(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されるものは、腸オルガノイドおよび/または腸上皮細胞をインビトロで維持および/または培養するための細胞培養システムに関するシステムおよび方法である。本明細書に記載される発明の態様は、流体流、剪断応力および/または機械的応力の提供が、より生理学的に妥当な腸環境の再現を可能にするという本発明者らの発見に基づく。本明細書に記載されるシステムおよび方法は、薬理学、毒性学、薬物開発、薬物送達、薬物代謝、薬物−薬物相互作用、薬物バイオアベイラビリティ、薬物クリアランス、多臓器相互作用、診断学、治療学、栄養素の適用、腸バリアの生理、消化器(GI)疾病モデルおよびその機序、GI管疾病の病因、創傷治癒、組織再生、組織工学、腸ホメオスタシス、腸管幹細胞研究、宿主−微生物相互作用、GI管中の微生物群集、粘液層中の微生物バイオフィルムならびにプロバイオティクス療法を研究または検査するために使用することができる。
【0006】
一つの局面において、本明細書に記載される発明は、(i)流体チャネルに流体を供給する流体供給源に接続された該流体チャネルを有する、流体装置、(ii)膜の少なくとも一部が可撓性である、チャネル内で膜支持要素間に配置された該膜、(iii)膜支持要素に連結され、膜支持要素を移動させることおよび膜を膜の少なくとも一つの寸法に沿って伸張させることができる、膜ひずみ機構、ならびに(iv)該膜の表面の少なくとも一つに付着した少なくとも一層の腸上皮細胞を備え、該流体チャネルの中を流れる該流体に対する剪断応力が1.0ダイン/cm
2未満である、細胞培養システムに関する。
【0007】
いくつかの態様において、流体チャネルの中を流れる流体に対する剪断応力は0.008〜0.08ダイン/cm
2である。いくつかの態様において、流体チャネルの中を流れる流体に対する剪断応力は約0.018ダイン/cm
2である。いくつかの態様において、流体チャネルの中を流れる流体に対する剪断応力は、時間とともに変化することができる。いくつかの態様において、流体チャネルの中を流れる流体に対する剪断応力は、時間とともに0から1000ダイン/cm
2まで変化することができる。いくつかの態様において、流体チャネルの中を流れる流体に対する剪断応力は、時間とともに0.008から0.08ダイン/cm
2まで変化することができる。
【0008】
いくつかの態様において、膜を0%から50%まで伸張させる。いくつかの態様において、膜を5%から15%まで伸張させる。いくつかの態様において、膜を約10%伸張させる。いくつかの態様において、腸上皮細胞の異常な状況/状態を生じさせるために、膜を15%超伸張させる。
【0009】
いくつかの態様において、膜を0.01Hz〜2Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる。いくつかの態様において、膜を0.05Hz〜0.25Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる。いくつかの態様において、膜を0.15Hzのレートで周期的に伸張させる。いくつかの態様において、腸上皮細胞の異常な条件/状態を生じさせるために、膜を0.2Hz超のレートで周期的に伸張させる。いくつかの態様において、膜を不規則的または間欠的に伸張させる。
【0010】
いくつかの態様において、流体は流体チャネルの中を500μL/時間未満の流量で流れる。いくつかの態様において、流体は流体チャネルの中を100μL/時間未満の流量で流れる。いくつかの態様において、流体は流体チャネルの中を0〜50μL/時間の流量で流れる。いくつかの態様において、流体は流体チャネルの中を約30μL/時間の流量で流れる。
【0011】
いくつかの態様において、システムは、膜の少なくとも片側をコーティングする複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子をさらに備える。いくつかの態様において、少なくとも一つの付着分子は、コラーゲン、I型コラーゲン、MATRIGEL(商標)、細胞外マトリックス、ラミニン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ポリ-D-リジン、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、DNAおよび多糖類からなる群より選択される。
【0012】
いくつかの態様において、腸上皮細胞は哺乳動物またはヒト細胞である。いくつかの態様において、腸上皮細胞は、Caco2細胞、HT-29細胞、一次小腸上皮細胞、一次大腸上皮細胞、iPS細胞、ESC細胞、幹細胞、パネート細胞、陰窩細胞および粘液分泌細胞からなる群より選択される。いくつかの態様において、システムの腸上皮細胞は絨毛構造をさらに含む。いくつかの態様において、システムは、膜の少なくとも第二の表面上に少なくとも一層の内皮細胞をさらに備える。
【0013】
いくつかの態様において、膜は、それが流体チャネルを第一の細胞培養チャネルと第二の細胞培養チャネルとに分割するように配置されている。いくつかの態様において、第一の細胞培養チャネルは腸上皮細胞を含む。いくつかの態様において、第二の細胞培養チャネルは、内皮細胞、免疫細胞および結合組織細胞からなる群より選択される細胞を含む。
【0014】
いくつかの態様において、システムは微生物細胞または病原体をさらに備える。いくつかの態様において、微生物細胞はシステム中で少なくとも1日維持される。いくつかの態様において、微生物細胞は、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、バクテロイデス属(Bacterioides)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、大腸菌属(Escherichia)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシドアミノコッカス・ファーメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter cacoaceticus)、エロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス・フェカーリス、バチルス属 (Bacillus)、ブチリビブリオ・フィブロソルベンス(Butyriviberio fibrosolvens)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ソルデリ(Clostridium sordelli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ルミノコッカス・ブロミイ(Ruminococcus bromii)、サルシナ属(Sarcina)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、扁桃連鎖球菌(Streptococcus anginosus)、ベイヨネラ属(Veillonella)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)からなる群より選択される。いくつかの態様において、微生物細胞は病原体である。いくつかの態様において、病原体は、毒素原性大腸菌、ビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)、赤痢菌属(Shigella)、エルシニア属(Yersinia)、プレジオモナス属(Pleisiomonas)、ビブリオ属、エロモナス属、カンピロバクター属(Campylobacter)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidia)、コクシジウム症(Coccidosis)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クロストリジウム・ディフィシレ、サルモネラ・ケドウゴウ(Salmonella kedougou)、バクテロイデス属、クロストリジウム属(Clostridium)、フィルミクテス(Firmicutes)、志賀赤痢菌(Shigellia dysenteriae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、リステリア属(Listeria)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、プロテウス属(Proteus)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびカンピロバクター・ジェジュニ、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、サッポロ様ウイルス、トロウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、カンジダ・アルビカンス、単細胞寄生生物、多細胞寄生生物、アメーバ、蠕虫、条虫、原虫、吸虫、回虫、蟯虫、鉤虫、ランブル鞭毛虫(Giradia lamblia)、クリプトスポリジウム、および赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)からなる群より選択される。いくつかの態様において、微生物細胞は好気性である。いくつかの態様において、微生物細胞は嫌気性である。いくつかの態様において、システムは、好気性および嫌気性の微生物細胞の両方を備える。いくつかの態様において、微生物細胞は第一の細胞培養チャネル中に存在する。
【0015】
いくつかの態様において、システムは、第一の細胞培養チャネルの少なくとも一部に接触した無酸素ガスチャンバをさらに備える。いくつかの態様において、第一の細胞培養チャネルの中を流れる流体中に酸素勾配が設けられる。
【0016】
いくつかの態様において、膜は少なくとも部分的に多孔性である。いくつかの態様において、膜中の少なくとも一つの孔開口部は幅寸法に沿って0.5μm〜10μmである。いくつかの態様において、膜はPDMSを含む。いくつかの態様において、膜を真空圧によって伸張させる。
【0017】
いくつかの態様において、システムは、(i)第一のチャンバ壁が少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、膜が該第一のチャンバ壁に取り付けられている、装置の該第一のチャンバ壁、(ii)第一の作用チャネルが該第一のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接し、該第一の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間に適用された圧力差により、該第一のチャンバ壁が、該膜によって画定された平面に沿った伸張または収縮のための第一の所望の方向に撓む、該第一の作用チャネル、および(iii)該少なくとも一つの流体チャネルと少なくとも一つの該作用チャネルとの間に圧力差を与え、該膜が該圧力差に応答して該平面に沿って伸張する、真空システムをさらに備える。いくつかの態様において、システムは、膜の反対側の端が第二のチャンバ壁に取り付けられている、少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置された装置の該第二のチャンバ壁、および、該第二のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、第二の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間の圧力差により、該第二のチャンバ壁が、該膜によって画定された平面に沿った伸張または収縮のための第二の所望の方向に撓む、該第二の作用チャネルをさらに備える。
【0018】
いくつかの態様において、流体工学装置はマイクロ流体チップを備える。
【0019】
いくつかの態様において、システムは、腸起源ではない細胞または組織を備える第二の細胞培養システムに接続または連結されている。いくつかの態様において、第二の細胞培養システムは肝細胞または肝組織を備える。
【0020】
一つの局面において、本明細書に記載される発明は、腸オルガノイドを産生する方法であって、腸上皮細胞に流体が接触するように、該腸上皮細胞を維持するのに適した該流体を本明細書に記載される細胞培養システムに供給する段階、および該腸上皮細胞をインビトロで培養する段階を含む、方法に関する。いくつかの態様において、方法は、少なくとも絨毛構造がはっきりとわかるまで、細胞を培養する段階をさらに含む。
【0021】
一つの局面において、本明細書に記載される発明は、本明細書に記載される細胞培養システムを備える、腸エフェクター物質を評価するためのシステムに関する。
【0022】
一つの局面において、本明細書に記載される発明は、腸の処置を評価する方法であって、本明細書に記載される細胞培養システムの細胞を少なくとも一つの候補の腸の処置エフェクターに接触させる段階、および該少なくとも一つの候補腸エフェクター物質の効果を判定するために、該システム中の該細胞の応答を測定する段階を含む、方法に関する。
[本発明1001]
流体チャネルに流体を供給する流体供給源に接続された該流体チャネルを有する、流体装置、
膜の少なくとも一部が可撓性である、該チャネル内で膜支持要素間に配置された該膜、
該膜支持要素に連結され、該膜支持要素を移動させることおよび該膜を該膜の少なくとも一つの寸法に沿って伸張させることができる、膜ひずみ機構、ならびに
該膜の少なくとも一つの表面に付着した少なくとも一層の腸上皮細胞
を備え、該流体チャネルの中を流れる該流体に対する剪断応力が1.0ダイン/cm
2未満である、細胞培養システム。
[本発明1002]
前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が0.008〜0.08ダイン/cm
2である、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が約0.018ダイン/cm
2である、本発明1001または1002のシステム。
[本発明1004]
前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに変化することができる、本発明1001〜1003のいずれかのシステム。
[本発明1005]
前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに0から1000ダイン/cm
2まで変化することができる、本発明1004のシステム。
[本発明1006]
前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに0.008から0.08ダイン/cm
2まで変化することができる、本発明1004または1005のシステム。
[本発明1007]
前記膜を0%から50%まで伸張させる、本発明1001〜1006のいずれかのシステム。
[本発明1008]
前記膜を5%から15%まで伸張させる、本発明1001〜1006のいずれかのシステム。
[本発明1009]
前記膜を約10%伸張させる、本発明1001〜1008のいずれかのシステム。
[本発明1010]
前記腸上皮細胞の異常な状態/状況を生じさせるために、前記膜を15%超伸張させる、本発明1001〜1009のいずれかのシステム。
[本発明1011]
前記膜を0.01Hz〜2Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる、本発明1001〜1010のいずれかのシステム。
[本発明1012]
前記膜を0.05Hz〜0.25Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる、本発明1001〜1011のいずれかのシステム。
[本発明1013]
前記膜を0.15Hzのレートで周期的に伸張させる、本発明1001〜1012のいずれかのシステム。
[本発明1014]
前記腸上皮細胞の異常な状態/状況を生じさせるために、前記膜を0.2Hz超のレートで周期的に伸張させる、本発明1001〜1012のいずれかのシステム。
[本発明1015]
前記膜を不規則的または間欠的に伸張させる、本発明1001〜1014のいずれかのシステム。
[本発明1016]
前記流体が前記流体チャネルの中を500μL/時間未満の流量で流れる、本発明1001〜1015のいずれかのシステム。
[本発明1017]
前記流体が前記流体チャネルの中を100μL/時間未満の流量で流れる、本発明1001〜1016のいずれかのシステム。
[本発明1018]
前記流体が前記流体チャネルの中を0〜50μL/時間の流量で流れる、本発明1001〜1017のいずれかのシステム。
[本発明1019]
前記流体が前記流体チャネルの中を約30μL/時間の流量で流れる、本発明1001〜1018のいずれかのシステム。
[本発明1020]
前記膜の少なくとも片側をコーティングする複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子をさらに備える、本発明1001〜1019のいずれかのシステム。
[本発明1021]
前記少なくとも一つの付着分子が、
コラーゲン、I型コラーゲン、MATRIGEL(商標)、細胞外マトリックス、ラミニン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ポリ-D-リジン、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、DNA、および多糖類
からなる群より選択される、本発明1020のシステム。
[本発明1022]
前記腸上皮細胞が哺乳動物細胞またはヒト細胞である、本発明1001〜1021のいずれかのシステム。
[本発明1023]
前記腸上皮細胞が、
Caco2細胞、HT-29細胞、一次小腸上皮細胞、一次大腸上皮細胞、iPS細胞、ESC細胞、幹細胞、パネート細胞、陰窩細胞、および粘液分泌細胞
からなる群より選択される、本発明1001〜1022のいずれかのシステム。
[本発明1024]
前記システムの前記腸上皮細胞が絨毛構造をさらに含む、本発明1001〜1023のいずれかのシステム。
[本発明1025]
前記膜の少なくとも第二の表面上に少なくとも一層の内皮細胞をさらに備える、本発明1001〜1024のいずれかのシステム。
[本発明1026]
前記膜が前記流体チャネルを第一の細胞培養チャネルと第二の細胞培養チャネルとに分割するように、該膜が配置されている、本発明1001〜1025のいずれかのシステム。
[本発明1027]
前記第一の細胞培養チャネルが腸上皮細胞を備える、本発明1026のシステム。
[本発明1028]
前記第二の細胞培養チャネルが、
内皮細胞、免疫細胞、および結合組織細胞
からなる群より選択される細胞を備える、本発明1026または1027のシステム。
[本発明1029]
微生物細胞または病原体をさらに備える、本発明1001〜1027のいずれかのシステム。
[本発明1030]
前記微生物細胞が前記システム中で少なくとも1日維持される、本発明1029のシステム。
[本発明1031]
前記微生物細胞が、
乳酸桿菌属(Lactobacillus)、バクテロイデス属(Bacterioides)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、大腸菌属(Escherichia)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシドアミノコッカス・ファーメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter cacoaceticus)、エロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス・フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、バチルス属(Bacillus)、ブチリビブリオ・フィブロソルベンス(Butyriviberio fibrosolvens)、カンピロバクター属(Campylobacter)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ソルデリ(Clostridium sordelli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ルミノコッカス・ブロミイ(Ruminococcus bromii)、サルシナ属(Sarcina)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、扁桃連鎖球菌(Streptococcus anginosus)、ベイヨネラ属(Veillonella)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)
からなる群より選択される、本発明1029または1030のシステム。
[本発明1032]
前記微生物細胞が病原性である、本発明1029または1030のシステム。
[本発明1033]
前記病原体が、
毒素原性大腸菌、ビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)、赤痢菌属(Shigella)、エルシニア属(Yersinia)、プレジオモナス属(Pleisiomonas)、ビブリオ属、エロモナス属、カンピロバクター属、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidia)、コクシジウム症(Coccidosis)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クロストリジウム・ディフィシレ、サルモネラ・ケドウゴウ(Salmonella kedougou)、バクテロイデス属、クロストリジウム属(Clostridium)、フィルミクテス、志賀赤痢菌(Shigellia dysenteriae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、リステリア属(Listeria)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、プロテウス属(Proteus)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびカンピロバクター・ジェジュニ、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、サッポロ様ウイルス、トロウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、カンジダ・アルビカンス、単細胞寄生生物、多細胞寄生生物、アメーバ、蠕虫、条虫、原虫、吸虫、回虫、蟯虫、鉤虫、ランブル鞭毛虫(Giradia lamblia)、クリプトスポリジウム、および赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)
