(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液晶セルへ前記レーザ光が照射された時間と、前記液晶セルおよび前記偏光子の少なくともいずれかの回転角度の制御値と、を対応付ける対応情報を記憶する記憶部を備え、
前記回転制御部は、前記液晶セルへ前記レーザ光が照射された時間と、前記記憶部に記憶された前記対応情報と、に基づいて前記液晶セルおよび前記偏光子の少なくともいずれかの回転角度を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶シャッタ。
前記液晶セルへ前記レーザ光が照射された時間に応じて、前記液晶セルへ供給される前記駆動電圧の振幅を制御する電圧制御部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の液晶シャッタ。
照射されたレーザ光を透過させ、供給される駆動電圧に応じて液晶の分子軸方向が変化する液晶セルと、前記液晶セルを透過した前記レーザ光のうち所定方向の偏光成分のみを所定箇所へ出射する偏光子と、を備える液晶シャッタの制御方法であって、
前記液晶セルへ前記レーザ光が照射された時間を測定し、
測定した前記時間に応じて、前記液晶セルおよび前記偏光子の少なくともいずれかの回転角度を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
レーザ光を照射するレーザ光源と、前記レーザ光源によって照射された前記レーザ光を透過させ、供給される駆動電圧に応じて液晶の分子軸方向が変化する液晶セルと、前記液晶セルを透過した前記レーザ光のうち所定方向の偏光成分のみを所定箇所へ出射する偏光子と、を備える光学装置の制御方法であって、
前記液晶セルへ前記レーザ光が照射された時間を測定し、
測定した前記時間に応じて、前記レーザ光源の回転角度、または前記レーザ光源および前記偏光子の回転角度を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本発明にかかる液晶シャッタ、制御方法および光学装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態)
(実施の形態にかかる液晶シャッタ)
図1は、実施の形態にかかる液晶シャッタの一例を示す図である。以下の説明では液晶材料にFLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)を用いた例として説明する。
図1に示すように、実施の形態にかかる液晶シャッタ100は、液晶セル110と、偏光子120と、を備える。液晶シャッタ100は、たとえば、液晶シャッタ100へ照射されたレーザ光の、液晶シャッタ100の後段の所定箇所への出射を制御するシャッタである。液晶シャッタ100へ照射されるレーザ光は、たとえば直線偏光のレーザ光である。偏光方向101は、液晶シャッタ100へ照射されるレーザ光の偏光方向である。偏光方向101は、
図1に示す例では直線偏光であるが、円偏光、楕円偏光、またはこれらが混合した偏光であってもよい。
【0014】
液晶セル110は、照射されたレーザ光を透過させて偏光子120へ出射する。FPC111は、液晶セル110の電極に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント基板)である。液晶セル110は、FPC111を介して液晶セル110へ供給される駆動電圧に応じて液晶の分子軸方向(液晶分子の長軸方向)が変化する偏光切り替え素子である。したがって、液晶セル110へ供給される駆動電圧に応じて、液晶セル110を透過するレーザ光に与えられる位相差が変化する。液晶の分子軸方向は、液晶分子の長軸方向(ダイレクタ方向)である。
【0015】
ラビング方向112は、液晶セル110に対して行われたラビングの方向である。
図1に示す例では、ラビング方向112と偏光方向101との間の角度113は114°である。コーン角114は、液晶セル110へ供給される駆動電圧の変化によって液晶セル110の液晶の分子軸方向が変化する範囲(配向角度)である。
図1に示す例では、コーン角114は、本実施形態では45°であり、
図1で図示するように、偏光方向101に対して90°から135°の範囲に位置する構成となっている。
【0016】
液晶セル110のコーン角114は、液晶セル110に対するレーザ光の照射時間に応じて変化する。コーン角変化方向115は、液晶セル110に対するレーザ光の照射時間に応じてコーン角114が変化する方向(一定方向)を示す。コーン角114の時間変化については後述する(たとえば
図7参照)。
【0017】
偏光子120は、液晶セル110を透過して出射されたレーザ光のうち所定方向の偏光成分のみを上述の所定箇所へ出射する。したがって、液晶セル110における液晶の分子軸方向の変化に応じて、上述した所定箇所へのレーザ光の出射を制御することができる。偏光子120は、たとえば、スリットによって実現される偏光板や、偏光状態に応じて光を分離するPBS(Polarization Beam Splitters:偏光ビームスプリッタ)などである。
【0018】
回転制御部130は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量を測定する。たとえば、回転制御部130は、液晶セル110へ照射されるレーザ光を出射するレーザ装置の駆動時間の蓄積量を測定する。
【0019】
そして、回転制御部130は、測定した時間の蓄積量に応じて液晶セル110の回転角度(回転角)を制御する。この回転角度は、たとえば液晶セル110におけるレーザ光の透過方向を軸(回転中心)とする液晶セル110の回転の角度である。たとえば、この回転角度は、液晶セル110におけるレーザ光の透過領域の中心を軸とする液晶セル110の回転の角度とすることができる。これにより、液晶セル110におけるレーザ光が透過する位置を変えずに液晶セル110の回転角度を制御し、液晶セル110を透過するレーザ光の特性の変動を抑制することができる。回転方向131は、回転制御部130が液晶セル110を回転させる方向である。回転方向131は、コーン角変化方向115に対してほぼ反対の方向である。
