特許第6457065号(P6457065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457065
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190110BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20190110BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-504467(P2017-504467)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2015056864
(87)【国際公開番号】WO2016143045
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】青木 謙治
(72)【発明者】
【氏名】水戸 則和
(72)【発明者】
【氏名】結城 敏尚
【審査官】 瀬川 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−154211(JP,A)
【文献】 特開2014−199812(JP,A)
【文献】 特開2010−230797(JP,A)
【文献】 特開2012−221811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過する基板と、
前記基板に設けられ、第1の方向に並んでいる複数の発光領域と、
前記複数の発光領域の間に設けられた非発光領域と、
を備え、
前記非発光領域は可視光を透過し、
前記発光領域は、前記第1の方向に並んだ複数の発光部を有し、
前記発光部は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置し、
同一の前記発光領域に位置する前記複数の発光部の間には絶縁層が設けられており、
前記複数の発光部それぞれの発光色は、互いに異なり、
前記第2電極は前記複数の発光部において、連続して設けられ、
前記非発光領域には前記絶縁層が設けられていない発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記非発光領域には前記第1電極及び前記第2電極が設けられていない発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
前記非発光領域は有機層を有している発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記非発光領域の幅は前記発光部の幅よりも大きい発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置において、
同一の前記発光領域に属する前記複数の発光部の数は3である発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光装置において、
同一の前記発光領域に属する前記複数の発光部の幅は、互いに異なる発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2電極は可視光を透過しない部材である発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の発光装置において、
前記第2電極の端部は、前記絶縁層の上に位置している発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置において、外光を透過すること(光透過性)が求められる場合がある。例えば、特許文献1では、有機ELを利用した表示装置に光透過性を持たせるために、第2電極を線状にすることが記載されている。このようにすると、第2電極が設けられている部分が発光し、かつ、第2電極が設けられていない部分を外光が透過する。
【0004】
また特許文献2には、有機ELを用いた表示装置において、画素の隣に、外光が透過する領域を設けることが記載されている。より詳細には、第1の方向に複数の画素が並んでいる。そして、複数の画素それぞれの隣に、外光が透過する領域が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−149376号公報
【特許文献2】特開2012−234798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELを利用した発光装置に光透過性を持たせるためには、特許文献1,2に記載されているように、発光装置に外光を透過する領域を設ければよい。しかし、この領域には発光部が形成されないため、発光装置のうち発光部が形成されている領域が占める割合(面積効率)が低下してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、発光装置に光透過性を持たせつつ、発光装置の面積効率が低下しないようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、可視光を透過する基板と、
前記基板に設けられ、第1の方向に並んでいる複数の発光領域と、
前記複数の発光領域の間に設けられた非発光領域と、
を備え、
前記非発光領域は可視光を透過し、
前記発光領域は、前記第1の方向に並んだ複数の発光部を有し、
前記発光部は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を有する発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図2】発光装置の平面図である。
図3】変形例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図4】変形例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。実施形態に係る発光装置10は、基板100、複数の発光領域142、及び非発光領域144を備えている。基板100は可視光を透過する。複数の発光領域142は基板100に設けられており、第1の方向(図1における縦方向)に並んでいる。非発光領域144は複数の発光領域142の間のそれぞれに設けられており、可視光を透過する。また、発光領域142は複数の発光部140を有している。発光部140は、上記した第1の方向に並んでいる。また、発光部140は第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。有機層120は、第1電極110と第2電極130の間に位置している。以下、詳細に説明する。
【0013】
発光装置10は基板100を透過して有機層120の発光を取出す、いわゆるボトムエミッション型の照明装置である。そして、基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの可視光を透過する基板である。また、基板100は可撓性を有していてもよい。この場合、基板100が湾曲した状態で発光装置10を使用することができる。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。ガラス基板で可撓性を持たせる場合、ガラス基板の厚みは300μm以下であるのが好ましい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも有機層120が形成される面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されている。なお、この無機バリア膜と基板100の間に、平坦化層(例えば有機層)が設けられていてもよい。
【0014】
基板100には、発光領域142が第1の方向に沿って繰り返し設けられている。複数の発光領域142は、いずれも複数の発光部140を有している。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。
【0015】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。
