特許第6457077号(P6457077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457077
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】可視光活性光触媒タイル
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20190110BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20190110BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20190110BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20190110BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20190110BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J35/02 H
   B01J35/10 301G
   B01J23/652 M
   C04B41/85 D
   C09D1/00
   E04F13/14 103A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-516076(P2017-516076)
(86)(22)【出願日】2015年9月22日
(65)【公表番号】特表2017-536971(P2017-536971A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】KR2015009955
(87)【国際公開番号】WO2016048009
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0127935
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンイル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ソンムン
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−214091(JP,A)
【文献】 特開2012−107376(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0055188(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0068207(KR,A)
【文献】 特開2010−018503(JP,A)
【文献】 特開2011−136325(JP,A)
【文献】 特開2004−122056(JP,A)
【文献】 特開2005−036516(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0956843(KR,B1)
【文献】 特開平09−227156(JP,A)
【文献】 特開2008−260684(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0229967(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0123094(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104781210(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0201022(US,A1)
【文献】 米国特許第06013372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
E04F13/00−13/30
C04B41/80−41/91
C09D1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性セラミックタイル;及び
前記タイルの一面に水系溶媒及び可視光活性光触媒粒子を含むコーティング組成物に形成された光触媒層を含み、
前記多孔性セラミックタイルの気孔体積は0.01cm3/g ないし0.2cm3/gであり、
前記多孔性セラミックタイルは、γ−アルミナを20ないし50重量%含み、
前記コーティング組成物は、アルコール溶媒及びバインダーを含まない、
可視光活性光触媒タイル。
【請求項2】
前記多孔性セラミックタイルは、平均直径が1nmないし10μmの気孔を含む、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項3】
