(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケース内に収容されており、前記ケースに収容された電極組立体と、前記ケースに設けられた正極又は負極の端子とを電気的に接続し、前記ケースの内圧が所定値を超えて上昇したときに前記電極組立体と前記端子とを電気的に接続する通電経路を遮断する電流遮断装置であり、
前記電極組立体に電気的に接続されている通電板と、
前記端子に電気的に接続されていると共に、前記通電板の一方の側に、前記通電板に対向して配置される第1変形板と、
前記通電板の一方の側に配置される絶縁性の第1ホルダと、
前記通電板の他方の側に配置され、前記第1ホルダに連結される絶縁性の第2ホルダと、を備えており、
前記第1変形板は、前記電極組立体と前記端子とが導通しているときは前記通電板と前記通電板の中央部において当接した状態で電気的に接続しており、前記電極組立体と前記端子とが非導通のときは前記通電板から離間した状態で前記通電板と電気的に非接続であり、
前記通電板は、前記第1ホルダと前記第2ホルダとが連結されることで、前記第1ホルダと前記第2ホルダの間に保持されており、
前記第1ホルダと前記第2ホルダの一方は雌ねじを有しており、
前記第1ホルダと前記第2ホルダの他方は、前記雌ねじと対応する位置に雄ねじを有しており、
前記雄ねじが前記雌ねじに螺合することにより、前記通電板が前記第1ホルダと前記第2ホルダの間に保持されている、電流遮断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1) 本明細書に開示する電流遮断装置では、第1ホルダと第2ホルダの一方が雌ねじを有しており、第1ホルダと第2ホルダの他方が、雌ねじと対応する位置に雄ねじを有していてもよい。雄ねじが雌ねじに螺合することにより、通電板が第1ホルダと第2ホルダの間に保持されてもよい。この構成によると、第1ホルダと第2ホルダを熱カシメ処理を用いずに適切に連結でき、通電板を両者の間に安定して保持することができる。
【0012】
(特徴2) 本明細書に開示する電流遮断装置では、通電板の他方の側に位置する面が、電極組立体の一部と間隔をおいて対向していてもよい。第2ホルダの最も電極組立体側に位置する部分は、通電板の最も電極組立体側に位置する部分よりも電極組立体側に位置していてもよい。この構成によると、通電板が電極組立体と干渉(接触)することを抑制できる。
【0013】
(特徴3) 本明細書に開示する電流遮断装置では、第2ホルダが、通電板の他方の側の面を覆っており、かつ、第2ホルダの一方の側の面から他方の側の面までを貫通する通気孔を有していてもよい。この構成によると、通電板が電極組立体と干渉(接触)することをより確実に抑制できると共に、通電板と第2ホルダとの間の空間の圧力を、通気孔を介して、電流遮断装置の外部の空間(即ち、ケース内の空間)の圧力と同一に保つことができる。
【0014】
(特徴4) 本明細書に開示する電流遮断装置では、通電板に対して他方の側に配置されているとともに、通電板の中央部に向かって突出している突起が設けられている第2変形板をさらに備えていてもよい。第2変形板は、電極組立体と端子とが導通しているときは突起が第1位置に位置して通電板と第1変形板とが当接している第1状態と、電極組立体と端子とが非導通のときは突起が第1位置から通電板側の第2位置に移動して通電板と第1変形板とを離間させる第2状態とに切り替えられてもよい。
【0015】
(特徴5) 本明細書に開示する電流遮断装置では、第2変形板の他方の側の面が、電極組立体の一部と間隔をおいて対向していてもよい。第2ホルダの最も電極組立体側となる部分は、第2変形板の最も電極組立体側に位置する部分よりも電極組立体側に位置していてもよい。この構成によると、第2変形板が電極組立体と干渉(接触)することを抑制できる。
【0016】
(特徴6) 本明細書に開示する電流遮断装置では、第2ホルダが、第2変形板の他方の側の面を覆っており、かつ、第2ホルダの一方の側の面から他方の側の面までを貫通する通気孔を有していてもよい。この構成によると、第2変形板が電極組立体と干渉(接触)することをより確実に抑制できると共に、第2変形板と第2ホルダとの間の空間の圧力を、通気孔を介して、電流遮断装置の外部の空間(即ち、ケース内の空間)の圧力と同一に保つことができる。
【実施例1】
【0017】
以下、
図1、
