g以下の範囲であることがより好ましい。なお、樹脂の酸価とは、酸の含有量を表す指標の一つであり、カルボキシル基を含有する樹脂1gを中和するのに要する、水酸化カリウムのmg数で表される。
【0028】
樹脂層11に用いられる樹脂の酸価をこのような範囲とすることで、樹脂層11における架橋性を向上させ、樹脂層11の強度を維持することが可能になる。また、樹脂層11に用いられる樹脂の酸価をこのような範囲とすることで、樹脂層11に対して加飾印刷を行う際にインクが滲みにくくなり、定着性に優れた印刷適性を実現することが可能になる。
また、樹脂層11に用いられる樹脂の酸価をこのような範囲とすることで、後述する粘着テープ10の製造工程において、樹脂塗料の粘度の過度な上昇が抑制され、樹脂塗料の塗工性の低下が抑制される。
【0029】
樹脂層11に用いる樹脂の酸価が50mg/g未満の場合、樹脂層11に加飾印刷を施す場合に、樹脂層11にインクが膨潤しやすくなり、樹脂層11の印刷適性が低下するおそれがある。
一方、樹脂の酸価は高いほど樹脂層11の架橋が進み印刷適性が向上するため好ましいが、通常、酸価を130mg/gより高い樹脂を用いて樹脂層11を構成する樹脂塗料を作製することは難しい。すなわち、樹脂塗料の作製に酸価が130mg/gよりも高い樹脂を用いた場合、樹脂中にアクリル酸等の酸成分の凝集物が発生し、樹脂塗料とすることが難しい。また、酸価が130mg/gよりも高い樹脂を用いた場合、樹脂層11が硬くなり過ぎて、柔軟性が低下する場合がある。
【0030】
本実施の形態の樹脂層11に用いられる樹脂としては、50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂であれば特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂のいずれも用いることができる。さらに、これらの樹脂と電離放射線硬化型樹脂とを併用してもよい。樹脂層11に用いられる樹脂は、カルボキシル基の他、架橋に寄与できる水酸基、アミノ基、二重結合基等を有していてもよい。
【0031】
樹脂層11に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ウレタン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
また、樹脂層11に用いられる熱硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
さらに、樹脂層11に熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂とを併用する場合、用いられる電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましく、樹脂層11に用いられる紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0032】
本実施の形態の樹脂層11では、上述した樹脂の中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましく、特にアクリル系樹脂を用いることがより好ましい。
【0033】
樹脂層11に用いられるアクリル系樹脂((メタ)アクリル系樹脂)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを、共重合させることにより得られる官能基含有(メタ)アクリル系ポリマー等が挙げられる。なかでも、アルキル基の炭素数が6以上の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
このような(メタ)アクリル系樹脂としては、具体的には、ダイヤナール(登録商標)BR118(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量35万、Tg:35℃)等が挙げられる。
【0034】
また、樹脂層11に用いられるポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルアミド、およびこれらの共重合体などが挙げられる。
このようなポリエステル系樹脂としては、具体的には、エリーテル(登録商標)UE3200(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.6万、Tg:65℃)、エリーテル(登録商標)UE3201(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量2万、Tg:65℃)、エリーテル(登録商標)UE3203(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量2万、Tg:60℃)、エリーテル(登録商標)UE3210(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量4万、Tg:45℃)、エリーテル(登録商標)UE3215(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.6万、Tg:45℃)、エリーテル(登録商標)UE3216(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.8万、Tg:40℃)、エリーテル(登録商標)UE3240(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.8万、Tg:40℃)、エリーテル(登録商標)UE3250(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.8万、Tg:40℃)、エリーテル(登録商標)UE3500(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量3万、Tg:35℃)、エリーテル(登録商標)UE3620(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.6万、Tg:42℃)、エリーテル(登録商標)UE9200(ユニチカ株式会社製、重量平均分子量1.5万、Tg:65℃)、バイロン(登録商標)UR4800(東洋紡績株式会社製、重量平均分子量2.5万、Tg:105℃)、バイロン(登録商標)UR8300(東洋紡績株式会社製、重量平均分子量3万、Tg:23℃)等が挙げられる。
【0035】
また、樹脂層11に用いられるウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート系エーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエステル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート系エステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0036】
(溶媒)
上述した樹脂を用いて樹脂層11を作製する場合、樹脂を溶媒に溶解して樹脂塗料を作製して剥離ライナー等のシート材に塗布してもよく、溶媒を用いず直接シート材に塗布してもよい。
