(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第四の混合物をタンジェンシャルフローろ過、選択的沈殿、吸着ろ過、吸着クロマトグラフィー、非吸着クロマトグラフィーまたはその組合せに供することにより精製して、前記抗体−マイタンシノイド複合体を前記遊離のマイタンシノイドおよび前記反応副生成物から精製する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の工程。
前記反応停止試薬が、4−マレイミド酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、N−エチルマレイミド、ヨードアセトアミドおよびヨードアセトアミドプロピオン酸からなる群より選択される、請求項12に記載の工程。
前記抗体が、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、CNTO95、huDS6、リツキシマブ、Her2に結合する抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合する抗体、CD27Lに結合する抗体、EGFRvIIIに結合する抗体、Criptoに結合する抗体、CD138に結合する抗体、EphA2に結合する抗体、インテグリン標的抗体、CD37に結合する抗体、葉酸に結合する抗体、Her3に結合する抗体およびインスリン様成長因子I受容体(IGFIR)に結合する抗体からなる群より選択される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の工程。
前記二官能性架橋試薬が、N−スクシンイミジルエステル部分、N−スルホスクシンイミジルエステル部分、マレイミド系部分またはハロアセチル系部分を含む、請求項1〜226のいずれか1項に記載の工程。
前記二官能性架橋試薬が、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)2−スルホブタノアート(スルホ−SPDB)、N−スクシンイミジル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシラート(SMCC)、PEG−mal、スルホ−MalおよびCX1−1からなる群より選択される、請求項27に記載の工程。
前記段階(a)の溶液が、HEPPSO(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン−1,4−ビス−(2−ヒドロキシ−プロパン−スルホン酸)無水物)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、HEPPS(EPPS)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)およびその組合せからなる群より選択される緩衝剤を含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の工程。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を調製する1段階の工程を提供する。この工程は、細胞結合物質(例えば、抗体)を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む第一の混合物を形成し、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む第一の混合物を、pHが約4〜約9の溶液中でリンカーを含む二官能性架橋試薬と接触させて、細胞結合物質がリンカーを介して細胞毒性物質と化学的に結合している細胞結合物質−細胞毒性物質複合体と、遊離の細胞毒性物質と、反応副生成物とを含む第二の混合物を得ることを含む。次いで、第二の混合物を精製に供して、精製された細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を得る。
【0009】
一実施形態では、接触は、細胞結合物質を準備し、次いで細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む第一の混合物を形成し、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む第一の混合物を二官能性架橋試薬と接触させることにより行われる。例えば、一実施形態では、細胞結合物質を反応容器中に準備し、この反応容器に細胞毒性物質を加え(これにより細胞結合物質と接触させ)、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物に二官能性架橋試薬を加える(これにより細胞結合物質と細胞毒性物質と含む混合物を接触させる)。一実施形態では、細胞結合物質を反応容器中に準備し、細胞結合物質を反応容器に加えた直後に細胞毒性物質を同容器に加える。別の実施形態では、細胞結合物質を反応容器中に準備し、細胞結合物質を反応容器中に準備した一定時間後に(例えば、細胞結合物質をスペースに提供した約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約1日以上後に)細胞毒性物質を同容器に加える。細胞毒性物質は急速に(すなわち、約5分、約10分など短時間のうちに)加えても、(ポンプなどを用いて)徐々に加えてもよい。
【0010】
次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を、細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させた直後に、または細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させてからしばらく後の時点(例えば、約5分〜約8時間またはそれ以上後)で、二官能性架橋試薬と接触させることができる。例えば、一実施形態では、細胞結合物質を含む反応容器に細胞毒性物質を加えた直後に、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物に二官能性架橋試薬を加える。あるいは、細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させた約5分、約10分、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間またはそれ以上後に、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を二官能性架橋試薬と接触させてもよい。
【0011】
別の実施形態では、細胞毒性物質および二官能性物質を複数のサイクル(例えば、1、2、3、4、5サイクルまたはそれ以上)で加える。例えば、本発明は、a)細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む第一の混合物を形成し、次いで、第一の混合物を、pHが約4〜約9の溶液中でリンカーを含む二官能性架橋試薬と接触させて、細胞結合物質がリンカーを介して細胞毒性物質と化学的に結合している細胞結合物質−細胞毒性物質複合体と、遊離の細胞毒性物質と、反応副生成物とを含む第二の混合物を得る段階と、b)第二の混合物を細胞毒性物質と接触させて第三の混合物を形成し、次いで、第三の混合物を約4〜約9のpHで二官能性架橋試薬と接触させて、第四の混合物を得る段階と、c)第四の混合物を精製して、精製された細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を得る段階とを含む工程を提供する。一実施形態では、段階b)を段階a)の一定時間後(例えば、約1時間、約2時間、約3時間またはそれ以上後)に行う。別の実施形態では、段階c)を行う前に段階b)を複数回(例えば、1、2、3、4回またはそれ以上)繰り返してもよい。追加の段階b)は最初の段階b)の一定時間後(例えば、約1時間、約2時間、約3時間または後)に行ってもよい。
【0012】
別の実施形態では、二官能性架橋試薬を細胞毒性物質の添加が完了する前に加える。例えば、一実施形態では、細胞毒性物質を一定時間にわたって(例えば、約5分、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間またはそれ以上にわたって)継続的に細胞結合物質に加えて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を形成する。細胞毒性物質の添加が完了する前に、二官能性架橋試薬を細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物に加えるが、ただし、細胞毒性物質は常に二官能性架橋試薬よりも過剰モルの状態にある。一実施形態では、二官能性架橋試薬を一定時間にわたって(例えば、約5分、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間またはそれ以上にわたって)継続的に加える。
【0013】
細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を二官能性架橋試薬と接触させた後、反応を約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間またはそれ以上(例えば、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間または約48時間)進行させる。
【0014】
細胞結合物質を細胞毒性物質と、次いで二官能性架橋試薬と接触させること(すなわち、反応段階)をpHが約4〜約9(例えば、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5または約9)の溶液中で行う。一実施形態では、反応段階をpHが約6以下(例えば、約4〜約6、約4〜約5.5または約4.5〜約5.5)の溶液中で行う。
【0015】
別の実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬とpHが約6以上(例えば、約6〜約9、約6〜約7、約7〜約9、約7〜約8.5、約7.5〜約8.5、約7.5〜約8.0、約8.0〜約9.0または約8.5〜約9.0)の溶液中で接触させることを含む。例えば、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質および二官能性架橋試薬とpHが約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9または約9.0の溶液中で接触させることを含む。特定の実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質および二官能性架橋試薬とpHが約7.8(例えば、pHが7.6〜8.0またはpHが7.7〜7.9)の溶液中で接触させることを含む。
【0016】
本発明の工程は、1段階の反応(すなわち、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させること)を当該技術分野で公知の任意の適切な温度で実施することを含む。例えば、1段階の反応を約20℃以下(例えば、約−10℃(ただし、溶液は、例えば、細胞毒性物質および二官能性架橋試薬を溶解するのに使用する有機溶媒が存在することにより凍結が防止されている)〜約20℃、約0℃〜約18℃、約4℃〜約16℃)、室温(例えば、約20℃〜約30℃または約20℃〜約25℃)または高温(例えば、約30℃〜約37℃)で行い得る。一実施形態では、細胞結合物質を細胞毒性物質および二官能性架橋試薬と接触させることを約16℃〜約24℃の温度(例えば、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃または約25℃)で行う。
【0017】
別の実施形態では、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させることを約15℃以下の温度(例えば、約−10℃〜約15℃または約0℃〜約15℃)で行う。この点に関して、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と約15℃、約14℃、約13℃、約12℃、約11℃、約10℃、約9℃、約8℃、約7℃、約6℃、約5℃、約4℃、約3℃、約2℃、約1℃、約0℃、約−1℃、約−2℃、約−3℃、約−4℃、約−5℃、約−6℃、約−7℃、約−8℃、約−9℃または約−10℃の温度で接触させることを含み、ただし、溶液は、例えば、二官能性架橋試薬を溶解するのに使用する有機溶媒(1つまたは複数)の存在により凍結が防止されている。一実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と約−10℃〜約15℃、約0℃〜約15℃、約0℃〜約10℃、約0℃〜約5℃、約5℃〜約15℃、約10℃〜約15℃または約5℃〜約10℃の温度で接触させることを含む。別の実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と約10℃の温度(例えば、8℃〜12℃の温度または9℃〜11℃の温度)で接触させることを含む。
【0018】
一実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質を高pH(例えば、約7以上)の溶液中、低温(例えば、約15℃以下)で細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させることを含む。例えば、一実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質をpHが約7.5の溶液中、約15℃の温度で、pHが約7.8の溶液中、約10℃の温度で、pH約8.2の溶液中、約0℃の温度で、またはpH約8.5の溶液中、約0℃の温度で細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させることを含む。別の実施形態では、本発明の工程は、細胞結合物質をpHが7.0〜8.5(例えば、pHが7.5〜8.0)の溶液中、5℃〜15℃の温度で細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させることを含む。
