特許第6456871号(P6456871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456871
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】発泡成形品の成形方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20190110BHJP
   B29C 45/50 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   B29C44/00 D
   B29C45/50
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-99777(P2016-99777)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-205942(P2017-205942A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】勝 又 隆 市
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−178379(JP,A)
【文献】 特開2005−144750(JP,A)
【文献】 特公昭50−018028(JP,B1)
【文献】 特開2002−001781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C44/00−44/60
B29C45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル内部のスクリュ前方に、溶融した発泡性の樹脂材料を溜めておくストック領域を設定し、
前記ストック領域に溜められた前記樹脂材料をその温度を制御しながら前記樹脂材料の計量を行い、それまで溜まっていた樹脂材料に加えて計量した樹脂材料を前記ストック領域に溜め、
前記スクリュを前進させ、樹脂材料を金型内に充填し、少なくとも1ショット分のストック量の樹脂材料を前記ストック領域に残し、
射出完了時には前記ストック領域に溜まっている樹脂材料の圧力を制御することを特徴とする発泡成形品の成形方法。
【請求項2】
計量時には、前記ストック領域に溜まっている前記樹脂材料の温度を一定に保持しながら前記樹脂材料の計量を行い、計量完了時には、前記樹脂材料の圧力が低下しないように保持することを特徴とする請求項1に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項3】
射出完了時には、前記ストック領域に溜まっている前記樹脂材料の圧力が低下しないように保持し、次の計量開始まで前記ストック領域に溜まっている樹脂材料の温度を一定に保持することを特徴とする請求項1に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項4】
前記バレルの先端部には、前記ストック領域を囲むように、加熱ヒータを複数配列し、前記加熱ヒータにより前記ストック領域内の樹脂材料を加熱し温度を保持することを特徴とする請求項2または3に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項5】
前記計量完了時には、前記スクリュの先端部に設けられた逆流防止用のチェックリングを前記スクリュの逆回転により閉鎖し、前記ストック領域内の樹脂材料の圧力を保持することを特徴とする請求項2または3に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項6】
前記計量完了時または射出完了時には、前記スクリュを微動前進させ、前記ストック領域内の樹脂材料の圧力を保持することを特徴とする請求項2または3に記載の発泡成形品の成形方法。
【請求項7】
発泡性の樹脂材料が投入されるバレルと、
前記バレル内に収容されるスクリュと、
前記スクリュを回転駆動する回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に前進、後退させる直動駆動部と、を備え、
バレル内部のスクリュ前方には、溶融した発泡性の樹脂材料を溜めておくストック領域が設定され、
前記ストック領域に溜められた樹脂材料の温度を制御する加熱手段と、
前記ストック領域に溜められた樹脂材料の圧力を制御する圧力制御手段と、を有し、