【0016】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0017】
第2電極130は、可視光を透過しない材料、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばマスクを用いたスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。
【0018】
なお、本図に示す例において、同一の発光領域142に属する発光部140の第2電極130は、互いに繋がっている。言い換えると、第2電極130は、一つの発光領域142につき1つずつ設けられている。これは発光装置10の配線抵抗を低くするためである。ただし、第2電極130は発光部140それぞれに個別に設けられていてもよい。
【0019】
また、第1電極110の上には、導電部170が形成されている。導電部170は例えば第1電極110の補助電極であり、第1電極110に接触している。導電部170は第1電極110よりも抵抗値が低い材料によって形成されており、例えば少なくとも一つの金属層を用いて形成されている。導電部170は、例えばMo又はMo合金などの第1金属層、Al又はAl合金などの第2金属層、及びMo又はMo合金などの第3金属層をこの順に積層させた構成を有している。これら3つの金属層のうち第2金属層が最も厚い。そして導電部170は、絶縁層150によって覆われている。このため、導電部170は有機層120及び第2電極130のいずれにも直接接続していない。
【0020】
同一の発光領域142に属する発光部140は、互いに異なる色の光を発光する。例えば図1に示す例において、一つの発光領域142には3つの発光部140(発光部140a,140b,140c)が設けられている。発光部140aは、例えば青色の光を発光し、発光部140bは、例えば緑色の光を発光し、発光部140cは、例えば赤色の光を発光する。ただし、同一の発光領域142に属する発光部140は、同一の色の光を発行してもよい。
【0021】
第1電極110の縁は、絶縁層150によって覆われている。絶縁層150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140の発光領域となる部分を囲んでいる。絶縁層150を設けることにより、第1電極110の縁において第1電極110と第2電極130が短絡することを抑制できる。本図に示す例において、隣り合う第1電極110の間隔は、例えば30μm以上300μm以下である。このため、隣り合う第1電極110の間は、絶縁層150によって埋められている。絶縁層150は、例えば、絶縁層150となる樹脂材料を塗布した後、この樹脂材料を露光及び現像することにより、形成される。
【0022】
複数の発光領域142の間には、非発光領域144が設けられている。非発光領域144は、発光部140及び絶縁層150が設けられていない領域であり、可視光を透過する。なお、本図に示す例において、第1電極110及び第2電極130は非発光領域144に設けられていないが、有機層120は非発光領域144にも設けられている。
【0023】
非発光領域144の幅は、発光部140の幅、及び隣り合う発光部140の間隔のいずれよりも大きく、例えば350μm以上1000μm以下である。なお、非発光領域144の幅は、例えば、ある発光領域142に設けられた絶縁層150の端から、その隣の発光領域142に設けられた絶縁層150の端までの距離と定義することができる。
【0024】
図2は発光装置10の平面図である。なお、図1図2のA−A断面に対応している。本図に示す例において、発光部140、発光領域142、及び非発光領域144は、直線状(図2におけるy方向)に延在している。そして、発光部140が延在する方向に直交する方向(図2におけるx方向)に、発光領域142及び非発光領域144は交互に繰り返し設けられている。
【0025】
なお、隣り合う発光領域142の間の領域には、いずれも非発光領域144が設けられているのが好ましい。ただし、いずれかの発光領域142の間の領域において、非発光領域144は設けられていなくてもよい。
【0026】
また、図2に示す例において、発光部140は、いずれも第1の方向に交わる方向(例えば直交する方向:y方向)に延在している。そして、第1の方向に平行な断面(図1に示した断面)において、発光部140a,140b,140cの幅は、互いに異なっていてもよい。これらの幅の比は、同一の電圧を印加した場合における各発光部140の輝度の逆比又はこれに近い値になっているのが好ましい。例えば青色の光を発光する発光部140aの幅は、他の色の発光部140b、140cよりも広い。このようにすると、発光装置10において、各色の輝度がばらつくことを抑制できる。なお、上記した発光部140の幅(すなわち第1電極110、有機層120、及び第2電極130が重なっている部分の幅)は、例えば150μm以上400μm以下である。
【0027】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を例えばフォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。次いで、第1電極110の縁の上に絶縁層150を形成する。例えば絶縁層150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁層150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120及び第2電極130をこの順に形成する。有機層120が蒸着法で形成される層を含む場合、この層は、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。なお、図1に示すように非発光領域144にも有機層120が形成されている場合、有機層120をパターニングする必要がないため、有機層120を形成するときのコストを低くすることができる。
【0028】
以上、本実施形態によれば、非発光領域144は隣り合う発光領域142の間に設けられている。言い換えると、非発光領域144は、複数の発光部140につき1つずつ設けられている。このため、非発光領域144を複数の発光部140のそれぞれに対して設ける場合と比較して、発光部140と非発光領域144の境界の数が少なくなるため、非発光領域144を広くするか、又は発光部140を広くすることができる。
【0029】
(変形例1)
図3は、変形例1に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図1に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第2電極130が発光部140のそれぞれに個別に設けられている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0030】
本変形例によっても、実施形態と同様に、非発光領域144を複数の発光部140のそれぞれに対して設ける場合と比較して、非発光領域144を広くするか、又は発光部140を広くすることができる。
【0031】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本変形例に係る発光装置10は、非発光領域144の少なくとも一部(例えば全部)に有機層120が形成されていない点を除いて、実施形態又は変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。本図は、実施形態と同様の場合を示している。
【0032】
本変形例によっても、実施形態と同様に、非発光領域144を複数の発光部140のそれぞれに対して設ける場合と比較して、非発光領域144を広くするか、又は発光部140を広くすることができる。また、非発光領域144の少なくとも一部には有機層120が形成されていないため、非発光領域144の透光率は向上する。
【0033】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4