(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456947
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】電気化学セルスタックを調整するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C25B 15/02 20060101AFI20190110BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20190110BHJP
C25B 9/18 20060101ALI20190110BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
C25B15/02 302
C25B1/02
C25B9/18
C25B15/00 303
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-527075(P2016-527075)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公表番号】特表2016-529398(P2016-529398A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014046861
(87)【国際公開番号】WO2015009835
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】61/856,494
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/330,474
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100203769
【弁理士】
【氏名又は名称】大沢 勇久
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウォンソク
(72)【発明者】
【氏名】クゥエト,ピエール−フランソワ
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−094586(JP,A)
【文献】
特表2012−509552(JP,A)
【文献】
特表2012−528431(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0121532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00−15/08
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルの性能を調整するための方法であって、
電気化学セルスタックに電力を供給するステップであり、ここで該電気化学セルスタックは、複数の電気化学セルを包含する、ステップ;
該複数の電気化学セルの少なくとも1つのパラメーターをモニタリングするステップ;
電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップ;
該電気化学セルスタックの作動中に、十分機能しなくなった電気化学セルの電流の流れの所定部分を調節するステップであり、ここで、該十分機能しなくなった電気化学セルの電流の流れの所定部分を調節することは、該電気化学セルスタックの作動中に、該十分機能しなくなった電気化学セルのバイポーラプレートと隣接するセルのバイポーラプレートとの間のシャント領域中にシャント抵抗器を取り付けることによりシャントすることを含む、ステップ;および、
該シャント抵抗器の該十分機能しなくなった電気化学セルと接触する面積を調節して該電気化学セルに流れる電流を調節するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
シャントすることが、前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる電圧を低下させるステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメーターが、電圧、電流、および温度の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップが、前記電気化学セルにわたる電圧が、臨界の電圧設定値より高いかどうかを決定するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる前記電圧を予め決められた電圧値に落とすのに十分な抵抗値を計算するステップ;および
計算された抵抗値に基づき前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするためのシャント抵抗器を選択するステップ
をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予め決められた電圧値が、前記電気化学セルスタックの電気化学セル1つ当たりの平均電圧、および前記電気化学セルスタックの電気化学セルの最小電圧の少なくとも1つに相当する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
選択されたシャント抵抗器が、前記計算された抵抗値±50%に等しい固定抵抗を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
選択されたシャント抵抗器が、可変抵抗を有し、計算された抵抗値±50%に等しい抵抗を有するように前記シャント抵抗器をプログラミングするステップをさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップが、電気化学セルの温度が臨界温度の設定値より高いかどうかを決定するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記十分機能しなくなった電気化学セルにより発生した熱を予め決められた値に落とすのに十分な抵抗値を計算するステップ;および
計算された抵抗値に基づき前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするためのシャント抵抗器を選択するステップ
