特許第6456966号(P6456966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456966
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   F16J15/34 Z
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-545042(P2016-545042)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2015070103
(87)【国際公開番号】WO2016031411
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-172091(P2014-172091)
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】丸山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉柳 健二
(72)【発明者】
【氏名】池田 康浩
(72)【発明者】
【氏名】谷 公裕
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−022657(JP,U)
【文献】 実公平01−028382(JP,Y2)
【文献】 実開平05−001075(JP,U)
【文献】 特開2007−032652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、付勢部材で軸方向に付勢された回転側密封環と回転軸の外周面の間を密封するベローズと、前記回転側密封環及び前記ベローズの外周に嵌着されたケースと、前記ベローズを回転軸に締め付けるドライブリングとを有するメカニカルシールにおいて、前記回転側密封環の外周部には軸方向に貫通する複数の切欠溝が設けられ、前記回転側密封環の密封摺動面側の側面には前記切欠溝から周方向に延びるように廻り止め切欠部が設けられ、前記ケースの前記回転側密封環側の端部には、前記切欠溝に対向して前記切欠溝を通過可能であるとともに、前記廻り止め切欠部の側面に軸方向に係止可能に、内径方向に膨出する廻り止め凸部が設けられることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】
前記ベローズの前記回転側密封環の背面と当接する側にはベローズ密封面が形成され、前記ベローズ密封面またはこの近傍には、前記ベローズ密封面より前記回転側密封環側に突出する突起が周方向に複数設けられ、前記突起は、前記回転側密封環と前記ベローズが一体化される際には突起が前記回転側密封環を軸方向に押すことにより、回転側密封環の背面とベローズ密封面とを非接触状態にさせると共に、メカニカルシールが前記ハウジングと回転軸との間に装着された際には弾性変形して前記回転側密封環の背面とベローズ密封面とが当接するように設定されることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項4】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項5】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項6】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、回転軸と直交する面に平行に形成され、周端付近において軸方向に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項7】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項8】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項9】
廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の前記側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載のメカニカルシール。
【請求項10】
廻り止め切欠部の底面は、回転側密封環の外周面と平行に形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
【請求項11】
廻り止め切欠部の底面は、周方向の端部に向けて深さが浅くなるように形成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水中ポンプおよび陸上汎用ポンプなどの回転機器のシールに用いられるメカニカルシールに関し、詳細には、固定側密封環と回転側密封環の摺動面における密封面圧を付与するスプリングが回転側に存在するメカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、密封面圧を付与するスプリングが回転側に存在するメカニカルシールの一種として、図8に示すように、固定側密封環32が、ハウジング30の軸孔51の開口部に形成した嵌合凹部52内にカップガスケット31を介して気密的に嵌着される一方、回転軸50の外周に軸方向移動自在に配置された回転側密封環33が、カラー40でバックアップされたコイルスプリング41の軸方向付勢力によって固定側密封環32に押し付けられて密封摺動面Sを形成し、回転軸50の外周面と回転側密封環33の背面33aの間に作動用の軸パッキンとしてベローズ45を介在させ、回転側密封環33と回転軸50の間をベローズ45で密封してなる構造のものが知られている(以下、「従来技術」という。例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
