【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、
凝縮相組成物を安定化するための方法であって、凝縮相組成物が、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)環状エステルの重合を触媒することができる少なくとも1種の触媒および/または環状エステルの重合を開始することができる少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含有し、
i)本方法は、環状エステルモノマーからポリエステルを製造するプロセスにおいて使用され、かつ
a)環状エステルを提供するステップ、
b)ポリエステルおよび未反応環状エステルを含む反応混合物を形成するように、反応器内で触媒および任意選択的に開始剤の存在下で環状エステルを重合するステップ、
c)反応混合物を脱揮に供し、溶融残渣としての精製されたポリエステル、および、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む蒸気を得るステップ、
d)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
少なくとも1種の重合阻害剤は、凝縮相組成物における重合可能な環状エステルの転化率が15%以下であるような量で安定化剤として反応混合物および/または凝縮相組成物に加えられ、転化率は、100・(c
0−c
F)/c
0であり、c
0は、蒸気流の凝縮によって得られる凝縮相組成物における環状エステルの初期濃度であり、c
Fは、触媒として150ppmのオクタン酸スズ、および開始剤として100mmol/kgのエチル−ヘキサノールを凝縮相組成物に加え、続いて凝縮相を160℃で12時間不活性雰囲気条件下で熱処理した後の、凝縮相組成物における環状エステルの濃度であり、
i
a)重合阻害剤の少なくとも一部は、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられ、かつ/あるいは
i
b)重合阻害剤の少なくとも一部は、ステップc)の前に反応混合物に加えられ、脱揮が、203℃超の温度および4mbar未満の圧力で、または代替として、220℃超の温度および/または5mbar未満の圧力で行われ、
あるいは、
ii)本方法は、乳酸からラクチドを製造するプロセスにおいて使用され、かつ
a)乳酸を提供するステップ、
b)ポリ乳酸プレポリマーを含む反応混合物を形成するように、反応器内で乳酸を重縮合するステップ、
c)反応混合物に触媒を加え、反応混合物を解重合するステップ、
d)粗ラクチド流を得るように、反応混合物を脱揮するステップ、
e)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
少なくとも1種の重合阻害剤は、凝縮相組成物における重合可能な環状エステルの転化率が15%以下であるような量で安定化剤として反応混合物および/または凝縮相組成物に加えられ、転化率は、100・(c
0−c
F)/c
0であり、c
0は、蒸気流の凝縮によって得られる凝縮相組成物における環状エステルの初期濃度であり、c
Fは、触媒として150ppmのオクタン酸スズ、および開始剤として100mmol/kgのエチル−ヘキサノールを凝縮相組成物に加え、続いて凝縮相を160℃で12時間不活性雰囲気条件下で熱処理した後の、凝縮相組成物における環状エステルの濃度であり、
重合阻害剤の少なくとも一部は、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられる方法を提供することによって、満たされる。
【0013】
本発明の中核は、環状エステルのオリゴマー化または重合を開始および/または触媒することができる化合物がどれくらい凝縮相に含まれるかに関係なく、凝縮相組成物がインキュベートされる圧力および温度条件に関係なく、また凝縮相組成物がこれらの条件でインキュベートされる時間に関係なく、凝縮相組成物に含まれる環状エステルのオリゴマー化または重合が完全かつ確実に回避されるように、好ましくは高度に効果的な阻害剤を多く加えることである。この解決手段は、化合物、つまり重合阻害剤が環状エステル組成物に不純物として加えられ、この環状エステル組成物はそのような不純物から精製されるものであり、また少なくとも一部の用途に対しては、言うまでもなく重合阻害剤が非常に不利に働く環状エステル組成物の重合のために重合反応器に戻ることになるため、いささか非論理的である。しかしながら、本発明による方法は、主に重合可能な環状エステルと、環状エステルを重合するための触媒および/または開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む、脱揮ステップから誘導される凝縮相組成物を確実に安定化し、ひいては、組成物を工業プラントにおいて運搬することを難しくするかまたは不可能にするだけである環状エステル組成物の不要な粘度増加またはさらには不要な凝固につながる、環状エステル組成物のオリゴマー化または重合のリスクを確実に回避し、さらには環状エステルの不要な消費を確実に回避するが、例えば、長期にわたる昇温でのインキュベーションを一定期間行った後の安定した凝縮相組成物の重合等、安定した凝縮相組成物の後の意図される用途を阻むことはない。したがって、一方では、環状エステルの不要な消費が回避され、もう一方では、環状エステルを含む凝縮相組成物の粘度が低い程度に維持され、その結果、凝縮相組成物が自由に流動することができ、ひいては一方のプラントデバイスから他方へと生産プラントにおいて容易に運搬され得るようになる。重合阻害剤は、脱揮が203℃超の温度および4mbar未満の圧力、または代替的に220℃超温度および/もしくは5mbar未満の圧力で行われる場合、脱揮ステップ後に凝縮相組成物に加えられるか、または脱揮ステップ前に脱揮中の損失を補うより多い量で加えられるかのいずれであってもよい。環状エステル組成物の安定した凝縮相は、その後、そのさらなる使用、例えば重合反応における使用の直前に、加えられた重合阻害剤を含む全ての不純物を除去するために、例えば結晶化によって精製されるか、または未精製形態で使用されてもよい。後者であれば、重合反応に使用する場合、組成物中に存在する重合阻害剤の量を補うだけの過剰量の重合反応の触媒および/または開始剤が加えられ得る。代替として、やはり後者であれば、これは、主にまたは部分的に新しくまだ未反応であり阻害剤を含まない環状エステルから構成された液相組成物と混合され得る。
【0014】
本発明によれば、凝縮相組成物は、気相の凝縮の後に得られる液体組成物である。
【0015】
さらに、環状エステルの重合生成物は、本発明によれば、互いに共有結合した、環状エステルの開環重合に形式的に起因する、少なくとも10個の分子で構成される分子であり、一方で環状エステルのオリゴマー化生成物は、本発明によれば、互いに共有結合した、環状エステルの開環に形式的に起因する、少なくとも2個から最大9個の分子で構成される分子である。