からなる群より選択される、本発明1029または1032のシステム。
[本発明1034]
前記微生物細胞が好気性である、本発明1029〜1033のいずれかのシステム。
[本発明1035]
前記微生物細胞が嫌気性である、本発明1029〜1033のいずれかのシステム。
[本発明1036]
好気性および嫌気性の微生物細胞の両方を備える、本発明1029〜1035のいずれかのシステム。
[本発明1037]
前記微生物細胞が前記第一の細胞培養チャネル中に存在する、本発明1029〜1036のいずれかのシステム。
[本発明1038]
前記第一の細胞培養チャネルの少なくとも一部に接触した無酸素ガスチャンバをさらに備える、本発明1029〜1037のいずれかのシステム。
[本発明1039]
前記第一の細胞培養チャネルの中を流れる前記流体中に酸素勾配が設けられる、本発明1038のシステム。
[本発明1040]
前記膜が少なくとも部分的に多孔性である、本発明1001〜1039のいずれかのシステム。
[本発明1041]
前記膜中の少なくとも一つの孔開口部が幅寸法に沿って0.5μm〜10μmである、本発明1040のシステム。
[本発明1042]
前記膜がPDMSを含む、本発明1001〜1041のいずれかのシステム。
[本発明1043]
前記膜を真空圧によって伸張させる、本発明1001〜1042のいずれかのシステム。
[本発明1044]
第一のチャンバ壁が少なくとも一つの前記流体チャネルに隣接して配置され、前記膜が該第一のチャンバ壁に取り付けられている、前記装置の該第一のチャンバ壁、
第一の作用チャネルが該第一のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接し、該第一の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間に適用された圧力差により、該第一のチャンバ壁が、該膜によって画定された平面に沿った伸張または収縮のための第一の所望の方向に撓む、該第一の作用チャネル、および
該少なくとも一つの流体チャネルと少なくとも一つの該作用チャネルとの間に圧力差を与え、該膜が該圧力差に応答して該平面に沿って伸張する、真空システム
をさらに備える、本発明1043のシステム。
[本発明1045]
第二のチャンバ壁が前記少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、前記膜の反対側の端が該第二のチャンバ壁に取り付けられている、前記装置の該第二のチャンバ壁、および
該第二のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、第二の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間の圧力差により、該第二のチャンバ壁が、該膜によって画定された前記平面に沿った伸張または収縮のための第二の所望の方向に撓む、該第二の作用チャネル
をさらに備える、本発明1044のシステム。
[本発明1046]
流体工学装置がマイクロ流体チップを備える、本発明1001〜1045のいずれかのシステム。
[本発明1047]
腸起源ではない細胞または組織を備える第二の細胞培養システムに接続または連結されている、本発明1001〜1046のいずれかのシステム。
[本発明1048]
前記第二の細胞培養システムが肝細胞または肝組織を備える、本発明1047のシステム。
[本発明1049]
腸オルガノイドを産生する方法であって、
腸上皮細胞に流体が接触するように、該腸上皮細胞を維持するのに適した該流体を本発明1001〜1048のいずれかの細胞培養システムに供給する段階、および
該腸上皮細胞をインビトロで培養する段階
を含む、方法。
[本発明1050]
少なくとも絨毛構造がはっきりとわかるまで、前記細胞を培養する段階をさらに含む、本発明1049の方法。
[本発明1051]
本発明1001〜1048のいずれかの細胞培養システムを備える、腸エフェクター物質を評価するためのシステム。
[本発明1052]
腸処置を評価する方法であって、
本発明1001〜1048のいずれかのシステムの細胞を少なくとも一つの候補腸処置エフェクターに接触させる段階、および
該少なくとも一つの候補腸エフェクター物質の効果を判定するために、該システム中の該細胞の応答を測定する段階
を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
便宜上、明細書、実施例および特許請求の範囲において用いられる特定の用語をここに集める。別段述べられない限り、または文脈から暗示されない限り、以下の用語および句は以下に提供される意味を含む。別段明示的に述べられない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語および句は、それらの用語または句が、それが関連する技術分野において獲得した意味を除外しない。定義は、特定の態様の説明に役立つように提供されるものであり、請求される発明を限定することを意図したものではない。その理由は、発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0025】
本明細書において使用される「含む/備える(comprising)」または「含む/備える(comprises)」という用語は、組成物、方法および方法または組成物にとって不可欠であるそのそれぞれの構成要素を参照して使用されるが、不可欠であるかどうかにかかわらず指定されない要素の包含をも受け入れる。
【0026】
本明細書において使用される「本質的に〜からなる」という用語は、所与の態様に関して求められる要素を参照する。この用語は、その態様の基本的および新規または機能的な特徴に実質的に影響しない要素の存在を容認する。
【0027】
「〜からなる」という用語とは、本明細書に記載される組成物、方法およびそのそれぞれの構成要素を参照するが、態様の説明において述べられていない任意の要素を除外する。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の参照をも含む。したがって、たとえば、「方法」の参照は、本開示などを読んだ当業者には明白になるであろう、本明細書に記載されるタイプの一つまたは複数の方法および/または段階を含む。同様に、「または」という語は、文脈が明らかに別段指示しない限り、「および」を含むものと解釈される。本明細書に記載されるものに類似した、または等しい方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料が以下に記される。「e.g.」という略語はラテン語のたとえば(exempli gratia)に由来するものであり、本明細書においては、非限定的な例を示すために使用される。したがって、「e.g.」という略語は「たとえば」という用語と同義である。
【0029】
細胞生物学および分子生物学における一般的な用語の定義は、"The Merck Manual of Diagnosis and Therapy", 19th Edition, Merck Research Laboratories版, 2006(ISBN 0-911910-19-0)、Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.版, 1994(ISBN 0-632-02182-9)、The ELISA guidebook (Methods in molecular biology 149) by Crowther J. R. (2000)に見ることができる。分子生物学における一般的な用語の定義はまた、Benjamin Lewin, Genes X, Jones & Bartlett Publishing版, 2009(ISBN-10:0763766321)、Kendrew et al. (eds.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.版, 1995(ISBN 1-56081-569-8)に見ることができる。
【0030】
別段述べられない限り、本発明は、たとえば、すべて参照により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,965,343号および同第5,849,954号、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3 ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2001)、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (1995)、Current Protocols in Cell Biology (CPCB) (Juan S. Bonifacino et. al. ed., John Wiley and Sons, Inc.)、Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique by R. Ian Freshney, Publisher: Wiley-Liss; 5th edition (2005)およびAnimal Cell Culture Methods (Methods in Cell Biology, Vol. 57, Jennie P. Mather and David Barnes editors, Academic Press, 1st edition, 1998)に記載されている標準的手法を使用して実施されたものである。
【0031】
「減少する」、「低下する」、「低下した」および「低下」という用語はすべて本明細書においては全体として、基準に対して統計的に有意な量の減少をいうために使用される。しかし、不確かさを避けるために、「低下する」、「低下」または「減少する」は典型的には、所与の処置の非存在と比較した場合の少なくとも10%の減少をいい、たとえば、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の減少、たとえば、所与の処置の非存在と比較した場合の所与の実体もしくはパラメータの完全な非存在までの減少、または所与の処置の非存在と比較した場合の10〜99%の任意の減少を含むことができる。
【0032】
「増加した」、「増加」または「増強」という用語はすべて、本明細書においては全体として、統計的に有意な量を増加することを意味するために使用され、任意の不確かさを避けるために、「増加した」、「増加」または「増強」は、基準レベルと比較した場合の少なくとも10%の増加、たとえば、基準レベルと比較した場合の、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは100%までのおよび100%を含む増加、または10〜100%の任意の増加、あるいは基準レベルと比較した場合の、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍〜10倍の間もしくはそれよりも大きい任意の増加をいう。
【0033】
本明細書において使用される場合、「維持する」または「培養する」とは、細胞の組織または集団の生存可能性を継続させることをいう。維持される組織は、代謝的に活性な細胞の集団を有する。これらの細胞の数は、少なくとも3日間にわたっておおよそ安定であることもできるかまたは増加することもできる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「マイクロ流体装置」および「マイクロ流体チップ」という用語は、互換可能に使用され、その中またはその上に含まれるマイクロ流体構造を有する構造または支持体をいう。いくつかの態様において、チップはマイクロ流体システムに脱着可能に接続されることができる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「幹細胞」という用語とは、未分化であり、所望の細胞型、すなわち内皮細胞または腸上皮細胞に分化する能力を有する細胞をいう。
【0036】
本明細書において使用される場合、「胚幹細胞」という用語とは、全能性であり、受精後かつ妊娠終了前に形成される組織、たとえば妊娠中の任意の時期、必ずしもではないが一般には妊娠の約10〜12週前に採取された前期胚組織(たとえば胚芽細胞)、胚組織または胎児組織に由来する細胞をいう。胚幹細胞は、ヒト組織をはじめとする、しかしそれに限定されない適切な組織から直接得ることもできるか、あるいは樹立した胚細胞株から得ることもできる。一つの態様において、胚幹細胞は、Thomsonらによって記載されているとおりに得られる(参照により全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,843,780号および同第6,200,806号、Science 282:1145, 1998、Curr. Top. Dev. Biol. 38:133 ff, 1998、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:7844, 1995)。
【0037】
本明細書において使用される場合、互換可能に使用される「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語とは、分化細胞に由来する多能性細胞をいう。たとえば、iPSCは、Takahashiら(Cell, 126: 663-676, 2006)に記載されている方法にしたがって、Oct4、Sox2、c-MycおよびKlf4のような転写因子の過剰発現によって得ることができる。iPSCを産生するための他の方法は、たとえば、参照により全体として本明細書に組み入れられるTakahashi et al. Cell, 131: 861-872, 2007およびNakagawa et al. Nat. Biotechnol. 26: 101-106, 2008に記載されている。
【0038】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語とは、統計的有意性をいい、概して、マーカーの正常濃度またはより低い濃度未満の2標準偏差(2SD)を意味する。この用語は、差があるという統計的証拠をいう。それは、帰無仮説が現実には真である場合に帰無仮説を拒絶する決定を下す確率と定義される。決定は、多くの場合、p値を使用して下される。
【0039】
実施例以外においてまたは特に示されない限り、本明細書において使用される成分または反応条件の量を表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。百分率に関連して使用される「約」という用語は±1%を意味することができる。
【0040】
「一つの(a)」または「一つの(an)」という単数形の用語は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の参照対象をも含む。同様に、「または」という語は、文脈が明らかに別段指示しない限り、「および」を含むものと解釈される。本明細書に記載されるものに類似した、または等しい方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料が以下に記される。「e.g.」という略語はラテン語のたとえば(exempli gratia)に由来するものであり、本明細書においては、非限定的な例を示すために使用される。したがって、「e.g.」という略語は「たとえば」という用語と同義である。
【0041】
他の用語は、本明細書中、本発明の様々な局面の説明の中で定義される。
【0042】
明細書および図面を通して、本明細書に記載される細胞培養システムは互換可能に「ガット・オン・ア・チップ」とも呼ばれる。
図5は、本明細書に記載される細胞培養システムの一つの態様を示す。本明細書に記載される発明のいくつかの態様にしたがって、細胞培養システムは、流体供給源に接続された流体チャネル10を有し、その流体供給源が流体を流体チャネル10に供給するものである流体装置を備えることができる。流体チャネル10のサイズおよび形状は、オルガノイドの所望のサイズおよび形状および/または提供される流体の量および流量にしたがって異なることができる。
【0043】
本明細書において使用される場合、「流体装置」とは、一つまたは複数の流体チャネルを備え、かつ生細胞の培養に適している任意のサイズまたは配向の装置をいう。流体装置は、以下に記載される流体流の範囲内の任意の量の流体を移動させることができ、たとえば、流体装置は、マイクロ流体装置であることもできるか、またはより多量の流体を移動させることができる装置であることもできる。本明細書において使用される場合、「チャネル」という用語は、支持体の中または上に配置されている任意の毛細血管、導管、チューブまたは溝をいう。チャネルは、マイクロチャネル、すなわち、マイクロ量の液体を通過させるためのサイズであるチャネルであることができる。
【0044】
流体供給源は、流体を流体供給源から流体装置の一つまたは複数のチャネルに通して移動させることができるように一定量の流体を含む貯蔵器または他の容器であることができる。流体供給源は、流体を導通させる任意の手段、たとえばチューブ、パイプ、チャネルなどによって流体装置の一つまたは複数のチャネルに連結されることができる。流体装置および/または流体供給源はポートを備えることができる。本明細書において使用される場合、「ポート」という用語は、流体および/または細胞がシステムに入る、および/またはシステムから出る、および/またはシステムの部分に入る、および/またはシステムの部分から出るための手段を提供する、本明細書に記載される細胞培養システムの一部分をいう。ポートは、流体またはマイクロ流体システムのチューブ、コネクタまたはアダプタとの接続を受け、かつ/または固定し、かつ流体またはマイクロ流体システムに取り付けられた場合に流体かつ/または細胞の通過を可能にするためのサイズおよび形状であることができる。
【0045】
本発明の様々な態様にしたがって、流体は、流体供給源から装置の流体チャネル10を通って流体収集貯蔵器(図示せず)に向かって流れる。流体を流体チャネル10に通して流すために、正の流体圧もしくは負の流体圧または両方を使用することができる。本発明のいくつかの態様にしたがって、流体供給源中の流体は加圧されることができ、流体供給源と流体チャネル10との間に、チャネルの中への流体の流量を制御するための弁を備えることができる。本発明のいくつかの態様にしたがって、流体を流体チャネル10に通して抜くための真空供給源が流体チャネル10の出口ポートに接続されることができる。本発明のいくつかの態様にしたがって、重力を使用して流体を流体チャネル10に通して流すことができる。たとえば、流体供給源を装置よりも高く配置し、流体収集貯蔵器を装置よりも低く配置して、流体を流体チャネル10に通して流す流体圧を与えることができる。流体供給源における、または流体流路の中の弁を使用して、流体流量を制御することができる。本発明のいくつかの態様にしたがって、一つまたは複数のポンプを使用して、流体を流体供給源から流体チャネル10に通して流すことができる。
【0046】
図21は、本発明の一つの態様のシステム100の図を例示の目的に示す。システム100は、マイクロ流体装置5(たとえば
図3、5、6および12に示すものなど)に接続された一つまたは複数の流体供給源(たとえば32、34)を備えることができ、マイクロ流体装置5は、一つまたは複数の流体収集貯蔵器(たとえば36、38)に接続されることができる一つまたは複数の流体チャネル10を備える。いくつかの態様において、流体供給源32、34は、流体を保持および供給するための簡単なプラスチック容器であることもできるか、または異なる流体を保持および供給するための二つもしくはそれ以上の別々のコンパートメントを有する容器であることもできる。いくつかの態様において、流体供給源34は、供給源容器を加圧ガス52(たとえば空気または他の不活性ガス)または他の流体(たとえば水、媒体)の供給源に接続することによって加圧することができ、その圧力が、流体を供給源34から流れ出させ、装置5に流れ込ませ、流体チャネル10に通す。この態様において、供給源容器は、圧力を維持するのに十分な密封された金属またはプラスチックの容器であることができる。いくつかの態様において、流体収集貯蔵器38は真空供給源54に接続されることができ、その真空が、流体を装置5に流れ込ませ、流体チャネル10に通し、流体収集貯蔵器38に向かわせる。加圧または真空に加えて、またはそれらの代替として、流体供給源32、34である容器を高く配置して、正の圧力をマイクロ流体装置5に与えることもできる。本発明のいくつかの態様においては、弁44、48を設けて、装置5を通過する流体の流れを制御することもできる。弁44、48を制御システム、たとえばコンピュータシステム700に接続して、弁および流体流の自動制御を可能にすることもできる。
【0047】
本発明のいくつかの態様において、システムは、流体を流体供給源32から汲み上げ、マイクロ流体装置5に到達させ、かつ流体チャネル10に通して流体収集貯蔵器36に到達させるための、一つまたは複数のポンプ42、46を備えることができる。本発明のいくつかの態様においては、一つのポンプ(たとえば42または46)を使用することができる。本発明の他の態様においては、二つまたはそれ以上のポンプ42、46を使用することができる。ポンプ42、46を制御システム、たとえばコンピュータシステム700に接続して、ポンプおよび流体流の自動制御を可能にすることもできる。ポンプ42、46は、任意の動的または置換ポンプ、たとえばシリンジポンプ、蠕動ポンプまたは容積式ポンプであることができる。