上記従来技術に係るメカニカルシールは、断面が鎌首状を呈するベローズ45の先端頚部45aは、回転側密封環33の外周に嵌着した金属製のケース46の背面部46aの内側に固定されて、回転側密封環33の背面33aと密着しており、また、ベローズ45の内径筒状部45bは、その外周面に嵌着された金属製のドライブリング47によって締め付けられ、回転軸50の外周面に適当な締め代をもって圧着されている。
【0004】
ケース46の背面部46aの内径側には軸方向に延びる突起46cが突設され、この突起46cがドライブリング47の外周面に形成された軸方向に延びる切欠溝47aと遊嵌する一方、ケース46の外径筒状部46dに形成された陥没部46eが、回転側密封環33の外周面に形成された凹部33bと嵌合している。すなわち、回転側密封環33はベローズ45の内径筒状部45b、ドライブリング47の切欠溝47a、ケース46の突起46c、ケース46の陥没部46eを介して回転軸50からの駆動力が伝達され、回転軸50と一体に回転する。
【0005】
このようなメカニカルシールにおいて、回転側密封環33をベローズ45などの回転側部材に一体化する手段としては、次の2つの方法が知られている。
第1の手段:図8(b)及び(c)に示すように、ケース46の外径筒状部46dの回転側密封環33の先端を内径側にカシメて折曲部46fを形成し、該折曲部46fでもって回転側密封環33の表面33cを包み込む。
第2の手段:回転側密封環33の背面33aとベローズ45の密封面45cとの間に不乾性接着剤等を塗布し、回転側密封環33をベローズ45に係止する。
【0006】
しかしながら、上記の第1の手段では、本来、折曲部46fが回転側密封環33の表面33cに接触しない構造になっているが、カシメ治具、カシメ条件及び回転側の構成部材(回転側密封環33、ベローズ45、ドライブリング47及びケース46)の仕上がり寸法等により、図8(b)のようなカシメ過ぎ、あるいは、図8(c)のようにカシメは正常であるが折曲部46fが回転側密封環33の表面33cに強く接触することにより、回転側密封環33に歪み及びクラックが発生するという問題があった。
また、上記の第2の手段では、不乾性接着剤を回転側密封間33の背面33aとベローズ45の密封面45cとの間に塗布し、両者を接着するが、接着剤を均一に塗布することが難しく、塗布ムラが発生し、密封流体が回転側密封環33の背面33aとベローズ45の密封面45cとの間から漏れ出たり、不乾性接着剤が密封摺動面Sに付着・浸入し、トルクアップが発生し起動不良に至るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−1075号公報
【特許文献2】特開2007−32652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、カシメ手段及び接着剤による接着手段を用いることなく、回転側密封環を、該回転側密封環以外のベローズなどの回転側の構成部材と一体化することのできるメカニカルシールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明のメカニカルシールは、第1に、ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、付勢部材で軸方向に付勢された回転側密封環と回転軸の外周面の間を密封するベローズと、前記回転側密封環及び前記ベローズの外周に嵌着されたケースと、前記ベローズを回転軸に締め付けるドライブリングとを有するメカニカルシールにおいて、前記回転側密封環の外周部には軸方向に貫通する複数の切欠溝が設けられ、前記回転側密封環の密封摺動面側の側面には前記切欠溝から周方向に延びるように廻り止め切欠部が設けられ、前記ケースの前記回転側密封環側の端部には、前記切欠溝に対向して前記切欠溝を通過可能な内径方向に膨出する廻り止め凸部が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、カシメ手段又は不乾性接着剤による接着手段を用いることがないので、カシメ手段による回転側密封環5の歪み及びクラックの発生並びに不乾性接着剤の塗布ムラに起因する不乾性接着剤の漏れ、不乾性接着剤の密封摺動面への付着を排除でき、回転側密封環の寿命を向上させ、回転側の構成部材の一体化の信頼性を増大させ、密封摺動面の密封性を維持することができる。
【0010】
また、本発明のメカニカルシールは、第2に、第1の特徴において、前記ベローズの前記回転側密封環の背面と当接する側にはベローズ密封面が形成され、前記ベローズ密封面またはこの近傍には、前記ベローズ密封面より前記回転側密封環側に突出する突起が周方向に複数設けられ、前記突起は、前記回転側密封環と前記ベローズが一体化される際には突起が前記回転側密封環を軸方向に押すことにより、回転側密封環の背面とベローズ密封面とを非接触状態にさせると共に、メカニカルシールが前記ハウジングと回転軸との間に装着された際には弾性変形して前記回転側密封環の背面とベローズ密封面とが当接するように設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、突起のスプリング力により、回転側密封環を常に押した状態にあるため、輸送、取扱いにおいても回転側密封環が周方向にずれて他の回転側の構成部材から離脱することが防止でき、回転側密封環を他の回転側の構成部材に確実に係止することができる。
