特許第6456749号(P6456749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456749
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ダンプトラックの荷台角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/30 20060101AFI20190110BHJP
   B60P 1/04 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G01B7/30 G
   B60P1/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-67887(P2015-67887)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188765(P2016-188765A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】束田 英信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 烈士
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−121470(JP,A)
【文献】 特開平10−002707(JP,A)
【文献】 特開平07−029445(JP,A)
【文献】 特開平06−351195(JP,A)
【文献】 特開平08−124721(JP,A)
【文献】 特開平05−074613(JP,A)
【文献】 特開昭63−238404(JP,A)
【文献】 特開2002−289411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
B60P 1/00− 1/64
G01D 5/00− 5/252
5/39− 5/62
H01C 8/00−10/50
G01C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台角度検出用のポテンショメータが、基板と、その基板に設けられた環状抵抗体と、その環状抵抗体に接触して擦動する荷台角度検出用の接触片を有するブラシとを備えたダンプトラックの荷台角度検出装置において、
荷台が着座位置にある時に前記ブラシが位置する前記環状抵抗体の部位の内周側または外周側の少なくともいずれか一方に、前記環状抵抗体に電気的に接続する導体を設け、
前記ブラシに、前記荷台角度検出用の接触片以外に、荷台が着座位置にある時に前記導体に圧接する保護用接触片を設けたことを特徴とするダンプトラックの荷台角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックの荷台角度検出装置において、
前記導体の前記保護用接触片との接触面として、荷台が着座位置へ下降するに伴ってブラシが回動する方向について、前記基板からの高さが次第に高くなる傾斜面を備えたことを特徴とするダンプトラックの荷台角度検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダンプトラックの荷台角度検出装置において、
前記保護用接触片の長さを前記検出用接触片より短く形成することにより、前記保護用接触片を前記基板から浮かせたことを特徴とするダンプトラックの荷台角度検出装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のダンプトラックの荷台角度検出装置において、
前記導体として、前記保護用接触片の先端部の硬度以上の硬度を有する金属材料を用いたことを特徴とするダンプトラックの荷台角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックにおいて、ポテンショメータにより荷台(ベッセル)の角度を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックにおいては、荷台を上げて排土したり、荷台を下げて着座させるに当たり、荷台の傾斜角度を検出する必要がある。そして例えば荷台が排土姿勢に相当する上限角度に至る前、または荷台を下げて着座姿勢に相当する下限角度に至る前に、荷台の上下動速度を減速させて排土姿勢または着座姿勢に至った際に生じる衝撃を緩和するという動作制御を行なう。このような荷台の動作制御を行なうための荷台角度検出装置として、特許文献1に記載のようなポテンショメータが用いられる。このポテンショメータには、環状抵抗体上を擦動する板ばね製ブラシを備えたものが用いられる。
【0003】