上述した樹脂を溶媒に溶解して使用する場合、溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンやこれらの混合溶媒等を用いることができる。
【0037】
(架橋剤)
本実施の形態の樹脂層11は、上述した樹脂が、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤により架橋している。具体的には、樹脂層11は、上述した樹脂に含まれるカルボキシル基が、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤により架橋している。
樹脂層11は、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤により樹脂が架橋することで、樹脂層11にインクを用いて加飾印刷を施す場合に、インクに対する樹脂層11の耐溶解性や、樹脂層11に対するインクの定着性が向上する。
樹脂層11の架橋方法は、熱反応による架橋の他、さらに、紫外線や電子線等の放射線照射による架橋を併用してもよい。
【0038】
樹脂層11に用いられるエポキシ系架橋剤としては、樹脂のカルボキシル基を架橋させることが可能であれば特に限定されるものではなく、公知のビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0039】
また、樹脂層11に用いられる金属キレート架橋剤としては、樹脂のカルボキシル基を架橋させることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、Alを中心金属とするアルミニウムキレート化合物を用いることが好ましい。
なお、詳細については後述するが、本実施の形態の樹脂層11に用いられる金属キレート架橋剤の種類は、粘着層12に用いられる架橋剤(金属キレート化合物)とは異なることが好ましい。
【0040】
樹脂層11における架橋剤の含有量としては、樹脂層11に用いる樹脂の種類や酸価等によっても異なるが、例えば、樹脂100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下の範囲が好ましく、3重量部以上8重量部以下の範囲がより好ましい。樹脂層11において架橋剤の含有量をこのような範囲とすることで、樹脂層11における樹脂の架橋性を向上させ、樹脂層11の強度を維持するとともに、樹脂層11に対して加飾印刷を行う際のインクの滲みを抑制することができる。
通常、樹脂層11の強度や印刷適性を維持するためには、樹脂層11に用いる樹脂の酸価が低いほど、架橋剤の含有量を多くすることが好ましい。
【0041】
なお、樹脂層11における架橋剤の含有量が過度に少ない場合、樹脂層11における架橋密度の向上を図ることができず、例えば樹脂層11に加飾印刷を施す際に、インクが樹脂層11に膨潤して樹脂層11が溶解したり、樹脂層11におけるインキの定着性が低下したりするおそれがある。また、加飾印刷に用いる印刷板等が印刷時に樹脂層11から剥がれにくくなり、加飾印刷の作業性が低下するおそれがある。
一方、樹脂層11における架橋剤の含有量が過度に多い場合、樹脂層11において架橋剤が過剰量となり、未反応の架橋剤による物性の経時変化、被着体の汚染、樹脂層11のひび割れ等の不具合が生じる場合がある。
【0042】
(紫外線吸収剤)
架橋剤として芳香環を含む架橋剤を用いた場合、添加量が多いと紫外線により樹脂層11が変色して黄変することがある。樹脂層11に芳香環を含む架橋剤を用いる場合には、例えば、樹脂層11や粘着層12に紫外線の透過を抑制する紫外線吸収剤を用いることで、樹脂層11の黄変を防止することができる。
【0043】
本実施の形態において用いることができる紫外線吸収剤としては、特に制限はされないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート化合物、ベンゾオキサゾリン化合物等の有機紫外線吸収剤や、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、有機紫外線吸収剤を用いることが好ましく、ベンゾトリアゾール化合物やベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いることがより好ましい。これらの紫外線吸収剤の含有量は、樹脂層11を構成する樹脂100重量部に対して0.01重量部以上5重量部以下の範囲であることが好ましい。
【0044】
[粘着層12]
本実施の形態の粘着層12は、水酸基を有する樹脂からなる粘着剤と、金属キレート化合物とを含む粘着剤塗料により形成される。
【0045】
(粘着剤)
本実施の形態の粘着層12に用いられる粘着剤としては、水酸基を有する樹脂からなる粘着剤であれば特に限定されるものではない。粘着層12に用いられる粘着剤の水酸基価は、例えば1mg/g以上80mg/gの範囲であることが好ましい。
粘着層12に用いられる粘着剤(樹脂)としては、アクリル系粘着剤(アクリル系樹脂)、ウレタン系粘着剤(ウレタン系樹脂)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの粘着剤は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0046】
アクリル系粘着剤としては、例えば、炭素数1〜14の(メタ)アクリレートモノマーを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体を好ましく使用できる。炭素数1〜14の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノマーがあげられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜9の直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。特に、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを好ましく使用できる。なお、上述した(メタ)アクリレートは、各々単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0047】
ウレタン系粘着剤としては、特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオールを用いることができる。
本実施の形態に用いることができるポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0048】
(金属キレート化合物)
本実施の形態の粘着層12は、上述した粘着剤(樹脂)に含まれる水酸基を架橋する架橋剤として、金属キレート化合物を含む。上述したように、粘着層12に用いられる金属キレート化合物は、樹脂のカルボキシル基を架橋する樹脂層11の金属キレート架橋剤とは異なる種類のものが好ましい。
粘着層12に用いられる金属キレート化合物としては、粘着剤(樹脂)に含まれる水酸基を架橋させることができれば特に限定されるものではないが、Tiを中心金属とするチタンキレート化合物またはZrを中心金属とするジルコニウムキレート化合物を用いることが好ましい。粘着層12の架橋剤としてチタンキレート化合物またはジルコニウムキレート化合物を用いることで、粘着テープ10の着色が抑制され、粘着テープ10による表示装置の視認性の低下が抑制される。