前記ストック領域には、計量完了時には、それまで溜まっていた樹脂材料に加えて計量した樹脂材料を溜め、射出完了時には少なくとも1ショット分の樹脂材料を溜められる、ことを特徴とする発泡成形品の射出装置。
【請求項8】
固定金型と移動金型からなる一対の金型と、
前記一対の金型が取り付けられる型締装置と、
請求項に記載の射出装置と、
を備えたことを特徴とする発泡成形品の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発泡成形品の成形方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機での成形法には、種々の成形法があるが、近年注目されている成形法に発泡成形法がある。発泡成形品では、微細な空隙をもつ発泡セルが無数に形成された組織になるので、成形品の軽量化や断熱性などの特性を付加することができる。
【0003】
最近では、自動車の燃費規制の世界的な強化を背景にして、自動車部品を発泡成形品に幅広く置き換えることで、車体の軽量化を実現するようになってきており、自動車部品の成形に発泡成形を適用することが加速している。
【0004】
発泡成形では、射出装置で樹脂材料の計量と射出が行われる。
計量工程では、バレル内で発泡剤を含む樹脂材料の溶融が行われ、スクリュを回転させながら後退させることによって、溶融樹脂をスクリュ前方に溜める計量が行われる。射出工程では、スクリュが前進して溶融樹脂は金型内のキャビティに充填される。その後、充填した溶融樹脂を発泡させるために、金型の寸開き(コアバック)を行い、キャビティ容積を拡大させる。
【0005】
高品質の発泡成形品を成形するには、成形品の組織を構成する発泡セルが微細でかつ均一になることが必要である。成形品の発泡をコントロールするために、従来から様々な方法が行われている。たとえば、コアバックをするタイミングを調整する方法や、計量された溶融樹脂の加熱バレル内での滞留時間を調整する方法(特許文献1)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−162751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発泡セルの微細均一化には、加熱バレル内での溶融樹脂の温度や圧力が重要な要素になっている。
発泡セルの大きさが不揃いになり品質を低下させる原因には、計量完了後の溶融樹脂の熱量不足や温度の不均一(不安定)が関係している。例えば、成形不良対策のために樹脂温度の設定を低くして成形する場合には、熱量不足によって発泡剤からの発泡ガス発生が抑制され、金型内での均一な発泡性を阻害することがある。
【0008】
また、溶融樹脂を金型に射出する前に、計量された溶融樹脂の一部が減圧によってバレル内で発泡してしまう場合も、発生したガスが均一な発泡を阻害し発泡セルを不均一とさせる原因になる。
【0009】
とりわけ、自動車部品の製造にみられるように、ハイサイクル(短いサイクル)で、しかも成形不良(ヤケ)対策等のために樹脂温度が低く設定される発泡成形では、発泡セルの微細均一化が困難になるケースが多い。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、発泡セルが微細にかつ均一になった発泡成形品を高効率良く成形できるようにする発泡成形品の成形方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明に係る発泡成形品の成形方法は、バレル内部のスクリュ前方に、溶融した発泡性の樹脂材料を溜めておくストック領域を設定し、前記ストック領域に溜められた前記樹脂材料をその温度を制御しながら前記樹脂材料の計量を行い、それまで溜まっていた樹脂材料に加えて計量した樹脂材料を前記ストック領域に溜め、 前記スクリュを前進させ、樹脂材料を金型内に充填し、少なくとも1ショット分のストック量の樹脂材料を前記ストック領域に残し、射出完了時には前記ストック領域に溜まっている樹脂材料の圧力を制御することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る発泡成形品の成形は、発泡性の樹脂材料が投入されるバレルと、
前記バレル内に収容されるスクリュと、前記スクリュを回転駆動する回転駆動部と、