図2を参照して実施例1の蓄電装置100について説明する。蓄電装置100は、二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池である。
図1に示すように、蓄電装置100は、ケース1と、ケース1に収容された電極組立体3と、ケース1に固定された端子5、7とを備えている。電極組立体3と端子5、7とは電気的に接続されている。また、蓄電装置100は、電極組立体3と端子7との間に配置された電流遮断装置10を備えている。ケース1の内部は、電解液が注入されており、電極組立体3は、電解液に浸漬している。
【0018】
ケース1は、金属製であり、略直方体形状の箱型部材である。ケース1は、本体111と、本体111に固定された蓋部112とを備えている。蓋部112は、本体111の上部を覆っている。蓋部112には、開口部11、13が形成されている。端子5は、開口部11を介してケース1の内外に通じており、端子7は、開口部13を介してケース1の内外に通じている。
【0019】
電極組立体3は、正極シートと、負極シートと、正極シートと負極シートとの間に配置されたセパレータとを備えている。電極組立体3は、複数の正極シート、複数の負極シート及び複数のセパレータが積層されて構成されている。正極シート及び負極シートは、集電部材と、集電部材上に形成されている活物質層とを備えている。集電部材としては、正極シートに用いられるものは例えばアルミ箔であり、負極シートに用いられるものは例えば銅箔である。また、電極組立体3は、正極集電タブ41及び負極集電タブ42を備えている。正極集電タブ41は、正極シートの上端部に形成されている。負極集電タブ42は、負極シートの上端部に形成されている。正極集電タブ41及び負極集電タブ42は、電極組立体3の上方に突出している。正極集電タブ41は正極リード43に固定されている。負極集電タブ42は負極リード44に固定されている。
【0020】
正極リード43は、正極集電タブ41と端子5とに接続されている。正極リード43を介して、正極集電タブ41と端子5とが電気的に接続されている。正極リード43とケース1の蓋部112との間には、絶縁部材72が配置されている。絶縁部材72は、正極リード43と蓋部112とを絶縁している。
【0021】
負極リード44は、負極集電タブ42と接続端子46とに接続されている。接続端子46は、電流遮断装置10を介して端子7に電気的に接続されている。よって、負極リード44、接続端子46及び電流遮断装置10を介して、負極集電タブ42と端子7とが電気的に接続されている。これにより、電極組立体3と端子7とを接続する通電経路が形成されている。電流遮断装置10は、この通電経路を遮断可能である。電流遮断装置10の構成については後述する。負極リード44とケース1の蓋部112との間には、絶縁部材73が配置されている。絶縁部材73は、負極リード44と蓋部112とを絶縁している。
【0022】
ケース1の蓋部112の上面には、樹脂製のガスケット62、63が配置されている。ガスケット62、は端子5に固定されている。ガスケット62の上面には、平板状の外部端子60が配置されている。外部端子60には、貫通孔60aが形成されている。貫通孔60aは、上面側に比べ、下面側のサイズが大きくなっている。ガスケット62は、蓋部112と外部端子60を絶縁している。ボルト64が、貫通孔60aを通過している。具体的には、ボルト64の頭部が、貫通孔60a内に収容されている。また、ボルト64の軸部が、貫通孔60aを通って外部端子60の上方に突出している。端子5、外部端子60及びボルト64は、互いに電気的に接続されており、正極端子を構成している。ガスケット63は、端子7に固定されている。ガスケット63の上面には、平板状の外部端子61が配置されている。外部端子61には外部端子60の貫通孔60aと同様の貫通孔が形成されており、貫通孔内にボルト65の頭部が収容され、ボルト65の軸部が貫通孔を通って外部端子61の上方に突出している。ガスケット63、外部端子61及びボルト65の構成は、上述したガスケット62、外部端子60及びボルト64の構成と同様である。端子7、外部端子61及びボルト65は、互いに電気的に接続されており、負極端子を構成している。
【0023】
ここで、
図2を参照して端子7について説明する。