【0049】
粘着層12における金属キレート化合物の添加量としては、粘着剤の種類等によっても異なるが、粘着剤100重量部に対して、例えば、0.01重量部以上10重量部以下の範囲、好ましくは、0.1重量部以上1重量部の範囲とすることができる。
粘着層12における架橋剤の添加量が過度に少ない場合、粘着層12の凝集力の向上を図ることができず、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合に、位置ずれや剥がれ等が生じる場合がある。また、粘着層12における架橋剤の添加量が過度に多い場合、未反応の架橋剤による物性の経時変化や、被着体の汚染等の不具合が生じる場合がある。
【0050】
(粘着付与剤)
粘着層12には、必要に応じて粘着付与剤が用いられる。粘着層12に粘着付与剤を用いることで、粘着層12の粘着力が向上する。
粘着層12に用いる粘着付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、合成石油系樹脂、およびこれらの水添系樹脂等が挙げられる。
【0051】
粘着付与剤として用いるロジン系樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社製の「スーパーエステル」、「ペンセル」、「エステルガム」、「パインクリスタル」シリーズ等が挙げられる。粘着付与剤として用いるテルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製の「クリアロン」シリーズ等が挙げられる。粘着付与剤として用いるテルペンフェノール系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製の「YSポリスター」、「マイティーエース」シリーズ等が挙げられる。粘着付与剤として用いる合成石油製樹脂としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の「クイントン」シリーズ等が挙げられる。
【0052】
粘着付与剤の粘着層12全体に対する含有量は、粘着層12に用いる粘着剤の種類等によっても異なるが、例えば、20重量%以上40重量%以下の範囲とすることが好ましく、25重量%以上35重量%以下の範囲とすることがより好ましい。
【0053】
[第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22]
第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムに、樹脂層11または粘着層12との離型性を高めるための剥離処理を施したものを用いることができる。本実施の形態の第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22の剥離処理に用いる材料としては、特に限定されないが、例えば、フロロシリコーン、長鎖アルキルビニルモノマー重合体、アミノアルキド系樹脂等の材料を用いることができる。
第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22の厚さは、特に限定されないが、例えば、通常25μm〜125μmの範囲である。
【0054】
[粘着テープ10の製造方法]
続いて、本実施の形態の粘着テープ10の製造方法について説明する。
本実施の形態の粘着テープ10は、樹脂層11および粘着層12の双方を、第1剥離ライナー21、第2剥離ライナー22等のシート材に塗布することで形成する。
【0055】
本実施の形態の粘着テープ10を製造する場合には、まず、樹脂層11の材料となる材料塗工液(以下、樹脂塗料と呼ぶ)、および粘着層12の材料となる材料塗工液(以下、粘着剤塗料と呼ぶ)を作製する。
樹脂塗料は、例えば上述した50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂と、上述したエポキシ系架橋剤または金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを、溶剤に溶解させることにより作製する。また、粘着剤塗料は、上述した水酸基を有する粘着剤(樹脂)と、上述した金属キレート化合物とを、溶剤に溶解させることにより作製する。
【0056】
続いて、作製した樹脂塗料および粘着剤塗料を塗布する。
図2は、本実施の形態の粘着テープ10(
図1参照)の製造方法を説明するための図であって、塗工装置を用いて、樹脂層11(
図1参照)を構成する樹脂塗料11aおよび粘着層12(
図1参照)を構成する粘着剤塗料12aを塗布している状態を示した図である。
図2に示すように、粘着テープ10の製造に用いる塗工装置は、シート材(この例では、第1剥離ライナー21)を裏面側から支持し矢印A方向に回転してシート材を搬送するバックアップロール60と、バックアップロール60に対向して設けられバックアップロール60により搬送されるシート材(第1剥離ライナー21)に、樹脂層11および粘着層12を構成する材料を塗工するための塗工用ダイ40とを備えている。
【0057】
本実施の形態の塗工用ダイ40は、材料を吐出するための吐出口が、バックアップロール60によるシート材の搬送方向に2つ並んで設けられている。そして、2つの吐出口のうち一方の吐出口から樹脂層11を形成するための樹脂塗料11aを、他方の吐出口から粘着層12を形成するための粘着剤塗料12aを、同時に吐出することで、樹脂層11と粘着層12とを、シート材に同時に塗工することができるようになっている。
【0058】
図2に示す例では、バックアップロール60が、粘着テープ10の樹脂層11側に設けられ、巻き出し軸部(不図示)から繰り出される第1剥離ライナー21を支持・搬送している。また、塗工用ダイ40の2つの吐出口のうち、第1剥離ライナー21の搬送方向上流側に位置する吐出口から、樹脂層11を形成するための樹脂塗料11aを吐出し、搬送方向下流側に位置する吐出口から、粘着層12を形成するための粘着剤塗料12aを吐出している。
これにより、第1剥離ライナー21上に樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとが積層された状態で同時に塗工され、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとが積層された積層体を得ることができる。
【0059】
上述したように、本実施の形態では、樹脂層11を形成するための樹脂塗料11aは、50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂と、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含む。また、粘着層12を形成するための粘着剤塗料12aは、水酸基を有する粘着剤(樹脂)と、水酸基を架橋させるための金属キレート化合物とを含む。すなわち、本実施の形態では、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとで、各塗料に含まれる樹脂の架橋に用いられる官能基や架橋剤の種類が異なることが好ましい。言い換えると、樹脂塗料11aに含まれる樹脂の官能基と、粘着剤塗料12aに含まれる金属化合物とが反応しにくく、また逆に、粘着剤塗料12aに含まれる粘着剤(樹脂)の官能基と樹脂塗料11aに含まれる架橋剤とが反応しにくい組み合わせ構成とすることが好ましい。