前記γ−アルミナは、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物、水酸化アルミニウム、アルミニウムクロリド、アルミニウムニトリド、アルミナゾル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルミニウムソースが相転移された物質を含む、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項4】
前記コーティング組成物は、前記水系溶媒90ないし96重量%、及び前記可視光活性光触媒粒子4ないし10重量%を含む、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項5】
前記水系溶媒は100重量%の水を含む、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項6】
前記可視光活性光触媒粒子は、多孔性金属酸化物;及び前記多孔性金属酸化物に担持された金属粒子を含む、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項7】
前記多孔性金属酸化物は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項6に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項8】
前記金属粒子は、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデン、銅、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、金、銀、セリウム、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項6に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項9】
前記可視光活性光触媒粒子は、前記多孔性金属酸化物を90重量%ないし99.9重量%含み、前記金属粒子を0.1重量%ないし10重量%含む、請求項6に記載の可視光活性光触媒タイル。
【請求項10】
前記可視光活性光触媒粒子は、平均直径が50nmないし500nmである、請求項1に記載の可視光活性光触媒タイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光活性光触媒タイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IAQ(Indoor Air Quality、室内空気質)を快適にすることができる光触媒を室内インテリア内装材の表面にコーティングして使うことができる。一般に、光触媒を基材にコーティングして取り付けるためにバインダーを使用する。しかし、バインダーは光触媒と結合する過程で光触媒の表面を覆うようになり、これによって、光触媒の表面露出面積を減らせることになる。すなわち、光触媒コーティングにバインダーを使えば、バインダーによって光触媒の表面反応が減少し、性能が落ちるようになる。
【0003】
また、代表的な光触媒物質で二酸化チタン(TiO2)が使われるが、これは耐久性及び耐摩耗性が優秀で、且つ安全な無毒性物質である。ただし、これを活性化するためのバンドギャップエネルギーが大きいため、紫外線波長以下の光だけを吸収することができ、外装材ではない屋内装飾材に適用するには限界がある。
【0004】
そのため、室内に適用して可視光線に対する活性に基づき、優れた光触媒性能を示す内装材に関する開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実現例は、可視光活性性能に基づいて、室内有害有機物質に対する吸着及び除去性能が優秀で、調湿及び抗菌機能が卓越な可視光活性光触媒タイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実現例において、多孔性セラミックタイル;及び前記タイルの一面に水系溶媒、及び可視光活性光触媒粒子を含むコーティング組成物に形成された光触媒層;を含む、可視光活性光触媒タイルを提供する。
【0007】
前記多孔性セラミックタイルは、平均直径が約1nmないし約10μmの気孔を含んでもよい。
【0008】
前記多孔性セラミックタイルの気孔体積は、約0.01ないし約0.2cm3/gであってもよい。
【0009】
前記多孔性セラミックタイルは、γ−アルミナを含んでもよい。
【0010】
前記γ−アルミナは、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物、水酸化アルミニウム、アルミニウムクロリド、アルミニウムニトリド、アルミナゾル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルミニウムソースが相転移された物質を含んでもよい。
【0011】
前記多孔性セラミックタイルは、前記γ−アルミナを約20ないし約50重量%含んでもよい。
【0012】
前記コーティング組成物は、前記水系溶媒約90ないし約96重量%、及び前記可視光活性光触媒粒子約4ないし約10重量%を含んでもよい。
