特許第6456806号(P6456806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456806
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】遠隔操縦用建設機械の映像伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20190110BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20190110BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   H04N7/18 F
   E02F9/20 N
   B60R1/00 B
   H04N7/18 J
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-225063(P2015-225063)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-92908(P2017-92908A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 和則
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一宏
【審査官】 秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−237765(JP,A)
【文献】 特開平8−84375(JP,A)
【文献】 特開2013−168776(JP,A)
【文献】 特開2008−144378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
E02F 9/20
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを有する建設機械に搭載された周囲監視映像を撮影するカメラと、前記建設機械を遠隔操縦する操作器と、前記周囲監視映像を表示する表示器とをネットワークを介して通信接続し、前記表示器に前記周囲監視映像を伝送する遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムにおいて、
前記ネットワーク上に配置され、前記カメラが撮影した前記周囲監視映像の映像信号を圧縮符号に変換出力するエンコーダと、
前記ネットワーク上に配置され、前記エンコーダから入力した圧縮符号変換された映像信号を伸長復号し出力するデコーダと、
前記エンコーダと前記デコーダとの間に配置され、前記エンコーダと前記デコーダとの間を接続状態又は切断状態に切り替える接続切断部材と、
前記操作器から入力され、前記アクチュエータの目標速度に相当する操作信号に基づいて、前記接続切断部材を動作させる制御信号を出力する接続切断制御装置と、
前記エンコーダと前記デコーダとの間の接続を許容するかどうかを判定するため、前記操作信号と比較される許容判定閾値を記憶する閾値記憶部と、を備え、
前記表示器は複数あり、
前記接続切断制御装置は、前記操作信号が前記許容判定閾値以上の場合、前記表示器の内、前記操作信号により前記建設機械が駆動する方向にある前記周囲監視映像を映す表示器が接続された前記エンコーダと前記デコーダとの間のみを接続する制御を行う、
ことを特徴とする遠隔操縦用建設機械の映像伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムにおいて、
前記接続切断部材が前記エンコーダと前記デコーダとの間の接続を切断する動作を禁止する指示信号を出力する禁止指示装置を備える、
