(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗員(M)の着座するシートクッション(2)、このシートクッション(2)の後端部に連結されて乗員(M)の背部を受けるシートバック(3)を備えた乗物用座席シートにおいて、
前記シートバック(3)の骨格を構成するシートバックフレーム(20)は、左右に間隔をあけて配設される左右サイドフレーム(21)と、前記左右サイドフレーム(21)の上部間を結合するアッパフレーム(22)と、前記左右サイドフレーム(21)の下部間を結合するロアーフレーム(23)とよりなり、
前記ロアーフレーム(23)は、前記左右サイドフレーム(21)間を車幅方向に延びる中央部材(24)と、この中央部材(24)の両端を前記左右サイドフレーム(21)に接続する左右接続部材(25)とを備え、
前記左右接続部材(25)は、相互に接近する向きに延びる延出部(25a)をそれぞれ有しており、前記中央部材(24)の両端部分(24a)は、それらの下端部が前記延出部(25a)の下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出し、
前記中央部材(24)には、上方に向けて突出する中央部分(26)が形成され、
前記中央部分(26)の上面は、前記左右接続部材(25)の前記延出部(25a)の上面よりも上方に位置することを特徴とする、乗物用座席シート。
前記シートバック(3)に、乗員(M)の背部を支持する受圧部材(40)が設けられ、前記中央部分(26)は、車幅方向で見て該受圧部材(40)の下側部分の幅内に配置されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の乗物用座席シート。
車幅方向で見て、前記中央部材(24)の前記両端部分(24a)及びそれらで挟まれる部分の範囲内に、前記シートバック(3)に設けられて乗員(M)の背部を支持する受圧部材(40)の下側部分が配置されること特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の乗物用座席シート。
前記中央部材(24)の前記両端部分(24a)の下端部は、前記シートバックフレーム(20)をリクライニングさせるリクライニング機構(10)の枢軸(9)よりも下方に位置することを特徴とする、前記請求項1〜5の何れか1項に記載の乗物用座席シート。
前記中央部材(24)の上端部には、表面を湾曲させた第1のフランジ部(26b)が形成されることを特徴とする、前記請求項1〜9の何れか1項に記載の乗物用座席シート。
前記中央部材(24)の下端部には、表面を湾曲させた第2のフランジ部(24c)が形成されることを特徴とする、前記請求項1〜10の何れか1項に記載の乗物用座席シート。
前記第2のフランジ部(24c)は、前記シートバックフレーム(20)をリクライニングさせるリクライニング機構(10)の枢軸(9)を回り込むように形成されることを特徴とする、前記請求項11に記載の乗物用座席シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記シートバックは、シートバックフレームの下部フレームの上方に空間部が形成されているため、たとえば、乗物の、急加速時、後面衝突時など、シートバックに過度な衝撃荷重が作用したときに、シートバックによる乗員の支持、特にその腰部に対する支持を向上させることが望まれていた。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、シートバックフレームを改良することで、前記要望を満たすようにした新規な乗物用座席シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、乗物の適所に設置されて乗員の着座するシートクッション、このシートクッションの後端部に連結されて乗員の背部を受けるシートバックを備えた乗物用座席シートにおいて、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームは、左右に間隔をあけて配設される左右サイドフレームと、前記左右サイドフレームの上部間を結合するアッパフレームと、前記左右サイドフレームの下部間を結合するロアーフレームとよりなり、前記ロアーフレームは、前記左右サイドフレーム間を車幅方向に延びる中央部材と、この中央部材の両端を前記左右サイドフレームに接続する左右接続部材とを備え、前記左右接続部材は、相互に接近する向きに延びる延出部をそれぞれ有しており、前記中央部材の両端部分は、それらの下端部が前記延出部の下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出
し、前記中央部材には、上方に向けて突出する中央部分が形成さ
れ、前記中央部分の上面は、前記左右接続部材の前記延出部の上面よりも上方に位置することを第