【0048】
本明細書に記載され、
図5に示される発明のいくつかの態様にしたがって、細胞培養システムは、チャネルの中に配置されかつ一つまたは複数の膜支持要素22、24に取り付けられた、膜20をさらに備えることができる。いくつかの態様において、膜20は、流体チャネル10を第一の細胞培養チャネル12と第二の細胞培養チャネル14とに分割することができる。第一および第二の細胞培養チャネルは任意の配向であってもよい。非限定的な例として、細胞培養チャネルを分割する膜20は、一方の細胞培養チャネルが他方の細胞培養チャネルの真上に位置するよう、
図5に示すとおりに水平方向に一つの平面に沿って延びることができる。または、細胞培養チャネルを分割する膜20は、二つの細胞培養チャネルが横並びに配置され、一方が他方の上に位置しないよう、垂直方向に一つの平面に沿って延びることもできる。または、細胞培養チャネルを分割する膜20は、第一の細胞培養チャネルが膜によって形成されるチューブ内に位置し、第二の細胞培養チャネルが膜と流体チャネル10の壁との間の空間を含むようなチューブ状および/または円柱形の膜であることもできる。本明細書に記載される細胞培養システムのいくつかの態様にしたがって、膜支持要素は、膜支持要素を移動させることおよび膜を膜の少なくとも一つの寸法に沿って伸張させることができる膜ひずみ機構26に、連結されることができる。
【0049】
いくつかの態様において、膜は少なくとも部分的に可撓性である。いくつかの態様において、膜は少なくとも一つの寸法において可撓性であり、たとえば、膜は、一つの寸法または二つの寸法または三つの寸法において伸張することができる。膜は、任意の部分的に可撓性の生体適合性材料で作製されることができる。いくつかの態様において、膜はPDMSで作製されることができる。生体適合性材料のさらなる例が以下に記載される。
【0050】
いくつかの態様において、膜は少なくとも部分的に多孔性である。いくつかの態様において、膜の孔は直径0.5μm〜10μmであることができる。いくつかの態様において、膜の孔は直径約10μmであることができる。いくつかの態様において、膜の孔は直径約5μmであることができる。膜を越える細胞(たとえば免疫細胞)の移行が望まれる態様においては、直径約5μmの孔が特に有用である。いくつかの態様において、孔は不規則に間隔をおくことができる。いくつかの態様において、孔は規則的に間隔をおくことができる。いくつかの態様において、孔は、5μmまたはより大きく離れていることができ、たとえば5μm、10μm、25μm、50μm、100μm、1000μm、5mmまたはより大きく離れていることができる。
【0051】
いくつかの態様において、膜は平面状であることができる。いくつかの態様において、膜は円柱形であることができる。いくつかの態様において、膜は厚さ15μmまたは15μm超、たとえば15μmもしくは15μm超、20μmもしくは20μm超、25μmもしくは25μm超、30μmもしくは30μm超、35μmもしくは35μm超、または40μmもしくは40μm超であることができる。いくつかの態様において、膜は厚さ15μm〜40μmであることができる。いくつかの態様において、膜は厚さ25μm〜30μmであることができる。いくつかの態様において、膜は厚さ約30μmであることができる。
【0052】
いくつかの態様において、膜20は、流体チャネル中の少なくとも二つの膜支持要素22、24に取り付けられる。本明細書において使用される場合、「膜支持要素」とは、細胞培養システムのうち、膜が取り付けられる部分である。膜支持要素は、流体チャネルの壁であることもできるか、または別個の構造、たとえば、流体チャネルに含まれる支柱、一連の支柱、クランプまたはポートであることもできる。いくつかの態様において、膜支持要素22、24は、位置を変える、向きを変える、および/または撓むことができ、それにより、ひずみまたは動きを膜20に付与する。いくつかの態様においては、少なくとも一つの膜支持要素が膜ひずみ機構に連結される。いくつかの態様においては、第一の膜支持要素が膜ひずみ機構に連結され、第二の膜支持要素が膜ひずみ機構に連結されない。いくつかの態様においては、二つまたはそれ以上の膜支持要素が膜ひずみ機構に連結される。本明細書において使用される場合、「膜ひずみ機構」とは、膜支持要素22、24をして、位置を変えさせ、向きを変えさせ、および/または撓ませて、それにより、膜を少なくとも一つの方向に伸張させる手段をいう。膜ひずみ機構は、膜支持要素を移動させることまたは撓ませることによって、膜を伸張させることができる。膜ひずみ機構の非限定的な例は、真空チャンバ、ポンプに接続された流体チャンバ、プランジャなどを含む。
【0053】
図3、5、6および12に示すとおり、膜ひずみ機構は、壁に取り付けられた膜20を流体チャネル10の壁22、24の間で伸張させるために流体チャネル10の壁22、24を外方に撓ませる、一つまたは複数の真空チャンバ26を備えることができる。代替態様において、膜20は、休止位置において流体チャネル10の壁22、24の間で伸張することができ、正の圧力をチャンバ26に印加して、壁22、24を、膜20に対するひずみを減少および/または除去するために内方に撓ませることができる。膜20にひずみを適用するための他の機構を使用することもできる。本発明にしたがって、膜20に局所的ひずみを与えるために、または膜20を様々な寸法に沿ってひずませるために、さらなる空気圧チャンバを流体チャネル10の周囲に設けることもできる。
【0054】
図22A〜22Dは、膜20にひずみを適用するために使用することができる代替機構のいくつかの例を示す。
図22Aは、膜20が装置5の壁22、24に取り付けられ、壁22、24の一方または両方が可撓性であり、かつ、壁が撓んで膜20にひずみを適用することを可能にするモータMに取り付けられている本発明の一つの態様を示す。本発明にしたがって、モータMは、壁22、24に力を印加することができる任意の装置、たとえば、空気圧式または水圧式シリンダ、電気モータおよび親ねじもしくはケーブルおよびプーリまたはソレノイドであることができる。さらなる力が望まれる場合、てこ作用および/または機械的利点を用いる機構、たとえばオーバセンタ機構を使用することができる。
【0055】
本発明の代替態様にしたがって、モータMは、
図22Bに示すとおり、たとえば流体チャネル10中のスロットまたは他の開口を通して、自由に伸張することができる膜20に直結されることができる。流体チャネル10からの流体の漏れを防ぐためにシールを設けることができる。いくつかの態様において、膜は、膜にひずみを適用するためにピンと張ることができるケーブルまたはコードに連結されることができ、ケーブルまたはコードを容易に引き締めることを可能にするために一つまたは複数のプーリを設けることができる。ケーブルまたはコードは、たとえば、電気モータを使用してケーブルまたはコードをプーリに巻き取ることにより、引き締めることができる。代替態様において、膜20は、膜20の一つの縁に対して平行に延びるシャフトにそれを巻き付けることにより、ひずませることができる。
【0056】
本発明の代替態様にしたがって、流体チャネル10は、
図22Cに示すとおり、一方22が他方24の中でスライドする二つの剛性要素22、24から形成されることができる。前記のとおり、モータMを使用して、要素22を要素24に対して移動させ、かつ要素22および24の両縁に連結されているかまたは取り付けられている膜20に、ひずみを適用することができる。いくつかの態様において、重なり合う表面に沿ったシールまたは蛇腹を使用して流体チャネル10を封止することができる。
【0057】
本発明の代替態様にしたがって、流体チャネル10は、膜20が二つの側壁22、24の間に延びる可撓性ハウジングで形成されることができる。この態様においては、流体チャネル10の上部および/または下部に力を印加して、側壁22および24を、膜20をひずませるために外方に撓ませることができる。ひずみを生じさせる力は、上壁と下壁とが合わされると側方に拡大する流体チャネル10の中を流れる流体によって支援されることができる。この態様において、
図22Dに示すとおり、側壁22および24は、側壁の既定の部分、たとえば側壁22、24が流体チャネル10の上壁および下壁と突き合うところ、および膜20が側壁22、24に連結されるまたは取り付けられるところに沿って撓むように構成されることができる。この態様において、流体チャネルの上部および/または下部に対する圧力は、たとえば蠕動運動を模倣するために、入口ポートから出口ポートまで延びる流体チャネル10の縦軸に沿って順々に印加されることができる。
【0058】
図5に示す態様において、膜支持要素22、24は流体チャネル10の第一および第二の壁を備え、膜ひずみ機構26は真空チャンバである。膜は、第一のチャンバ壁(第一の膜支持要素)22および第二のチャンバ壁(第二の膜支持要素)24に取り付けられている。各作用チャネル26は、作用チャネル26が流体チャネル10および他方の作用チャネル26に対して膜支持要素22、24の反対側に位置するよう、各膜支持要素22、24に隣接して位置している。圧力差(流体チャネル10と比較して)が真空によって各作用チャネル26に適用されて、膜支持要素を所望の方向に撓ませ、それにより、膜20をその方向に拡張または収縮させる。各作用チャネル26は、圧力差を与えることができる真空システムに接続されている。作用チャネル26は、同じ真空システムに接続されることもできるか、または別々の真空システムに接続されることもできる。作用チャネル26は、作用チャネル中のポートおよびチューブを介して真空システムに接続されることができる。
【0059】
いくつかの態様において、膜を0%から50%まで伸張させる。いくつかの態様において、膜を5%から15%まで伸張させる。いくつかの態様において、膜を約10%伸張させる。いくつかの態様において、腸上皮細胞の異常な条件および/または状態を生じさせるために、膜を15%超伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を20%超伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を不規則的または間欠的な方法で伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を周期的な方法で伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を0.01Hz〜2Hzの周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を0.05Hz〜0.25Hzの周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を0.2Hz未満の周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を0.01Hz〜0.18Hzの周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を約0.15Hzの周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、膜を0.15Hzの周期レートで伸張させることができる。いくつかの態様において、腸上皮細胞の異常な条件および/または状態を生じさせる、たとえば腸の過剰収縮性をモデル化するために、膜を0.2Hz超の周期レートで伸張させることができる。
【0060】
いくつかの態様において、細胞培養システムはマイクロ流体システムであることができる。本明細書において使用される場合、「マイクロ流体システム」という用語とは、マイクロリットル量および/またはナノリットル量の流体の操作が可能である機械をいう。
図12Bに提示する細胞培養システムの態様によって示されるとおり、マイクロ流体システムは、本明細書に記載される細胞培養システムの少なくともチャネルおよび膜要素を備えることができるマイクロ流体チップ50を備えることができる。本発明のいくつかの態様において、チップ50のサイズおよび形状は、そのチップを特定のマイクロ流体システム中で使用することを可能にするように選択することができる。いくつかの態様において、チップ50のサイズ、形状および構成は、そのチップを、特定のマイクロ流体システムの製造者または供給者によって提供される他のチップの代用品として使用することを可能にするように選択することができる。いくつかの態様において、チップ50は、一つまたは複数のマイクロ流体チャネル10によって一つまたは複数の出口ポート62に接続された一つまたは複数の入口ポート60を備えることができる。ポート60、62は、特定のマイクロ流体システムのチューブおよび/またはコネクタを受けるために必要な適切なサイズおよび形状で設けることができる。いくつかの態様において、入口ポート60および出口ポート62は、入口ポート60に入った流体が流体チャネル10のいくつかまたはすべてを通過した後に出口ポート62に到達することを可能にするように接続されることができる。いくつかの態様において、複数のポートが流体チャネルに接続されることができる。
図12Bに示す態様において、二つの細胞培養チャネルそれぞれは、幅1,000μm、長さ10,000μmおよび高さ150μmである。作用チャネル44、46は、高さ330μm、幅1,684μmおよび長さ9,089μmである。膜20は厚さ30μmのPDMS膜であり、直径10μmの孔が中心間で測定して25μmの間隔で設けられている。いくつかの態様において、チップ50は、幅15,000μm、長さ25,000μmおよび高さ5,000μmである。
【0061】
図23は、本明細書に記載されるシステムの一つの態様を示す。この態様において、流体チャネル10は、幅1,000μm、長さ10,000μmおよび高さ330μmであり、二つの細胞培養チャネルは、それぞれ幅1,000μm、長さ10,000μmおよび高さ150μmである。真空チャンバ26は、幅1,684μm、長さ9,089μmおよび高さ330μmである。膜20は厚さ30μmのPDMS膜であり、直径10μmの孔が中心間で測定して25μmの間隔で設けられている。
【0062】
流体チャネル10ならびに細胞培養チャネル12および14の寸法は、比率として画定することもできる。いくつかの態様において、流体チャネル10の高さ:幅比は、1:2または1:2超、たとえば1:2もしくは1:2超、1:2.5もしくは1:2.5超、1:3もしくは1:3超または1:35もしくは1:35超であることができる。いくつかの態様において、流体チャネル10の高さ:幅比は約1:3である。いくつかの態様において、流体チャネル10の高さ:幅比は、1:5または1:5超、たとえば1:5もしくは1:5超、1:10もしくは1:10超、1:20もしくは1:20超または1:30もしくは1:30超であることができる。いくつかの態様において、流体チャネル10の高さ:幅比は約1:30であることができる。いくつかの態様において、流体チャネル10の幅:真空チャンバ26の幅の比は、1:0.75または1:0.75超、たとえば1:0.75もしくは1:0.75超、1:1もしくは1:1超、1:1.25もしくは1:1.25超、1:1.5もしくは1:1.5超または1:1.75もしくは1:1.75超であることができる。いくつかの態様において、流体チャネル10の幅:真空チャンバ26の幅の比は1:1〜1:2であることができる。いくつかの態様において、流体チャネル10の幅:真空チャンバ26の幅の比は約1:1.68であることができる。
【0063】
いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の幅:長さ比は、1:5または1:5超、たとえば1:6もしくは1:6超、1:7もしくは1:7超、1:10もしくは1:10超、1:15もしくは1:15超、1:20もしくは1:20超または1:30もしくは1:30超であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の幅:長さ比は1:6〜1:20であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の幅:長さ比は約1:10であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:幅比は、1:5または1:5超、たとえば1:5もしくは1:5超、1:6もしくは1:6超、1:7もしくは1:7超、1:8もしくは1:8超、1:10もしくは1:10超または1:15もしくは1:15超であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:幅比は1:5〜1:10であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:幅比は約1:6.67であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:長さ比は、1:20または1:20超、たとえば1:20もしくは1:20超、1:25もしくは1:25超、1:30もしくは1:30超、1:40もしくは1:40超、1:50もしくは1:50超、1:60もしくは1:60超、1:70もしくは1:70超、1:80もしくは1:80超または1:100もしくは1:100超であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:長さ比は1:20〜1:100であることができる。いくつかの態様において、細胞培養チャネル12、14の高さ:長さ比は約1:66.67であることができる。
【0064】
本明細書に記載される細胞培養システムの構造(たとえば膜、ポートおよび/または膜支持構造)は、たとえばエッチング、3Dプリンティング、機械加工またはマイクロ機械加工によって形成することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムはエッチングなしである。一つの態様において、
図12Bに示す細胞培養システムの態様は、以下のとおりに形成することができる。細胞培養システムは、可撓性の明澄なポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard、Dow Corning)ポリマーから製造することができる。整合される上方および下方のマイクロチャネルは、同じサイズであることができ(高さ150μm×幅1,000μm)、かつ直径10μmの円形孔を25μm間隔(中心間)で含む厚さ30μmのPDMS膜によって分けられることができる(
図12A〜12C)。
図13に示すとおり、上方および下方のマイクロチャネル層は、フォトレジスト(SU-8 100、Microchem、Newton, MA)で作製された反転チャネル設計のマイクロ加工型の上にPDMSプレポリマー(PDMS:硬化剤のw/w比 15:1)を流延することによって個々に調製することができる。多孔膜(
図12C、右挿入図)は、円柱(直径10μm×高さ30μm、間隔25μm、MEMS and Nanotechnology Exchange、Reson, VA)を有する支柱アレイを含むマイクロ加工されたシリコンウェーハ上にPDMSプレポリマーを流延し、硬化した平坦なシラン化PDMS支持層でそのプレポリマーを覆い、3kgの重りをそのセットアップに載せ、ポリマーを60℃で12時間硬化させることによって調製することができる。PDMS多孔膜および支持層をウェーハから剥離した後、多孔膜の表面を、上方マイクロチャネル層と同じく、実験室用コロナ処理装置(BD-20AC、Electro-Technic Products, Inc.、Chicago, IL)によって生成されたプラズマに曝露することができる。次いで、プラズマ処理されたPDMS多孔膜の表面および上方マイクロチャネル層をすぐに等角接触状態に配置することができる。セットアップ全体を80℃で一晩インキュベートすると、二つのPDMS層の不可逆的接着が得られる。その後、PDMS支持層をPDMS多孔膜の下から剥離させ、側方の真空チャンバ上に位置するこの膜の部分をピンセットを使って引きちぎって、完全高の中空真空チャンバを作製することができる。次に、引きちぎったPDMS膜の露出面および上層と同じ形状を有する下PDMSマイクロチャネル層の上面をプラズマに曝露し、整合させ、立体鏡(Zeiss Discovery V20 Stereo Microscope、Carl Zeiss Microimaging Gmb、Germany)下で押し合わせ、80℃で一晩硬化させて、主マイクロチャネルの両脇に中空の真空チャンバを備える接着された装置全体を製造することができる(
図12Aおよび
図13)。ハブなしのステンレス鋼製の鈍な針(18G、Kimble Chase、Vineland, NJ)を使用して、チューブ(Tygon 3350シリコーンチューブ、ID 1/32"、OD 3/32"、Beaverton, MI)を流体培地および真空供給源から上方および下方のマイクロ流体チャネルそれぞれに接続することができる。これは、コンピュータ制御の下、中央マイクロチャネル内の培地の流れを制御し、側方チャンバへの真空の適用を調整して、蠕動運動を模倣するための周期性の機械的ひずみを加えることを可能にする(
図12D)。
【0065】
本明細書に記載される細胞培養システムは、設計および用途の要件にしたがって、生体適合性の可撓性材料または生体適合性の非可撓性材料で作製することができる。図面に描かれている設計は例示的であり、本明細書に記載される細胞培養システムは図面に示される構成に限定されないということが理解されるべきである。細胞培養システムおよび/またはその部分は、生体適合性材料、たとえば非限定的にポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタンまたはポリイミドをはじめとする可撓性材料で作製されることができる。細胞培養システムおよび/またはその部分はまた、ガラス、ケイ素、ポリスルホン、硬質プラスチックなどの非可撓性材料およびこれらの材料の組み合わせで作製されることもできる。
【0066】