ことを特徴とする遠隔操縦用建設機械の映像伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムに係り、特にデータ通信量の低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の遠隔操作システムにおける映像技術の一例として、特許文献1には、「油圧ショベルの動作を撮影する複数の第一、第二、第三カメラを固定した状態で設置し、これらカメラからの映像データをカメラ制御部に入力するとともにカメラ制御部を機体制御部に接続し、カメラ制御部は、油圧ショベルを操作する操作信号の入力に基づいて油圧ショベルの動作を判断し、該動作を確認するのに最適なカメラを選択して、該選択されたカメラの映像データをモニタに送信する(要約抜粋)」構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−219894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の遠隔操縦システムの映像伝送において、例えば油圧ショベルが旋回動作をすることによりカメラの撮影対象が大きく動くことになり伝送する映像データが増える。それに伴い、映像データを送受信する通信回線容量を圧迫し、映像データの乱れや欠落が発生することがある。特許文献1に記載の技術は、複数のカメラから遠隔操縦の内容に応じてカメラを選択し一つのモニタに表示させて操縦者の視認性を向上させることができるが、カメラに表示されているか否かを問わず、映像データを伝送する際の通信負荷については考慮されていないので、撮影対象が動いた場合の映像データの増加がデータ通信回線を逼迫することによる画質の低下という課題が残る。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、建設機械の遠隔操縦に必要な映像データの送受信に際し、操縦者に必要最小限の情報を提供するとともにデータ通信回線への通信負荷を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために本発明は、アクチュエータを有する建設機械に搭載された周囲監視映像を撮影するカメラと、前記建設機械を遠隔操縦する操作器と、前記周囲監視映像を表示する表示器とをネットワークを介して通信接続し、前記表示器に前記周囲監視映像を伝送する遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムにおいて、前記ネットワーク上に配置され、前記カメラが撮影した前記周囲監視映像の映像信号を圧縮符号に変換出力するエンコーダと、前記ネットワーク上に配置され、前記エンコーダから入力した圧縮符号変換された映像信号を伸長復号し出力するデコーダと、前記エンコーダと前記デコーダとの間に配置され、前記エンコーダと前記デコーダとの間を接続状態又は切断状態に切り替える接続切断部材と、前記操作器から入力され、前記アクチュエータの目標速度に相当する操作信号に基づいて、前記接続切断部材を動作させる制御信号を出力する接続切断制御装置と、前記エンコーダと前記デコーダとの間の接続を許容するかどうかを判定するため、前記操作信号と比較される許容判定閾値を記憶する閾値記憶部と、を備え、前記表示器は複数あり、前記接続切断制御装置は、前記操作信号が前記許容判定閾値以上の場合、前記表示器の内、前記操作信号により前記建設機械が駆動する方向にある前記周囲監視映像を映す表示器が接続された前記エンコーダと前記デコーダとの間のみを接続する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建設機械の遠隔操縦に必要な映像データの送受信に際し、操縦者に必要最小限の情報を提供するとともにデータ通信回線への通信負荷を低減する技術を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用した遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムの概略構成を示す説明図である。
図2】移動式建設機械としての油圧ショベルの構成を示す説明図であって、(a)は上面図、(b)は左側面図を示す。
図3】操作レバーの角度(θ)と接続切断部材のON・OFFの対応を示す図である。
図4】接続切断部材の構成例を示す図であって、(a)はフォトカプラを用いた例、(b)はトランジスタを用いた例を示す。
図5】遠隔操縦用コントローラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は上面図を示す。