【0020】
たとえば、回転制御部130は、液晶セル110を回転させるアクチュエータを制御することによって液晶セル110の回転角度を制御する。なお、液晶セル110の回転軸は、レーザ光と平行であれば、レーザ光に対してずれていてもよい。すなわち、液晶セル110の回転軸(回転中心)は、液晶セル110におけるレーザ光の透過領域の中心と異なる軸としてもよい。これにより、液晶セル110におけるレーザ光が透過する位置を変えながら液晶セル110の回転角度を制御し、レーザ照射による液晶セル110の劣化を緩やかにすることができる。
【0021】
記憶部140は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、液晶セル110の回転角度の制御値と、を対応付ける対応情報を記憶する。回転制御部130は、たとえば、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、記憶部140に記憶された対応情報と、に基づいて液晶セル110の回転角度を制御する。記憶部140は、たとえば不揮発性メモリによって実現することができる。記憶部140が記憶する対応情報については後述する(たとえば
図6参照)。
【0022】
液晶セル110へのレーザ光の照射時間に応じて液晶セル110の回転角度を制御することで、液晶セル110へのレーザ光に伴う液晶セル110の分子軸方向(コーン角114)のズレを補償し、液晶セル110の変調特性の劣化を抑制することができる。このため、たとえば液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの低下や、液晶シャッタ100における光利用効率の低下を抑制することができる。
【0023】
また、液晶セル110の回転角度を制御することで、回転角度の制御に伴う、液晶シャッタ100からの出射光の偏光方向の変化を抑制することができる。このため、液晶シャッタ100の後段の素子において所定の偏光状態が要求される構成において、後段の素子への影響を抑制することができる。
【0024】
(実施の形態にかかる液晶シャッタの液晶セル)
図2は、実施の形態にかかる液晶シャッタの液晶セルの一例を示す図である。
図2において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、液晶セル110は、FPC111と、液晶層210と、透明基板221,222と、透明電極230,240と、シール材250と、配向膜261,262と、を備える。
【0025】
透明基板221,222は、液晶層210を挟持する一対の透明基板である。透明基板221,222には、一例としてはガラス基板を用いることができる。上記の液晶層210には、一例として、FLCを用いたが、液晶層210は、FLCに限らず、たとえばネマティック液晶などであってもよい。
【0026】
透明基板221,222はシール材250によって固着されている。また、透明基板221,222の各対向面には駆動電極としての透明電極230,240が設けられており、その上に配向膜261,262が設けられている。FPC111は透明電極240に接続されている。FPC111から透明電極240に供給される駆動電圧に応じて、液晶層210の分子軸方向が変化する。
【0027】
(実施の形態にかかる液晶シャッタを適用した光記録装置)
図3は、実施の形態にかかる液晶シャッタを適用した光記録装置の一例を示す図である。
図3において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図1に示した液晶シャッタ100は、たとえば
図3に示す光記録装置300に適用することができる。
【0028】
光記録装置300は、光源301と、コリメートレンズ302と、液晶セル303と、PBSプリズム304と、ビームエキスパンダ306と、位相マスク307と、リレーレンズ308と、PBSプリズム309と、空間光変調器310と、リレーレンズ311a,311bと、空間フィルタ312と、対物レンズ313と、ミラー314と、ミラー315と、ガルバノミラー316と、スキャナレンズ317と、光情報記録媒体318と、1/4波長板319と、ガルバノミラー320と、撮像素子321と、記録制御部322と、アクチュエータ331と、回転制御部130と、記憶部140と、を備える。
【0029】
光記録装置300は、空間光変調器310により空間的に変調した信号光を光情報記録媒体318に照射することで光情報記録媒体318に情報を記録する。また、光記録装置300は、光情報記録媒体318に参照光を照射することで得られる再生光を撮像素子321によって電気信号に変換することで情報を読み出す。
【0030】
光源301は、光ビームをコリメートレンズ302へ出射する。光源301から出射される光ビームは、たとえば所定の直線偏光の連続光とすることができる。光源301には、たとえばLD(Laser Diode:レーザダイオード)を用いることができる。コリメートレンズ302は、光源301から出射された光ビームを所定のビーム径の光ビームにコリメートし、コリメートした光ビームを液晶セル303へ出射する。
【0031】
液晶セル303およびPBSプリズム304は、記録制御部322から供給される駆動電圧に応じて、空間光変調器310から光情報記録媒体318への信号光の照射を制御するシャッタ部305を構成する。
図1に示した液晶シャッタ100は、たとえばシャッタ部305に適用することができる。この場合に、
図1に示した液晶セル110を液晶セル303に適用することができる。また、
図1に示した偏光子120をPBSプリズム304に適用することができる。
【0032】
液晶セル303は、記録制御部322から供給される駆動電圧に応じて、コリメートレンズ302から出射される光ビームの偏光状態を調整する。たとえば、液晶セル303は、光情報記録媒体318への情報の記録時には、光ビームの偏光状態を、P偏光およびS偏光を含む偏光状態とする。
【0033】