前記スクリュを軸方向に前進、後退させる直動駆動部と、を備え、バレル内部のスクリュ前方には、溶融した発泡性の樹脂材料を溜めておくストック領域が設定され、前記ストック領域に溜められた樹脂材料の温度を制御する加熱手段と、前記ストック領域に溜められた樹脂材料の圧力を制御する圧力制御手段と、を有し、前記ストック領域には、計量完了時には、それまで溜まっていた樹脂材料に加えて計量した樹脂材料を溜め、射出完了時には少なくとも1ショット分の樹脂材料を溜められる、ことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の成形方法を実施するのに使用される射出成形機の概要を示す図である。
図2図1の射出成形機の射出装置が有するバレルの先端側の縦断面を示す図である。
図3図2のバレル内でスクリュ前方にあるストック部に溶融樹脂を溜めた状態を示す図である。
図4】計量工程においてスクリュの位置の変化(図4(a))と、溶融樹脂の圧力の変化(図4(b))を示す図である。
図5】計量工程においてスクリュが後退している間のチェックリングの位置を示す図である。
図6】射出工程においてスクリュの位置の変化(図6(a))と、溶融樹脂の圧力の変化(図6(b))を示す図である。
図7】本発明の成形方法を実施して得た発泡成形品の実施例の断面写真を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による発泡成形品の成形方法および装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機(成形装置)10の構成の概要を示す図である。図1において、参照番号12は射出成形機の射出装置全体を示す。参照番号14は射出成形機の型締装置を示している。
【0015】
射出装置12のバレル15には、スクリュ16が回転自在でかつ軸方向に移動可能に挿入されている。成形材料(樹脂および発泡剤)は、ホッパ17からバレル15内に投入される。
【0016】
射出装置12では、計量用モータ18によりスクリュ16を回転させ、樹脂の溶融と混練をしながら、樹脂をバレル15の前方に溜めることで、計量が行われる。バレル15の前方に溜められた樹脂は、射出用モータ19およびボールねじ機構20によってスクリュ16を前進させることで、ノズル21から固定金型22と移動金型23によって形成されたキャビティに充填される。
【0017】
次に、型締装置14の概要について、図1を参照しながら説明する。
型締装置14の一端側には、固定ダイプレート24が設けられ、他端側には、リンクハウジング25が設置されている。固定ダイプレート24と、リンクハウジング25の間には、移動ダイプレート26が移動可能に設置されている。固定ダイプレート24には固定金型22が取り付けられ、移動ダイプレート26には移動金型23が取り付けられており、固定金型22と移動金型23とによって金型27が構成され、内部にキャビティが形成されている。固定ダイプレート24とリンクハウジング25は、複数の(例えば、4本の)図示しないタイバーによって連結されている。
この実施形態では、金型の開閉動作、型締め動作を行う機構して、公知のトグルリンク機構30が用いられている。
【0018】
次に、図2はバレル15の先端側の縦断面を示す図である。
スクリュ16の先端には、軸部31を介してスクリュチップ32が取り付けられている。軸部31の外側には、溶融樹脂の逆流を防止するチェックリング33が設けられている。スクリュ16の先端にはスペーサリング35が設けられており、射出時にスクリュ16が前進すると、チェックリング33の後端がスペーサリング35に押し付けられて、樹脂通路が閉鎖され、逆流が防止されるようになっている。また、チェックリング33には、スクリュ16の逆回転によっても閉鎖可能な機構を有するチェックリングが用いられている。
【0019】
図2に示されるように、バレル15の内部において、スクリュチップ32の前方に形成される空間は、溶融樹脂が溜められるストック部(ストック領域)34である。本実施形態では、ストック部34には、ストック量として最低限1ショット分、好ましくは複数ショット分の溶融樹脂が溜められた状態で計量工程、射出工程が繰り返される。これについてはさらに後述する。
【0020】
バレル15の先端部外周には、ストック部34内の溶融樹脂を専用に加熱するストック部加熱ヒータ38が、樹脂を溶融するためにバレル15を加熱する加熱ヒータ17とは別に設けられている。
【0021】
