特許第6456870号(P6456870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456870
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】コンクリートスラリー処理装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/16 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   B28C7/16
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-98678(P2016-98678)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-205913(P2017-205913A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】396000514
【氏名又は名称】モリ技巧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 照雄
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4277057(JP,B1)
【文献】 特許第5638487(JP,B2)
【文献】 特開2009−208278(JP,A)
【文献】 特開2005−205637(JP,A)
【文献】 特開昭51−020213(JP,A)
【文献】 実開昭52−161573(JP,U)
【文献】 特開平09−300171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00− 9/04
B01D 29/00−29/96
B01D 33/00−33/82
B01D 36/00−36/04
B03B 1/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の一側に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、適宜間隔でレーキが装着されたチェーンコンベヤを該水槽の底面部から傾斜面部に亘って巡回動するように配設する一方、該水槽の略々中央に該水槽の長手方向と平行なるように間仕切板を起立状に設けて該水槽を第1域と第2域とに仕切し、該第1域に投入されたコンクリートスラリーが該間仕切板をUターンして該第2域に流れるようにし、複数本のパイプを横架状に段積してなる水切ゲートを前記第2域に設け、該水切ゲートからコンクリートスラリー中の水分が排出されるようにするとともに、前記チェーンコンベヤを駆動して前記レーキを該水槽の底面部から傾斜面部に沿って低速度で移動させることで該水槽の第1域および第2域に沈降した固形分が該レーキによって前記傾斜面部上に掻き揚げられるようにしたことを特徴とする掻揚式セメントスラッジ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コン配送先から戻ってきたコンクリートミキサー車を洗浄した際に、洗浄水とともに排出される泥水状のコンクリートスラリーを適切に処理するためのコンクリートスラリー処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、生コン工場では配送先から帰ってきたコンクリートミキサー車のドラム内に生コン(戻りコンと称される)が残存すると、コンクリートミキサー車を洗浄したときに洗浄水とともに多量のコンクリートスラリー(セメントスラリーともいう)が排出される。
下記特許文献1に示される処理装置は、こうしたコンクリートスラリーを水槽に投入し、砂利,砂等の固形分を該水槽の底面部に沈降させるとともに、チェーンコンベヤを駆動することによって該固形分を掻き揚げる一方、該水槽の一側に複数本の円筒状部材(以下、パイプという)を横架状に段積みしてなる水切ゲートが設けられ、コンクリートスラリー中の水分を各パイプ間の僅かな隙間から流出させ、この水分は洗浄水として再利用し、チェーンコンベヤによって掻き揚げ固形分はセメントの水和反応により固結させることにより路盤材等に再利用できるようにするものである。
また、下記特許文献2に示された処理装置は、上記水切ゲートを構成するパイプを自転させることにより、各パイプ間の隙間が拡大され、各パイプ間が固形分によって目詰まりするのを防止し得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4277057号公報
【特許文献2】特許第5638487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の上記コンクリートスラリー処理装置では、水槽内に投入されたコンクリートスラリーが水切ゲートが設けられている部位へ直に流れてしまうので、固形分が十分に沈降する間がなく、水切ゲートから多量の固形分が排出されてしまうという問題があるとともに、該水切ゲートが頻繁に目詰まりするという問題、および、コンクリートスラリーが投入される度に水槽全体が攪拌されるので固形分が沈降するのが妨害されるという問題がある。
なお、水槽を大きくすることにより、水槽内にコンクリートスラリーが滞留する時間を長くすることが考えられるが、水槽の大きさは工場敷地の広さや製造コストにより制限されることから、十分に大きくはできないという問題がある。