生体適合性ポリマーとは、生物学的機能に対して毒性または傷害性の効果を有しない材料をいう。生体適合性ポリマーは天然または合成のポリマーを含む。生体適合性ポリマーの例は、非限定的に、コラーゲン、ポリ(α−エステル)、たとえばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステルおよびポリ酸無水物ならびにそれらのコポリマー、ポリグリコール酸およびポリグラクチン、セルロースエーテル、セルロース、セルロースエステル、フッ素化ポリエチレン、フェノールポリ-4-メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンズオキサゾール、ポリカーボネート、ポリシアノアリールエーテル、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタン、ポリビニル、ポリフッ化ビニリデン、再生セルロース、シリコーン、ユリア−ホルムアルデヒド、ポリグラクチンまたはこれらの材料のコポリマーもしくは物理的ブレンドを含む。
【0067】
生体適合性材料はまた、たとえば、金属支持体上のセラミックコーティングであることもできる。しかし、任意のタイプのコーティング材料およびコーティングが、以下の異なるタイプの材料で作製されることができる:金属、セラミックス、ポリマー、ヒドロゲルまたはこれらの材料の任意のものの組み合わせ。生体適合性材料は、非限定的に、酸化物、ホスフェート、カーボネート、窒化物または炭窒化物を含む。酸化物のうち、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンが好ましい。支持体は、金属、セラミックス、ポリマーまたはこれらの任意のものの組み合わせのような材料で作製される。金属、たとえばステンレス鋼、ニチノール、チタン、チタン合金またはアルミニウムおよびセラミックス、たとえばジルコニア、アルミナまたはリン酸カルシウムが特に関心対象である。
【0068】
生体適合性ポリマーは、たとえば溶液流延法、圧縮成形法、フィラメント引き、メッシング、浸出法、ウィービングおよびコーティングなどの方法を使用して成形することができる。溶液流延法においては、適切な溶媒、たとえば塩化メチレン中の一つまたは複数のポリマーの溶液をブランチングパターンレリーフ構造として流延する。溶媒蒸発の後、薄いフィルムが得られる。圧縮成形法においては、ポリマーを平方インチあたり30,000ポンドまでの圧力で適切なパターンにプレスする。フィラメント引きは溶融ポリマーからの引抜きを含み、かつメッシングは、繊維をフェルト様材料へと圧縮することによってメッシュを形成することを含む。浸出法においては、二つの材料を含有する溶液をRUGの最終形態に近い形状に塗布する。次に、溶媒を使用して成分の一方を溶出させ、その結果孔を形成する(参照により本明細書に組み入れられるMikosの米国特許第5,514,378号を参照すること)。核生成においては、RUGの形状にある薄いフィルムを放射性核分裂生成物に曝露すると、それが放射線損傷材料の飛跡を形成する。次に、ポリカーボネートシートを酸または塩基でエッチングして、放射線損傷材料の飛跡を孔へと変化させる。最後に、レーザを使用して多くの材料に個々の孔を成形し、焼灼して、均一な孔径のRUG構造を形成してもよい。コーティングとは、ポリマー構造を、たとえば液化コポリマーのような材料(ポリ−DL-ラクチドcoグリコリド50:50、80mg/ml塩化メチレン)でコーティングまたは浸透して、その機械的性質を変化させることをいう。コーティングは、所望の機械的性質が達成されるまで、一層で実施されてもよいか、あるいは複数層で実施されてもよい。これらの成形技術を組み合わせて用いてもよい。たとえば、ポリマーマトリックスをウィービングし、圧縮成形し、一緒に接着してもよい。さらに、様々なプロセスによって成形された様々なポリマー材料を接合して複合形状を形成してもよい。複合形状は薄層構造であってもよい。たとえば、ポリマーマトリックスを一つまたは複数のポリマーマトリックスに付着させて多層ポリマーマトリックス構造を形成してもよい。付着は、液体ポリマーを用いる接着によって実施されてもよいか、または縫合によって実施されてもよい。加えて、ポリマーマトリックスは、中実のブロックとして形成され、かつレーザまたは他の標準的機械加工技術によってその所望の最終形態へと成形されてもよい。レーザ成形とは、レーザを使用して材料を除去するプロセスをいう。
【0069】
本明細書に記載される細胞培養システムの一つまたは複数の流体チャネルの中に流される流体は、腸細胞を維持または培養するのに適切な任意の流体であることができる。いくつかの態様において、流体チャネルは第一の細胞培養チャネルと第二の細胞培養チャネルとに分割され、かつ同じ流体または異なる流体を各チャネルの中に流すことができる。第一の細胞培養チャネルが腸上皮細胞を含む場合には、第一の細胞培養チャネルの中を流れる流体は、腸上皮細胞の維持または培養に適切な流体であることができる。第二の細胞培養チャネルが内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞を含む場合には、第二の細胞培養チャネルの中を流れる流体は、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞の維持または培養に適切な流体であることができる。細胞培養システム中に微生物細胞が存在する場合には、流体は、微生物細胞を維持または培養するのに適しているべきである。たとえば、それは、その微生物細胞が感受性である抗生物質を含有するべきではない。流体は、細胞培地、溶液、バッファー、栄養素、トレーサ化合物、色素、抗菌剤または本明細書に記載される細胞培養システムの中で培養される細胞に対して毒性ではない他の化合物を含むことができる。当業者は、腸細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞ならびに微生物細胞を培養または維持するのに適した流体を周知している。非限定的な例として、腸上皮細胞を維持または培養するのに適した流体は、20%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)で補足された4.5g/Lグルコース(DMEM、Gibco、Grand Island, NY)、100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Gibco)、100μg/mLノルモシン(Invivogen、San Diego, CA)および25mM HEPESを含有するダルベッコ修飾イーグル培地または20%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)で補足された4.5g/Lグルコース(DMEM、Gibco、Grand Island, NY)および25mM HEPESを含有するダルベッコ修飾イーグル培地を含むことができる。
【0070】
いくつかの態様において、細胞培養システムの一つまたは複数のチャンバの中を流れる流体は剪断応力に付される。いくつかの態様においては、所望の剪断応力を達成するために、システムの流体流および/または設計を変更することができる。いくつかの態様において、細胞培養システムの一つまたは複数のチャンバの中の流体が経験する剪断応力は、哺乳動物の腸の中で遭遇される剪断応力に等しい剪断応力であることができる。いくつかの態様において、細胞培養システムの一つまたは複数のチャンバの中の流体が経験する剪断応力は、腸障害を患っている哺乳動物の腸の中で遭遇される剪断応力に等しい剪断応力であることができる。非限定的な例として、腸障害は疾病または閉塞であることができる。いくつかの態様において、剪断応力は0.3ダイン/cm
2未満または0.3ダイン/cm
2であることができる。いくつかの態様において、剪断応力は0.1ダイン/cm
2未満であることができる。いくつかの態様において、剪断応力は0.0008〜0.08ダイン/cm
2であることができる。いくつかの態様において、剪断応力は0.010〜0.026ダイン/cm
2であることができる。いくつかの態様において、剪断応力は約0.018ダイン/cm
2であることができる。いくつかの態様においては、剪断応力および/または流体流量を変化させて、腸上皮細胞の異常な状態および/または状況を生じさせる、たとえば腸の内腔構成要素の「流し出し」をモデル化することができる。
【0071】
いくつかの態様において、剪断応力は、腸上皮細胞が細胞培養システム中で培養されている期間中、概ね同じであることができる。いくつかの態様において、剪断応力は、腸上皮細胞が細胞培養システム中で培養されている期間中、増加および/または減少させることができる。たとえば、剪断応力は、新たに添加された細胞が膜および/または既存の細胞に付着することを可能にするための期間、減らすことができる。いくつかの態様において、剪断応力は、規則的な周期性パターンで変化させることができる。いくつかの態様において、剪断応力は、不規則なパターンで変化させることができる。いくつかの態様において、剪断応力は、時間とともに0から1000ダイン/cm
2まで変化することができる。いくつかの態様において、剪断応力は、時間とともに0.0008から0.08ダイン/cm
2まで変化することができる。
【0072】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムの一つまたは複数のチャネルを通過する流体流量は、哺乳動物の腸の中で遭遇される流体流量に等しい流体流量であることができる。いくつかの態様において、細胞培養システムの一つまたは複数のチャンバ中の流体流量は、腸障害を患っている哺乳動物の腸の中で遭遇される流体流量に等しい流体流量であることができる。非限定的な例として、腸障害は疾病または閉塞であることができる。いくつかの態様において、流体流量は500μL/時間未満または500μL/時間であることができ、たとえば、500μL/時間、400μL/時間、300μL/時間、200μL/時間、100μL/時間、50μL/時間、10μL/時間またはそれ未満であることができる。いくつかの態様において、流体流量は100μL/時間未満または100μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は50μL/時間未満または50μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は0〜50μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は40μL/時間未満であることができる。いくつかの態様において、流体流量は35μL/時間未満であることができる。いくつかの態様において、流体流量は0〜39μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は0〜35μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は0〜30μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は約30μL/時間であることができる。いくつかの態様において、流体流量は、腸上皮細胞が細胞培養システム中で培養されている期間中、概ね同じであることができる。いくつかの態様において、流体流量は、腸上皮細胞が細胞培養システム中で培養されている期間中、増加および/または減少させることができる。たとえば、流体流量は、新たに添加された細胞が膜および/または既存の細胞に付着することを可能にするための期間、減らすことができる。いくつかの態様において、流体流量は、規則的な周期性パターンで変化させることができる。いくつかの態様において、流体流量は、不規則なパターンで変化させることができる。
【0073】
いくつかの態様においては、流体供給源から流体チャネル10を通過する流体流または膜ひずみ機構26の制御を自動化することができる。流体供給源からの溶液の流れまたは膜ひずみ機構の制御が自動化される態様においては、シリンジポンプまたはソレノイドを使用することができる。他の態様においては、一つまたは複数のコンピューティング装置またはシステムを使用して流体流または膜ひずみ機構26を制御し得る。代替的または追加的に、流体供給源からの流体の流れを制御するために、コンピューティング装置が流体供給源またはポート60に連結されてもよい。代替的または追加的に、膜支持要素22、24の動きおよび膜20の伸張を自動化するために、コンピューティング装置が膜ひずみ機構に連結されてもよい。たとえば、コンピューティング装置を使用して、真空作用チャネル中の圧力を制御してもよい。
【0074】
図20は、本明細書に述べられるとおりに流体流または膜伸張の制御を機械に実行させるための命令のセットを実行し得る例示的な形態のコンピュータシステム700としての機械の図を示す。代替態様において、機械は、独立型装置として作動するか、または他の機械に接続(たとえばネットワーク接続)されてもよい。機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ウェブ機器、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジまたは機械によって講じられるべき動作を指定する命令のセットを実行する(順次に、または別のやり方で)ことができる任意の機械を含んでもよい。さらに、一つの機械しか示されていないが、「機械」という用語は、本明細書に述べられる方法の任意の一つまたは複数を実施するための命令のセット(または複数のセット)を個々にまたは共同に実行する機械の任意の集合を含むものと解釈されなければならない。
【0075】
いくつかの態様にしたがって、コンピュータシステム700は、バス795を介して互いと通信する、プロセッサ750(たとえば中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)または両方)、主メモリ760(たとえば読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、たとえば同期DRAM(SDRAM)またはランバスDRAM(RDRAM)など)および/またはスタティックメモリ770(たとえばフラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)を備える。
【0076】
いくつかの態様にしたがって、コンピュータシステム700は、ビデオ表示ユニット710(たとえば液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード表示装置(LED)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示パネル(PDP)、有機発光ダイオード表示装置(OLED)、表面伝導型電子放出素子表示装置(SED)、ナノ結晶表示装置、3D表示装置または陰極線管(CRT))をさらに備えてもよい。いくつかの態様にしたがって、コンピュータシステム700はまた、英数字入力装置715(たとえばキーボード)、カーソル制御装置720(たとえばマウスまたはコントローラ)、ディスクドライブユニット730、信号生成装置740(たとえばスピーカ)および/またはネットワークインタフェース装置780を備えてもよい。
【0077】
ディスクドライブユニット730は、本明細書に記載される方法または機能の任意の一つまたは複数を具現化する命令の一つまたは複数のセット(たとえばソフトウェア736)が記憶されているコンピュータ可読媒体734を備える。ソフトウェア736はまた、コンピュータシステム700、主メモリ760およびプロセッサ750によるその実行の間、主メモリ760内および/またはプロセッサ750内に完全にまたは少なくとも部分的に常駐してもよい。プロセッサ750および主メモリ760はまた、命令754および764をそれぞれ有するコンピュータ可読媒体を構成することができる。ソフトウェア736はさらに、ネットワークインタフェース装置780を介してネットワーク790上で送受信されてもよい。
【0078】
コンピュータ可読媒体734は、例示的な態様において単一の媒体であるように示されているが、「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令の一つまたは複数のセットを記憶する単一の媒体または複数の媒体(たとえば集中型または分散データベースおよび/または対応するキャッシュおよびサーバ)を含むものと解釈されるべきである。「コンピュータ可読媒体」という用語はまた、開示された態様の方法の任意の一つまたは複数を機械に実行させる、機械によって実行されるための命令のセットを記憶、コード化または保持することができる任意の媒体を含むものと解釈されなければならない。したがって、「コンピュータ可読媒体」という用語は、固体状態メモリならびに光学および磁気媒体を非限定的に含むものと解釈されなければならない。
【0079】
流体流および膜ひずみ機構の自動制御に関して本明細書に記載されるプロセスおよび技術は本来、任意の特定の装置に関連せず、かつ構成要素の任意の適切な組み合わせによって実現され得るということが理解されるべきである。さらに、本明細書に記載される教示にしたがって様々なタイプの汎用装置が使用されてもよい。また、本明細書に記載される機能を実行するための専用の装置を構築することが有利であるということもわかり得る。当業者は、ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアの多くの様々な組み合わせが、開示された態様を実施するのに適するということを理解するであろう。
【0080】
いくつかの態様においては、膜の少なくとも片側が、複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子でコーティングされている。いくつかの態様においては、膜の片側が、複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子でコーティングされている。いくつかの態様においては、膜の両側が、複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子でコーティングされている。いくつかの態様においては、一つまたは複数のタイプの付着分子、たとえば一つのタイプの付着分子、二つのタイプの付着分子、三つのタイプの付着分子、四つのタイプの付着分子またはより多くのタイプの付着分子が膜をコーティングしている。いくつかの態様において、付着分子は、ゲル、溶液、ヒドロゲルまたは膜と化学結合することなく膜に接着する他の組成物として膜に適用される。いくつかの態様において、付着分子は膜に化学結合、たとえば共有結合または架橋する。いくつかの態様において、膜は、膜に埋め込まれた付着分子を伴って作製(たとえば重合)される。いくつかの態様において、付着分子は細胞外マトリックスの成分であることができる。いくつかの態様において、付着分子は、腸上皮細胞の表面上の分子によって拘束される分子であることができる。いくつかの態様において、付着分子は、腸上皮細胞の表面上の分子を拘束する分子であることができる。付着分子のタイプの非限定的な例は、コラーゲン、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、細胞外マトリックス、MATRIGEL(商標)、ラミニン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ポリ-D-リジン、エラスチン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、インテグリン、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、DNAおよび/または多糖類を含む。いくつかの態様において、付着分子は哺乳動物から採取される。いくつかの態様において、付着分子は、トランスジェニック生物から合成または採取される。いくつかの態様において、付着分子はヒト起源である。いくつかの態様において、付着分子は哺乳動物起源、たとえばネズミまたは霊長類起源である。当業者は、付着分子の炭水化物およびペプチド配列を合成または製造する方法を周知している。また、付着分子は市販されており、たとえばMATRIGEL(商標)(Cat No 356234、BD Biosciences Franklin Lakes, NJ)またはラミニン(Cat No. 354232、BD Biosciences Franklin Lakes, NJ)がある。いくつかの態様において、付着分子の濃度は10μg/mL〜1,000μg/mL、たとえば10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、500μg/mL、1,000μg/mLまたはそれらの間の任意の値であることができる。いくつかの態様において、膜は、I型コラーゲンおよびMATRIGEL(商標)を含む混合物でコーティングされる。いくつかの態様において、膜は、I型コラーゲン50μg/mLおよびMATRIGEL(商標)300μg/mLを含む混合物でコーティングされる。いくつかの態様において、膜は、I型コラーゲン50μg/mLおよびMATRIGEL(商標)300μg/mLを含む1:1(v:v)混合物でコーティングされる。いくつかの態様において、膜は、無血清DMEM中に溶解したI型コラーゲン50μg/mLおよびMATRIGEL(商標)300μg/mLを含む1:1(v:v)混合物でコーティングされる。いくつかの態様において、膜は、無血清DMEM中に溶解したラットI型コラーゲン50μg/mLおよびMATRIGEL(商標)300μg/mLを含む1:1(v:v)混合物でコーティングされる。
【0081】
本明細書に記載される細胞培養システムのいくつかの態様においては、少なくとも一層の腸上皮細胞が膜の表面の少なくとも一つに付着する。いくつかの態様においては、一層または複数層の腸上皮細胞、たとえば一層、二層、三層またはより多くの層の腸上皮細胞が膜に付着する。いくつかの態様においては、腸上皮細胞が膜の片側に付着する。いくつかの態様においては、腸上皮細胞が膜の両側に付着する。いくつかの態様において、腸上皮細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、腸上皮細胞はヒト細胞である。いくつかの態様において、腸上皮細胞は、一次細胞、一次小腸細胞、一次大腸細胞、小腸細胞、大腸細胞、培養細胞、継代培養細胞、不死化細胞、トランスジェニック細胞、遺伝子変異細胞、癌細胞もしくは腸癌を有する動物からの細胞、腸疾患もしくは障害を有する動物からの細胞、幹細胞、胚細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(IPSC)、パネート細胞、陰窩細胞、粘液分泌細胞、Caco2細胞またはHT-29細胞である。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システム中の腸上皮細胞は絨毛構造を含む。