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シャントすることが、前記十分機能しなくなった電気化学セルに供給された前記電流の所定部分をシャント抵抗器を介して調節して、前記十分機能しなくなった電気化学セルにより発生した熱を低減するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記十分機能しなくなった電気化学セルの前記電流の流れの所定部分を調節するステップが、2つまたはそれより多くの双方向コンバーターを用いて電流を調節するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水素を生成するように設計された活性領域;および
該活性領域の境界の外側のシャント領域
を含む電気化学セルであって、
該シャント領域は、シャントを受け入れるように設計されており、
該シャントは、該電気化学セルのバイポーラプレートと隣接する電気化学セルのバイポーラプレートとの間の該シャント領域に部分的に挿入されて、該電気化学セルに流れる電流を調節するために前記シャントの前記電気化学セルと接触する面積を調節するように設計されている、上記電気化学セル。
【請求項14】
前記シャント領域が、前記電気化学セルの角または縁部上に配置されている、請求項13に記載のセル。
【請求項15】
電気化学セルの性能を調整するためのシステムであって、
2つまたはそれより多くの電気化学セルを包含する電気化学セルスタックであり、ここで各電気化学セルは、
水素を生成するための活性領域;および
該活性領域に隣接する少なくとも1つのバイポーラプレート
を包含する、電気化学セルスタック;ならびに
電気化学セルのバイポーラプレートとそれに隣接する電気化学セルのバイポーラプレートとの間に取り付けられるように設計されたシャント
を含み、該シャントの該電気化学セルと接触する面積を調節して該電気化学セルに流れる電流を調節する、上記システム。
【請求項16】
前記シャントが、非ゼロ抵抗を有し、前記シャントが、非ゼロ抵抗を有し、前記シャントは、前記電流の流れの所定部分を調節して、前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる電圧を低下させるように設計されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記シャントが、予め決められた抵抗を有する固定シャントである、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記シャントが、前記電気化学セルにわたる電圧、前記電気化学セルの温度、および前記電気化学セルにわたる前記抵抗の少なくとも1つに基づく可変抵抗を有する可変シャント抵抗器である、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2013年7月19日付けで出願された米国仮出願第61/856,494号の利益を主張する。
【0002】
[002]本発明の開示の実施態様は、電気化学セルに関し、より具体的には、電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルを調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[003]電気化学セルは、通常、燃料電池または電解セルとして分類されるが、化学反応により電流を発生させたり、または電流の流れを使用して化学反応を誘導したりするためのデバイスである。燃料電池は、燃料(例えば、水素、天然ガス、メタノール、ガソリンなど)および酸化剤(例えば、空気または酸素)の化学エネルギーを電気ならびに熱および水の廃棄物に変換する。電解セルは、逆に作動する燃料電池の代表である。電解セルは、外部の電位が適用されると水を水素と酸素ガスに分解することによって水素発生器として機能する。
【0004】
[004]燃料電池または電解セルの基礎的な技術は、例えば電気化学的な水素の圧縮、精製、または膨張などの電気化学的な水素の操作に適用できる。電気化学的水素圧縮機(EHC)は、例えば、セルの一方の側から他方の側に水素を選択的に移動するのに使用することができる。EHCは、第一の電極(例えば、アノード(anode))と第二の電極(例えば、カソード(cathode))との間に挟まれたプロトン交換膜を含み得る。水素を含有するガスは、第一の電極と接触することができ、第一の電極と第二の電極との間に電位差を適用することができる。第一の電極では、水素分子を酸化することができ、その反応は、2つの電子と2つのプロトンを生産することができる。2つのプロトンは、電気化学的に膜を介してセルの第二の電極に進み、そこでそれらは、2つのルート変更した電子により再結合し、還元されて、水素分子を形成する。第一の電極と第二の電極で起こる反応は、以下に示すような化学方程式として表すことができる。
第一の電極の酸化反応:H
2→2H
++2e
−
第二の電極の還元反応:2H
++2e
−→H
2
全体の電気化学反応:H
2→H
2。
【0005】
[005]この方式で作動するEHCは、時には水素ポンプとも称される。第二の電極に蓄積した水素が限定されたスペースに制限される場合、スペース内の圧力が上昇し、水素を圧縮する。個々のセルが起こすことができる最大の圧力または流速は、セルの設計に基づき限定される可能性がある。
【0006】
[006]より大きい圧縮またはより高い圧力を達成するために、EHCスタック中で複数のセルを平行にまたは連続して連結させて、EHCの処理能力(すなわち、総ガス流速)を増加させることができる。作動中、EHCスタックに電流が送達されると、各セル中で膜の一方の側から他方の側への水素の移動が起こる。1つより多くのセルを有するスタックにおいて、電流は全てのセルを通過するが、一方でスタックに適用された電圧は、スタック中のセルに分割される。電圧がセル間で等しく分割されることが理想的であるが、実際には、電圧はセル間で変動する。セルの電圧は、バイポーラプレートの腐食、触媒の劣化、または膜の劣化によって変動する可能性がある。
【0007】
[007]より高電圧を有する電気化学セルは、同じ量の水素を圧縮するのにより多くの電力を消費する。結果として、これらのセルは、より低い電圧で作動する他のセルより多くの熱を生産し、より高温で作動する可能性がある。高温は、高電圧のセルを経時的に劣化させる可能性があり、それに続いて高電圧のセルの電圧をさらに増加させる可能性がある。このフィードバックサイクルが継続して、セルの初期不良を引き起こす可能性がある。さらに、これらの劣化したセルは、全体的なEHCスタックの効率を低下させて、他のセルにも悪影響を与える可能性がある。これは、EHCスタックを解体して、高電圧のセルを除去することによって対処できるが、劣化したセルはスタック中で電気的に連結され物理的に組み立てられているために、このような方法は多大な費用を要し、問題を含む。
