特許第6456812号(P6456812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456812
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】水中モータ駆動式ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/04 20060101AFI20190110BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20190110BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20190110BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20190110BHJP
   F04D 13/08 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   F04D7/04 C
   F04D29/22 G
   F04D29/70 G
   F04D29/58 F
   F04D13/08 G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-248643(P2015-248643)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-115593(P2017-115593A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】小山田 嘉規
(72)【発明者】
【氏名】海野 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 辰美
(72)【発明者】
【氏名】石倉 武志
(72)【発明者】
【氏名】森下 日左男
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121519(JP,A)
【文献】 特開2011−163263(JP,A)
【文献】 実開昭51−120504(JP,U)
【文献】 実開昭61−101689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 7/04
F04D 13/08
F04D 29/22
F04D 29/58
F04D 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に羽根車が収納されたポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの上方に設けられた熱交換器と、
前記熱交換器上に設置され回転軸に固定された前記羽根車を回転駆動する水中モータとを備え、
前記ポンプケーシングが、前記羽根車の表面側に設けられた流体の吸込流路と、
前記羽根車の裏面側に設けられ前記吸込流路と連通する流入室とを有し、
前記ポンプケーシングと前記熱交換器との間に熱交換室を設けていると共に、前記流入室と前記熱交換室とを連通する部分に前記流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構を設け
前記破砕機構が、前記羽根車の裏面に内周側から外周側に向けて延在し配設された複数の裏羽根と、前記羽根車の外径と略同径で前記羽根車の裏面と間隙を設けて前記ポンプケーシングに固定された環状部材と、前記環状部材に設けられ内周側から外周側に向けて延在して前記裏羽根と対向配置された複数の溝部とを備え、
前記環状部材が、前記流入室と前記熱交換室とを上下に仕切ると共に、前記環状部材の半径方向外側で、前記流入室と前記熱交換室とが連通し、
前記裏羽根が、前記羽根車の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設され、
前記溝部が、前記羽根車の回転方向に対して外周側が内周側より前進して形成され、
前記裏羽根と前記溝部とが、回転時に水平投影面上において斜めに交差する配列とされていることを特徴とする水中モータ駆動式ポンプ。
【請求項2】
請求項記載の水中モータ駆動式ポンプにおいて、
前記裏羽根の全てが、前記溝部のいずれかと水平投影面上において常に交差する配列とされていることを特徴とする水中モータ駆動式ポンプ。
【請求項3】
回転可能に羽根車が収納されたポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの上方に設けられた熱交換器と、
前記熱交換器上に設置され回転軸に固定された前記羽根車を回転駆動する水中モータとを備え、
前記ポンプケーシングが、前記羽根車の表面側に設けられた流体の吸込流路と、