【0013】
前記水系溶媒は、100重量%の水を含んでもよい。
【0014】
前記可視光活性光触媒粒子は、多孔性金属酸化物;及び前記多孔性金属酸化物に担持された金属粒子を含んでもよい。
【0015】
前記多孔性金属酸化物は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
前記金属粒子は、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデン、銅、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、金、銀、セリウム、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
【0017】
前記可視光活性光触媒粒子は、前記多孔性金属酸化物を約90重量%ないし約99.9重量%含み、前記金属粒子を約0.1重量%ないし約10重量%含んでもよい。
【0018】
前記可視光活性光触媒粒子は、平均直径が約50nmないし約500nmであってもよい。
【0019】
前記コーティング組成物は、アルコール溶媒及びバインダーを含まなくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
前記可視光活性光触媒タイルは、可視光線に対する活性に基づいて空気清浄、奪臭及び抗菌機能が優秀であり、室内に適用されて長期的に光触媒效率が優れた特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実現例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるもので、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0022】
本発明の一実現例において、多孔性セラミックタイル;及び前記タイルの一面に水系溶媒及び可視光活性光触媒粒子を含むコーティング組成物で形成された光触媒層を含む、可視光活性光触媒タイルを提供する。
【0023】
通常、光触媒粒子を含むコーティング組成物は、基材に対する付着性を向上させるためにバインダーを使ったり、早い吸収と乾燥のためにアルコールを含んだ溶剤を使って製造される。しかし、このようなバインダー及びアルコール溶剤は、光触媒粒子の露出表面積を減少させ、これによって、有害物質、特に分子量が大きくて、分解または吸着し難いトルエンなどに対する吸着及び除去性能を低下させる恐れがある。
【0024】
そのため、前記光触媒層を製造するためのコーティング組成物は、アルコール溶剤やバインダーなしに水系溶媒のみを利用し、前記水系溶媒及び可視光活性光触媒粒子を含むことを特徴とする。
【0025】
また、前記コーティング組成物がアルコール溶剤やバインダーを含まなくてもタイル表面に対する優れた付着性及び分散性を確保するために、前記タイルは多孔性セラミックタイルであることを特徴とする。
【0026】
具体的に、前記コーティング組成物は前記水系溶媒を約90ないし約96重量%含み、前記可視光活性光触媒粒子を約4ないし約10重量%含んでもよい。前記コーティング組成物が前記水系溶媒及び可視光活性光触媒粒子を前記範囲の含量で含むことにより、前記多孔性セラミックタイルの表面に効果的に分散及び附着されることがあり、前記可視光活性光触媒粒子が優れた光触媒性能を実現することができる。前記水系溶媒が約90%未満に含まれ、前記可視光活性光触媒粒子が約10%を超えて含まれる場合は前記コーティング組成物が均一にコーティングされない問題があり、前記タイルに対する付着性が低下して光触媒性能が低下される問題が生じえる。また、前記水系溶媒が約96%を超えて含まれ、前記可視光活性光触媒粒子が約4%未満に含まれる場合は、抗菌機能、有害物質除去機能が発現されず、求められるコーティング量を得るために多くの回収工程の必要な問題が生じる。
【0027】
前記水系溶媒は水100%からなる溶媒であって、前記水は蒸溜水、イオン水、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよく、水であればその種類は制限されない。
【0028】
前記コーティング組成物は可視光活性光触媒粒子を含み、これは可視光線に対して光活性を有するものとして紫外線だけでなく、可視光線によって有害物質の除去性能を示すことができる。また、前記可視光活性光触媒粒子は、室内光源でも優れた效率を示すので、前記可視光活性光触媒タイルは室内に適用されて別途の光供給装置がなくてもよい。
【0029】
例えば、前記可視光活性光触媒粒子は、約380nmないし約780nm波長範囲の可視光線に対して光活性を有することができ、具体的に、約400nm波長の可視光線に対して約20%の吸光度を表すことができるし、約500nm波長の可視光線に対して約10%の吸光度を表すことができる。
【0030】
前記可視光活性光触媒粒子は、光を吸収して得たエネルギーから生成された電子と正孔がパーオキシド陰イオンまたはヒドロキシラジカルなどを生成し、これらは有害物質を分解及び除去して空気清浄、奪臭、抗菌作用ができる。