図2に示すように、端子7は、ケース1にカシメ固定されている。端子7は、円筒部14、基底部15及び固定部16を備えている。円筒部14は開口部13に挿通されている。円筒部14には貫通孔14aが形成されている。基底部15は環状に形成されている。基底部15は円筒部14の下端部に位置しており、ケース1の内部に配置されている。基底部15には、凹所15aが形成されている。凹所15aは貫通孔14aと連通しており、凹所15a内は大気圧に保たれる。固定部16は環状に形成されている。固定部16は円筒部14の上端部に位置しており、ケース1の外部に配置されている。端子7は、固定部16によりケース1の蓋部112に固定されている。
【0024】
ケース1の蓋部112と端子7との間には、シール部材19が配置されている。シール部材19は環状であり、端子7の円筒部14を一巡している。シール部材19は、蓋部112の下面及び開口部13の内周面と、端子7の基底部15及び円筒部14に当接しており、これにより、ケース1の内外をシールしている。シール部材19は、絶縁性及び耐電解液性を有する材料(本実施例ではパーフルオロアルコキシアルカン(PFA))によって形成されている。蓋部112と端子7とは、シール部材19によって絶縁されている。なお、シール部材19の材料はこれに限られず、例えば、エチレン−プロピレン系ゴム(EPM)であってもよい。
【0025】
次に、電流遮断装置10について説明する。
図2に示すように、電流遮断装置10は、変形板30と、通電板20と、第1ホルダ76と、第2ホルダ84を備えている。変形板30は、下方に凸となった円形の導電性のダイアフラムであり、通電板20の上方に、通電板20に対向して配置されている。変形板30は、例えば銅によって形成される。変形板30は、中央部32と外周部31を有している。変形板30の中央部32は通電板20と接続されている。変形板30の外周部31は、端子7の基底部15の外周部と接続されている。即ち、変形板30は端子7に電気的に接続されている。基底部15の凹所15aは変形板30により覆われている。凹所15a内は大気圧に保たれているため、変形板30の上面には大気圧が作用する。なお、変形板30は、「第1変形板」の一例に相当し、通電板20の上方は、「通電板の一方の側」の一例に相当する。
【0026】
通電板20は、導電性を有する平坦な金属部材であり、例えば銅によって形成される。通電板20は、平面視において変形板30よりも大径である円形状に形成されており、変形板30の下方、かつ、電極組立体3の一部3a(
図1参照)の上方に配置されている。即ち、通電板20の下面は、電極組立体3の一部3aと間隔をおいて対向している(
図1参照)。通電板20には接続端子46が接続されている。即ち、通電板20は、接続端子46及び負極リード44を介して電極組立体3に電気的に接続されている。通電板20は、中央部22と外周部21を有している。外周部21は、通電板20の半径方向において、後述の通気孔20bより外周側に位置している。通電板20の下面には溝部20aが形成されている。溝部20aは中央部22の周囲に形成されており、溝部20aの内側で通電板20の中央部22と変形板30の中央部32とが接続されている。溝部20aが形成された位置における通電板20の機械的強度は、溝部20a以外の位置における通電板20の機械的強度よりも低い。通電板20には通気孔20bが形成されている。通気孔20bは、変形板30と通電板20との間の空間50と、通電板20と第2ホルダ84との間の空間52を連通させている。変形板30の外周部31と通電板20の外周部21との間には環状の絶縁部材75が配置されている。なお、通電板20の下面は、「通電板の他方の側に位置する面」の一例に相当する。
【0027】
第1ホルダ76は、通電板20の上方に配置される。その内部に端子7の基底部15と、変形板30と、絶縁部材75と、シール部材90(後述)と、通電板20を収容している。第1ホルダ76は環状であり、その中心には端子7が挿通されている。第1ホルダ76は、絶縁性及び耐電解液性を有する材料(本実施例ではポリフェニレンサルファイド(PPS))によって形成されている。なお、第1ホルダ76の材料は上記に限られず、例えば、PFA、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)等であってもよい。
【0028】
第1ホルダ76は、上端部77と中央部78と下端部79を有する。上端部77は、ケース1の蓋部112と端子7の基底部15の間に配置されている。上端部77は、蓋部112の下面と基底部15の上面に当接しており、蓋部112と基底部15との間隔を決定するスペーサの役割を果たす。蓋部112と基底部15とは、上端部77によって絶縁されている。
【0029】