【0060】
かかる構成によれば、粘着テープ10の製造工程において、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとを乾燥させないまま重ねて同時に塗工した場合に、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとの界面にて樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとが接触、反応することにより塗料粘度が上昇し、塗工できなくなる現象が抑制され、樹脂塗料11aおよび粘着剤塗料12aを塗工する際の作業性の低下が抑制される。その結果、作業性を低下させることなく、均質な同時重層塗工ができる。
【0061】
なお、樹脂塗料11aや粘着剤塗料12aがゲル化して塗料の粘度が上昇した場合には、樹脂塗料11aや粘着剤塗料12aを層状に塗布することが困難になり、粘着テープ10の製造が難しくなる。特に、樹脂塗料11aがカルボキシル基を含有する樹脂を含み、粘着剤塗料12aが脂肪族イソシアネート系架橋剤を含む場合には、塗料の粘度が上昇しやすい。また、樹脂塗料11aが脂肪族イソシアネート系架橋剤を含み、粘着剤塗料12aがカルボキシル基を含有する樹脂を含む場合も、同様に塗料の粘度が上昇しやすい。
【0062】
ここで、樹脂塗料11aは、乾燥後の厚さが、10μm以下の範囲となるように塗工することが好ましい。また、粘着剤塗料12aは、乾燥後の厚さが、15μm以下の範囲となるように塗工することが好ましい。
樹脂塗料11aおよび粘着剤塗料12aの厚さをこのような範囲とすることで、樹脂層11と粘着層12とを合わせた粘着テープ10の全厚さが過度に厚くなることが抑制され、さらに樹脂層11の物性と粘着層12の粘着力とを兼ね備えた粘着テープ10を得ることができる。
【0063】
樹脂塗料11aおよび粘着剤塗料12aが塗工された第1剥離ライナー21は、図中矢印Bで示す方向に搬送される。そして、第1剥離ライナー21上に積層された樹脂塗料11aおよび粘着剤塗料12aは、不図示の加熱装置により加熱されることで溶剤が揮発し、樹脂層11および粘着層12が形成される。その後、粘着層12上に、別の巻き出し軸部(不図示)から繰り出された第2剥離ライナー22が重ね合わせられてラミネートされた後、所定の雰囲気下でエージングされることで、
図1に示した積層構造を有する粘着テープ10が得られる。
【0064】
図3は、塗工装置の他の例を示した図である。
図3に示す例では、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとを異なる塗工用ダイ51、52によって塗工している。具体的には、
図3に示す例では、バックアップロール60により支持・搬送されている第1剥離ライナー21に対して、まず樹脂塗料11aを塗工用ダイ51によって塗工する。そして、樹脂塗料11aが乾燥するまえのウェット状態で、さらに粘着剤塗料12aを塗工用ダイ52によって塗工する。
このように、粘着テープ10を製造するに際しては、第1剥離ライナー21等のシート材に対して、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとを順次、塗工してもよい。
また、
図3に示した塗工装置を用いる場合、バックアップロール60により支持・搬送されている第1剥離ライナー21に対して、まず粘着剤塗料12aを塗工用ダイ51によって塗工し、続いて粘着剤塗料12aが乾燥する前のウェット状態で、さらに樹脂塗料11aを塗工用ダイ52によって塗工してもよい。
【0065】
また、図示は省略するが、例えば、第1剥離ライナー21上に樹脂塗料11aを塗工して加熱装置等により樹脂塗料11aを乾燥させた後、乾燥した樹脂塗料11a上に粘着剤塗料12aを塗工するようにしてもよい。また、第2剥離ライナー22上に粘着剤塗料12aを塗工して加熱装置等により粘着剤塗料12aを乾燥させた後、乾燥した粘着剤塗料12a上に樹脂塗料11aを塗工するようにしてもよい。
【0066】
また、樹脂塗料11aと粘着剤塗料12aとをそれぞれ個別に第1剥離ライナー21および第2剥離ライナー22の上に塗工、乾燥した後に、樹脂層11の面と粘着層12の面とを貼合ラミネートするような場合、以下のような工程が行われる。すなわち、まず樹脂塗料11aを第1剥離ライナー21の上に塗工、乾燥して巻き取った原反を作製する。次いで粘着剤塗料12aを第2剥離ライナー22の上に塗工、乾燥する。そして、先に作製した樹脂層11の原反を、粘着剤塗料12aを塗工する塗工機の巻き取り側周辺の巻き出し軸部から繰り出しながら、第1剥離ライナー21上に形成された樹脂層11の面と、第2剥離ライナー22の上に形成された粘着層12の面とを貼合ラミネートして巻き取る。
このような工程で粘着テープ10を作製する場合、原反の長さロス等が発生し、粘着テープ10の歩留まりが低下するおそれがある。また、一旦巻き取った樹脂層11の原反を塗工機の巻き取り側周辺の巻き出し軸部から再度繰り出す工程等で、樹脂層11の表面等に塵埃等の異物が付着し、粘着テープ10に異物が巻き込まれるおそれがある。
【0067】
これに対し、樹脂層11および粘着層12の双方をウェットオンウェット法により形成する本実施の形態では、樹脂層11の原反を粘着層12とは別個に作製する必要がないため、原反の長さロスを抑制でき、粘着テープ10の歩留まりを向上させることが可能になる。
【0068】
また、樹脂層11および粘着層12の双方をウェットオンウェット法により形成する本実施の形態では、一旦巻き取った樹脂層11等の原反を塗工機の巻き取り側周辺の巻き出し軸部から再度繰り出す工程を省くことができるため、塵埃等の異物を粘着テープ10に巻き込む機会が少なくなる。これにより、粘着テープ10において異物欠陥による不良やクレームの発生を抑制でき、高品質の粘着テープ10を得ることができる。
さらに、樹脂層11および粘着層12の双方をウェットオンウェット法により形成する本実施の形態は、一方の層がウェットの状態で他方の層を塗工、乾燥するため樹脂層11と粘着層12との間の密着性が向上し、剥がれにくくなるため好ましい。
そして、本実施の形態では、特に後述する
図4に示すように、液晶表示装置1等の表示装置における透明パネルを構成するカバーガラスの裏側に貼り付ける用途として、表面および内部に存在する欠陥等に起因する不良の少ない極めて高品質の粘着テープ10を提供することができる。
【0069】
ここで、粘着テープ10における欠陥の検出は、例えば、以下のような欠陥検出機を用いて、以下のような方法で行うことができる。
すなわち、欠陥検出用の欠陥検出機は、例えば、支持体の一方の側に配置されたロッド型ファイバー照明と、支持体の他方の側に配置された一次元CCDラインセンサカメラとから構成することができる。そして、欠陥の検出は、ロッド型ファイバー照明から粘着テープ10に光を照射し、その透過光を一次元CCDラインセンサカメラで連続的に撮影することで行う。粘着テープ10に欠陥が存在すると光散乱が生じるため、この光散乱を検出することにより、粘着テープ10における欠陥数と、それぞれの欠陥の位置および大きさとを計測することができる。
【0070】