また、ケースの背面部の内側から廻り止め凸部の背面までの軸方向長さと、ケースの背面部の内側から回転側密封環の廻り止め切欠部の側面までの軸方向長さとの寸法関係を厳密に求める必要がないので、製造が容易になる。
さらに、組立が容易になると共に、無理に嵌入することによる廻り止め切欠部の側面の欠け、回転側密封環にクラック、密封摺動面の歪み発生を防止することができる。
【0011】
また、本発明のメカニカルシールは、第3に、第1または第2の特徴において、前記廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め切欠部の加工を容易にすることができる。
【0012】
また、本発明のメカニカルシールは、第4に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から離脱しにくい。
【0013】
また、本発明のメカニカルシールは、第5に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め凸部を廻り止め切欠部に嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者を密接に係止させることができる。
【0014】
また、本発明のメカニカルシールは、第6に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成され、周端付近において軸方向に凹んだ凹部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から、一層、離脱しにくい。
【0015】
また、本発明のメカニカルシールは、第7に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、回転軸が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から離脱しにくい。
【0016】
また、本発明のメカニカルシールは、第8に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、回転軸が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から、一層、離脱しにくい。
【0017】
また、本発明のメカニカルシールは、第9に、第1または第2の特徴において、廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることを特徴としている。
この特徴によれば、回転軸が両方向のいずれかに回転するタイプにおいても、廻り止め凸部を廻り止め切欠部に嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
【0018】
また、本発明のメカニカルシールは、第10に、第3ないし第9のいずれかの特徴において、廻り止め切欠部の底面は、回転側密封環の外周面と平行に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め切欠部の加工を容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明のメカニカルシールは、第11に、第3ないし第9のいずれかの特徴において、廻り止め切欠部の底面は、周方向の端部に向けて深さが浅くなるように形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、廻り止め凸部と廻り止め切欠部の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)カシメ手段又は不乾性接着剤による接着手段を用いることがないので、カシメ手段による回転側密封環5の歪み及びクラックの発生並びに不乾性接着剤の塗布ムラに起因する密封流体の漏れ、不乾性接着剤の密封摺動面への付着を排除でき、回転側密封環の寿命を向上させ、回転側の構成部材の一体化の信頼性を増大させ、密封摺動面の密封性を維持することができる。
【0021】
(2)突起が周方向に複数設けられることにより、突起のスプリング力により、回転側密封環を常に押した状態にあるため、輸送、取扱いにおいても回転側密封環が周方向にずれて他の回転側の構成部材から離脱することが防止でき、回転側密封環を他の回転側の構成部材に確実に係止することができる。
また、ケースの背面部の内側から廻り止め凸部の背面までの軸方向長さと、ケースの背面部の内側から回転側密封環の廻り止め切欠部の側面までの軸方向長さとの寸法関係を厳密に求める必要がないので、製造が容易になる。
さらに、組立が容易になると共に、無理に嵌入することによる廻り止め切欠部の側面の欠け、回転側密封環にクラック、密封摺動面の歪み発生を防止することができる。
【0022】
(3)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることにより、廻り止め切欠部の加工を容易にすることができる。
(4)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることにより、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から離脱しにくい。