【0016】
本発明は、凝縮相組成物の融点に関しては、それが150℃未満である限り、特に限定的ではない。好ましくは、凝縮相組成物の融点は、−50℃〜130℃未満、より好ましくは−30℃〜120℃、さらにより好ましくは−10℃〜110℃である。当然ながら、本質的に環状エステルと少量の重合開始剤および/または触媒とからなる凝縮相組成物の融点は、本質的には、環状エステルのものと対応する。例えばL−ラクチドは、95℃〜97℃の融点を有し、一方でε−カプロラクトンは−1.5℃の融点を有し、グリコリドは82℃〜83℃の融点を有する。
【0017】
好ましくは、凝縮相組成物における重合可能な環状エステルの転化率は、10%以下であり、ここで、転化率は、上で示したように、100・(c
0−c
F)/c
0であり、c
0は、蒸気流の凝縮によって得られる凝縮相組成物における環状エステルの初期濃度であり、c
Fは、触媒として150ppmのオクタン酸スズ、および開始剤として100mmol/kgのエチル−ヘキサノールを凝縮相組成物に加え、続いて凝縮相組成物を160℃で12時間不活性雰囲気条件下で熱処理した後の、凝縮相組成物における環状エステルの濃度である。より好ましくは、凝縮相組成物における重合可能な環状エステルの転化率は、5%以下、より好ましくは2%以下、なおより好ましくは1%以下、なおより好ましくは0.1%以下である。
【0018】
さらに、好ましくは、110℃での凝縮相組成物の粘度は、0.1〜500mPa
.s、より好ましくは0.5〜50mPa
.s、なおより好ましくは1〜20mPa
.sであり、粘度は、本発明によれば、高温で液体物質の粘度を測定するのに好適な粘度計またはレオメータを使用して測定される。例として、粘度は、1/s〜10/sの剪断速度での回転条件下で、同軸円筒測定システム(例えば、DIN 54453に準拠、またはISO 3219に準拠)を使用して、レオメータ(例えば、Antoon Paar Physica MCR 301)によって測定することができる。好ましくは、熱い液体を測定する場合、レオメータは、凝縮相を環境から保護し、測定中の物質の蒸発および喪失を防止する加圧セル(例えば、窒素過圧による)を搭載する。換言すると、凝縮相組成物は、110℃で、それぞれ、粘度が液体様である、自由流動可能な液体または溶融物である。
【0019】
また環状エステルの化学的性質に関して、本発明の2つの実施形態i
a)およびi
b)は、それらが上で特定した要求される融点を有する限り、特に限定されない。具体的には、任意の環状モノエステル、任意の環状ジエステル、任意の環状トリエステル等が使用されてもよい。特に好適な環状モノエステルは、ε−カプロラクトンであり、環状ジエステルの好ましい例は、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、グリコリド、およびそれらの混合物である。したがって、少なくとも1種の環状エステルは、好ましくは、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、ε−カプロラクトン、グリコリド、または前述の物質の1種以上の混合物からなる群から選択される。
【0020】
上に示したように、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステル、ii)少なくとも1種の触媒および任意選択的な少なくとも1種の開始剤、ならびにiii)環状エステルのオリゴマー化および/または重合生成物を含有する、反応混合物の脱揮、ならびに脱揮から導き出される蒸気流の後続の凝縮から得られる凝縮相組成物は、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/または少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む流れである。通常、凝縮相組成物は、少なくとも80重量%、より好ましくは90重量%超、さらにより好ましくは95重量%超の重合可能な環状エステルを含む。
【0021】
反応混合物中および凝縮相組成物中に含まれる触媒の化学的性質に関して、本特許出願の特定の制限は存在せず、これは、言うまでもなく、反応混合物の前処理のタイプに依存する。好ましくは、反応混合物および凝縮相組成物は、好ましくは、各々、触媒として、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、インジウム、イットリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、および前述の金属の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む少なくとも1種の有機金属化合物を含有し、少なくとも1種の有機金属化合物は、好ましくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシド、および前述の基の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される残基を有機残基として含む。
【0022】
前述の金属のうちハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシドだけでなく、アルキル基またはアリール基を備えるこれらの金属の化合物も、特に好ましい触媒である。さらにより好ましい重合触媒は、この場合、オクタン酸スズ、すなわち2−エチルヘキサン酸スズ(II)である。これらの触媒は、凝縮相組成物の環状エステルがラクチドであるときの選択肢i
a)およびi
b)の場合、および選択肢ii)に特に好ましい。
【0023】
通常、反応混合物および任意選択的な凝縮相組成物は、0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の量の触媒を含有するが、有機金属化合物の場合、反応混合物中だけでなく凝縮相組成物中の金属の量は、好ましくは0.1〜200ppm、より好ましくは1〜50ppmである。
【0024】
好ましくは、重合触媒に加えて、反応混合物および任意選択的な凝縮相組成物は、それぞれ、重合開始剤または重合共触媒、ならびに触媒および開始剤の可能性のある反応生成物または残渣を含む。通常、反応混合物および凝縮相組成物は、各々、開始剤として、少なくとも1つのカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含む少なくとも1種の化合物を含有し、これらは環状エステルのオリゴマー化を開始するのに非常に効果的である。好ましくは、反応混合物および任意選択的な凝縮相組成物は、重合開始剤として、水、アルコール、乳酸、環状エステルのオリゴマー、環状エステルのポリマー、および前述の物質の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。好ましくは、環状エステルのオリゴマーおよび/またはポリマーは、乳酸またはグリコリドのオリゴマーおよび/またはポリマーである。
