(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
[シート状食品]
図1は、本実施形態に係るシート状食品の模式的断面図である。
図1に示すように、シート状食品1は、原料食材2と、結着剤3とを含む。本実施形態においては、シート状食品1は、保湿剤4を更に含む。また、シート状食品1は、厚さ(嵩)方向の両側の表面層10と、表面層10同士の間に位置し、表面層10のそれぞれよりも低密度な内側層20と、を備える。言い換えると、シート状食品1は、第一の表面層10と内側層20と第二の表面層10との3層構造を有するシート状の食品である。
【0015】
<原料食材>
原料食材2は、食材に、必要に応じて調味料や着色料を加え、加工されたものである。原料食材2に含まれる食材は、野菜、魚介、海藻、豆等に大別される。これらの食材は、シート状食品1の用途に応じて選択される。
【0016】
原料食材2に含まれる野菜は、葉物野菜、根菜等に大別される。葉物野菜としては、紫蘇、大根菜、紫蘇、大根菜、ほうれん草、小松菜、野沢菜、高菜、広島菜、白菜、京菜、キャベツ、明日葉、チンゲン菜、バジル、モロヘイヤ等が挙げられる。根菜としては、人参、かぶ、ごぼう、じゃがいも、さつまいも、さといも、山いも、れんこん、しょうが等が挙げられる。また、例えば、大根の根の部分は根菜として、人参の葉の部分は葉物野菜として、原料食材2に用いられてもよい。このように、同じ野菜であっても、葉の部分は葉物野菜として、根の部分は根菜として用いられてもよい野菜もある。
【0017】
また、原料食材2に含まれる魚介としては、鮭、鰹、鯛、まぐろ、さば、たら、あじ、いわし、いか、えび、かに、ほたて、あさり、かき、うに、たらこ等が挙げられる。
【0018】
また、原料食材2に含まれる海藻としては、若布、ひじき、昆布、めかぶ、赤とさか、青とさか、ふのり、アサクサノリ、アオサ等が挙げられる。ただし、本発明は、アサクサノリ、アオサ等のいわゆる海苔以外の海藻を原料食材とする場合に好ましく適用される。海苔は、見た目が黒いという理由で、アジア圏以外の国(例えば、北米諸国)の国民から好まれないことがあるからである。
【0019】
また、原料食材2に含まれる豆としては、大豆(きな粉、脱脂大豆を含む)、小豆、グリンピース、えんどう豆、そらまめ、うぐいす豆等が挙げられる。
【0020】
原料食材2の形状、大きさは特に限定されないが、原料食材2に葉物野菜が含まれる場合には、原料食材2は、例えば目開き1.5〜3mm(好ましくは2〜2.5mm)の篩を通過しうるフレーク状に加工される。
【0021】
なお、本明細書において、「目開きn(n=長さ)の篩を通過しうる」とは、目開きがnの篩に、加工された原料食材2を通したときに、篩を通過して落下するサイズをいう。また、本明細書において「フレーク状」は、素材を乾燥させて薄片状としたものであり、薄片状等の平面的な形状の他、立体的な形状(例えば、球状、直方体状)も含む。
【0022】
また、原料食材2に根菜が含まれる場合には、原料食材2は、例えば目開き0.5〜2mm(好ましくは1〜1.5mm)の篩を通過しうるフレーク状に加工される。
【0023】
また、原料食材2に魚介が含まれる場合には、原料食材2は、例えば目開き1.5〜3mm(好ましくは2〜2.5mm)の篩を通過しうるフレーク状に加工される。
【0024】
また、原料食材2に海藻が含まれる場合には、原料食材2は、例えば目開き0.5〜3mm(好ましくは1〜2.5mm)の篩を通過しうるフレーク状又は粉末状に加工される。
【0025】
また、原料食材2に豆が含まれる場合には、原料食材2は、例えば目開き0.2mm以下の篩を通過しうる粉末状に加工される。
【0026】
原料食材2に含まれる調味料としては、塩、砂糖、ぶどう糖、醤油、みりん、醸造酢、みそ、出汁(昆布、鰹、椎茸)、魚介エキス、クエン酸、リンゴ酸、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。また、原料食材2に含まれる着色料としては、カロチン色素、紅麹色素、パブリカ色素、クチナシ色素等が挙げられる。ここで、調味料及び着色料により素材の味を感じにくくなることから、原料食材2は、調味料及び着色料を含まないことが好ましい。一方で、原料食材2が調味料及び着色料を含む場合には、これらの調味料及び着色料は、食材や、シート状食品1の用途に応じて選択されることが好ましい。
【0027】
<結着剤>