図6】本実施形態に係る映像伝送システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムの実施形態について、図1図5を参照して概略構成を説明する。図1は、本発明を適用した遠隔操縦用建設機械の映像伝送システムの概略構成を示す説明図である。図2は、移動式建設機械としての油圧ショベルの構成を示す説明図であって、(a)は上面図、(b)は左側面図を示す。図3は、操作レバーの角度(θ)と接続切断部材のON・OFFの対応を示す図である。図4は、接続切断部材の構成例を示す図であって、(a)はフォトカプラを用いた例、(b)はトランジスタを用いた例を示す。図5は、遠隔操縦用コントローラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は上面図を示す。
【0010】
図1に示す遠隔操縦用建設機械の映像伝送システム10は、作業現場に配置された移動式建設機械2に搭載された撮影システム1から、移動式建設機械2から離れた場所に設置される操作室3内のモニタ(表示器に相当する)に映像データを伝送するシステムである。作業現場に配置された移動式建設機械2と操作室3とは、通信回線6を介して接続される。
【0011】
図2に移動式建設機械2の一例として油圧ショベル20の構成を示す。図2(a)に示すように、油圧ショベル20は左右一対のクローラ25a及び25bを備えた下部走行体、及び該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体24、及び該上部旋回体24に取り付けられるキャブ23及び該上部旋回体24に上下揺動自在に支持されるブーム26、該ブーム26に上下揺動自在に支持されるアーム27(図2(b)参照)、該アーム27に揺動自在に支持されるバケット28を備える。またクローラ25a、及び25bを用いた走行動作、上部旋回体24の旋回動作、及びブーム26、アーム27、バケット28の揺動動作を各々実施するために、アクチュエータである図示しない油圧モータや油圧シリンダを備えている。油圧モータは旋回動作等のために備えられ、油圧シリンダはブーム26等の揺動動作のために備えられている。なお、ここでは油圧式を想定したがそれに拘るものでなく、例えば電動モータやリニアアクチュエータなど電動式でもよい。
【0012】
油圧ショベル20は、キャブ23の上部左側に左カメラ21aを、上部前方右側に前方カメラ21dを、各々備える。また上部旋回体24の後ろに後方カメラ21cを、更に上部右側に右カメラ21bを備える。
【0013】
図1に戻り、油圧ショベル20は、第一のエンコーダ22a、第二のエンコーダ22b、第三のエンコーダ22c、及び第四のエンコーダ22dを備える。そして、左カメラ21aと第一のエンコーダ22a、右カメラ21bと第二のエンコーダ22b、後方カメラ21cと第三のエンコーダ22c、及び前方カメラ21dと第四のエンコーダ22dを其々接続する。
【0014】
油圧ショベル20は、ネットワークインタフェース(I/F)62と、第一の接続切断部材31a、第二の接続切断部材31b、第三の接続切断部材31c、閾値記憶部32、及び接続切断制御装置33を備える。第一〜第三のエンコーダ22a、22b、及び22cの其々は、各エンコーダにおける映像信号の出力端が、第一の接続切断部材31a、第二の接続切断部材31b、及び第三の接続切断部材31cの入力端に接続される。第一の接続切断部材31a、第二の接続切断部材31b、及び第三の接続切断部材31cの映像通信信号の出力端は、ネットワークI/F62に接続され、ネットワークI/F62は通信回線6に接続される。
【0015】
なお、本実施形態では、前方カメラ21dからの映像信号は、操作内容に関らずメインカメラからの映像信号として前方モニタ51dに表示させ続けるものとする。そのため、第四のエンコーダ22dとネットワークI/F62との間には接続切断部材を備えることはなく、第四のエンコーダ22dの出力端がネットワークI/F62に接続される。
【0016】
接続切断制御装置33は、第一の接続切断部材31a、第二の接続切断部材31b、及び第三の接続切断部材31cの其々と接続される。また、接続切断制御装置33は、ネットワークI/F62を介して通信回線6に接続される。そして接続切断制御装置33は、通信回線6を介して遠隔操縦用コントローラ4(操作器に相当する)に接続される。
【0017】