中央部78は、円筒形状をしており、上端部77の外周縁から下方に延びている。中央部78の内周面は、端子7の基底部15の外周面と当接している。中央部78の下端は、通電板20の下面と略同一の高さに位置している。中央部78の下端の内周面には、径方向外側に広がる環状の凹所78aが形成されている。凹所78aの径は、凹所78aが形成されていない部分の中央部78の内周面の径よりも大きい。凹所78aの径は、通電板20の径と略同一である。凹所78aの壁面と通電板20の上面によって形成される空間には、環状の絶縁性のシール部材90が配置されている。シール部材90は、凹所78aと通電板20の両者に当接しており、空間50とケース1内の空間とをシールしている。
【0030】
下端部79は、円筒形状をしており、中央部78の下端から下方に延びている。下端部79は、通電板20より下方に位置している。下端部79の内周面の径は、中央部78の凹所78aの径と略同一である。下端部79の内周面には、全周に亘って雌ねじ80が形成されている(
図2、
図3参照)。雌ねじ80には、後述する第2ホルダ84の雄ねじ86が螺合する。下端部79の下面は平坦となっている。
【0031】
第2ホルダ84は、平面視において第1ホルダ76の外径よりも小さい外径を有する円形状の板状に形成されており、通電板20の下方(即ち、電極組立体3側(
図1参照))に配置されている。第2ホルダ84は、絶縁性及び耐電解液性を有する材料(本実施例では第1ホルダ76と同一材料であるPPS)によって形成されている。なお、第2ホルダ84の材料は上記に限られず、例えば、PFA、PTFE、PP等であってもよい。なお、通電板20の下方は、「通電板の他方の側」の一例に相当する。
【0032】
第2ホルダ84の外周部の上面84aは平坦であり、通電板20の外周部の下面に全周に亘って当接している。即ち、第2ホルダ84は、通電板20の下面を覆っている(厳密には、第2ホルダ84は、通気孔84b(後述)が形成されている部分を除いて、通電板20の下面を覆っている)。第2ホルダ84の上面84aよりも径方向内側には、下方に凹みを有する凹所84cが形成されている。凹所84cは、中央に向かって縮径するすり鉢状に形成されている。第2ホルダ84の下面は平坦であり、第1ホルダ76の下端部79の下面と略同一の高さに位置している。このため、第2ホルダ84の下面は、通電板20の下面よりも下方(即ち、通電板20に対して電極組立体3側)に位置している。第2ホルダ84の中央部には、第2ホルダ84の上面(即ち、凹所84cを構成する面)から下面までを貫通する通気孔84bが形成されている。通気孔84bは、空間52とケース1内の空間とを連通させている。即ち、空間50は、通気孔20b及び通気孔84bを介してケース1内の空間と連通している。第2ホルダ84の外周面には、全周に亘って雄ねじ86が形成されている(
図2、
図4参照)。雄ねじ86は、第1ホルダ76の雌ねじ80と対応する位置に形成されている。雄ねじ86のねじ溝は、雌ねじ80のねじ溝と螺合する形状に形成されている。なお、第2ホルダ84の下面は、「第2ホルダの最も電極組立体側に位置する部分」の一例に相当し、通電板20の下面は、「通電板の最も電極組立体側に位置する部分」の一例に相当する。また、第2ホルダ84の上面は、「第2ホルダの一方の側の面」の一例に相当し、第2ホルダ84の下面は、「第2ホルダの他方の側の面」の一例に相当する。
【0033】
電流遮断装置10は、次の手順で製造される。まず、第1ホルダ76内に端子7の基底部15を収容した状態で、変形板30の外周部の上面を端子7の基底部15の外周部の下面に溶接し、次いで変形板30の外周部の下面に絶縁部材75を配置すると共に第1ホルダ76の凹所78aにシール部材90を配置する。続いて、第1ホルダ76の下端部79側(下方側)から通電板20を第1ホルダ76内に挿入して、絶縁部材75及びシール部材90の下方に通電板20を配置し、この状態で通電板20の下方側から第2ホルダ84の雄ねじ86を第1ホルダ76の雌ねじ80に螺合していく。すると、シール部材90が凹所78aにおいて第1ホルダ76と通電板20とによって圧縮される。雄ねじ86と雌ねじ80の螺合が終了すると、通電板20は、第1ホルダ76と第2ホルダ84の間に保持される。より具体的には、通電板20の外周部が、シール部材90と共に、第1ホルダ76の中央部78と第2ホルダ84の外周部との間に挟持される。即ち、第1ホルダ76と第2ホルダ84を螺合により連結する際は、第1ホルダ76は通電板20に対して上方に位置している。そして、第1ホルダ76と第2ホルダ84を連結した後は、第1ホルダ76の下端部79は通電板20の下方に位置している。このとき、通電板20の中央部22は、変形板30の中央部32に当接している。その後、通電板20に接続端子46を接続する共に、端子7の上方から、貫通孔14aを介して通電板20と変形板30の当接面を溶接する。これにより、電流遮断装置10が製造される。なお、螺合終了のタイミングは、第2ホルダ84の軸方向における移動距離が所定の距離に達したときとしてもよいし、第2ホルダ84の下面が第1ホルダ76の下端部79の下面と略同一の高さとなったときとしてもよい。