【0019】
一実施形態では、本発明の工程は、任意の未反応の細胞毒性物質および/または未反応の二官能性架橋試薬の反応を停止させる反応停止段階をさらに含む。細胞結合物質−細胞毒性物質の精製前に反応停止段階を実施する。例えば、本発明の工程は、(a)細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を形成し、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物をpHが約4〜約9の溶液中でリンカーを含む二官能性架橋試薬と接触させて、(i)細胞結合物質がリンカーを介して細胞毒性物質と化学的に結合している細胞結合物質−細胞毒性物質複合体と、(ii)遊離の細胞毒性物質と、(iii)反応副生成物とを含む混合物を得る段階と、(b)段階(a)で調製された混合物の反応を停止させて、任意の未反応の細胞毒性物質および/または未反応の二官能性架橋試薬の反応を停止させる段階と、(c)混合物を精製して、精製された細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を得る段階とを含む。
【0020】
一実施形態では、混合物を反応停止試薬と接触させることにより混合物の反応を停止させる。本明細書で使用される「反応停止試薬」は、遊離の細胞毒性物質および/または二官能性架橋試薬と反応する試薬を指す。
【0021】
一実施形態では、マレイミドまたはハロアセトアミド反応停止試薬、例えば4−マレイミド酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、N−エチルマレイミド、ヨードアセトアミドまたはヨードアセトアミドプロピオン酸などを用いて、細胞毒性物質中の任意の未反応の基(チオールなど)の反応を停止させることができる。反応停止段階は、細胞毒性物質、特に未反応のチオール基(DM1など)を有する細胞毒性物質の二量体化を防ぐのに役立つ。二量体化した細胞毒性物質は除去するのが困難な場合がある。また反応停止段階は、天然の抗体ジスルフィド基との任意の不必要なチオール−ジスルフィド交換反応を最小限に抑えるものでもある。極性のある荷電チオール反応停止試薬(4−マレイミド酪酸または3−マレイミドプロピオン酸など)による反応停止の際には、過剰な未反応の細胞毒性物質が、精製段階で共有結合した複合体から容易に分離することが可能な極性のある荷電水溶性付加物に変換される。このほか非極性および中性のチオール反応停止試薬を使用することができる。
【0022】
一実施形態では、混合物を未反応の二官能性架橋試薬と反応する反応停止試薬と接触させることにより混合物の反応を停止させる。例えば、任意の未反応の二官能性架橋試薬の反応を停止させるために、混合物に求核剤を加えることができる。好ましくは、求核剤は、求核剤を含むアミノ基、例えばリジン、タウリンおよびヒドロキシルアミンなどである。
【0023】
好適な実施形態では、混合物を反応停止試薬と接触させる前に、反応(すなわち、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させること)を完了まで進行させる。この点について、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を二官能性架橋試薬と接触させた約1時間〜約48時間後(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間後または約25時間〜約48時間後)に反応停止試薬を混合物に加える。
【0024】
本発明の工程は、任意選択で、反応段階(すなわち、細胞結合物質を細胞毒性物質および二官能性架橋試薬と接触させること)にスクロースを加えて、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体の溶解度および回収率を増加させることを含み得る。望ましくは、スクロースを約0.1%(w/v)〜約20%(w/v)(例えば、約0.1%(w/v)、1%(w/v)、5%(w/v)、10%(w/v)、15%(w/v)または20%(w/v))の濃度で添加する。好ましくは、スクロースを約1%(w/v)〜約10%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約1%(w/v)、約1.5%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、約4%(w/v)、約5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、約10%(w/v)または約11%(w/v))の濃度で添加する。さらに、反応段階は緩衝剤の添加も含み得る。当該技術分野で公知の任意の適切な緩衝剤を使用することができる。適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤およびリン酸緩衝剤が挙げられる。一実施形態では、緩衝剤は、HEPPSO(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン−1,4−ビス−(2−ヒドロキシ−プロパン−スルホン酸)無水物)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、HEPPS(EPPS)(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)およびその組合せからなる群より選択される。
【0025】
反応段階後、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を精製段階に供する。この点について、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を、膜に基づくタンジェンシャルフローろ過工程であるタンジェンシャルフローろ過(TFF)、非吸着クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、吸着ろ過、選択的沈殿または任意の他の適切な精製工程、およびその組合せを用いて、混合物の他の成分(例えば、遊離の細胞毒性物質および反応副生成物)から精製することができる。本発明の一実施形態では、単一の精製段階(例えば、TFF)を用いて細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を精製する。好ましくは、単一の精製段階(例えば、TFF)を用いて複合体を精製し適切な製剤にする。本発明の別の実施形態では、連続する2つの精製段階を用いて細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を精製する。例えば、最初に選択的沈殿、吸着ろ過、吸着クロマトグラフィーまたは非吸着クロマトグラフィーにより複合体を精製し、次いでTFFにより精製する。当業者は、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体の精製により、細胞毒性物質と化学的に結合した細胞結合物質を含む安定な複合体の単離が可能であることを理解するであろう。
【0026】
Pellicon型システム(Millipore、Billerica、MA)、Sartocon Cassetteシステム(Sartorius AG、Edgewood、NY)およびCentrasette型システム(Pall Corp.、East Hills、NY)を含めた任意の適切なTFFシステムを精製に使用し得る。
【0027】
任意の適切な吸着クロマトグラフィー樹脂を精製に使用し得る。好適な吸着クロマトグラフィー樹脂としては、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(hydrophobic charge induction chromatography)(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよびその組合せが挙げられる。適切なヒドロキシアパタイト樹脂の例としては、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT Type IおよびType II、Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)、HA Ultrogelヒドロキシアパタイト(Pall Corp.、East Hills、NY)およびセラミックフルオロアパタイト(CFT Type IおよびType II、Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。適切なHCIC樹脂の例としては、MEP Hypercel樹脂(Pall Corp.、East Hills、NY)が挙げられる。適切なHIC樹脂の例としては、ブチル−Sepharose、ヘキシル−Sepharose、フェニル−SepharoseおよびオクチルSepharose樹脂(すべてGE Healthcare社(Piscataway、NJ)製)ならびにMacro−prepメチルおよびMacro−Prep t−ブチル樹脂(Biorad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。適切なイオン交換樹脂の例としては、SP−Sepharose、CM−SepharoseおよびQ−Sepharose樹脂(すべてGE Healthcare社(Piscataway、NJ)製)ならびにUnosphere S樹脂(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。適切な混合モードイオン交換体としては、Bakerbond ABx樹脂(JT Baker、Phillipsburg NJ)が挙げられる。適切なIMAC樹脂の例としては、Chelating Sepharose樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)およびProfinity IMAC樹脂(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。適切な色素リガンド樹脂としては、Blue Sepharose樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)およびAffi−gel Blue樹脂(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)が挙げられる。適切なアフィニティー樹脂としては、細胞結合物質が抗体である場合には、プロテインA Sepharose樹脂(例えば、MabSelect、GE Healthcare、Piscataway、NJ)が、また細胞結合物質が適切なレクチン結合部位を有する場合には、レクチンアフィニティー樹脂、例えばLentil Lectin Sepharose樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)が挙げられる。あるいは、細胞結合物質に特異的な抗体を用いてもよい。このような抗体を、例えばSepharose 4 Fast Flow樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)固定化することができる。適切な逆相樹脂としては、C4、C8およびC18樹脂(Grace Vydac、Hesperia、CA)が挙げられる。
【0028】
任意の適切な非吸着クロマトグラフィー樹脂を精製に使用し得る。適切な非吸着クロマトグラフィー樹脂の例としては、特に限定されないが、SEPHADEX(商標)G−25、G−50、G−100、SEPHACRYL(商標)樹脂(例えば、S−200およびS−300)、SUPERDEX(商標)樹脂(例えば、SUPERDEX(商標)75およびSUPERDEX(商標)200)、BIO−GEL(登録商標)樹脂(例えば、P−6、P−10、P−30、P−60およびP−100)その他の当業者に公知の樹脂が挙げられる。
【0029】
一実施形態では、本発明の工程は、不安定に結合したリンカーを細胞結合物質から解離させる保持段階をさらに含む。保持段階は、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体の精製前(例えば、反応段階の後、反応段階と反応停止段階の間または反応停止段階の後)に混合物を保持することを含む。例えば、本発明の工程は、(a)細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を形成し、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物をpHが約4〜約9の溶液中で、リンカーを与える二官能性架橋試薬と接触させて、(i)細胞結合物質がリンカーを介して細胞毒性物質と化学的に結合している細胞結合物質−細胞毒性物質複合体と、(ii)遊離の細胞毒性物質と、(iii)反応副生成物とを含む混合物を得ることと、(b)段階(a)で調製された混合物を保持して、不安定に結合したリンカーを細胞結合物質から解離させることと、(c)混合物を精製して、精製された細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を得ることとを含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明の工程は、(a)細胞結合物質を細胞毒性物質と接触させて、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を形成し、次いで、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物をpHが約4〜約9の溶液中で、リンカーを与える二官能性架橋試薬と接触させて、(i)細胞結合物質がリンカーを介して細胞毒性物質と化学的に結合している細胞結合物質−細胞毒性物質複合体と、(ii)遊離の細胞毒性物質と、(iii)反応副生成物とを含む混合物を得ることと、(b)段階(a)で調製された混合物の反応を停止させて、任意の未反応の細胞毒性物質および/または未反応の二官能性架橋試薬の反応を停止させることと、(c)段階(b)で調製された混合物を保持して、不安定に結合したリンカーを細胞結合物質から解離させることと、(d)混合物を精製して、精製された細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を得ることとを含む。