特許文献2には、ポテンショメータの環状抵抗体に接触するブラシとして、ポテンショメータの基板上に同心に配置された内外の環状抵抗体のうち、外側の環状抵抗体に接触させるブラシの接触片として、最も外側の接触片の環状抵抗体に対する接触圧を他の接触片より高くすることにより、接触片の摩耗が最外側の接触片に集中するようにして接触片全体の摩耗の進行が遅れるようにし、これによってポテンショメータの特性の劣化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−130964号公報
【特許文献2】特開平10−2707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダンプトラックにおいては、荷台が着座位置にあるとき、走行や積込み作業に伴なって車体が振動することにより、ポテンショメータも振動する。このポテンショメータの振動により、ブラシと環状抵抗体とが相対的に変位し、環状抵抗体に接触しているブラシの検出用接触片が、環状抵抗体に接触している位置で局所的に擦動する。このため、荷台が着座位置にあるとき、環状抵抗体上の特定位置(着座部位)が集中的に摩耗する。このため、ポテンショメータによる検出信号にくるいを生じ、ポテンショメータを含めた荷台角度検出装置の寿命を短命化するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、ダンプトラックの走行中あるいは作業中における車体や荷台の振動により、荷台が着座位置にある時の環状抵抗体のブラシによる摩耗が防止され、ポテンショメータの延命化が図れるダンプトラックの荷台角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のダンプトラックの荷台角度検出装置は、荷台角度検出用のポテンショメータが、基板と、その基板上に設けられた環状抵抗体と、その環状抵抗体に接触して擦動する検出用接触片を有するブラシとを備えたダンプトラックの荷台角度検出装置において、
荷台が着座位置にある時に前記ブラシが位置する前記環状抵抗体の部位の内周側または外周側の少なくともいずれか一方に、前記環状抵抗体に電気的に接続する導体を設け、
前記ブラシに、前記検出用接触片以外に、荷台が着座位置にある時に前記導体に圧接する保護用接触片を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷台が着座位置にある時に、荷台や車体の振動に伴う検出用接触片による環状抵抗体の特定部位の摩耗が軽減され、荷台角度検出装置の延命化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の荷台角度検出装置を適用するダンプトラックの一例を示す側面図である。
図2】本発明の荷台角度検出器の一実施の形態を示す構成図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】(A)は本実施の形態のポテンショメータのブラシを示す側面図、(B)は本実施の形態におけるブラシと環状抵抗体との荷台の非着座状態での接触状態を示す側面図、(C)は本実施の形態のブラシと環状抵抗体との荷台着座状態での接触状態を示す側面図である。
図5】本実施の形態において、荷台が着座位置にある時のポテンショメータのブラシと環状抵抗体および導体との位置関係を示す図である。
図6】本実施の形態のポテンショメータの特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の荷台角度検出装置を適用するダンプトラックの一例を示す。ダンプトラックは、前輪1と後輪2を設けた車体3上に、車体3の後部の枢支軸4を中心としてホイストシリンダ5の伸縮により起伏可能に荷台(ベッセル)6を取付けてなる。荷台6を車体3に取付けるため、車体3の後部に荷台取付けのためのブラケット7を設け、荷台6には、車体3側ブラケット7に組み合わせるブラケット8を設け、これらのブラケット7,8に設けた貫通孔に枢支軸4を貫挿して荷台6を車体3に取付ける。車体3の前部に、エンジン、発電機等を収容したハウジング10を設置すると共に、ハウジング10上に、運転室11や整流器12等を設置する。
【0011】
13は荷台6の角度θを検出するポテンショメータである。荷台6の角度θは、実線で示す荷台6の着座姿勢と、2点鎖線で示すように、荷台6が車体3から浮いた姿勢との間でなす傾斜角度である。
【0012】