結着剤3は、シート状食品1の強度を高めるために用いられる。結着剤3は、例えば、こんにゃく(例えば、こんにゃく精粉、清水化学株式会社製)、ペクチン(例えば、ペクチンHR−450、オルガノフードテック株式会社製)、タマリンドガム(例えば、グリロイド3S、大日本住友製薬株式会社製)、寒天、カラギーナン、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム等を所定の割合で含むものである。
【0028】
シート状食品1において、結着剤3の乾燥質量(WB)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)は、4.9〜7.3であり、好ましくは、5.4〜6.8である。質量比率(WA/WB)が4.9未満になると、結着剤3が不足し、強度を確保することが難しくなる。質量比率(WA/WB)が7.3を超えると、原料食材2が不足し、素材の味を感じにくくなる。なお、本明細書において、乾燥質量とは、シート状食品が概ね乾燥しているとみなせる状態での質量をいう。
【0029】
<保湿剤4>
保湿剤4は、例えば還元水あめ(例えば、アマミン500MC、MCフードスペシャリティーズ株式会社製)、ソルビット(例えば、ソルビトールF、物産フードサイエンス株式会社製)、マンニトール、マルチトール、エリスリトール等を所定の割合で含むものである。
【0030】
シート状食品1において、保湿剤4の乾燥質量(WC)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)は、0.8〜1.3であり、好ましくは、0.9〜1.2である。質量比率(WA/WC)が0.8未満になると、原料食材2が不足し、素材の味を感じにくくなる。また、保湿剤4が多量となり、シート状食品のサクサクとした食感を得にくくなる。質量比率(WA/WC)が1.3を超えると、保湿剤4が不足し、シート状食品1の保湿性が低下する。シート状食品1の保湿性が低下すると長期保管後の操作性が低下する場合がある。また、後述する製造上の観点からも、シート状食品1の保湿性は高いことが好ましい。
【0031】
[製造例]
続いて、本実施形態に係るシート状食品1の製造方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係るシート状食品1の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態に係るシート状食品1の製造工程は、例えば、下処理工程ST1と、前処理工程ST2と、調整工程ST3と、成形工程ST4とを含む。なお、原料食材2の鮮度等にもよるが、下処理工程ST1と、前処理工程ST2とを省略して原料食材2をそのまま加工(調整、成形)できる場合がある。
【0032】
<下処理工程>
下処理工程ST1は、食材ごとに特有な工程である。以下に、代表的な食材を挙げ、その下処理の一例を示す。
【0033】
食材に紫蘇(葉物野菜)が含まれる場合、下処理工程ST1には、(1)紫蘇を洗浄し、(2)紫蘇を塩、クエン酸等の調味料に漬け込み、(3)紫蘇を選別する工程等が含まれる。
【0034】
食材に大根菜(葉物野菜)が含まれる場合、下処理工程ST1には、(1)大根菜を洗浄・殺菌し、(2)大根菜を裁断し、(3)大根菜をブランチングし、(4)大根菜を塩、ブドウ糖等の調味料で調味し、(5)大根菜を乾燥する工程等が含まれる。これらの下処理によりいわゆる調味乾燥野菜が得られる。なお、(4)、(5)の工程に替えてブランチングされた野菜(大根菜)をそのまま冷凍保管して冷凍野菜としてもよいし、ブランチングされた野菜を脱水し、冷凍保管し、冷凍圧搾塩蔵野菜としてもよい。食材に人参(根菜)が含まれる場合にも、下処理工程ST1には、大根菜(葉物野菜)が含まれる場合と同様の工程が含まれる。
【0035】
食材に鮭(魚介)が含まれる場合、下処理工程ST1には、(1)鮭から頭部・エラ・内臓を取り除き、(2)ドレスされた鮭を蒸煮し、(3)鮭をむき身にする(鮭から皮、骨を取り除く)工程等が含まれる。更に、むき身を冷凍してもよい。
【0036】
食材に若布(海藻)が含まれる場合、下処理工程ST1には、(1)塩蔵若布を裁断し、(2)若布を洗浄し、(3)若布を脱水し、(4)若布を乾燥し、(5)若布を選別する工程等が含まれる。
【0037】