前記羽根車の裏面側に設けられ前記吸込流路と連通する流入室とを有し、
前記ポンプケーシングと前記熱交換器との間に熱交換室を設けていると共に、前記流入室と前記熱交換室とを連通する部分に前記流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構を設け、
前記環状部材の半径方向外側から前記熱交換室に流入した前記流体の流れ方向を、前記熱交換室の中央側に変換する案内部材が、前記熱交換室に設けられ、
前記案内部材の下流側の前記熱交換室に上面側を前記熱交換器に対向させて配置され、前記案内部材を通過した前記流体の流れを前記熱交換室の外周側に向かう流れに変換する流速調整部材を備え、
前記流速調整部材が、前記案内部材を通過した前記流体が流通する中心孔を有し、前記中心孔の内径が上方に向けて漸次拡大した略逆円錐状とされ、
前記流速調整部材と前記熱交換器との間に形成された流路の半径方向における流路断面積が略等しく設定されていることを特徴とする水中モータ駆動式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夾雑物などが含まれる汚水に好適な水中モータ駆動式ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中モータで駆動され、大気中での連続運転が可能なポンプが、例えば特許文献1に開示されている。このポンプは、乾式水中モータのモータフレームにウォータージャケットを設け、オイルボックスとポンプケーシングとの間に1次冷媒として水を封入した熱交換器を配設し、この熱交換器をウォータージャケットに連通し、冷却水を循環させる冷却用羽根車を熱交換器内に設けて構成されている。
【0003】
2次冷媒となる汚水等の揚液は、ポンプケーシングの吐出流路から羽根車の裏面とポンプケーシングの内壁とによって形成される隙間の外周側から内周側に入り、冷却エレメントの揚液側に設けられた冷却フィン側に導かれて熱交換が行われる。熱交換された揚液は熱交換器の側方から外部に排出される。
この技術によれば、土砂やヘドロ等が含まれる揚液を2次冷媒として使用でき、ウォータージャケット内に土砂やヘドロ等が堆積することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−310088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の水中モータ駆動式ポンプを大小様々な夾雑物が含まれる汚水に適用すると、冷却水として用いる汚水が羽根車の裏面とポンプケーシング内壁との隙間を通過する際に、この隙間に汚水に含まれる夾雑物が噛み込んだり、熱交換器の冷却フィンが夾雑物で閉塞したりすることがあり、水中モータの冷却やポンプの運転に支障が生じるおそれがあるという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、汚水に含まれる夾雑物によって運転に支障が生じることを抑制可能な水中モータ駆動式ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、回転可能に羽根車が収納されたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの上方に設けられた熱交換器と、前記熱交換器上に設置され回転軸に固定された前記羽根車を回転駆動する水中モータとを備え、前記ポンプケーシングが、前記羽根車の表面側に設けられた流体の吸込流路と、前記羽根車の裏面側に設けられ前記吸込流路と連通する流入室とを有し、前記ポンプケーシングと前記熱交換器との間に熱交換室を設けていると共に、前記流入室と前記熱交換室とを連通する部分に前記流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構を設けていることを特徴とする。
【0008】
本発明の水中モータ駆動式ポンプでは、流入室と熱交換室とを連通する部分に流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構を設けているので、流入室から熱交換室へ流体が流通する際に流体に含まれる夾雑物が破砕機構によって破砕され、微細化された夾雑物が熱交換室に吐出される。したがって、羽根車の裏面とポンプケーシングの内壁との隙間に夾雑物が噛み込んだり、熱交換室に露出している熱交換器の冷却フィン等が夾雑物で閉塞したり、夾雑物が回転軸に絡みついたりすることを防止でき、水中モータの冷却やポンプの運転を正常に継続することが可能になる。
【0009】
