(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456978
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】洗浄リザーバを有する医療用注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20190110BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20190110BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20190110BHJP
A61M 5/00 20060101ALN20190110BHJP
【FI】
A61M5/31 500
A61M5/24 502
A61M5/32 510K
!A61M5/00 518
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-567499(P2016-567499)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公表番号】特表2017-515580(P2017-515580A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015060239
(87)【国際公開番号】WO2015173151
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】14168126.2
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】メランデル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ニルスン, クレスチャン ホイリース
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルステズ, ミーイ
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−532191(JP,A)
【文献】
特開昭61−106159(JP,A)
【文献】
特開昭63−51867(JP,A)
【文献】
米国特許第4416663(US,A)
【文献】
米国特許第3354881(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
A61M 5/32
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された用量の液剤を配分するための医療用注射装置であって、前記液剤を包含するカートリッジ(10)を支持するハウジング(2)と、
遠位端(23)を有する遠位部(22)及び、反対の近位部(24)、並びにその間に長手方向のルーメン(25)を有する針カニューレ(21)であって、前記遠位部(22)は遠位方向に延伸し、前記近位部(24)は近位方向に且つ前記カートリッジ(10)内に延伸するように、前記ハウジング(2)に対して相対的に取り付けられた、針カニューレ(21)と、
伸縮式可動シールド(30)であって、前記ハウジング(2)に対して伸縮式に可動であり、前記伸縮式可動シールド(30)と前記ハウジング(2)との間で動作可能なばね手段(35)によって前記遠位方向に付勢され、且つ、後続の注射と注射の間に、前記針カニューレ(21)の少なくとも前記遠位端(23)を洗浄するための洗浄液を包含する第1の洗浄リザーバ(40)を保持する、伸縮式可動シールド(30)と、
を備え、
前記第1の洗浄リザーバ(40)は、長手方向に互いに間隔を空けて配置され前記洗浄液を包含する空間を画定する遠位のシール(41)と近位のシール(42)のうち、前記遠位のシールによって遠位で封止され、前記近位のシールによって近位で封止され、前記第1の洗浄リザーバ(40)は、前記第1の洗浄リザーバ(40)内に包含される前記洗浄液の体積の膨張を受け入れるため、前記第1の洗浄リザーバ(40)を第2のオーバーフローリザーバ(55)と接続する開口(43)を更に備える、医療用注射装置(1)。
【請求項2】