また、液晶セル303は、光情報記録媒体318からの情報の再生時には、光ビームの偏光状態をS偏光とする。液晶セル303は、偏光状態を調整した光ビームをPBSプリズム304へ出射する。液晶セル303には、たとえばFLCを用いることができる(たとえば
図2参照)。
【0034】
PBSプリズム304は、液晶セル303から出射されたP偏光の光ビームを透過させて、信号光としてビームエキスパンダ306へ出射するPBSである。また、PBSプリズム304は、液晶セル303から出射されたS偏光の光ビームを反射させて、参照光としてミラー314へ出射する。これにより、光情報記録媒体318への情報の記録時には、P偏光の信号光がビームエキスパンダ306へ出射される。また、光情報記録媒体318からの情報の再生時には、S偏光の参照光がミラー314へ出射される。
【0035】
ビームエキスパンダ306は、PBSプリズム304から出射された信号光のビーム経を所定のビーム経に拡張し、ビーム経を拡張した信号光を位相マスク307へ出射する。ビームエキスパンダ306から位相マスク307へ出射された信号光は、位相マスク307およびリレーレンズ308を介してPBSプリズム309へ出射される。
【0036】
PBSプリズム309は、リレーレンズ308から出射されたP偏光の信号光を透過させて空間光変調器310へ出射する。また、PBSプリズム309は、空間光変調器310から出射された信号光を反射させてリレーレンズ311aへ出射する。PBSプリズム309からリレーレンズ311aへ出射された信号光は、リレーレンズ311a、空間フィルタ312の開口部、リレーレンズ311bおよび対物レンズ313を介して光情報記録媒体318へ出射される。
【0037】
空間光変調器310は、PBSプリズム309から出射された信号光を変調情報に基づいて空間的に変調する。たとえば、空間光変調器310は、記録制御部322から書き込まれた2次元画像データ(変調情報)に基づく変調を行う。そして、空間光変調器310は、変調した信号光をPBSプリズム309へ出射する。
【0038】
空間光変調器310には、たとえばLCOS(Liquid Crystal On Silicon:液晶オンシリコン)を用いることができる。また、空間光変調器310には、マイクロデバイスミラーなどのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械素子)デバイスを用いてもよい。
【0039】
PBSプリズム304からミラー314へ出射された参照光は、ミラー314,315を介してガルバノミラー316へ出射される。ガルバノミラー316は、ミラー315から出射された参照光を可変の角度で反射させてスキャナレンズ317へ出射する。ガルバノミラー316の角度制御は、たとえば記録制御部322によって行うことができる。スキャナレンズ317は、ガルバノミラー316から出射された参照光を光情報記録媒体318へ出射する。
【0040】
光情報記録媒体318には、たとえば、ニオブ酸リチウムなどのフォトリフラクティブ結晶や、感光性樹脂材料(フォトポリマ)など、各種の光情報記録媒体を用いることができる。また、光情報記録媒体318は、たとえば記録制御部322からの制御によって変位可能であってもよい。
【0041】
情報の記録時において、光情報記録媒体318には、対物レンズ313から出射された信号光と、スキャナレンズ317から出射された参照光と、が互いに重なりあうように入射する。これにより、光情報記録媒体318に干渉縞パターンが形成され、光情報記録媒体318は形成された干渉縞パターンをホログラムとして記録する。また、ガルバノミラー316の角度制御により、光情報記録媒体318に対する参照光の入射角度を変化させることで角度多重記録を行うことができる。本実施の形態では、このホログラムを「ページ」と呼び、ページが角度多重化されている記録領域のことを「ブック」と呼ぶ。
【0042】
情報の再生時において、光情報記録媒体318には、スキャナレンズ317から出射された参照光が入射する。1/4波長板319は、スキャナレンズ317から出射され光情報記録媒体318を透過した参照光を通過させてガルバノミラー320へ出射する。
【0043】
ガルバノミラー320は、1/4波長板319から出射された参照光を可変の角度で反射させる。ガルバノミラー320の角度制御は、たとえば記録制御部322によって行うことができる。このとき、ガルバノミラー320の角度制御がガルバノミラー316の角度制御と連動して行われることで、ガルバノミラー320において参照光が略垂直に反射し、参照光が1/4波長板319へ折り返される。
【0044】
したがって、スキャナレンズ317から出射され光情報記録媒体318を透過した参照光は、1/4波長板319を2回通過することによってS偏光からP偏光に変換され、光情報記録媒体318へ出射される。これにより、光情報記録媒体318に記録された情報に応じた再生光がP偏光の回折光として対物レンズ313へ出射される。
【0045】
光情報記録媒体318から対物レンズ313へ出射された再生光は、リレーレンズ311b、空間フィルタ312およびリレーレンズ311aを介してPBSプリズム309へ出射される。このとき、リレーレンズ311a,311bの間の空間フィルタ312の開口部によって、再生対象ブックからの回折光である再生光のみがPBSプリズム309へ透過する。
【0046】
PBSプリズム309は、リレーレンズ311a,311bから出射されたP偏光の再生光を透過させて撮像素子321へ出射する。
【0047】
撮像素子321は、PBSプリズム309から出射された再生光を電気信号に変換する。これにより、光情報記録媒体318に記録された情報を示す電気信号が得られる。撮像素子321は、変換した電気信号を記録制御部322へ出力する。撮像素子321には、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子を用いることができる。
【0048】