食材にきな粉(豆)が含まれる場合、下処理工程ST1には、(1)大豆を精選し、(2)大豆を焙煎し、(3)大豆が目開き150〜180μmの篩を通過するように製粉する工程等が含まれる。食材に脱脂大豆(豆)が含まれる場合、下処理工程ST1には、脱脂大豆粉と、粉末油脂と、水とを混合する工程等が含まれる。食材に小豆(豆)が含まれる場合、下処理工程ST1には、小豆の粉末あんと、水とを混合する工程等が含まれる。
【0038】
<前処理工程>
前処理工程ST2は、下処理工程ST1と同様、食材ごとに特有な工程である。以下に、代表的な食材を挙げ、その前処理の一例を示す。
【0039】
食材に紫蘇(葉物野菜)が含まれる場合、前処理工程ST2には、(1)下処理工程ST1によって塩蔵された紫蘇を大きく(例えば15mm四方の大きさに)裁断し、(2)紫蘇を洗浄層に漬け込み、(3)紫蘇を小さく(例えば1〜2mm四方の大きさに)裁断し、(4)紫蘇を脱水し、(5)紫蘇をクエン酸液等により脱塩し、(6)紫蘇を更に脱水し、(7)紫蘇を圧延する工程等が含まれる。下処理工程ST1及び前処理工程ST2により、紫蘇(葉物野菜)は、例えば目開き1.5〜3mmの篩を通過しうるフレーク状に加工される。
【0040】
食材に大根菜(葉物野菜)が含まれる場合、前処理工程ST2には、(1)下処理工程ST1によって乾燥された大根菜を多量の水(例えば10倍量の水)で塩抜きし、(2)大根菜を脱水し、(3)大根菜を圧延する工程等が含まれる。食材に人参(根菜)が含まれる場合にも、前処理工程ST2には、食材に大根菜(葉物野菜)が含まれる場合と同様の工程が含まれる。下処理工程ST1及び前処理工程ST2により、大根菜(葉物野菜)は、例えば目開き1.5〜3mmの篩を通過しうるフレーク状に加工され、人参(根菜)は、例えば目開き0.5〜2mmの篩を通過しうるフレーク状に加工される。
【0041】
食材に鮭(魚介)が含まれる場合、前処理工程ST2には、むき身にされた鮭に鮭エキス、塩等の調味料や、着色料を添加する工程等が含まれる。下処理工程ST1及び前処理工程ST2により、鮭(魚介)はフレーク状に加工される。
【0042】
食材に若布(海藻)が含まれる場合、前処理工程ST2には、(1)選別された若布を粉砕し、(2)若布を目開き1mmの篩を用いて整粒し、(3)若布に水を加え、(4)若布を圧延する工程等が含まれる。下処理工程ST1及び前処理工程ST2により、若布(海藻)は、例えば目開き1mmの篩を通過しうる粉末状に加工される。なお、若布(海藻)は、粉末状ではなく、例えば目開き3mmの篩を通過しうるフレーク状に加工されてもよい。この場合の若布(海藻)の下処理工程ST1及び前処理工程ST2には、紫蘇(葉物野菜)、大根菜(葉物野菜)、人参(根菜)が含まれる場合と同様の工程が含まれる。
【0043】
食材に豆(きな粉、脱脂大豆、小豆)が含まれる場合、前処理工程ST2には、きな粉、脱脂大豆粉、粉末あん等に水を加える工程等が含まれる。下処理工程ST1及び前処理工程ST2により、豆(きな粉、脱脂大豆、小豆)は、例えば目開き0.2mmの篩を通過しうる粉末状に(水を含んだペースト状に)加工される。
【0044】
以上の下処理工程ST1及び前処理工程ST2によって、適切な大きさや形状に食材を加工することで、色彩が鮮やかで素材の味をより感じられるシート状食品1を製造できる。
【0045】
<調整工程>
調整工程ST3は、基本的には原料食材2に依らず共通する処理の工程である。調整工程ST3には、フレーク状又は粉末状(水を含んだペースト状)の原料食材2に、結着剤3と、保湿剤4とを加える工程である。結着剤3の乾燥質量(WB)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が4.9〜7.3となるように、原料食材2に結着剤3が加えられる。また、保湿剤4の乾燥質量(WC)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が0.8〜1.3となるように、原料食材2に保湿剤4が加えられる。
【0046】
原料食材2にフレーク状の紫蘇(葉物野菜)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.3〜6.3となるように、紫蘇(葉物野菜)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が1.0〜1.2となるように、紫蘇(葉物野菜)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0047】