【発明の概要】
【0008】
[008]上述の環境を考慮すると、本発明の開示は、電気化学セルスタック中の少なくとも1つのセルの性能を調整するためのシステムおよび方法を対象とする。本システムは、作動中における電気化学セルスタック中のセルの電圧の変動を低減することができる。加えて、本システムは、電気化学セルスタックを作動させ続けながら、1つまたはそれより多くの十分機能しなくなったセルの作動を「調整」することができる。
【0009】
[009]本発明の少なくとも1つの形態は、電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルの性能を調整するための方法を対象とする。本方法は、複数の電気化学セルを有する電気化学セルスタックに電力を供給するステップを包含していてもよい。本方法は、少なくとも1つの電気化学セルのパラメーターをモニタリングするステップ、および電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップをさらに包含していてもよい。本方法はまた、電気化学セルスタックの作動中に、十分機能しなくなった電気化学セルからの電流の流れの所定部分を方向転換させるステップを包含していてもよい。
【0010】
[010]本発明の別の形態は、電気化学セルを対象とする。セルは、水素を生成するように設計された活性領域および活性領域の境界の外側のシャント領域を包含していてもよい。シャント領域は、シャントを受け入れるように設計することができる。
【0011】
[011]本発明のさらに別の形態は、電気化学セルの性能を調整するためのシステムを対象とする。本システムは、2つまたはそれより多くの電気化学セルを包含する電気化学セルスタックを包含していてもよい。各電気化学セルは、水素を生成するための活性領域、および活性領域に隣接する少なくとも1つのバイポーラプレートを包含していてもよい。本システムは、十分機能しなくなった電気化学セルの活性領域を架橋する少なくとも1対のバイポーラプレートの間に取り付けられるように設計されたシャントをさらに包含していてもよい。
【0012】
[012]本発明のさらに別の形態は、電気化学セルスタックの性能を調整するためのシステムを対象とする。本システムは、2つまたはそれより多くの電気化学セルを包含する電気化学セルスタックを包含していてもよい。各電気化学セルは、水素を生成するための活性領域;および活性領域に隣接する少なくとも1つのバイポーラプレートを包含していてもよい。本システムはまた、双方向コンバーターを包含していてもよい。双方向コンバーターは、電気化学セルスタックの少なくとも1つの電気化学セルに電流の調節を提供するように配置されていてもよい。
【0013】
[013]本発明の追加の目的および利点は、下記の説明で部分的に記載され、その記載から部分的に明白であり、または本発明の実施から学ぶこともできる。本発明の目的および利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘された要素および組合せによって理解され、達成されると予想される。
【0014】
[014]前述の一般的な説明と以下の詳細な説明はいずれも単に典型的で説明的なものにすぎず、特許請求されたような発明を限定しないと理解されるものとする。
【0015】
[015]添付の図面は、本明細書に取り入れられ本明細書の一部を構成するが、これらは、いくつかの本発明の実施態様を例示し、その記載と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】[016]
図1は、例示的な実施態様に係る電気化学セルスタックおよびシャント抵抗器を包含するシステムの概略図である。
【
図2】[017]
図2は、例示的な実施態様に係る電気化学セルスタックの概略斜視図である。
【
図3】[018]
図3は、例示的な実施態様に係る、シャント抵抗器を受け入れるように設計されたシャント領域を有する電気化学セルの一部の上面図である。
【
図4】[019]
図4は、例示的な実施態様に係る、2つのバイポーラプレート間に位置するシャント抵抗器を有する電気化学セルスタックの側面図である。
【
図5】[020]
図5は、さらに別の例示的な実施態様に係る、2つのバイポーラプレート間に位置する可変シャントを有する電気化学セルスタックの一部の側面図である。
【
図6】[021]
図6は、別の例示的な実施態様に係る、電気化学的スタック中のセルの性能を調整する方法を例示する流れ図である。
【
図7】[022]
図7は、例示的な実施態様に係る双方向コンバーターを包含するシステムの概略図である。
【
図8】[023]
図8は、例示的な実施態様に係る双方向コンバーターの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[024]以下、本発明の開示の例示的な実施態様について詳細に述べ、その例は添付の図面で例示される。可能な限り、同じまたは類似の部品を指すために図面全体にわたり同じ参照番号が使用される。水素を採用する電気化学セルに関して説明されているが、本発明の開示のシステムおよび方法は、これらに限定されないが、電解セル、水素精製機、水素エキスパンダー(hydrogen expander)、および水素圧縮機などの様々な種類の燃料電池および電気化学セルで採用される可能性があることが理解される。
【0018】
[025]
図1は、例示的なシステム20の側面図を示す。システム20は、複数の電気化学セルから形成された電気化学セルスタック50を包含する。各電気化学セル100は、活性領域80を包含し、この領域が水素ガスに晒される。領域80は、アノード110、カソード120、およびアノード110とカソード120との間に配置されたプロトン交換膜(PEM)130を包含する。PEM130は、純粋な高分子膜または複合膜を含んでいてもよく、ここで他の材料、例えばシリカ、ヘテロポリ酸、層状の金属リン酸塩、リン酸塩、およびリン酸ジルコニウムが、高分子マトリックス中に埋め込まれていてもよい。PEM130は、プロトンを透過させることができるが電子を伝達させないものでもよい。アノード110およびカソード120は、触媒層を含有する多孔質炭素電極を含んでいてもよい(示されていない)。触媒材料、例えば白金は、反応速度を増加させることができる。
【0019】