1の特徴としている。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、前記
1の特徴に加えて、前記中央部材は、前記中央部分の上面と前記両端部分の上面との間に段差が形成されていることを第
2の特徴としている。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、乗員の着座するシートクッション、このシートクッションの後端部に連結されて乗員の背部を受けるシートバックを備えた乗物用座席シートにおいて、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームは、左右に間隔をあけて配設される左右サイドフレームと、前記左右サイドフレームの上部間を結合するアッパフレームと、前記左右サイドフレームの下部間を結合するロアーフレームとよりなり、前記ロアーフレームは、前記左右サイドフレーム間を車幅方向に延びる中央部材と、この中央部材の両端を前記左右サイドフレームに接続する左右接続部材とを備え、前記左右接続部材は、相互に接近する向きに延びる延出部をそれぞれ有しており、前記中央部材の両端部分は、それらの下端部が前記延出部の下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出し、前記中央部材には、上方に向けて突出する中央部分が形成され、前記中央部材は、前記中央部分の上面と前記両端部分の上面との間に段差が形成されていることを第3の特徴としている。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第
1〜第
3の特徴の何れかに加えて、前記シートバックに、乗員の背部を支持する受圧部材が設けられ、前記中央部分は、車幅方向で見て該受圧部材の下側部分の幅内に配置されることを第
4の特徴としている。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第1〜第
4の特徴の何れかに加えて、車幅方向で見て、前記中央部材の前記両端部分及びそれらで挟まれる部分の範囲内に、前記シートバックに設けられて乗員の背部を支持する受圧部材の下側部分が配置されることを第
5の特徴としている。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第1〜第
5の特徴の何れかに加えて、前記中央部材の前記両端部分の下端部は、前記シートバックフレームをリクライニングさせるリクライニング機構の枢軸よりも下方に位置することを第
6の特徴としている。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第1〜第
6の特徴の何れかに加えて、前記中央部材には、前方に突出する湾曲面が形成されることを第
7の特徴としている。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第
7の特徴に加えて、前記湾曲面の下面には、前記シートバックのクッション部材の後面が当接することを第
8の特徴としている。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、乗員の着座するシートクッション、このシートクッションの後端部に連結されて乗員の背部を受けるシートバックを備えた乗物用座席シートにおいて、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームは、左右に間隔をあけて配設される左右サイドフレームと、前記左右サイドフレームの上部間を結合するアッパフレームと、前記左右サイドフレームの下部間を結合するロアーフレームとよりなり、前記ロアーフレームは、前記左右サイドフレーム間を車幅方向に延びる中央部材と、この中央部材の両端を前記左右サイドフレームに接続する左右接続部材とを備え、前記左右接続部材は、相互に接近する向きに延びる延出部をそれぞれ有しており、前記中央部材の両端部分は、それらの下端部が前記延出部の下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出し、前記中央部材には、前方に突出する湾曲面が形成され、前記湾曲面の下面には、前記シートバックのクッション部材の後面が当接することを第9の特徴としている。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第1〜第9の特徴の何れかに加えて、前記中央部材の上端部には、表面を湾曲させた第1のフランジ部が形成されることを第10の特徴としている。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第1〜第10の特徴の何れかに加えて、前記中央部材の下端部には、表面を湾曲させた第2のフランジ部が形成されることを第11の特徴としている。