【0025】
触媒は、関連分野におけるこの用語の通常の定義と一致して、反応によって消費されることなく化学反応の速度を増大させる物質として本発明の範囲内で定義され、重合開始剤または重合共触媒またはプロモーターも、それぞれ、関連分野におけるこの用語の通常の定義と一致して、触媒活性を向上させる物質として定義される。
【0026】
通常、反応混合物は、未処理物質1kg当たり0.1〜100mmol、より好ましくは1〜40mmolに相当する量の開始剤を含有する。
【0027】
i)少なくとも1種の重合可能な環状エステル、ii)少なくとも1種の触媒および任意選択的な少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣、ならびにiii)環状エステルのオリゴマー化生成物および/または重合生成物を含有する反応混合物の脱揮による蒸気流を生成は、任意の既知の脱揮反応器内で、昇温および減圧下で行われてもよい。本発明に従う方法の選択肢i
a)およびii)では、好ましくは、脱揮は、170℃〜250℃の温度および0.1〜50mbarの圧力で、より好ましくは180℃〜240℃の温度および0.5〜25mbarの圧力で、最も好ましくは190℃〜230℃の温度および1〜10mbarの圧力で行われる。脱揮は真空下で行うことができるが、代替として、窒素、アルゴン、または二酸化炭素等の不活性ガスを、脱揮デバイスを通してパージしてもよい。前述の脱揮条件は、環状エステルとしてラクチドを含む反応混合物を脱揮するのに特に有用であるが、例えば、環状エステルとしてグリコリドまたはε−カプロラクトンを含む反応混合物を脱揮するためにも有用である。本発明に従う方法の選択肢i
b)では、脱揮は、203℃超の温度および4mbar未満の圧力で、または代替として、220℃超の温度および/または5mbar未満の圧力で行われる。好ましくは、脱揮は、選択肢i
b)において、205〜220℃の温度および4mbar未満の圧力で、より好ましくは205〜220℃の温度および3mbar未満の圧力で行われる。例えば、脱揮は、選択肢i
b)において、205℃超の温度および3mbar未満の圧力で、または210℃超の温度および4mbar未満の圧力で行われてもよい。
【0028】
また、凝縮は、任意の凝縮デバイスで行うことができ、脱揮デバイスから出る蒸気流は、凝縮相組成物が凝縮される圧力で、その融点を超える温度とその沸点未満の温度との間に冷却することによって液相に凝縮される。
【0029】
重合阻害剤としては、特に触媒および/または開始剤の存在下で環状エステルのオリゴマー化および/または重合を阻害することができるいかなる種類の物質も、本発明の範囲内で使用され得る。反応混合物および/または凝縮相組成物に加えられる重合阻害剤の量は重合阻害剤の効率と共に減少するため、強力な重合阻害剤を使用することが好ましい。少なくとも1種の重合阻害剤が、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン等のイミンもしくはジイミン、および/またはリン酸エステル等のリン酸誘導体、好ましくはアルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、より好ましくはステアリン酸ホスフェート化合物、最も好ましくはモノ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、ジ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、またはモノステアリン酸ホスフェートとジステアリン酸ホスフェートとの混合物である場合に、特に良好な結果が得られる。
【0030】
本発明によれば、重合阻害剤という用語は、重合触媒および重合開始剤の活性を阻害し、それにより重合触媒および重合開始剤の存在下での環状エステルの重合を阻害する薬剤として、関連分野における通常の定義と一致して定義される。
【0031】
本発明のさらなる展開において、凝縮相組成物中の重合阻害剤の量は、組成物の総重量に基づいて0.001〜0.5重量%であることが提案される。より好ましくは、凝縮相組成物中の重合阻害剤の量は、組成物の総重量に基づいて0.01〜0.2重量%、最も好ましくは約0.02〜0.15重量%である。強力な重合阻害剤、例えば、イミンもしくはジイミン、および/またはリン酸エステル等のリン酸誘導体、好ましくはアルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、より好ましくはステアリン酸ホスフェート化合物、最も好ましくはモノ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、ジ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、またはモノステアリン酸ホスフェートとジステアリン酸ホスフェートとの混合物を使用する場合、最後に述べた量が特に好適である。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、環状エステルモノマーからポリエステルを製造するプロセスに使用される本発明による凝縮相組成物を安定化するための方法は、選択肢i
a)に従って行われ、すなわち、このため、本方法は、
a)環状エステルを提供するステップ、
b)ポリエステルおよび未反応環状エステルを含む反応混合物を形成するように、反応器内で触媒および任意選択的に開始剤の存在下で環状エステルを重合するステップ、
c)反応混合物を脱揮に供し、溶融残渣としての精製されたポリエステル、および、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む蒸気を得るステップ、
d)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
重合阻害剤の少なくとも一部は、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられる。
【0033】
この実施形態において、重合阻害剤は、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物にそれぞれ直接加えられる。脱揮後の、すなわち、脱揮から出た蒸気流中へのまたは凝縮相組成物への、重合阻害剤の添加に起因して、同程度の少量の、つまり正確にその量の重合阻害剤が加えられなければならないが、これは、たとえ昇温の溶融形態での長期保存後であっても凝縮相組成物に含まれる環状エステルのオリゴマー化および/または重合を回避するために必要である。
【0034】