記録制御部322は、光情報記録媒体318への情報の記録時や光情報記録媒体318からの情報の再生時において、空間光変調器310やシャッタ部305などの制御を行う。たとえば、記録制御部322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、PBSプリズム304から参照光のみが出射されるように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。また、記録制御部322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、撮像素子321から出力された電気信号を再生データとして外部へ出力する。
【0049】
また、記録制御部322は、光情報記録媒体318への情報の記録時に、記録対象の情報(変調情報)を空間光変調器310に書き込むとともに、PBSプリズム304から信号光および参照光が出射されるように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。ただし、記録制御部322は、光情報記録媒体318に対する情報の記録時であっても、空間光変調器310に対する情報の書き込み時には、PBSプリズム304から信号光が出射されないように、液晶セル303に駆動電圧を供給する。
【0050】
また、記録制御部322は、光情報記録媒体318への情報の記録時に、ガルバノミラー316の角度制御を行うことで、記録対象のブックなどを制御する。また、記録制御部322は、光情報記録媒体318からの情報の再生時に、ガルバノミラー316,320の角度制御を行うことで、再生対象のブックなどを制御する。なお、
図3においては、記録制御部322とガルバノミラー316,320との接続関係は図示を省略している。また、記録制御部322は、対物レンズ313に対する光情報記録媒体318の位置を変化させることによって、記録対象のブックの移動を行ってもよい。
【0051】
アクチュエータ331は、回転制御部130からの制御によって液晶セル110を回転させるアクチュエータである。アクチュエータ331には、モータなどの各種のアクチュエータを用いることができる。
【0052】
液晶シャッタ100を光記録装置300に適用することにより、シャッタ部305における長期間のレーザ照射による光学特性(コントラストや光利用効率)の低下を抑制することができる。光情報記録媒体318への情報の記録および光情報記録媒体318からの情報の再生における精度の低下を抑制することができる。
【0053】
(実施の形態にかかる液晶セルにおける耐光性の試験結果)
図4は、実施の形態にかかる液晶セルにおける耐光性の試験結果を示す対数グラフである。
図4において、横軸は、液晶セル110に対するレーザ光の照射パワー[mW/mm^2]を示す。また、
図4において、縦軸は、液晶セル110に対してレーザ光の照射を開始してから液晶セル110の劣化が始まるまでの時間[H]を示す。
図4の結果はレーザの波長λ=405nmを照射した場合の劣化をプロットした場合の一例である。
【0054】
ターゲット401は、液晶セル110に対するレーザ光の照射パワーと、液晶セル110に対してレーザ光の照射を開始してから液晶セル110の劣化が始まるまでの時間と、の仕様値の一例である。液晶セル110の劣化とは、たとえば上述したコーン角114の変化である。
【0055】
プロット点411,412は、液晶セル110に対するレーザ光の複数の照射パワーについて、液晶セル110に対してレーザ光の照射を開始してから液晶セル110の劣化が始まるまでの時間を計測した結果である。直線410は、プロット点411,412を含む直線である。
【0056】
液晶セル110に対するレーザ光の照射パワーと、液晶セル110に対してレーザ光の照射を開始してから液晶セル110の劣化が始まるまでの時間と、の関係は対数グラフにおいて直線410のように近似できることを実験により経験的に見出している。すなわち、液晶セル110に対するレーザ光の照射パワーが大きいほど、液晶セル110に対してレーザ光の照射を開始してから液晶セル110の劣化が始まるまでの時間が短くなる。また、直線410の傾きや切片は、液晶セル110の液晶材料やレーザ光照射時の温度、レーザ光の波長などによって異なる。
【0057】
(実施の形態におけるレーザ光の照射時間と液晶セルの分子軸のズレ角度との関係)
図5は、実施の形態におけるレーザ光の照射時間と液晶セルの分子軸のズレ角度との関係の一例を示すグラフである。
図5において、横軸は液晶セル110に対するレーザ光の照射時間[H]を示し、縦軸は液晶セル110の分子軸のズレ角度[rad]を示す。分子軸のズレ角度は、たとえば上述したコーン角114の中心軸のラビング方向112からのズレの角度である。ズレ角度特性510は、液晶セル110へのレーザ光の照射時間に対する液晶セル110の分子軸のズレ角度の特性を示す。
【0058】
ズレ角度特性510に示すように、液晶セル110の分子軸のズレ角度は、レーザ光の照射を開始してからある程度の時間が経過してから発生する。
図5に示す例では、液晶セル110の分子軸のズレ角度は、時刻t11から発生し、時間の経過に比例して大きくなる。また、時刻t11より後の時刻t12から、時間の経過に伴う液晶セル110の分子軸のズレ角度の増加は小さくなっている。たとえば、従来技術においては、レーザ光の照射を開始してから時刻t11の付近までの期間がライフタイム(寿命)となっていた。
【0059】
(実施の形態にかかるレーザ照射時間の蓄積量と回転角度の制御値との対応情報)
図6は、実施の形態にかかるレーザ照射時間の蓄積量と回転角度の制御値との対応情報の一例を示す図である。
図1に示した記憶部140には、たとえば
図6に示す対応情報600が記憶される。対応情報600は、レーザ光の照射時間[H]と、液晶セル110の回転角度補正量[rad]と、を対応付ける情報である。
【0060】
レーザ光の照射時間(T1,T2,…)は、液晶セル110にレーザ光を照射した時間の蓄積量である。回転角度補正量(Δθ1,Δθ2,…)は、回転制御部130による液晶セル110の回転角度の初期値からの補正量である。回転制御部130による液晶セル110の回転角度の初期値は、たとえば、液晶セル110の個体ごとに設定されてもよいし、液晶セル110の設計に応じて一律に設定されてもよい。