【0082】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、第一の細胞培養チャネルおよび第二の細胞培養チャネルを備え、第一の細胞培養チャネルは腸上皮細胞を備え。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは第一の細胞培養チャネルおよび第二の細胞培養チャネルを備え、第一の細胞培養チャネルは腸上皮細胞を備え、第二の細胞培養チャネルは内皮細胞、免疫細胞、筋細胞および/または結合組織細胞を含む。いくつかの態様において、細胞培養チャネル中の細胞は、その細胞培養チャネルに露出した膜の表面に付着する。
【0083】
いくつかの態様において、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞の一層または複数層、たとえば内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞の一層、二層、三層またはより多くの層が膜に付着する。いくつかの態様において、内皮細胞は腸内皮細胞である。いくつかの態様において、内皮細胞は毛細血管内皮細胞である。いくつかの態様において、内皮細胞はリンパ内皮細胞である。いくつかの態様において、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞はヒト細胞である。いくつかの態様において、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞は、一次細胞、一次小腸細胞、一次大腸細胞、繊維芽細胞、小腸細胞、大腸細胞、培養細胞、継代培養細胞、不死化細胞、トランスジェニック細胞、遺伝子変異細胞、癌細胞もしくは腸および/または内皮癌を有する動物からの細胞、腸疾患もしくは障害を有する動物からの細胞、幹細胞、胚細胞(ESC)または人工多能性幹細胞(IPSC)である。
【0084】
本明細書において使用される「免疫細胞」とは、適応免疫または体液免疫に関与する免疫系の任意の細胞である。免疫細胞の非限定的な例は、末梢血単核細胞(PBMC)、形質細胞様樹状細胞(PDC)、骨髄系樹状細胞(MDC)、B細胞、マクロファージ、単核細胞、ナチュラルキラー細胞、NKT細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、顆粒細胞またはそれらの前駆体を含む。
【0085】
本明細書において使用される「結合細胞」とは、臓器を支持する、臓器間の空間を埋める、もしくは筋肉を骨(腱および靱帯)に接続するなどの機械的機能を実行するか、または、関節軟骨の中などで低摩擦秤量面を提供する、動物組織をいう。結合組織は、相対的に無血管性のマトリックスおよび低い細胞密度を特徴とする。最も豊富にある結合組織は、網状間質、筋肉、脂肪組織、軟骨および骨である。結合組織のさらなる例は、非限定的に、間葉、膠様結合組織、疎性組織(疎性)、弾性組織または血液を含む。「結合組織」の定義に含まれるものは、最終分化細胞ならびに結合組織細胞および組織に分化する能力を有する前駆細胞である。
【0086】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、微生物細胞および/または病原体を備える。いくつかの態様において、微生物細胞および/または病原体は、腸上皮細胞と同じ細胞培養チャネルの中に存在することができる。いくつかの態様において、微生物細胞および/または病原体は第一の細胞培養チャネルの中に存在することができる。いくつかの態様において、微生物細胞は、健康な動物の腸内に見られる微生物細胞であることができる。いくつかの態様において、微生物細胞および/または病原体は、不健康な動物、たとえば腸疾患または障害を有する動物の腸内に見られる生物であることができる。いくつかの態様において、微生物細胞および/または病原体は、腸の疾患または障害を引き起こす、またはその一因となる生物であることができる。
【0087】
いくつかの態様において、微生物細胞は好気性である。いくつかの態様において、微生物細胞は嫌気性である。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、好気性および嫌気性の微生物細胞の両方を備える。いくつかの態様において、微生物細胞は、本明細書に記載される細胞培養システムの中で少なくとも1日培養される。本明細書に記載される細胞培養システムの中の微生物細胞の培養は、腸のマイクロフローラ環境をモデル化および/または再現するために使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムの中の微生物細胞の培養は腸上皮細胞の生存度を低下させない。たとえば、腸上皮細胞の生存度は、微生物細胞を細胞培養システムに導入した後、10%未満だけ低下する。
【0088】
微生物細胞は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方を含む細菌細胞であることができる。本明細書に記載される細胞培養システムにおいて有用な細菌細胞の非限定的な例は、乳酸桿菌属、バクテロイデス属、ルミノコッカス属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、大腸菌属、アクロモバクター属、アシドアミノコッカス・ファーメンタンス、アシネトバクター・カルコアセチカス、エロモナス属、アルカリゲネス・フェカーリス、バチルス属、ブチリビブリオ・フィブロソルベンス、カンピロバクター属、カンピロバクター・コリ、クロストリジウム・ディフィシレ、クロストリジウム・ソルデリ、エンテロバクター・クロアカ、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム、大腸菌、フラボバクテリウム属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、プレシオモナス・シゲロイデス、プロピオニバクテリウム・アクネス、緑膿菌、ルミノコッカス・ブロミイ、サルシナ属、黄色ブドウ球菌、扁桃連鎖球菌、ベイヨネラ属、ビブリオ属、エルシニア・エンテロコリチカ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ラムノサスGG、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバチラス・プランタルム、ラクトバシラス・パラカセイ、ラクトバシラス・ブルガリクスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスを含む。
【0089】
いくつかの態様において、微生物細胞は病原体である。いくつかの態様において、微生物細胞は腸病原体である。病原性微生物細胞の非限定的な例は、毒素原性大腸菌、ビロフィラ・ワーズワーシア、赤痢菌属、エルシニア属、プレジオモナス属、ビブリオ属、エロモナス属、カンピロバクター属、クリプトスポリジウム属、コクシジウム症、サルモネラ属、ヘリコバクター・ピロリ、クロストリジウム・ディフィシレ、サルモネラ・ケドウゴウ、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フィルミクテス門、志賀赤痢菌、サルモネラ・エンテリカ、チフス菌、リステリア属、リステリア・モノサイトゲネス、腸炎ビブリオ、プロテウス属、コレラ菌、エンテロコッカス・フェカーリス、エルシニア・エンテロコリチカ、およびカンピロバクター・ジェジュニを含む。腸病原体は十分に研究され、記載されている(たとえば、Microbial Pathogenesis and the intestinal Epithelial Ceil―Gail A. Hecht―2003―ASM pressを参照)。この本に記載されている腸病原体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
いくつかの態様において、細胞培養システムは病原体を備える。本明細書において使用される場合、「病原体」は、腸の任意の障害または疾病を生じさせることまたはそれらと関連することが知られているウイルス、細菌、真菌および寄生生物を含むことができる。微生物病原体は本明細書の中で上述されている。ウイルス腸病原体の非限定的な例は、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、サッポロ様ウイルス、トロウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルスおよびノロウイルスを含む。真菌腸病原体の非限定的な例は、カンジダ属、アスペルギルス属およびカンジダ・アルビカンスを含む。腸寄生生物の非限定的な例は、単細胞寄生生物、多細胞寄生生物、アメーバ、蠕虫、条虫、原虫、吸虫(扁虫)、回虫、蟯虫、鉤虫、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウムおよび赤痢アメーバを含む。
【0091】
本明細書に記載される細胞培養システムのいくつかの態様において、システムは、第一の細胞培養チャネルの少なくとも一部に接触した無酸素性ガスチャンバを備えることができる。いくつかの態様において、無酸素性ガスチャンバは、流体によって占有されない、第一の細胞培養の部分を含む。いくつかの態様において、無酸素性ガスチャンバは、細胞培養システム中の、第一の細胞培養チャネルの上の空隙または空間であり、少なくとも一つのポート、ギャップまたは第一の細胞培養チャネル中の流体の上面と接触するための他の手段を有する。いくつかの態様においては、第一の細胞培養チャネルの中を流れる流体中に酸素勾配が設けられる。いくつかの態様においては、第一の細胞培養チャネルへの入口または出口の点のみが膜中の孔となるように、腸上皮細胞および任意で微生物細胞が導入された後に第一の細胞培養チャネルを封止することで、第一の細胞培養チャネル中に無酸素および/または低酸素条件を生じさせることができる。次に、流体を第二の細胞培養チャネルに供給することができる。第二の細胞培養チャネルに供給される流体は酸素化または脱酸素化されることができる。
【0092】
いくつかの態様において、少なくとも第一の細胞培養チャネルに供給される流体は、第一の細胞培養チャネルに入る前に脱酸素化される。脱酸素化は、非限定的な例として、真空脱気法、膜脱気法、不活性ガスによる置換または溶液を還元剤に接触させることによって達成することができる。いくつかの態様における、第一の細胞培養チャネル。いくつかの態様において、第一の細胞培養チャネルの中を流れる流体中の酸素レベルは、8×10
-2mol/Lもしくはそれ未満、たとえば4×10
-2mol/Lもしくはそれ未満、8×10
-3mol/Lもしくはそれ未満または4×10
-3mol/Lもしくはそれ未満である。いくつかの態様において、酸素レベルは各細胞培養チャネル中で同じである。いくつかの態様においては、無酸素性不活性ガスが細胞培養チャネルの一つまたは複数に通して流される。いくつかの態様においては、好気性微生物と嫌気性微生物との同時培養が細胞培養チャネル中の局所酸素濃度を下げることができる。
【0093】
本明細書に記載される細胞培養システムは、本明細書に記載される細胞培養システムによって含まれる細胞に対する腸以外の細胞、組織および/または因子の効果を研究するために使用することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムを含む第一の細胞培養システムが、腸上皮細胞ではない細胞または組織を備える任意の設計の第二の細胞培養システムに接続または連結される。いくつかの態様において、第二の細胞培養システムによって含まれる細胞または組織は肝細胞および/または肝組織である。いくつかの態様において、第二の細胞培養システムの流出物および/または腸上皮細胞ではない細胞に由来する因子(たとえばシグナル伝達分子、成長因子またはホルモン)のいくらかの部分が、腸上皮細胞を備える本明細書に記載される細胞培養システムの流体チャネルの中を流れる流体に導入される。次に、本明細書に記載される第一の細胞培養システム中の腸上皮細胞、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞および/または微生物細胞の応答を判定することができる。腸上皮細胞、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞および/または微生物細胞の応答ならびにそれらを判定および/または測定する方法は以下に記載される。
【0094】
いくつかの態様において、細胞は、細胞を流体に添加し、その流体を、細胞が導入される流体チャネルおよび/または細胞培養チャネルに通して流すことにより、本明細書に記載される細胞培養システムに導入される。いくつかの態様において、細胞の付着を増強するために、細胞をチャネルの中に流し、その後流体の流れを一時的に停止させて、細胞が膜、付着分子および/またはチャネル中にすでに存在する他の細胞に付着することを可能にする。いくつかの態様においては、細胞の付着を増強するために、細胞の付着が望まれる面がチャネルの底面であるように細胞培養システムを一時的に回転または再配向させる。いくつかの態様において、細胞培養システムの流体流または配向の変更は、2分またはそれ以上、たとえば2分、5分、15分、30分、60分、120分またはそれ以上長く続けられる。いくつかの態様において、細胞培養システムの流体流または配向の変更は約1時間続けられる。いくつかの態様において、細胞培養システムの流体流または配向の変更は約90分間続けられる。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるものは、腸オルガノイドを産生する方法であって、腸上皮細胞に流体が接触するように、該腸上皮細胞を培養および/または維持するのに適した該流体を本明細書に記載される細胞培養システムに供給する段階、および腸上皮細胞をインビトロで培養する段階を含む、方法である。腸上皮細胞を培養および/または維持するのに適した流体の例は本明細書の中で上述されている。いくつかの態様において、腸オルガノイドを産生する方法は、第一の細胞培養チャネル中で腸上皮細胞を培養し、第二の細胞培養チャネル中で内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞を培養する段階をさらに含む。いくつかの態様において、二つの細胞培養チャネルを分ける膜を伸張させる。いくつかの態様において、細胞培養チャネルの中を流れる流体流は約30μL/時間である。いくつかの態様において、剪断応力は約0.02ダイン/cm
2である。いくつかの態様において、膜は平面に沿って約0.15Hzで約10%伸張する。いくつかの態様において、腸上皮細胞はCaco-2細胞である。いくつかの態様において、微生物細胞はラクトバチルス・ラムノサス GG(LGG)細胞である。いくつかの態様において、腸上皮細胞は、絨毛構造が少なくとも存在するようになるまで培養される。
【0096】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、幹細胞、たとえばiPSC、成人幹細胞またはESCを本明細書に記載される細胞培養システムに導入することによって成熟腸細胞への幹細胞の分化を研究するために使用することができる。分化因子および/または候補分化因子を任意で、細胞培養システムに添加し、幹細胞の分化に対するそれらの効果を判定することもできる。
【0097】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、腸の処置、機能および/または病態を評価するためのシステムを備える。いくつかの態様において、細胞培養システム中の細胞は、腸障害、たとえばセリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎または過敏性腸症候群を患っている対象から得ることができる。いくつかの態様において、細胞培養システム中の条件は、腸障害を模倣するように変更することができる。非限定的な例として、腸障害は、病原性微生物細胞を細胞培養システムに導入すること、高レベルの微生物細胞を細胞培養システムに導入すること、または流体流量を増大させて下痢を模倣することにより、模倣および/またはモデル化することができる。
【0098】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムは、腸エフェクター物質を評価するためのシステムを含む。いくつかの態様において、本明細書に記載されるものは、腸エフェクター物質を評価する方法であって、本明細書に記載される細胞培養システムの腸上皮細胞を少なくとも一つの候補腸エフェクター物質に接触させる段階、および該少なくとも一つの候補腸エフェクター物質の効果を判定するために、該細胞培養システム中の該細胞の応答を測定する段階を含む、方法である。
【0099】
いくつかの態様において、腸エフェクター物質は化合物、混合物または生物であることができる。候補エフェクター物質は、腸内に見出されることができる腸上皮細胞および/または微生物の挙動を変化させることが知られている作用物質であることもできるか、あるいは腸内に見出されることができる腸上皮細胞および/または微生物の挙動を変化させるかどうかを判断するために検査される作用物質であることもできる。いくつかの態様において、腸エフェクター物質は処置または薬物である。いくつかの態様において、腸エフェクター物質は病原体および/または毒素である。腸エフェクター物質の非限定的な例は、治療薬、小分子、機能性食品、止瀉薬、プロバイオティクス、天然腸内マイクロフローラおよび/または微生物、食品、ビタミン、病原体および毒素である。いくつかの態様において、腸エフェクター物質は、対象または患者に経口投与することができる作用物質である。
【0100】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムの細胞を一つまたは複数の腸エフェクター物質、たとえば一つのエフェクター物質、二つのエフェクター物質、三つのエフェクター物質またはより多くのエフェクター物質に接触させることができる。いくつかの態様においては、本明細書に記載される細胞培養システムの腸上皮細胞を一つまたは複数の腸エフェクター物質に接触させる。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムの微生物細胞または病原体細胞を一つまたは複数の腸エフェクター物質に接触させる。いくつかの態様においては、本明細書に記載される細胞培養システムの内皮細胞、免疫細胞または結合細胞を一つまたは複数の腸エフェクター物質に接触させる。非限定的な例として、本明細書に記載される細胞培養システムの腸上皮細胞を二つまたは複数の腸エフェクター物質に接触させて、二つの薬物が相互作用するかどうか、または薬物が天然腸内マイクロフローラを変化させるかどうかを判定することができる。
【0101】
いくつかの態様においては、本明細書に記載される細胞培養システム中の細胞の応答を測定して、少なくとも一つの候補腸エフェクター物質の効果を判定することができる。いくつかの態様においては、腸上皮細胞の応答が測定される。いくつかの態様においては、微生物細胞の応答が測定される。いくつかの態様においては、内皮細胞、免疫細胞および/または結合組織細胞の応答が測定される。細胞の応答を測定することは、非限定的に、形態、生存度、細胞数、代謝率、転写、翻訳、マーカー遺伝子発現、レポータ遺伝子のレベル、輸送、バリア機能、タイトジャンクションの形態および/または細胞層の透過率の変化を判定することを含むことができる。細胞の応答を測定することは、非限定的に、腸エフェクター物質が細胞によって吸収される速度、細胞によって代謝される速度、細胞によって分泌される速度、または一層または複数層の細胞を通過する速度を決定することを含むことができる。細胞の応答を測定することは、非限定的に、細胞がどのように腸エフェクター物質を代謝するのかを決定することを含むことができる。細胞の薬物代謝機能はまた、絨毛形成の前または後で、活性CYP3A4酵素によって発光形態に転換される化学または発光基質を使用してCYP3A4酵素活性を測定することによってアッセイすることもできる。CYP3A4活性のアッセイ法は当技術分野において周知であり、かつCYP3A4活性を検出するための基質は市販されている。たとえばLuciferin-IPA(Cat No V9001、Promega Madison, WI)。細胞の応答を測定する非限定的な例は、共焦点顕微鏡法を使用して細胞形態を決定すること、免疫蛍光顕微鏡法を使用してタンパク質のレベルを決定すること、および/またはAg/AgCl電極ワイヤ(直径0.008"、A-M systems, Inc.、Sequim, WA)に連結された電圧オーム計(87V Industrial Multimeter、Fluke Corporation、Everett, WA)を使用して経上皮電気抵抗(TEER)を測定することによって頂端部タイトジャンクションの定着から生じる腸上皮細胞単層の完全性を決定することを含むことができる。
【0102】
本明細書に記載される方法および細胞培養システムは、薬理学、毒性学、薬物開発、薬物送達、タンパク質またはペプチド送達、薬物代謝、抗生物質効果、薬物コーティングの適性および分解性、IgA輸送、アレルゲン性および毒性に関する遺伝子修飾生物のスクリーニング、薬物−薬物相互作用、薬物バイオアベイラビリティ、薬物クリアランス、多臓器相互作用、ナノ毒性学、診断学、治療学、栄養素の適用、腸バリアの生理、消化器(GI)疾病モデルおよびその機序、GI管疾病の病因、創傷治癒、組織再生、組織工学、腸ホメオスタシス、腸管幹細胞研究、宿主−微生物相互作用、GI管中の微生物群集、粘液層における微生物バイオフィルム、ならびにプロバイオティクス療法の目的のために、腸エフェクター物質を試験または検査するために使用することができる。
【0103】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法および細胞培養システムは、薬物開発、薬物送達、薬物代謝および薬物クリアランス研究の目的のために、薬物輸送体多型を含む細胞とともに使用することができる。