最少量の重合阻害剤を用いて凝縮相組成物を十分に安定化するように作用させるために、本発明のさらなる展開において、凝縮相組成物への重合阻害剤の添加中および好ましくは添加後にも、凝縮相組成物を混合することが提案される。このようにして、凝縮相組成物中における重合阻害剤の均一な分布が保証されるため、最少量の重合阻害剤が凝縮相組成物に加えられるだけでよい。それとは対照的に、凝縮相組成物全体にわたって不均一性が生じた場合、最も低い阻害剤濃度を有する凝縮相組成物の位置にも、凝縮相組成物のオリゴマー化または重合を確実に抑制するのに十分な阻害剤が存在することを保証するために、最少量より多くの重合阻害剤が必要となるであろう。
【0035】
混合は、均質化混合を保証することができる任意の既知の混合機によって、既に蒸気相中でまたは最終凝縮相組成物において行われてもよい。具体的には、任意の好適な静的混合機および/または任意の好適な動的混合機が使用されてもよい。SMI、SMV(商標)、KVM、SMX(商標)、SMX(商標)plus、またはSMXL(商標)Sulzer静的混合機からなる群、インペラまたは螺旋リボンを搭載した動的混合機、アンカーミキサー、ならびに前述の混合機の2つ以上の任意の組み合わせから選択される混合機が使用される場合に、特に良好な結果が得られる。
【0036】
前述の実施形態において、凝縮相組成物に含まれる重合阻害剤の量は、上記のものと同じである。
【0037】
この実施形態は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、またはポリグリコリドを製造するために、すなわち、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、ε−カプロラクトン、およびグリコリドからなる群から選択される環状エステルを使用するために、特に有用である。
【0038】
重合触媒および重合開始剤として、前述の物質が、上で好ましいと述べた量で本実施形態に使用されてもよい。好ましくは、ステップb)の反応混合物は、0.5〜50重量%、好ましくは1〜15重量%未満の環状エステルを含む。
【0039】
さらに、上で好ましいと述べた脱揮および凝縮条件が本実施形態に使用されてもよい。
【0040】
好ましくは、少なくとも10,000g/mol、好ましくは少なくとも15,000g/mol、より好ましくは少なくとも20,000g/molの絶対重量平均分子量(Mw)を有するポリマーが得られるまで、本実施形態に従う方法のステップb)で重合が行われる。Mwは、絶対較正を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、本発明に従って測定される。測定は、好ましくは、溶媒増強光散乱法、ポリマー溶媒としてクロロホルム、溶出剤としてアセトン、およびPMMA標準で行われる機器パラメータの較正を用いて、トリプル検出(屈折率、粘度計、および右/低角度光散乱)を搭載したViscotek TADmax(Malvern)で行われる。
【0041】
さらに、120℃〜250℃の温度で、より好ましくは150℃〜200℃の温度で、最も好ましくは160℃〜190℃の温度で、ステップb)で重合が行われることが好ましい。
【0042】
任意選択的に、前述の実施形態において、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられる重合阻害剤に加えて、ステップc)の前に、すなわち、溶融残渣としての精製されたポリエステルおよび蒸気を得るために反応混合物を脱揮に供する前に、重合阻害剤が含まれてもよい。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、環状エステルモノマーからポリエステルを製造するプロセスに使用される本発明による凝縮相組成物を安定化するための方法は、選択肢i
b)に従って行われ、すなわち、このため、本方法は、
a)環状エステルを提供するステップ、
b)ポリエステルおよび未反応環状エステルを含む反応混合物を形成するように、反応器内で触媒および任意選択的に開始剤の存在下で環状エステルを重合するステップ、
c)反応混合物を脱揮に供し、溶融残渣としての精製されたポリエステル、および、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む蒸気を得るステップ、
d)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
重合阻害剤の少なくとも一部は、ステップc)の前に反応混合物に加えられ、脱揮は、203℃超の温度および4mbar未満の圧力で、または代替として、220℃超の温度および/または5mbar未満の圧力で行われる。
【0044】
重合阻害剤は、この実施形態において、ステップc)の前、すなわち、反応混合物を脱揮に供して、溶融残渣としての精製されたポリエステル、および、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む蒸気を得る前に、反応混合物に加えられるため、同程度の大量の重合阻害剤が加えられ得るが、そうでないならば、それに加えて、脱揮の後にも、さらなる重合阻害剤が脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられる。これは、重合阻害剤の特定の沸点および揮発性に応じて、ステップc)の前に反応混合物に加えられた阻害剤の総量の全てがステップd)において脱揮され、凝縮相組成物中に移送されるわけではないという事実を考慮したものである。
【0045】
この実施形態において、脱揮は、203℃超の温度および4mbar未満の圧力で、または代替として、220℃超の温度および/または5mbar未満の圧力で行われる。前述の脱揮条件は、環状エステルとしてラクチドを含む反応混合物を脱揮するのに特に有用であるが、例えば、環状エステルとしてグリコリド、ε−カプロラクトン、またはそれらの混合物を含む反応混合物を脱揮するためにも有用である。
【0046】
ステップc)の前に反応混合物に含まれる重合阻害剤の量は、前述の実施形態において後者の凝縮相組成物中の重合阻害剤の含有量が、組成物の総重量に基づいて好ましくは0.001〜0.5重量%となるような量である。より好ましくは、凝縮相組成物中の重合阻害剤の量は、組成物の総重量に基づいて0.01〜0.2重量%、最も好ましくは約0.02重量%〜0.15重量%である。強力な重合阻害剤、例えば、イミンもしくはジイミン、および/またはリン酸エステル等のリン酸誘導体、好ましくはアルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、より好ましくはステアリン酸ホスフェート化合物、最も好ましくはモノ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、ジ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、またはモノステアリン酸ホスフェートとジステアリン酸ホスフェートとの混合物を使用する場合、最後に述べた量が特に好適である。そのような適切な重合阻害剤の含有量を達成するために、前述の好ましい条件で脱揮を行う場合、反応混合物の総重量に基づいて0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.2重量%、最も好ましくは約0.02〜0.15重量%の重合阻害剤が、この実施形態において、ステップc)の前に反応混合物に加えられなければならない。