なお、本実施の形態の粘着テープ10の製造において樹脂塗料11aや粘着剤塗料12aを塗工する方法は、上述した塗工装置(ダイコーター)を用いた方法に限定されるものではなく、例えば、コンマコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター、カーテンコーター等による塗工法やこれらを二種以上組み合わせた方法を用いてもよい。
【0071】
[粘着テープ10の使用方法]
上述したように、本実施の形態の粘着テープ10は、例えば、樹脂層11側の一部の領域に加飾印刷が施された後、粘着層12側が液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置のカバーガラス等に貼り付けられて使用される。
【0072】
携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子辞書等では、液晶パネルあるいは有機ELパネル等の表示パネルと、表示パネルの表面側に取り付けられる透明パネルとを備えた表示装置(液晶表示装置、有機EL表示装置)が使用される。
このような表示装置では、装置全体の薄型化や軽量化、視認性向上のための高透明化等の課題が存在する。これらの課題を解決するため、表示装置では、各種部材を貼り合わせるために、全体の厚みが薄く、ヘイズや全光線透過率等の光学特性が優れた粘着テープやシート等が使用される。
【0073】
ところで、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置では、意匠性や識別性を付与するために、透明パネルの裏側に、各種の文字や図柄、多色の額縁等の装飾部が設けられる場合がある。また、これらの表示装置では、透明パネルの裏側に、低抵抗の電極やプリント配線等を形成する場合がある。
【0074】
上述した装飾部やプリント配線等は、透明パネル上や透明パネル上に形成した樹脂上に直接、スクリーン印刷法等により加飾印刷を施すことで形成される場合もあるが、通常、透明パネルを再利用する場合等の利便性や透明パネルの加工歩留まり等を考慮し、あらかじめ加飾印刷を施した粘着テープを透明パネルに貼り付けることで形成されるケースが多い。
【0075】
このように、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に装飾部やプリント配線を形成するために粘着テープを用いる場合、粘着テープは、透明パネルに対して貼り付けられるために用いられる粘着層に加えて、加飾印刷を施すための基材層が必要になる。
【0076】
ここで、一般に、光学特性に優れた粘着テープを得るためには、粘着層が積層される基材層として、光学特性が高いPETフィルム(光学用PETフィルム)が使用されることが多い。しかし、現在主流の光学用PETフィルムは厚いため、光学用PETフィルム上に粘着層を形成した粘着テープ、あるいは光学用PETフィルムにハードコート処理を施しハードコート処理面とは反対側に粘着層を形成した粘着テープを、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合には、表示装置の更なる薄型化を実現することが困難になる。
【0077】
また、光学用PETフィルムは、加飾印刷時のインクの定着性が低く、インクをはじいたり、印刷できてもインクを擦ると容易に剥がれてしまったりすることがある。なお、フィルムや粘着テープ等に対する定着性は、例えば、印刷を施したフィルムや粘着テープに対する、指によるスクラブ試験により評価することができる。具体的には、印刷を施したフィルムや粘着テープの印刷面を指で所定時間(例えば30秒間)スクラブした後のスクラブ痕の程度で、インクの定着性を評価することができる。
【0078】
さらにまた、光学用PETフィルムの加飾印刷時のインクの定着性を改善するために、光学用PETフィルムの表面等にインク受容層や易接着層を設ける場合には、コストが高くなりやすい。したがって、インク受容層や易接着層を設けた光学用PETフィルムを用いた粘着テープを、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用した場合、表示装置のコストが上昇し、好ましくない。
【0079】
一方、光学用PETフィルムよりも薄いPETフィルムとしては、工業用PETフィルムが存在するが、工業用PETフィルムは光学用PETフィルムと比較して、ヘイズや全光線透過率等の光学特性が劣る傾向がある。また、工業用PETフィルムを高温下、高温多湿下で保存した場合、PETのオリゴマーがフィルムの表面等に析出し、白化する場合がある。したがって、工業用PETフィルムに粘着層を積層した粘着テープを液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に用いた場合には、表示装置の視認性が低下することになるため、好ましくない。
【0080】
これに対し、本実施の形態の粘着テープ10では、加飾印刷を施すための層として、PETフィルムに変えて、酸価が50mg/g以上130mg/g以下の樹脂とエポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含む樹脂塗料を薄く塗布することにより形成される樹脂層11を設けている。これにより、加飾印刷時のインクの粘着テープ10への定着性が向上するとともに、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に用いた場合に、表示装置の薄型化、軽量化および高透明化を実現しながら、表示装置の透明パネルに装飾部やプリント配線を形成することを可能にしている。
さらに、本実施の形態の粘着テープ10では、PETフィルムに変えて塗布により形成される樹脂層11を設けることで、PETフィルムのようにオリゴマーが析出することがなくなるため、粘着テープ10における白化現象を抑制できる。これにより、粘着テープ10を液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に用いた場合に、表示装置の視認性の低下を抑制することを可能にしている。
【0081】
図4は、本実施の形態の粘着テープ10の使用状態を示した図であり、より詳細には、粘着テープ10を液晶表示装置1に使用した状態を示した図である。なお、
図4では、液晶表示装置1における液晶パネル5の詳細な構成については記載を省略している。以下、
図4等を参照して本実施の形態の粘着テープ10の使用方法の一例について説明する。
【0082】
図4に示すように、本実施の形態では、粘着テープ10のうち樹脂層11に、液晶表示装置1に装飾部を形成するための加飾印刷3が施される。加飾印刷3は、通常、液晶パネル5による表示画面領域よりも外周に位置する部分に対応するように、粘着テープ10の樹脂層11に部分的に設けられる。
粘着テープ10の樹脂層11に加飾印刷3を施す方法としては特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、パッド印刷等の方法を用いることができる。
また、樹脂層11に加飾印刷3を施すために用いるインクとしては、特に限定されず、市販のインクを用いることができる。具体的には、例えば樹脂層11に加飾印刷3として装飾部を形成する場合には、溶剤に顔料等が分散されたインクを用いることができる。また、例えば樹脂層11に加飾印刷3としてプリント配線を形成する場合には、溶剤に金属微粒子等の低抵抗材料が分散されたインクを用いることができる。