前記第2のオーバーフローリザーバ(55)内部に所定の量の洗浄液が存在する、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記第2のオーバーフローリザーバ(55)は前記伸縮式可動シールド(30)によって保持される、請求項1または2に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記針カニューレ(21)は前記ハウジング(2)に恒久的に取り付けられている、請求項1から3の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記第2のオーバーフローリザーバ(55)は導管(51)として形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記導管(51)は湾曲している、請求項5に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記導管(51)は螺旋形である、請求項6に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記洗浄液は、前記導管(51)内部で所定のレベル(L)まで充填されている、請求項5から7の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項9】
前記導管(51)は出口(52)を介して大気に向けて終端する、請求項5から8の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項10】
前記導管(51)の外側部(53)は、内部でより小さい直径を有する、請求項5から9の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記導管(51)はフィルタを備える、請求項5から10の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項12】
前記導管(51)は閉鎖されている、請求項5から11の何れか一項に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記洗浄リザーバ(40)内の前記洗浄液は、前記カートリッジ(10)内に包含される、保存料を包含する液剤と同一である、請求項1から12の何れか一項に記載の、医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド式針カニューレを有する医療用注射装置に関する。本発明は、特に、シールド式針カニューレが反復使用のために設けられ、注射時にユーザの皮膚に貫入する針カニューレの遠位端が後続の注射の間に洗浄される、こうした注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後続の注射と注射の間に針カニューレの先端が洗浄液内に維持される注射装置は、US3,354,881、US4,416,663、US4,666,436、WO2014/064100、及びEP182,682で開示されている。これらの先行技術による注射装置に見られるように、洗浄用チャンバは大抵、後続の注射と注射の間に針カニューレの先端を覆う格納式のシールドによって、遠位で保持されている。
【0003】
更に、WO2014/064100は、後続の注射と注射の間に針カニューレの遠位端を覆う伸縮式シールドを有する、充填済みの使い捨て注射装置を開示している。この伸縮式シールドは、ばねによって遠位の被覆位置へと付勢される。更に、一実施形態では、後続の注射と注射の間に針カニューレの先端を洗浄する、化学消毒剤又は殺生物剤といった液体溶媒を包含する中空チャンバが、シールドに設けられる。こうした洗浄液の例は、WO2014/029018で提供されている。
【0004】
WO2015/062845は、カートリッジ内部に包含される液体薬剤を、洗浄液として使用する可能性を開示している。これによって、よくあることであるが、液剤が保存料を含んでいることが必要とされる。一実施形態では、洗浄リザーバは、初回の使用開始時に、ユーザによって注射装置のカートリッジから直接、液剤で充填される。しかし、洗浄リザーバは、製造業者によってもまた、充填されることができる。
【0005】
後続の注射と注射の間、針カニューレの遠位端は洗浄リザーバ内部に維持され、近位部はカートリッジ内部に維持される。本液体システムは、このように、洗浄リザーバ内部、針カニューレの中空ルーメン、及びカートリッジの中空の内部を備えている。
【0006】