[026]電気化学セル100は、2つのバイポーラプレート150をさらに含んでいてもよい。2つのバイポーラプレート150は、支持プレート、導体として作用することができ、それぞれの電極表面に水素ガスのための通路を提供することができ、圧縮水素除去のための通路を提供することができる。またバイポーラプレート150は、冷却流体(すなわち、水、グリコール、または水とグリコールとの混合物)のためのアクセスチャネルを包含していてもよい。バイポーラプレート150は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni−Cr合金、グラファイトまたは他のあらゆる導電性材料から作製することができる。
【0020】
[027]複数の電気化学セル100を連続してまたは並行して連結させて、電気化学セルスタック50を形成することができる。例示的な実施態様において、複数の電気化学セル100を並行してスタックして、一段階電気化学セルスタック50を形成する。電気化学セルスタック50は、あらゆる好適な数の電気化学セル100で構成することができる。例えば、
図1に示される実施態様において、電気化学セルスタック50は、3つの電気化学セル100を包含する。しかしながら、電気化学セルスタック50は、それより多いまたはそれより少ない数の電気化学セルを包含していてもよいことが理解される。
【0021】
[028]バイポーラプレート150は、電気化学セルスタック50中の隣接するセルから各電気化学セル100を隔てることができる。いくつかの実施態様において、スタック50中の各電気化学セル100は、膜−電極−接合体(MEA)の両側に1つずつ、計2つのバイポーラプレート150を含み、すなわち、スタック50がn個のセルを含む場合、スタック50中のバイポーラプレート150の総数は、2n個である。いくつかの他の実施態様において、スタック50中の2つの隣接する電気化学セル100は、バイポーラプレート150を共有しており、すなわち、スタック50がn個のセルを含む場合、スタック50中のバイポーラプレート150の総数は、(n+1)個である。
【0022】
[029]作動中、例示的な実施態様によれば、水素ガスを活性領域80に供給することができる。アノード110とカソード120との間に電位を適用できるように、電気化学セルスタック50に電圧を適用してもよく、ここでアノード110における電位は、カソード120における電位より大きい。さらに、電流が電気化学セルスタック50に送達されて、各セル中の水素がPEM130を介して電気化学的に輸送されるかまたは「ポンプ」で送られ、一方で電子を、ルート変更してPEM130を迂回してもよい。PEM130の逆側におけるカソード120において、輸送されたプロトンとルート変更された電子とが還元されて、水素が形成される。カソード120で水素がますます形成されるにつれて、限定されたスペース内で水素を圧縮して加圧することができる。
【0023】
[030]上述したように、複数の電気化学セルを有する電気化学セルスタックにおいて、スタックに供給された電流は、全てのセルを通過するが、一方でスタックに適用された電圧は、スタック中のセルに分割される。電圧がセル間で等しく分割されることが理想的であるが、実際には、電圧はセル間で変動する。例えば、セルの電圧は、スタック中で0.01〜1.0V/セルで変動し得る。結果として、セルを通る電流の通路によって引き起こされる熱の発生(例えば、オーム加熱)もセル間で変動し得る。開示されたシステムは、高電圧で作動する個々のセルをシャントすることによって、セルの電圧およびオーム加熱における変動を低減することができる。例示的な実施態様において、シャントは、予め決められた(固定された)、使用者が選択可能な、またはプログラム可能な抵抗値のシャント抵抗器200の使用を包含し得る。
【0024】
[031]
図2は、例示的な電気化学セルスタック50の概略図である。
図2で示されるように、各電気化学セル100は、少なくとも1つのシャント領域220を包含していてもよい。シャント領域220は、電気化学セル100の、電気化学セルスタック50の外側から接近可能なあらゆる部分に配置されていてもよい。例えば、シャント領域220は、活性領域80の境界の外側の、電気化学セル100の角または縁部上に配置されていてもよい。いくつかの実施態様において、各電気化学セル100は、複数のシャント領域220を包含していてもよい。これらの実施態様において、シャント領域220は、電気化学セル100の一部または全部の角に位置されていてもよい。同様に、シャント領域220は、電気化学セル100の一部または全部の縁部に位置され得ることも予期される。
【0025】
[032]
図3を参照すると、シャント領域220は、シャント抵抗器200を受け入れられるようなサイズであってもよい。シャント抵抗器200は、個々の電気化学セルの活性領域80に供給された電流の所定部分を隣接するセルに方向転換させるように設計されたあらゆる公知の低抵抗デバイスであってもよい。シャント抵抗器200は、生産中、各セルのシャント領域220に配置されていてもよいし、または電気化学セルスタック50の作動中、シャント領域220に挿入されてもよい。挿入は、手動で行ってもよいし、または自動化手段を介して行ってもよい。
【0026】
[033]
図3で示されるように、シャント抵抗器200は、シャント領域220に挿入されてもよいし、またはシャント領域220から外側の電気化学的スタック50に向かって除去されてもよい。シャント抵抗器200は、シャント領域220に完全に挿入されてもよいし、または部分的に挿入されてもよいことが予期される。例えば、シャント抵抗器200をシャント領域220に部分的に挿入して、電気化学セル100と接触するシャントの面積200aを変更することができる。
【0027】
[034]
図4は、電気化学セルスタック50の側面図である。
図4で示されるように、シャント抵抗器200は、シャント領域220に配置されている場合、個々の電気化学セルのバイポーラプレート150間で伸長することができる。スタック中の各電気化学セル100が2つのバイポーラプレートを含む実施態様において、シャント抵抗器200は、2つのバイポーラプレート間に配置させることができる。2つの隣接する電気化学セル100がバイポーラプレートを共有する実施態様(例えば、
図4)において、シャント抵抗器200は、個々の電気化学セルを架橋するバイポーラプレート150間に配置させることができる。
【0028】