(5)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることにより、廻り止め凸部を廻り止め切欠部に嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者を密接に係止させることができる。
(6)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成され、周端付近において軸方向に凹んだ凹部が形成されていることにより、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から、一層、離脱しにくい。
【0023】
(7)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、回転軸と直交する面に平行に形成されていることにより、回転軸が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から離脱しにくい。
(8)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって深くなるように傾斜していることにより、回転軸が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部が廻り止め切欠部から、一層、離脱しにくい。
(9)廻り止め切欠部は、切欠溝から周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部の背面と当接する廻り止め切欠部の側面は、周端に向かって浅くなるように傾斜していることにより、回転軸が両方向のいずれかに回転するタイプにおいても、廻り止め凸部を廻り止め切欠部に嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
【0024】
(10)廻り止め切欠部の底面は、回転側密封環の外周面と平行に形成されていることにより、廻り止め切欠部の加工を容易に行うことができる。
(11)廻り止め切欠部の底面は、周方向の端部に向けて深さが浅くなるように形成されていることにより、廻り止め凸部と廻り止め切欠部の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1に係るメカニカルシールを示す縦断面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図3(a)は図2の回転側密封環の外周部を拡大して示した正面図であり、図3(b)は図3(a)の平面図、図3(c)は図3(a)のB−B断面図である。
図4】本発明の実施例1に係るメカニカルシールの回転側密封環に設けられた廻り止め切欠部の種々の形状を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るメカニカルシールにおける廻り止め切欠部の種々の底面形状を示す正面図である。
図6】本発明の実施例2に係るメカニカルシールの回転側の構成部材を示す縦断面図である。
図7図6のベローズの要部を拡大して示した図である。
図8】従来技術のメカニカルシールを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0027】
図1ないし図5を参照しながら、本発明の実施形態1に係るメカニカルシールを説明する。
図1において、紙面の左側は機外側であり、右側は機内側である。
【0028】
図1に示すメカニカルシールは、ハウジング1と回転軸2との間に形成した軸封部3に固定側密封環4及び回転側密封環5などのシール部材が装着されて、ハウジング1と回転軸2との間をシールするメカニカルシールであって、固定側密封環4と回転側密封環5との密封面圧を付与する付勢部材(コイルスプリング9)が回転側に存在するものである。
【0029】
図1において、固定側密封環4は、ハウジング1の軸封部3の開口部に形成された嵌合凹部6内にカップガスケット7を介して気密的に嵌着される。一方、回転軸2の外周に軸方向移動自在に配置された回転側密封環5は、回転軸2に固定されたカラー8でバックアップされたコイルスプリング9の軸方向付勢力によって固定側密封環4に押し付けられて密封摺動面Sを形成する。また、回転軸2の外周面と回転側密封環5の背面5aの間に作動用の軸パッキンとしてベローズ10が介在され、回転側密封環5と回転軸2の間をベローズ10で密封する構造となっている。
【0030】
ベローズ10は、例えば、ゴム材などの弾性に富む材料から形成され、断面が鎌首状を呈し、その先端頚部10aは、回転側密封環5の外周に嵌着した金属製のケース11の背面部11aの内側に固定される。また、先端頚部10aは回転側密封環5の背面5aと密着している。さらに、ベローズ10の内径筒状部10bは、その外周面に嵌着された金属製のドライブリング12によって締め付けられ、回転軸2の外周面に適当な締め代をもって圧着されている。
【0031】
ケース11の背面部11aの内径側にはカラー8側に向かって軸方向に延びる突起11cが突設され、この突起11cがドライブリング12の外周面に形成された軸方向に延びる切欠溝12aと遊嵌するようになっている。
【0032】