原料食材2にフレーク状の大根菜(葉物野菜)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.6〜6.6となるように、大根菜(葉物野菜)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が1.1〜1.3となるように、大根菜(葉物野菜)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0048】
原料食材2にフレーク状の人参(根菜)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が4.9〜5.9となるように、人参(根菜)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が0.8〜1.0となるように、人参(根菜)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0049】
原料食材2にフレーク状の鮭(魚介)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.3〜6.3となるように、鮭(魚介)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が1.0〜1.2となるように、鮭(魚介)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0050】
原料食材2にフレーク状又は粉末状の若布(海藻)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.0〜6.0となるように、若布(海藻)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が1.0〜1.2なるように、若布(海藻)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0051】
原料食材2に粉末状のきな粉(豆)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が6.3〜7.3となるように、きな粉(豆)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が1.1〜1.3となるように、きな粉(豆)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0052】
原料食材2に粉末状の脱脂大豆(豆)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.1〜6.1となるように、脱脂大豆(豆)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が0.8〜1.0となるように、脱脂大豆(豆)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0053】
原料食材2に粉末状の小豆(豆)が含まれる場合、調整工程ST3により、質量比率(WA/WB)が5.2〜6.2となるように、小豆(豆)に結着剤3が加えられることが好ましい。また、質量比率(WA/WC)が0.9〜1.1となるように、小豆(豆)に保湿剤4が加えられることが好ましい。
【0054】
原料食材2ごとの質量比率(WA/WB)及び質量比率(WA/WC)が上記範囲となることにより、シート状食品1の嵩、強度、保湿性が十分に確保され、シート状食品1の素材の味をより感じることができる。
【0055】
<成形工程>
成形工程ST4は、基本的には原料食材2に依らず共通する処理の工程である。なお、食材ごとに例えば後述するドラムの加熱温度、回転速度等は異なっていてもよい。
【0056】
成形工程ST4において、先ず、結着剤3と、保湿剤4とが加えられた原料食材2を、例えば110℃以上に加熱されたドラムに流し込む。また、ドラムを回転することにより、一面が乾燥した第一の表面層10を形成する。この状態で、第一の表面層10の乾燥した一面と反対側の面は、完全には乾燥しておらず軟らかい状態である。同様に、一面が乾燥した第二の表面層10を形成する。この状態で、第二の表面層10の乾燥した一面と反対側の面は、完全には乾燥しておらず軟らかい状態である。
【0057】