注射装置は、液剤の寿命を維持する目的で、使用されないときは大抵冷蔵庫内に保管されているため、本液体システムの液剤は、冷蔵庫から室温に移されたとき及びその逆のときに、比較的大きい温度変化に曝される。世界のある地域では、この変化は、冷蔵庫内の約5°Cから冷蔵庫外の40〜45°Cにも達する変化であることがある。この温度変化によって、本液体システムに包含される液剤の膨張及び収縮が引き起こされる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、本液体システムの洗浄液の膨張と収縮の両方を受けることができる、洗浄リザーバを伴う注射装置を提供することである。
【0008】
本発明は請求項1に規定される。したがって、一態様においては、本発明は、設定された用量の液剤をユーザが配分できる、医療用注射装置に関する。
【0009】
本注射装置は、ハウジングと、針カニューレと、伸縮式可動シールドとを備える。
・ ハウジングは、液剤を包含するカートリッジを支持する。
・ 針カニューレは、遠位端を持つ遠位部と、反対の近位部とを有する。長手方向のルーメンは、針カニューレの端部(複数)と接続する。針カニューレは、遠位部が遠位方向に延伸してユーザに貫入し、近位部が近位方向に延伸してカートリッジに貫入し、それによって注射中、カートリッジ内部とユーザの体内との間に液体の流路が確立されるような関係で、ハウジングに取り付けられている。
・ 伸縮式可動シールドは、ハウジングに対して伸縮式に可動であり、伸縮式可動シールドとハウジングとの間で動作可能なばね手段によって、遠位方向に付勢される。また伸縮式可動シールドは、後続の注射と注射の間、少なくとも針カニューレの遠位端を洗浄する、洗浄液を包含する第1の洗浄リザーバを保持する。
【0010】
第1の洗浄リザーバは、遠位のシール(例えば隔膜)によって遠位で閉鎖され、近位のシール(例えば隔膜)によって近位で閉鎖されている。これらの2つのシールは、長手方向に互いに距離を置いて配置され、洗浄液を包含する空間を画定している。第1の洗浄リザーバには、更に、第1の洗浄リザーバを第2のオーバーフローリザーバに接続する、開口が設けられている。
【0011】
遠位のシール及び近位のシールは、洗浄液が針カニューレの側面に沿って漏出するのを防止するため、針カニューレに密に嵌合している。遠位のシール及び近位のシールの、一方又は両方は、隔膜として形成されることができる。こうして、遠位の隔膜及び近位の隔膜は、カートリッジの隔膜と共に、針カニューレによって貫通されることになる。したがって、これらの隔膜は、こうした貫通を可能にする材料から作られている。
【0012】
ばね手段が、伸縮式可動シールドとハウジングとの間で動作可能に組み入れられているという特徴は、必ずしも、該ばね手段が直接、伸縮式可動シールドとハウジングとの間に物理的に位置していることを意味しない。それは単に、ばね手段が伸縮式可動シールドをハウジングに対して動作させるという機能を意味する。本発明の一例においては、ばね手段は、少なくとも使用中にはハウジングに接続されている一要素と、伸縮式可動シールドであるか、または伸縮式可動シールドに接続された部分である、第2の部分との間に囲まれた、圧縮ばねである。
【0013】
第1の洗浄リザーバと第2のオーバーフローリザーバとの間の開口によって、本液体システム内の洗浄液が膨張したとき、この開口を通ってオーバーフローリザーバに流入すること、及びその逆が可能である。開口と、開口が第2のオーバーフローリザーバに接続していることとによって、第1の洗浄リザーバに包含されている洗浄液の体積の膨張が受け入れられる。
【0014】
大抵、開口は、第1の洗浄リザーバから第2のオーバーフローリザーバへ、そしてまた戻っていく、求められている流れを受け入れるために選択された、明確に規定された大きさを有する。
【0015】
第1の洗浄リザーバ及び第2のオーバーフローリザーバは、閉鎖系を形成し得るか、又は、第2のオーバーフローリザーバは、大気に開口していることができる。
【0016】
本発明の一態様においては、ある量の洗浄液が、第2のオーバーフローリザーバ内に常に存在している。好ましくは、この量は、冷却時に液剤が収縮するとき、第2のオーバーフローリザーバ内にある量が維持されるため、本システム内に常に十分な液剤が存在しているように、決定される。これによって、細菌やバクテリアの第1の洗浄リザーバ内への侵入が、強力に低減される。
【0017】