【0047】
より具体的には、好ましくは、ステップc)における脱揮は、この実施形態において、203℃超〜300℃の温度および0.1〜5mbar未満の圧力で行われ、重合阻害剤は、イミンもしくはジイミン、リン酸エステル等のリン酸誘導体、アルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、および前述の物質の2つ以上を含む混合物からなる群から選択され、ステップc)の前に反応混合物に加えられる重合阻害剤の量は、反応混合物の総重量に基づいて0.01〜0.20重量%である。
【0048】
より好ましくは、ステップc)における脱揮は、この実施形態において、205℃〜220℃の温度および0.5〜4mbar未満の圧力で行われ、重合阻害剤は、イミンもしくはジイミン、リン酸エステル等のリン酸誘導体、アルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、および前述の物質の2つ以上を含む混合物からなる群から選択され、ステップc)の前に反応混合物に加えられる重合阻害剤の量は、反応混合物の総重量に基づいて0.01〜0.20重量%である。
【0049】
さらにより好ましくは、ステップc)における脱揮は、205〜220℃の温度および1〜3mbar未満の圧力で行われ、重合阻害剤は、ジイミン、リン酸エステル、アルカン酸ホスフェートまたはエトキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、および前述の物質の2つ以上を含む混合物からなる群から選択され、ステップc)の前に反応混合物に加えられる重合阻害剤の量は、反応混合物の総重量に基づいて0.01〜0.2重量%である。
【0050】
最少量の重合阻害剤を用いて凝縮相組成物を十分に安定化するように作用させるために、この実施形態についても、上で述べた任意の既知の混合方法によって、既に気相中でまたは最終凝縮相組成物において混合を行うことが提案される。
【0051】
また、この実施形態は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、またはポリグリコリドを製造するために、すなわち、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、ε−カプロラクトン、およびグリコリド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される環状エステルを使用するために、特に有用である。
【0052】
重合触媒および重合開始剤として、前述の物質が、上で好ましいと述べた量で本実施形態に使用されてもよい。好ましくは、ステップb)の反応混合物は、0.5〜50重量%、好ましくは1〜15重量%未満の環状エステルを含む。
【0053】
さらに、上で好ましいと述べた凝縮条件が、本実施形態に使用されてもよい。
【0054】
好ましくは、少なくとも10,000g/mol、好ましくは少なくとも15,000g/mol、より好ましくは少なくとも20,000g/molのMwを有するポリマーが得られるまで、本実施形態に従う方法のステップb)で重合が行われる。
【0055】
さらに、120℃〜250℃の温度で、より好ましくは150℃〜200℃の温度で、最も好ましくは160℃〜190℃の温度で、ステップb)で重合が行われることが好ましい。
【0056】
任意選択的に、前述の実施形態において、ステップc)の前に反応混合物に加えられる重合阻害剤以外に、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物にも重合阻害剤が含まれてもよい。
【0057】
ポリエステルを製造するプロセスにおける使用される組成物であることとは別に、本発明による凝縮相組成物を安定化するための方法は、乳酸からラクチドを製造するプロセスにおいて選択肢ii)に従って使用されてもよく、この方法は、好ましくは、
a)乳酸を提供するステップ、
b)ポリ乳酸プレポリマーを含む反応混合物を形成するように、反応器内で乳酸を重縮合するステップ、
c)反応混合物に触媒を加え、反応混合物を解重合するステップ、
d)粗ラクチド流を得るように、反応混合物を脱揮するステップ、
e)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
重合阻害剤の少なくとも一部、好ましくはその全ては、脱揮から出た蒸気流におよび/または凝縮相組成物に加えられる。解重合ステップとの見込まれる干渉を最小限に抑えるために、重合阻害剤の全てを蒸気流および/または凝縮相に加えることは、これが連続脱揮を用いる連続プロセスにおいて行われる場合には特に、有利である。
【0058】
環状エステルプレポリマーは、本発明によれば、数平均分子量が10,000g/molよりも低い分子である。
【0059】
好ましくは、予備重合ステップは、乳酸を脱水して重合度が約7〜20、好ましくは約10のプレポリマーにするために、1〜300mbarの圧力および最大250℃の温度でステップb)において実施される。この予備重合は、回分式または連続式のいずれかで行われてもよく、好ましくは連続式で行われる。
【0060】
本発明のさらなる展開において、ステップc)における解重合は、1〜10mbarの圧力および150℃〜250℃の温度で連続的に実施されることが提案され、ここでは、好ましくは、触媒としての上で述べた化合物が、上で述べた量で用いられる。
【0061】
さらに、上で好ましいと述べた脱揮および凝縮条件が本実施形態に使用されてもよい。
【0062】
本発明のさらなる展開において、凝縮相組成物中の重合阻害剤の量は、組成物の総重量に基づいて0.001〜0.5重量%であることが提案される。より好ましくは、凝縮相組成物中の重合阻害剤の量は、組成物の総重量に基づいて0.01〜0.2重量%、最も好ましくは約0.02〜0.15重量%である。強力な重合阻害剤、例えば、イミンもしくはジイミン、および/またはリン酸エステル等のリン酸誘導体、好ましくはアルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、より好ましくはステアリン酸ホスフェート化合物、最も好ましくはモノ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、ジ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、またはモノステアリン酸ホスフェートとジステアリン酸ホスフェートとの混合物を使用する場合、最後に述べた量が特に好適である。