【0031】
具体的に、前記可視光活性光触媒粒子は、多孔性金属酸化物;及び前記多孔性金属酸化物に担持された金属粒子を含んでもよい。
【0032】
前記多孔性金属酸化物は多孔性粒子として、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
【0033】
また、前記金属粒子は、可視光線に対する光活性を付与する金属として、例えば、転移金属または貴金属などであってもよい。具体的に、前記金属粒子は、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデン、銅、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、金、銀、セリウム、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
【0034】
例えば、前記可視光活性光触媒粒子は、酸化タングステン及び酸化タングステンに担持された白金粒子を含んでもよく、この場合、可視光線に対して優れた光活性を示し、室内光源によっても優れた奪臭及び抗菌機能を確保することができる。
【0035】
前記多孔性金属酸化物は気孔を含むものであって、前記気孔の体積比が約5%ないし約50%であってもよく、比表面積が約50m2/gないし約500m2/gであってもよい。前記多孔性金属酸化物が前記範囲の気孔度及び比表面積を有する場合、前記金属粒子が効果的に担持されてもよく、これにより可視光線に対する優れた光活性を確保して有害物質の吸着及び除去性能をもっと向上させることができる。
【0036】
前記可視光活性光触媒粒子は、前記多孔性金属酸化物を約90重量%ないし約99.9重量%含んでもよく、前記金属粒子を約0.1重量%ないし約10重量%含んでもよい。前記金属粒子は、前記多孔性金属酸化物の表面に光−蒸着法によって担持されてもよく、このとき、前記多孔性金属酸化物及び金属粒子の含量を前記範囲に調節することで、優れた触媒効果を表す可視光活性光触媒粒子を製造することができる。
【0037】
例えば、前記可視光活性光触媒粒子が酸化タングステン及び酸化タングステンに担持された白金粒子を含む場合、前記酸化タングステンが約90重量%ないし約99.9重量%含まれてもよく、前記白金粒子が約0.1重量%ないし約10重量%含まれてもよい。
【0038】
前記多孔性金属酸化物が約99.9重量%の含量を超過して含まれ、前記金属粒子が0.1重量%未満に含まれると、電子正孔の分離が難しくなって十分な光触媒活性を表すことができない恐れがある。また、前記多孔性金属酸化物が約90重量%未満で含まれ、前記金属粒子が約10重量%を超えて含まれると、前記多孔性金属酸化物で転移される電子の数が充分に確保できずに光触媒活性が低下する恐れがある。
【0039】
前記可視光活性光触媒粒子は、平均直径が約50nmないし約500nmであってもよく、例えば、約50nmないし約200nmであってもよい。前記可視光活性光触媒粒子は、水系溶媒に分散された状態で前記多孔性セラミックタイルの一面に塗布されることで、前記範囲の平均直径を有することで均一に分散されてもよく、前記多孔性セラミックタイルの気孔に早く侵透して優れた付着性を表すことができる。また、前記可視光活性光触媒粒子が前記範囲の平均直径を有することにより、露出面積を確保して優れた空気清浄及び抗菌機能を表すことができる。
【0040】
前記光触媒層を形成するためのコーティング組成物は、前述したように、アルコール溶媒及びバインダーを含まないものとして、前記可視光活性光触媒粒子の露出表面積を充分に確保して揮発性有機化合物VOCsのような有害物質の吸着及び除去性能をもっと向上させることができる。
【0041】
特に、前記光触媒層はトルエンに対する吸着及び除去能に優れる。トルエンは分子量が大きくて、非極性の物質として通常、吸着及び分解し難い物質である。前記光触媒層はアルコール溶媒及びバインダーを含まずに、水系溶媒及び前記可視光活性光触媒粒子を含むコーティング組成物から形成されるので、前記光触媒粒子の有害物質に対する吸着及び除去性能が優秀であり、トルエンのような吸着及び分解し難い物質に対して優秀な除去率を示す。
【0042】
前記コーティング組成物は、アルコール溶剤やバインダーを含まずに多孔性セラミックタイルの一面に塗布されるところ、優れた付着性及び分散性を有する光触媒層を形成してもよい。
【0043】
前記多孔性セラミックタイルは、前記コーティング組成物の付着性及び分散性を確保するために適合する孔隙特性を有してもよい。具体的に、前記多孔性セラミックタイルは、平均直径が約1nmないし約10μmの気孔を含んでもよく、例えば、平均直径が約10nmないし約1μmの気孔を含んでもよい。前記「気孔」は、前記多孔性セラミックタイル形成粒子の間に形成されたものであって、開いた気孔ともいい、空気の出入りが円滑な空間を意味する。前記気孔の平均直径は前記気孔直径の算術的な平均値を称える。
【0044】