閾値記憶部32は、遠隔操縦用コントローラ4から入力された操作信号と比較して、各エンコーダと、後述する各デコーダとの間にあるネットワークI/F62間の接続を許容するかどうかを判定するための許容判定閾値を記憶し、接続切断制御装置33が切断判定処理を実行する際にその許容判定閾値を参照する。
【0018】
遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41、42、および第一及び第二の走行レバーは例えばジョイスティックであり、各レバーを傾斜させた際の傾斜角度、および傾斜方向がアクチュエータである油圧モータ、油圧シリンダの目標速度に相当する。傾斜角度が目標速度のスカラ値、すなわち油圧モータ、油圧シリンダの速さに相当し、傾斜方向が目標速度の方向、すなわち油圧モータ、油圧シリンダの動作方向に相当する。この傾斜角度および傾斜方向を電気的に変換した信号を操作信号とし、この操作信号を遠隔操縦用コントローラ4から油圧ショベル20に伝送する事で、油圧ショベル20に備えられたアクチュエータである油圧モータ、油圧シリンダはこの操作信号に応じた目標速度に追従駆動するよう、油圧ショベル20に備えられた図示しない油圧ポンプや流量制御弁が制御される。この結果、目標速度に応じたブーム26、アーム27、バケット28の作業動作、下部走行体の走行動作、上部旋回体24の旋回動作を行う事ができる。
【0019】
図3のグラフは、上部旋回体24を左右に旋回させる操作信号を出力する操作レバー41の手前方向(後ろ方向)及び奥行方向(前方向)への傾斜角度(θ)と上部旋回体24の左旋回速度及び右旋回速度(V)との関係を示す。
【0020】
図3において、操作レバー41の傾斜角度△θの間は、操作信号に含まれる目標速度のスカラ値が0でない、すなわち操作レバー41が前後のいずれかの方向に倒されて上部旋回体24が旋回を開始しているが、接続切断制御装置33がOFF(切断処理をせず、接続状態を維持している)であることを示す。この△θを含む操作レバー41の手前方向(後ろ方向)の傾斜角度θ1及び操作レバー41の奥行方向(前方向)の傾斜角度θ2が許容判定閾値に相当する。操作レバー41の手前方向の傾斜角度がθ1未満の場合、また奥行方向の傾斜角度がθ2未満の場合、上部旋回体24が左旋回又は右旋回を開始してもすぐには接続切断制御装置33が第二のエンコーダ22b又は第一のエンコーダ22aとネットワークI/F62とを切断せず接続状態を維持する。すなわち、接続切断制御装置33が切断信号を出力することなく、モニタはカメラからの映像を表示し続ける。これにより、上部旋回体24の微細な動作の度に切断処理を実行して映像データの伝送の停止・再開を繰り返し、モニタの映像が頻繁に表示・非表示に切り替わることを抑止することができる。なお、上記では操作レバー41による上部旋回体24の旋回動作を例に挙げて説明したが、操作レバー41の左右方向の操作信号、また操作レバー42(図5参照)の前後方向、左右方向の各操作信号に対しても、上記と同様に許容判定閾値を設定してもよい。
【0021】
図4は、接続切断部材31a〜31cの構成例を示す説明図であって、(a)はフォトカプラを使った例、(b)はトランジスタを使った例を示す。
【0022】
接続切断部材31a〜31cの構成例として、図4(a)に示すように、接続切断部材31a〜31cをフォトカプラ70及び電磁スイッチ71、及び電源72を組み合わせて構成してもよい。通常時は電磁スイッチ71とそれに電圧を印加する電源72とが電断状態に設定されており、各エンコーダ22a〜22cの其々とネットワークI/F62とが接続されている。そして、接続切断制御装置33が切断処理を実行するための切断信号を出力すると、フォトカプラ70が電源72と電磁スイッチ71とを通電させ、電磁スイッチ71が作動し、エンコーダ22a〜22cの其々とネットワークI/F62とが切断される。これにより、エンコーダ22a〜22cからネットワークI/F62に映像通信信号が伝送されなくなる。
【0023】
接続切断部材31a〜31cの構成例は図4(a)に限定されず、例えば図4(b)に示すように、フォトカプラ70に代わりトランジスタ73を用いてもよい。
【0024】
一方、操作室3には、遠隔操縦用コントローラ4(操作器に相当する)、左モニタ51a、右モニタ51b、後方モニタ51c、及び前方モニタ51dと、ネットワークI/F63とが備えられ、各モニタ51a〜51dの其々とネットワークI/F63との間には、第一のデコーダ52a、第二のデコーダ52b、第三のデコーダ52c、第四のデコーダ52dが配置される。