第2の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、第1の発明において、前記破砕機構が、前記羽根車の裏面に内周側から外周側に向けて延在し配設された複数の裏羽根と、前記羽根車の外径と略同径で前記羽根車の裏面と間隙を設けて前記ポンプケーシングに固定された環状部材と、前記環状部材に設けられ内周側から外周側に向けて延在して前記裏羽根と対向配置された複数の溝部とを備え、前記環状部材が、前記流入室と前記熱交換室とを上下に仕切ると共に、前記環状部材の半径方向外側で、前記流入室と前記熱交換室とが連通していることを特徴とする。
すなわち、この水中モータ駆動式ポンプでは、破砕機構が、複数の裏羽根と、環状部材に設けられ裏羽根と対向配置された複数の溝部とを備えているので、水平投影面上で裏羽根が溝部を通過する際に裏羽根と溝部との協働によって夾雑物の破砕作用を生じさせることができる。
また、環状部材が、流入室と熱交換室とを上下に仕切ると共に、環状部材の半径方向外側で、流入室と熱交換室とが連通しているので、裏羽根の遠心ポンプ作用によって流体が環状部材と羽根車の裏面との間隙を内側から外側に向けて流れ、確実に破砕機構を通過して夾雑物が破砕され、さらに、流体は環状部材の半径方向外側から熱交換室へ旋回流となって吐出される。
【0010】
第3の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、第2の発明において、前記裏羽根が、前記羽根車の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設され、前記裏羽根と前記溝部とが、回転時に前記裏羽根と前記溝部とが水平投影面上において斜めに交差する配列とされていることを特徴とする。
すなわち、この水中モータ駆動式ポンプでは、裏羽根が、羽根車の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設され、裏羽根と溝部とが、回転時に裏羽根と溝部とが水平投影面上において斜めに交差する配列とされているので、裏羽根と溝部とが交差している時間(交差開始から交差終了までの時間)が長くなり、夾雑物を効率的に粉砕することができる。
【0011】
第4の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、第3の発明において、前記裏羽根の全てが、前記溝部のいずれかと水平投影面上において常に交差する配列とされていることを特徴とする。
すなわち、この水中モータ駆動式ポンプでは、裏羽根の全てが、溝部のいずれかと水平投影面上において常に交差する配列とされているので、回転時に常に裏羽根が溝部と交差して夾雑物が素通りする頻度を少なくすることができ、夾雑物の破砕効率を向上させることができる。
【0012】
第5の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記環状部材の半径方向外側から前記熱交換室に流入した前記流体の流れ方向を、前記熱交換室の中央側に変換する案内部材が、前記熱交換室に設けられていることを特徴とする。
すなわち、この水中モータ駆動式ポンプでは、環状部材の半径方向外側から熱交換室に流入した流体の流れ方向を、熱交換室の中央側に変換する案内部材が、熱交換室に設けられているので、案内部材により旋回流の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されて流体が昇圧されることで、案内部材の下流側において圧力損失による流体の流量の減少が抑制され、熱交換器との熱交換効率が低下することを抑制できる。
【0013】
第6の発明に係る水中モータ駆動式ポンプは、第5の発明において、前記案内部材の下流側の前記熱交換室に上面側を前記熱交換器に対向させて配置され、前記案内部材を通過した前記流体の流れを前記熱交換室の外周側に向かう流れに変換する流速調整部材を備え、前記流速調整部材が、前記案内部材を通過した前記流体が流通する中心孔を有し、前記中心孔の内径が上方に向けて漸次拡大した略逆円錐状とされ、前記流速調整部材と前記熱交換器との間に形成された流路の半径方向における流路断面積が略等しく設定されていることを特徴とする。
すなわち、この水中モータ駆動式ポンプでは、流速調整部材の中心孔の内径が上方に向けて漸次拡大した略逆円錐状とされ、流速調整部材と熱交換器との間に形成された流路の半径方向における流路断面積が略等しく設定されているので、前記流路内の流速が均等化されると共に短絡流の発生を防止することができ、熱交換器との熱交換を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の水中モータ駆動式ポンプによれば、流入室と熱交換室とを連通する部分に流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構を設けているので、流入室から熱交換室へ流体が流通する際に流体に含まれる夾雑物を破砕機構によって破砕し、微細化することができる。
