特許第6456822号(P6456822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456822
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/34 20060101AFI20190110BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20190110BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   C08F4/34
   C08F212/08
   C08F220/04
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-522749(P2015-522749)
(86)(22)【出願日】2014年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2014065069
(87)【国際公開番号】WO2014199913
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-123252(P2013-123252)
(32)【優先日】2013年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 英治
(72)【発明者】
【氏名】高岡 利明
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−070242(JP,A)
【文献】 特開昭56−072009(JP,A)
【文献】 特開2012−063626(JP,A)
【文献】 特開2003−057821(JP,A)
【文献】 特開2009−053652(JP,A)
【文献】 特開昭63−135465(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/136510(WO,A1)
【文献】 特開2010−126726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ビニル化合物の含有割合が30〜80質量%であり、(B)(メタ)アクリル酸グリシジルの含有割合が1〜30質量%であり、(C)(メタ)アクリル酸の含有割合が1〜40質量%である単量体混合物を(D)ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートの存在下、かつ窒素雰囲気下で重合させる工程を有する、共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共重合体の製造方法に関し、詳細には、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、カルボキシ基およびエポキシ基を持つ共重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等の電子材料分野などではパターン形成された膜が使用され、この膜の形成に使用されるレジスト材料の一つとして、光重合反応を利用した感放射線性樹脂組成物が開発されている。感放射線性樹脂組成物は、感度および解像度(以下、現像性ともいう。)に優れることが求められており、例えば特許文献1の感放射線性樹脂組成物が開発されている。
【0003】
この感放射線性樹脂組成物に含有される共重合体は、カルボキシ基を持つ(メタ)アクリル酸由来の構造単位とエポキシ基を持つ(メタ)アクリル酸グリシジル由来の構造単位とを含むので、アルカリ現像液による現像性があり、形成された膜に耐性が得られる。さらに、この共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含むので、感度および現像性に優れている。
しかし、芳香族ビニル化合物を多く含む単量体混合物を共重合させる場合、従来の重合開始剤(以下、単に開始剤ともいう。)を使用して重合反応させると、通常の重合条件では残存単量体が多くなり転化率が低くなるという問題があった。残存単量体を減らすためには、通常、開始剤量を増加させたり、反応温度を上げたり、反応時間を長くしたりする手法が採られる。しかし、それらの場合、単量体中のカルボキシ基とエポキシ基による副反応が起こり易くなり、多分散度(Mw/Mn)の高い共重合体となるので、現像性が悪くなるという問題があった。
すなわち、従来の技術では、残存単量体が少なく、転化率の高い重合反応を行なうことは困難であり、また多分散度の低い共重合体が得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−63626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、カルボキシ基およびエポキシ基を持つ共重合体を製造する方法であって、残存単量体が少なく、転化率の高い重合反応を行なうことができ、また分散度の低い共重合体が得られる、共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、カルボキシ基およびエポキシ基を持つ共重合体を製造する方法において、特定の開始剤を用いて重合反応をさせることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(A)芳香族ビニル化合物の含有割合が30〜80質量%であり、(B)(メタ)アクリル酸グリシジルの含有割合が1〜30質量%であり、(C)(メタ)アクリル酸の含有割合が1〜40質量%である単量体混合物を(D)ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートの存在下、かつ窒素雰囲気下で重合させる工程を有する、共重合体の製造方法である。
本発明の製造方法において開始剤として使用される(D)成分は、付加能力が高いので、未反応の単量体が残りやすい(A)芳香族ビニル化合物の重合反応を促進させることが可能となる。したがって、残存単量体が少なくなり反応効率を向上させることが可能となり、転化率の高い重合反応を行なうことができる。また重合温度を比較的低温にすることが可能であるので、カルボキシ基とエポキシ基との反応を抑制することができ、多分散度の低い共重合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、カルボキシ基およびエポキシ基を持つ共重合体を製造する方法において、残存単量体が少なく、転化率の高い重合反応を行なうことができ、また分散度の低い共重合体を得ることができる。したがって、本発明の製造方法により得られた共重合体を用いることにより、感度および現像性に優れた感放射線性樹脂組成物を得ることができる。
なお、本明細書において感放射線性樹脂組成物における放射線は、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の共重合体の製造方法は、(A)芳香族ビニル化合物、(B)(メタ)アクリル酸グリシジル、および(C)(メタ)アクリル酸を少なくとも含み、さらに任意成分を含有しても良い単量体混合物を、開始剤である(D)ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートの存在下で重合させる工程を有する。
まず、上記(A)〜(D)の各成分について説明する。
なお、本明細書において記号「〜」を用いて規定された数値範囲は「〜」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2〜5」は2以上5以下を表す。
【0010】
<(A)芳香族ビニル化合物>
(A)成分は芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、その中でもスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびヒドロキシスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。なお、(A)成分として2種以上の芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
【0011】