前記気孔が前記範囲の平均直径を有することで、前記コーティング組成物の優れた付着性及び分散性を確保することができ、これと同時に、調湿機能による優れた湿度調節効果及び優れた強度を確保することができる。前記気孔が約1nm未満の場合には、内部への空気の出入りが円滑ではないので、十分な調湿機能を実現できない恐れがあり、前記コーティング組成物の付着性及び分散性を確保できないこともある。また、前記気孔が約10μmを超過する場合は、前記可視光活性光触媒タイルの強度が低下し過ぎる恐れがある。
【0045】
前記多孔性セラミックタイルの気孔体積は約0.01ないし約0.2cm3/gであってもよい。前記「気孔体積」は、前記多孔性セラミックタイルに含まれる気孔の体積を前記タイルの単位質量当たり値で示したものである。前記気孔体積が前記範囲を満たすことで、前記コーティング組成物の優れた付着性及び分散性を確保することができ、これと同時に密度低下に他のタイルの強度低下を防止して優れた耐久性及び調湿機能を確保することができる。
【0046】
前記多孔性セラミックタイルは、調湿機能を与えるためにγ−アルミナを含んでもよい。前記γ−アルミナは、アルミニウムソースを熱処理することで他の構造相に転移することが可能であり、広い比表面積と微細な気孔ホールを持っていて、分離膜、触媒、触媒担体、及び吸着剤として優れた特性を示すことができる物質である。
【0047】
前記γ−アルミナは、多孔性セラミックタイル形成粒子が含む気孔表面に形成され、優れた調湿及び奪臭機能を有することができる。これによって、前記γ−アルミナは湿度が高い時、前記気孔を通じて湿気を吸収して室内の湿度を下げる機能をし、逆に湿度が低い時には前記気孔内に保存されていた湿気を放出して室内湿度を高める機能をする。また、前記γ−アルミナは常用γ−アルミナを使ってもよいが、費用節減及び效率性の側面において、具体的には低価のアルミニウムソースを熱処理によって相転移させたγ−アルミナを使ってもよい。
【0048】
前記γ−アルミナは、窒化アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム二水和物、水酸化アルミニウム、アルミニウムクロリド、アルミニウムニトリド、アルミナゾル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つのアルミニウムソースが相転移された物質を含んでもよい。ただし、前記アルミナソースが例示したものに限定されるものではなく、熱処理によってγ−アルミナに相転移される全てのアルミニウムソースがこれに含まれてもよい。
【0049】
例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)がγ−アルミナ(Al23)に相転移する場合、水酸化アルミニウムのγ−アルミナ転換率は約0.6ないし約0.7であってもよい。
【0050】
また、前記γ−アルミナは比表面積が約150m2/gないし約350m2/gであってもよい。前記γ−アルミナの比表面積が約150m2/g未満の場合、十分な調湿機能を示すことができず、約350m2/gを超過する場合、製造工程の難しさをもたらすことがあり、製造費用を上昇させる恐れがある。
【0051】
前記多孔性セラミックタイルは、前記γ−アルミナを約20ないし約50重量%含んでもよい。前記γ−アルミナが前記範囲の含量で含まれることで前記多孔性セラミックタイルが適切な孔隙特性を確保することができるし、前記コーティング組成物の付着性及び分散性をもっと向上させることができる。ひいては、前記多孔性セラミックタイルが優れた調湿機能及び強度を確保することができる。前記γ−アルミナが約20重量%未満の場合は吸放湿度が低下されることができ、約50重量%を超過する場合にはタイルの強度が低下される恐れがある。
【0052】
前記可視光活性光触媒タイルは、前記多孔性セラミックタイル及びこの一面に前記コーティング組成物から形成された光触媒層を含むことで、空気清浄機能、抗菌機能及び調湿機能を確保することができる。また、適する強度を確保して室内装飾材として耐久性を確保することができる。
【0053】
具体的に、前記可視光活性光触媒タイルの吸放湿量は約60g/m2ないし約100g/m2であってもよい。前記タイルが前記範囲の吸放湿量を示すことで快適な室内環境を形成することができる。具体的に、前記吸放湿量を通じて前記可視光活性光触媒タイルは、温度約25℃、相対湿度約50%ないし約75%の中湿領域を形成することができ、湿気による不快指数を最小化して、カビ及び細菌発生を抑制することができる。
【0054】
また、前記可視光活性光触媒タイルは、曲げ強度が約10MPaないし20MPaであってもよい。前記「曲げ強度」は曲げ試験で破壊時の最大引張応力を称するもので、前記可視光活性光触媒タイルに曲げ圧力を与えたときに破壊される時点での最大引張応力を示す。前記曲げ強度が前記範囲を満たすことで、前記可視光活性光触媒タイルは優れた強度を確保し、室内装飾材として優れた耐久性を実現することができる。