第2のオーバーフローリザーバは任意の形状を有し得、好ましくは、遠位に可動なシールドによって保持される。こうして、第1の洗浄リザーバ及び第2のオーバーフローリザーバは、開口を有する壁によってのみ仕切られ、隣接して設けられることができる。どちらのリザーバもシールドによって保持されている場合、シールド全体が、周知の成形過程によって、好適なポリマー材料で製造されていることができる。この2つのリザーバはまた、個別の部品として作製され、シールドに接続されることもできる。
【0018】
一実施例においては、カートリッジ内部と第1の洗浄用チャンバ内部との間の液体導管を形成している針カニューレは、同一の針カニューレが複数回、好ましくは注射装置の全内容量が使用されるまで、使用されるように、注射装置のハウジングに恒久的に接続されていることができる。しかし代替的には、針カニューレは、ねじ又はバヨネット接続といった好適な装着手段によって注射装置に装着された、針アセンブリの一部を形成することができる。こうして、充填済みの注射装置が初回の使用に供されるとき、針アセンブリは、充填済みの注射装置に取り付けられる。針アセンブリと注射装置との間の連結は、好ましくは、一度取り付けられた後は、針アセンブリが取り外し不能であるようにして組み立てられる。
【0019】
しかし、針カニューレがハウジングに恒久的に接続されていようと、ハウジングに装着可能で固定されるものであろうと、充填済み注射装置の寿命を通して、同一の針カニューレが使用されることが意図されている。
【0020】
好ましくは、第2のオーバーフローリザーバは、開口を通じて第1の洗浄リザーバに接続された、導管として形成される。好ましくは、導管は管状の構成を有する。導管は、例えば長手方向の管状導管といった長手方向の導管として形成されることができるが、好ましくは湾曲した導管として、最も好ましくは螺旋形導管として形成され、一実施例においては第1の洗浄リザーバの周囲に螺旋形に巻きついていることができる。
【0021】
一実施例においては、該螺旋形導管は、一部分が開放されている螺旋であって、その一部が以後、別の部分と接続され、一実施例においてはその別の部分もまた第1の洗浄リザーバを保持する、螺旋として成形されることができる。第1の部分に装着された該別の部分は、以降、閉鎖して該螺旋を封止する壁を形成し、導管を形成する。
【0022】
第1の洗浄用チャンバは、洗浄液で充填された使用状態にある。更に、第1の洗浄リザーバが実際に過充填されていて、そのため所定の量の洗浄液が第2のオーバーフローリザーバに流入しているように場合は、有益である。第2のオーバーフローリザーバが導管の形状をしていて、そのためある量の洗浄液が該導管内に存在でき、それによって夾雑物、細菌及びバクテリアが第2のオーバーフローリザーバを通って第1の洗浄リザーバに侵入することが防止されている場合、これは特に有益である。好ましくは、該導管が充填されるべきレベルは、冷却時に液剤が収縮するとき導管内部に常に洗浄液が存在しているようにして、また、洗浄液が導管端部から漏出することなく第1の洗浄リザーバ内の液剤が膨張できる十分な容積を導管が有するようにして、計算されるべきである。
【0023】
一実施形態においては、夾雑物、細菌及びバクテリアが導管に侵入することを防止するか、又は少なくとも夾雑物、細菌及びバクテリアの許容性を低減するため、導管は好ましくは、大気に向かう終端において、より小さい直径となっている。
【0024】
夾雑物、細菌及びバクテリアの侵入を防止する更なる方法は、導管の外側端部に、例えば細菌及びバクテリアに対して不浸透性である生物学的フィルタといった、フィルタを設けることである。別の実施例においては、導管の外側端部は、単に閉鎖されている。代替的には、導管はバルーンに接続されることができる。バルーンへの代替物として、導管の終端は、ふいごや蛇腹などに接続されることができる。
【0025】
第1の洗浄用チャンバ内部の洗浄液は、針カニューレの遠位端上における細菌またはバクテリアの存在を減少させる、任意の好適な溶媒であることができる。一実施例においては、使用される洗浄液は、カートリッジ内部の液剤の寿命を維持するために使用される保存料と同一である。多くの液剤製剤には、該液剤中におけるバクテリアの成長を阻害する保存料が含まれる。該保存料は、例えばフェノールもしくはメタクレゾール、または両者の組合わせであることができる。好適な例においては、カートリッジからの薬剤を包含する液体保存料もまた、洗浄液として使用される。
【0026】
保存料を包含する同一の液剤を洗浄液として使用する場合、第1の洗浄リザーバは、製造業者によって充填されるか、注射装置を最初に使用に供するときにユーザによって充填される。ユーザによって充填される場合、手動によってなされるか、またはユーザがあるステップを実施することへの反応として自動でなされることができる。