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、前記第11の特徴に加えて、前記第2のフランジ部は、前記シートバックフレームをリクライニングさせるリクライニング機構の枢軸を回り込むように形成されることを第12の特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特徴によれば、ロアーフレームは、左右サイドフレーム間を車幅方向に延びる中央部材と、この中央部材の両端を前記左右サイドフレームに接続する左右接続部材とを備え、左右接続部材は、相互に接近する向きに延びる延出部をそれぞれ有するとともに、中央部材の両端部分は、それらの下端部が前記延出部の下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出するので、シートバックフレームを組み付けるに当たり、ロアーフレームの中央部材と左右接続部材との相対位置を、中央部材の両端部分と左右接続部材の延出部とで確認しながら定めることができて、組み付け作業が容易となり、組み付け精度も向上する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の乗物用座席シートを、自動車用として実施した場合の実施態様について説明する。
【0022】
以下の説明において、座席シートの設置される自動車の前後を「前後」、その左右を「左右」、その上下を「上下」という。
【0023】
図1,2に示すように、自動車用座席シート1は、シートクッション2、シートバック3およびヘッドレスト4を備える。
【0024】
シートクッション2は、下部に複数の支持脚7、7を設けた、シートクッションフレーム6を有しており、その支持脚7、7が自動車の床Fに固着される。
【0025】
シートクッションフレーム6の後端部には上方に突出する左右一対のブラケット8が連設され、これらブラケット8に、シートバック3の骨格を構成するシートバックフレーム20が、従来公知のリクライニング機構10を介して枢軸9まわりにリクライニング可能に連結される。
【0026】
また、シートバックフレーム20の上端部、すなわちアッパフレーム22には、左右一対のヘッドレスト支持筒11、11が固設されており、これら支持筒11、11によってヘッドレスト4が、従来公知の支持装置(図示せず)によって昇降および固定可能に支持される。
【0027】
つぎに、
図1〜9を参照して、本発明にかかる座席シート1のシートバック3の具体的構造について詳細に説明する。
【0028】
シートバック3は、その骨格を構成するシートバックフレーム20と、そのシートバックフレーム20の全域を被包し、その表面が表皮15により被覆される、発泡ウレタン製のクッション部材14と、シートバックフレーム20の背面に取り付けられるバックボード16とを備えている。
【0029】
図2〜4に示すように、シートバックフレーム20は、上下方向に長い長方形状に形成されており、左右方向、すなわち車幅方向に間隔を存して互いに並行に上下方向に延びる左右サイドフレーム21と、左右サイドフレーム21,21の上端間に溶接結合されるアッパフレーム22と、左右サイドフレーム21,21の下端間に溶接結合されるロアーフレーム23とより上下方向に長い矩形状に形成されている。
【0030】
前記左右サイドフレーム21,21は、互いに対向する内面を開放した横断面コ字状に形成され、その下半部は前方に湾曲状に膨出形成され、また、前記アッパフレーム22は、パイプ部材により門型に形成されている。
【0031】
つぎに、ロアーフレーム23の構造について説明する。
【0032】
このロアーフレーム23は、左右サイドフレーム21,21間を車幅方向に延びる中央部材24と、この中央部材24の左右両端と左右サイドフレーム21,21の下端間を一体に溶接結合する左右接続部材25,25を備える。前記中央部材24は、鋼板などの板材により断面コ字状で、車幅方向に長い長方形に形成され、一方、左右接続部材25,25は、鋼板などの板材により断面コ字状で、三角形状に形成されている。中央部材24の左右両端部には、それと重なるように左右接続部材25,25の内端部が接続され、それらは一体に溶接結合される。左右接続部材25の内端部には、相互に接近する向きに延びる延出部25aが形成されており、中央部材24の両端部分24aは、それらの下端部が前記延出部25aの下端部よりも下方に位置するようにして下方に突出する。これら両端部分24aの下端部は、リクライニング機構10の枢軸9よりも下方に位置し、また左右接続部材25,25の上端は、前記左右サイドフレーム21,21の下端にそれぞれ一体に溶接結合される。そして、ロアーフレーム23は、全体として前後方向からみて凹状に形成されている。
【0033】
前記中央部材24と左右接続部材25,25は、それらを同一素材あるいは、別の素材により形成してもよく、またそれらは、同じ厚さ、あるいは別の厚さに形成してもよい。
【0034】