【0031】
あるいは、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体の精製後に保持段階を実施し、次いで、さらなる精製段階を実施してもよい。
【0032】
好適な実施形態では、保持段階の前に反応(すなわち、細胞結合物質を細胞毒性物質、次いで二官能性架橋試薬と接触させること)を完了まで進行させる。この点について、細胞結合物質と細胞毒性物質とを含む混合物を二官能性架橋試薬と接触させた約1時間〜約48時間後(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間後または約24時間〜約48時間後)に保持段階を実施することができる。
【0033】
保持段階は、溶液を適切な時間の間(例えば、約1時間〜約1週間、約1時間〜約24時間、約1時間〜約8時間または約1時間〜約4時間)、適切な温度(例えば、約0℃〜約37℃)に維持して、安定に結合したリンカーを細胞結合物質から実質的に解離させずに、不安定に結合したリンカーを細胞結合物質から解離させることを含む。一実施形態では、保持段階は、溶液を約20℃以下(例えば、約0℃〜約18℃、約4℃〜約16℃)、室温(例えば、約20℃〜約30℃または約20℃〜約25℃)または高温(例えば、約30℃〜約37℃)に維持することを含む。一実施形態では、保持段階は、溶液を約16℃〜約24℃の温度(例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃または約25℃)に維持することを含む。別の実施形態では、保持段階は、溶液を約2℃〜約8℃の温度(例えば、約0℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃または約10℃)に維持することを含む。別の実施形態では、保持段階は、溶液を約37℃の温度(例えば、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃または約40℃)に維持することを含む。
【0034】
保持段階の持続時間は、保持段階を実施する温度およびpHによって決まる。例えば、保持段階を高温で実施することにより保持段階の持続時間を実質的に短くすることができ、最高温度は細胞結合物質−細胞毒性物質複合体の安定性によって制限される。保持段階は、溶液を約1時間〜約1日(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間または約24時間)、約10時間〜約24時間、約12時間〜約24時間、約14時間〜約24時間、約16時間〜約24時間、約18時間〜約24時間、約20時間〜約24時間、約5時間〜約1週間、約20時間〜約1週間、約12時間〜約1週間(例えば、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日または約7日)または約1日〜約1週間維持することを含み得る。
【0035】
一実施形態では、保持段階は、溶液を少なくとも約12時間〜最大1週間の間、約2℃〜約8℃の温度に維持することを含む。別の実施形態では、保持段階は、溶液を一晩(例えば、約12〜約24時間、好ましくは約20時間)、約2℃〜約8℃の温度に維持することを含む。
【0036】
保持段階のpH値は、好ましくは約4〜約10である。一実施形態では、保持段階のpH値は、約4以上約6未満(例えば、4〜5.9)または約5以上約6未満(例えば、5〜5.9)である。別の実施形態では、保持段階のpH値は約6〜約10の範囲(例えば、約6.5〜約9、約6〜約8)にある。例えば、保持段階のpH値は約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5または約10であり得る。
【0037】
特定の実施形態では、保持段階は、混合物を25℃、約6〜7.5のpHで約12時間〜約1週間インキュベートすること、混合物を4℃、約4.5〜5.9のpHで約5時間〜約5日間インキュベートすること、または混合物を25℃、約4.5〜5.9のpHで約5時間〜約1日間インキュベートすることを含み得る。
【0038】
本発明は、細胞毒性物質と化学的に結合した細胞結合物質を含む安定な複合体の組成物を調製する工程を提供し、ここでは、組成物は不安定な複合体を実質的に含まない。この点に関して、本発明は、実質的に純度および安定性の高い細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を調製する工程を提供する。このような組成物は複合体の純度および安定性が高いため、疾患の治療に使用することができる。マイタンシノイドなどの細胞毒性物質と化学的に結合した抗体などの細胞結合物質を含む組成物は、例えば、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,374,762号に記載されている。本発明の一態様では、実質的に純度の高い細胞結合物質−細胞毒性物質複合体には、次のような特徴が1つ以上ある:(a)複合体種の約90%超(例えば、約91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%)、好ましくは約95%超が単量体である、(b)複合体調製物中の未コンジュゲートリンカーのレベルが約10%未満(例えば、約9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下または0%)である(総リンカーに対して)、(c)複合体種の10%未満(例えば、約9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下または0%)が架橋されている、(d)複合体調製物中の遊離の細胞毒性物質レベルが約2%未満(例えば、約1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下または0%)(総細胞毒性物質に対するmol/mol)であるおよび/または(e)保管時(例えば、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約1か月後、約2か月後、約3か月後、約4か月後、約5か月後、約6か月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後または約5年後)に遊離の細胞毒性物質レベルの実質的な増加がみられない。遊離の細胞毒性物質レベルの「実質的な増加」は、特定の保管期間(例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約1年、約2年、約3年、約4年または約5年)の後に遊離の細胞毒性物質レベルの増加が約0.1%未満、約0.2%未満、約0.3%未満、約0.4%未満、約0.5%未満、約0.6%未満、約0.7%未満、約0.8%未満、約0.9%未満、約1.0%未満、約1.1%未満、約1.2%未満、約1.3%未満、約1.4%未満、約1.5%未満、約1.6%未満、約1.7%未満、約1.8%未満、約1.9%未満、約2.0%未満、約2.2%未満、約2.5%未満、約2.7%未満、約3.0%未満、約3.2%未満、約3.5%未満、約3.7%未満または約4.0%未満であることを意味する。
【0039】
本明細書で使用される「未コンジュゲートリンカー」という用語は、二官能性架橋試薬と共有結合し、二官能性架橋試薬のリンカーを介して細胞毒性物質と共有結合していない細胞結合物質を指す(すなわち、「未コンジュゲートリンカー」は、CBA−L(CBAは細胞結合物質を表し、Lは二官能性架橋試薬を表す)で表すことができる。これに対し、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体は、CBA−L−D(Dは細胞毒性物質を表す)で表すことができる)。
【0040】
一実施形態では、細胞結合物質−細胞毒性物質複合体中の細胞毒性物質と細胞結合物質の平均モル比は約1〜約10、約2〜約7、約3〜約5、約2.5〜約4.5(例えば、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5)、約3.0〜約4.0、約3.2〜約4.2または約4.5〜5.5(例えば、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4または約5.5)である。
【0041】
本発明は、細胞毒性物質と化学的に結合した細胞結合物質を含む安定な複合体の組成物を調製することにより効率的な工程を提供する。一実施形態では、従来の細胞結合物質と細胞毒性物質の複合体を調製する工程に比べて、複合体の細胞毒性物質と細胞結合物質の平均モル比を同じにするのに必要な細胞毒性物質の量が少ない。
【0042】
細胞結合物質は、細胞、通常好ましくは動物細胞(例えば、ヒト細胞)と結合する任意の適切な物質であり得る。細胞結合物質は、好ましくはペプチドまたはポリペプチドである。適切な細胞結合物質としては、例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体およびそのフラグメント)、インターフェロン(例えば、α、β、ガンマ)、リンホカイン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、ホルモン(例えば、インスリン、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)、アンドロゲンおよびエストロゲンなどのステロイドホルモン)、増殖因子およびコロニー刺激因子、例えばEGF、TGF−α、FGF、VEGF、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess,Immunology Today 5:155−158(1984))など、栄養素輸送分子(例えば、トランスフェリン)、ビタミン(例えば、葉酸塩)ならびに細胞表面の標的分子と特異的に結合する他の任意の物質または分子が挙げられる。
【0043】
細胞結合物質が抗体である場合、抗体は抗原と結合し、抗原はポリペプチドまたはグリコトープであり、また膜貫通型分子(例えば、受容体)または増殖因子などのリガンドであり得る。抗原の例としては、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含めた成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;vmc因子、第IX因子、組織因子(TF)およびフォン・ヴィルブランド因子などの凝固因子;タンパク質Cなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;ウロキナーゼまたはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−αおよび−β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted(活性化に応じて調節、通常T細胞により発現・分泌される));ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β−ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA−4などの細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5もしくはNT−6)などの神経栄養因子またはNGF−βなどの神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGFおよびbFGFなどの線維芽細胞増殖因子;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5を含めたTGF−βなど;インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質、EpCAM、GD3、FLT3、PSMA、PSCA、MUC1、MUC16、STEAP、CEA、TENB2、EphA受容体、EphB受容体、葉酸受容体、FOLR1、メソテリン、クリプト、α
vβ
6、インテグリン、VEGF、VEGFR、EGFR、トランスフェリン受容体、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4、IRTA5;CDタンパク質、例えばCD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD59、CD70、CD79、CD80.CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、CD152など、または米国特許出願公開第2008/0171040号または米国特許出願公開第2008/0305044号に開示され、その内容全体が参照により組み込まれる、1つ以上の腫瘍関連抗原もしくは細胞表面受容体と結合する抗体;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形態形成タンパク質(BMP);インターフェロン−α、−βおよび−γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えばHIVエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAMなどのインテグリン;HER2、HER3またはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;エンドグリン、c−Met、IGF1R、前立腺抗原、例えばPCA3、PSA、PSGR、NGEP、PSMA、PSCA、TMEFF2およびSTEAP1など;LGR5、B7H4ならびに任意の上記ポリペプチドのフラグメントなどの分子が挙げられる。
【0044】