【0027】
定義:
「注射ペン」は、典型的には、筆記用のペンのような、縦長の、又は細長い形状を有する注射器具である。こうしたペンは通常、管状の断面を有するが、それらは、三角形、長方形もしくは正方形、またはこれらの幾何形状の任意の変形例などの、異なる断面を容易に有し得る。
【0028】
「針カニューレ」という用語は、注射の際に皮膚への貫入を実行する実際の導管を表現するために使用される。針カニューレは、通常、例えば、ステンレススチールなどの金属材料から作られ、またしばしば「針アセンブリ」として言及される、完成した注射針を形成するためにハブと接続される。しかしながら、針カニューレはまた、高分子材料又はガラス物質から作られることもできる。ハブはまた、針アセンブリを注射器具に接続するための接続手段も保持しており、通常、適切な熱可塑性材料から成形される。「接続手段」は、例として、ルアー連結、バヨネット連結、ねじ接続、又は例えばEP1,536,854の中で説明されている組合わせのような、それらの任意の組合わせである。ペン注射システムのために特に設計された針アセンブリは、ISO規格番号11608のパート2の中で定義され、かつしばしば「ペン注射針」として言及される。ペン注射針は通常、ユーザに貫入する前部と、薬剤を包含するカートリッジに貫入する後部とを有する。
【0029】
本書において、「薬品(drug)」という用語は、制御された方法で中空針などの送達手段を通過することができる任意の薬剤含有流動可能薬物、例えば、液体、溶液、ゲル又は微細懸濁液などを包むことを意味する。代表的な薬品には、ペプチド、タンパク質(例えば、インシュリン、インシュリン類似体、及びCペプチド)、及びホルモン、生物学的な由来の若しくは生物学的に活性な化学物質、ホルモン剤、及び遺伝子に基づく化学物質、栄養調整品、並びに固体(調合される)若しくは液体の両者の形をとる他の物質などの薬剤が含まれる。
【0030】
「カートリッジ」は、薬剤を実際に包含する容器を指す用語である。カートリッジは、通常、ガラス製であるが、任意の適切なポリマーから成形されてもよい。カートリッジ又はアンプルは、好ましくは、例えば針カニューレの患者側ではない端部によって穿刺可能な、「隔膜」と呼ばれる穿刺可能な膜によって、一端部において封止される。こうした隔膜は通常、自己封止型である。即ち、穿刺時に生じた開口は、針カニューレが隔膜から取り除かれると、内在弾性によって自動的に封止される。反対側の端部は、典型的には、ゴム又は適切なポリマーから作られるプランジャ又はピストンによって閉鎖されている。プランジャやピストンは、カートリッジ内部でスライド可能に動くことができる。穿刺可能な膜と可動性プランジャの間の空間に薬剤が収容され、薬剤を収容する空間の容積がプランジャによって減少させられるのにつれて、薬剤は押し出される。なお、薬剤を包含するのに、硬性、可撓性を問わず任意の種類の容器が使用できる。
【0031】
カートリッジは通常、より狭い遠位首部を有し、プランジャはその中へは移動し得ないことから、カートリッジの内部に包含された液剤の全てが実際に吐出され得るわけではない。従って、「初期量」又は「実質的に使用された」という用語は、カートリッジ内に包含された注射可能な内容物を表し、ゆえに、必ずしも全内容物を表す訳ではない。
【0032】
「充填済み」注射装置という用語により、注射装置を恒久的に破壊することなくカートリッジを取り外すことが不可能なように、液剤を包含するカートリッジが恒久的に埋設されている注射装置が意図されている。カートリッジ内に充填済みの量の液剤が使用され終わると、ユーザは普通、注射装置全体を廃棄する。これは、ユーザが自分で、液剤を包含するカートリッジを、それが空になった時にはいつでも、替えることができる「耐久式」注射装置と逆である。充填済み注射装置は通常、2つ以上の注射装置を包含する梱包で販売される一方、耐久式注射装置は通常、1つずつ販売される。充填済み注射装置を使用する場合、平均的なユーザは、1年につき50個から100個にも達する注射装置を必要とすることがある一方、耐久式注射装置を使用する場合は、単一の注射装置が、数年間耐久しうるが、平均的なユーザは、1年につき50個から100個の新しいカートリッジを必要とすることになる。
【0033】