図3,4,5,7に示すように、前記中央部材24の、車幅方向(左右方向)の中央部の上縁部には、その方向に細長い長方形状の中央部分26が上方に向けて一体に突出形成されており、該中央部分26の上面と中央部材24の両端部分24aの上面との間には段差Sが形成されている。しかもこの中央部分26の左右両端と、中央部材24の左右両端部分24a,24aおよび左右接続部材25,25との間にはそれぞれ凹部27,27が形成されており、該中央部分26は、単独で前後方向に弾性変形が可能である。そして、この中央部分26は、ロアーフレーム23と同じ厚さ、あるいは別の厚さ、たとえばそれよりも肉薄に形成され、その上面は左右接続部材25の延出部25aの上面よりも上方に位置している。
【0035】
つぎに、前記中央部分26の構造を、さらに詳細に説明すると、この中央部分26は、シートクッション2上に乗員Mが着座した状態では、後述する受圧部材40よりも後方にあって、中央部分26の上端と、受圧部材40の下端間には、前後方向に距離dが保たれ(
図5,7参照)、乗員Mに違和感を与えないようにしており、自動車の急加速時、後面衝突時など、シートバック3に乗員Mからの荷重が作用したとき、受圧部材40の下端の真下に中央部分26の前端が配置されるように、中央部分26の上端と、受圧部材40の下端とが上下方向に略面一になり、また、中央部分26の上端面が、受圧部材40の下端面に最も近づくように設定される(
図10参照)。
【0036】
図5,7に示すように、前記中央部分26は、中央部材24から前側(乗員側)に向けて前上りに傾斜しており、その上下方向の中間領域には、前方に向かって凸に湾曲するように突出する湾曲面26aが、その下面をクッション部材14の後面に接触させる荷重受面として形成され、その上端(自由端)には、前方に向かって表面を湾曲させた第1のフランジ部26bが形成され、さらに、その下端には、後方に向かって折り曲げられる下端折曲部26cが形成されており、中央部分26の剛性が高められる。前記第1のフランジ部26bは、表皮15の下端縁の掛け止め部として利用することができ、また、前記下端折曲部26cは中央部材24に一体に接続されている。中央部分26の上端面は、後述する受圧部材40の下端面と間隔をあけて略平行である。
【0037】
なお、前記第1のフランジ部26bの上端(自由端)は、後方に向かって折り曲げるようにしてもよい。
【0038】
また、前記中央部材24の下端部には、表面を湾曲させた第2のフランジ部24cが、リクライニング機構10の枢軸9を回り込むように形成されている。
【0039】
図2〜4に示すように、シートバックフレーム20上部、すなわちアッパフレーム22の左右側部には、第1規制部材30および第2規制部材31が上下に間隔をあけて架設されている。
【0040】
第1規制部材30は、ワイヤなどの線状部材により構成され、車幅方向に直線状に延びており、その左右両端30e,30eが、シートバックフレーム20のアッパフレーム22の左右側部に溶接結着されている。そして、この第1規制部材30は、
図5,6に示すように、アッパフレーム22を迂回してその後部下方に垂下される後部クッション部材14aの下端部を挟んでバックボード16の上縁を支持しており、後部クッション部材44の変形を規制する。
【0041】
一方、
図3,4に示すように、第2規制部材31もワイヤなどの線状部材により構成され、その左右両端31e,31eが、アッパフレーム22の左右側部に溶接結着されている。そして、この第2規制部材31は、第1規制部材30よりも前方にあって(
図5,6参照)上下方向に波状に屈曲形成されていて、後部クッション部材14aの前方への変形を抑制する規制部31a、後部クッション部材44aの表皮15を取り付ける一対の表皮取付部31b,31bおよびバックボード16の上縁を係止する一対のバックボード取付部31c,31cが一体に形成されている。具体的には、前記規制部31aは、第2規制部材31の中央部に形成され、前記第1規制部材30と交差し上方に突出して横方向に直線状に延びる突出部分31a−1と、その両端より下方に垂下する垂下部分31a−2を有して逆U字状に形成されている。また、前記表皮取付部31bは、前記垂下部分31a−2の下端に連続して横方向に直線状に延びており、さらに、前記バックボード取付部31cは、表皮取付部31bの左右両側に、略鉛直な連結部分31d,31dを介して横方向に直線状に延びている。
【0042】
図3,4に示すように、前記第2規制部材31の、規制部31aの突出部分31a−1は、アッパフレーム22に設けられる、ヘッドレストの一対の支持筒11,11の下端よりも上方に突出し、かつ、その支持筒11,11間に配置されていて、一対のヘッドレストの支持筒11,11近傍の後部クッション部材14aがそれよりも前方側、すなわち乗員側へ変形して侵入するのを効果的に抑制する。
【0043】
図3、4、5、6に示すように、シートバック16の背面を覆うバックボード16の上端内側に設けられる一対の取付けフック16a,16aは、前記第2規制部材31のバックボート取付部31c,31cに係止され、バックボード16の上端は、第2規制部材31に取り付けられる。また、クッション部材14を被覆する表皮15の端末は、第2規制部材31の表皮取付部31b、31bに結着される。