【0025】
図5に遠隔操縦用コントローラ4の構成を示す。図5に示すように、遠隔操縦用コントローラ4は、第一及び第二の操作レバー41、42と第一及び第二の走行レバー43、44といった油圧ショベル20を遠隔操縦するために必要な操作部材を備える。
【0026】
ここで遠隔操縦用コントローラ4の各レバー41、42、43、44に対応する油圧ショベル20の動作と動作方向は任意の設定が可能であるが、本実施形態では、以下のごとく設定される。操作レバー41の前後操作により上部旋回体24の旋回動作を行い、操作レバー41の左右操作によりアーム27の揺動動作を行う。操作レバー42の前後操作によりブーム26の揺動動作を行い左右操作によりバケット28の揺動動作を行う。走行レバー43の前後操作によりクローラ25aの正逆回転動作を行う。走行レバー44の前後操作によりクローラ25bの正逆回転動作を行う。
【0027】
左カメラ21aから前方カメラ21dの其々で撮影した映像信号は、第一のエンコーダ22aから第四のエンコーダ22dの其々に入力され、各エンコーダ22a〜22dが入力された映像信号に対して圧縮符号化を行った後に第一〜第四の映像通信信号の其々として出力する。そして、第一〜第三の映像通信信号の其々は、第一〜第三の接続切断部材31a〜31cの其々を介し、ネットワークI/F62を通じて通信回線6に出力される。また第四の映像通信信号は、第四のエンコーダ22dからネットワークI/F62を通じて通信回線6に出力される。
【0028】
第一の映像通信信号〜第四の映像通信信号の其々は、通信回線6から、遠隔操縦用コントローラ4のネットワークI/F63を介して第一から第四のデコーダ52a〜52dの其々に入力される。第一〜第四のデコーダ52a〜52dの其々に入力された映像通信信号は、各デコーダ52a〜52dの其々において伸長復号化され、左モニタ51a〜前方モニタ51dの其々に作業現場の映像として出力される。
【0029】
操縦者は左モニタ51a〜前方モニタ51dの其々に表示された映像を見ながら遠隔操縦用コントローラ4に備えられた操作レバー41、42及び走行レバー43、44を操作する。遠隔操縦用コントローラ4は各レバー41、42、43、44の傾斜角度、傾斜方向に応じた操作信号を、通信回線6を介して操作レバー検知部34に送信する。
【0030】
操作レバー検知部34は、入力された操作信号を油圧ショベル20の油圧モータや油圧シリンダに出力し、操作信号に応じて油圧モータや油圧シリンダが動作する。
【0031】
更に操作レバー検知部34は、受信した操作信号を接続切断制御装置33に出力する。接続切断制御装置33は、遠隔操縦用コントローラ4から受信した操作信号と閾値記憶部32に記憶された許容判定閾値とを比較し、その比較結果に応じて第一の接続切断部材31aから第三の接続切断部材31cの其々に対し切断信号を出力する。切断信号が出力された接続切断部材を経由する映像通信信号の伝送経路は、切断(遮断)される。
【0032】
各エンコーダと各デコーダとの間では、映像通信信号が伝送されないときでも、データ通信量としては小さいものの通信制御信号が伝送される。そのため、本実施形態のように、接続切断部材31a〜31cをエンコーダとデコーダとの間に設置することで、映像通信信号の伝送の必要がないときにエンコーダ及びデコーダの間で通信制御信号が伝送されることも合わせて抑止できる。
【0033】
また、本実施形態では遠隔操縦用コントローラ4に、接続切断制御装置33の切断制御を禁止させる禁止指示装置である禁止指示器45を備える。禁止指示器45は例えばトグルスイッチにより構成してもよい。
【0034】
禁止指示器45は、オンされると接続切断制御が無効となり、オフされると有効となる。禁止指示器45は、オンされると、接続切断部材31a〜31cへの接続切断動作を禁止する指示信号である制御禁止指示信号を生成し、移動式建設機械2である油圧ショベル20の操作レバー検知器34に出力する。操作レバー検知器34は、制御信号を接続切断制御装置33に出力し、制御信号を受けた接続切断制御装置33は第一から第三の接続切断部材31a〜31cへの伝送回路を切断し、接続切断制御を無効とする。また、禁止指示器45は、オフされると、制御可指示信号を生成し、無効の際と同様に接続切断制御装置33に出力し、接続切断制御装置33は第一から第三の接続切断部材31a〜31cへの伝送回路を接続し、接続切断制御を有効とする。