「自動」という用語は、注射装置に関連して用いられる場合、注射装置のユーザが投与時の薬剤の吐出に必要な力を送達することなく、注射装置が注射を実行できることを意味する。力は、典型的には、電動モータ又はばね駆動によって、自動的に送達される。ばね駆動のばねには、通常、投与量設定中にユーザによって張力が印加されるが、そのようなばねには通常、送達される投与量がごく少ないという問題を回避するために、予備張力がかかっている。代替的には、ばねには、何回かの投与を通じて薬剤カートリッジ全体を空にするのに十分な予荷重で、製造者により十分な予荷重が印加され得る。典型的には、ユーザは、注射の実施時に、ばね内に蓄積された力を全体的に又は部分的に放出するよう、例えば注射装置の近位端にある、例えばボタンの形態のラッチ機構を作動させる。
【0034】
本記載中で使用されている用語「恒久的に接続された」または「恒久的に埋設された」は、本願中でハウジング内に恒久的に埋設されたカートリッジとして実装された部品が、分離されるためには道具の使用を必要とし、該部品が万一分離される場合は、該部品のうちの少なくとも1つが恒久的に損傷されるであろうことを意味することが意図されている。
【0035】
本書で引用した公報、特許出願、特許の全てを含めて全引用例が、それら全体を参照することにより、参照により本書に援用される。また、各参照が個々にあるいは具体的に参照により援用されることが示され、その全体が本書に記載された限りにおいて、参照により本書に援用される。全ての見出し及び副見出しは、本書の中で便宜上使用しているだけであり、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。任意の全ての実施例の使用、又は本書中で記載した例示的な文言(例えば「など(such as)」)の使用は、単に発明の理解を助けるためのものであって、特許請求の範囲に別様に明記されない限り、発明の範囲を限定するものではない。本書中のいかなる記載も、特許請求されていない任意の要素を本発明を実施する上で必須のものであるとして解釈されるべきではない。本書中の特許文献の引用及び援用は、便宜上行ったにすぎず、その特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使可能性のいかなる見解をも反映するものでもない。本発明は、適用法令によって認められるように、本書に添付された特許請求の範囲の中で挙げられている主題の、全ての変形例及び均等物を含む。
【0036】
本発明は、好適な実施形態に関連して、また図面を参照しつつ、以下でより完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施例による、ペン型注射装置の遠位端の断面図である。
【
図4】本発明の更なる一実施形態の原理の概略図である。
【
図5】本発明の第2の実施例による、ペン型注射装置の遠位端の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は、明確にするために概略的でかつ単純化されており、本発明の理解に必須の詳細部分だけが示され、他の詳細部分は省略されている。全体を通して、同一の参照番号は、一致又は対応する部分に対して使用される。
【0039】
以下において、「上側」及び「下側」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」、「時計回り」及び「反時計回り」、又は類似の関連する表現が使用される場合、それらは添付されている図面に対してのみ言及しており、実際の使用状況に対して言及するものではない。示されている図面は概略的な表現であるため、相対的な寸法と同様、種々の構造の構成は、図解目的のみで使用されることが意図されている。
【0040】
その文脈で、添付図面における「遠位端」という用語が、注射の際にユーザの皮膚の方を向き、注射針を保持する注射装置の端部を指すことを意味し、一方「近位端」という用語が、通常用量設定ボタンを保持している、注射装置の反対側の端部を意味すると定義することが便利であり得る。「遠位」及び「近位」は、注射装置の長手軸に沿って延伸する軸方向に沿った意味である。
【0041】
図1は、ペン型注射装置1の遠位端を開示する。薬剤がカートリッジ10に包含されており、カートリッジ10は穿刺可能な隔膜11によって遠位で閉鎖され、可動のプランジャ12が近位に設けられている。可動のプランジャ12は、図示せぬ注射機構によって前進させられる。
【0042】