さらに、骨髄性細胞と結合するGM−CSFを急性骨髄性白血病由来の罹患細胞に対する細胞結合物質として使用することができる。活性化T細胞と結合するIL−2を移植片拒絶反応の予防、移植片対宿主病の治療および予防ならびに急性T細胞白血病の治療に使用することができる。メラノサイトと結合するMSHを、黒色腫に対する抗体と同様に黒色腫の治療に使用することができる。葉酸を使用して、卵巣腫瘍その他の腫瘍で発現される葉酸受容体を標的にすることができる。上皮成長因子を用いて、肺癌および頭頸部癌などの扁平上皮癌を標的にすることができる。ソマトスタチンを用いて、神経芽腫およびその他のタイプの腫瘍を標的にすることができる。
【0045】
エストロゲン(またはエストロゲン類似物質)またはアンドロゲン(またはアンドロゲン類似物質)を細胞結合物質として、それぞれ乳癌および精巣癌を成功裏に標的とすることができる。
【0046】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、細胞表面の抗原と結合することができる任意の免疫グロブリン、任意の免疫グロブリンフラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)
2、dsFv、sFv、ミニボディ、ダイアボディ、トライボディ、テトラボディ(Parham,J.Immunol.131:2895−2902(1983);Springら,J.Immunol.113:470−478(1974);Nisonoffら,Arch.Biochem.Biophys.89:230−244(1960),Kimら,Mol,Cancer Ther.,7:2486−2497(2008),Carter,Nature Revs.,6:343−357(2006))など、または免疫グロブリンキメラ(例えば、相補性決定領域(CDR)を含むもの)を指す。任意の適切な抗体を細胞結合物質として使用することができる。当業者は、標的とする細胞集団によって適切な抗体の選択が決まるということを理解するであろう。この点について、特定の細胞集団(通常好ましくは、罹患細胞集団)で選択的に発現される細胞表面分子(すなわち、抗原)の種類および数によって、本発明の組成物で使用する適切な抗体の選択が決まる。細胞表面の発現プロファイルは腫瘍細胞型を含めた多種多様な細胞型に関して既知であり、未知のものがあれば、日常的な分子生物学技術および組織化学技術を用いてこれを決定することができる。
【0047】
抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよいが、最も好ましくはモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「ポリクローナル」抗体は、通常は免疫化された動物の血清中に含まれる抗体分子の不均一な集団を指す。「モノクローナル」抗体は、特定の抗原に特異的な抗体分子の均一な集団を指す。モノクローナル抗体は通常、単一クローンのBリンパ球(「B細胞」)により産生される。モノクローナル抗体は、標準的なハイブリドーマ技術を含めた当業者に公知の各種技術を用いて入手し得る(例えば、KohlerおよびMilstein,Eur.J.Immunol.,5:511−519(1976),HarlowおよびLane(編),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)ならびにC.A.Janewayら(編),Immunobiology,5版,Garland Publishing,New York,NY(2001)を参照)。簡潔に述べれば、モノクローナル抗体作製のためのハイブリドーマ法では通常、任意の適切な動物、通常好ましくはマウスに抗原(すなわち、「免疫原」)を注射する。次いでこの動物を屠殺し、その脾臓から単離したB細胞をヒト骨髄腫細胞と融合する。in vitroで無限に増殖し、所望の特異性をもつ高力価の抗体を常時分泌するハイブリッド細胞(すなわち、「ハイブリドーマ」)ができる。当該技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて、所望の特異性をもつ抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定することができる。このような方法としては、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット分析およびラジオイムノアッセイが挙げられる。ハイブリドーマの集団をスクリーニングして、それぞれが抗原に対する単一の抗体種を分泌する個々のクローンを単離する。各ハイブリドーマは単一のB細胞との融合に由来するクローンであるため、それが産生する抗体分子はすべて、その抗原結合部位およびアイソタイプを含めた構造が同一である。またモノクローナル抗体を、EBV−ハイブリドーマ技術(例えば、HaskardおよびArcher,J.Immunol.Methods,74(2):361−67(1984)ならびにRoderら,Methods Enzymol.,121:140−67(1986)を参照)、バクテリオファージベクター発現システム(例えば、Huseら,Science,246:1275−81(1989)を参照)またはFabおよびscFv(一本鎖可変領域)などの抗体フラグメントを含むファージディスプレイライブラリー(例えば、米国特許第5,885,793号および同第5,969,108号ならびに国際公開第92/01047号および同第99/06587号を参照)を含めた他の適切な技術を用いて作製してもよい。
【0048】
モノクローナル抗体は、任意の適切な動物から単離することも任意の適切な動物で作製することもできるが、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスまたはヒト、最も好ましくはヒトで作製する。マウスで抗体を作製する方法は当業者に公知であり、本明細書に記載されている。ヒト抗体に関して、適当な抗原を接種した、または適当な抗原で免疫化したヒト対象からポリクローナル抗体を単離することができることを当業者は理解するであろう。あるいは、既知の技術をマウスなどの非ヒト動物でのヒト抗体作製に適合させることにより、ヒト抗体を作製することができる(例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号および同第5,714,352号ならびに米国特許出願公開第2002/0197266A1号を参照)。
【0049】
ヒト抗体、特にヒトモノクローナル抗体はヒトに対する治療適用に理想的な選択であるが、一般にマウスモノクローナル抗体より作製するのが難しい。しかし、マウスモノクローナル抗体をヒトに投与すると即時に宿主抗体反応が誘導されて、抗体−細胞毒性物質複合体の治療能または診断能が低下し得る。このような合併症を回避するために、モノクローナル抗体がヒト免疫系により「異物」として認識されないことが好ましい。
【0050】
この目的のために、ファージディスプレイを用いて抗体を作製することができる。この点について、標準的な分子生物学技術および組換えDNA技術を用いて、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーを作製することができる(例えば、Sambrookら,(編),Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001)を参照)。所望の特異性をもつ可変領域をコードするファージを所望の抗原との特異的結合に関して選択し、選択された可変ドメインを含む完全ヒト抗体を構成する。構成された抗体をコードする核酸配列をハイブリドーマ作製に使用される骨髄腫細胞などの適切な細胞系に導入すると、モノクローナル抗体の特徴を有するヒト抗体がその細胞により分泌される(例えば、Janewayら,上記,Huseら,上記および米国特許第6,265,150号を参照)。あるいは、特定のヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるマウスからモノクローナル抗体を作製することができる。このような方法は当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号および同第5,569,825号ならびにJanewayら(上記)に記載されている。
【0051】
最も好ましくは、抗体はヒト化抗体である。本明細書で使用される「ヒト化」抗体とは、マウスモノクローナル抗体の抗原結合ループを形成している相補性決定領域(CDR)をヒト抗体分子のフレームワークに移植した抗体のことである。マウス抗体のフレームワークとヒト抗体のフレームワークが類似していることから、この方法により、抗原性がヒト抗体と同一であるが、CDR配列が由来するマウスモノクローナル抗体と同じ抗原と結合するモノクローナル抗体が作製されることが当該技術分野において一般に認められている。ヒト化抗体を作製する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、Janewayら(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号および同第5,693,761号、欧州特許第0239400B1号ならびに英国特許第2188638号に詳細に記載されている。また、米国特許第5,639,641号およびPedersenら,J.Mol.Biol.,235:959−973(1994)に記載されている抗体リサーフィシング(resurfacing)技術を用いてヒト化抗体を作製してもよい。本発明の組成物の複合体で使用する抗体は、最も好ましくはヒト化モノクローナル抗体であるが、上記のようなヒトモノクローナル抗体およびマウスモノクローナル抗体も本発明の範囲内にある。
【0052】
また、少なくとも1つの抗原結合部位があり、標的細胞の表面に存在する少なくとも1つの抗原または受容体を認識してこれと結合する抗体フラグメントも本発明の範囲内にある。この点に関して、インタクト抗体分子のタンパク質分解による切断により、さまざまな抗原を認識してこれと結合する能力を保持する様々な抗体フラグメントを作製することができる。例えば、抗体分子をプロテアーゼであるパパインで限定消化すると、通常3つのフラグメントが生じ、このうち2つは同一のものであり、親抗体分子の抗原結合活性を保持しているためFabフラグメントと呼ばれる。酵素ペプシンで抗体分子を切断すると、通常2つの抗体フラグメントが生じ、このうちの一方には抗体分子の両方の抗原結合アームがあり、F(ab’)
2フラグメントと呼ばれる。F(ab’)
2フラグメントをジチオスレイトールまたはメルカプトエチルアミンで還元すると、Fab’フラグメントと呼ばれるフラグメントが生じる。一本鎖可変領域フラグメント(sFv)の抗体フラグメントは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインと連結した抗体重鎖のVドメインを含む短縮されたFabフラグメントからなるものであり、日常的な組換えDNA技術を用いてこれを作製することができる(例えば、Janewayら,上記を参照)。同様に、組換えDNA技術によりジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)を調製することができる(例えば、Reiterら,Protein Engineering,7:697−704(1994)を参照)。しかし、本発明に関連する抗体フラグメントは、上で例示したタイプの抗体フラグメントに限定されるものではない。所望の細胞表面受容体または抗原を認識しこれと結合する任意の適切な抗体フラグメントを用いることができる。抗体フラグメントについては、例えば、Parham,J.Immunol.,131:2895−2902(1983),Springら,J.Immunol.,113:470−478(1974)およびNisonoffら,Arch.Biochem.Biophys.,89:230−244(1960)にさらに記載されている。当該技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降および競合阻害アッセイなどを用いて、抗体−抗原結合をアッセイすることができる(例えば、Janewayら,上記および米国特許出願公開第2002/0197266A1号を参照)。
【0053】
さらに、抗体はキメラ抗体またはその抗原結合フラグメントであってもよい。「キメラ」は、少なくとも2つの異なる種から得られるまたはそれに由来する少なくとも2つの免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域とマウス免疫グロブリン可変領域を組み合わせたものなどの2つの異なる免疫グロブリン)を含む、抗体またはそのフラグメントを意味する。また抗体は、ドメイン抗体(dAb)またはその抗原結合フラグメント、例えば、ラクダ抗体(例えば、Desmyterら,Nature Struct.Biol.,3:752,(1996)を参照)または例えば新規な抗原受容体(IgNAR)などのサメ抗体(例えば、Greenbergら,Nature,374:168(1995)およびStanfieldら,Science,305:1770−1773(2004)を参照)などであってもよい。
【0054】
任意の適切な抗体を本発明との関連で使用することができる。例えば、モノクローナル抗体J5は、急性リンパ芽球性白血病抗原(CALLA)に特異的なマウスIgG2a抗体であり(Ritzら,Nature,283:583−585(1980))、CALLAを発現する細胞(例えば、急性リンパ芽球性白血病細胞)を標的とするのに使用することができる。モノクローナル抗体MY9は、CD33抗原と特異的に結合するマウスIgG1抗体であり(Griffinら,Leukemia Res.,8:521(1984))、CD33を発現する細胞(例えば、急性骨髄性白血病(AML)細胞)を標的とするのに使用することができる。
【0055】