本発明はこのような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明に係るコンクリートスラリー処理装置は、水槽の一側に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、適宜間隔でレーキが装着されたチェーンコンベヤを該水槽の底面部から傾斜面部に亘って巡回動するように配設する一方、該水槽の略々中央に該水槽の長手方向と平行なるように間仕切板を起立状に設けて該水槽を第1域と第2域とに仕切し、該第1域に投入されたコンクリートスラリーが該間仕切板をUターンして該第2域に流れるようにし、複数本のパイプを横架状に段積してなる水切ゲートを前記第2域に設け、該水切ゲートからコンクリートスラリー中の水分が排出されるようにするとともに、前記チェーンコンベヤを駆動して前記レーキを該水槽の底面部から傾斜面部に沿って低速度で移動させることで該水槽の第1域および第2域に沈降した固形分が該レーキによって前記傾斜面部上に掻き揚げられるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
水槽全体が攪拌されるのが防止されるとともに、投入されたコンクリートスラリーは間仕切板をUターンして水槽内を流れるようになることから、水槽がさほど大きくなくてもコンクリートスラリー中の固形分が沈降するに必要な十分な滞留時間が得られる。このため、より多くの固形分が水槽内で沈降し、水分との分離が促進され、水切ゲートからは固形分の少ない上澄水がスムースに排出されるようになるとともに、該水切ゲートの目詰まりが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るコンクリートスラリー処理装置の縦断面図。
図2】本発明に係るコンクリートスラリー処理装置の平面図。
図3図2のA−A線断面図。
図4図2のB−B線断面図。
図5図2のC−C線矢視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図示した処理装置の水槽1は、鋼板製の両側板2,3と後側板4と水平な底面部5とからなる平面長方形状のもので、コンクリートスラリーが投入できるように上面は開放されている。そして、該水槽1の前側に前記底面部5から斜め上方に連なる傾斜面部6が形成される。該傾斜面部6は水平面に対して約30度傾斜しており、該傾斜面部6の両側縁に側壁板7a,7bが形成され、該傾斜面部6の上端部に排出口9が開設される。そして、該水槽1の略々中央に鋼板からなる間仕切板10を該水槽1の長手方向と平行なるように起立状に設けることにより、該水槽1内が第1域1aと第2域1bとに2分されるように仕切する。なお、該間仕切板10は長さが前記傾斜面部6の付近には達しておらず切欠部11が設けられていることから、該第1域1aと第2域1bとは該切欠部11にて連通している。
【0009】
また、適宜間隔でレーキ12が装着されたチェーンコンベヤ13a〜13dを該水槽1の底面部5から前記傾斜面部6に亘って巡回動するように配設する。即ち、前記傾斜面部6の上端部の側壁板7a,7bに軸受14a,14bを設けることにより回転軸15を回転自在に軸支し、該回転軸15にスプロケット16a〜16dを固設し、据付台18上にモータ19とその減速機20を設置し、該減速機20の回転出力軸に固着したスプロケット21と前記回転軸15の一端部に固設されたスプロケット22に伝動チェーン23を巻掛することにより駆動部24を構成し、多数のリンクを連鎖することにより無端状に形成されたチェーンコンベヤ13a〜13dを前記各スプロケット16a〜16dに巻掛するとともに、該水槽1の底面部5と傾斜面部6との境に回転軸25によりガイド輪26a〜26dを回転自在なるように支持し、該ガイド輪26a〜26dの下側に該チェーンコンベヤ13a〜13dを摺接させ、さらに該底面部5の他端部にて図3に示したように前記間仕切板10を貫通する回転軸27を軸受28a,28bにより回転自在に支持し、該回転軸27に固設されたガイド輪29a〜29dに該チェーンコンベヤ13a〜13dの他方部を巻掛する。これにより、前記駆動部24を作動させたとき、該チェーンコンベヤ13a〜13dが該水槽1の底面部5と傾斜面部6に亘って図1の矢印に示した方向に巡回動し、レーキ12が該底面部5から該傾斜面部6に沿って低速度でゆっくり移動する。
【0010】
また、前記第2域1bの一側であって前記切欠部11から離れた部位に、図4図5に示したように、複数本のパイプ30a〜30gを横架状に段積してなる水切ゲート31を設け、該水切ゲート31が該水槽1の第2域1bの一側壁をなすようにしている。該水切ゲート31は、チャンネル部材からなる支柱32a,32bを適宜間隔で樹立し、該支柱32a,32b上に横架柱32cを設けることで門形に形成し、該支柱32a,32bの間にパイプ30a〜30gの両端部を遊嵌することで該各パイプ30a〜30gを上下動可能に支持し、該横架柱32cに止着した棒材33aおよびバネ33bによって押圧部材34を下向きに付勢し、該押圧部材34を最上段のパイプ30aの上面に当接させて該パイプ30a〜30gを弾性的に押し下げ、さらに、該パイプ30aの下に位置するパイプ30b〜30gの外周面にレバー35b〜35gを突設し、前記横架柱32cに支持されたシリンダ36b〜36gの作動杆を該レバー35b〜35gにピンを介して連結し、該シリンダ36b〜36gを伸縮作動させることにより、該各パイプ30b〜30gが自転するようにしている。なお、該パイプ30b〜30gの両端部寄りの外周面にそれぞれクサビ状の突起37を固着し、パイプ30b〜30gを自転させたときに該突起37が該パイプ30a〜30f間に介入することで該各パイプ30a〜30g間の隙間が適宜拡大されるようにしている。また、該水切ゲート31の下部外側に排水ガイド部材38を外方に突出する庇状に形成し、該排水ガイド部材38の外側に排水受樋39を配設している。