通常の加熱ヒータ17は、幅の広い円筒状のヒータである。これに対して、ストック部加熱ヒータ38は、複数のリング状ヒータ39がストック部34の全領域を囲むように配列されたヒータ群から構成されている。また、バレル15の先端部には、ストック部34に溜められた溶融樹脂の温度を検出する熱電対などからなる温度検出器41が複数箇所に配置されている。
【0022】
成形装置の制御装置42は、ストック部34に溜められた溶融樹脂の温度を制御する樹脂温度制御部44を有している。樹脂温度制御部44は、温度検出器41で検出された樹脂温度がフィードバックされ、任意のリング状ヒータ39を加熱して樹脂温度を設定された温度に保つようになっている。
【0023】
また、ストック部34に溜められている溶融樹脂の圧力は、スクリュ16を前進、後退させるボールねじ機構に設けられた圧力検出部45(図1参照)によって検出される。検出された溶融樹脂の圧力は、制御装置42が有する樹脂圧力制御部46にフィードバックされ、設定された圧力になるように射出用モータ19を介してスクリュ16を微動させることができるようになっている。
【0024】
本実施形態による発泡成形品の成形装置は、以上のように構成されるものであり、次に、この成形装置を使用して実施される発泡成形品の成形方法について説明する。
【0025】
ここで、図3は、バレル15内でスクリュ16前方にあるストック部34に溶融樹脂を溜めた状態を示す図である。
従来の成形方法では、計量工程で1ショット分(成形1回分)の溶融樹脂をスクリュ16の前方に溜め、射出工程ですべての溶融樹脂を射出する。
これに対して、本実施形態では、ストック部34には、最低限1ショット分の溶融樹脂があらかじめ溜められた状態で本格的な成形サイクルが開始される。
【0026】
バレル15には、ストック部34内の溶融樹脂を専用に加熱するストック部加熱ヒータ38がストック部34を囲むように配置されているので、ストック部34に溜まっている溶融樹脂の温度は、ストック部加熱ヒータ38の加熱によって、設定されている射出樹脂温度に保持されている。
【0027】
以後、図4図5に示す計量工程、図6に示す射出工程は次のように実施される。
ここで図4は、計量工程においてスクリュ16の位置の変化(図4(a))と、溶融樹脂の圧力の変化(図4(b))を示す図である。
【0028】
図4(a)において、一点鎖線で示すのがスクリュ16の計量開始位置で、実線がスクリュ16の計量完了位置である。
スクリュ16は回転しながら溶融樹脂を前方に送り、ストック部34には溶融樹脂が蓄積されていく。スクリュ16は、溜められた溶融樹脂の圧力によって後退し、その後退量に基づき計量が行われる。
【0029】
図5は、スクリュ16が後退している間のチェックリング33の位置を示す図である。
正回転するスクリュ16によって溶融樹脂が前方に送られるように、チェックリング33の後端とスペーサリング35の間には隙間Sができている。溶融樹脂は、矢印で示されるように、隙間Sからチェックリング33の内側を流れて前方に送られる。この間、樹脂圧力は、あらかじめ設定されている樹脂圧力Pcに維持されるように計量が行われる。
【0030】
その後、スクリュ16が計量完了位置に到達して計量は完了する。計量完了時点で、チェックリング33の後端とスペーサリング35の間には隙間Sが開いたままであると、そこから溶融樹脂が漏れて圧力が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、スクリュ16を逆回転させてチェックリング33で隙間を閉鎖させる。これによって、計量完了時点以後も、ストック部に溜められた溶融樹脂の圧力を保つことができる。
なお、計量完了時には、チェックリング33を閉鎖する際に樹脂圧力が低下する可能性がある。その場合には、スクリュ16をわずかに前進させて制御し、樹脂圧力Pcで一定に保持すればよい。
【0031】
他方、計量工程が行われる間、ストック部34には、それまで溜まっていた分の樹脂に加えて、新たに樹脂が流入してくることなる。計量工程の間も、ストック部加熱ヒータ38による加熱は続き、ストック部34全体として溶融樹脂の温度T1で一定になるように管理される。
なお、成形サイクルでは、以上のような計量工程と並行して成形品の冷却、型開き、成形品の取り出しが行われる。
【0032】
次に、射出工程について、図6を参照して説明する。
図6は、射出工程においてスクリュ16の位置の変化(図6(a))と、溶融樹脂の圧力の変化(図6(b))を示す図である。なお、図6(b)では、図6(a)でのスクリュ16の位置変化の方向に合わせて、横軸の時間は右から左に進むようになっている。