同様に、モノクローナル抗体の抗B4(B4とも呼ばれる)はB細胞上のCD19抗原と結合するマウスIgG1抗体であり(Nadlerら,J.Immunol.,131:244−250(1983))、CD19を発現するB細胞または罹患細胞(例えば、非ホジキンリンパ腫細胞および慢性リンパ芽球性白血病細胞)を標的とするのに使用することができる。N901は、小細胞肺腫瘍を含めた神経内分泌起源の細胞上に存在するCD56(神経細胞接着分子)抗原と結合するマウスモノクローナル抗体であり、薬物を神経内分泌起源の細胞に対して標的化する複合体で使用することができる。J5、MY9およびB4抗体は、複合体の一部として使用する前にリサーフィス(resurfaced)するかヒト化するのが好ましい。抗体のリサーフィシング(resurfacing)またはヒト化は、例えば、Roguskaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:969−73(1994)に記載されている。
【0056】
さらに、モノクローナル抗体C242はCanAg抗原と結合し(例えば、米国特許第5,552,293号を参照)、複合体を結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌および胃癌などのCanAg発現腫瘍に対して標的化するのに使用することができる。HuC242はヒト化型のモノクローナル抗体C242である(例えば、米国特許第5,552,293号を参照)。HuC242を産生するハイブリドーマはECACC識別番号90012601で寄託されている。HuC242は、CDR移植法(例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号および同第5,693,762号を参照)またはリサーフィシング(resurfacing)技術(例えば、米国特許第5,639,641号を参照)を用いて調製することができる。HuC242は、CanAg抗原を発現する腫瘍細胞、例えば結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌および胃癌細胞などに対して複合体を標的化するのに使用することができる。
【0057】
卵巣癌および前立腺癌細胞を標的とするために、複合体中の細胞結合物質として抗MUC1抗体を使用することができる。抗MUC1抗体としては、例えば、抗HMFG−2(例えば、Taylor−Papadimitriouら,Int.J.Cancer,28:17−21(1981)を参照)、hCTM01(例えば、van Hofら,Cancer Res.,56:5179−5185(1996)を参照)およびDS6が挙げられる。また細胞結合物質としてJ591などの抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)を使用することにより、前立腺癌細胞を複合体の標的とすることができる(例えば、Liuら,Cancer Res.,57:3629−3634(1997)を参照)。さらに、細胞結合物質として抗Her2抗体、例えばトラスツズマブを使用することにより、乳癌、前立腺癌および卵巣癌などのHer2抗原を発現する癌細胞を複合体の標的とすることができる。抗EGFR抗体を使用することにより、上皮成長因子受容体(EGFR)を発現する細胞およびそのIII型欠損変異株EGFRvIIIなどの変異体を複合体の標的とすることができる。抗EGFR抗体は国際出願PCT/US11/058385号および同PCT/US11/058378号に記載されている。抗EGFRvIII抗体は、米国特許第7,736,644号および同第7,628,986号ならびに米国特許出願公開第2010/0111979号、同第2009/0240038号、同第2009/0175887号、同第2009/0156790号および同第2009/0155282号に記載されている。また米国特許第7,982,024号に記載されているようなインスリン様成長因子受容体と結合する抗IGF−IR抗体も複合体に使用することができる。またCD27L、Cripto、CD138、CD38、EphA2、インテグリン、CD37、葉酸塩、CD20、PSGR、NGEP、PSCA、TMEFF2、STEAP1、エンドグリンおよびHer3と結合する抗体も複合体に使用することができる。
【0058】
一実施形態では、抗体は、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブ)、ビバツズマブ、シブロツズマブ、リツキシマブ、huDS6、国際公開第2010/124797号に記載されている抗メソテリン抗体(MF−Tなど)、米国特許出願公開第2010/0093980号に記載されている抗cripto抗体(huB3F6など)、米国特許出願公開第2007/0183971号に記載されている抗CD138抗体(huB−B4など)、国際出願PCT/US11/058385号および同PCT/US11/058378号に記載されている抗EGFR抗体(EGFR−7など)、米国特許第7,736,644号および同第7,628,986号ならびに米国特許出願公開第2010/0111979号および同第2009/0240038号、同第2009/0175887号、同第2009/0156790号および同第2009/0155282号に記載されている抗EGFRvIII抗体、国際公開第2011/039721号および同第2011/039724号に記載されているヒト化EphA2抗体(2H11R35R74など);国際公開第2008/047242号に記載されている抗CD38抗体(hu38SB19など)、国際公開第2011/106528号および米国特許出願公開第2012/0009181号に記載されている抗葉酸抗体(例えば、huMov19);米国特許第5,958,872号および同第6,596,743号および同第7,982,024号に記載されている抗IGF1R抗体;米国特許出願公開第2011/0256153号に記載されている抗CD37抗体(例えば、huCD37−3);米国特許出願公開第2006/0127407号に記載されている抗インテグリンα
vβ
6抗体(例えば、CNTO95);ならびに国際公開第2012/019024号に記載されている抗Her3抗体からなる群より選択される。
【0059】
特に好適な抗体は、本明細書に記載のヒト化モノクローナル抗体である。その例としては、特に限定されないが、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、ヒト化モノクローナル抗Her2抗体(例えば、トラスツズマブ)、ビバツズマブ、シブロツズマブ、CNTO95、huDS6およびリツキシマブが挙げられる(例えば、米国特許第5,639,641号および同第5,665,357号、米国特許仮出願第60/424,332号(米国特許第7,557,189号に関連する)、国際(PCT)公開第02/16401号、Pedersenら,上記,Roguskaら,上記,Liuら,上記,Nadlerら,上記,Colomerら,Cancer Invest.,19:49−56(2001),Heiderら,Eur.J.Cancer,31A:2385−2391(1995),Weltら,J.Clin.Oncol.,12:1193−1203(1994)およびMaloneyら,Blood,90:2188−2195(1997)を参照)。その他のヒト化モノクローナル抗体は当該技術分野で公知であり、本発明に関連して使用することができる。
【0060】
一実施形態では、細胞結合物質は、ヒト葉酸受容体1と特異的に結合するヒト化抗葉酸抗体またはその抗原結合フラグメントであり、ここでは、抗体は、(a)GYFMN(配列番号1)を含む重鎖CDR1、RIHPYDGDTFYNQXaa
1FXaa
2Xaa
3(配列番号2)を含む重鎖CDR2およびYDGSRAMDY(配列番号3)を含む重鎖CDR3と、(b)KASQSVSFAGTSLMH(配列番号4)を含む軽鎖CDR1、RASNLEA(配列番号5)を含む軽鎖CDR2およびQQSREYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3とを含み、式中、Xaa
1はK、Q、HおよびRから選択され、Xaa
2はQ、H、NおよびRから選択され、Xaa
3はG、E、T、S、AおよびVから選択される。好ましくは、重鎖CDR2配列はRIHPYDGDTFYNQKFQG(配列番号7)を含む。
【0061】
別の実施形態では、抗葉酸抗体は、ヒト葉酸受容体1と特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントであり、アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号8)
を有する重鎖を含む。
【0062】
別の実施形態では、抗葉酸抗体は、2010年4月7日にATCCに寄託され、ATCC寄託番号がPTA−10772およびPTA−10773または10774であるプラスミドDNAによりコードされる、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0063】
別の実施形態では、抗葉酸抗体は、
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号9)
と少なくとも約90%、95%、99%または100%同一である重鎖可変ドメインと、DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLNISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号10);または
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLTISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号11)と少なくとも約90%、95%、99%または100%同一である軽鎖可変ドメインとを含む、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0064】
細胞結合物質は抗体であることが好ましいが、細胞結合物質は非抗体分子であってもよい。適切な非抗体分子としては、例えば、インターフェロン(例えば、α−、β−またはγ−インターフェロン)、リンホカイン(例えば、インターロイキン2(IL−2)、IL−3、IL−4またはIL−6)、ホルモン(例えば、インスリン)、増殖因子(例えば、EGF、TGF−α、FGFおよびVEGF)、コロニー刺激因子(例えば、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(例えば、Burgess,Immunology Today,5:155−158(1984)を参照)、ソマトスタチンおよびトランスフェリン(例えば、O’Keefeら,J.Biol.Chem.,260:932−937(1985)を参照)が挙げられる。例えば、GM−CSFは骨髄性細胞と結合し、急性骨髄性白血病細胞を標的とする細胞結合物質として使用することができる。さらに、IL−2は活性化T細胞と結合し、移植片拒絶反応の予防、移植片対宿主病の治療および予防ならびに急性T細胞白血病の治療に使用することができる。上皮成長因子(EGF)は肺癌および頭頸部癌などの扁平上皮癌を標的とするのに使用することができる。ソマトスタチンは神経芽腫細胞その他の腫瘍細胞型を標的とするのに使用することができる。
【0065】
複合体は任意の適切な細胞毒性物質を含み得る。本明細書で使用される「細胞毒性物質」は、細胞の死をもたらす、細胞死を誘導する、または細胞生存能を低下させる任意の化合物を指す。適切な細胞毒性物質としては、例えば、マイタンシノイドおよびコンジュゲート可能なアンサミトシン(例えば、2011年11月3日に出願された国際出願PCT/US11/59131号を参照)、タキソイド、CC−1065およびCC−1065類似物質ならびにドラスタチンおよびドラスタチン類似物質が挙げられる。本発明の好適な実施形態では、細胞毒性物質は、マイタンシノールおよびマイタンシノール類似物質を含めたマイタンシノイドである。マイタンシノイドは微小管形成を阻害し、哺乳動物細胞に対して毒性の強い化合物である。適切なマイタンシノール類似物質の例としては、修飾された芳香環を有するものおよび他の位置に修飾を有するものが挙げられる。このようなマイタンシノイドは、例えば、米国特許第4,256,746号、同第4,294,757号、同第4,307,016号、同第4,313,946号、同第4,315,929号、同第4,322,348号、同第4,331,598号、同第4,361,650号、同第4,362,663号、同第4,364,866号、同第4,424,219号、同第4,371,533号、同第4,450,254号、同第5,475,092号、同第5,585,499号、同第5,846,545号および同第6,333,410号に記載されている。
【0066】
修飾された芳香環を有するマイタンシノール類似物質の例としては、(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2のLAH還元により調製される)、(2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号および同第4,307,016号)(ストレプトマイセス(Streptomyces)もしくはアクチノマイセス(Actinomyces)を用いる脱メチル化またはLAHを用いる脱塩素により調製される)および(3)C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いるアシル化により調製される)が挙げられる。
【0067】
芳香環以外の位置の修飾を有するマイタンシノール類似物質の例としては、(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(マイタンシノールとH
2SまたはP
2S
5との反応により調製される)、(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2OR)(米国特許第4,331,598号)、(3)C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH
2OHまたはCH
2OAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア(Nocardia)から調製される)、(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトマイセス(Streptomyces)によるマイタンシノールの変換により調製される)、(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号および同第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフローラ(Trewia nudiflora)から単離される)、(6)C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号および同第4,322,348号)(ストレプトマイセス(Streptomyces)によるマイタンシノールの脱メチル化により調製される)および(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される)が挙げられる。
【0068】
本発明の好適な実施形態では、複合体は、N
2’−デアセチル−N
2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシンとしても知られるチオール含有マイタンシノイドDM1を細胞毒性物質として用いるものである。DM1の構造は式(I):
【0071】
本発明の別の好適な実施形態では、複合体は、N
2’−デアセチル−N
2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシンとしても知られるチオール含有マイタンシノイドDM4を細胞毒性物質として用いるものである。DM4の構造は式(II):
【0074】
例えば硫黄原子を有する炭素原子上にモノ−またはジ−アルキル置換を有するチオールおよびジスルフィド含有マイタンシノイドを含めた、他のマイタンシノイドを本発明との関連で使用し得る。特に好適なものは、C−3位に(a)C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチル官能基と、(b)ヒンダードスルフィドリル基を有するアシル基を有するアシル化アミノ酸側鎖であって、チオール官能基を有するアシル基の炭素原子が1つまたは2つの置換基を有し、前記置換基がCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、さらに、置換基の1つがHであってよく、アシル基が、カルボニル官能基と硫黄原子との間に少なくとも炭素原子3個の直鎖長を有するアシル化アミノ酸側鎖とを有する、マイタンシノイドである。
【0075】
本発明との関連で使用されるほかのマイタンシノイドとしては、式(III):
【0077】
により表される化合物が挙げられ、上式中、
Y’は(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
o(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し、式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、R
2はHであってもよく,
A、B、Dは、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12は、それぞれ独立してH、CH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立してゼロまたは1〜5の整数であり、ただし、l、m、n、o、p、q、r、sおよびtのうちの少なくとも2つは同時にゼロになることがなく、
ZはH、SRまたはCORであり、式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニルまたは単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0078】
式(III)の好適な実施形態としては、(a)R
1がHであり、R
2がメチルであり、ZがHである、(b)R
1およびR
2がメチルであり、ZがHである、(c)R
1がHであり、R
2がメチルであり、Zが−SCH
3である、ならびに(d)R
1およびR
2がメチルであり、Zが−SCH
3である、式(III)の化合物が挙げられる。
【0079】
また、このようなほかのマイタンシノイドとしては、式(IV−L)、(IV−D)または(IV−D,L):
【0081】
により表される化合物も挙げられ、上式中、
Yは(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し、式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、R
2はHであってもよく、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立してH、CH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnはゼロであってもよく、
Zは、H、SRまたはCORであり、式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキルもしくはアルケニルまたは単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシまたはC−20デスメチルに側鎖を有するマイタンシノイドを表す。
【0082】
式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の好適な実施形態としては、(a)R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、ZがHである、(b)R
1およびR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8がそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、ZがHである、(c)R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCH
3である、または(d)R
1およびR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8がそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCH
3である、式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の化合物が挙げられる。
【0083】
好ましくは、細胞毒性物質は式(IV−L)により表される。
【0084】
また、ほかの好適なマイタンシノイドとしては、式(V):
【0086】
により表される化合物も挙げられ、上式中、
Yは(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し、式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、R
2はHであってもよく、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立してH、CH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnはゼロであってもよく、
Zは、H、SRまたはCORであり、式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニルまたは単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0087】
式(V)の好適な実施形態としては、(a)R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHであり;lおよびmがそれぞれ1であり;nが0であり;ZがHである、(b)R
1およびR
2がメチルであり;R
5、R
6、R
7、R
8がそれぞれHであり、lおよびmが1であり;nが0であり;ZがHである、(c)R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7およびR
8がそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCH
3である、または(d)R
1およびR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8がそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCH
3である、式(V)の化合物が挙げられる。
【0088】
さらなる好適なマイタンシノイドとしては、式(VI−L)、(VI−D)または(VI−D,L):
【0090】
により表される化合物が挙げられ、上式中、
Y
2は(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表し、式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、R
2はHであってもよく、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立してH、CH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖環状アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnはゼロであってもよく、
Z
2は、SRまたはCORであり、式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
Mayは、マイタンシノイドの大環状構造である。
【0091】
ほかの好適なマイタンシノイドとしては、式(VII):
【0093】
により表される化合物が挙げられ、上式中、
Y
2’は(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
o(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表し、式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してCH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖分岐もしくはアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、さらにR
2はHであってもよく、
A、BおよびDは、それぞれ独立して3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12は、それぞれ独立してH、CH
3、C
2H
5、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニルまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立してゼロまたは1〜5の整数であり、ただし、l、m、n、o、p、q、r、sおよびtのうちの少なくとも2つは同時にゼロになることがなく、
Z
2は、SRまたは−CORであり、式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐もしくは環状のアルキルもしくはアルケニルまたは単純もしくは置換アリールまたは複素環芳香族またはヘテロシクロアルキルラジカルである。
【0094】
式(VII)の好適な実施形態としては、R
1がHであり、R
2がメチルである式(VII)の化合物が挙げられる。
【0095】
マイタンシノイドのほかに、複合体に使用する細胞毒性物質は、タキサンまたはその誘導体であってもよい。タキサンは、ともに癌治療で広く用いられている細胞毒性天然産物であるパクリタキセル(Taxol(登録商標))および半合成誘導体のドセタキセル(Taxotere(登録商標))を含む化合物のファミリーである。タキサンは、チューブリンの脱重合を阻害して細胞死をもたらす有糸分裂紡錘体毒である。ドセタキセルおよびパクリタキセルは癌治療に有用であるが、正常細胞に対して非特異的な毒性があるため、その抗腫瘍活性は制限される。さらに、パクリタキセルおよびドセタキセルのような化合物自体が、細胞結合物質の複合体に使用できるほど十分に強力なものではない。
【0096】
細胞毒性複合体の調製に使用するのに好適なタキサンは、式(VIII):
【0099】
タキサンを抗体などの細胞結合物質にコンジュゲートする方法とともに本発明との関連で使用することができるタキサンを合成する方法は、米国特許第5,416,064号、同第5,475,092号、同第6,340,701号、同第6,372,738号、同第6,436,931号、同第6,596,757号、同第6,706,708号、同第6,716,821および同第7,390,898号に詳細に記載されている。
【0100】
また細胞毒性物質は、CC−1065またはその誘導体であってもよい。CC−1065は、ストレプトマイセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離される強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065はin vitroで、ドキソルビシン、メトトレキサートおよびビンクリスチンなどのよく使用される抗癌剤より約1000倍以上強力である(Bhuyanら,Cancer Res.,42:3532−3537(1982))。CC−1065およびその類似物質は、米国特許第5,585,499号、同第5,846,545号、同第6,340,701号および同第6,372,738号に開示されている。CC−1065の細胞傷害効力は、そのアルキル化活性およびDNA結合またはDNAインターカレート活性と関係があるとされている。この2つの活性は分子の別々の部分に存在する。この点に関して、アルキル化活性はシクロプロパピロロインドール(CPI)サブユニット内にあり、DNA結合活性はCC−1065の2つのピロロインドールサブユニット内に存在する。
【0101】