【0104】
本開示の態様の説明は、網羅的であることを意図したものでもなく、本開示を開示されたとおりの形態に限定することを意図したものでもない。開示の具体的な態様およびその例が本明細書に記載されているが、当業者が認識するとおり、本開示の範囲内で様々な等価の変形が可能である。たとえば、方法の段階または機能は所与の順序で提示されているが、代替態様が機能を異なる順序で実施してもよいか、または機能が実質的に同時並行に実施されてもよい。本明細書に提供される開示の教示は、適宜、他の手法または方法に適用することもできる。本明細書に記載される様々な態様を組み合わせてさらなる態様を提供することもできる。必要な場合には、本開示の局面を、上記参照文献および出願の構成、機能および概念を用いるように変更して、本開示のなおさらなる態様を提供することもできる。詳細な説明を考慮して本開示に対してこれらおよび他の変更を行うことができる。
【0105】
前記態様の任意のものの特定の要素を、他の態様における要素と組み合わせるまたはそれに代えて用いることもできる。さらに、本開示の特定の態様に関連する利点がそれらの態様に関連して説明されたが、他の態様がそのような利点を呈示してもよく、かつ必ずしも、すべての態様が、本開示の範囲に入るためにそのような利点を呈示しなければならないわけではない。
【0106】
特定されたすべての特許および他の刊行物は、たとえば本発明に関連して使用される場合があるそのような刊行物に記載されている方法を説明し、開示する目的のために、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。それらの刊行物は、本出願の出願日よりも前の開示に関してのみ提供される。これに関するいかなる記載も、本発明者らが、先行発明のせいで、または他の理由のせいで、そのような開示に先立つ権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文献の内容に関する日付または提示に関するすべての記述は、本出願人に利用可能であった情報に基づくものであり、これらの文献の日付または内容の正確さに関して承認となるものはない。
【0107】
本発明を、限定的であると解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明する。
【0108】
本発明のいくつかの態様は、以下の番号付きの項のいずれかとして定義することができる。
1. 流体チャネルに流体を供給する流体供給源に接続された該流体チャネルを有する、流体装置、
膜の少なくとも一部が可撓性である、該チャネル内で膜支持要素間に配置された該膜、
該膜支持要素に連結され、該膜支持要素を移動させることおよび該膜を該膜の少なくとも一つの寸法に沿って伸張させることができる、膜ひずみ機構、ならびに
該膜の表面の少なくとも一つに付着した少なくとも一層の腸上皮細胞
を備え、該流体チャネルの中を流れる該流体に対する剪断応力が1.0ダイン/cm
2未満である、細胞培養システム。
2. 前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が0.008〜0.08ダイン/cm
2である、第1項に記載のシステム。
3. 前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が約0.018ダイン/cm
2である、第1または2項に記載のシステム。
4. 前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに変化することができる、第1〜3項のいずれかに記載のシステム。
5. 前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに0から1000ダイン/cm
2まで変化することができる、第4項に記載のシステム。
6. 前記流体チャネルの中を流れる前記流体に対する剪断応力が、時間とともに0.008から0.08ダイン/cm
2まで変化することができる、第4または5項に記載のシステム。
7. 前記膜を0%から50%まで伸張させる、第1〜6項のいずれかに記載のシステム。
8. 前記膜を5%から15%まで伸張させる、第1〜6項のいずれかに記載のシステム。
9. 前記膜を約10%伸張させる、第1〜8項のいずれかに記載のシステム。
10. 前記腸上皮細胞の異常な状態/状況を生じさせるために、前記膜を15%超伸張させる、第1〜9項のいずれかに記載のシステム。
11. 前記膜を0.01Hz〜2Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる、第1〜10項のいずれかに記載のシステム。
12. 前記膜を0.05Hz〜0.25Hzの範囲のレートで周期的に伸張させる、第1〜11項のいずれかに記載のシステム。
13. 前記膜を0.15Hzのレートで周期的に伸張させる、第1〜12項のいずれかに記載のシステム。
14. 前記腸上皮細胞の異常な状態/状況を生じさせるために、前記膜を0.2Hz超のレートで周期的に伸張させる、第1〜12項のいずれかに記載のシステム。
15. 前記膜を不規則的または間欠的に伸張させる、第1〜14項のいずれかに記載のシステム。
16. 前記流体が前記流体チャネルの中を500μL/時間未満の流量で流れる、第1〜15項のいずれかに記載のシステム。
17. 前記流体が前記流体チャネルの中を100μL/時間未満の流量で流れる、第1〜16項のいずれかに記載のシステム。
18. 前記流体が前記流体チャネルの中を0〜50μL/時間の流量で流れる、第1〜17項のいずれかに記載のシステム。
19. 前記流体が前記流体チャネルの中を約30μL/時間の流量で流れる、第1〜18項のいずれかに記載のシステム。
20. 前記膜の少なくとも片側をコーティングする複数の生細胞の接着を支持する少なくとも一つのタイプの付着分子をさらに備える、第1〜19項のいずれかに記載のシステム。
21. 前記少なくとも一つの付着分子が、
コラーゲン、I型コラーゲン、MATRIGEL(商標)、細胞外マトリックス、ラミニン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ポリ-D-リジン、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、DNA、および多糖類
からなる群より選択される、第20項に記載のシステム。
22. 前記腸上皮細胞が哺乳動物細胞またはヒト細胞である、第1〜21項のいずれかに記載のシステム。
23. 前記腸上皮細胞が、
Caco2細胞、HT-29細胞、一次小腸上皮細胞、一次大腸上皮細胞、iPS細胞、ESC細胞、幹細胞、パネート細胞、陰窩細胞、および粘液分泌細胞
からなる群より選択される、第1〜22項のいずれかに記載のシステム。
24. 前記システムの前記腸上皮細胞が絨毛構造をさらに含む、第1〜23項のいずれかに記載のシステム。
25. 前記膜の少なくとも第二の表面上に少なくとも一層の内皮細胞をさらに備える、第1〜24項のいずれかに記載のシステム。
26. 前記膜が前記流体チャネルを第一の細胞培養チャネルと第二の細胞培養チャネルとに分割するように、該膜が配置されている、第1〜25項のいずれかに記載のシステム。
27. 前記第一の細胞培養チャネルが腸上皮細胞を備える、第26項に記載のシステム。
28. 前記第二の細胞培養チャネルが、
内皮細胞、免疫細胞、および結合組織細胞
からなる群より選択される細胞を備える、第26または27項に記載のシステム。
29. 微生物細胞または病原体をさらに備える、第1〜27項のいずれかに記載のシステム。
30. 前記微生物細胞が前記システム中で少なくとも1日維持される、第29項に記載のシステム。
31. 前記微生物細胞が、
乳酸桿菌属、バクテロイデス属、ルミノコッカス属、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、大腸菌属、アクロモバクター属、アシドアミノコッカス・ファーメンタンス(Acidaminococcus fermentans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter cacoaceticus)、エロモナス属、アルカリゲネス・フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、バチルス属、ブチリビブリオ・フィブロソルベンス(Butyriviberio fibrosolvens)、カンピロバクター属、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、クロストリジウム・ディフィシレ、クロストリジウム・ソルデリ(Clostridium sordelli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、フラボバクテリウム属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ルミノコッカス・ブロミイ(Ruminococcus bromii)、サルシナ属、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、扁桃連鎖球菌(Streptococcus anginosus)、ベイヨネラ属、ビブリオ属、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)
からなる群より選択される、第29または30項に記載のシステム。
32. 前記微生物細胞が病原性である、第29または30項に記載のシステム。
33. 前記病原体が、
毒素原性大腸菌、ビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)、赤痢菌属、エルシニア属、プレジオモナス属、ビブリオ属、エロモナス属、カンピロバクター属、クリプトスポリジウム属、コクシジウム症(Coccidosis)、サルモネラ属、ヘリコバクター・ピロリ、クロストリジウム・ディフィシレ、サルモネラ・ケドウゴウ(Salmonella kedougou)、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フィルミクテス門、志賀赤痢菌(Shigellia dysenteriae)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、リステリア属、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、プロテウス属、コレラ菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、およびカンピロバクター・ジェジュニ、ロタウイルス、ノーウォーク様ウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、サッポロ様ウイルス、トロウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、カンジダ属、アスペルギルス属、カンジダ・アルビカンス、単細胞寄生生物、多細胞寄生生物、アメーバ、蠕虫、条虫、原虫、吸虫、回虫、蟯虫、鉤虫、ランブル鞭毛虫(Giradia lamblia)、クリプトスポリジウム、および赤痢アメーバ
からなる群より選択される、第29または32項に記載のシステム。
34. 前記微生物細胞が好気性である、第29〜33項のいずれかに記載のシステム。
35. 前記微生物細胞が嫌気性である、第29〜33項のいずれかに記載のシステム。
36. 好気性および嫌気性の微生物細胞の両方を備える、第29〜35項のいずれかに記載のシステム。
37. 前記微生物細胞が前記第一の細胞培養チャネル中に存在する、第29〜36項のいずれかに記載のシステム。
38. 前記第一の細胞培養チャネルの少なくとも一部に接触した無酸素ガスチャンバをさらに備える、第29〜37項のいずれかに記載のシステム。
39. 前記第一の細胞培養チャネルの中を流れる流体中に酸素勾配が設けられる、第38項に記載のシステム。
40. 前記膜が少なくとも部分的に多孔性である、第1〜39項のいずれかに記載のシステム。
41. 前記膜中の少なくとも一つの孔開口部が幅寸法に沿って0.5μm〜10μmである、第40項に記載のシステム。
42. 前記膜がPDMSを含む、第1〜41項のいずれかに記載のシステム。
43. 前記膜を真空圧によって伸張させる、第1〜42項のいずれかに記載のシステム。
44. 第一のチャンバ壁が少なくとも一つの前記流体チャネルに隣接して配置され、前記膜が該第一のチャンバ壁に取り付けられている、前記装置の該第一のチャンバ壁、
第一の作用チャネルが該第一のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接し、該第一の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間に適用された圧力差により、該第一のチャンバ壁が、該膜によって画定された平面に沿った伸張または収縮のための第一の所望の方向に撓む、該第一の作用チャネル、および
該少なくとも一つの流体チャネルと少なくとも一つの該作用チャネルとの間に圧力差を与え、該膜が該圧力差に応答して該平面に沿って伸張する、真空システム
をさらに備える、第43項に記載のシステム。
45. 第二のチャンバ壁が前記少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、前記膜の反対側の端が該第二のチャンバ壁に取り付けられている、前記装置の該第二のチャンバ壁、および
該第二のチャンバ壁の反対側で該少なくとも一つの流体チャネルに隣接して配置され、第二の作用チャネルと該少なくとも一つの流体チャネルとの間の圧力差により、該第二のチャンバ壁が、該膜によって画定された平面に沿った伸張または収縮のための第二の所望の方向に撓む、該第二の作用チャネル
をさらに備える、第44項に記載のシステム。
46. 流体工学装置がマイクロ流体チップを備える、第1〜45項のいずれかに記載のシステム。
47. 腸起源ではない細胞または組織を備える第二の細胞培養システムに接続または連結されている、第1〜46項のいずれかに記載のシステム。
48. 前記第二の細胞培養システムが肝細胞または肝組織を備える、第47項に記載のシステム。
49. 腸オルガノイドを産生する方法であって、
腸上皮細胞に流体が接触するように、該腸上皮細胞を維持するのに適した該流体を第1〜48項のいずれかに記載の細胞培養システムに供給する段階、および
該腸上皮細胞をインビトロで培養する段階
を含む、方法。
50. 少なくとも絨毛構造がはっきりとわかるまで、前記細胞を培養する段階をさらに含む、第49項に記載の方法。
51. 第1〜48項のいずれかに記載の細胞培養システムを備える、腸エフェクター物質を評価するためのシステム。
【実施例】
【0109】
実施例1
「ガット・オン・ア・チップ」は、腸運動性(たとえば蠕動および分節)に類似した律動的な機械的ひずみを経験することができる可撓性の細胞外マトリックス(ECM)コーティングされた多孔膜によって分けられた毛細血管および/またはリンパ乳び管からの培養されたヒト腸上皮細胞およびヒト内皮細胞の単層を備え、ヒト腸の組織−組織相互作用および微細構造を再現するように設計されている、マイクロ流体システムであることができる(
図1)。「ガット・オン・ア・チップ」プロジェクトのゴールは、経口的に送達される化合物、治療薬、機能性食品、機能性食品、病原体および毒素に対するヒト応答のためのロバストで再現性かつ予測的なインビトロプラットフォームを提供することである。ガット・オン・ア・チップは、薬理学、毒性学、薬物開発、薬物送達、薬物代謝、薬物−薬物相互作用、薬物バイオアベイラビリティ、薬物クリアランス、多臓器相互作用(たとえば腸−肝臓間)、診断学、治療学、栄養素の適用、腸バリアの生理、消化器(GI)疾病モデルおよびその機序、GI管疾病の病因、創傷治癒、組織再生、組織工学、腸ホメオスタシス、腸管幹細胞研究、宿主−微生物相互作用、GI管中の微生物群集、粘液層中の微生物バイオフィルム、プロバイオティクス療法の分野ならびに他のすべてのGI管関連研究を潜在的にカバーする分野における広い範囲の用途に有用であるべきである。
【0110】
本明細書に記載されるものは、密に並置された平行なマイクロチャネル(1,000×10,000×150μm=W×L×H)の二重層を含む3D構造を有するシリコーンエラストマーポリマー(ポリジメチルシロキサン、PDMS)を使用する、ガット・オン・ア・チッププロトタイプマイクロ流体装置の製造である。一方のマイクロチャネルは腸内腔を表し、他方のマイクロチャネルは毛細微小血管系を模倣する。これらのマイクロチャネルは、直径10μmの穴を有する厚さ30μmの可撓性PDMS多孔膜によって分けられている(
図2)。マイクロチャネルの他に、マイクロチャネルに対して真空駆動の機械的ひずみを適用するための二つの真空チャンバが配置されている(
図3A〜3D)。ガット・オン・ア・チップは、腸上皮細胞に対する剪断応力を最小化し、かつ細胞−支持体接着の強度の差による上皮単層の剥離に伴って見られる問題を最小化するように寸法形状が最適化されたものである。PDMSエッチング法は、装置間で一貫しないエッチング効率、毒性薬剤の使用および時間/労力問題に関して問題があるため、製造プロセスもまた、以前に使用されていたプロセスに比べ、中空の真空チャンバを作製するためのエッチングなしのプロセスを開発することにより、うまく改善されている。
【0111】
本明細書に記載される実験は、既存の市販薬物試験製品においてヒト吸収性腸上皮をモデル化するために一般に使用されるヒト結腸腺癌Caco-2を用いて実施した。Caco-2細胞は、いくつかの分子輸送体および薬物代謝酵素を欠き[2]、粘液層を分泌しない[3]ということが報告されているが、この細胞は、ヒト小腸機能と十分に相関する高いバリア機能、タイトジャンクションタンパク質発現、選択的透過性および刷子縁酵素の活性を再確立することができる、十分に特性決定された細胞株である[4]。ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を使用して、
図1に示すとおり、ECMコーティングされた多孔膜の、同時培養されるCaco-2細胞から反対の部位に毛細血管内皮を形成した。
【0112】
ヒト腸機能のインビトロ分析のためのこのモデルを開発するために、PDMS多孔膜をマイクロ流体装置の内側に製造し、次いで、DMEM(4.5g/Lグルコース、抗生物質を含有するが、無血清)中に溶解したI型コラーゲンとMatrigelとの混合物をマイクロチャネルに注入し、装置を加湿インキュベータ中5% C0
2および37℃で一晩インキュベートすることによってECMでコーティングした。翌日、DMEM(4.5g/Lグルコース、抗生物質を20%血清FBSとともに含有)をチャネルに流し込み(30μL/h)、次いで、Caco-2細胞(約5×10
6個/mL)を培地中の一方のチャネルの中に6時間かけて流した(
図4A)。Caco-2細胞を上部マイクロチャネルに導入した後、装置に接続されたすべてのチューブをクランプ締めし、細胞を加湿インキュベータ中5% C0
2および37℃で1.5時間インキュベートして細胞付着を促進した(
図4B)。
【0113】
Caco-2細胞がPDMS多孔膜の表面に付着した後、下部マイクロチャネルがクランプ締めされている(すなわち、灌流が起こらない)間、培地(4.5g/Lグルコース、抗生物質および20% FBSを含有するDMEM)を上部マイクロチャネルに30μL/hで48時間流し込んで、コンフルエントで分化したCaco-2単層を定着させた(
図4Cおよび4D)。ひとたびCaco-2単層が十分に定着すると(
図4Cおよび4D)、上部および下部の両方のマイクロチャネルを培地(4.5g/Lグルコース、抗生物質および20% FBSを含有するDMEM)30μL/hで同時に灌流した。PDMS多孔膜の他方の側にHMVE細胞を接種する前に、DMEM(4.5g/Lグルコース、抗生物質および5%血清を含有):EGM2-MV、1:4、v/v)を第二のチャネルに24時間流し込んだ。次いで、HMVE細胞(約5×l0
6個/mL)を下部マイクロチャネルの中に播種し、装置を上下ひっくり返して、Caco-2単層の反対側へのHMVE細胞の付着を1.5時間促進した。HMVECが十分に付着した後、培地を上部および下部の両方のマイクロチャネルに30μL/hで流し込んで、Caco-2細胞とHMVE細胞との同時培養を維持した(
図5)。培地は、20〜40μL/hの一定の流量範囲を有するシリンジポンプによって制御されるチューブに流し込んだ。これは、0.012〜0.024ダイン/cm
2の範囲の剪断応力に相当する。小腸中にインビボで認められる剪断応力は0.008〜0.08ダイン/cm
2の範囲内であることが報告されており、それは、ガット・オン・ア・チップ装置のこの態様における剪断応力の範囲と良好に一致している[5-6]。
【0114】
既定の流体条件下で細胞単層が十分にコンフルエントでありかつ安定化した後、輸送実験を実施した。0.15Hzの定周波数で負圧を真空チャンバに適用することによって駆動される約26%(約85kPa)までの様々な伸び率の周期性伸張によって機械的ひずみを適用した(
図3A〜3D)。輸送またはバリア機能分析実験を開始する前の12時間またはそれ以上、Caco-2およびHMVE細胞の同時培養単層を周期性変形に付した。このガット・オン・ア・チップ装置に適用された周期性の機械的ひずみは、経上皮電気抵抗(TEER)の大きい増加(データは示さず)によって測定される場合、腸の生理学的蠕動を模倣し、腸上皮バリア機能を有意に増強することがわかった。オーム計を備えたAg/AgCl電極を使用して上部および下部のマイクロチャネル間の電気抵抗値をモニタし、値を細胞単層の表面積で乗じることによって抵抗値をTEER値に変換した。5%きざみで0%〜25%の伸び率の機械的ひずみを24時間超にわたり細胞単層に適用した場合に、TEER値がただちに増大し、次いでより高いプラトー値に達し、組織−組織界面の%伸びが増すにつれ時間とともに漸増することが認められた。
【0115】
細胞単層を通過する分子透過度を測定するために、培地中に溶解した標的分子を上部マイクロチャネル(すなわち内腔側)に導入すると同時に新鮮な培地を下チャネル(すなわち毛細血管側)に流した。下チャネルから試料を間欠的に採取し、それを分析して、細胞単層を通過して輸送された累積分子量を推定した(