図2及び図3に示すように、回転側密封環5の外周部には軸方向に貫通する複数の切欠溝5bが設けられている。本例の場合、切欠溝5bは6等配で設けられているが、これに限定されることはなく、2以上であればよい。また、切欠溝5bの正面から見た形状(図2及び図3(a)参照。)は半円状をなしているが、これに限定されることはなく、例えば、矩形状でもよい。
また、回転側密封環5の密封摺動面S側の側面5c(特に、図3(c)参照。)には、切欠溝5bから周方向に延びるように廻り止め切欠部5dが設けられている。廻り止め切欠部5dの役割及び形状等については後に詳細に説明する。
【0033】
一方、図1に示されるケース11の回転側密封環5側の端部11dには、切欠溝5bに対応する位置に、切欠溝5bを通過可能な形状であって内径方向に膨出する廻り止め凸部11eが設けられる(特に、図2参照。)。例えば、切欠溝5bが半円状をなして6等配で設けられる場合、廻り止め凸部11eも、切欠溝5bの径方向及び周方向の位置に対応して、切欠溝5bを通過可能なように切欠溝5bより少し小さい半円状をなして6等配で設けられる。この廻り止め凸部11eは、回転軸2の回転力がベローズ10及びケース11を介して回転側密封環5に伝達される際に、ケース11と回転側密封環5とが相対的に空転することを防止してケース11の回転力が確実に回転側密封環5に伝達されるためのものである。
【0034】
図2において、回転軸2が矢印方向(反時計方向)に回転される場合、ケース11も同方向に回転され、廻り止め凸部11eの回転方向側の側部11gが廻り止め切欠部5dの当接部5fと当接し、ケース11の回転力が回転側密封環5に伝達される。
なお、回転軸2が時計方向に回転される場合、廻り止め凸部11eは当接部5gと当接する。
【0035】
回転側密封環5とベローズ10とをケース11により一体化する際には、ケース11の廻り止め凸部11eが回転側密封環5の切欠溝5bを通過させるようにして回転側密封環5とケース11とを嵌合させ、その後、回転側密封環5とベローズ10とを周方向に相対回転させることにより、ケース11の廻り止め凸部11eが回転側密封環5の廻り止め切欠部5dに嵌入され、両者が一体的に係止され組立される。
【0036】
図1において、ケース11の背面部11aの内側から廻り止め凸部11eの背面11fまでの軸方向長さをL1、ベローズの先端頚部10aの軸方向における自由長(押し付け加重を受けていない状態での軸方向長さ)と回転側密封環5の背面5aから廻り止め切欠部の側面5eまでの軸方向長さを足した長さをL2とした場合、L1>L2となるように設定され、廻り止め凸部11eの背面11fと廻り止め切欠部5dの側面5eとの間には僅かな間隙が形成されるようになっている。
【0037】
回転側密封環5はベローズ10の内径筒状部10b、ドライブリング12の切欠溝12a、ケース11の突起11c、ケース11の廻り止め凸部11eを介して回転軸2からの駆動力が伝達され、回転軸2と一体に回転する。
なお、本発明において、回転側密封環5、ベローズ10、ケース11及びドライブリング12からなる組立体を回転側の構成部材ということがある。
【0038】
次に、図4及び図5を参照しながら、廻り止め切欠部5dについて説明する。
図4は、回転側密封環5の外周面を見た平面図であり、廻り止め切欠部5dの種々の平面形状が示されている。
図4(a)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に平行に形成されている。この例は、加工が容易であり、オーソドックスな形状である。
また、廻り止め切欠部5dの周方向の長さRは、少なくとも廻り止め凸部11eの周方向の長さと同じであればよいが、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから離脱する危険性を回避する意味で、切欠溝5bの周方向の最大幅bの1倍〜5倍に設定されることが望ましい。
【0039】
図4(b)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって廻り止め切欠部5dが深くなるように(廻り止め切欠部5dの当接部5fに向けて廻り止め切欠部5dの側面5eが側面5cから離れるように)傾斜している。この例は、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから離脱しにくいという効果がある。
【0040】
図4(c)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって廻り止め切欠部5bが浅くなるように(廻り止め切欠部の当接部5fに向けて廻り止め切欠部の側面5eが側面5cに近づくように)傾斜している。この例は、廻り止め凸部11eを廻り止め切欠部5dに嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止されるという効果がある。
【0041】
図4(d)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に平行に形成され、周端付近において軸方向に凹んだ凹部が形成されている。この例は、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから、一層、離脱しにくいという効果がある。
【0042】
図4(e)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に平行に形成されている。この例は、回転軸2が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから離脱しにくいという効果がある。