【0034】
上述した説明から明らかなように、電流遮断装置10は、接続端子46と、通電板20と、変形板30と、端子7とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置10の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0035】
ここで、電流遮断装置10の遮断動作について説明する。上述した蓄電装置100においては、変形板30は、通電板20と、通電板20の中央部22において当接した状態で電気的に接続しており、端子5と端子7との間が通電可能な導通状態となっている。蓄電装置100の過充電等によってケース1内の圧力が上昇すると、第2ホルダ84の通気孔84b及び通電板20の通気孔20bを介して変形板30の下面に作用する圧力が上昇する。一方、変形板30の上面には大気圧が作用する。このため、ケース1の内圧が上昇して所定値に達すると、変形板30が反転して、上方に凸の状態に変化する。すると、変形板30の中央部32に接続されていた通電板20が、機械的に脆弱な溝部20aを起点に破断し、変形板30が通電板20の残部(通電板20のうち溝部20aの外周側の部分)から離間する。これによって、通電板20と変形板30とを接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7とが非導通状態となる。このとき、変形板30は接続端子46から絶縁されると共に、通電板20は端子7から絶縁される。
【0036】
実施例1の電流遮断装置10の作用効果について説明する。上記の電流遮断装置10では、第1ホルダ76と第2ホルダ84とをねじ結合によって連結することで、通電板20を第1ホルダ76と第2ホルダ84の間に保持する。このため、電流遮断装置10の構造を簡易なものとすることができる。また、電流遮断装置10を製造する際に熱カシメ処理を行う必要がないため、熱により変形板30の作動圧力が変化することを抑制することができる。
【0037】
特に、実施例1の電流遮断装置10では、第2ホルダ84の雄ねじ86を、第1ホルダ76の雌ねじ80に螺合することにより、通電板20を第1ホルダ76と第2ホルダ84の間に保持する。このため、第1ホルダ76に対する第2ホルダ84の位置を制御することで、第1ホルダ76と第2ホルダ84の間の締結力が一定となり、第1ホルダ76と第2ホルダ84を適切に連結でき、通電板20を両者の間に安定して保持することができる。また、第1ホルダ76に対する第2ホルダ84の位置が一定となるように調節することで、シール部材90の圧縮代が一定となり、シール部材90に作用する圧縮荷重を比較的に容易に調節することができる。
【0038】
また、実施例1の電流遮断装置10では、第2ホルダ84の下面が、通電板20の下面よりも電極組立体3側に位置している。このため、通電板20が電極組立体3と干渉(接触)することを抑制できる。
【0039】
特に、実施例1の電流遮断装置10では、第2ホルダ84が通電板20の下面を覆っている。このため、通電板20が電極組立体3と干渉(接触)することをより確実に抑制できる。即ち、第2ホルダ84は、第1ホルダ76と協働して通電板20を保持するだけではなく、通電板20を外部との接触から保護する保護部材としても機能する。また、第2ホルダ84は通電板20の下面を覆っているものの、第2ホルダ84には通気孔84bが形成されている。このため、通電板20と第2ホルダ84との間の空間52の圧力を、通気孔84bを介して、ケース1内の空間の圧力(厳密には、ケース1内における電流遮断装置10の外部の空間の圧力)と同一に保つことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、
図5を参照して実施例2の蓄電装置について説明する。以下では、実施例1と相違する点についてのみ説明し、実施例1と同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。実施例3、4でも同様である。