図示される実施形態では針ホルダ27と一体の部分をなす、針アセンブリ20が設けられている。針ホルダ27は、カートリッジ10に対して伸縮可能である。この針アセンブリ20は、ルーメン25を画定する針カニューレ21であって、注射時に、ユーザの皮膚に貫入するための遠位端23を持つ遠位部22を有する、針カニューレ21を備える。反対の近位部24は、隔膜11を貫通しカートリッジ10の内部に貫入し、それによって、注射時に、液剤がカートリッジ10から流れてユーザ内に流入するように用意されている。近位部24は、隔膜11を貫通していないときは、ゴムバッグ26によって覆われており、それによって無菌に保たれている。
【0043】
更に、
図1に示すように、非使用状態では針カニューレ21の遠位部22を覆う、伸縮式可動シールド30が設けられている。シールド30は、注射装置1のハウジング2に、スライド可能に取り付けられている。
【0044】
この伸縮式可動シールド30は、針ホルダ27とシールド30との間に囲まれたばね35によって、拡張位置に付勢される。シールド30の遠位端がユーザの皮膚に押し付けられるとき、ばね35が収縮するにつれて、シールド30は近位方向に動く。注射が終了し、シールド30の遠位端がユーザの皮膚から取り外されると、ばね35はシールド30を遠位方向に付勢する。注射は、ユーザが図示せぬ注射ボタンをハウジング2内に押し戻すことによって、手動で実施されることができるか、又は、例えば電動モータもしくはばね駆動のモータによって、自動で行われることができる。注射が自動で行われる場合、モータ(電動又はばね)は、シールド30が近位に動くことによって、解放されて注射することができる。これは、しばしば、シールドトリガー注射と呼ばれる。
【0045】
一実施態様においては、針アセンブリ20、したがって針カニューレ21は、注射装置1に恒久的に装着されており、同一の針カニューレ21が複数の注射に使用される。こうした注射装置1は、しばしば限定された量の液剤で予め充填されており、針カニューレ21は、充填済みの注射装置1の寿命の間、使用される。したがってユーザは、注射装置1の寿命の間、針アセンブリ20を交換しなくてよい。
【0046】
一実施例においては、注射装置1は、製造業者によって、例えば300国際単位(IU)の液体インスリン溶液で予め充填されていることができる。該液体インスリン溶液は、次いで、複数回の注射によって同一の針カニューレ21を通って全てが注射される。その後、注射装置1及び針カニューレ21は、一緒に廃棄される。
【0047】
針カニューレ21の少なくとも遠位端23を清浄に保つため、シールド30内に洗浄リザーバ40が設けられている。洗浄リザーバ40は、カートリッジ10に包含されているのと同一の液剤で充填されている。薬剤は大抵保存料を包含しているので、この保存料によって、針カニューレ21の遠位端23は、後続の注射と注射の間、清浄に保たれる。
【0048】
洗浄リザーバ40は、遠位の隔膜41によって遠位で閉鎖され、近位の隔膜42によって近位で閉鎖されている。両隔膜は、長手方向に間隔を空けて配置され、洗浄リザーバ40を形成している。注射時にはシールド30が近位に動き、針カニューレ21の遠位部23は、遠位の隔膜41を貫通する。
【0049】
開示されるとおり、リザーバ40は、第1のインサート45内に形成されている。その目的は、後述されるであろう。近位では、この第1のインサート45は第2のインサート46と当接し、それによって、第1のインサート45と第2のインサート46との間に第2のチャンバ47が形成される。注射装置1がユーザに送達される前に殺菌されるこの第2のチャンバ47の目的は、少なくとも注射装置1の初回の使用まで、遠位部22に隣接する針カニューレ21の一部を無菌の環境に維持することである。
【0050】
第1のインサート45及び第2のインサート46は、どちらも、シールド30に圧入されている外側インサート50によって保持されている。第1のインサート45、第2のインサート46及び外側インサート50は、全て合成ゴム材料から作られている。第2のリザーバ導管51は、外側インサート50の内表面内に形成されている。この導管51は
図1では螺旋形状であるとして示されているが、任意の形状であることができる。好ましくは、導管51は外側インサート50内に形成されており、第1のインサート45の表面によって封止されている。導管51は、第1のインサート45内に形成されている開口43を経由して、リザーバ40に接続されている。もう一方の端部では、導管51は、以下で記載されるように出口52を終端としている。
【0051】
本発明の原理は、
図2〜4に開示されている。針カニューレ21の近位部24は、ここで隔膜11を貫通し、カートリッジ10の内部に貫入する。一方、遠位部22及び、特に遠位端23は、洗浄リザーバ40内に挿入されたまま維持される。