単量体混合物中における(A)成分の含有割合は、30〜80質量%である。好ましくは40〜75質量%であり、45〜70質量%がより好ましい。30質量%より少ない場合には、共重合体を感放射線性樹脂組成物に用いた際に解像度が低下するおそれがある。また80質量%より多い場合には、残存単量体が多くなると共に転化率が下がり、製造効率が低下するおそれがある。
【0012】
<(B)(メタ)アクリル酸グリシジル>
(B)成分は(メタ)アクリル酸グリシジルであり、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられ、工業的に容易に入手可能であることからメタクリル酸グリシジルが好ましい。なお、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルのうち一方または両方を用いることができる。
単量体混合物中における(B)成分の含有割合は、1〜30質量%であり、好ましくは5〜25質量%である。
【0013】
<(C)(メタ)アクリル酸>
(C)成分は(メタ)アクリル酸であり、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。なお、アクリル酸およびメタクリル酸のうち一方または両方を用いることができる。
単量体混合物中における(C)成分の含有割合は、1〜40質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0014】
<(D)ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート>
本発明の製造方法で用いられる開始剤である(D)成分は、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートである。この開始剤は、付加能力が高く、低温活性であるので重合温度を比較的低温にすることが可能である。そのため、(A)芳香族ビニル化合物の重合反応を促進させ、また副反応を抑えて多分散度の低い共重合体が得られる。
【0015】
(D)成分の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。なお、開始剤の投入に際しては、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下などで徐々に添加してもよく、あるいは全量を徐々に添加してもよい。また、単量体とともに開始剤を徐々に添加すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらに残存単量体を低減するために単量体添加後にも開始剤を添加してもよい。
【0016】
<その他の単量体>
本発明の製造方法で用いられる単量体混合物には、上記(A)〜(C)成分以外の他の単量体を1種または2種以上含んでいてもよく、その含有割合は、単量体混合物中において0〜20質量%である。
なお、上記(A)〜(C)成分および任意成分としての他の単量体から構成される単量体混合物の総量は100質量%である。
【0017】
他の単量体としては、上記(A)〜(C)成分以外の単量体であり、かつ共重合が可能である単量体であれば特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などを挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を表す。
【0018】
<重合反応>
上記単量体混合物を開始剤である(D)成分の存在下で重合させるに際しては、通常のラジカル重合を行う方法として知られている方法を採用することができ、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などを採用することができる。例えば、溶液重合においては、単量体および開始剤を含有する溶液を、溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法や、単量体を含有する溶液と開始剤を含有する溶液を各々別に、溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法などを挙げることができる。また開始剤は固体のまま使用しても、溶媒と混合して使用しても良い。
重合反応時には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を用いてもよい。
【0019】
重合反応時には、単量体混合物、開始剤、必要に応じて連鎖移動剤の投入後、熟成を行うことが好ましい。熟成条件としては、開始剤を完全に分解することのできる重合温度、重合時間とするのが好ましい。
【0020】
溶液重合による重合反応に用いられる溶媒としては、使用する単量体を溶解可能な溶剤であれば使用することができ、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル類を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用することができ、また2種以上を混合した混合溶媒として使用することができる。
溶媒量としては、単量体混合物の総量100質量部に対して、例えば、100〜1,000質量部が好ましい。溶媒量がこの範囲のとき、重合体溶液が撹拌しやすく均一な溶液にできるとともに、分子量の調整も行いやすく、単量体が残存しにくい。
【0021】
重合反応後の溶液は、そのまま感放射線性樹脂組成物の調製に使用しても良いし、共重合体を単離するために通常行なわれる操作、例えば再沈殿、溶剤除去などの操作を行って共重合体を単離した後、感放射線性樹脂組成物の調製に使用しても良い。
【0022】
本発明の製造方法によれば、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、カルボキシ基およびエポキシ基を持つ共重合体の重合反応を高い転化率、例えば転化率80%以上で行なうことができる。
また、本発明の製造方法により、多分散度の低い共重合体、例えば、多分散度(Mw/Mn)が3以下の共重合体を得ることができる。
なお、共重合体の転化率は重合体溶液に含まれる単量体量をガスクロマトグラフ(GC)により分析して求めることができ、共重合体の多分散度(Mw/Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。Mwは重量平均分子量を、Mnは数平均分子量をそれぞれ表す。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、各種物性値、測定、および評価は以下の方法に従った。また、実施例および比較例において、質量部は単量体混合物の総量100質量部に対する質量部を表し、質量%は単量体混合物(総量100質量%)中における含有割合を表す。
【0024】
(1)転化率
重合体溶液に含まれる単量体量を下記方法により定量し、転化率を算出した。
重合体溶液3gと内部標準物質のビフェニル0.01gをアセトン35gに溶解させ、分析試料を調製した。試料をガスクロマトグラフ(GC)により下記条件で分析し、内部標準法により定量した。
GC装置:(株)島津製作所製、GC−2014
検出器:FID
インジェクション温度:200℃
検出器温度:250℃
カラム温度:50℃10分保持、毎分10℃昇温、250℃10分保持
カラム:アジレント・テクノロジー(株)製、DB−17(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
そして、原料の物質収支および残存単量体量から単量体の転化率(%)を算出した。
【0025】
(2)重合体の重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、下記条件で求めた。
GPC装置:東ソー(株)製、HLC−8220
カラム:昭和電工(株)製、Shodex KF−805L
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0026】
また実施例中の略号は以下のとおりである。
PGMEA:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
GMA:メタクリル酸グリシジル
MAA:メタクリル酸