数種類のCC−1065類似物質が当該技術分野で公知であり、複合体の細胞毒性物質として使用することもできる(例えば、Warpehoskiら,J.Med.Chem.,31:590−603(1988)を参照)。CPI部分をシクロプロパベンゾインドール(CBI)部分に置き換えた一連のCC−1065類似物質が開発されている(Bogerら,J.Org.Chem.,55:5823−5833(1990)およびBogerら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1:115−120(1991))。これらのCC−1065類似物質は、マウスで遅発毒性を惹き起こすことなく親薬物の高いin vitro効力を維持する。CC−1065と同様にこれらの化合物は、DNAの副溝と共有結合して細胞死をもたらすアルキル化剤である。
【0102】
CC−1065類似物質の治療効果は、腫瘍部位への標的化送達によりin vivo分布を変化させて、非標的組織に対する毒性を弱め、全身毒性を弱めることにより、大幅に向上し得る。この目的のために、腫瘍細胞を特異的に標的とするCC−1065の類似物質および誘導体と細胞結合物質との複合体が作製されている(例えば、米国特許第5,475,092号、同第5,585,499号および同第5,846,545号を参照)。これらの複合体は通常、in vitroでの高い標的特異的細胞毒性およびマウスのヒト腫瘍異種移植モデルにおける抗腫瘍活性を示す(例えば、Chariら,Cancer Res.,55:4079−4084(1995)を参照)。
【0103】
CC−1065類似物質を合成する方法は、米国特許第5,475,092号、同第5,585,499号、同第5,846,545号、同第6,534,660号、同第6,586,618号、同第6,756,397号および同第7,329,760号に詳細に記載されている。
【0104】
メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、ツブリシンおよびツブリシン類似物質、デュオカルマイシンおよびデュオカルマイシン類似物質、ドラスタチンおよびドラスタチン類似物質などの薬剤も本発明の細胞毒性物質として使用することができる。またドキサルビシン(doxarubicin)/ダウノルビシン化合物(例えば、米国特許第6,630,579号を参照)も細胞毒性物質として使用することができる。
【0105】
細胞結合物質−細胞毒性物質複合体をin vitroの方法で調製し得る。細胞毒性物質と抗体を連結するために連結基を用いる。適切な連結基は当該技術分野で公知であり、ジスルフィド基、酸に不安定な基、光に不安定な基、ペプチダーゼに不安定な基およびエステラーゼに不安定な基ならびに切断不可能な連結基がこれに含まれる。例えば、細胞結合物質をジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、チオエーテル結合およびエステラーゼに不安定な結合からなる群より選択される化学結合を介して細胞毒性物質と化学的に結合させることができる。
【0106】
本発明に従えば、二官能性架橋試薬を介して細胞結合物質と細胞毒性物質を連結する。本明細書で使用される「二官能性架橋試薬」は、一方が細胞結合物質と反応することができ、他方が細胞毒性物質と反応することができる、2つの反応基をもち、細胞結合物質と細胞毒性物質を連結することにより複合体を形成する試薬を指す。
【0107】
リンカー試薬により、過度の毒性を伴わずに細胞毒性物質および細胞結合物質のそれぞれ治療特性(例えば、細胞毒性)および標的化特性が保持される限り、任意の適切な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用することができる。好ましくは、リンカー分子は、細胞毒性物質と細胞結合物質が互いに化学的に結合する(例えば、共有結合する)ように、化学結合(上記のような)を介して細胞毒性物質と細胞結合物質を連結する。
【0108】
一実施形態では、二官能性架橋試薬は切断不可能なリンカーを含む。切断不可能なリンカーとは、マイタンシノイド、タキサンまたはCC−1065類似物質などの細胞毒性物質を安定で共有結合的な方法で細胞結合物質と連結することができる任意の化学的部分のことである。したがって、切断不可能なリンカーは、細胞毒性物質または細胞結合物質の活性状態が維持される条件下で、実質的に酸による切断、光による切断、ペプチダーゼによる切断、エステラーゼによる切断およびジスルフィド結合の切断に対して耐性がある。
【0109】
細胞毒性物質と細胞結合物質との間で切断不可能なリンカーを形成する適切な架橋試薬は当該技術分野で公知である。一実施形態では、細胞毒性物質はチオエーテル結合を介して細胞結合物質と連結される。切断不可能なリンカーの例としては、細胞毒性物質との反応のためのマレイミド系またはハロアセチル系部分を有するリンカーが挙げられる。このような二官能性架橋剤は当該技術分野で公知であり(米国特許出願公開第2010/0129314号、同第2009/0274713号、同第2008/0050310号、同第20050169933号、同第2009/0274713号、同第2010/0129314号を参照、またPierce Biotechnology Inc.P.O.Box 117,Rockland,IL 61105,USAから入手可能な架橋剤)、特に限定されないが、N−スクシンイミジル−4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシラート(SMCC)、SMCC(LC−SMCC)の「長鎖」類似物質であるN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロアート)、κ−マレイミドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノアート(SMPH)、N−スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)−ブチラート(SMPB)およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアナート(PMPI)が挙げられる。ハロアセチル系部分を含む架橋試薬としては、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−ベンゾアート(SIAB)、N−スクシンイミジル−ヨードアセタート(SIA)、N−スクシンイミジル−ブロモアセタート(SBA)およびN−スクシンイミジル−3−(ブロモアセトアミド)プロピオナート(SBAP)、ビス−マレイミドポリエチレングリコール(BMPEO)、BM(PEO)
2、BM(PEO)
3、N−(β−マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、5−マレイミド吉草酸NHS、HBVS、4−(4−N−マレイミドフェニル)−酪酸ヒドラジド・HCl(MPBH)、スクシンイミジル−(4−ビニルスルホニル)ベンゾアート(SVSB),ジチオビス−マレイミドエタン(DTME)、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)、ビス−マレイミドエタン(BMOE)、スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)、スルホスクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノベンゾアート(スルホ−SIAB)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS)、N−(γ−マレイミドブトリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−GMBS)、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシミド(sulfosuccimido)エステル(スルホ−EMCS)、N−(κ−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−KMUS)、スルホスクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(スルホ−SMPB)CX1−1、スルホ−MalおよびPEG
n−Malが挙げられる。好ましくは、二官能性架橋試薬はSMCCである。
【0111】
一実施形態では、連結試薬は切断可能なリンカーである。適切な切断可能なリンカーの例としては、ジスルフィドリンカー、酸に不安定なリンカー、光に不安定なリンカー、ペプチダーゼに不安定なリンカーおよびエステラーゼに不安定なリンカーが挙げられる。ジスルフィド含有リンカーは、生理的条件下で生じ得るジスルフィド交換により切断可能なリンカーである。酸に不安定なリンカーは、酸性pHで切断可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソームなどの特定の細胞内区画はpHが酸性であり(pH4〜5)、酸に不安定なリンカーを切断するのに適した条件をもたらす。光に不安定なリンカーは、光の当たる体表および多くの体腔内で有用である。さらに、赤外光が組織を貫通することができる。ペプチダーゼに不安定なリンカーを用いて、細胞内外の特定のペプチドを切断することができる(例えば、Trouetら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:626−629(1982)およびUmemotoら,Int.J.Cancer,43:677−684(1989)を参照)。一実施形態では、切断可能なリンカーは穏やかな条件下、すなわち、細胞毒性物質の活性が影響を受けない細胞内条件下で切断される。
【0112】
別の実施形態では、細胞毒性物質はジスルフィド結合を介して細胞結合物質と連結される。リンカー分子は、細胞結合物質と反応することができる反応性化学基を含む。細胞結合物質との反応に好適な反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。さらに、リンカー分子は、細胞毒性物質と反応してジスルフィド結合を形成することができる反応性化学基、好ましくはジチオピリジル基を含む。ジスルフィド結合を介した細胞結合物質と細胞毒性物質の連結を可能にする二官能性架橋試薬は当該技術分野で公知であり、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(例えば、Carlssonら,Biochem.J.,173:723−737(1978)を参照)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号を参照)、N−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6を参照)およびN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)2−スルホブタノアート(スルホ−SPDB)(例えば、米国特許出願公開第2009/0274713号を参照)が挙げられる。ジスルフィド基の導入に使用することができる他の二官能性架橋試薬は当該技術分野で公知であり、すべてその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,913,748号、同第6,716,821号ならびに米国特許出願公開第2009/0274713号および同第2010/0129314号に記載されている。
【0113】
切断不可能なリンカーを形成する硫黄原子を含まない他の架橋試薬も本発明の方法に使用することができる。このようなリンカーはジカルボン酸系部分から誘導され得る。適切なジカルボン酸系部分としては、特に限定されないが、
一般式(IX):
HOOC−X
l−Y
n−Z
m−COOH
(IX)
のα,ω−ジカルボン酸が挙げられ、上式中、Xは、2〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、Yは、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル基であり、Zは、6〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換芳香族基またはヘテロ原子がN、OもしくはSから選択される置換もしくは非置換複素環基であり、l、mおよびnは、それぞれ0または1であり、ただし、l、mおよびnは同時にすべてがゼロになることはない。
【0114】
本明細書に開示される切断不可能なリンカーの多くが米国特許出願公開第2005/0169933A1号に詳細に記載されている。
【0115】
以下の実施例は本発明をさらに説明するものであるが、当然ながら、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0116】
実施例1
これまでに記載されている工程(例えば、米国特許第5,208,020号)および本出願の対象である1段階の工程を用いて、ヒト化CD37−3抗体をヘテロ二官能性架橋試薬SMCCおよびマイタンシノイドDM1と反応させた。
【0117】
これまでに記載されている工程では、最初にhuCD37−3(15mg/mL)をSMCC(抗体量に対して6.5倍モル過剰)と反応させて修飾抗体を形成した。修飾反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.9)中、16℃で90分間実施した。1M酢酸塩で反応を停止させてpHを4.5に調整し、修飾抗体を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、2mM EDTAを含有する20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で溶出させた。精製後、修飾抗体(5mg/mL)をマイタンシノイドDM1(抗体量に対して6.8倍モル過剰;測定された抗体上のリンカー量に対して1.3倍過剰)と反応させて、コンジュゲート抗体を形成した。コンジュゲーション反応を、2mM EDTAと5%DMAとを含有する20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中、20℃で約20時間実施した。次いで反応混合物を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)で溶出させた。