【0052】
洗浄リザーバ40は、遠位の隔膜41と近位の隔膜42との間に囲まれている。両隔膜は、長手方向に互いにずらされている。洗浄リザーバ40は、開口43を通じて第2のオーバーフローリザーバ55に接続されている。
【0053】
図1では第2のオーバーフローリザーバ55は導管51として形成されている一方、
図2の実施例では、オーバーフローリザーバ55は、長方形のコンパートメントとして形成されている。
【0054】
オーバーフローリザーバ55が導管51として形成されているとき、オーバーフローリザーバ55は
図1に示すように螺旋形であることができる。しかし、
図3及び
図4の原理では、オーバーフローリザーバ55は、直線の管で示される導管51として形成されている。
【0055】
ユーザが新しい注射装置1を使用に供するとき、ユーザは、洗浄リザーバ40を直接、カートリッジ10からの液剤で充填する。これは、単に洗浄リザーバ40に注入することによる。この充填はまた、ユーザが注射装置1を注射用に用意するときに、自動的に実行されることもできる。好ましくは、洗浄リザーバ40は、
図3及び
図4に「L」で示される一定のレベルまで、液剤が導管51に注入されるようにして、充填される。
【0056】
こうして、洗浄リザーバ40内部の液剤は、周囲の温度の変化につれて、膨張と収縮の両方が可能である。
【0057】
一実施例においては、導管51の外側端部にある出口52は大気に開口し、それによって、洗浄リザーバ40内部の液剤の圧力は周囲の大気の圧力になっている。好ましくは、出口52と接する導管51の外側部分53は、
図3で開示されるとおり、夾雑物、細菌及びバクテリアが周囲の大気から移動してきて洗浄リザーバ40内に侵入するのを防止するように、より小さい直径を有している。代替的には、開口52はフィルタなどによって覆われることができる。
【0058】
図4で原理が開示されている実施形態においては、本システムが周囲の大気と完全に接触しないように、出口52はバルーン54に開口している。バルーン54は、導管51に直接連結されていることができるか、又は
図4に示すようにより細い外側部分53を経由していることができる。しかし、バルーン54は一実施例に過ぎず、ふいご、蛇腹などといった可撓性のある隔膜による他の構成も、容易に想定することができる。
【0059】
更に、
図4では、洗浄リザーバ40とオーバーフローリザーバ55との間の、導管51の形態である開口43は、導管51と同じ直径を有している一方、
図3では、開口43の直径は導管51の直径と比較して若干小さくなっている。
【0060】
図5は、カートリッジ10、針アセンブリ20、及び、洗浄用チャンバ40を保持する伸縮式シールド30を備える、更に別の実施形態を示す。
【0061】
針アセンブリ20の内部は、注射開始時に針アセンブリ20が近位に動いた際、カッタ13によって切開されたバリア28によって、無菌に維持されている。
【0062】
図5から分かるように、洗浄用チャンバ40の構成は、わずかに異なる。洗浄用チャンバ40は遠位では遠位の隔壁41と接し、近位では近位の隔壁42と接している。この近位の隔壁42は第2のインサート46と当接し、それによって第2のチャンバ47を画定する。遠位の隔壁41は、遠位では、伸縮式シールド30にクリック止めされている前部48によって固定されている。
【0063】
更に、伸縮式シールド30を遠位方向に付勢するため、図示せぬばねが、シールド30と針アセンブリ20との間に囲まれていることができる。本実施形態では、針アセンブリ20と針カニューレ21もまた、注射装置1の恒久的な部分である。
【0064】
第1の実施形態のように、導管51には外側インサート50が設けられている。導管51は、ヘアピンカーブ、即ち湾曲したセグメントを形成するとして開示されているが、本実施形態では、螺旋形であることも直線であることも、又実際、任意の所望の形状であることもできる。
【0065】
製造上の理由により、
図1及び
図5で開示するように、導管51は1つの要素として形成され、第2の要素によって封止される。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態が上記に示されているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において定義される主題の範囲内で、他の方法においても具現化され得ることは、強調されるべきである。