【0044】
ところで、自動車の急加速時、後面衝突時など、過大な外力がシートバック3に作用したき、第2規制部材31に設けた規制部31aは、シートバックフレーム20よりも後方側のクッション部材14aが、その前方側へと変形して侵入するのを抑制することができ、クッション部材14による乗員の保護を安定させることができる。
【0045】
また、シートバック3の製作時、運搬時などにおいても、シートバック3に後方からの過大な外力が作用したときにも、第2規制部材31の規制部31aは、シートバックフレーム20よりも後方側の後部クッション部材14aが、その前方側へ変形して侵入するのを抑止することができる。
【0046】
図2〜7、11に示すように、シートバックフレーム20内には、シートクッション上に着座する乗員Mの上半身、すなわちその胸部および腰部を支持する、受圧部材40が、その四方に間隙をあけて配設されている。この受圧部材40は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂製の板材により、前後方向からみて四角形状に形成されており、シートフバックフレーム20に、上部連結部材としての上部連結ワイヤ41および下部連結部材としての下部連結ワイヤ42を介して前後方向に撓むように弾性支持されている。上部連結ワイヤ41は、下部連結ワイヤ42よりも軸方向の伸び量が大きく、これにより、受圧部材40は、その上部が、下部よりも前後方向の撓み量が大きくなるようにされている。
【0047】
図3,4に示すように、受圧部材40は、その上部が、その下部よりも車幅方向の横幅が広く、かつその上部の肉厚t
2 が、その下部の肉厚t
1 よりも肉薄に形成されている(
図5参照)。受圧部材40の左右両側には、左右側部縦リブ40a,40aがその背面側に向けて膨出形成され、さらに、その下半部には、その略全域に亘り、複数の縦リブ40b…、それらとクロスする横リブ40c、他の複数の小リブ40d…がその背面側に向けて膨出形成されており、これらのリブは、受圧部材40の左右両側部および下半部を補強している。そして、受圧部材40に乗員Mからの荷重が作用したとき、その上部が、下部よりも弾性変形し易く、その沈み込み量が大きくなるようにされており、後述するように受圧部材40による乗員Mの保護効率を高めるようにしている。
【0048】
図3,4に示すように、受圧部材40の上部および下部は、上部および下部連結ワイヤ41,42によって、前後方向に撓むように弾性変形可能に支持される。
【0049】
受圧部材40の背面の上方角部には、下向きに開放した鉤状の左右上部支持片40e,40eがそれぞれ一体に形成され、またその上方中央部には上向きに開放した鉤状の上部中央支持片40fが一体に形成され、さらに、それらの支持片40fよりも下方において、左右上部支持片40e,40eと上部中央支持片40fとの間には、下向きに開放した鉤状の左右中間支持片40g,40gがそれぞれ一体に形成されている。
【0050】
一方、上部連結ワイヤ41は、上下方向に波状に屈曲形成されて、その両端41e,41eがシートバックフレーム20の左右サイドフレーム21,21に連結されている。受圧部材40の左右上部支持片40e,40eは、上部連結ワイヤ41の横方向に延びる左右上部分41a,41aにそれぞれ横方向に摺動可能に支持され、また、その上部中央支持片40fは、上部連結ワイヤ41の横方向に延びる上部分41bに支持され、さらに、その左右中間支持片40g,40gは、上部連結ワイヤ41の横方向に延びる左右下部分41c,41cにそれぞれ横方向に摺動可能に支持される。
【0051】
また、
図3,4,8に示すように、受圧部材40の、左右上部には、前記上部連結ワイヤ41に当接して受圧部材40の撓み量を制限する左右一対の当接部材40h,40hが一体に設けられる。すなわち、受圧部材40の左右側部縦リブ40a,40aの上部には、その受圧部材40の背面との間に間隙を存して内方に向けて突出する当接部材40h,40hが一体に形成されている。前記当接部材40h,40hと受圧部材40の背面との間に上部連結ワイヤ41の左右側部41d,41dを受け入れる受入空間c,c(
図8,12参照)が形成される。そして、その受入空間c,cに進入した上部連結ワイヤ41の左右側部41d,41dは、前記当接部材40h,40hにそれぞれ当接して受圧部材40の後方への変移が抑制され、これにより、受圧部材40の後方への撓み量(沈込み量)を規制することができる。
【0052】
受圧部材40の下部は、下部連結ワイヤ42によって、後方に移動可能に支持される。
図3,4に示すように、受圧部材40の背面の下方左右には、下向きに開放した鉤状の左右下部支持片40i,40iがそれぞれ一体に形成され、またその中央部には上向きに開放した鉤状の下部中央支持片40jが一体に形成されている。