【0041】
図5の二点鎖線部300は、
図1の二点鎖線部200に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置110の第1ホルダ176及び第2ホルダ184の構成が、実施例1のそれらと異なっている。この電流遮断装置110では、第1ホルダ176に雄ねじ186が形成されており、第2ホルダ184に雌ねじ180が形成されている。具体的には、第1ホルダ176の下端部179の外周面のうち、通電板20の下面よりも下方に位置している外周面に、雄ねじ186が形成されている。第2ホルダ184は、平面視において第1ホルダ176の外径よりも大きい外径を有する円形状に形成されている。第2ホルダ184には、平面視において第1ホルダの下端部179と対応する位置に、環状の溝184dが形成されている。溝184dの径方向外側の内周面には、雌ねじ180が形成されている。第1ホルダ176の雄ねじ186は、第2ホルダ184の雌ねじ180と対応する位置に形成されている。雄ねじ186のねじ溝は、雌ねじ180のねじ溝と螺合する形状に形成されている。雄ねじ186を雌ねじ180に相対的に螺合すると、通電板20が第1ホルダ176と第2ホルダ184の間に保持される。この構成によっても、実施例1の電流遮断装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0042】
次に、
図6を参照して実施例3の蓄電装置について説明する。
図6の二点鎖線部400は、
図1の二点鎖線部200に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置210の第2ホルダ284の構成が、実施例1の第2ホルダ84と異なっている。具体的には、第2ホルダ284の通気孔284bの径は、実施例1の第2ホルダ84の通気孔84bの径と比較して大幅に大きくなっており、第2ホルダ284は、通電板20の下面のうち、その外周部のみを覆っている。この構成によっても、電流遮断装置210の構造を簡易なものとすることができると共に、熱により変形板30の作動圧力が変化することを抑制することができる。また、第1ホルダ76と第2ホルダ284を螺合して連結することにより、通電板20を両者の間に安定して保持することができる。また、第2ホルダ284の下面は、通電板20の下面よりも電極組立体3側に位置している。さらに、第2ホルダ284の容積は実施例1の第2ホルダ84よりも小さい。このため、通電板20が電極組立体3と干渉(接触)することを抑制しながら、第2ホルダ284の材料コストを節減できる。
【実施例4】
【0043】
次に、
図7、8を参照して実施例4の蓄電装置について説明する。
図7、8の二点鎖線部500は、
図1の二点鎖線部200に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置310の構成が実施例1の電流遮断装置10と異なっている。電流遮断装置310は、第1変形板330と、通電板320と、第1ホルダ76と、第2ホルダ84と、第2変形板340を備えている。第1変形板330、通電板320及び第2変形板340はいずれも銅によって形成されている。
【0044】
第1変形板330は、実施例1の変形板30と略同一の構成を有する。即ち、第1変形板330は、その外周部が基底部15の外周部と接続されており、基底部15の凹所15aは第1変形板330により覆われている。第1変形板330の上面には大気圧が作用する。
【0045】
通電板320は、第1変形板330の下方に配置されており、中央部322と外周部321を有している。通電板320は、外周部321が実施例1の外周部21よりも肉厚となっている点を除いて、実施例1の通電板20と略同一の構成を有する。第1変形板330と通電板320との間の空間350は、通電板320の通気孔320bを介して、通電板320と第2変形板340との間の空間354(後述)と連通している。シール部材90は、ケース1内の空間と、空間350及び空間354とをシールしている。
【0046】
第2変形板340は、通電板320の下方、かつ、電極組立体3の一部3a(
図1参照)の上方に配置されている。即ち、第2変形板340の下面は、電極組立体3の一部3aと間隔をおいて対向している(