【0061】
回転制御部130は、たとえば、レーザ光の照射時間に対応する回転角度補正量を対応情報600から取得する。そして、回転制御部130は、液晶セル110を、取得した回転角度補正量だけ回転させる制御を行う。
【0062】
対応情報600は、たとえば
図5に示したズレ角度特性510に応じて作成することができる。たとえば、対応情報600において、
図5に示した時刻t11までのレーザ光の照射時間には、回転角度補正量として0[rad]が対応付けられる。また、対応情報600において、
図5に示した時刻t11以降のレーザ光の照射時間には、レーザ光の照射時間が長くなるほど大きな回転角度補正量が対応付けられる。これにより、液晶セル110の分子軸のズレ角度の増加に応じて、このズレとは反対方向に液晶セル110を回転させ、液晶セル110の分子軸のズレ角度を補償することができる。
【0063】
また、
図6に示した例では、対応情報600がレーザ光の照射時間と液晶セル110の回転角度補正量とを対応付ける情報である場合について説明したが、対応情報600の形態はこのような形態に限らない。たとえば、対応情報600は、レーザ光の照射時間と液晶セル110の回転角度(目標角度)とを対応付ける情報であってもよい。
【0064】
また、対応情報600は、レーザ光の照射時間と液晶セル110の回転角度の制御パラメータ(たとえばアクチュエータ331の制御パラメータ)と、を対応付ける情報であってもよい。すなわち、対応情報600は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、液晶セル110の回転角度の制御値と、を対応付ける対応情報であればよい。また、対応情報600は、
図6に示したようなテーブルではなく、レーザ光の照射時間から液晶セル110の回転角度の制御値を導出可能な関数等であってもよい。
【0065】
このように、レーザ光の照射時間に対する液晶の分子軸方向のズレ量を見積もっておくことで、液晶シャッタ100の使用時間に合わせて、液晶セル110を回転させてコントラストが出る角度に調整することができる。
【0066】
(実施の形態にかかる液晶セルのコーン角の時間変化)
図7は、実施の形態にかかる液晶セルのコーン角の時間変化の一例を示す図である。
図7において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図5においては、分子軸のずれ角度は数度であったが、
図7では、分かりやすくするため、発生したずれ角度を大きく誇張して説明している。
図7に示す状態701〜703は、液晶セル110のコーン角114の時間経過に伴う各状態である。状態701は、液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が短く(照射量 少)、コーン角114のズレが発生していない状態である。
【0067】
状態702は、状態701よりも液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が長くなり(照射量 中)、コーン角114のズレが発生している状態である。状態703は、状態702よりも液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が長くなり(照射量 多)、コーン角114のズレが大きくなっている状態である。
【0068】
状態701〜703に示すように、コーン角114のずれは、時間の経過とともに大きくなる。したがって、仮に回転制御部130による回転角度の制御を行わないとすると(回転角度制御無し)、液晶セル110へ入射するレーザ光の偏光方向101と、液晶セル110の液晶の分子軸方向と、の関係が時間の経過とともに変化し、液晶セル110によるレーザ光の変調特性が劣化する。このため、たとえば液晶シャッタ100からの出射光のコントラストや、液晶シャッタ100における光利用効率が低下する。
【0069】
(実施の形態にかかる液晶セルのコーン角のズレの補償)
図8は、実施の形態にかかる液晶セルのコーン角のズレの補償の一例を示す図である。
図8において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示す状態801〜803は、それぞれ
図7に示した状態701〜703に対応するが、回転制御部130によって液晶セル110の回転角度の制御を行っている点(回転角度制御有り)が状態701〜703と異なる。
【0070】
すなわち、回転制御部130は、コーン角114のズレの大きさに応じて、コーン角114のズレとは反対方向に液晶セル110を回転させることで、液晶セル110へ入射するレーザ光の偏光方向101と、液晶セル110の液晶の分子軸方向と、の関係を一定にすることができる。すなわち、レーザ光の照射に伴うコーン角114のズレを補償することができる。これにより、液晶セル110によるレーザ光の変調特性の劣化を抑制することができる。このため、たとえば液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの低下や、液晶シャッタ100における光利用効率の低下を抑制することができる。
【0071】
(実施の形態にかかる液晶シャッタの他の例)
図9は、実施の形態にかかる液晶シャッタの他の例を示す図である。
図9において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、実施の形態にかかる液晶シャッタ100は、
図1に示した構成に加えて、電圧制御部910および記憶部920を備えていてもよい。
【0072】
電圧制御部910は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量に応じて、液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅を制御する。液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅は、一例としては、FPC111を介して