【0043】
図4(f)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって深くなるように傾斜している。この例は、回転軸2が両方向のいずれかに回転する場合にも、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから、一層、離脱しにくいという効果がある。
【0044】
図4(g)では、廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって浅くなるように傾斜している。この例は、回転軸2が両方向のいずれかに回転するタイプにおいても、廻り止め凸部11eを廻り止め切欠部5dに嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止されるという効果がある。
【0045】
図5は、回転側密封環5の外周面を見た正面図であり、廻り止め切欠部の種々の底面形状を示している。
図5(a)では、廻り止め切欠部5dの底面5hは、回転側密封環5の外周面と平行に形成されている。この例は、加工が容易であり、オーソドックスな形状である。
【0046】
図5(b)では、廻り止め切欠部5dの底面5hは、周方向の端部に向けて深さが浅くなるように形成されている。この例は、廻り止め凸部11eと廻り止め切欠部5dの周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止されるという効果がある。
【0047】
本発明の実施例1に係るメカニカルシールは以下の効果を奏する。
(1)回転側密封環5、ベローズ10、ケース11及びドライブリング12の組立体である回転側の構成部材の一体化における回転側密封環5の固定においては、ケース11の廻り止め凸部11eと回転側密封環5の廻り止め切欠部5dとの嵌合により一体的に係止されるものであり、カシメ手段又は不乾性接着剤による接着手段を用いることがないので、カシメ手段による回転側密封環5の歪み及びクラックの発生並びに不乾性接着剤の塗布ムラに起因する密封流体の漏れ、不乾性接着剤の密封摺動面Sへの付着を排除できる。その結果、回転側密封環5の寿命を向上させることができ、回転側の構成部材の一体化の信頼性を増大させ、密封摺動面Sの密封性を維持することができる。
(2)廻り止め切欠部5dの形状を工夫することにより、回転側密封環5とケース11との離脱を防止することができると共に嵌合を容易にすることができる。さらに、両者の嵌合状態を密接にすることができる。
具体的には、次のとおりである。
(a)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって深くなるように傾斜していることにより、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから離脱しにくい。
(b)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって浅くなるように傾斜していることにより、廻り止め凸部11eを廻り止め切欠部5dに嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
(c)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の一方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に平行に形成され、周端付近において軸方向に凹んだ凹部が形成されていることにより、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから、一層、離脱しにくい。
(d)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する側面5eは、回転軸と直交する面に平行に形成されていることにより、回転軸2が両方向に回転する場合にも、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから離脱しにくい。
(e)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって深くなるように傾斜していることにより、回転軸2が両方向に回転する場合にも、廻り止め凸部11eが廻り止め切欠部5dから、一層、離脱しにくい。
(f)廻り止め切欠部5dは切欠溝5bから周方向の双方に延びるように形成され、廻り止め凸部11eの背面11fと当接する廻り止め切欠部の側面5eは、回転軸と直交する面に非平行、すなわち、周端に向かって浅くなるように傾斜していることにより、回転軸2が両方向に回転するタイプにおいても、廻り止め凸部11eを廻り止め切欠部5dに嵌入しやすく、また、両者の周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
(g)廻り止め切欠部5dの底面5hは、周方向の端部に向けて深さが浅くなるように形成されていることにより、廻り止め凸部11eと廻り止め切欠部5dの周方向の相対回転に伴い両者が密接に係止される。
【実施例2】
【0048】
図6及び図7を参照して、本発明の実施例2に係るメカニカルシールについて説明する。