[035]シャント抵抗器200は、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮、ニッケルなどのあらゆる導電性材料で構成されていてもよい。シャント抵抗器200は、接触抵抗を最小化したりまたは望ましい抵抗値を達成したりするために、金、銀、スズ、半導体材料またはあらゆる他の公知のコーティングでコーティングされていてもよい。シャント抵抗器200のサイズ、形状、および/または断面は、変更することができる。例えば、シャント抵抗器200のサイズおよび形状は、バイポーラプレート150間で伸長して隣接するセルへの電流の流れを方向付けるのに十分なものであってもよい。またシャント抵抗器の設計は、隣接するプレート間で十分な接触が維持されるのを確実にするために、ばね機構を包含するように変更することもでき、プレート間隔の変動は、スタック/セルの製作公差および熱膨張によって生じる。
【0029】
[036]ある特定の実施態様において、各電気化学セル100は、電気化学セル100の各角に配置された、1つまたはそれより多くのアライメントデバイスを包含する。アライメントデバイスは、2つの隣接する電気化学セルを連結するように設計されたあらゆる公知の機械的なデバイスであり得る。例えば、アライメントデバイスは、隣接するバイポーラプレート150の凹部またはロック(示されていない)に受け入れられるように設計された少なくとも1つの固定具(例えば、ロッド、キーなど)を含み得る。凹部またはロックは、少なくとも1つの固定具を補完するような形状およびサイズであり得ることが予期される。
【0030】
[037]ある特定の実施態様において、固定具の代わりに、シャント抵抗器200が、電気化学セルを架橋するバイポーラプレート150の凹部またはロックに挿入されてもよい。ある特定の他の実施態様において、シャント抵抗器200は、バイポーラプレート150間の固定具上にロックまたはグリップするための1つまたはそれより多くのロッキング機構を包含していてもよい。代替の実施態様において、シャント抵抗器200をセルのバイポーラプレート間に配置し、従来の固定具、例えばボルト、スクリューなどを使用して、電気化学セルスタック50またはスタックを含有するフレーム(標識されていない)に機械的に固定してもよい。
【0031】
[038]使用時に、シャント抵抗器200は、十分機能しなくなった電気化学セルにわたる電圧を調節するのに使用することができる。十分機能しなくなった電気化学セルは、予め決められた電圧値より高い電圧を有するセルと定義できる。予め決められた電圧値は、例えば、操作員によって選択された値、電気化学セルスタック50のセル1つ当たりの平均電圧、または電気化学セルスタック50中の電気化学セル100の最小電圧であり得る。加えて、および/またはその代わりに、十分機能しなくなった電気化学セルは、オーム加熱、例えばセルを通る電流の通路によりセルから放出される熱量が、予め決められたオーム値より高いセルとも定義できる。予め決められたオーム値は、例えば、操作員によって選択された値、電気化学セルスタック50のセル1つ当たりの放出された平均熱量、またはスタック50中の電気化学セル100における最小の熱の発生であり得る。また十分機能しなくなったセルは、健全なセルの閾値より大きい、十分機能しなくなったセルに関連する温度、電流、抵抗、または他のパラメーターを有する可能性がある。
【0032】
[039]シャント抵抗器200は、十分機能しなくなった電気化学セルを部分的にバイパスして、そのセルの電圧を予め決められた電圧値に落とすために、特定の非ゼロ抵抗値を有していてもよい。いくつかの実施態様において、シャント抵抗器200の抵抗値は、十分機能しなくなった電気化学セルの望ましい抵抗および実際の抵抗に基づき計算することができる。シャントの抵抗値を決定するための一般式は、以下の通りである:
【0034】
セルの望ましい抵抗(R
t)は、電圧が釣り合っているときのセルの抵抗であり得る。実際の抵抗(R
a)は、シャントする前の十分機能しなくなった電気化学セルの電圧に基づき計算することができる。
【0035】
[040]他の実施態様において、十分機能しなくなった電気化学セルから放出された熱量を健全なセルと同じになるように修正できるように、シャント抵抗器200の抵抗を計算することができる。十分機能しなくなったセルと健全なセルとの間のオーム性の熱の発生を釣り合わせるための、シャントの抵抗値を決定するための式は、以下の通りである:
【0037】
上述したように、R
tは、セルの望ましい抵抗に相当し、これは、電圧が釣り合っているときのセルの抵抗であり得る。同様に、R
aは、セルの実際の抵抗に相当しており、これは、シャントする前の十分機能しなくなった電気化学セルの電圧に基づき計算することができる。式(2)を使用する場合、計算された抵抗値は、上記で論じられた式(1)から得られた計算された抵抗値よりも高い可能性がある。これは、性能が劣ったセルの寿命を長くするのに有効であり、それと同時に、別に上記で論じられた式(1)を使用して低下すると予想される、スタック50の望ましい処理量を達成することができる。
【0038】
[041]ある特定の実施態様において、シャント抵抗器200は、固定抵抗値を有する固定式の抵抗器であってもよい。これらの実施態様のいくつかにおいて、シャント抵抗器200は、シャント領域220に部分的に挿入されてもよい。セルと接触するシャント抵抗器200の面積200aを調節して、計算された抵抗を提供することができる。いくつかの他の実施態様において、使用者は、所定範囲の抵抗値を有する複数の固定シャント抵抗器200からシャント抵抗器200を選択することができる。選択されたシャント抵抗器200は、計算された抵抗に一致する抵抗を有していてもよく、完全にシャント領域220に挿入されてもよい。
【0039】
[042]
図5の例示的な実施態様のようなある特定の他の実施態様において、シャント抵抗器は、可変シャント抵抗器210を含み得る。可変シャント抵抗器210は、抵抗値を変化させることができる適切な電子機器および集積回路を包含していてもよい。可変シャント抵抗器210は、例えば、導電性材料で形成される2つの接点の間に電子機器および集積回路を包含するように構築することができる。電子機器および回路は、使用者の入力を受け取るように設計されていてもよいし、または十分機能しなくなった電気化学セルの温度の関数として変動する抵抗、供給された電流、十分機能しなくなったセルにわたる電圧もしくは予め決められた電圧値を有するようにプログラム化されていてもよい。この実施態様において、シャント抵抗器210は、生産中、シャント領域220に配置されていてもよいし、または電気化学セルスタック50の作動中、シャント領域220に挿入されていてもよい。例示的な可変シャント抵抗器としては、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)または接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)が挙げられる。