図2は本発明の荷台角度検出装置の主要構成部品であるポテンショメータ13の一実施の形態を示す構成図である。図2において、15は車体3に設けたブラケット7に固定した軸である。16はポテンショメータ13の基板であり、この基板16は円形をなし、その中心部を軸15に固定して取付ける。17,18は基板16上に同心に設けた環状抵抗体である。外側の環状抵抗体17は両端が接続されない開構造の弧状をなし、両端に直流電圧を印加する電源端子19,20を有する。内側の環状抵抗体18は閉構造をなし、弧状部の一部に検出端子21を有する。この検出端子21は、電源端子19,20の間に荷台角度θの変化に応じて変化する検出電圧を出力する
【0013】
23は軸15を中心として回動可能に取付けた板ばねでなるブラシである。24はブラシ23に固定したアーム、25はリンクであり、このリンク25の両端を、荷台6に設けたブラケット8とアーム24にそれぞれピン26,27により連結する。この構成により、荷台6が上がる時にはブラケット8およびリンク25が矢印28の方向に動くことにより、ブラシ23は矢印29の方向に回動する。反対に、荷台6が下がる時には、ブラシ23は矢印29の反対方向に回動する。
【0014】
図3に示すように、ブラシ23は、外側の環状抵抗体17に接触する検出用接触片23aと、内側の環状抵抗体18に接触する検出用接触片23bとを有する。本実施の形態においては、これらの検出用接触片23a,23bがそれぞれ複数本(3本)に分割して形成されたものを示すが、それぞれ1本のもので構成することもできる。
【0015】
23cはブラシ23の検出用接触片23aの外側、内側に位置するようにブラシ23に一体に形成した保護用接触片である。23dはブラシ23の検出用接触片23bの外側、内側に位置するようにブラシ23に一体に形成した保護用接触片である。
【0016】
本実施の形態においては、図4(A)に示すように、検出用接触片23a,23bの外側、内側に形成した保護用接触片23c,23dの長さL1は、環状抵抗体17,18に接触する検出用接触片23a,23bの長さL2より短く、半分程度の長さに形成されている。また、本実施の形態においては、検出用接触片23a,23bが環状抵抗体17,18に接触していない状態では、ブラシ23の母板部23xと保護用接触片23c,23dのなす角度αは、母板部23xと検出用接触片23a,23bとがなす角度に等しく形成されている。なお、ブラシ23の母板部23xと保護用接触片23c,23dのなす角度αは、母板部23xと検出用接触片23a,23bとがなす角度と異なっていてもよい。
【0017】
図3において、30aは外側の環状抵抗体17の外周側、内周側に環状抵抗体17に電気的に接続して設けた導体である。30bは内側の環状抵抗体18の外周側、内周側に環状抵抗体18に電気的に接続して設けた導体である。図5は荷台6が着座位置にある時のブラシ23と導体30a,30bとの位置関係を示す。図5に示すように、荷台6が着座位置にある時には、導体30a,30bに、ブラシ23の保護用接触片23c,23dが接触するように構成する。すなわち、導体30a,30bは、環状抵抗体17の両端の電源端子19,20のうち、荷台6が着座位置にある時にブラシ23が近接する側の電源端子19に近い位置に設ける。
【0018】
図4(C)に示すように、導体30a,30bの基板16からの高さHは、環状抵抗体17,18の高さhより高く形成する。31は荷台6が着座位置にある時に保護用接触片23c,23dが圧接される着座時接触面であり、この着座時接触面31は平坦面に形成する。32は荷台6が浮いた状態から下降する際に、ブラシ23の回動に伴って保護用接触片23c,23dが辷り上がる傾斜面、すなわち、着座時接触面31側が次第に高くなるように傾斜して形成された接触面である。この傾斜面32の傾斜角度としては5度ないし10度が好ましいが、10度以上の角度としてもよい。
【0019】
導体30a,30bとしては、耐摩耗性を持たせるため、ブラシ23の保護用接触片23c,23dの先端部の硬度と同程度以上の硬度を有する金属材料を用いることが好ましい。その金属材料の一例として、銀・パラジウム合金を用いることができるが、勿論他の金属材料を用いてもよい。
【0020】
この構成において、図1に2点鎖線で示すように、荷台6が車体3から浮いた状態にある時は、図4(B)に示すように、ブラシ23の検出用接触片23a,23bは、その弾性により、環状抵抗体17,18に所定の圧力を持って接触し、荷台6の起伏に伴って環状抵抗体17,18上を擦動する。このとき、保護用接触片23c,23dは、検出用接触片23a,23bより短く形成されているので、基板16の表面16aから浮いた状態にあり、基板16には接触しない。
【0021】