図2に示した透明電極240へ供給される駆動電圧の振幅である。
【0073】
記憶部920は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、液晶セル110へ供給する駆動電圧の振幅の制御値と、を対応付ける対応情報を記憶する。電圧制御部910は、たとえば、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、記憶部920に記憶された対応情報と、に基づいて液晶セル110へ供給する駆動電圧の振幅を制御する。記憶部920は、たとえば不揮発性メモリによって実現することができる。また、記憶部920は、記憶部140とは別のメモリによって実現されてもよいし、記憶部140とともに1つのメモリによって実現されてもよい。記憶部920が記憶する対応情報については後述する(たとえば
図12参照)。
【0074】
(実施の形態にかかる液晶セルにおける光学応答波形)
図10は、実施の形態にかかる液晶セルにおける光学応答波形の一例を示すグラフである。
図10において、横軸は時間[μs]を示し、縦軸は液晶セル110の光学応答を示す。液晶セル110の光学応答は、たとえば液晶シャッタ100からの出射光のパワーである。光学応答波形1001〜1003のそれぞれは、液晶セル110へ供給する駆動電圧の振幅を一定にした場合における、液晶セル110の光学応答の時間変化を示す。
【0075】
光学応答波形1001は、液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が短い状態(照射量 少)における液晶セル110の光学応答波形である。光学応答波形1002は、光学応答波形1001の例よりも液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が長くなった状態(照射量 中)における液晶セル110の光学応答波形である。光学応答波形1003は、光学応答波形1002の例よりも液晶セル110に対するレーザ光の照射時間が長くなった状態(照射量 多)における液晶セル110の光学応答波形である。
【0076】
光学応答波形1001〜1003に示すように、液晶セル110に対するレーザ照射の時間が長くなるほど、液晶セル110の光学応答が遅く(時定数が大きく)なる。このため、たとえば液晶シャッタ100によるオン/オフの切り替えの応答速度が遅くなる。
【0077】
(実施の形態におけるレーザ光の照射時間と液晶セルの最適電圧値との関係)
図11は、実施の形態におけるレーザ光の照射時間と液晶セルの最適電圧値との関係の一例を示すグラフである。
図11において、横軸は液晶セル110に対するレーザ光の照射時間[H]を示し、縦軸は液晶セル110の最適電圧値[V]を示す。液晶セル110の最適電圧値は、たとえば、液晶セル110の光学応答が十分に速く、かつ液晶セル110の光学応答が過剰とならない(たとえば光学応答波形のエッジが強調され過ぎない)ような、液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅である。関係1110は、液晶セル110へのレーザ光の照射時間と、液晶セル110の最適電圧値と、の間の関係を示す。
【0078】
関係1110に示すように、液晶セル110の最適電圧値は、レーザ光の照射を開始してからある程度の時間が経過した時刻t21まではほぼ一定である。これは、液晶セル110に対するレーザ照射を開始してからしばらくの期間においては液晶セル110の光学応答の時定数がほぼ一定であるためである。
【0079】
また、液晶セル110の最適電圧値は、時刻t21以降は時間の経過に比例して大きくなる。また、
図11に示す例では、時刻t21より後の時刻t22から、時間の経過に伴う液晶セル110の最適電圧値の増加は大きくなっている。従来技術においては、時刻t21以降は、たとえば
図10に示した光学応答波形1002,1003のように液晶セル110の光学応答が劣化していた。
【0080】
(実施の形態にかかるレーザ照射時間と駆動電圧値補正量との対応情報)
図12は、実施の形態にかかるレーザ照射時間と駆動電圧値補正量との対応情報の一例を示す図である。
図9に示した記憶部920には、たとえば
図12に示す対応情報1200が記憶される。対応情報1200は、レーザ光の照射時間[H]と、液晶セル110の駆動電圧値補正量[V]と、を対応付ける情報である。
【0081】
レーザ光の照射時間(T1,T2,…)は、液晶セル110にレーザ光を照射した時間の蓄積量である。駆動電圧値補正量(ΔV1,ΔV2,…)は、電圧制御部910による液晶セル110への駆動電圧の振幅の初期値からの補正量である。電圧制御部910による液晶セル110への駆動電圧の振幅の初期値は、たとえば、液晶セル110の個体ごとに設定されてもよいし、液晶セル110の設計に応じて一律に設定されてもよい。
【0082】
電圧制御部910は、たとえば、レーザ光の照射時間に対応する駆動電圧値補正量を対応情報1200から取得する。そして、電圧制御部910は、液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅を、取得した駆動電圧値補正量だけ変化させる制御を行う。
【0083】
対応情報1200は、たとえば
図11に示した関係1110に応じて作成することができる。たとえば、対応情報1200において、
図11に示した時刻t21までのレーザ光の照射時間には、駆動電圧値補正量として0[V]が対応付けられる。また、対応情報1200において、
図11に示した時刻t21以降のレーザ光の照射時間には、レーザ光の照射時間が長くなるほど大きな駆動電圧値補正量が対応付けられる。これにより、液晶セル110の光学応答速度の低下に応じて、液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅を増加させ、液晶セル110の光学応答速度の低下を補償することができる。
【0084】
また、