【0063】
最少量の重合阻害剤を用いて凝縮相組成物を十分に安定化するように作用させるために、この実施形態についても、好ましくは上記の混合器を利用して、ステップd)における凝縮中に、およびより好ましくは凝縮後にも、蒸気相中でまたは凝縮相組成物中で、阻害剤を直接混合することが提案される。
【0064】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、重合阻害剤を含む凝縮相組成物は、その意図される用途に供される前に精製ステップに供される。精製ステップの間に、重合触媒および/または重合開始剤ならびに重合阻害剤等の凝縮相組成物に含まれる不純物が除去される。そのようにして精製された凝縮相組成物は、その結果、少なくとも本質的に環状エステルからなる。
【0065】
好ましくは、重合阻害剤を含む凝縮相組成物は、その意図される用途に供される前に、精製された凝縮相組成物を得るために、溶融結晶化ステップ、蒸留ステップ、または溶媒結晶化ステップに供され、好ましくは溶融結晶化ステップに供される。
【0066】
より好ましくは、重合阻害剤を含む凝縮相組成物は、その意図される用途に供される前に、精製された凝縮相組成物を得るために溶融結晶化ステップに供される。好ましくは、凝縮相組成物は、溶融結晶化ステップにおいていずれの溶媒も用いることなく結晶化されるが、これは、任意の溶媒を除去するためのさらなるステップが必要ないという利点を有する。
【0067】
溶融結晶化は、好ましくは、静的結晶化、動的結晶化、またはそれらの組み合わせによって行われる。この目的のために、当業者に既知の任意の好適な種類の静的晶析装置および/または動的晶析装置が使用されてもよい。動的晶析装置の特定の好ましい例は、流下液膜式晶析装置である。
【0068】
静的結晶化は、伝熱媒体の内部循環によって加熱もしくは冷却されるチューブを使用することによって、または代替として、垂直に、水平に、もしくは任意の好ましい配向のいずれかに配向され得るプレートを使用することによって行われてもよく、プレートは、結晶化によって精製される必要がある溶融フィードに懸濁される。第1のステップにおいて、精製される物質は、垂直プレートの表面で結晶化され、主に不純物を含む残りの溶融物が第1の残渣として除去される。第2のステップにおいて、結晶塊は、結晶中に含まれる主に残っている不純物を溶融させるために、それぞれ、部分的に溶融されるかまたは「発汗」(“sweated”)させられ、次いで、得られた溶融物が第2の残渣として晶析装置から除去される。次いで、第3のステップにおいて、そのようにして精製された結晶は、溶融され、生成溶融物として除去される。静的結晶化は、高い柔軟性、幅広い操作範囲、容易な操作(結晶スラリの取り扱いおよび濾過が存在しないため)、高い信頼性、および低操作コストという利点を有する。特に、熱感受性物質が精製される場合、静的結晶化が動的結晶化よりも好ましい。
【0069】
流下液膜式晶析装置は、本質的に垂直なチューブであるシステムからなる。結晶化プロセスの間、精製される組成物および伝熱媒体の両方が、流下液膜としてチューブの表面上を落下する。しかしながら、精製される組成物が流下液膜としてチューブの内面上を落下するのに対し、冷却および加熱に使用される伝熱媒体は、チューブの外面を湿潤させるように分布する。結晶化の間、冷伝熱媒体を使用してチューブを冷却し、そうすることで精製される物質がチューブの内面上で結晶化し、主に不純物を含む残りの溶融物が第1の残渣として晶析装置から除去される。結晶化後、結晶中に含まれる主に残っている不純物を溶融させるために、伝熱媒体の温度をやや上昇させることにより部分的溶融または「発汗」をそれぞれ誘導し、次いで、残りの溶融物が第2の残渣として晶析装置から除去される。次いで、より高い温度を適用することにより結晶の最終的な溶融を行って精製された液体を得、それが生成溶融物として除去される。流下液膜式晶析は、大容量を実現し、容易な操作(結晶スラリの取り扱いおよび濾過が存在しないため)、高い信頼性、および低操作コストを特徴とする。
【0070】
好ましくは、結晶化は、組成物の凝固点よりも0.1〜50℃低い温度で凝縮相組成物を冷却することによって、より好ましくは、組成物の凝固点よりも0.5〜25℃低い温度で凝縮相組成物を冷却することによって行われる。
【0071】
前述の実施形態の代替の実施形態によれば、凝縮相組成物が意図される用途に供される前にその精製は行われない。この実施形態において、凝縮相組成物は、ポリ乳酸等のポリエステルへの重合等の後の用途に未精製形態で使用され、残りの重合阻害剤を考慮して、それぞれより多くの量の触媒および開始剤が加えられる。
【0072】
凝縮相組成物の意図される用途は、具体的には、ポリ乳酸等のポリエステルの生成に使用される重合反応器等の反応器、またはラクチド等の環状ジエステルへの解重合のための前駆体物質としてのポリエステル−プレポリマーの生成に使用される予備重合反応器へのリサイクリングであってもよい。
【0073】
凝縮相組成物がリサイクルされる反応器は、具体的には、ループ型反応器またはプラグ流反応器であってもよい。
【0074】
別の特定の態様によれば、本発明は、環状エステルモノマーからポリエステルを製造するプロセスに使用される凝縮相組成物を安定化するための方法に関し、本方法は、好ましくは、
a)環状エステルを提供するステップ、
b)ポリエステルおよび未反応環状エステルを含む反応混合物を形成するように、反応器内で触媒および任意選択的に開始剤の存在下で環状エステルを重合するステップ、
c)反応混合物を脱揮に供し、溶融残渣としての精製されたポリエステル、および、主に、i)少なくとも1種の重合可能な環状エステルと、ii)少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む蒸気を得るステップ、
d)凝縮相組成物を得るように、蒸気流を凝縮に供するステップ
を含み、
少なくとも1種の重合阻害剤が、安定化剤としてステップc)の前に反応混合物に加えられ、脱揮は、220℃超の温度および/または5mbar未満の圧力で行われる。
【0075】
好ましくは、脱揮は、220℃超〜300℃の温度および/または1〜5mbarの圧力で、より好ましくは220℃超〜250℃の温度および/または1〜3mbarの圧力で行われる。
【0076】
環状エステル、触媒、および開始剤として、他の実施形態について上で記載した化合物群が、前述の量で使用されてもよい。
【0077】
別の態様によれば、本発明は、環状エステルモノマーからポリエステルを製造するプロセスに使用される凝縮相組成物を安定化するためのプラントに関し、
このプラントは、
a)ポリエステルおよび未反応環状エステルを含む反応混合物を形成するように、触媒および任意選択的に開始剤の存在下で環状エステルを重合するための少なくとも1つの反応器、