【0033】
図6(a)において、計量完了からスクリュ16が前進し、射出工程が開始される。これによって、ストック部34に溜められている溶融樹脂は金型27内(図2参照)に充填される。スクリュ16が前進している間は、チェックリング33の後端とスペーサリング35の間の隙間を閉鎖しており、溶融樹脂の逆流は防止されている。スクリュ16が1点鎖線で示す位置まで前進すると、1ショット分の溶融樹脂が金型27内に充填され、射出工程は完了する。
このような射出工程におけるストック部34内の樹脂圧力の変化を曲線100で示す。樹脂圧力は上昇を続け、射出圧力は射出完了時点でピークになる。その後、金型27は寸開され、コアバックが行われる。移動金型23がわずかに後退して、樹脂圧力が急激に低下し、充填された樹脂は発泡する。
【0034】
射出完了と同時に、ノズル21に設けられたシャットオフ弁47(図2参照)が閉じるが、それでもストック部34に溜まっている溶融樹脂の圧力は低下する。圧力が下がりすぎると、ストック部34内の溶融樹脂の一部が発泡してしまう可能性がある。
【0035】
そこで、次のようにして、樹脂圧力を保持する。本実施形態では、射出完了時点でスクリュ16を完全に停止せずに、スクリュ16でストック部34の溶融樹脂を押して、発泡を抑制可能なあらかじめ設定した樹脂圧力Piで一定になるように樹脂圧力を保持する。この時、ノズル21にあるシャットオフ弁47は閉じている。こうして、射出工程が完了した以後は、ストック部34に溜まっている溶融樹脂の圧力は一定に保たれ、溶融樹脂の一部が発泡してしまうのを確実に防止することができる。
【0036】
また、射出工程の間およびその後も、ストック部加熱ヒータ38による加熱は続き、ストック部34に溜まっている溶融樹脂の温度はT1一定になるように管理される。
なお、以上のようにストック部34の樹脂圧力が保持されている間、金型では、成形品の冷却、型開き、成形品取り出しが行われる。
【0037】
以上のようにして、成形サイクルで計量、射出を繰り返す間、バレル15前方のストック部34では最低限1ショット分の溶融樹脂が常に溜められているので、温度、圧力とも安定した状態の溶融樹脂が金型27に射出される。
これによって、温度が不均一、あるいは熱量の不足したまま溶融樹脂が金型27に射出されることがなくなり、また、バレル15内で溶融樹脂の一部が発泡することも回避することができる。したがって、金型27内では、良好な条件の下で樹脂を発泡させ、均一かつ微細な発泡セルが形成された高品質の成形品を得ることができる。
【0038】
(実施例)
次に、本発明を実施して得た発泡成形品の実施例を図7に挙げて説明する。
実施例は、ポリプロピレンに発泡剤(炭酸水素ナトリウム)を3.5重量%添加したものを材料として、肉厚(1.8→2.7mm)の書類ケースを成形したものである。
【0039】
成形条件は、次の通りである。
射出速度 160[mm/s]
成形サイクル 35 [s]
発泡倍率 1.5倍
射出成形機 東芝機械製 EC350SX-17A(スクリュφ60)
図7には、ストック部の樹脂温度を200℃、220℃、240℃の各温度条件で成形した成形品の断面の写真が示されている。
なお、比較のために、同じ温度条件で従来方法(ストック部に溜めずに成形する方法)により成形したものを比較例として挙げている。
また、成形品について、サーモグラフィーを用いて温度分布を測定した結果も合わせて示す。
【0040】
以上のような実施例と比較例を対比すると、実施例ではいずれもセルが微細かつ均一で発泡状態の良好な成形品が得られたのに対して、比較例では、樹脂温度が低いと中割れの発生がみられた。このことから、本発明は、低い樹脂温度での発泡成形より有利であることが確認された。
【0041】
また、成形品の温度分布についても、同じ温度で温度分布のバラツキが少なくなっていることが確認され、このことが良好な発泡状態に寄与していると考えられる。
【符号の説明】
【0042】
10…射出成形機、12…射出装置、14…型締装置、15…バレル、16…スクリュ、17…ホッパ、18…計量用モータ、19…射出用モータ、21…ノズル、22…固定金型、23…移動金型、30…トグルリンク機構、32…スクリュチップ、33…チェックリング、34…ストック部、38…ストック部加熱ヒータ、39…リング状ヒータ、42…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7