図12に示した例では、対応情報1200がレーザ光の照射時間と液晶セル110の駆動電圧値補正量とを対応付ける情報である場合について説明したが、対応情報1200の形態はこのような形態に限らない。たとえば、対応情報1200は、レーザ光の照射時間と液晶セル110の駆動電圧の振幅の目標値とを対応付ける情報であってもよい。
【0085】
また、対応情報1200は、レーザ光の照射時間と液晶セル110の駆動電圧の振幅の制御パラメータ(たとえば液晶セル110の駆動回路へ入力する指示信号の値)と、を対応付ける情報であってもよい。すなわち、対応情報1200は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量と、液晶セル110の駆動電圧の振幅の制御値と、を対応付ける対応情報であればよい。また、対応情報1200は、
図12に示したようなテーブルではなく、レーザ光の照射時間から液晶セル110の駆動電圧の振幅の制御値を導出可能な関数等であってもよい。
【0086】
このように、レーザ光の照射時間に対する最適電圧値を見積もっておくことで、液晶シャッタ100の使用時間に合わせて、液晶シャッタ100の応答波形の時定数が小さくなるように駆動電圧の振幅を適時変化させることができる。
【0087】
(実施の形態にかかる液晶シャッタのさらに他の例)
図13は、実施の形態にかかる液晶シャッタのさらに他の例を示す図である。
図13において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図13に示すように、回転制御部130は、液晶セル110ではなく偏光子120の回転角度を制御するようにしてもよい。
【0088】
たとえば、回転制御部130は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量に応じて偏光子120の回転角度を制御する。この回転角度は、たとえば偏光子120におけるレーザ光の透過方向を軸とする偏光子120の回転の角度である。たとえば、この回転角度は、偏光子120におけるレーザ光の透過領域の中心を軸とする偏光子120の回転の角度とすることができる。これにより、偏光子120におけるレーザ光が透過する位置を変えずに偏光子120の回転角度を制御し、偏光子120を透過するレーザ光の特性の変動を抑制することができる。回転方向1301は、回転制御部130が偏光子120を回転させる方向である。回転方向1301は、コーン角変化方向115とほぼ同じ方向である。
【0089】
たとえば、回転制御部130は、偏光子120を回転させるアクチュエータを制御することによって偏光子120の回転角度を制御する。なお、偏光子120の回転軸は、レーザ光と平行であれば、レーザ光に対してずれていてもよい。
【0090】
このように、液晶セル110へのレーザ光の照射時間に応じて偏光子120の回転角度を制御する構成によっても、液晶セル110へのレーザ光に伴う液晶セル110の分子軸方向(コーン角114)のズレを補償し、液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの低下や、液晶シャッタ100における光利用効率の低下を抑制することができる。また、一般的に、偏光子120は液晶セル110より軽量な素子である。また、一般的に、偏光子120は、液晶セル110におけるFPC111のような、他の素子と接続するための配線を有していない。このため、偏光子120の回転角度を制御する構成とすることで、回転角度を制御するアクチュエータを簡易化することができる。
【0091】
また、回転制御部130は、液晶セル110および偏光子120の各回転角度を制御するようにしてもよい。これにより、たとえば液晶セル110および偏光子120のいずれかの回転角度のみを制御する構成に比べて、回転角度の制御量を少なくすることができる。このため、液晶シャッタ100の設計の自由度を向上させることができる。
【0092】
すなわち、回転制御部130は、液晶セル110および偏光子120の少なくともいずれかの回転角度を制御することにより、液晶セル110の回転角度と、偏光子120の回転角度と、の間の相対的な関係を変化させる構成とすればよい。
【0093】
(実施の形態にかかる光学装置)
図14は、実施の形態にかかる光学装置の一例を示す図である。
図14において、
図13と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図14に示すように、実施の形態にかかる光学装置1400は、
図13に示した液晶シャッタ100の構成に加えて、液晶セル110へレーザ光を出射するレーザ光源1410を含む。回転制御部130は、レーザ光源1410および偏光子120の回転角度を制御する。
【0094】
たとえば、回転制御部130は、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量に応じてレーザ光源1410および偏光子120の回転角度を制御する。この回転角度は、たとえばレーザ光源1410が出射するレーザ光の進行方向を軸とするレーザ光源1410および偏光子120の回転の角度である。たとえば、この回転角度は、レーザ光源1410が出射するレーザ光の進行領域の中心を軸とするレーザ光源1410および偏光子120の回転の角度とすることができる。これにより、液晶セル110におけるレーザ光が透過する位置を変えずにレーザ光源1410および偏光子120の回転角度を制御し、液晶セル110を透過するレーザ光の特性の変動を抑制することができる。回転方向1401は、回転制御部130が光学装置1400を回転させる方向である。回転方向1301は、コーン角変化方向115とほぼ同じ方向である。
【0095】