【0083】
本実施の形態では、樹脂塗料の塗布により形成される樹脂層11を設けることで、粘着テープ10に対して加飾印刷3を施すことが可能になっている。
具体的には、樹脂層11を、50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂と、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含む樹脂塗料を塗布することにより形成することで、樹脂層11を、加飾印刷3を施すのに適した硬度とすることが可能になる。
これにより、樹脂層11に加飾印刷3を施す際に、加飾印刷3に用いるインクが樹脂層11に膨潤したり弾かれたりすることが抑制され、加飾印刷3の質の低下が抑制される。本実施の形態の粘着テープ10は、特に有機溶剤に顔料等を分散させたインクを加飾印刷3に用いる場合に有効である。
さらに、樹脂層11が上述した構成を有することで、樹脂層11に加飾印刷3を施す際に、印刷版等が樹脂層11に貼りつくことが抑制され、加飾印刷3を施す際の作業性が良好になる。
【0084】
樹脂層11に加飾印刷3が施された粘着テープ10は、
図4に示すように、液晶表示装置1の表面側に設けられる透明パネル2に対して、粘着層12により貼り付けられる。
透明パネル2は、カバー材の一例であって、例えば、ガラス板、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂等の透明性の高い部材からなり、通常、ガラス板(カバーガラス)が使用される場合が多い。本実施の形態の粘着テープ10では、粘着層12のガラス板に対する粘着力を、1.5N/10mm以上とすることで、粘着テープ10を液晶表示装置1においてガラス板からなる透明パネル2に貼りつけて使用した場合に、位置ずれや剥がれ等の発生を抑制することができる。
【0085】
図4に示すように、液晶表示装置1では、透明パネル2を構成するカバーガラスの裏側に貼り付けられた粘着テープ10のうち加飾印刷3が施された樹脂層11側に対して、光学特性が高い樹脂4を介して液晶パネル5が取り付けられる。
そして、液晶表示装置1では、液晶パネル5から出射された光は、
図4にて矢印Cで示すように、粘着テープ10のうち加飾印刷3が施されていない表示画面領域を通過した後、ユーザによって視認される。
【0086】
ここで、本実施の形態の粘着テープ10では、上述したように、ヘイズが1.5%以下となっており、全光線透過率が90%以上となっている。
これにより、本構成を採用しない場合と比較して、液晶パネル5から出射された光が、粘着テープ10を通過する際に光が散乱することが抑制され、より多くの光がユーザ側に透過されることになる。この結果、本構成を採用しない場合と比較して、液晶表示装置1における視認性の低下を抑制することができる。
【0087】
また、本実施の形態の粘着テープ10では、樹脂塗料を塗布することにより樹脂層11を形成し、粘着剤塗料を塗布することにより粘着層12を形成している。これにより、例えばPETフィルム等のフィルム基材を用いる場合と比較して、光学特性が高く且つ厚さが薄い樹脂層11を得ることができる。この結果、本構成を採用しない場合と比較して、粘着テープ10の樹脂層11と粘着層12とを合わせた全厚を薄く、より具体的には25μm以下にすることができる。
そして、粘着テープ10の全厚を薄くできることで、本構成を採用しない場合と比較して、粘着テープ10を液晶表示装置1に使用した場合に液晶表示装置1が厚くなることが抑制され、液晶表示装置1の薄型化、軽量化を実現することが可能になる。
【0088】
なお、
図4では、粘着テープ10を液晶表示装置1に適用した例について説明したが、本実施の形態の粘着テープ10は、有機ELパネルを有する有機EL表示装置等、画像を表示する他の表示装置に用いてもよい。この場合にも、
図4に示した例と同様に、有機EL表示装置等の表示装置における視認性の低下を抑制しながら表示装置の薄型化、軽量化を実現することができる。
【0089】
ところで、一般に樹脂塗料および粘着剤塗料を塗布することにより形成される塗布型の粘着テープ10では、時間の経過により粘着層12の粘着力が低下しやすいという課題が存在する。
これは、樹脂層11に用いられる架橋剤が、時間の経過とともに樹脂層11と粘着層12との界面を介して粘着層12側へ移行して粘着層12を構成する粘着剤(樹脂)と架橋することに起因するものと考えられる。特に、樹脂層11や粘着層12にイソシアネート系架橋剤を用いた場合に、粘着層12の粘着力の低下が生じやすい。
【0090】
上述したように、本実施の形態では、樹脂層11は、50mg/g以上130mg/g以下の酸価を有する樹脂と、エポキシ系架橋剤および金属キレート架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤とを含む。また、粘着層12は、水酸基を有する粘着剤(樹脂)と、水酸基を架橋させるための金属キレート化合物とを含む。そして、本実施の形態では、樹脂層11と粘着層12とで、各層に含まれる樹脂の架橋に用いられる官能基や架橋剤の種類が異なることが好ましい。言い換えると、粘着層12に含まれる粘着剤(樹脂)の官能基と樹脂層11に含まれる架橋剤とが反応しにくい組み合わせ構成とすることが好ましい。
【0091】
かかる構成によれば、本実施の形態の粘着テープ10では、樹脂層11から粘着層12へ架橋剤が移行した場合であっても、樹脂層11の架橋剤は、粘着層12の粘着剤(樹脂)とは反応しにくく、粘着層12の粘着剤(樹脂)が架橋することが抑制される。
したがって、本実施の形態の粘着テープ10では、経時による粘着層12の粘着力の低下が抑制される。
【実施例】
【0092】
続いて、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
1.粘着剤塗料の調整
(1)粘着剤塗料aの調整
アクリル系粘着剤(サイデン化学社製サイビノールTPO3232、固形分濃度:35重量%、水酸基価:2.7(mg/g)、重量平均分子量Mw:50万)100重量部に対して、金属キレート系化合物であるジルコニウムキレート化合物(マツモトファインケミカル社製オルガチックスZC700、固形分濃度:20重量%)0.8重量部を添加し、イソプロピルアルコール・トルエン混合溶媒(混合比率=1:1)を用いて固形分濃度が23重量%となるように希釈し、粘着剤塗料aを得た。
【0094】
(2)粘着剤塗料bの調整
アクリル系粘着剤(日本合成化学工業社製コーポニールN−7520、固形分濃度35重量%、水酸基価:50.0(mg/g)、重量平均分子量Mw70万)100重量部に対して、金属キレート系化合物であるチタンキレート化合物(マツモトファインケミカル社製オルガチックスTC1040、固形分濃度:75重量%)0.8重量部を添加し、メチルエチルケトン・トルエン混合溶媒(混合比率=1:1)を用いて固形分濃度が23重量%となるように希釈し、粘着剤塗料bを得た。
【0095】
(3)粘着剤塗料cの調整