図1参照)。第2変形板340は、通電板320に対して第1変形板330とは反対側に配置されている。第2変形板340は、その中央部が下方に突出している。第2変形板340の外周部は、通電板320の外周部321に接続されている。第2変形板340の上面中央には、上方に突出する突出部342が設けられている。突出部342の上方には通電板320の中央部322(溝部320aに囲まれた部分)が位置している。第2変形板340の上面には、空間354の圧力が作用する。第2変形板340の下面には、第2ホルダ84の通気孔84bを介してケース1内の空間の圧力が作用する。なお、第2変形板340の下面は、「第2変形板の他方の側の面」の一例に相当し、突出部342は、「突起」の一例に相当する。
【0047】
図7に示すように、電流遮断装置310は、接続端子46と、通電板320と、第1変形板330と、端子7とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置310の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0048】
ここで、電流遮断装置310の遮断動作について説明する。上述した蓄電装置では端子5と端子7の間が通電可能な状態となっている。ケース1の内圧が上昇すると、第2変形板340の下面に作用する圧力が上昇する。一方、第2変形板340の上面には、ケース1内の空間からシールされた空間354の圧力が作用する。このため、ケース1内の圧力が所定値を超えると、第2変形板340が下方に凸の状態から上方に変位した状態に変化する(
図8参照)。このとき、空間354内の空気は通気孔320bを通って空間350に移動し、空間350内の圧力が上昇する。また、第2変形板340が上方に変位すると、第2変形板340の突出部342が通電板320の中央部322に衝突し、通電板320が溝部320aで破断する。これにより、第1変形板330が反転し、第1変形板330及び通電板320の中央部322が上方に変位する(
図8参照)。このため、通電板320と第1変形板330を接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7との間の導通が遮断される。このとき、第1変形板330は接続端子46から絶縁されると共に、通電板320は端子7から絶縁されている。なお、第2変形板340が下方に凸の状態のときの突出部342の位置が「第1位置」の一例に相当し、第2変形板340が上方に変位した状態のときの突出部342の位置が「第2位置」の一例に相当する。また、通電板320が破断しておらず、中央部322において第1変形板330と当接している状態が「第1状態」の一例に相当し、通電板320が破断し、通電板320と第1変形板330とが電気的に離間した状態が「第2状態」の一例に相当する。
【0049】
この構成によっても、電流遮断装置310の構造を簡易なものとすることができると共に、熱により第2変形板340の作動圧力が変化することを抑制することができる。また、第1ホルダ76と第2ホルダ84を螺合して連結することにより、通電板320を両者の間に安定して保持することができる。また、第2ホルダ84の下面は第2変形板340の下面よりも電極組立体3側に位置しており、かつ、第2ホルダ84は第2変形板340の下面を覆っている。このため、第2変形板340が電極組立体3と干渉(接触)することを確実に抑制できる。また、第2ホルダ84には通気孔84bが形成されている。このため、第2変形板340と第2ホルダ84との間の空間352の圧力を、通気孔84bを介して、ケース1内の空間の圧力(厳密には、ケース1内における電流遮断装置310の外部の空間の圧力)と同一に保つことができる。なお、第2変形板340の下面は、「第2変形板の最も電極組立体側に位置する部分」の一例に相当する。なお、上記の電流遮断装置310は、実施例2の蓄電装置に取付けられてもよい。
【実施例5】
【0050】
次に、
図9を参照して実施例5の蓄電装置について説明する。以下では、実施例4と相違する点についてのみ説明し、実施例4と同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図9の二点鎖線部600は、