【0055】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載した実施例は、本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0056】
<製造例>
製造例1:多孔性セラミックタイルの製造
水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を固形分基準20重量%を含む組成物を準備してボールミルを通じて粉砕し、これによって得られたスラリーを噴霧乾燥工程を通じて均一に混合することで、γ−アルミナ30重量%を含む顆粒粉末を製造した。次いで、前記顆粒粉末を乾式プレス成形して、平均粒子直径が10nmの気孔を0.1cm3/gの気孔体積で含む150mm・150mm・7mm(横・縦・厚さ)大きさの多孔性セラミックタイルを製造した。
【0057】
製造例2:可視光活性触媒粒子の製造
酸化タングステン(WO3)粉末を水に分散させた後、その溶液に酸化タングステン(WO3)100重量部対比0.2重量部の塩化白金酸(H2PtCl6)を添加してPt/WO3スラリーを製造した。前記スラリーを撹拌しながらUVランプ(20W)のUVを30分くらい照射して白金(Pt)粒子を前記酸化タングステン(WO3)粒子内にドーピングした。その後、前記白金(Pt)粒子がドーピングされた酸化タングステン(WO3)粒子が含まれたスラリーに10重量%にあたるメタノール溶液を添加し、前記スラリーを撹拌しながらUVランプ(20W)のUVを30分くらい照射して白金(Pt)粒子が酸化タングステン(WO3)に担持された可視光活性光触媒粒子を製造した。
【0058】
<実施例及び比較例>
実施例1
前記製造例2の可視光活性光触媒粒子5重量%及び水95重量%を含むコーティング組成物を製造した。次いで、前記製造例1の多孔性セラミックタイルの一面に前記コーティング組成物を塗布し、乾燥して光触媒層を形成することで可視光活性光触媒タイルを製造した。
【0059】
比較例1
前記コーティング組成物を前記製造例1の多孔性セラミックタイルの代りに、気孔体積が0.01cm3/g未満で、150mm・150mm・7mm(横・縦・厚さ)大きさを持つタイルの一面に塗布し、乾燥して光触媒層を形成したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で可視光活性光触媒タイルを製造した。
【0060】
比較例2
前記製造例2の可視光活性光触媒粒子5重量%、イソプロピルアルコール(IPA)90重量%、及びTiO2ゾルバインダー5重量%を含むコーティング組成物を製造したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で可視光活性光触媒タイルを製造した。
【0061】
比較例3
前記製造例2の可視光活性光触媒粒子5重量%、イソプロピルアルコール(IPA)90重量%、及びTiO2ゾルバインダー5重量%を含むコーティング組成物を製造した。次いで、これを気孔体積が0.01cm3/g未満で、150mm・150mm・7mm(横・縦・厚さ)の大きさを有するタイルの一面に塗布し、乾燥して光触媒層を製造することで可視光活性光触媒タイルを製造した。
【0062】
<評価>
実験例1:トルエン除去率の測定
前記実施例及び比較例の可視光活性光触媒タイルに対し、これを20L体積の小型チャンバ(ADTEC社)内に設けた後、前記チャンバに0.2ppm濃度のトルエンを含む空気を167cc/minの流量で持続的に流し、換気回数が0.13回/hrになるようにした。光源としてはLED20Wモジュールを使用した。トルエン除去率は、チャンバに入る前のトルエン濃度(以下、第1濃度)とチャンバを通過した後の空気中のトルエン濃度(以下、第2濃度)を測定し、下記一般式1に従って計算した。濃度は、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)カートリッジを利用して10Lの体積に対する量を濃縮し、HPLC(Agilent社)を通じて分析した。結果は、下記表1に記載したとおりである。
【0063】
[一般式1]
トルエン除去率(%)={(第1濃度−第2濃度)/第1濃度}×100
【表1】
【0064】
前記表1を参考すれば、実施例1は水系溶媒及び可視光活性光触媒粒子を含むコーティング組成物に形成された光触媒層を含むタイルに関するものであって、水系溶媒の代りにアルコール系溶媒及びバインダーを使ったコーティング組成物に関する比較例2に比べて顕著に優れたトルエン除去性能を示すことが分かった。
【0065】
また、前記実施例1のコーティング組成物は、多孔性セラミックタイルの一面に塗布されることで、優れた付着性を確保し、光触媒性能を極大化できるものであって、比較例1のように、孔隙特性がないタイルの一面にはあまり附着されずに適用自体が難しいことが分かり、前記比較例3のようにアルコール系溶媒及びバインダーを使ったコーティング組成物は、孔隙特性がないタイルに附着されるものの、実施例1に比べて顕著に低いトルエン除去性能を示すことが分かった。