b)主に重合環状エステルを含む溶融残渣から、環状エステルと、触媒および/もしくは開始剤ならびに/あるいは少なくとも1種の触媒および/もしくは少なくとも1種の開始剤の反応生成物または残渣とを含む低沸点気相を分離するための少なくとも1つの脱揮デバイス、
c)蒸気流を凝縮相組成物に凝縮するための少なくとも1つの凝縮器デバイス
を備え、
プラントは、脱揮から出た蒸気流および/または凝縮相組成物のいずれかに重合阻害剤を供給するための少なくとも1つの供給ラインをさらに備える。
【0078】
好ましくは、プラントは、重合阻害剤を凝縮相組成物に均質に混合するように適合される、例えば、凝縮器内または凝縮器の下流に位置する混合機をさらに備える。好ましくは、混合機は、上記のような混合機である。代替として、混合機は、既に気相中で混合が行われるように位置してもよい。
【0079】
さらに、プラントは、不純物、具体的には、重合触媒、重合開始剤、および重合阻害剤を、環状エステル含有凝縮相組成物から除去することができる、少なくとも1つの精製デバイスを凝縮器の下流にさらに備えることが好ましい。好ましくは、精製デバイスは、静的晶析装置、動的晶析装置、またはそれらの組み合わせである。この目的のために、当業者に既知の任意の種類の静的晶析装置および/または動的晶析装置が使用されてもよい。動的晶析装置の特定の好ましい例は、流下液膜式晶析装置である。
【0080】
好ましくは、少なくとも1つの精製デバイスは、ラインを介して凝縮器に接続され、精製デバイスから反応器システムに戻る返送ラインをさらに備える。
【0081】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、脱揮デバイスから出た蒸気流は、プラントの洗浄領域で洗浄ステップに供される。例えば、脱揮デバイスから出た蒸気流は、向流カラムに送られ、好ましくは真空下に維持され、そこで水溶液と接触させられ、それによって蒸気流に含まれるラクチドが溶解され、少なくとも部分的に加水分解される。次いで、得られた混合物は、好ましくは熱交換器に誘導され、そこで例えば10〜95℃、好ましくは10〜60℃の温度に加熱され、その後反応器に誘導され、水溶液中でラクチドを完全にまたは少なくともほぼ完全に溶解および加水分解させるために、そこで少なくとも0.1〜30分、好ましくは少なくとも0.1〜10分の滞留時間この温度に維持され、その後さらなる熱交換器に誘導され、そこで例えば5〜25℃、好ましくは5〜15℃、より好ましくは7〜12℃の温度に冷却される。その後、冷却された混合物は、水溶液として向流カラムに再循環される。再循環させた混合物の分流は、再循環システムの任意の場所から、例えば、混合物を第1の熱交換器に誘導する前等に除去され、次いで廃棄される。
【0082】
そのような洗浄領域において、モノステアリン酸ホスフェートおよびジステアリン酸ホスフェート、ならびにそれらの混合物等の従来のホスフェート系重合阻害剤は、多くの場合に、洗浄領域の汚染(fouling:ファウリング)の問題を引き起こすことが本発明の完成過程で明らかになった。そのような汚染は、ラインの閉塞、および不溶性画分として洗浄領域内に不必要に蓄積し得る固体残渣を引き起こし得る。いずれか特定の機構に拘束されることを望むものではないが、この汚染は、重合阻害剤および/またはその分解産物の脱揮によって引き起こされるものであり、これらは洗浄領域内に存在する酸性水溶液に不溶性であるものと考えられる。
【0083】
この問題を解決するための1つの可能性のある手段は、室温で液体であり高度に揮発性でもあるホスフェート系重合阻害剤を使用することであり、このホスフェート系重合阻害剤は、例えば、室温で液体であり760mmHgで275.3℃の沸点を持つため、そのような洗浄領域で使用される場合に真空条件下で高度に揮発性である、リン酸ジブチルである。そのような揮発性ホスフェート系重合阻害剤および/またはそれらの分解産物は、脱揮槽の流出口でガス流と共に洗浄領域に移送されたときにそこで容易に脱揮されるため、洗浄領域および下流の再循環システムにはいずれの汚染も引き起こさないものと考えられた。替わりに、洗浄領域に移送されるがそこで容易には脱揮されない可能性がある阻害剤および/または分解産物の画分は、そこで液体状態であるため、この場合も同様に洗浄領域部にはいずれの汚染も引き起こさないと考えられた。しかしながら、試験を行ったところ、そのような揮発性の高い重合阻害剤を用いても洗浄領域の部分に汚染は生じなかったが、驚くべきことに、第1および/または第2の脱揮チャンバの上流で著しい汚染が生じたことが、本発明において明らかになった。そのような汚染は、該チャンバの表面を覆う暗色の不溶性固形物の形成をもたらす。生産工程時間の関数として、得られたポリエステルポリマー生成物の色が、その後、汚染が進行するにつれて劣化することも分かった。この場合も同様に、いずれか特定の機構に拘束されることを望むものではないが、この汚染は、チャンバ内でそのような揮発性の高いホスフェート系重合阻害剤の気相熱分解が容易に生じ、それによってチャンバ表面に固体残渣を生じることで引き起こされるものと考えられる。
【0084】
驚くべきことに、脱揮チャンバと、エステルを蒸気から除去するため、およびエステル含有量を低下させる再循環のための、その下流にある洗浄領域との両方におけるこれらの汚染の問題は、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン(CAS番号120−70−7)等のジイミン、または後述する一般式(I)によるホスフェートエステルのいずれかを重合阻害剤として使用することによって、軽減され得ることが、後に明らかになった。この場合も同様に、いずれか特定の機構に拘束されることを望むものではないが、これらのホスフェートエステルが、所定部分の鎖長を調整することによって十分に高い分子量であること、ひいては不揮発性であることで、これらの脱揮チャンバにおける汚染の問題を軽減するものと考えられる。加えて、後の一般式(II)のような極性一般構造を介してホスフェートエステルに親水性を付与することで、ホスフェートエステルおよび/またはその分解産物が十分に親水性となり、ひいては酸性水溶液に可溶性となるため、結果として、洗浄領域およびその再循環システムにおける汚染の問題が回避される。さらに、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン等のそのようなジイミンは、重合阻害剤の必須の揮発性および親水性特性をバランスさせることにおいて同様に機能するものと考えられる。したがって、そのようなホスフェートエステルおよびジイミンは、ポリエステルを生成するための環状エステルの重合プロセス、特に、脱揮容器および/または洗浄領域が採用される重合プロセスにおいて、有利に用いられ得る。
【0085】
別の態様によれば、本発明は、上記の方法を用いて得られる凝縮相組成物に関する。