続いて、第一の表面層10の乾燥していない面と、第二の表面層10の乾燥していない面とを貼り合わせる。乾燥していない面同士は、更に過熱を加えることで、又は表面層10の余熱により乾燥し、表面層10同士の間には、実質的に空隙な内側層20が形成される。なお、本明細書において「実質的に空隙」とは、内側層20同士が接する部分が複数個所ある形態を含んでおり、内側層20同士の間全体が空隙になっている形態に限定されない。
【0058】
続いて、シート状食品をロールに巻き取る。本実施形態においては、シート状食品1には保湿剤4が含まれている。そのため、保湿性を備えたシート状食品1は、内側層20が形成された後、環境(湿気)になじみやすく、直ぐにロールに巻き取ることができる。反対に、保湿剤4を含まない場合、シート状食品1は、内側層20が形成された後、表面が乾燥した状態が続くためロールに巻き取りにくい。なお、この工程は、シート状食品をロールに巻いて管理するために行われる工程であり、省略できる。
【0059】
これらの工程により、表面層10同士の間に位置し、表面層10のそれぞれよりも低密度(本実施形態においては実質的に空隙)な内側層20を有するシート状食品1が製造される。なお、例えばドラムを複数用いることにより、2つの表面層10と、内側層20とを一体的に形成してもよい。
【0060】
ここで、シート状食品1を屈曲させる(例えばご飯に巻く)ことを想定すると、内側層20がないシート状食品1では、屈曲に伴い加わる力を、表面層10同士の間に逃がすことができないと考えられる。反対に本実施形態に係るシート状食品1では、屈曲に伴い加わる力を、内側層20に逃がすことができる。また、内側層20は、表面層10のそれぞれよりも低密度であり、柔軟性が高い。そのため、本実施形態に係るシート状食品1は、屈曲に伴い加わる力を、柔軟性が高い内側層20に逃がすことができる。これにより、シート状食品1全体としての柔軟性が向上する。また、内側層20が形成されることによって、シート状食品1全体としての嵩を確保することもできる。
【0061】
成形工程ST4において、どの程度の厚さにシート状食品1を成形すればよいかについての制限は特にないが、シート状食品1の全体の厚さは、例えば140〜400μmである。これにより、シート状食品1の嵩が最適になり、食感(噛み応え、舌触り)がより良好になる。
また、内側層20は実質的に空隙であり、内側層20の厚さは、例えば20〜120μmである。これにより、シート状食品1の柔軟性をより高められる。それとともに、嵩を確保することもできる。
また、内側層20は実質的に空隙であり、2つの表面層10の厚さは、例えばそれぞれ40〜140μmである。これによりシート状食品1の強度をより高められる。
なお、シート状食品1の全体の厚さ、表面層10の厚さ、内側層20の厚さが厚すぎる場合には、シート状食品1の表面に皺が入りやすい。
【0062】
以上説明したように構成された本発明に係るシート状食品1は、原料食材としての原料食材2と結着剤3とを含んで成形されたシート状食品1であって、両側の表面層10と、表面層10同士の間に位置し、表面層10のそれぞれよりも低密度な内側層20と、を備え、結着剤3の乾燥質量(WB)に対す原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)は、4.9〜7.3である。内側層20により、シート状食品1の柔軟性と嵩との両立が図られる。また、質量比率(WA/WB)が4.9〜7.3であることにより、シート状食品1の強度を向上させることができ、シート状食品1の素材の味をより感じることができる。従って、本発明に係るシート状食品1は、嵩及び強度と、柔軟性とを両立でき、且つ、素材の味を感じることができる。
【0063】
また、シート状食品1は、保湿剤4を更に含み、保湿剤4の乾燥質量(WC)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)は、0.8〜1.3である。これにより、本発明に係るシート状食品1は、十分な保湿性を備えると共に、食感が良好であり、素材の味を感じることができる。
【0064】
また、シート状食品1全体の厚さは、例えば140〜400μmである。これにより、シート状食品1の嵩が最適になる。また、内側層20は実質的に空隙であり、内側層20の厚さは、例えば20〜120μmである。そのため、シート状食品1としての柔軟性が最適になる。また、内側層20は実質的に空隙であり、2つの表面層10の厚さは、例えばそれぞれ40〜140μmである。そのため、シート状食品1の強度が最適になる。これらの構成により、シート状食品1としての食感(噛み応え、舌触り)が良好になる。