【0118】
本発明の工程では、huCD37−3(2.5mg/mL)DM1(抗体量に対して6.2倍モル過剰)、次いでSMCC(抗体量に対して5.2倍過剰)と混合する。反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mM EPPS[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸]緩衝液(pH8.1)中、20℃で約4時間実施した。1M酢酸塩の添加により反応を停止させて、pHを5.0に調整した。次いで、反応混合物を2〜8℃で約20時間保持した。保持後、反応混合物を0.2μmのPVDFフィルターでろ過し、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)中に透析ろ過した。
【0119】
2つの工程から得られた複合体を、濃度および細胞毒性物質付加量(マイタンシノイドと抗体の比、MAR)に関するUV分光測定、未コンジュゲートリンカーのレベルを決定する質量分析、非還元性種のレベルを決定する還元SDS−PAGE電気泳動、複合体単量体を決定するSEC−HPLCならびに複合体単量体および遊離マイタンシノイド解離に関する保管時の安定性により分析した。
【0120】
UV−VIS分光光度計で252nmおよび280nmにおける複合体の吸光度を測定し、2つの波長におけるDM1および抗体のモル吸光係数を用いて抗体およびDM1のモル濃度を計算することにより、濃度およびマイタンシノイドと抗体の比(MAR)を決定した。
【0121】
複合体の未コンジュゲートリンカーのレベルを質量分析により分析した:個々の複合体種(未コンジュゲートリンカーを有するまたは有さない複合体を含む)のピーク面積を測定した;未コンジュゲートリンカーを含む面積の合計(リンカー数による重み付けを行った)と複合体全種の面積の合計(同様にリンカー数による重み付けを行った)の比により、未コンジュゲートリンカーのレベルを計算した。
【0122】
複合体の非還元性種のレベルを還元SDSゲル電気泳動により分析した:個々の還元された複合体種(還元された軽鎖、還元された重鎖、架橋された軽鎖−軽鎖、架橋された軽鎖−重鎖などを含む)のピーク面積を測定した;非還元性種の面積の合計と全種の面積の合計の比により非還元性種のレベルを計算した。
【0123】
複合体の単量体レベルをサイズ排除HPLCにより分析した:単量体、二量体、凝集体および低分子種のピーク面積を、252nmまたは280nmの波長に設定した吸光度検出器を用いて測定した;単量体の面積と合計面積の比により単量体レベルを計算した。
【0124】
複合体中に存在する遊離マイタンシノイドの量をデュアルカラム(HiSepおよびC18カラム)HPLCにより分析した:252nmの波長に設定した吸光度検出器を用いて、遊離マイタンシノイド全種(勾配で溶出させ、既知の標準物質の溶出時間との比較により同定)のピーク面積を測定した;既知量の標準物質のピーク面積により作成した標準曲線を用いて、遊離マイタンシノイドの量を計算した。
【0125】
下の表1に示すように、本発明の工程を用いて製造された複合体の方が、未コンジュゲートリンカー、非還元性種および複合体単量体の点で、これまでに記載されている工程を用いて製造された複合体より優れていた。さらに、本発明の工程により製造された複合体の安定性の方が、4℃で5か月間保管した後の遊離マイタンシノイドの解離の点で大幅にすぐれていた。両工程により製造された複合体の単量体レベルは安定していた。
【0126】
【表1】
【0127】
この実施例で考察される実験結果は、実質的に高純度の細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を調製する工程が改善されていることを示すものである。本発明の工程を用いて得られた複合体の純度および安定性の改善に加え、2つの処理段階(修飾反応および修飾抗体の精製)の削除による処理時間および利便性の改善もみられる。
【0128】
実施例2
これまでに記載されている2つの工程および本出願の対象である改善された工程を用いて、ヒト化葉酸受容体抗体huMov19(米国特許出願公開第2012/0009181号を参照)をヘテロ二官能性架橋試薬スルホ−SPDBおよびマイタンシノイドDM4と反応させた。
【0129】
これまでに記載されている工程A(2段階の工程、例えば、Chariら,米国特許第5,208,020号)では、最初にhuMov19抗体(20mg/mL)をスルホ−SPDB(抗体量に対して5.7倍モル過剰、DMA(ジメチルアセトアミド)に溶解)と反応させて修飾抗体を形成した。修飾反応を、5%DMAを含有する50mM EPPS(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸)緩衝液(pH8.1)中、20℃で180分間実施した。修飾抗体を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、2mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む50mM EPPS(pH8.1)で溶出させた。精製後、修飾抗体(5.0mg/mL)をマイタンシノイドDM4(DMAに溶解;抗体量に対して9.7倍モル過剰;測定された抗体上のリンカー量に対して1.7倍過剰)と反応させてコンジュゲート抗体を形成した。コンジュゲーション反応を、2mM EDTAと5%DMAとを含有する50mM EPPS(pH8.1)中、室温で約18時間実施した。次いで反応混合物を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)で溶出させた。
【0130】
これまでに記載されている工程B(ワンポット工程、Daiら,米国特許第7,811,572号)では、最初にhuMov19抗体(10mg/mL)をスルホ−SPDB(抗体量に対して4.9倍モル過剰、DMAに溶解)と反応させて修飾抗体を形成した。修飾反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mM EPPS緩衝液(pH7.5)中、20℃で60分間実施した。コンジュゲーション反応の前に修飾抗体を精製しなかった。代わりに、未精製の修飾抗体を10mg/mLでマイタンシノイドDM4(抗体量に対して8.3倍モル過剰、DMAに溶解)と反応させて、コンジュゲート抗体を形成した。コンジュゲーション反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mM EPPS緩衝液(pH7.5)中、室温で約18時間実施した。次いで反応混合物を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)で溶出させた。
【0131】
Sephadex G−25を用いて複合体を精製する本発明の工程(工程C、1段階の工程)では、huMov19抗体(6.0mg/mL)をDM4(抗体量に対して9.7倍モル過剰、DMAに溶解)と混合し、次いでスルホ−SPDB(抗体量に対して5.7倍過剰、DMAに溶解)を加えた。反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mM EPPS緩衝液(pH8.1)中、20℃で約20時間実施した。次いで反応混合物を、平衡化したSephadex G−25F樹脂のカラムを用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)で溶出させた。
【0132】
タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて複合体を精製する本発明の工程(工程D、1段階の工程)では、huMov19抗体(5.0mg/mL)をDM4(抗体量に対して10.2倍モル過剰、DMAに溶解)、次いでスルホ−SPDB(抗体量に対して6.0倍過剰、DMAに溶解)と混合した。反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mM EPPS緩衝液(pH8.5)中、20℃で約20時間時間実施した。次いでTFFを用いて、反応混合物を精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)中に透析ろ過した。
【0133】
異なる工程から得られた複合体を、UV分光測定(濃度およびマイタンシノイドと抗体の比、MARに関する)、遊離マイタンシノイドを決定する逆相HPLC、未コンジュゲートリンカーのレベルおよび質量分布プロファイルを決定する質量分析、非還元性種のレベルを決定する還元SDS−PAGE電気泳動、断片化のレベルを決定する非還元SDS−PAGE電気泳動、複合体単量体を決定するSEC−HPLCにより分析した。保管時の安定性を複合体単量体および遊離マイタンシノイド解離に関して評価した。分析方法論に関するさらなる詳細は、実施例1に記載されている。
【0134】
下の表2に示すように、本発明の工程を用いて製造された複合体は、単量体の点で、これまでに記載されている工程を用いて製造された複合体より優れていた。Sephadex G−25を用いて最後の複合体精製を実施したワンポット工程および1段階の工程(それぞれ工程Bおよび工程C)を用いて製造された複合体は、2段階の工程(工程A)を用いて製造された複合体より遊離マイタンシノイドのレベルが高かった。しかし、異なる最終精製工程TFFを用いた場合(工程D)、最初の精製後および4℃で6週間の保管後ともに遊離マイタンシノイドのレベルはきわめて低く、2段階の工程で示されるレベルと同程度であった。他の重要な複合体の特性(例えば、断片化、非還元性種、質量分布プロファイルおよび未コンジュゲートリンカー)に関しては、本発明の工程を用いて製造された複合体は、これまでに記載されている工程により製造された複合体と同等であった。
【0135】
【表2】
【0136】
この実施例で考察される実験結果は、実質的に高純度の細胞結合物質−細胞毒性物質複合体を調製する工程が改善されていることを示すものである。本発明の工程を用いて得られた複合体の純度および安定性の改善に加え、2つの処理段階(修飾反応および修飾抗体の精製)の削除による処理時間および利便性の改善もみられる。
【0137】
実施例3
この実施例は、本明細書に記載の1段階の工程を用いて、各種のリンカーおよびマイタンシノイド細胞毒性物質から出発して複合体を製造し得ることを示すものである。
【0138】
ヒト化huN901抗体をマイタンシノイド(DM1またはDM4)、次いでリンカー(スルホ−SMCC、SMCC、SPDBまたはSPP)と混合した。反応を、2mM EDTAと10%DMAとを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.5)中、20℃で約20〜24時間実施した。次いで反応混合物を、平衡化したSephadex G25F樹脂のカラムを用いて精製し、10mMコハク酸ナトリウム(pH5.0)で溶出させた。
【0139】
下の表3に示すように、1段階の反応をリンカーとマイタンシノイドの種々の組合せで実施して、良好なMARおよび単量体レベルの複合体を得ることができる。
【0140】
【表3】
【0141】
本明細書に引用される刊行物、特許出願および特許を含めた参考文献はすべて、各参考文献が個別にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その内容全体が本明細書に記載された場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0142】
本発明の記載との関連(特に、添付の特許請求の範囲との関連)における用語「a」、「an」および「the」ならびにこれと同様の指示対象の使用は、本明細書に別途明記される場合または文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、単数および複数をともに含むものと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する、もつ(having)」、「含む(including)」および「含有する、含む(containing)」は、別途注記されない限り、オープンエンドな用語(すなわち、「特に限定されないが、〜を含む」という意味である)として解釈されるべきである。本明細書における数値の範囲の記載は、本明細書に別途明記されない限り、単にその範囲に含まれる個々の数値を個別に記載する簡便な方法として用いることを意図したものであり、個々の数値は、本明細書に個々に記載された場合と同様に本明細書に組み込まれるものとする。本明細書に記載の方法はすべて、本明細書に別途明記される場合または文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、任意の適切な順序で実施され得るものである。本明細書に記載されている、あらゆる具体例または例示的な言葉(例えば、「〜などの」)の使用は、単に本発明の理解を容易にすることを意図したものであって、別途請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言葉はいずれも、特許請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものではないと解釈されるべきである。
【0143】
本発明を実施するために、本発明者らが知る最良の形態を含めた本発明の好適な実施形態が本明細書に記載されている。これらの好適な実施形態の変更は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変更を用いることを予想するとともに、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法によって認められる、添付の特許請求の範囲に記載の内容の改変物および均等物をすべて包含する。さらに、本明細書に別途明記される場合または文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、上記要素のその可能なあらゆる変更での任意の組合せが本発明に包含される。