【0035】
この禁止指示器45は、例えば旋回動作をしながら、バケット28を溝の壁面に当てて壁面の締め固める旋回横当てという作業など、アクチュエータの速度でなく力を使って作業する場合に有効である。例えば旋回横当てでは、許容判定閾値以下の操作信号で旋回させてバケット28を壁面まで近づけ、その後操作信号を許容判定閾値以上に増大させてバケット28を壁面に押し付け、更に許容判定閾値内の逆操作で壁面から離れ、また許容判定閾値以上で壁面に押し付けると言った短時間での繰り返し動作が想定される。接続切断制御を有効にした場合、バケット28を壁面に押し付けている間、実際にはほぼ旋回していない状態にも拘らず映像通信信号の伝送経路が切断され、モニタ51a〜51cの内、旋回方向以外のモニタに映像が映らなくなる。壁面から離れた際は、映像通信信号の伝送経路が接続され、旋回方向以外のモニタに映像が映るようになる。これが短時間で繰り返されるのは、遠隔操縦用コントローラ4を操作している操縦者にとって不快と感じる可能性がある。そこで、禁止指示器45をオンにして接続切断制御を無効とすれば、このような繰り返しが抑制でき、操縦者が不快と感じる事を防げる。また、通常の旋回作業に戻れば禁止指示器45をオフにして接続切断制御を有効にすればよい。
【0036】
なお、旋回横当てなどの力作業を行う場合、自動で接続切断制御をオンオフさせる制御も考えられる。例えば、旋回横当てなどは操作信号が許容判定閾値以上であるにも拘らず、実際には旋回をしていないので、旋回動作を行う油圧モータにかかる圧力が図示しないリリーフ弁設定圧まで上昇している事が予想される。この制御構成は、油圧モータにかかる圧力を検出する圧力検出装置と、この圧力に対し圧力閾値を新たに設け記憶させた閾値記憶部32とを備え、接続切断制御装置33では、操作信号が許容判定閾値以上、かつこの油圧モータにかかる圧力が圧力閾値以上であれば力作業をしていると判断し、接続切断制御を無効にすることで実現できる。これにより旋回方向以外のモニタにも映像を映すこと事ができる。しかし、この制御は検出した圧力をフィードバックした制御であり、圧力が圧力閾値に到達するまでの遅れが生じるため、映像が映るまでに応答遅れが生じ、操縦者に違和感を与える可能性がある。
【0037】
次に図6を参照して、本実施形態に係る映像伝送システムの処理の流れについて説明する。図6は、本実施形態に係る映像伝送システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
操縦者が遠隔操縦用コントローラ4を操作しておらず操作レバー検知部34に操作信号の入力がないとき、すなわち油圧ショベル20が動作を行っていないときは、接続切断制御装置33は、全ての接続切断部材31a〜31cに対して切断信号を出力することなく、接続状態を維持する(S60)。この場合、全てのモニタ51a〜51dの其々に、左カメラ21a〜前方カメラ21dの其々からの周囲監視映像が表示される。
【0039】
操縦者が遠隔操縦用コントローラ4の禁止指示器45をオンしたかどうかを判定する(S61)。オンの場合は禁止指示有として、接続切断制御装置33による接続切断制御を無効とし(S61/Yes)、オフの場合は禁止指示無として、接続切断制御装置33による接続切断制御を有効とする(S61/No)。
【0040】
操縦者が走行動作を行う場合は、操縦者はすべてのカメラの映像を確認しながら走行操作を行う。遠隔操縦用コントローラ4は、操縦者が走行レバー43、44を操作すると(S62/Yes)油圧ショベル20に走行動作を行わせるための操作信号を出力する。走行動作を行わせるための操作信号を検知した接続切断制御装置33は、切断信号を出力することなく全てのモニタに各カメラの映像が表示された状態を維持する(S60へ戻る)。
【0041】
右旋回動作をする場合(S62/No、S63/Yes)、操縦者は左方向に設置されている左モニタ51aを見る必要はない。そこで、左カメラ21aの映像通信信号の伝送を停止させる。そのために、操縦者が遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41を操縦者から見て奥行方向(前方向)に動かし、右旋回の操作を行う。遠隔操縦用コントローラ4は右旋回の操作信号を操作レバー検知部34に出力する。操作レバー検知部34は右旋回の操作信号を検知し、接続切断制御装置33に右旋回の操作信号を出力する。