実施例2に係るメカニカルシールは、ベローズの回転側密封環の背面と当接する側に回転側密封環側に突出する複数の突起が設けられ構成されている点で、実施例1と相違するが、その他の点は実施例1と基本的に同じであり、実施例1と同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図6において、ベローズ20はゴム材で形成され、ベローズ20の回転側密封環5の背面5aと当接する側にはベローズ密封面20cが形成され、ベローズ密封面20cの外径側には、ベローズ密封面20cより回転側密封環5側に突出する突起20dが周方向に複数設けられる。
【0050】
突起20dは、回転側密封環5とベローズ20が一体化される際には突起20dが回転側密封環5を軸方向に押すことにより、回転側密封環5の背面5aとベローズ密封面20cとを非接触状態にさせると共に回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの側面5eとケース11の廻り止め凸部11eの背面11fとを確実に当接させることのできるスプリング機能を有し、メカニカルシールがハウジング1と回転軸2との間に装着された際には弾性変形して回転側密封環5の背面5aとベローズ密封面20cとが当接するように設定されるものである。
【0051】
突起20dの形状は特に限定されるものではない。また、突起20dの設けられる場所もベローズ密封面20cの外径側に限定されるものではなく、ベローズ密封面20cあるいはこの近傍であればよい。
【0052】
上記したように、突起20dのスプリング力により、回転側密封環5を常に押した状態にあるため、輸送、取扱いにおいても回転側密封環5が周方向にずれて他の回転側の構成部材から離脱することが防止でき、回転側密封環5を他の回転側の構成部材に確実に係止することができる。
【0053】
実施例1の場合は、回転側の構成部材の部品寸法の出来上がり状態により、ケース11の背面部11aの内側から廻り止め凸部11eの背面11fまでの軸方向長さをL1、ベローズの先端頚部10aの軸方向における自由長(押し付け加重を受けていない状態での軸方向長さ)と回転側密封環5の背面5aから廻り止め切欠部の側面5eまでの軸方向長さを足した長さをL2とした場合、L2>L1、あるいは、L2<L1になることがある。
L2>L1の場合、ベローズ10がケース11内部に設置される際の力により先端頚部10aが変形し、ケース11の廻り止め凸部11eの背面11fと回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの廻り止め切欠部の側面5eとは接触し、L2<L1の場合、ケース11の廻り止め凸部11eの背面11fと回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの廻り止め切欠部の側面5eとは接触しない。
ケース11の廻り止め凸部11eの背面11fと回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの廻り止め切欠部の側面5eとが接触した場合は、回転側密封環5の他の回転側の構成部材との組立が難しくなると共に、無理に嵌入すると廻り止め切欠部5dの廻り止め切欠部の側面5eが欠けたり、回転側密封環5にクラック、密封摺動面Sに歪みが発生し、漏れにつながる可能性がある。
一方、ケース11の廻り止め凸部11eの背面11fと回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの側面5eとが接触しない場合は、両者の間に隙間が生じるため、回転側密封環5は不確実な係止状態となり、輸送、取扱いにおいて、回転側密封環5が脱落する可能性がある。
実施例2においては、突起20dのスプリング力により、回転側密封環5を常に押した状態にあるため、実施例1において懸念される点を払拭することができる。
【0054】
本発明の実施例2に係るメカニカルシールは、実施例1の効果に加えて以下の効果を奏する。
(1)突起20dのスプリング力により、回転側密封環5を常に押した状態にあるため、輸送、取扱いにおいても回転側密封環5が周方向にずれて他の回転側の構成部材から離脱することが防止でき、回転側密封環5を他の回転側の構成部材に確実に係止することができる。
(2)ケース11の背面部11aの内側から廻り止め凸部11eの背面11fまでの軸方向長さL1と、ケース11の背面部11aの内側から回転側密封環5の廻り止め切欠部5dの側面5eまでの軸方向長さL2との寸法関係を厳密に求める必要がないので、製造が容易になる。
(3)組立が容易になると共に、無理に嵌入することによる廻り止め切欠部5dの側面5eの欠け、回転側密封環5にクラック、密封摺動面Sの歪み発生を防止することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 ハウジング
2 回転軸
3 軸封部
4 固定側密封環
5 回転側密封環
5a 背面
5b 切欠溝
5c 側面
5d 廻り止め切欠部
5e 廻り止め切欠部の側面
5f 廻り止め切欠部の当接部
5g 当接部
5h 廻り止め切欠部の底面
6 嵌合凹部
7 カップガスケット
8 カラー
9 付勢部材(コイルスプリング)
10 ベローズ
10a 先端頚部
10b 内径筒状部
11 ケース
11a 背面部
11c 突起
11d 端部
11e 廻り止め凸部
11f 廻り止め凸部の背面
11g 廻り止め凸部の側部
12 ドライブリング
12a 切欠溝
20 ベローズ
20c ベローズ密封面
20d 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8