したがって、本発明の水中モータ駆動式ポンプでは、夾雑物に起因する運転の支障を防止でき、水中モータの冷却やポンプの運転を正常に継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る水中モータ駆動式ポンプの第1実施形態において、熱交換器から下部を破断した正面図である。
図2】第1実施形態において、要部の拡大断面図である。
図3図1のA−A線矢視断面図である。
図4図1のB−B線矢視断面図である。
図5】本発明に係る水中モータ駆動式ポンプの第2実施形態において、第1実施形態の図3と同様の位置における断面図である。
図6】本発明に係る水中モータ駆動式ポンプの第3実施形態において、熱交換器から下部を破断した正面図である。
図7】第3実施形態において、要部の拡大断面図である。
図8図6のC−C線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における水中モータ駆動式ポンプの第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の水中モータ駆動式ポンプ1は、図1及び図2に示すように、回転可能に羽根車8が収納されたポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の上方に設けられた熱交換器3と、熱交換器3上に設置され回転軸7に固定された羽根車8を回転駆動する水中モータ4とを備えている。
なお、羽根車8には複数の羽根車羽根21、21が配設されている。
【0018】
上記ポンプケーシング2は、羽根車8の表面側に設けられた流体の吸込流路9と、羽根車8の裏面側に設けられ吸込流路9と連通する流入室10とを有している。なお、吸込流路9は、羽根車羽根21、21の入口側先端より上流側の流体流路をいう。
また、ポンプケーシング2と熱交換器3との間に熱交換室6を設けていると共に、流入室10と熱交換室6とを連通する部分に流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構17を設けている。
【0019】
上記破砕機構17は、羽根車8の裏面に内周側から外周側に向けて延在し配設された複数の裏羽根12と、羽根車8の外径と略同径で羽根車8の裏面と間隙を設けてポンプケーシング2に固定された環状部材14と、環状部材14に設けられ内周側から外周側に向けて延在して裏羽根12と対向配置された複数の溝部13とを備えている。
上記環状部材14は、流入室10と熱交換室6とを上下に仕切ると共に、環状部材14の半径方向外側で、流入室10と熱交換室6とが連通している。
【0020】
裏羽根12は、図3に示すように、羽根車8の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設され、裏羽根12と溝部13とが、回転時に裏羽根12と溝部13とが水平投影面上において斜めに交差する配列とされている。
また、図4に示すように、環状部材14の半径方向外側から熱交換室6に流入した流体の流れ方向を、熱交換室6の中央側に変換する複数の案内部材15が、熱交換室6に設けられている。案内部材15は、内周側から外周側へ延在し、水平断面が略直線状とされた板状部材である。これらの案内部材15の外周側端部は、旋回流の進行方向の逆方向に向けて突出した形状とされている。
【0021】
この水中モータ駆動式ポンプ1では、ポンプケーシング2の上方に熱交換器3を備えた水中モータ4が一体的に付設されている。水中モータ4の外周部には冷却ジャケット5が設けられ、熱交換器3との間で1次冷媒の循環が行われて水中モータ4が冷却される。
ポンプケーシング2と熱交換器3との間に熱交換室6が形成され、水中モータ4から熱交換室6を貫通してポンプケーシング2内まで延長された回転軸7の下端に、羽根車8が固定されている。
【0022】
羽根車8の表面はポンプケーシング2の吸込流路9に臨み、羽根車8の裏面には流入室10が形成され、羽根車羽根21の入口側先端より上流側の羽根車8に穿設された連通孔11、11によって流入室10と吸込流路9とが連通されている。
羽根車8の裏面外周側には、板状で水平断面が略直線状の裏羽根12が羽根車8の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設されている。具体的には裏羽根12は、回転方向に対して外周側が内周側より角度αだけ後退して配設されている。裏羽根12の外周側が内周側より後退して配設されているので、裏羽根12による強力な遠心ポンプ作用が生じる。
【0023】
羽根車8の外径とほぼ同径で外周側に複数の長穴状の溝部13が形成された環状部材14が、羽根車8の裏面と平行に配設されている。