アクリル系粘着剤(日本合成化学工業社製コーポニールN−7520、固形分濃度35重量%、水酸基価:50.0(mg/g)、重量平均分子量Mw70万)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製コロネートHX、固形分濃度100重量%)0.5重量部を添加し、メチルエチルケトン・トルエン混合溶媒(混合比率=1:1)を用いて固形分濃度が23重量%となるように希釈し、粘着剤塗料cを得た。
【0096】
2.樹脂塗料の調整
(1)樹脂塗料Aの調整
アクリル系樹脂溶液(日本合成化学工業社製の樹脂I、固形分濃度:27重量%、酸価:80(mg/g)、ガラス転移温度Tg:55℃、重量平均分子量Mw:30万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(綜研化学社製E−100X、固形分濃度:100重量%)5重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Aを得た。
【0097】
(2)樹脂塗料Bの調整
アクリル系樹脂溶液(大同化成工業社製の樹脂II、固形分濃度:30重量%、酸価:60(mg/g)、ガラス転移温度Tg:20℃、重量平均分子量Mw:40万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製テトラッドC、固形分濃度:100重量%)5重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Bを得た。
【0098】
(3)樹脂塗料Cの調整
アクリル系樹脂溶液(大同化成工業社製の樹脂III、固形分濃度:30重量%、酸価:50(mg/g)、ガラス転移温度Tg:40℃、重量平均分子量:30万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(綜研化学社製E−100X、固形分濃度:100重量%)5重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Cを得た。
【0099】
(4)樹脂塗料Dの調整
アクリル系樹脂(根上工業社製ハイパールMA−4620、固形分濃度:98重量%、酸価:130(mg/g)、ガラス転移温度Tg:56℃、重量平均分子量Mw:10万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製テトラッドC、固形分濃度:100重量%)5重量部を添加し、メチルエチルケトン・トルエン混合溶媒(混合比率=1:1)を用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Dを得た。
【0100】
(5)樹脂塗料Eの調整
アクリル系樹脂(大同化成工業社製の樹脂III、固形分濃度:30重量%、酸価:50(mg/g)、ガラス転移温度Tg:40℃、重量平均分子量Mw:30万)100重量部に対して、金属キレート架橋剤であるアルミニウムキレート化合物(日本化学産業社製ナーサムアルミニウム、固形分濃度:100重量%)10重量部を添加し、メチルエチルケトン・トルエン混合溶媒(混合比率=1:1)を用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Eを得た。
【0101】
(6)樹脂塗料Fの調整
アクリル系樹脂(日本合成化学工業社製の樹脂IV、固形分濃度:25重量%、酸価:40(mg/g)、ガラス転移温度Tg:40℃、重量平均分子量Mw:20万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(綜研化学社製E−100X、固形分濃度:100重量%)5重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Fを得た。
【0102】
(7)樹脂塗料Gの調整
アクリル系樹脂(東洋インキ社製リオデュラスTH002、固形分濃度:40重量%、酸価:1(mg/g)、水酸基価:80(mg/g)、ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:5万)100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製テトラッドC、固形分濃度:100重量%)10重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Gを得た。
【0103】
(8)樹脂塗料Hの調整
アクリル系樹脂(東洋インキ社製リオデュラスTH002、固形分濃度:40重量%、酸価:1(mg/g)、水酸基価:80(mg/g)、ガラス転移温度Tg:60℃、重量平均分子量Mw:5万)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製コロネートHX、固形分濃度:100重量%)10重量部を添加し、メチルエチルケトンを用いて固形分濃度が20重量%となるように希釈し、樹脂塗料Hを得た。
【0104】
(9)樹脂塗料Iの調整
アクリル系樹脂(固形分濃度:30重量%、酸価:150(mg/g)、重量平均分子量Mw:30万)の合成を試みたところ、合成溶液内に酸成分の凝集物が発生して合成が困難となり、樹脂塗料Iを得ることができなかった。
【0105】
3.粘着テープの作製
[実施例1]
図2に示した塗工装置を用いて、巻き出し軸部から繰り出した剥離ライナー(第1剥離ライナー21、材質:PET、厚さ:50μm)の離型処理面に粘着剤塗料aと樹脂塗料Aとを、粘着剤塗料aが上方(樹脂塗料Aに対して剥離ライナーと反対側)になるように同時に塗布し、溶剤を乾燥させた。続いて、別の巻き出し軸部から繰り出した他方の剥離ライナー(第2剥離ライナー22、材質:PET、厚さ:100μm)を乾燥後の粘着剤塗料a上に重ね合わせラミネートした後、40℃雰囲気下で72時間エージングし、樹脂層11と粘着層12とが積層された
図1に示す粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは7.5μmであり、樹脂層11の厚さは7.5μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、15μmであった。
【0106】
[実施例2]
樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Bを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは8μmであり、樹脂層11の厚さは10μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、18μmであった。
【0107】
[実施例3]
樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Cを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは10μmであり、樹脂層11の厚さは8μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、18μmであった。
【0108】
[実施例4]
樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Dを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは6.5μmであり、樹脂層11の厚さは7.5μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、14μmであった。