【0065】
また、原料食材2は、目開き1.5〜3mmの篩を通過しうる葉物野菜、目開き0.5〜2mmの篩を通過しうる根菜、目開き1.5〜3mmの篩を通過しうる魚介、目開き0.5〜3mmの篩を通過しうる海藻、及び目開き0.2mm以下の篩を通過しうる豆からなる群より選択される少なくとも1種である。これにより、色彩が鮮やかで素材の味をより感じられるシート状食品1を製造できる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0067】
例えば、内側層20は実質的に空隙である例を説明したが、これに限定されない。結着剤3の乾燥質量(WB)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)を調整すること等により、表面層10のそれぞれよりも低密度な(空隙ではない)内側層20が形成されてもよい。
【0068】
また、原料食材2に含まれる食材は、野菜、魚介、海藻、豆等に大別されると説明したが、野菜、魚介、海藻、豆以外の食材が用いられてもよい。例えば、食材として、果物(果肉部分、皮部分)が用いられてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
上述した製造方法に準じて、原料食材として人参を用い、結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が4.9で、保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が0.8となるシート状食品を製造した。
【0071】
このシート状食品の内側層は70μm、表面層はそれぞれ90μmであった。これは後述する実施例2〜実施例16、比較例1、比較例2においても同様であった。なお、各実施例、比較例の内側層、表面層及び全体の厚さはシート状食品の断面を観察することによって求められる。
【0072】
<実施例2〜実施例4、比較例1>
結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が表1に示された値となることを除いて、実施例1と同様にシート状食品を製造した。
【0073】
[操作性試験]
実施例1〜実施例4、比較例1のシート状食品をおにぎりに巻く試験を行った。試験は5人のモニターによってそれぞれ4回ずつ繰り返して行われた。おにぎりにシート状食品を巻くことができた場合を成功とし、シート状食品が折れたり破れたりすることで、おにぎりにシート状食品を巻くことができなかった場合を失敗とし、成功率を表1に示した。なお、成功率が95%以上であれば、従来のシート状食品(例えば海苔)と比較しても、十分に嵩及び強度と、柔軟性とを両立できると考えられた。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示したように、原料食材として人参を用いた場合には、質量比率(WA/WB)が7.3以下であれば、成功率は95%以上という高い値となることが示された。つまり、原料食材として人参を用いた場合には、質量比率(WA/WB)が7.3以下(好ましくは6.8以下)であれば、シート状食品はおにぎりに巻いても折れたり、破れたりすることはなく、シート状食品は十分に嵩及び強度と、柔軟性とを両立できることが示された。
【0076】
なお、人参は、上述した原料食材の中でもシート状食品を製造した場合に最も嵩及び強度と、柔軟性とを両立することが難しい食材の一つである。従って、原料食材として人参以外の食材を用いた場合にも、質量比率(WA/WB)が7.3以下(好ましくは6.8以下)であれば、シート状食品はおにぎりに巻いても折れたり、破れたりしない程に、シート状食品は十分な嵩及び強度と、柔軟性とを両立できることが示された。
【0077】
<実施例5>
上述した製造方法に準じて、原料食材としてきな粉を用い、結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が7.3で、保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が1.3となるシート状食品を製造した。
【0078】
<実施例6〜実施例8、比較例2>
結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が表2に示された値となることを除いて、実施例5と同様にシート状食品を製造した。
【0079】
[味覚試験]