環状部材14と羽根車8の裏面との間には適宜な間隙dが設けられ、環状部材14によって流入室10と熱交換室6が上下に仕切られている。
環状部材14は、複数の案内部材15と支持部材16とを介してポンプケーシング2に固定される。
【0024】
環状部材14の溝部13は、長さ方向が羽根車8の回転方向に対して外周側が内周側より角度βだけ後退して形成されている。このため、回転する裏羽根12は、静止している溝部13と斜めに交差し、裏羽根12が溝部13を通過するときに、裏羽根12と溝部13との協働による破砕作用が生じる。したがって、環状部材14と回転する裏羽根12と静止している溝部13とによって破砕機構17が構成され、破砕機構17を介して流入室10と熱交換室6とが連通されている。
【0025】
次に、本実施形態の水中モータ駆動式ポンプ1の運転について説明する。
まず、水中モータ駆動式ポンプ1の運転が開始され水中モータ4の回転軸7に固定された羽根車8が回転すると、ポンプケーシング2の吸込口18から汚水(流体)が吸い込まれ、吸込流路9から吐出流路19を経て外部に排水される。
このとき、汚水の一部は吸込流路9から連通孔11、11を通って流入室10に流入する。同時に、回転する裏羽根12の遠心ポンプ作用によって、流入室10の汚水は環状部材14と羽根車8の裏面との間隙dを、矢印Yで示すように内側から外側に向けて流れ、破砕機構17を通って熱交換室6に旋回流となって吐出される。
【0026】
汚水が破砕機構17を通過する際に、大きな夾雑物は回転する裏羽根12と溝部13とによって破砕され、微細化される。図4に示すように、旋回流となって熱交換室6に吐出された汚水は、案内部材15によって熱交換室6の外周側から中央側に向けた流れに変換されると共に、旋回流の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されて昇圧された流れとなり、支持部材16の中央開口部を通って熱交換室の上部を外周側に向けて流れ、熱交換器3との熱交換が行われる。熱交換された汚水は、流出口20、20から外部に排出される。
【0027】
このように水中モータ駆動式ポンプ1では、流入室10と熱交換室6とを連通する部分に流体中に含まれる夾雑物を破砕する破砕機構17を設けているので、流入室10から熱交換室6へ流体が流通する際に流体に含まれる夾雑物が破砕機構17によって破砕され、微細化された夾雑物が熱交換室6に吐出される。したがって、羽根車8の裏面とポンプケーシング2の内壁との隙間に夾雑物が噛み込んだり、熱交換室6に露出している熱交換器3の冷却フィン等が夾雑物で閉塞したり、夾雑物が回転軸7に絡みついたりすることを防止でき、水中モータ4の冷却やポンプの運転を正常に継続することが可能になる。
【0028】
また、破砕機構17が、複数の裏羽根12と、環状部材14に設けられ裏羽根12と対向配置された複数の溝部13とを備えているので、水平投影面上で裏羽根12が溝部13を通過する際に裏羽根12と溝部13との協働によって夾雑物の破砕作用を生じさせることができる。
また、環状部材14が、流入室10と熱交換室6とを上下に仕切ると共に、環状部材14の半径方向外側で、流入室10と熱交換室6とが連通しているので、裏羽根12の遠心ポンプ作用によって流体が環状部材14と羽根車8の裏面との間隙dを内側から外側に向けて流れ、確実に破砕機構17を通過して夾雑物が破砕され、さらに、流体は環状部材14の半径方向外側から熱交換室6へ旋回流となって吐出される。
【0029】
また、裏羽根12が、羽根車8の回転方向に対して外周側が内周側より後退して配設され、裏羽根12と溝部13とが、回転時に裏羽根12と溝部13とが水平投影面上において斜めに交差する配列とされているので、裏羽根12と溝部13とが交差している時間(交差開始から交差終了までの時間)が長くなり、夾雑物を効率的に粉砕することができる。
【0030】
さらに、環状部材14の半径方向外側から熱交換室6に流入した流体の流れ方向を、熱交換室6の中央側に変換する案内部材15が、熱交換室6に設けられているので、案内部材15により旋回流の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されて流体が昇圧されることで、案内部材15の下流側において圧力損失による流体の流量の減少が抑制され、熱交換器3との熱交換効率が低下することを抑制できる。
【0031】
次に、本発明に係る水中モータ駆動式ポンプの第2及び第3実施形態について、図5から図8を参照して以下に説明する。なお、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、回転時の位置によって裏羽根12と溝部13とが水平投影面上において交差しない位置があるのに対し、第2実施形態の水中モータ駆動式ポンプでは、図5に示すように、環状部材14の溝部25が、羽根車8の回転方向に対して外周側が内周側より前進して形成され、しかも複数の裏羽根26のいずれもが溝部25のいずれかと水平投影面上において常に交差しているように配列されている点である。