たとえば、回転制御部130は、レーザ光源1410を回転させるアクチュエータを制御することによってレーザ光源1410の回転角度を制御する。レーザ光源1410を回転させるアクチュエータは、偏光子120を回転させるアクチュエータと共通であってもよいし、偏光子120を回転させるアクチュエータと異なるアクチュエータであってもよい。なお、レーザ光源1410の回転軸は、レーザ光と平行であれば、レーザ光に対してずれていてもよい。すなわち、レーザ光源1410および偏光子120の回転軸は、レーザ光源1410が出射するレーザ光の進行領域の中心と異なる軸としてもよい。これにより、液晶セル110におけるレーザ光が透過する位置を変えながらレーザ光源1410および偏光子120の回転角度を制御し、レーザ照射による液晶セル110の劣化を緩やかにすることができる。また、たとえば、回転制御部130は、コーン角114の変化に応じて、レーザ光源1410および偏光子120の回転角度を同じ回転量で制御する。
【0096】
このように、液晶セル110へのレーザ光の照射時間に応じてレーザ光源1410および偏光子120の回転角度を制御する構成によっても、液晶セル110へのレーザ光に伴う液晶セル110の分子軸方向(コーン角114)のズレを補償し、光学装置1400からの出射光のコントラストの低下や、光学装置1400における光利用効率の低下を抑制することができる。また、レーザ光源1410の回転角度を制御することにより、液晶セル110へ入射するレーザ光の偏光方向101が直線偏光であっても、光学装置1400からの出射光のコントラストの低下や、光学装置1400における光利用効率の低下を抑制することができる。
【0097】
また、回転制御部130は、レーザ光源1410、液晶セル110および偏光子120の各回転角度を制御するようにしてもよい。これにより、たとえば、液晶セル110と、レーザ光源1410および偏光子120と、のいずれかの回転角度のみを制御する構成に比べて、回転角度の制御量を少なくすることができる。このため、光学装置1400の設計の自由度を向上させることができる。
【0098】
また、回転制御部130は、液晶セル110へのレーザ光の照射時間に応じて、レーザ光源1410の回転角度を制御し、偏光子120の回転角度は制御しない構成としてもよい。このような構成によっても、液晶セル110へのレーザ光に伴う液晶セル110の分子軸方向(コーン角114)のズレを補償し、光学装置1400からの出射光のコントラストの低下や、光学装置1400における光利用効率の低下を抑制することができる。また、レーザ光源1410の回転角度を制御することにより、液晶セル110へ入射するレーザ光の偏光方向101が直線偏光であっても、光学装置1400からの出射光のコントラストの低下や、光学装置1400における光利用効率の低下を抑制することができる。
【0099】
(実施の形態にかかる液晶シャッタにおける光学特性の向上)
図15は、実施の形態にかかる液晶シャッタにおける光学特性の向上の一例を示す図である。
図15に示すテーブル1500は、液晶セル110への波長λ=405nmのレーザ光の照射時間ごとに、補償前コントラストおよび補償後コントラストを示している。
図15に示す例では、
図9に示した液晶シャッタ100において、液晶セル110へのレーザ光の照射パワーを30[mW/mm^2]とした場合について説明する。
【0100】
補償前コントラストは、回転制御部130による回転角度の制御および電圧制御部910による駆動電圧の振幅の制御を行わなかった場合における液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの測定結果を参考として示している。
【0101】
補償後コントラストは、回転制御部130による回転角度の制御および電圧制御部910による駆動電圧の振幅の制御を行った場合における液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの測定結果を示している。
【0102】
テーブル1500に示すように、回転制御部130による回転角度の制御および電圧制御部910による駆動電圧の振幅の制御を行うことで、液晶セル110にレーザ光を照射した状態における時間経過に伴うコントラストの低下を抑制することができる。
【0103】
なお、液晶セル110へのレーザ光の照射時間が140[H]になると、液晶セル110の劣化により、駆動電圧に対して液晶セル110がほぼ応答しなくなり、補償前コントラストおよび補償後コントラストのいずれにおいても使用不可の状態となっている。
【0104】
また、
図15においては液晶シャッタ100における光学特性の向上の一例として液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの向上について説明したが、回転制御部130による回転角度の制御および電圧制御部910による駆動電圧の振幅の制御を行うことで、液晶シャッタ100における光利用効率も向上させることができる。
【0105】
このように、実施の形態にかかる液晶シャッタ100によれば、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量に応じて、液晶セル110および偏光子120の少なくともいずれかの回転角度を制御することができる。これにより、液晶セル110への長期間のレーザ光の照射による液晶セル110のコーン角114のズレを補償し、液晶シャッタ100からの出射光のコントラストの低下や、液晶シャッタ100における光利用効率の低下を抑制することができる。
【0106】
したがって、液晶シャッタ100の実質的なライフタイムを長くすることができる。また、たとえば液晶セルの複数箇所を切り替えて用いる構成と比べて、液晶セルにおけるレーザを照射可能な領域の面積を小さくし、装置の小型化を図ることができる。また、液晶シャッタ100において液晶セル110の複数箇所を切り替えて用いる構成とすれば、液晶シャッタ100の実質的なライフタイムをより長くすることができる。
【0107】
また、実施の形態にかかる液晶シャッタ100によれば、液晶セル110へレーザ光が照射された時間の蓄積量に応じて、液晶セル110へ供給される駆動電圧の振幅を制御することができる。これにより、液晶セル110へのレーザ光の照射による液晶シャッタ100の光学応答速度の低下を抑制することができる。
【0108】
以上説明したように、液晶シャッタ、制御方法および光学装置によれば、長期間のレーザ照射による光学特性の低下を抑制することができる。