【0040】
[043]十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするのに必要な抵抗値は、変動し得る。いくつかの実施態様において、電気化学セルスタック50中の電気化学セル100の抵抗率は、5〜1000mΩ−cm
2の範囲であってもよいことが予期される。したがって5〜1000cm
2の範囲の活性領域を有するセルは、0.005〜200mΩの範囲の全体の抵抗を有する可能性がある。電流密度が約0.05〜約10A/cm
2の範囲であり得るため、シャント抵抗は、約0.005〜1000mΩで変動し得る。
【0041】
[044]さらに他の実施態様において、シャント抵抗器200は、ゼロ抵抗を有し、純粋な導体として作用する可能性もある。このような実施態様において、シャント抵抗器200を使用して、セルに供給された全ての電流の流れをシャント抵抗器200を介して方向転換させることができる。これは、十分機能しなくなったセルを短絡させて、電気化学セルスタック50中の他のセルから十分機能しなくなったセルを十分に隔離するのに有効であり得る。
【0042】
[045]
図6は、電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルの性能を調整するための方法に関するフローチャート300を示す。本方法は、電気化学セルスタック50を提供することを包含し、ここで電気化学セルスタック50は、上述したような複数の電気化学セル100を有していてもよい(工程310)。次に本方法は、電気化学セルスタック50に水素ガスを供給することを包含していてもよい。スタック50に電力を適用してもよく(工程320)、さらに作動を開始してもよい(工程330)。
【0043】
[046]作動中、少なくとも1つの電気化学セル100のパラメーターをモニタリングしてもよい(工程340)。パラメーターは、例えば、少なくとも1つのセルにわたる電圧、少なくとも1つのセルの抵抗、少なくとも1つのセルの温度、電流密度などであり得る。パラメーターのモニタリングは、様々な手段、例えば電圧計、オーム計、温度センサーなどによって達成できる。
【0044】
[047]加えて、および/またはその代わりに、プロセッサーは、スタック50の各電気化学セルのパラメーターをモニタリングするように設計することができる。プロセッサーは、メモリーなどのあらゆる公知のプロセッサーであってもよい。メモリーは、様々なタイプの内部または外部記憶媒体、例えば、これらに限定されないが、例えばコンピューターの内部記憶領域の様式でデータ記憶のための記憶レジスタを提供する、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、および同種のもののいずれか1つまたはそれより多くであってもよく、さらに、揮発性メモリーまたは不揮発性メモリーであってもよい。メモリーは、そこにプロセッサーで実行可能な多数のルーチンを保存させることができる。プロセッサー装置は、各電気化学セルと連結したセンサーから入力信号を受け取り、出力装置に送られる出力信号を処理する。
【0045】
[048]一例において、電圧計を各セルと連結させて、スタック50の作動中に各セルの電圧を読み取るように設計することができる。個々のセルの電圧が臨界の電圧設定値より高い場合(工程350)、セルをシャントするように操作員に警告することができる。臨界の電圧設定値は、例えば、予め決められた電圧値に相当していてもよい。個々のセルの電圧が予め決められた電圧値より高い場合、十分機能しなくなった電気化学セルをシャントすることによって十分機能しなくなったセルの電圧を低下させるように、操作員に警告することができる(工程360)。上述したように、シャント抵抗器200の抵抗値は、望ましい抵抗およびシャントしようとするセルの実際の抵抗に基づき計算することができる。
【0046】
[049]別の実施態様において、温度センサーを各セルと連結させて、スタック50の作動中に各セルの温度を感知するように設計することができる。個々のセルの温度が臨界温度の設定値より高い場合、セルをシャントするように操作員に警告することができる。この実施態様において、シャント抵抗器200の抵抗値は、十分機能しなくなったセルが健全なセルと同じ熱量を放出するように、式(2)に基づき計算することができる。
【0047】
[050]抵抗値が計算されたら、操作員は、シャントしようとするセルのシャント領域220に配置させるシャント抵抗器200を選択することができる。上述したように、シャント抵抗器200は、固定抵抗値を有する固定式の抵抗器であってもよいし、または計算された抵抗値を有するようにプログラム化された可変シャント抵抗器210であってもよい。次いで選択されたシャント抵抗器200を、電気化学セルスタック50の作動中、電気化学セルスタック50の外側からシャント領域220に配置させてもよい。その代わりに、生産中、シャント抵抗器200がシャント領域に配置される場合、操作員は、シャント抵抗器を作動状態にすることができる。
【0048】
[051]十分機能しなくなったセルと接触したら、シャント抵抗器200は、セルに供給された電流の所定部分を、そのセルを迂回して隣接するセルに方向転換させることができる。シャント抵抗器200を介して方向転換されない電流は、そのセルによって使用されて、PEM130を越えて水素をポンプで送ることができる。この方式により、セルの電流密度および電圧、加えて熱の発生を低減して、セルの性能を修復することができる。このプロセスは、電気化学セルスタック50の作動中ずっと継続することができる(工程370および380)。いくつかの場合において、電気化学セルを隣接する電気化学セル100から隔離することが必要な場合がある。例えば、典型的には長期にわたる継続的な高電圧によって引き起こされるバイポーラプレートの腐食、触媒の劣化、膜の劣化などによりセル抵抗が高くなる場合、電気化学セルを隔離することが必要な場合がある。そのような場合において、臨界の電圧設定値は、例えば、予め決められた電圧値より高い欠陥のある電圧値に相当していてもよい。欠陥のある電圧値とは、セルの全体的な劣化を引き起こす可能性がある電圧のことである。個々のセルの電圧が欠陥のある電圧値より高い場合、欠陥のあるセルを隔離するように操作員に警告することができる。
【0049】
[052]いくつかの実施態様において、電流の所定部分を方向転換させることの結果として、修復されたセルは、より少ない水素をポンプで送る可能性がある。これは次に、電気化学セルスタック50の処理量を低下させる可能性がある。これらの実施態様において、電気化学セルスタック50の全体の処理量を維持するために、電気化学セルスタック50に供給された全体の電流を増加させることができる。例えば、n個のセルを含む電気化学セルスタックにおいて、1つのシャントされたセルを補うための全電流の増加分は、シャント抵抗器200を介して方向転換された電流の量の1/n倍であり得る。