【0033】
このように第2実施形態の水中モータ駆動式ポンプでは、破砕機構27において裏羽根12の全てが、溝部13のいずれかと水平投影面上において常に交差する配列とされているので、回転時に常に裏羽根12が溝部13と交差して夾雑物が素通りする頻度を少なくすることができ、夾雑物の破砕効率を向上させることができる。
【0034】
次に、第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、熱交換室6に複数の案内部材15が設けられているのに対し、第3実施形態の水中モータ駆動式ポンプ41では、図6から図8に示すように、熱交換室6に、案内部材30に加えて流速調整部材31が設けられている点である。
【0035】
すなわち、第3実施形態の水中モータ駆動式ポンプ41では、案内部材30の下流側の熱交換室6に上面側を熱交換器3に対向させて配置され、案内部材30を通過した流体の流れを熱交換室6の外周側に向かう流れに変換する流速調整部材31を備えている。
この流速調整部材31は、案内部材30を通過した流体が流通する中心孔31aを有し、中心孔31aの内径が上方に向けて漸次拡大した略逆円錐状とされ、流速調整部材31と熱交換器3との間に形成された流路の半径方向における流路断面積が略等しく設定されている。
【0036】
環状部材14の天面には、複数の案内部材30が配設され、さらに案内部材30の上端面に開口部32が設けられた環状の上板33が配設されている。すなわち、環状部材14と上板33とによって、案内部材30の上下端部が閉塞されている。
案内部材30は、水平断面円弧状に形成された板状部材である。これらの案内部材30は、旋回流の進行方向に向けて凸状の円弧形状とされている。
上板33の開口部32を囲んで筒状部材34の下端が上板33に、筒状部材34の上端が支持部材16にそれぞれ接合され、さらに支持部材16に筒状部材34と連通して流速調整部材31が接合されている。
【0037】
流速調整部材31は、上方に向けて径が拡大する略円錐状で、その拡大面が熱交換器3に対向して配設されている。この流速調整部材31は、上方ほど径が急拡大しており、上述したように、流速調整部材31と熱交換器3との間隙を中央側から外周側に向けて流れる汚水(流体)の半径方向の流路断面積がほぼ等しくなるように形成されている。
【0038】
第3実施形態では、図8に示すように、破砕機構37から旋回流となって熱交換室6に吐出された汚水(流体)は、環状部材14と上板33との間に配設された案内部材30によって旋回流が熱交換室6の外周側から中央側に向けた流れに変換される。この際、旋回流の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されて昇圧された流れとなり、汚水は開口部32から筒状部材34を通って流速調整部材31と熱交換器3との間を熱交換室6の外周側に向けて流れ、汚水と熱交換器3との熱交換が行われる。熱交換された汚水は流出口20、20から外部に排出される。
【0039】
このように第3実施形態の水中モータ駆動式ポンプ41では、流速調整部材31の中心孔31aの内径が上方に向けて漸次拡大した略逆円錐状とされ、流速調整部材31と熱交換器3との間に形成された流路の半径方向における流路断面積が略等しく設定されているので、前記流路内の流速が均等化されると共に短絡流の発生を防止することができ、熱交換器3との熱交換を効率的に行うことができる。
なお、流速調整部材31の拡大面に案内板を設けて、さらに流速を均等化してもよい。
【0040】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、裏羽根と溝部とをいずれも直線状に形成したが、直線状に限られるものではなく、裏羽根や溝部を適宜に湾曲した曲線状で形成しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1,41…水中モータ駆動式ポンプ、2…ポンプケーシング、3…熱交換器、4…水中モータ、6…熱交換室、7…回転軸、8…羽根車、9…吸込流路、10…流入室、12…裏羽根、13…溝部、15,30…案内部材、14…環状部材、17,27,37…破砕機構、31…流速調整部材
図1
図2
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図5
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図7
図8