一方、荷台6が車体3から浮いた状態から下降する動作に移行すると、ブラシ23は、図2に示す矢印29の反対方向に、軸15を中心として回動する。そして荷台6が着座位置に近い位置に至ると、図4(C)に示すように、保護用接触片23c,23dが導体30a,30bの傾斜面32上を滑り上がり、その後、荷台6が車体3に着座した状態では、保護用接触片23c,23dは着座時接触面31上に乗る。この状態では、保護用接触片23c、23dは着座時接触面31に圧接するので、検出用接触片23a,23bは矢印33で示すように環状抵抗体17から離れる方向に押される。このため、図示のように、検出用接触片23a,23bが環状抵抗体17,18から浮くかあるいは検出用接触片23a,23bの環状抵抗体17,18に対する接触圧が下がった状態で接触する。
【0022】
図6は荷台角度θとポテンショメータ13の出力電圧との関係を示す特性図である。図6において、Wは荷台6が着座位置にあって、検出端子21から出力される検出電圧が一定となる領域である。すなわち、荷台6が着座位置にあると、保護用接触片23c,23dがそれぞれ導体30a,30bの着座時接触面31に接触した状態となる。この時、環状抵抗体17に接続した導体30aと着座側の電源端子19との間の長さ(抵抗値)は一定であり、また、環状抵抗体18の導体30bと検出端子21との間の長さ(抵抗値)は一定であるため、図6のWに示す範囲、すなわち着座位置においては、ポテンショメータ13の出力電圧は一定となる。
【0023】
このように、本実施の形態においては、ブラシ23に、環状抵抗体17,18に接触する検出用接触片23a,23b以外に、荷台6が着座位置にある時に導体30a,30bに圧接する保護用接触片23c,23dを設けたものである。そして、荷台6が着座位置にある時には、保護用接触片23c,23dが導体30a,30bに圧接するため、荷台6が着座位置にある時には、ブラシ23が押し上げられ、検出用接触片23a,23bは環状抵抗体17,18から浮くかあるいは接触圧を低下させた状態で環状抵抗体17,18に接触する。このため、荷台6が着座位置にある時に、走行や作業中における荷台6や車体3の振動に伴う検出用接触片23a,23bと環状抵抗体17,18との相対位置変動に伴う特定部位、すなわち着座時にブラシ23の検出用接触片23a,23bが接触する部位の摩耗が軽減され、荷台角度検出装置の延命化が達成される。
【0024】
また、万一、荷台6の着座時に仮に検出用接触片23a,23bにより環状抵抗体17,18の特定部位(ブラシ23a,23bの着座部位)が摩耗したとしても、保護用接触片23c,23dと導体30a,30bとの接触によってブラシ23と環状抵抗体17,18との電気的接続が確保される。このため、荷台6が着座している時のポテンショメータ13の出力電圧を安定的に得ることができる。
【0025】
また、本実施の形態のように、保護用接触片23c,23dの長さを検出用接触片23a,23bの長さより短くすれば、図4(B)に示したように、保護用接触片23c,23dが基板16の表面16a(環状抵抗体17,18の形成面)から浮くため、基板16に接触することがなく、保護用接触片23c,23dによって基板16が削られるおそれがない。また、保護用接触片23c,23dの母板部23xに対する角度αを検出用接触片23a,23bと等しくしているため、保護用接触片23c,23dの折曲げ成形が容易となる。
【0026】
また、本実施の形態においては、導体30a,30bに、ブラシ23が着座時に接触する部位まで移行する際に、保護用接触片23c,23dとの接触面が次第に上がる傾斜面32を形成しているので、荷台6の着座の際に、保護用接触片23c,23dを導体30a,30b上で円滑に無理なくスライドさせて移行させることができる。
【0027】
また、導体30a,30bとして、ブラシ23の保護用接触片23c,23dの先端部の硬度以上の硬度を有する金属材料を用いれば、導体30a,30bの寿命を長く保つことができる。
【0028】
上記実施の形態においては、環状抵抗体として同心に配置される環状抵抗体17,18を用いた例について説明したが、内側の環状抵抗体18を無くし、ブラシ23に現れる電圧を検出電圧とする構成にも本発明を適用できる。また、環状抵抗体17,18の内周側、外周側にそれぞれ導体30a,30bを設けるのではなく、内周側、または外周側のみに導体30a,30bを設ける構成としてもよい。その他、本発明を実施する場合、その要旨を変更しない範囲で、具体的な構造においては、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0029】
6 荷台
13 ポテンショメータ
15 軸
16 基板
17,18 環状抵抗体
19,20 電源端子
21 検出端子
23 ブラシ
23a,23b 検出用接触片
23c,23d 保護用接触片
30a,30b 導体
31 着座時接触面
32 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6