図7の二点鎖線部500に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置410の第2ホルダ284の構成が実施例4の第2ホルダ84と異なっている。具体的には、第2ホルダ284の通気孔284bの径は、実施例4の第2ホルダ84の通気孔84bの径と比較して大幅に大きくなっており、第2ホルダ284は、通電板20の下面のうち、その外周部のみを覆っている。即ち、実施例5の電流遮断装置410は、実施例4の電流遮断装置310に、実施例2の第2ホルダ284を適用した構成を有する。この構成によっても、電流遮断装置410の構造を簡易なものとすることができると共に、熱により第2変形板340の作動圧力が変化することを抑制することができる。また、第1ホルダ76と第2ホルダ284を螺合して連結することにより、通電板320を両者の間に安定して保持することができる。また、第2ホルダ84の下面は、第2変形板340の下面よりも電極組立体3側に位置している。さらに、第2ホルダ284の容積は実施例4の第2ホルダ84よりも小さい。このため、第2変形板340が電極組立体3と干渉(接触)することを抑制しながら、第2ホルダ284の材料コストを節減できる。
【0051】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本明細書が開示する電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置は、上記の実施例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0052】
例えば、上記の実施例では、第1ホルダ76と第2ホルダ84は、両者を螺合することにより連結されたが、連結手段は螺合に限られない。例えば、第1ホルダ76と第2ホルダ84の一方に凸部を設け、他方に凹部を設け、凸部を凹部に圧入することにより両者を連結してもよい。また、第1ホルダ76と第2ホルダ84の一方に貫通孔を設け、他方に凸部を設け、凸部を貫通孔に差し込んで係合させることにより両者を連結してもよい。
【0053】
また、第2ホルダ84が、その外周縁から上方に延びる円筒形状の側部を有していてもよい。第2ホルダ84の当該側部は、その外径が第1ホルダ76の外径よりも大きく、その内径が第1ホルダ76の外径よりも僅かに小さくてもよい。第1ホルダ76を第2ホルダ84の内側に相対的に圧入することにより、第1ホルダ76と第2ホルダ84とを連結してもよい。この場合、第1ホルダ76を第2ホルダ84に圧入する際は、第2ホルダ84は通電板20に対して下方に位置している。そして、第1ホルダ76を第2ホルダ84に圧入した後は、第2ホルダ84の側部の一部は、通電板20に対して上方に位置している。即ち、第1ホルダ76と第2ホルダ84との締結部分は、通電板20の上方に位置している。この構成によっても、電流遮断装置を簡易な構造としながら、熱により第1変形板の作動圧力が変化することを抑制することができる。
【0054】
また、第1ホルダ76の下端部79又は第2ホルダ84の外周部は、全周に亘って形成されていなくてもよい。例えば、第1ホルダ76は、周方向に沿って間隔をおいて延びる複数の下端部79を有しており、当該下端部79に雌ねじ80又は雄ねじ86が形成されていてもよい。或いは、第2ホルダ84の外周部は、放射状に延びる複数の部分を有しており、当該部分に雄ねじ86又は雌ねじ80が形成されていてもよい。このような構成においても、第1ホルダ76と第2ホルダ84の一方に形成された雌ねじ80に、他方に形成された雄ねじ86を螺合することにより、両者を適切に連結することができる。
【0055】
また、上記の実施例では、第2ホルダ84の上面84aは、通電板20を介してシール部材90と対向する位置に位置しているが、この構成に限られない。第2ホルダ84の上面84aが通電板20といずれかの位置で当接しており、これによりシール部材90が第1ホルダ76及び通電板20によって圧縮される構成であれば、上面84aは通電板20を介してシール部材90と対向する位置に位置していなくてもよい。
【0056】
また、電流遮断装置10は、端子5側に設けられてもよいし、端子5と端子7の双方に設けられてもよい。また、上記の実施例では、変形板30が反転することで通電板20との導通が遮断される。しかしながら、変形板30の変形の仕方は反転に限られない。例えば、変形板30の中央部が上方に撓むことで通電板20が溝部20cを起点に破断し、変形板30と通電板20との導通が遮断される構成であってもよい。変形板30は、変形板30と通電板20との導通が遮断されるのであればどのように変形してもよい。第2変形板340についても同様である。
【0057】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。