【0050】
[053]シャント抵抗器200を介して電流を方向転換させることは、シャント抵抗器200により著しいオーム性の熱の発生を引き起こす可能性がある。これは次に、システム20の効率を低下させ、システム20の冷却コンポーネントへの負荷を増加させる可能性がある。このような問題を克服するために、シャント抵抗器200の代わりに双方向コンバーターを使用することができる。双方向コンバーターは、電気化学セルスタック50中の性能が劣ったセルを迂回させて電流の流れを方向転換させることにより、性能が劣ったセルを通る電流の流れを調節するように設計することができる。比較によれば、双方向コンバーターを利用するシステムは、1つまたはそれより多くのシャント抵抗器200を利用するシステムより効率的である可能性がある。
【0051】
[054]
図7は、双方向コンバーターを包含する例示的なシステム20の概略図である。
図7で示されるように、システム20は、外部の電源および少なくとも1つの双方向コンバーター400を包含する。少なくとも1つの双方向コンバーター400は、セルに供給された電流の所定部分を隣接するセルに方向転換させるように設計されたあらゆる公知の回路またはデバイスであってもよい。例示的な実施態様において、少なくとも1つの双方向コンバーターは、DC−DCコンバーターである。
【0052】
[055]例示的な実施態様において、少なくとも1つの双方向コンバーター400は、個々の電気化学セル100で電流の調節が行われるように配置された2つの双方向コンバーターを包含していてもよい。各双方向コンバーター400は、スタック50中の2つの隣接する電気化学セル100の間に配置されていてもよく、ここでスタック50がn個のセルを含む場合、スタック50中の双方向コンバーターの総数は、(n−1)個である。例えば、
図7において、システム20は、3つの電気化学セル100を有するスタック50を包含し、2つの双方向コンバーター400をさらに包含する。
【0053】
[056]ある特定の実施態様において、双方向コンバーター400をスタック50中に提供して、複数のセルに対して一度に電流の調節を行うように配置してもよいことが予期される。
【0054】
[057]
図8に、例示的な双方向コンバーター400を示す。
図8で示されるように、双方向コンバーター400は、バックブーストコンバーター回路を包含していてもよい。双方向コンバーター400は、T1がオープンでありT2がスイッチする場合、ブーストモードで作動して、十分機能しなくなった電気化学セルを通って流れることから電流の一部を方向転換させるように設計することができる。双方向コンバーター400は、T2がオープンでありT1がスイッチする場合、バックモードで作動して、隣接する「健全な」セルに電流を出力するように設計することができる。
【0055】
[058]
図7および8を参照すると、電源は、電気化学的スタック50に電流を供給でき、双方向コンバーター400は、電流の流れを調節するように設計することができる。スタック50が健全な場合、電流は、電源から発生して、双方向コンバーター400を通らずにスタック50の電気化学セル100を通過してもよい。電気化学セル100の1つまたはそれより多くが十分機能しないと決定される場合、双方向コンバーター400を作動させることができる。ある特定の実施態様において、1つの双方向コンバーター400は、ブーストモードで作動して、十分機能しなくなった電気化学セルからの電流の一部を方向転換させてもよく、そして、別の双方向コンバーター400は、バックモードで作動して、同じ量の電流を隣接する電気化学セルに出力させてもよい。各双方向コンバーター400による電流出力の量は、以下の方程式に基づき計算することができる:
(3)I
Bi=I
i+1−I
i(ここでi=1、…n−1)
式中、I
Biは、双方向コンバーターからの電流出力に相当し、I
1、I
2、…I
nは、望ましいセル電流に相当する。
【0056】
[059]上述したように、1つまたはそれより多くの双方向コンバーター400を利用する開示されたシステムは、1つまたはそれより多くのシャント抵抗器を利用するシステムより効率的である可能性がある。双方向コンバーター400が作動中の場合、動力源からの電流出力は、以下の方程式に基づき計算することができる:
【0058】
式中、I
PSは、電源からの電流出力に相当し、R
jは、セルjの抵抗に相当し、ηは、ブーストモードで作動している場合はコンバーターの効率に相当し、バックモードで作動している場合はコンバーターの効率の逆数に相当する。コンバーターが約95%の効率を有すると仮定すると、双方向コンバーター400を使用したシステムの電力損失は、オーム加熱による電力損失を経たシャント抵抗器を使用したシステムより低い可能性がある。
【0059】
[060]本発明の他の実施態様は、本明細書の考察と本明細書で開示された発明の実施から当業者には明らかであると予想される。本明細書および例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲および本質
は特許請求の範囲で示されるものとする。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を転記する。
(1)電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルの性能を調整するための方法であって、
電気化学セルスタックに電力を供給するステップであり、ここで該電気化学セルスタックは、複数の電気化学セルを包含する、ステップ;
該複数の電気化学セルの少なくとも1つのパラメーターをモニタリングするステップ;
電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップ、および
該電気化学セルスタックの作動中に、十分機能しなくなった電気化学セルからの電流の流れの所定部分を方向転換させるステップ
を含む、上記方法。
(2)十分機能しなくなった電気化学セルからの電流の流れの所定部分を方向転換させるステップが、シャントするステップを包含する、(1)に記載の方法。
(3)シャントするステップが、前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる電圧を低下させるステップを包含する、(2)に記載の方法。