【0042】
接続切断制御装置33は、右旋回の操作信号と、右旋回時の切断判定に用いる許容判定閾値θ2(図3参照)とを比較し、操作信号が許容判定閾値θ2以上の場合(S64/Yes)、第一の接続切断部材31aに対して切断信号を出力する(S65)。これにより、第一の接続切断部材31aは第一のエンコーダ22aとネットワークI/F62との間の接続を切断する。その結果、左カメラ21aの映像信号に基づく第一の映像通信信号が通信回線6を流れなくなるので、右旋回動作による映像の動きによって他の映像通信信号のデータ量が増えても、通信回線6を流れる映像通信信号のデータ量の総量を削減し、映像データの欠落を防ぎ映像乱れを抑えることができる。
【0043】
右旋回の操作信号が許容判定閾値θ2未満の場合は(S64/No)、接続状態を維持し、右旋回が終了していなければ(S66/No)、ステップS64にて操作信号と許容判定閾値θ2との比較処理を続ける。
【0044】
操縦者が右旋回動作を止める、すなわち遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41を初期の位置に戻すと(S66/Yes)、遠隔操縦用コントローラ4は右旋回動作を行う操作信号の出力を止める。接続切断制御装置33は、右旋回動作を行う操作信号の入力が止まったことを検知し、第一の接続切断部材31aに対する切断信号の出力を停止し、第一のエンコーダ22aとネットワークI/F62とを接続状態に復帰させる(S67)。これにより左カメラ21aからの映像通信信号がネットワークI/F62を介して通信回線6に伝送され、左モニタ51aに左カメラ21aが撮影した映像が表示される。
【0045】
操縦者が左旋回動作を行う場合を説明する。左旋回動作をする場合(S63/No、S68/Yes)、操縦者は右方向に設置されている右カメラ21bが撮影した周囲監視映像が表示されている右モニタ51bを見る必要はない。そこで、右カメラ21bの映像通信信号の伝送を停止させる。
【0046】
操縦者が遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41を操縦者から見て手前方向に動かし、左旋回の操作を行う。遠隔操縦用コントローラ4は左旋回の操作信号を操作レバー検知部34に出力する。操作レバー検知部34は、接続切断制御装置33に左旋回の操作信号を出力する。接続切断制御装置33は、左旋回の操作信号と左旋回時の切断判定に用いる許容判定閾値θ1(図3参照)とを比較し、操作信号が許容判定閾値θ1以上の場合(S69/Yes)、切断信号を第二の接続切断部材31bに対して出力する(S70)。
【0047】
第二の接続切断部材31bは第二のエンコーダ22bとネットワークI/F62との間の接続を切断する。これにより、第二の映像通信信号が通信回線6を流れなくなるので、通信回線6を流れる映像通信信号のデータ量の総量を削減し、映像データの欠落を防ぎ映像乱れを抑えることができる。
【0048】
左旋回の操作信号が許容判定閾値θ1未満の場合(S69/No)は接続状態を維持し、左旋回が終了していなければ(S71/No)、ステップS69にて操作信号と許容判定閾値θ1との比較処理を続ける。
【0049】
操縦者が左旋回動作を終了する、すなわち遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41を初期の位置に戻すと(S71/Yes)、遠隔操縦用コントローラ4は左旋回動作を行う操作信号の出力を止める。接続切断制御装置33は、左旋回動作を行う操作信号の入力が止まったことを検知し、第二の接続切断部材31bに対する切断信号の出力を停止し、第二のエンコーダ22bとネットワークI/F62とを接続状態に復帰させる(S72)。これにより右カメラ21bの映像通信信号が、ネットワークI/F62を介して通信回線6に伝送され、右モニタ51bに右カメラ21bが撮影した映像が表示される。
【0050】