EMA:メタクリル酸エチル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
TCP:ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート(商品名:パーロイルTCP、日油(株)製)
V−65:2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)
MSD:α−メチルスチレンダイマー(商品名:ノフマーMSD、日油(株)製)
パーオクタND:1,1,3,3−テトラメチルブチル−パーオキシネオデカネート(日油(株)製:純度70%品)
【0027】
(実施例1)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA637g(200質量部)を導入し、65℃に昇温後、スチレン191.1g(60質量%)、GMA63.7g(20質量%)、MAA63.7g(20質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、TCP44.6g(14質量部)を2時間かけて分割投入した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は84.9%であった。また共重合体のMwは10,000であり、Mw/Mnは1.8であった。
【0028】
(実施例2)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA654g(200質量部)を導入し、65℃に昇温後、スチレン196.1g(60質量%)、GMA65.4g(20質量%)、MAA65.4g(20質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、TCP19.6g(6質量部)を2時間かけて分割投入した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は80.8%であった。また得られた共重合体のMwは50,000であり、Mw/Mnは2.5であった。
【0029】
(実施例3)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA625g(200質量部)を導入し、65℃に昇温後、スチレン187.5g(60質量%)、GMA62.5g(20質量%)、MAA62.5g(20質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、TCP62.5g(20質量部)を2時間かけて分割投入した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は86.6%であった。また得られた共重合体のMwは5,100であり、Mw/Mnは1.7であった。
【0030】
(実施例4)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA637g(200質量部%)を導入し、65℃に昇温後、スチレン191.1g(60質量%)、GMA63.7g(20質量%)、MAA47.8g(15質量%)、EMA15.9g(5質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、TCP44.6g(14質量部)を2時間かけて分割投入した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は85.2%であった。また得られた共重合体のMwは9,800であり、Mw/Mnは1.8であった。
【0031】
(実施例5)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA637g(200質量部)を導入し、65℃に昇温後、スチレン191.1g(60質量%)、GMA63.7g(20質量%)、MAA47.8g(15質量%)、DCPMA15.9g(5質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、TCP44.6g(14質量部)を2時間かけて分割投入した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は84.3%であった。また得られた共重合体のMwは9,800であり、Mw/Mnは1.8であった。
これら実施例で得られた共重合体溶液および共重合体を評価した結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(比較例1)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA627g(193質量部)、MSD3.2g(1質量部)を導入し、70℃に昇温後、スチレン194.8g(60質量%)、GMA32.5g(10質量%)、MAA64.9g(20質量%)、EMA32.5g(10質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、V−65の22.7g(7質量部)をPGMEA22g(7質量部)に溶解した開始剤溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は68.0%であった。また得られた共重合体のMwは11,000であり、Mw/Mnは2.5であった。
【0034】
(比較例2)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA622g(192質量部)、MSD3.2g(1質量部)を導入し、70℃に昇温後、スチレン194.2g(60質量%)、GMA32.4g(10質量%)、MAA64.7g(20質量%)、EMA32.4g(10質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、V−65の25.9g(8質量部)をPGMEA22g(7質量部)に溶解した開始剤溶液を2時間かけて滴下した。終了後2時間熟成した後、さらに追加的にV−65の3.2g(1質量部)をPGMEA3g(1質量部)に溶解した開始剤溶液を滴下し、さらに2時間熟成して共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は81.8%であった。また得られた共重合体のMwは25,000であり、Mw/Mnは3.5であった。
【0035】
(比較例3)
攪拌器、温度計、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、PGMEA637g(200質量部)を導入し、65℃に昇温後、スチレン191.1g(60質量%)、GMA63.7g(20質量%)、MAA63.7g(20質量%)を2時間かけて滴下した。並行して、パーオクタND44.6g(14質量部)を2時間かけて滴下した。滴下終了後2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。重合反応は窒素雰囲気下で行なった。
得られた共重合体溶液を評価したところ、転化率は72.7%であった。また得られた共重合体のMwは9,000であり、Mw/Mnは1.9であった。
これら比較例で得られた共重合体溶液および共重合体を評価した結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表1に示される結果から、本発明の製造法に係る実施例によれば、残存単量体量が少なく、転化率が高い重合反応が行われており、多分散度の低い共重合体が効率よく得られていることが分かる。
【0038】
一方、表2に示される結果から、本発明で用いられる開始剤以外の開始剤を用いた比較例1および3では、残存単量体が多く、重合反応の転化率が低くなることが分かる。また、開始剤を追加して二段階で重合反応を行なった場合(比較例2)、転化率は向上するものの、多分散度の高い共重合体が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製造方法により得られる共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を多く含み、また多分散度(Mw/Mn)が低いので、感放射線性樹脂組成物に含有される共重合体として用いることにより、感度および現像性に優れた感放射線性樹脂組成物を得ることができる。