(4)前記パラメーターが、電圧、電流、および温度の少なくとも1つである、(1)に記載の方法。
(5)電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップが、前記電気化学セルにわたる電圧が、臨界の電圧設定値より高いかどうかを決定するステップを包含する、(1)に記載の方法。
(6)前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる前記電圧を予め決められた電圧値に落とすのに十分な抵抗値を計算するステップ;および
計算された抵抗値に基づき前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするためのシャント抵抗器を選択するステップ
をさらに包含する、(5)に記載の方法。
(7)前記予め決められた電圧値が、前記電気化学セルスタックの電気化学セル1つ当たりの平均電圧、および前記電気化学セルスタックの電気化学セルの最小電圧の少なくとも1つに相当する、(6)に記載の方法。
(8)選択されたシャント抵抗器が、前記計算された抵抗値±50%に等しい固定抵抗を有する、(6)に記載の方法。
(9)選択されたシャント抵抗器が、可変抵抗を有し、計算された抵抗値±50%に等しい抵抗を有するように前記シャント抵抗器をプログラミングするステップをさらに包含する、(6)に記載の方法。
(10)前記電気化学セルスタックの作動中に前記十分機能しなくなった電気化学セルのシャント領域中に、シャント抵抗器を取り付けるステップをさらに包含し、ここで該シャント抵抗器を取り付けるステップは、該シャント領域に該シャント抵抗器を少なくとも部分的に挿入して、該シャント抵抗器の前記十分機能しなくなった電気化学セルと接触する面積を調節するステップを包含する、(2)に記載の方法。
(11)前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするステップが、前記十分機能しなくなった電気化学セルに供給された前記電流の所定部分をシャント抵抗器を介して方向転換させて、前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる前記電圧を低下させるステップを包含する、(2)に記載の方法。
(12)電気化学セルが十分機能しなくなるかどうかを決定するステップが、電気化学セルの温度が臨界温度の設定値より高いかどうかを決定するステップを包含する、(1)に記載の方法。
(13)前記十分機能しなくなった電気化学セルにより発生した熱を予め決められた値に落とすのに十分な抵抗値を計算するステップ;および
計算された抵抗値に基づき前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするためのシャント抵抗器を選択するステップ
をさらに包含する、(12)に記載の方法。
(14)前記十分機能しなくなった電気化学セルをシャントするステップが、前記十分機能しなくなった電気化学セルに供給された前記電流の所定部分をシャント抵抗器を介して方向転換させて、前記十分機能しなくなった電気化学セルにより発生した熱を低減するステップを包含する、(2)に記載の方法。
(15)前記十分機能しなくなった電気化学セルからの前記電流を方向転換させるステップが、2つまたはそれより多くの双方向コンバーターを用いて電流を方向転換させるステップを包含する、(1)に記載の方法。
(16)水素を生成するように設計された活性領域;および
該活性領域の境界の外側のシャント領域
を含む電気化学セルであって、該シャント領域は、シャントを受け入れるように設計されている、上記電気化学セル。
(17)前記シャントが、前記電気化学セルを介する電流の流れを調節するために、前記シャント領域に部分的に挿入されて、前記シャントの前記電気化学セルと接触する面積を調節するように設計されている、(16)に記載のセル。
(18)前記シャント領域が、前記電気化学セルの角または縁部上に配置されている、(16)に記載のセル。
(19)電気化学セルの性能を調整するためのシステムであって、
2つまたはそれより多くの電気化学セルを包含する電気化学セルスタックであり、ここ
各電気化学セルは、
水素を生成するための活性領域;および
該活性領域に隣接する少なくとも1つのバイポーラプレート
を包含する、電気化学セルスタック;ならびに
十分機能しなくなった電気化学セルの活性領域を架橋する少なくとも1対のバイポーラプレートの間に取り付けられるように設計されたシャント
を含む、上記システム。
(20)前記シャントが、非ゼロ抵抗を有し、前記シャントは、前記電流の流れの一部を方向転換させて、前記十分機能しなくなった電気化学セルにわたる電圧を低下させるように設計されている、(19)に記載のシステム。
(21)前記シャントが、予め決められた抵抗を有する固定シャントである、(19)に記載のシステム。
(22)前記シャントが、前記電気化学セルにわたる電圧、前記電気化学セルの温度、および前記電気化学セルにわたる前記抵抗の少なくとも1つに基づく可変抵抗を有する可変シャント抵抗器である、(19)に記載のシステム。
(23)電気化学セルスタック中の少なくとも1つの電気化学セルの性能を調整するためのシステムであって、
2つまたはそれより多くの電気化学セルを包含する電気化学セルスタックであり、ここで各電気化学セルは、
水素を生成するための活性領域;および
該活性領域に隣接する少なくとも1つのバイポーラプレート
を包含する、電気化学セルスタック;ならびに
前記電気化学セルスタックの少なくとも1つの電気化学セルに電流の調節を提供するよ
うに配置された、双方向コンバーター
を含む、上記システム。
(24)各双方向コンバーターが、バックブーストコンバーター回路を包含する、請求項23に記載のシステム。
(25)一方の双方向コンバーターが、ブーストモードで作動して、十分機能しなくなった電気化学セルからの電流の流れの所定部分を方向転換させるように設計されており、他方の双方向コンバーターが、バックモードで作動して、同じ量の電流を隣接する電気化学セルに出力するように設計されている、(24)に記載のシステム。
【符号の説明】
【0060】
20 システム
50 電気化学セルスタック
80 活性領域
100 電気化学セル
110 アノード
120 カソード
130 プロトン交換膜(PEM)
150 バイポーラプレート
200 シャント抵抗器
200a シャントの面積
210 可変シャント抵抗器
220 シャント領域
300 フローチャート
310、320、330、340、350、360、370、380 工程
400 双方向コンバーター