図6A〜6C)。これらの研究は、Caco-2細胞単層が単独で試験されたのか、HMVE細胞単層と組み合わせて試験されたのかにかかわらず、機械的ひずみが、FITC-デキストラン(
図7および9)およびルシファーイエロー(
図8)を含む蛍光分子の傍細胞輸送を増大させることを明らかにした。この組織−組織バリア機能モデルにおいて得られた見かけ透過度(P
app)は、式P
app=(dQ/dt)/(A・C
o)に基づいて算出した。式中、Qは、受け側における化合物の累積輸送量(vg)であり、tは時間(秒)であり、Aは、輸送が起こる場合に横切られる細胞単層の露出表面積(cm
2)であり、C
oは、供与側における化合物の初期濃度(14/mL)である[7]。この瞬間、TEERが増大して、より高いジャンクションバリアが存在することを示すと仮定して、機械的伸張が大分子(FD20)および小分子(LY)の傍細胞輸送を増強する理由は明確には理解されていない。しかし、これは、ラング・オン・ア・チップ(lung-on-a-chip)において以前に観察された量子ドット輸送研究において観察されたとおり、生理学的に関連する経細胞輸送応答から生じる可能性がある[1]。
【0116】
輸送体媒介透過度を測定するために、ローダミン123(Rho123)を、Caco-2細胞が発現することが知られている周知の透過性糖タンパク質(P-gp)外向き流輸送経路のための基質として使用した。市販のTranswellフィルタセットアップを使用する静的条件下、「AP>BL」輸送よりも「BL>AP」輸送においてより高いP
app値に対応する、P-gpを介するRho123の外向き流によって示されるRho123輸送を観察した(
図10)。また、P-gp阻害剤ベラパミルを両チャネルに添加した場合には、BL側からAP側への外向き流が劇的に低下した(
図10)。P-gpを標的化することによってRho123がCaco-2単層において良好に作用することを確認した後、Rho123をガット・オン・ア・チップ装置に適用した。この予備試験においては、培地中に溶解したRho123を、機械的ひずみの存在または非存在において、AP側またはBL側のいずれかに適用した。機械的ひずみの存在において、P
app値は、増大した透過度を生じさせ、それは、Rho123外向き流のP
app値よりも高いものであった。
【0117】
これらの結果に基づくと、このガット・オン・ア・チップマイクロ流体装置は、生理学的関連性を評価するために機械的ひずみの存在または非存在において栄養素吸収、イオン輸送およびナノ粒子/ナノ粒子コンジュゲート輸送を試験するための新規なインビトロ腸モデルとしての潜在的用途を有する。ガット・オン・ア・チップはまた、インビボ関連性を最大化するために機械的ひずみの存在または非存在において、その薬物輸送(摂取および外向き流)、薬物動態学、薬力学、代謝、薬物−薬物相互作用、吸収に対する剤形の効果ならびに効能、毒性およびクリアランスを含む薬物開発を研究するために使用することもできる。それは、腸絨毛の構造との位相幾何学的類似性において、腸上皮と他の細胞型(たとえば毛細血管内皮またはリンパ内皮、免疫細胞、結合組織など)との間の相互作用を調査するために適用することができる(
図1)。
【0118】
「ガット・オン・ア・チップ」はまた、機械的ひずみの存在または非存在において従来の薬物およびナノサイズ物質の毒性学(すなわちナノ毒性学)を評価するために適用することもできる。加えて、それは、GI管疾病、たとえば炎症性腸疾患(たとえばクローン病および潰瘍性大腸炎)、腸閉塞および過敏性腸症候群を、関連の微生物を含め、重要な構成要素および病原学的要因を再現することによってモデル化するために使用することもできる。本明細書に記載されるシステムはまた、開始、伝播、終了、中心的機構、予防接種の診査および腸疾患のための潜在的薬物の開発を可能にし、宿主−微生物相互作用、宿主細胞と微生物との同時培養、病原体とプロバイオティクス株との間の相互作用、GI管中のバイオフィルム形成ならびに腸上皮および他の細胞型に対するプロバイオティクス株のプラス/マイナスの効果を実証する。さらに、「ガット・オン・ア・チップ」プラットフォーム上の操作されたヒトマイクロバイオームは、遺伝子操作されたマイクロバイオームがどのようにして微生物群集および宿主組織の中で腸の健康状態を潜在的に改善するための役割を演じることができるのかを示すために活用することができる。ガット・オン・ア・チップはまた、腸幹細胞の研究に使用することもできる。マイクロ加工された装置中の様々な空間的構造によって腸幹細胞の生態的地位およびそれらの運命を変えることができる。
【0119】
さらに、本明細書に記載されるシステムは、さらにより現実的な腸機能モデルを提供する潜在能力を有する、ヒト腸の絨毛マイクロアーキテクチャをより忠実に模倣する非平面多孔膜とともに使用することができる。これは、微生物フローラ−上皮相互作用および食物吸収を分析する研究の場合に特に適切であることができる。
【0120】
ガット・オン・ア・チップに適用された機械的ひずみは、生きたヒトの腸の中で蠕動運動および分節運動が起こるインビボ身体的微小環境の生理学的関連性を実証する。たとえば、本明細書に記載される結果は、腸上皮単層の周期性変形(たとえば周波数0.15Hzで伸び率0〜25%)がジャンクションバリア機能の有意な増大を誘発しながらも、静的Transwell培養または機械的伸びを用いない従来のマイクロ流体システムの使用のいずれかに対して特定の分子の見かけ透過度を増大させることを明らかにする(
図7、8および9)。生理学的機械的ひずみを用いたこの輸送結果は、薬物候補をインビトロで評価するための黄金律になることができる。
【0121】
機械的ひずみによって生じる効果はいくつかの重要な利点を提供する。第一に、ガット・オン・ア・チップは、ヒト由来の細胞(たとえばヒト腸細胞株、ヒト一次腸細胞またはヒト腸幹細胞)を組み込むことにより、ヒト身体における腸臓器全体の生理をより忠実に模倣する生理学的応答を示す。この生理学的関連性は、薬物開発の中間段階における信頼しうる薬物スクリーニングプロセスおよび再現可能な薬物動態を開発する際に貴重になる。第二に、ガット・オン・ア・チップは、異なる細胞型の近接がいかにして栄養素および薬物化合物の吸収および輸送において相乗作用を発揮することに寄与することができるのかを示すための臓器レベル機能性を提供することができる。第三に、ガット・オン・ア・チップは、インビトロモデルと、インサイチュー動物モデルと、まだ十分には理解されていないインビボヒト身体との間の情報ギャップを劇的に減らすことができる。ヒト腸内微生物または潜在的な病原性微生物を適用することにより、ガット・オン・ア・チップを使用して、重要な宿主細胞を有するヒト腸内の状況を再構成することができる。動物モデルにおける結果は、多くの場合、顕著な種差のせいで、ヒトにおいて認められる薬物輸送および代謝応答を予測しないため、ガット・オン・ア・チップは、生理学的または病理学的腸蠕動運動を模倣する機械的ひずみの下、3D構造中の複数のヒト臓器特異的細胞型を組み込むことにより、強いインビボ関連性を有する代替インビトロモデルを提供することができる。
【0122】
参照文献
【0123】
実施例2
ヒト腸の機械的、構造的、吸収的、輸送および病態生理学的性質をその決定的な微生物共生体とともに模倣するインビトロ生細胞ベースの腸モデルの開発は、医薬品開発を促進し、潜在的に動物試験に取って代わることができる。本明細書に記載されるものは、生きた腸の複雑な構造および生理を模倣する、細胞外マトリックス(ECM)によってコーティングされ、かつヒト腸上皮(Caco-2)細胞でライニングされた可撓性の多孔膜によって分けられた二つのマイクロ流体チャネルで構成された生体模倣型「ヒト ガット・オン・ア・チップ」マイクロ装置の一つの態様である。腸微小環境は、低い剪断応力(0.02ダイン/cm
2)を発生させる低い流量(30μL/時間)で流体をマイクロチャネル上に流し、生理学的蠕動運動を模倣する周期性ひずみ(10%、0.15Hz)を加えることによって再現される。これらの条件の下、円柱状上皮が発生し、この上皮が急速に分極し、同時に腸絨毛の構造を再現するひだへと成長し、かつ静的Transwellモデル中で培養された細胞よりも良好に腸全体を模倣する、小分子に対する高完全性バリアを形成する。加えて、上皮細胞生存度を損なうことなく、通常の腸微生物(ラクトバチルス・ラムノサス GG)を、培養された上皮の内腔面上で長期間(>1週)うまく同時培養することができ、これが、ヒトにおいてすでに観察されているようなバリア機能を実際に改善する。したがって、このガット・オン・ア・チップは、輸送、吸収および毒性研究に適用しやすい制御されたマイクロ流体環境内のその機能にとって決定的である、ヒト腸の複数の動的な身体的および機能的特徴を再現し、したがって、薬物試験および新規な腸疾病モデルの開発にとって大きい価値を有するはずである。
【0124】
薬物開発プロセスは、高コストであり、労働集約的であり、時間を要し、かつ倫理的に問題がある動物モデルの必要性によってひどく妨げられてきた
1。さらに大きい懸念は、動物モデルが、多くの場合、ヒトにおいて得られる結果を予測しないということであり
2-3、かつこれは、薬物および栄養素の代謝、輸送および経口吸収に関連する難題に対処する場合に他ならぬ問題である
4-5。これらの理由のため、経上皮バリアおよび輸送研究を可能にするTranswellフィルタインサート
6-7を用いる細胞培養システムを含むヒト腸機能のインビトロモデル
8-9および長期培養を支持する小型化マイクロ流体モデル
10-14の開発にますます関心が寄せられている。他のものは、ヒト腸絨毛の形状、サイズおよび密度を模倣するようにマイクロ加工されたヒドロゲル基質上でヒト腸上皮(たとえばCaco-2)細胞を培養することにより、腸ライニングの正常な三次元(3D)アーキテクチャをインビトロで再現しようとした
11。しかし、既存のインビトロ腸モデルのいずれも、正常な臓器生理
15ならびにクローン病および他の腸障害の発症
16-17にとって重要である、生きた腸の機械的に活性な微小環境(蠕動運動および内腔内流体流)を再現しない。既存のインビトロ腸モデルの別の制限は、生きた腸の中では通常に起こるように、培養される腸上皮の内腔面上で生きた微生物を長期間にわたり増殖させることが可能でなかったということである。微生物共生体は通常、薬物および化学物質の腸バリア機能、代謝および吸収ならびに多くの疾病に有意に寄与するため、これは重要な問題である
18-22。したがって、本明細書に記載されるものは、ヒト細胞生存度を損なうことなく蠕動を起こし、流体流を経験し、かつ微生物フローラの増殖を支持するヒト「ガット・オン・ア・チップ」の形態にある、より生理学的に適切なヒト腸インビトロモデルである。
【0125】
マイクロ装置の設計および製造
可撓性の明澄なポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard、Dow Corning)ポリマーから、以前に呼吸するラング・オン・ア・チップ装置を作製するために使用されたソフトリソグラフィー技術
23を適合させることにより、ガット・オン・ア・チップ装置を製造した。整合させた上方および下方のマイクロチャネルは、同じサイズであり(高さ150μm×幅1,000μm)、直径10μmの円形孔を25μm間隔(中心間)で含む厚さ30μmのPDMS膜によって分けられたものであった(
図12A〜12C)。
図13に示すとおり、上方および下方のマイクロチャネル層は、フォトレジスト(SU-8 100、Microchem、Newton, MA)でできた反転チャネル設計のマイクロ加工型の上にPDMSプレポリマー(PDMS:硬化剤のw/w比15:1)を流延することによって個々に調製した。多孔膜(
図12C、右挿入図)は、円柱(直径10μm×高さ30μm、間隔25μm、MEMS and Nanotechnology Exchange、Reson, VA)を有する支柱アレイを含むマイクロ加工されたシリコンウェーハ上にPDMSプレポリマーを流延し、硬化した平坦なシラン化PDMS支持層でそのプレポリマーを覆い、3kgの重りをそのセットアップに載せ、かつポリマーを60℃で12時間硬化させることによって調製した。PDMS多孔膜および支持層をウェーハから剥離した後、多孔膜の表面を、上方マイクロチャネル層と同じく、実験室用コロナ処理装置(BD-20AC、Electro-Technic Products, Inc.、Chicago, IL)によって生成されたプラズマに曝露した。次いで、プラズマ処理されたPDMS多孔膜の表面および上方マイクロチャネル層をすぐに等角接触状態に配置した。セットアップ全体を80℃で一晩インキュベートすると、二つのPDMS層の不可逆的接着が得られた。その後、PDMS支持層をPDMS多孔膜の下から剥離させ、かつ側方の真空チャンバの上に位置するこの膜の部分をピンセットを使って引きちぎって、完全高の中空真空チャンバを作製した。次に、引きちぎったPDMS膜の露出面および上層と同じ形状を有する下方PDMSマイクロチャネル層の上面をプラズマに曝露し、整合させ、立体鏡(Zeiss Discovery V20 Stereo Microscope、Carl Zeiss MicroImaging Gmb、Germany)下で押し合わせ、80℃で一晩硬化させて、主マイクロチャネルの両脇に中空の真空チャンバを備える接着された装置全体を製造した(
図12Aおよび
図13)。ハブのないステンレス鋼製の鈍な針(18G、Kimble Chase、Vineland, NJ)を使用して、チューブ(Tygon 3350シリコーンチューブ、ID 1/32"、OD 3/32"、Beaverton, MI)を流体培地および真空供給源から上方および下方のマイクロチャネルそれぞれに接続した。これが、コンピュータ制御の下、中央マイクロチャネル内の培地の流れを制御し、側方チャンバへの真空の適用を調整して、蠕動動運動を模倣するための周期性の機械的ひずみを加えることを可能にした(
図12D)。
【0126】
細胞培養
ヒトCaco-2腸上皮細胞(Caco-2BBEヒト結腸直腸腺癌株
24)をHarvard Digestive Disease Centerから取得し、20%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)で補足された4.5g/Lグルコース(DMEM、Gibco、Grand Island, NY)、100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Gibco)、100μg/mLノルモシン(Invivogen、San Diego, CA)および25mM HEPESを含有するダルベッコ修飾イーグル培地中で増殖させた。Caco-2細胞と生きた腸内微生物との同時培養のために抗生物質を培地から除去した。
【0127】
マイクロ装置製造およびアセンブリの後、70%(v/v)エタノールを装置に通して流し、システム全体を60℃オーブン中で乾燥させることにより、チューブおよびマイクロ流体チャネルを滅菌した。次いで、乾燥させた装置を紫外光およびオゾン(UVO Cleaner 342、Jelight Company Inc.、Irvine, CA)に同時に30分間曝露した。無血清DMEM中にラットI型コラーゲン(50μg/mL、Gibco)およびMatrigel(300μg/mL、BD Biosciences、Bedford, MA)を含有するECM溶液
25-27をマイクロチャネルに注入し、37℃で2時間インキュベートし、その後、マイクロチャネルを培地で灌流した。トリプシン/EDTA溶液(0.05%、Gibco)で収穫したCaco-2細胞を、無菌シリンジ(1mLツベルクリンスリップチップ、BD、Franklin Lakes, NJ)および針(25G 5/8、BD)を使用して細胞溶液を上方マイクロチャネルの中にやさしく引き込むことにより、ECMコーティングされた多孔膜の上面で平板培養した(1.5×l0
5細胞/cm
2)。この細胞密度では、ガット・オン・ア・チップ装置の中に播種した後、マイクロチャネル中に細胞の凝集または重層は認められなかった。Caco-2細胞が約30分以内にECMコーティングされたPDMS面に付着し、1時間以内に細胞−細胞接着を生じさせた(図示せず)。1時間後、シリンジポンプ(BS-8000、Braintree Scientific Inc.、Braintree, MA)を使用して、培養1日目に、培地を一定流量(30μL/時間、0.02ダイン/cm
2の剪断応力を発生)で上チャネルに連続的に流し込んで、Caco-2細胞が無傷の単層を定着させたことを確認し、その後、培地を同じ流量で上方および下方の両方のチャネルに通した。
【0128】
腸の蠕動運動を模倣する周期的な方法でCaco-2単層を機械的に変形させるために、コンピュータ制御FX5K引張り装置(Flexcell International Corporation、Hillsborough, NC)を使用して、真空チャンバに接続されたチューブに周期性吸引を適用した(
図12A、12B)。この装置は、ガット・オン・ア・チップ中の多孔膜を一方向に約50%まで伸ばすことができる。しかし、これらの研究においては、上皮細胞が生きたヒト腸の中でインビボで経験する機械的微小環境をより忠実に模倣する周期性伸張領域(平均細胞ひずみ10%、周波数0.15Hz)
16,28を適用した。まず、印加された圧力、多孔膜支持体のゆがみおよび細胞変形の間の関係を広い範囲(0〜約30%ひずみ)で定量化して装置の制御パラメータを特性決定した(
図12E)。
【0129】
ガット・オン・ア・チップ装置中で使用されるI型コラーゲンとMatrigelとの同じECM混合物でプレコーティングされたポリエステル多孔膜インサート(0.33cm
2、0.4μm孔)を含むTranswellプレート(Corning Inc.、Lowell, MA)中でのCaco-2細胞の静的培養を使用して対照研究を実施した。また、Caco-2細胞を、1日おきに培地を新しくしながら、Transwellチャンバの頂端側および側底側の両方に同じ密度(1.5×l0
5個/cm
2)で平板培養した。
【0130】
上皮バリア測定
共焦点免疫蛍光顕微鏡法を使用してタイトジャンクションタンパク質オクルディンに関して染色し
29、経上皮電気抵抗(TEER)を測定することにより、頂端タイトジャンクションの定着から生じるヒト腸上皮細胞単層の完全性を評価した。Transwell培養においては、箸状電極に連結されたMillicell ERS計(Millipore、Bedford, MA)を使用してTEERを測定し、かつ細胞の非存在において測定されたベースライン抵抗値を減じ、次いで、残りの「固有」抵抗値(Ω)を細胞培養表面積(cm
2)で乗じることによってTEER値(Ωcm
2)を決定した。ガット・オン・ア・チップ中で培養されたCaco-2単層のTEERは、Ag/AgCl電極ワイヤ(直径0.008"、A-M systems, Inc.、Sequim, WA)に連結された電圧Ω計(87V Industrial Multimeter、Fluke Corporation、Everett, WA)を使用して測定した。対照研究が、両方法で類似したTEER結果が得られることを確認した。ここでもまた、Caco-2単層を用いて得られた結果から細胞の非存在において測定されたベースライン抵抗値を減じ、固有抵抗値をPDMS膜上の全細胞培養表面積で乗じることによって固有TEER値を決定した(表1)。
【0131】
アミノペプチダーゼ活性の測定
L-アラニン-4-ニトロアニリド塩酸塩(A4N、Sigma、St. Louis, MO)を基質として使用して、分化したヒト腸Caco-2細胞単層によって発現される刷子縁アミノペプチダーゼ酵素の比活性を定量化することにより
30、ヒト腸上皮細胞機能性を測定した。Transwell研究においては、A4N基質溶液(溶媒中1.5mM)を、5または21日間培養された細胞の上チャンバに適用し、37℃で2時間インキュベートした後、上チャンバ中の溶液(70μL)を96ウェルプレート(黒/明澄フラットボトム、BD Falcon、Franklin Lakes, NJ)に移し、そこで、開裂産物(すなわち4-ニトロアニリン)を、マイクロプレートリーダ(SpectraMax M5、Molecular Devices、Sunnyvale, CA)中、培地を参照として使用しながら405nmで定量化した。全活性を全細胞数で除することによってアミノペプチダーゼの比活性を得た。4-ニトロアニリンの校正曲線に基づいて開裂産物の実際の量を推定した。
【0132】
ガット・オン・ア・チップ中のアミノペプチダーゼの比活性を測定するために、A4N溶液を、周期性の機械的ひずみ(10%ひずみ、周波数0.15Hz)の存在または非存在において5日間培養されたCaco-2単層を含有する装置の上方マイクロチャネルの中に30μL/時間で流した。上方マイクロチャネルの出口から1時間ごとに収集した試料(30μL)を、Transwell試料を分析するために使用した同じ量(70μL)まで希釈し、96ウェルプレート(黒/明澄フラットボトム、BD Falcon)に移し、そこで上記のとおり光学密度を測定した。
【0133】
傍細胞透過度測定
タイトジャンクション完全性が確立された後(TEER≧600Ω・cm
2)、フルオレセインイソチオシアネート標識デキストラン(FD20、20KDa、Sigma、St. Louis, MO)の輸送を時間とともに測定することにより、腸細胞単層の見かけ透過係数(P
app、cm/sec)を決定した。Transwell研究においては、FD20を上チャンバ中の上皮の頂端面に適用し(200μL、1mg/mL)、下チャンバから15分ごとにアリコート(70μL)を取り出す(合計量700μL)と同時に同じ量の新鮮な培地を補充した。下チャンバから収集された試料の蛍光強度(490nm励起/520nm放出)をただちに測定して、細胞の頂端から側底面まで輸送されたFD20の量を定量化した。培地のみで測定されたベースライン蛍光値を減じた後、P
app(cm/sec)=(dQ/dt)(1/AC
o)にしたがって見かけ透過係数(P
app)を算出した。式中、dQ/dtは定常状態流束(g/sec)であり、Aは培養表面積(cm
2)であり、C
0は、頂端細胞面に適用されたFD20溶液の初期濃度(g/L)である
31。
【0134】