実施例5〜実施例8、比較例2のシート状食品を、おにぎりに巻いて味覚評価用のサンプルとした。シート状食品の素材を知らない5人のモニターがサンプルを食して感じた味覚を下記の評価基準で評価し、その平均値を表2に示した。なお、評価基準値が1.0以上であれば、十分に素材の味を感じられると考えられた。
(評価基準)
2:きな粉の味が感じられる
1:豆の味は感じられるが、きな粉であることまでは分からない
0:豆の味が感じられない
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示したように、原料食材としてきな粉を用いた場合には、質量比率(WA/WB)が4.9以上(好ましくは5.4以上)であれば、評価基準値は1.0以上という高い値となることが示された。つまり、原料食材としてきな粉を用いた場合には、質量比率(WA/WB)が4.9以上(好ましくは5.4以上)であれば、シート状食品はおにぎりに巻いても十分に素材の味を感じられることが示された。
【0082】
なお、きな粉は、上述した原料食材の中でもシート状食品を製造した場合に最も素材の味を感じることが難しい食材の一つである。従って、原料食材としてきな粉以外の食材を用いた場合にも、質量比率(WA/WB)が4.9以上(好ましくは5.4以上)であれば、シート状食品はおにぎりに巻いても十分に素材の味を感じられることが示された。
【0083】
実施例1〜実施例4、比較例1の操作性試験、実施例5〜実施例8、比較例2の味覚試験の結果から、結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が4.9〜7.3(好ましくは5.4〜6.8)であることにより、シート状食品は、用いられる原料食材2に依らず、嵩及び強度と、柔軟性とを両立でき、且つ、素材の味を感じられることが確認された。
【0084】
<実施例9〜実施例12>
保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が表3に示された値となることを除いて、実施例1と同様にシート状食品を製造した。なお、実施例12のシート状食品は保湿剤を含まない。
【0085】
[保湿性試験]
実施例1、実施例9〜実施例12のシート状食品を、40℃で5分間加熱して、上述した操作性試験と同様の試験(保湿性試験)を行った。結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示したように、原料食材として人参を用いた場合には、質量比率(WA/WC)が1.3以下(好ましくは1.2以下)であれば、保湿性試験の成功率は、80%以上という加熱前と比較しても遜色のない値となることが示された。つまり、原料食材として人参を用いた場合には、質量比率(WA/WC)が1.3以下(好ましくは1.2以下)であれば、シート状食品は十分に保湿性を備えており、例えば過乾燥状態となりやすい製造直後でも操作性が十分で、直ぐにロールに巻き取ることができると考えられた。また、当該シート状食品は、例えば過乾燥状態となりやすい長期保管後でも操作性が十分で、おにぎりに巻いても折れたり、破れたりしにくいと考えられた。
【0088】
なお、人参は、上述した原料食材の中でもシート状食品を製造した場合に最も保湿性を確保することが難しい食材の一つである。従って、原料食材として人参以外の食材を用いた場合にも、質量比率(WA/WC)が1.3以下(好ましくは1.2以下)であれば、シート状食品は十分に保湿性を備えており、乾燥時の操作性が良好になることが示された。
【0089】
<実施例13〜実施例16>
保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が表4に示された値となることを除いて、実施例5と同様にシート状食品を製造した。
【0090】
[味覚試験]
実施例5、実施例13〜実施例16のシート状食品に対して、上述した味覚試験と同様の試験を行った。結果を表4に示した。
【0091】
[食感試験]
実施例5、実施例13〜実施例16のシート状食品を、食感試験用のサンプルとした。5人のモニターがサンプルを食して感じた噛み応え、舌触りをそれぞれ下記の評価基準で評価し、その平均値を表5に示した。なお、噛み応え、舌触りの評価基準値が何れも2以上であれば、シート状食品としての食感は良好であると考えられた。
(噛み応え・評価基準)
2:噛み応えが良く、サクサクとした食感が感じられる
1:噛み応えは良いが、サクサクとした食感は感じられない