操縦者がブーム、アーム、バケット(合わせてフロントと呼ぶ)の動作を行う場合を説明する。操縦者がフロント動作を行う場合は後方モニタ51cを見る必要がない。そこで、後方カメラ21cの映像通信信号の伝送を停止させる。
【0051】
操縦者が遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41の左右操作(アーム動作)、操作レバー42の前後操作(ブーム動作)、操作レバー42の左右操作(バケット動作)の少なくとも一つを行う。遠隔操縦用コントローラ4はフロント動作の操作信号を操作レバー検知部34に出力する。操作レバー検知部34はフロント動作の操作信号を検知すると(S73/Yes)、接続切断制御装置33は、フロント動作の操作信号とフロント動作時の切断判定に用いる許容判定閾値とを比較し、操作信号が許容判定閾値以上の場合(S74/Yes)、切断信号を第三の接続切断部材31cに対して出力する(S75)。
【0052】
第三の接続切断部材31cは第三のエンコーダ22cとネットワークI/F62との間の接続を切断する。これにより、第三の映像通信信号が通信回線6を流れなくなるので、通信回線6を流れる映像通信信号のデータ量の総量を削減し、映像データの欠落を防ぎ映像乱れを抑えることができる。
【0053】
フロント動作の操作信号が許容判定閾値未満の場合(S74/No)は接続状態を維持し、フロント動作が継続している間は(S76/No)、ステップS74にて操作信号と許容判定閾値との比較処理を続ける。
【0054】
操縦者がフロント動作を終了する、すなわち遠隔操縦用コントローラ4の操作レバー41及び操作レバー42を初期の位置に戻すと(S76/Yes)、遠隔操縦用コントローラ4はフロント動作の操作信号の出力を止める。接続切断制御装置33は、フロント動作の操作信号の入力が止まったことを検知し、第三の接続切断部材31cに対する切断信号の出力を停止し、第三のエンコーダ22cとネットワークI/F62とを接続状態に復帰させる(S77)。これにより後方カメラ21cの映像通信信号が、ネットワークI/F62を介して通信回線6に出力され、後方モニタ51cに後方カメラ21cが撮影した映像が表示される。
【0055】
上記のように本実施形態では操縦者が移動式建設機械(本実施形態では油圧ショベルに相当する)の遠隔操縦において動作中見る必要がない映像通信信号の通信を遮断することにより、操縦者に必要最小限の情報を提供するとともに通信回線を流れる映像通信信号のデータ量の総量を削減し、映像データの欠落を防ぎ映像乱れを抑えることができる。
【0056】
上記説明では移動式建設機械に設置するカメラの数及び映像通信信号の伝送経路を4つとしたが、作業現場環境、作業内容によってカメラの数及び伝送経路の数を増減させてもよい。また、カメラの設置位置も本実施形態に限らず作業現場環境、作業内容によって他の場所に設置してもよい。
【0057】
また、上記説明では遠隔操縦用コントローラの操作レバーと走行レバーの操作に対応する移動式建設機械の動作の一例を示したが、他の対応する動作に変更してもよい。
【0058】
上記実施形態ではステップS64、S69、S74において、操作信号と各動作に応じて定められた許容判定閾値との比較処理を行ったが、この比較処理は必須ではなく、操作信号を検知すると直ちに切断処理を行うように構成してもよい。
【0059】
また、本実施形態ではエンコーダとネットワークI/Fとの間に接続切断部材を設置したが設置位置はこれに限らず、エンコーダからデコーダまでの映像信号の伝送経路上の任意の位置に接続切断部材を設置し上記と同様に接続切断部材を動作させることで、建設機械の駆動方向の周辺監視画像のみを表示器に表示し、駆動方向とは異なる方向の周辺監視映像の映像信号が通信回線に出力されないように構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 撮影システム
10 映像伝送システム
2 移動式建設機械
21 カメラ
22 エンコーダ
3 操作室
31 接続切断部材
32 閾値記憶部
33 接続切断制御装置
34 操作レバー検知部
4 遠隔操縦用コントローラ
41、42 操作レバー
43、44 走行レバー
45 禁止指示器
51 モニタ
52 デコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6