【0086】
凝縮相組成物は、好ましくは、
i)少なくとも95重量%の環状エステル、
ii)環状エステルの重合を触媒することができる少なくとも0.5ppmの少なくとも1種の触媒、および/または
環状エステルの重合を開始することができる少なくとも0.01mmol/kgの少なくとも1種の開始剤、ならびに
iii)0.001〜0.5重量%の重合阻害剤
を含む。
【0087】
重合阻害剤としては、特に触媒および/または開始剤の存在下で環状エステルのオリゴマー化および/または重合を阻害することができるいずれの物質も、本発明の範囲内で使用され得る。反応混合物および/または凝縮相組成物に加えられる重合阻害剤の量は重合阻害剤の効率と共に減少するため、強力な重合阻害剤を使用することが好ましい。少なくとも1種の重合阻害剤が、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン等のイミンもしくはジイミン、および/またはリン酸エステル等のリン酸誘導体、好ましくはアルカン酸ホスフェートまたはアルコキシル化アルコール系酸ホスフェート化合物、より好ましくはステアリン酸ホスフェート化合物、最も好ましくはモノ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、ジ−C
4−18アルキルホスフェートエステル、またはモノステアリン酸ホスフェートとジステアリン酸ホスフェートとの混合物である場合に、特に良好な結果が得られる。
【0088】
別の態様によれば、本発明は、ポリエステルを生成するための前述の凝縮相組成物の使用に関し、凝縮相組成物の総量に基づいて、重合触媒の総量が1ppm〜1重量%になりかつ/または重合開始剤の総量が0.1〜50mmol/kgになるように、重合開始前に、重合触媒および/または重合開始剤が凝縮相組成物に加えられる。
【0089】
別の態様によれば、本発明は、ポリエステルを生成するための前述の凝縮相組成物の使用に関し、凝縮相組成物は、最終組成物の総量に基づいて重合開始剤の総量が0.1〜50mmol/重量kgになるように、重合触媒および/または重合開始剤を任意選択的に加えて、環状エステルおよび/またはポリエステルを含む溶融物と混合され、そのようにして得られた混合物が次いでさら重合される。
【0090】
この実施形態は、ポリ乳酸の生成に特に好適である。
【0091】
本発明のさらなる実施形態によれば、本方法において使用される重合阻害剤は、モノまたはジイミン、リン酸エステル、アルコキシル化アルコール系酸ホスフェート、モノ−および/またはジ−アルキルホスフェート、RPO
4H
2および/またはR
2PO
4Hからなる群から選択され、式中、各Rは、独立して、C
6−16直鎖、分岐鎖、もしくは環状アルキル基、またはそれらの組み合わせである。
【0092】
上で示した理由により、好ましくは、重合阻害剤として、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン等のジイミン、および/または一般式(I)によるホスフェートエステルが使用される。
【化1】
式中、好ましくは、R’、R’’、およびR’’’は、独立して、一般式(II)のような一般構造を有し、
【化2】
式中、i)n>0であり、Qは、独立して、C
1−16の直鎖、分岐鎖、または置換アルキル基であり、Rは、独立して、H、あるいは直鎖、分岐鎖、環状、もしくは置換アルキル基、またはフェニル基誘導体であるか、あるいはii)n=0であり、Rは、独立して、H、あるいはC
6−16直鎖、分岐鎖、環状、もしくは置換アルキル基、またはフェニル基誘導体である。好ましくは、R’、R’’、およびR’’’のうちの少なくとも1つは、一般式(I)において、Hである。
【0093】
好ましくは、上の式(I)中、i)R’がHであり、R’’およびR’’’が一般式(II)によるものであるか、またはii)R’およびR’’がHであり、R’’’が一般式(II)によるものであるかのいずれかである。
【0094】
さらに、nは、一般式(II)中、好ましくは0超、より好ましくは2〜20の整数、さらにより好ましくは2〜11の整数である。
【0095】
特に好ましい実施形態によれば、nは、一般式(II)中、2〜20の整数であり、Rは、アルキル基である。さらにより好ましくは、nは、2〜20の整数であり、Rは、炭素原子が16個未満であるアルキル基であり、Qは、CH
2−CH
2基である。したがって、好ましい例は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アルファ−イソトリデシル−オメガ−ヒドロキシ−ホスフェート(CAS9046−01−9)およびポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシ−モノ−C
12−15−アルキルエーテルホスフェート(CAS68071−35−2)である。
【0096】
そのような好ましいクラスの重合阻害剤を反応混合物に加えることによって、物質の透明性および/または外観は非常に良好となり、多くの場合、重合生成物中のヘイズを確実に最小限に抑えることができ、かつ驚くべきことに、脱揮領域および/もしくは洗浄領域における、閉塞、相分離、固体副生物の堆積の発生、ならびに/または機器における汚染および/もしくは機器の清掃に関する諸問題を最小限に抑えることができる。また、そのような好ましいクラスの重合阻害剤は、従来技術において既知であるモノステアリン酸ホスフェートおよびジステアリン酸ホスフェート等の他の阻害剤と比較して、より高い粘性のポリマーの生成を可能にする。加えて、これらの重合阻害剤は、EP2698394A1、WO2014/027037A1、または米国特許第5,770,682号明細書から既知であるもの等の、重合阻害剤を加えるための従来的な既知である方法の全てにおいて使用され得ることが明らかになった。
【0097】
その他、重合阻害剤は、一般的に、[ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)モノ−アルキル−エーテルホスフェート]、[ポリ(オキシ−1,2−エタンジオール)−フェニル−ヒドロキシホスフェート]、または[ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)オメガ−ヒドロキシホスフェート]であってもよい。
【0098】
加えて、本発明による方法の選択肢i
a)およびi
b)における環状エステルは、そのプロセスにおいてポリ乳酸が生成されるように、ラクチドであることが好ましい。
【0099】
さらに、本組成物中の化合物の濃度は、0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.02〜0.15重量%であることが好ましい。
【0100】
次に、本発明による特定の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。