ガット・オン・ア・チップを使用して実施された研究においては、FD20溶液を上チャネルに流し込み、下チャンバの出口から1時間ごとに収集された試料のアリコート(30μL)を分析して、Caco-2傍細胞バリアを越えて輸送されたFD20の量を定量化した。マイクロチャネル中のCaco-2単層を、培地流(30μL/時間)の存在において、周期性の機械的ひずみ(10%ひずみ、周波数0.15Hz)に曝露しながら、または曝露せずに5日間培養した。
【0135】
微生物研究
生理学的に関連するヒト腸上皮細胞−微生物の相互作用を研究するために、元々はヒト腸から単離されたラクトバチルス・ラムノサス GG(LGG)株をAmerican Type Culture Collection(ATCC 53103、Manassas, VA)から取得した
32。LGG細胞を、加湿インキュベータ(37℃、5% C0
2)中オートクレーブ処理された乳酸桿菌MRSブロス(BD Diagnostic、Sparks, MD)の中で振とうすることなく一晩増殖させた後、事前に約4〜5日培養しておいたCaco-2細胞単層の頂端面に移して、関連する腸バリア完全性(TEER≧600Ω・cm
2)を発生させた。LGG細胞播種(約1.0×10
7CFU/mL、最終細胞密度)の前の12時間、細胞培地を抗生物質を含まない培地に交換した。Transwell培養中のCaco-2細胞の頂端面に配置されたLGG細胞を1.5時間インキュベートし、抗生物質を含まない培地を2回交換しながら非接着細胞を注意深く洗い落とし、前記のとおり長期培養のための類似した媒体中でインキュベートした。付着期間の後、周期性伸張(10%ひずみ、周波数0.15Hz)をともなって抗生物質を含まない培地を上方および下方の両方のマイクロチャネルに40μL/時間で流し込んだことを除き、ガット・オン・ア・チップにおける研究にも同じ方法を使用した。
【0136】
微生物β-ガラクトシダーゼ活性測定
同時培養研究におけるLGG細胞の生存度および機能を分析するために、培養された微生物が酵素基質O-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシド(ONPG、Sigma、St. Louis, MO)を開裂させる能力を測定することにより、LGGβ-ガラクトシダーゼの触媒活性を決定した。これらの研究の場合、LGGおよびCaco-2細胞をGut-on- Chip中で同時培養し、抗生物質を含まない培地で48時間灌流(40μL/時間)した後、ONPGをその培地に添加した(30μg/mL)。上方マイクロチャネルの出口から1時間ごとに収集された試料(30μL)を、SpectraMax M5計器(Molecular Devices、Sunnyvale, CA)を使用してその光学密度を測定する(420nm)ことによって分析して、β-ガラクトシダーゼによってLGG細胞中に放出された生成物(すなわちO-ニトロフェノール)の量を定量化した。O-ニトロフェノールの校正曲線に基づいて開裂産物の量を推定した。
【0137】
形態学的研究
培養中、Zeiss Axiovert 40CFL位相差顕微鏡上でMoticam 2500カメラ(Motic China Group Co., Ltd.)をイメージングソフトウェア(Motic images plus 2.0、Motic China Group Co., Ltd.)とともに使用して、細胞の画像を記録した。細胞の形状および極性を視覚化するために、4%パラホルムアルデヒド中に固定され、かつ0.3% Triton-X-100(Sigma、St. Louis, MO)中に透過処理されたCaco-2細胞単層中のF-アクチン、核およびムチンを、それぞれフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-ファロイジン(Sigma、St. Louis, MO)、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI、Molecular Probe、Eugene, OR)およびムチン2抗体
33(マウスモノクローナル抗体、abcam、Cambridge, MA)を使用して染色した。蛍光染色の後、光電子倍増管を備え、かつ405nmレーザおよび白色光レーザ(489〜670nm)に連結された倒立レーザ走査型共焦点顕微鏡(Leica SP5 X MP、Germany)を使用して細胞を走査した。上皮タイトジャンクションを視覚化するために、抗オクルディン抗体(マウスモノクローナル抗体Alexa Fluor 594、Molecular Probe、Eugene, OR)を使用して免疫蛍光染色を実施し、CCDカメラ(CoolSNAP HQ
2、1392×1040解像度、Photometrics、Tucson, AZ)に連結されたZeiss Axio Observer Z1エピ蛍光顕微鏡上で試料を視覚化し、MetaMorph画像ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、記録された画像のコンピュータ化画像分析を実施した。
【0138】
統計的解析
すべての結果は平均±標準誤差(SEM)として表される。定量化されたデータの統計的評価のために、GraphPad InStatバージョン3.10(GraphPad Software Inc.、San Diego CA)を使用して、Tukey-Kramer多重比較検定法を用いる一方向分散分析(ANOVA)を実施した。p<0.05である場合に、差を統計的に有意とみなした。
【0139】
剪断応力の算出
式
63τ=6μQ/h
2wに基づいて剪断応力(τ、ダイン/cm
2)を算出した。式中、μは培地の粘度(g/cm・s)であり、Qは体積流量(cm
3/s)であり、w(cm)およびh(cm)はそれぞれマイクロチャネルの幅および高さである。
【0140】
β-ガラクトシダーゼ活性の測定
β-ガラクトシダーゼの触媒活性を測定するために、O-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG、Sigma、St. Louis, MO)を前記のとおりに使用した。MRS培地中でLGG細胞培養を実施した後、対数期にLGG細胞を収穫した。LGG細胞を抗生物質を含まない細胞培地中で二回洗浄した後、ONPG含有抗生物質を含まない細胞培地(30μg/mL、最終ONPG濃度)中で細胞密度を約1.0×10
8CFU/mLに調節し、その後ただちに試料を加湿雰囲気中37℃、5% C0
2下でインキュベートした。12時間かけて間欠的に採取した試料を遠心処理し、上澄みの光学密度を420nmで測定し(SpectraMax M5、Molecular Devices)、新鮮な培地を基準として使用した。ECMコーティングされた24ウェルプレート(Falcon、BD)中でCaco-2細胞を2週間培養した後、ONPGアッセイを実施する前の12時間、培地を抗生物質を含まない培地に交換した。ONPG溶液(30μg/mL)をCaco-2培養プレートに適用した後、培地から試料のアリコートを間欠的に採取し、420nmで光学密度を測定した。
【0141】
結果および考察
ガット・オン・ア・チップマイクロシステム設計
ガット・オン・ア・チップマイクロ装置の態様は、腸の動的機械的微小環境を模倣し、微生物共生体との灌流ベースの長期培養を支持し、かつ腸上皮バリア機能のインビトロ分析を可能にするように設計されたものである。これらのゴールを達成するために、マイクロシステム設計は、ECMでコーティングされた薄い多孔膜によって分けられ、かつヒトCaco-2腸上皮細胞によってライニングされた、密に並置された二層のマイクロ流体チャネルを組み込んだものである(
図12A)。培地を両マイクロチャネルに流し込み(10〜100μL/分)、ヒト腸において通常に経験される流体流および剪断応力を模倣した
34-36。ヒト腸の蠕動運動によって生じるものに類似した上皮細胞単層の律動的な機械的変形を作製するために、コンピュータ制御真空マニホルドによって調整される周期性吸引を、マイクロチャネルの両脇に配置された完全高の中空真空チャンバに適用して、ECMコーティングされた多孔膜を繰り返し伸張および弛緩させた(
図12D)。これらの条件下で成長させたヒト腸上皮単層における細胞形状の位相差顕微鏡分析は、吸引圧のレベルが0から45kPaに上げられる場合に基質のゆがみおよび細胞の変形が0から約30%まで線形に増大することを確認した(
図12A〜12E)。
【0142】
上皮組織化に対する腸微小環境模倣の影響
腸の物理的微小環境を模倣する生理学的関連性を調べるために、静的Transwellチャンバ中、流体流および機械的ひずみなしの場合(
図14A)またはガット・オン・ア・チップマイクロ流体装置中、流れのみを用いる場合(
図14B)もしくは流れ+周期性の機械的ひずみを用いる場合(
図14C)でCaco-2細胞を増殖させた。Caco-2細胞は一般に、分化した腸バリア機能を示すためには、Transwellシステム中で少なくとも3週間は増殖させなければならず、したがって、本発明者らは、これらの静的培養において21日目に細胞を分析した。予備試験において、十分に画定された上皮単層がマイクロ流体装置中でずっと速やかに形成することが認められ、したがって、上皮単層機能をTranswell培養と比較するこれらの研究は、マイクロ流体システム中で3日間だけの培養の後、実施することができた。
【0143】
タイトジャンクションタンパク質オクルディンに対する抗体を使用する位相差および免疫蛍光顕微鏡検査は、マイクロ装置中の細胞がずっと短い期間しか培養されなかったにもかかわらず、Caco-2細胞が、三つの培養条件すべての下で、十分に発達したタイトジャンクションを有するコンフルエントな多角形上皮単層を形成することを確認した(
図14A〜14C)。しかし、F-アクチン分布および核位置の共焦点蛍光顕微鏡分析は、Transwell中、静的条件下で増殖させた上皮細胞が非常に平坦化され、ほぼ鱗片形状であることを明らかにした(
図14A)。対照的に、ヒト腸が経験するものに類似した流量(30μL/時間、剪断応力0.02ダイン/cm
2)の流体流の存在において
34,36、付随的な周期性ひずみを用いて、または用いずに増殖させた細胞は、サイズにおいてほぼ6倍の高さになり(
図14D)、したがって、基底核を有する分極した上皮細胞形態を示した(
図14B〜14C)。事実、流体流下の細胞は、健康な無傷のヒト腸上皮中の細胞に関してインビボで報告されている
37ほぼ同じ円柱形状およびサイズ(高さ30〜40μm)であった。
【0144】
考えられることの一つは、細胞形態に対するこの効果が、Transwellチャンバと比較して、マイクロチャネル装置内の配置のアーチファクトであり得るということである。しかし、流体流量がマイクロ流体チャネル中で最小レベル(10μL/時間)に下げられると、細胞は高さを増すことができず、静的Transwellシステム中とかなり同じように見え
38(
図14A)、その一方で流量を100μL/時間に増しても、30μL/時間で認められた効果を超えるさらなる効果は見られなかった(
図18A〜18C)。したがって、腸上皮の頂端面を横断する生理学的流体流と該頂端面全体に対する剪断応力との適用は、Transwellシステム中の細胞が3週後でさえ平坦なままであった条件下で3日以内の培養のそれらの細胞の高さおよび分極の増加によって測定して、細胞分化を促進する。そのうえ、周期性ひずみは任意の有意な追加的効果を生じさせなかったため、流量または剪断応力がこの応答の決定的要因であった(
図14D)。
【0145】
興味深いことに、Caco-2細胞を、ガット・オン・ア・チップマイクロ装置中、流れおよび周期性ひずみを用いてより長期間にわたり培養した場合、はじめは平面的であった円柱状上皮が自発的に成長して波形およびひだを形成するということが見出された(
図15A)。免疫蛍光共焦点顕微鏡法によって垂直断面を分析すると、これらのひだは、基底核を有する分極した円柱状上皮細胞によってライニングされ、かつ陰窩によって分けられた正常な腸絨毛の形態を示すということが見出された(
図15B)。これらの絨毛構造内の上皮細胞の頂端面は、ムチン2に関して陽性に染まった。そこは、このムコタンパク質がインビボで付着するところである
39。このインビトロモデルにおいて観察された絨毛形成のタイミング(週単位)はまた、インビボで観察された絨毛再生の速度と一致している
40-41。Caco-2細胞による腸絨毛の自発的形成はこれまで一度も報告されていないと考えられ、平面的なECM支持体上の平板培養後に起こるこの応答は、低レベルの流体流(および剪断応力)および周期性蠕動運動を経験する正常な腸の機械的微小環境の再現に直接依存すると考えられる。
【0146】
インビトロでの腸バリア機能の再構成
薬物スクリーニング用途および細胞生物学的研究のツールとしてしばしば使用される腸上皮バリア機能のTranswellモデル
8,42は、Transwell多孔膜上でのCaco-2細胞の培養を含み、タイトジャンクション完全性は、TEERを定量化することによって測定される。したがって、静的Transwell条件下で成長させたCaco-2単層のTEERと、ガット・オン・ア・チップ装置中、生理学的な周期性ひずみ(10%、0.15Hz)の存在または非存在において流れ(30μL/時間)を用いて形成させたCaco-2単層のTEERとを比較した。これらの研究は、三つの培養条件すべての下で増殖させた細胞が、平板培養後のはじめの6日間でそれらのTEERを増大させ、その後、少なくともさらに4〜5日の培養期間、同様な高レベルを維持するということを明らかにした。しかし、ひずみを用いた、または用いなかったマイクロ流体装置中の細胞は、静的Transwell培養における細胞のピークTEERレベルよりも3〜4倍高いピークTEERレベルを示した(
図16A)。
【0147】
蛍光デキストラン(FD20)を使用して、タイトジャンクションに関連する孔による腸上皮の傍細胞バリア機能を特性決定する腸上皮の見かけ透過係数(P
app)を測定した
31。Caco-2細胞をTranswellチャンバ中で5日間培養しても21日間培養しても細胞のP
appは同じ(約4×10
-8cm/sec)であることが見出された(
図16B)。マイクロ流体装置中、流体流(30μL/時間)のみを用いて5日間培養した細胞もまた、類似したP
appを示したが、周期性の機械的ひずみ(10%ひずみ、0.15Hz+流量30μL/時間)のさらなる適用は、傍細胞透過度における4倍超の増加を誘発した(
図16B)。
【0148】
これらの結果は、Transwell培養中のCaco-2細胞単層がヒトまたは動物腸中インビボで観察されるよりも低い傍細胞透過度値を表すことを示す公表された研究
43-45と一致している。この低レベルの透過度は、拡散を制限し得る静的Transwell培養中の厚い乱れのない流体層の存在の結果として生じることができると提案されていた
46。その場合、流体流が、乱れのない拡散層の厚さを減らす流体剪断応力を発生させることによって傍細胞透過度を増大させると予想し得たが
43-44,47、流体流だけでは、本明細書に記載されるシステムにおける傍細胞透過度を変化させなかった。代わりに、本明細書に記載されるとおり、周期性ひずみが傍細胞透過度を増大させ、これは、これらの細胞単層におけるTEERを変化させない条件下で起こり(
図16B対
図16A)、機械的ゆがみが傍細胞の輸送機序を直接変化させ得ることを暗示した。周期性の機械的ひずみは、増大した経細胞輸送の結果として肺上皮および内皮細胞単層を越えるナノ粒子の輸送を増大させることができ
23、したがって、類似した機序がここでもまた役割を演じ得ることが可能である。
【0149】
次に、上皮細胞アミノペプチダーゼの触媒活性を分析して、流体流および機械的ひずみがヒト腸上皮細胞における細胞分化を変化させるかどうかを判定した。アミノペプチダーゼ活性の発現によって測定されたCaco-2細胞分化は、静的Transwellシステム中で5日間培養された細胞に比べ、21日間培養された細胞の中で>7倍に増加し(
図16C)、これは、以前に公表された発見
48と一致している。重要なことに、マイクロ流体装置中、流体流(30μL/時間)下での細胞の培養はこの応答を大きく促進して、培養開始からわずか5日後でアミノペプチダーゼ活性のほぼ9倍の増加を生じさせ、同じ流体流および周期性の機械的ひずみ(10%ひずみ、0.15Hz)を同時に適用するガット・オン・ア・チップ中で細胞を増殖させた場合、さらにより大きい増大が生じた。これらの結果は、周期性ひずみがCaco-2細胞における腸分化特異的酵素活性の発現を同様に増大させることができることを示した過去の研究
25と一致している。
【0150】
宿主−マイクロフローラ同時培養
インビトロで効果的にモデル化されたことが一度もないヒト腸生理の最も決定的な構成要素の一つが腸内腔中の微生物群集の正常な存在である
49。ガット・オン・ア・チップ中で産生された高度に分化した腸上皮が微生物フローラの同時培養を支持するかどうかを調べるために、正常な腸微生物ラクトバチルス・ラムノサス GG(LGG)をCaco-2細胞単層の頂端面上で培養し、Transwellチャンバ中、静的条件下で培養された細胞を対照として使用した。連続流(40μL/時間)および周期性ひずみ(10%、0.15Hz)を用いる96時間のマイクロ流体同時培養の後、LGG細胞のマイクロコロニーはなおもCaco-2単層の表面に固く接着したままであった(
図17A)。カルセイン-AMおよびエチジウムホモダイマー-1それぞれによる培養の生死判別染色が、Caco-2上皮細胞が、これらの条件下でのLGGとの同時培養の後、完全に(>95%)生存可能なままであることを確認した(
図17B)。LGGは、培養中に単独で増殖した場合に細菌特異的β-ガラクトシダーゼ活性を発現させるが、これは、腸上皮細胞によっては発現されない(
図19)。本発明者らが同時培養の上チャンバ中のβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した場合も、それは高いままであり、したがって、LGG細胞がこれらの培養条件下でも生存可能であることを確認させた(
図17D)。
【0151】
重要なことに、これらの同時培養条件下、腸細胞単層が、生きた微生物をその頂端面で増殖させながらも正常なバリア機能を維持することができただけでなく、TEERを定量化することによって測定されたバリア完全性が実際に時間とともに改善した(
図17C)。この結果は、LGGをはじめとするプロバイオティクス菌株がインビトロで腸上皮完全性を増大させ
50、ヒトにおける腸バリア機能を増強する
51と報告されている知見と一致している。対照的に、静的Transwellシステム中、TEERは培養初日に散逸し、48時間後、上皮単層の死滅および完全な剥離のため、全く測定不可能であった(
図17C)。
【0152】
ヒトマイクロバイオームは腸の健康および疾病において中心的役割を演じ
18,52-53、したがって、宿主−微生物相互作用を研究するためのインビトロプラットフォームの開発は、細胞生物学者および生理学者ならびに薬学者にとって大きい関心事であるはずである
54-55。過去の研究が、微生物接着
56、侵入
57、移動
58およびバイオフィルム形成
59を研究するために腸上皮細胞と生きた細菌との短期的同時培養を実施している。しかし、微生物過増殖および上皮生存度の欠如のせいで、微生物と宿主細胞との長期的同時培養は可能ではなかった。これは、おそらくは、宿主細胞と微生物との間で増殖条件を合致させる
59、抗生物質を含まない培養条件において微生物の集団密度を制御する
60、または微生物細胞による代謝産物(たとえば有機酸)の産生を制限する
61-62困難さのせいである。本明細書に記載される実験において、LGG細胞はTranswellシステムのよどんだ頂端チャンバの中で遠慮なく増殖して、腸上皮細胞生存とで相容れない培地pHの強烈な低下(pH2.5〜3.0)を生じさせた(図示せず)。しかし、重要なことに、ガット・オン・ア・チップのマイクロ流体性は、それが連続流バイオリアクタとして効果的に機能するため、この難題を解決する方法を提供する。具体的には、ガット・オン・ア・チップ中の培地の希釈速度(約8.0h
-1)は培地中のLGGの比増殖速度(約0.2h
-1)よりもはるかに高く、それが有機酸および非結合LGG細胞のクリアランスを可能にする。Caco-2単層の表面に固く接着したLGG細胞はガット・オン・ア・チップ装置中にとどまり、すべての非接着LGG細胞は洗い落とされ、それが、培養物の無制限の過増殖を防いだ。LGG同時培養物の存在において腸上皮完全性が有意に増大したと仮定する場合、微生物の存在は、明らかに、ヒト治験
51において一貫している、この動的な相互作用を維持するために必要である上皮細胞機能(たとえばムチン分泌)を増強する正常な微小環境的手がかりを提供する。
【0153】
本実施例に記載されたヒトガット・オン・ア・チップマイクロ装置の態様は、周期性の機械的ひずみ、流体流および微生物フローラの共存を含む関連する生理学的手がかりの存在において重要な腸機能を研究し、動揺させるための制御されたマイクロフラットフォームを提供する。この装置の特性決定は、生きた腸の中で経験される低レベルの流体流および剪断応力を再現することが、加速された腸上皮細胞分化、3D絨毛様構造の形成および増大した腸バリア機能を促進するのに十分であること、ならびに正常な蠕動運動を模倣する周期性の機械的ひずみの付加がこれらの応答をさらに増強するということを明らかにした。そのうえ、腸上皮は、ひとたびガット・オン・ア・チップ装置内で分化すると、ヒト腸内に通常生存する微生物フローラの増殖を支持することができる。したがって、ヒト蠕動性ガット・オン・ア・チップは、腸機能の機械的調整ならびに宿主−微生物共生および進化の研究を促進し得る。それが正常なヒト腸の多くの複雑な機能を効果的に再現すると仮定する場合、それはまた、薬物スクリーニングおよび毒性検査に不可欠なプラットフォームにもなり得る。
【0154】
実施例2および発明の背景のセクションに関する参照文献
【0155】
(表1)実施例1および2に記載されたガット・オン・ア・チップの態様のための設計パラメータ
a 真空チャンバの高さは、中空区域の全高を考慮することによって推定し、その際、上層および下層の高さ(150μm)ならびに多孔膜の厚さ(30μm)をすべて考慮に入れた。
b 剪断応力の範囲は、この表において指定された流体流量の範囲に対応する。
c 剪断応力は、ESI Experimentalにおける式によって算出した。