【0109】
[実施例5]
樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Eを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは8μmであり、樹脂層11の厚さは8μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、16μmであった。
【0110】
[実施例6]
粘着剤塗料aの代わりに粘着剤塗料bを用い、樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Cを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは10μmであり、樹脂層11の厚さは10μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、20μmであった。
【0111】
[実施例7]
粘着剤塗料aの代わりに粘着剤塗料bを用い、樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Cを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは8μmであり、樹脂層11の厚さは10μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、18μmであった。
【0112】
[比較例1]
樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Fを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは7.5μmであり、樹脂層11の厚さは7.5μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、15μmであった。
【0113】
[比較例2]
粘着剤塗料aの代わりに粘着剤塗料bを用い、樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Gを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは10μmであり、樹脂層11の厚さは10μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、20μmであった。
【0114】
[比較例3]
粘着剤塗料aの代わりに粘着剤塗料cを用い、樹脂塗料Aの代わりに樹脂塗料Hを用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂層11と粘着層12とが積層された粘着テープ10を得た。
なお、乾燥・エージング後の粘着層12の厚さは8μmであり、樹脂層11の厚さは10μmであり、粘着層12と樹脂層11とを合わせた粘着テープ10の全厚さは、18μmであった。
【0115】
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例3それぞれの粘着テープ10の構成を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
4.評価
(1)印刷適性の評価
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例3にて得られた粘着テープ10に対して樹脂層11側に対して、溶剤に銀微粒子が分散された銀ペーストをスクリーン印刷し、印刷適性を評価した。印刷適性の評価は、以下の基準により行った。
A:スクリーン印刷の印刷適性が良好
B:スクリーン印刷の印刷適性がやや不良
C:スクリーン印刷の印刷適性が不良
なお、粘着テープ10の印刷適性の評価は、AおよびBが、粘着テープ10を表示装置に用いる場合に許容できる範囲内にあると評価されるものであり、Cが、粘着テープ10を表示装置に用いる場合に許容できる範囲外にあると評価されるものである。
【0118】
(2)粘着力の評価
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例3で得た粘着テープ10について、JIS Z 0237に記載された方法に準拠して、ガラス板に対する180℃ピール力を測定した。なお、粘着力の測定は、粘着テープ10の作製直後と、72時間経過後とのそれぞれで行った。
【0119】
(3)全光線過率およびヘイズの測定
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例3で得た粘着テープ10について、日本分光製の分光光度計「V−670(積分球)」を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。全光線透過率およびヘイズの測定は、樹脂層11側の剥離ライナー(第1剥離ライナー21)および粘着層12側の剥離ライナー (第2剥離ライナー22)を剥がした状態で行った。
【0120】
5.評価結果
実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例3の粘着テープ10に対する評価結果を表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
表2に示すように、実施例1〜実施例7では、印刷適性が良好であり且つ経時による粘着力の低下が抑制された粘着テープ10が得られることが確認された。具体的には、実施例1〜実施例7の粘着テープ10は、印刷適性がAであることが確認された。また、実施例1〜実施例7の粘着テープ10は、72時間経過後も、対ガラス板粘着力がほとんど低下しないことが確認された。
【0123】
また、実施例1〜実施例7では、光学的特性が良好な粘着テープ10が得られることが確認された。具体的には、粘着テープ10のヘイズが1.5%以下であり、全光線透過率が90%以上であることが確認された。
以上より、実施例1〜実施例7の粘着テープ10は、例えば樹脂層11側に装飾部やプリント配線等の加飾印刷3を施して液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に使用するのに適していることが確認された。
【0124】
これに対し、比較例1および比較例2の粘着テープ10では、印刷適性の評価において樹脂層11上に加飾印刷を施した場合に、インクが樹脂層11に膨潤することが確認された。言い換えると、比較例1および比較例2の粘着テープ10は、実施例1〜実施例7の粘着テープ10と比較して、印刷適性が低いことが確認された。
これは、樹脂層11に用いる樹脂の酸価が50mg/g未満であることにより、樹脂層11の架橋が不十分であることに起因するものと考えられる。
【0125】
また、比較例3の粘着テープ10では、印刷適性は良好であるものの、経時により粘着力が低下することが確認された。より具体的には、72時間後の粘着力が、1N/10mm以下となっており、比較例3の粘着テープ10は、表示装置に使用するのに適していないことが確認された。
これは、樹脂層11のイソシアネート系架橋剤が粘着層12に移行し、粘着層12の粘着剤(樹脂)と架橋したことに起因するものと考えられる。