【0011】
このように構成したコンクリートスラリー処理装置では、図2に示したように、コンクリートミキサー車40が水槽1の横に前記第1域1aと相対するように停車され、該コンクリートミキサー車40から泥水状のコンクリートスラリーが該第1域1aに投入される。なお、間仕切板10を背高に形成することにより、コンクリートミキサー車40から放出されたコンクリートスラリーが直接第2域1bに入ることのないようにしている。第1域1aに投入されたコンクリートスラリーは、図2に矢印で示したように、第1域1aを間仕切板10に沿って切欠部11の方に流れ、該切欠部11にてUターンして第2域1bに流れ、該第2域1bの終端部に設けられた水切ゲート31に至る。このようにコンクリートスラリーが間仕切板10をUターンして流れることで、コンクリートスラリーが水切ゲート31に到達するまでの時間が長くなる。このため水槽1がさほど大きくなくても、コンクリートスラリー中の砂利,砂等の固形分が沈降するのに必要十分な時間が得られ、該水槽1の底面部5に該固形分41が堆積する。
【0012】
そして、チェーンコンベヤ13a〜13dを駆動し、該底面部5に堆積した固形分41をレーキ12により傾斜面部6に向けて低速度でゆっくり移動させ、該傾斜面部6に該固形分41を掻き揚げる。なお、レーキ12をこのように低速度でゆっくり移動させることで、水槽1内で沈降した固形分41が再び舞い上がるのが防がれるとともに、固形分41が傾斜面部6上をゆっくり上方に移動することで、該固形分41中の水分が該傾斜面部6上を流下し水槽1に戻る。このため水切がよくなり水分割合の少ない固形分41が排出口9より排出される。なお、排出口9より排出された固形分41は、セメントの水和反応により硬い塊状に固まるので、安定廃棄物として処分するか、または、クラッシャーで破砕した後、路盤材などの用途に使用することができる。
【0013】
一方、コンクリートスラリー中の上澄水分は、水切ゲート31に流れ、パイプ30a〜30gの隙間から水槽外の排水受樋39に排出され、排出された水はタンク(図示せず)に一時的に貯留された後、コンクリートミキサー車40を洗浄する際の洗浄水等として再利用される。なお、水切ゲート31は、パイプ30a〜30gが互いに線接触するように段積され、上から押圧部材34によって弾性的に押し下げられていることから、コンクリートスラッジ中の固形分は該隙間を通過することなく堰き止められる一方、水分は該各パイプ30a〜30g間の僅かな隙間から流出する。また、シリンダ36b〜36gを伸縮作動させることによっては、パイプ30b〜30gが自転し、突起37が該各パイプ30a〜30gの間に挟入することで、該各パイプ30a〜30gの間の隙間が適宜拡大されることから、適度にシリンダ36b〜36gを伸縮作動させることにより、該隙間に付着した微砂等の固形分が排出され、目詰まりが解消される。
【0014】
本発明に係るコンクリートスラリー処理装置は、上記のように間仕切板10を設けることにより水槽1内を仕切してなるので、コンクリートスラリー中の固形分をより多く底面部5に沈降させることができる。即ち、水槽1の略々中央に該水槽1の長手方向と平行なるように間仕切板10を起立状に設け、コンクリートミキサー車40等から第1域1aにコンクリートスラリーが投入されるようにしたことにより、コンクリートスラリーが投入された際の該水槽1内の該コンクリートスラリーの速い流動が該間仕切板10に当たって止められることから、投入時に水槽1全体が攪拌されることがないとともに、該コンクリートスラリーは第1域1aから該間仕切板10をUターンして第2域1bに流れ、水切ゲート31に到達するようにしたので、その間により多くの固形分41を水槽1の底面部5に沈降させることができる。このため、水槽1を大きくしなくても固液分離性能を著しく向上させることができ、水切ゲート31から常にスムースに水分が排出され、従来のように水切ゲート31が頻繁に目詰まりすることもなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明に係るコンクリートスラリー処理装置は、生コン工場の他、ヒューム管、電柱パイル、コンクリートブロック等のコンクリート二次製品工場においても、ミキサー,ホッパー,成形型等の設備を洗浄した際に生じるセメントを含んだ排水の処理、および、余剰なコンクリートスラリーを処理するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 水槽
1a 第1域
1b 第2域
5 底面部
6 傾斜面部
9 排出口
10 間仕切板
11 切欠部
12 レーキ
13a〜13d チェーンコンベヤ
24 駆動部
30a〜30g パイプ
31 水切ゲート
40 コンクリートミキサー車
41 固形分
図1
図2
図3
図4
図5