0:噛み応えが悪い
(舌触り・評価基準)
2:舌触りが良く、口の中から直ぐにシート状食品がなくなる
1:舌触りは良いが、口の中にシート状食品が若干残る
0:舌触りが悪く、口の中にシート状食品が貼り付く
【0092】
【表4】
【0093】
表4に示したように、原料食材としてきな粉を用いた場合に、質量比率(WA/WC)を1.3以下で変化させても、評価結果(味覚評価、食感評価)に大きな差はなかった。具体的には、味覚評価に関しては、質量比率(WA/WC)が0.9未満となる場合、0.8未満となる場合に基準値の減少が認められたものの、いずれも1.0以上という高い評価基準値であった。また、食感評価に関しては、質量比率(WA/WC)が0.8未満となる場合に、基準値としては1以上ではあるものの、その食感はフニャフニャとした軟らかいものであった。
【0094】
なお、きな粉は、上述した原料食材の中でもシート状食品を製造した場合に最も素材の味を感じることが難しい食材の一つであることに加え、最も良好な食感(特に噛み応え)を実現することが難しい食材の一つでもある。従って、原料食材としてきな粉以外の食材を用いた場合にも、質量比率(WA/WC)が0.8以上(好ましくは0.9以上)であれば、シート状食品はおにぎりに巻いても十分に素材の味と食感とを感じられることが示された。
【0095】
以上の実施例1、実施例9〜実施例12の保湿性試験、実施例5、実施例13〜実施例16の味覚試験、食感試験の結果から、保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が0.8〜1.3(好ましくは0.9〜1.2)であることにより、シート状食品は、用いられる原料食材2に依らず、食感、乾燥時の操作性(保湿性)を確保でき、且つ、素材の味を感じられることが確認された。
【0096】
<実施例17>
上述した製造方法に準じて、原料食材として人参を用い、結着剤の乾燥質量(WB)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)が4.9〜7.3であり、保湿剤の乾燥質量(WC)に対する原料食材の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WC)が0.8〜1.3であり、内側層の厚さが20μm、表面層の厚さが90μm、全体の厚さが200μmとなるシート状食品を製造した。
【0097】
<実施例18〜実施例31>
実施例17と同様の原料食材、質量比率(WA/WB)、(WA/WC)で、表5に示した内側層の厚さ、表面層の厚さ、全体の厚さがそれぞれ表5に示した値となるシート状食品を製造した。
【0098】
[食感試験]
実施例17〜実施例31のシート状食品に対して上述した食感試験と同様の試験を行った。結果を表5に示した。
【0099】
【表5】
【0100】
表5に示したように、原料食材として人参を用いた場合には、内側層の厚さは20〜120μm(好ましくは30〜70μm)であり、表面層の厚さが40〜140μm(好ましくは90〜120μm)であり、全体の厚さが140〜400(好ましくは150〜310μm)であれば、シート状食品の噛み応え、舌触りがともに良好になることが示された。つまり、内側層の厚さは20〜120μmであり、表面層の厚さが40〜140μmであり、全体の厚さが140〜400であれば、シート状食品としての柔軟性、強度、嵩がそれぞれ最適なものとなり、良好な(サクサクとした食感があると共に、口の中に残りにくい)食感を実現できることが示された。
【0101】
なお、人参は、上述した原料食材の中でもシート状食品を製造した場合に最も良好な食感(特に舌触り)を実現することが難しい食材の一つである。従って、原料食材として人参以外の食材を用いた場合にも、内側層の厚さは20〜120μm(好ましくは30〜70μm)であり、表面層の厚さが40〜140μm(好ましくは90〜120μm)であり、全体の厚さが140〜400(好ましくは150〜310μm)であれば、シート状食品としての柔軟性、強度、嵩がそれぞれ最適なものとなり、良好な食感を実現できることが示された。
【解決手段】シート状食品1は、原料食材2と結着剤3とを含んで成形されたシート状食品1であって、両側の表面層10と、表面層10同士の間に位置し、表面層10のそれぞれよりも低密度な内側層20と、を備え、結着剤3の乾燥質量(WB)に対する原料食材2の乾燥質量(WA)の質量比率(WA/WB)は、4.9〜7.3である。