【0053】
一方、下部連結ワイヤ42は、上下方向に屈曲形成されて、その両端42e,42eがシートバックフレーム20の左右サイドフレーム21,21に、それぞれ回動部材44および引張ばね46を介して連結されている。
図9に示すように、回動部材44はサイドフレーム21に前後方向に回動自在に軸支45され、この回動部材44の下端と、サイドフレーム21間には引張バネ46が張架されており、この引張バネ46の引張力は、回動部材44を上方(
図9時計方向)に回動するように付勢している。また、下部連結ワイヤ42の端部42eは、回動部材44の下端に連結されている。したがって、受圧部材40に後方への負荷が作用すれば、該受圧部材40の下部は、回動部材44および引張バネ46を介して後方に向けて撓むようにされる。回動部材44には、ストッパ片44aが一体に設けられ、このストッパ片44aがサイドフレーム21の縁部に係合して、受圧部材40の下部の後方への撓み量が規制される。
【0054】
しかして、上部連結ワイヤ41および下部連結ワイヤ42によってシートバックフレーム20に支持される受圧部材40は、そこに乗員Mから後方への負荷が作用したとき、主として乗員Mの胸部を支持する上部が、主として乗員の腰部を支持する下部よりも撓み量が大きく、すなわちその沈み込み量を大きくなるように設定される。
【0055】
ところで、シートクッション2上に着座する乗員Mの頭部はヘッドレストにより支持され、乗員Mの上半身は、シートバック3の受圧部材40のほか、シートバックフレーム20のロアーフレーム23の中央部材24に特設した中央部分26により支持される。
【0056】
特に、前記中央部分26は、ロアーフレーム23の中央部材24から受圧部材40に向けて上方に突出されて、ロアーフレーム23よりも前方に延出されて乗員Mに近付けることができるので、その中央部分26により、乗員Mの上半身、特に、その腰部を、素早く、直接支持することができ、自動車の急加速時、後面衝突時など、シートバック3に過大な衝撃荷重が作用する場合にも、その衝撃荷重を有効に吸収して乗員の支持力を向上させることができる。
【0057】
なお
図3,4から明らかなように、車幅方向で見て、前記中央部分26は受圧部材40の下側部分の幅内に配置されるとともに、受圧部材40の下側部分は中央部材24の両端部分24a及びそれらで挟まれる部分の範囲内に配置されている。
【0058】
また、中央部分26には、第1のフランジ部26b,折曲部26cが形成されるので、この中央部分26の強度が高められて、その中央部分26が衝撃荷重で、変形したり、損傷したりすることがない。
【0059】
また、中央部分26を、ロアーフレーム23と別部材で構成すれば、ロアーフレーム23本来の機能を損なうことなく、中央部分26を、乗員Mの支持に最も適した材料により形成することができる。
【0060】
また、中央部分26の第1のフランジ部26bは、前方に折り曲げることにより、そこにクッション部材14の表皮15の端縁を掛け止めることができ、中央部分26により表皮15の端縁を安定して支持することができる。
【0061】
また、中央部分26は、ロアーフレーム23の中央部材24から前方に前上りに傾斜するので、中央部分26は、素早く乗員Mを支持することができ、その支持力を向上させることができる。
【0062】
また、中央部分26は、その上部と下部の間が、前方に凸の湾曲面26aに形成されているので、乗員Mに違和感を与えることなく、その支持力が一層向上する。
【0063】
また、乗員の通常の着座状態(シートバック3に過大な負荷が作用しない状態)では、受圧部材40の下端よりも、中央部分26の上端および湾曲面26aが後方に位置しているので、乗員Mに違和感を与えることがない。
【0064】
また、乗員の着座状態で、シートバックに過大な負荷が作用したときは、受圧部材40の下端の真下に中央部分26の前端が配置されるようにして受圧部材40の下端面と前記中央部分26の上端面とが並列され、それらの面が相互に接近するようにしたので、乗員Mの支持力を一層向上させることができる。
【0065】
また、中央部分26の上端部のシート幅方向の長さは、前記受圧部材40の下端部をシートバックフレームに取付ける下部取付け部材の左右取付部間の長さよりも長くされているので、中央部分26による乗員の支持を一層安定させることができる。
【0066】
また、中央部分26のシート幅方向の長さは、受圧部材40の下部をシートバックフレーム20に取付ける左右取付部間の長さよりも長くされているので、中央部分26による乗員Mの支持を一層安定させることができる。
【0067】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0068】
たとえば、前記実施態様では、本発明の乗物用座席シートを、自動車用に実施した場合について説明したが、これを、鉄道車両、船舶などの他の乗物にも実施できることは勿論である。