特許第6457078号(P6457078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6457078補強テープ、及びこれを用いたフレキシブルフラットケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457078
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】補強テープ、及びこれを用いたフレキシブルフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20190110BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20190110BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190110BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20190110BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20190110BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20190110BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20190110BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   H01B7/08
   H01B7/00 306
   B32B27/00 M
   C09J7/20
   C09J167/00
   C09D5/00 D
   C09D167/00
   C09D175/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-519205(P2017-519205)
(86)(22)【出願日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2016064455
(87)【国際公開番号】WO2016186073
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-102784(P2015-102784)
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】田 口 博 史
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−222919(JP,A)
【文献】 特開平11−007838(JP,A)
【文献】 特開昭62−167383(JP,A)
【文献】 特開2010−61885(JP,A)
【文献】 実開昭61−23128(JP,U)
【文献】 特開平10−269856(JP,A)
【文献】 特開2014−222577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
B32B 27/00
B32B 27/36
C09D 5/00
C09D 167/00
C09D 175/04
C09J 7/20
C09J 167/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルフラットケーブルの導体末端補強用補強テープであって、
絶縁フィルム(A)の片面の上に、
厚み5〜50μmのアンカーコートの層(B)、及び
厚み10〜30μmのホットメルト接着剤の層(C)をこの順に有する、補強テープ。
【請求項2】
前記アンカーコート層(B)の厚みが10〜50μm(但し、10μmを除く)である、請求項1に記載の補強テープ。
【請求項3】
前記アンカーコートの層(B)が、
(b1)熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂 100質量部;と
(b2)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物 3〜25質量部;
を含む塗料からなる、請求項1又は2に記載の補強テープ。
【請求項4】
前記成分(b2)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物の配合量が10〜25質量部(但し、10質量部を除く)である、請求項3に記載の補強テープ。
【請求項5】
前記成分(b1)熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂が非結晶性である、請求項3又は4に記載の補強テープ。
【請求項6】
前記ホットメルト接着剤が、熱可塑性飽和共重合ポリエステル系の接着剤である、請求項1〜5の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項7】
軟化温度が95℃以上である、請求項1〜の何れか1項に記載の補強テープ。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載の補強テープにより導体末端が補強されたフレキシブルフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブルの補強テープに関する。更に詳しくは、導体との接着性に優れ、導体端末に金メッキなどの処理を行う際に、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止することのできる補強テープに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブルは、配列させた複数の導体を、絶縁基材フィルムと接着性樹脂組成物層とを有する積層体などにより挟持し、被覆した構造を有する。上記導体の端末は、ケーブルを電子機器にコネクター接続できるようにするため、しばしば補強テープが貼合され補強されている。また上記導体の端末は、ケーブルの性能を向上させるため、補強テープが貼合された後、しばしば金メッキなどが施される。
【0003】
従来から、上記補強テープとしては、厚肉の絶縁フィルムの片面にホットメルト接着剤層を設けたもの、典型的には厚み150〜250μm程度の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にポリエステル系ホットメルト接着剤層を設けたものが使用されている。ところが従来の補強テープには、導体接着力が経時的に低下する、及び耐湿熱性が低いという問題があった。そこでこれらの問題を解決する技術として、ホットメルト接着剤として改質されたポリエステル系ホットメルト接着剤層を用いることが提案されている(例えば、特許文献1及び2)。しかし、これらのホットメルト接着剤を補強テープに適用しても、導体端末に金メッキなどの処理を行う際に、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−371258号公報
【特許文献2】特開2005−255752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、導体との接着性に優れ、導体端末に金メッキなどの処理を行う際に、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止することのできる補強テープ、及びこれを用いたフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、驚くべきことに、厚肉の絶縁フィルムとホットメルト接着剤層との間に、厚肉のアンカーコート層を設けることにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、フレキシブルフラットケーブル用補強テープであって、絶縁フィルム(A)の片面の上に、厚み5〜50μmのアンカーコートの層(B)、及び厚み10〜30μmのホットメルト接着剤の層(C)をこの順に有する補強テープである。
【0008】
第2の発明は、前記アンカーコートの層(B)が、(b1)熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂 100質量部;と(b2)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物 3〜25質量部;を含む塗料からなる第1の発明に記載の補強テープである。
【0009】
第3の発明は、前記ホットメルト接着剤が、熱可塑性飽和共重合ポリエステル系の接着剤である第1の発明又は第2の発明に記載の補強テープである。
【0010】
第4の発明は、軟化温度が95℃以上である第1〜3の発明の何れか1に記載の補強テープである。
【0011】
第5の発明は、第1〜4の発明の何れか1に記載の補強テープを含むフレキシブルフラットケーブルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の補強テープは、導体との接着性に優れ、導体端末に金メッキなどの処理を行う際に、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止することができる。そのため本発明の補強テープは、フレキシブルフラットケーブルの導体端末の補強に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フレキシブルフラットケーブルの導体端末に補強テープを貼合した状態の一例を示す部分斜視図である。
図2】軟化温度の測定例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフレキシブルフラットケーブル用補強テープは、絶縁フィルム(A)の片面の上に、厚み5〜50μmのアンカーコートの層(B)、及び厚み10〜30μmのホットメルト接着剤の層(C)をこの順に有する。
【0015】
(A)絶縁フィルム:
上記絶縁フィルムは、本発明の補強テープに剛性と強度を付与し、フレキシブルフラットケーブルの導体端末を電子機器にコネクター接続できるようにする働きをする。
【0016】
上記絶縁フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;及び、ポリスチレン系樹脂;などの樹脂の1種以上からなるフィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。これらの中で、剛性、強度、及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の二軸延伸フィルム、及びこれを2層以上積層した積層フィルムが好ましい。
【0017】
上記絶縁フィルムの厚みは、特に制限されないが、剛性と強度を付与する観点から、通常100μm以上、好ましくは125μm以上であってよい。加工性の観点から、通常500μm以下、好ましくは250μm以下であってよい。
【0018】
上記絶縁フィルムは、着色剤を含む樹脂からなる着色層を含むものであってよい。上記絶縁フィルムは、これを構成するフィルムの何れか1以上の面の上に、印刷を施されたものであってよい。
【0019】
(B)アンカーコートの層:
上記層(B)は、上記絶縁フィルムと上記ホットメルト接着剤の層との接着強度を向上させるとともに、導体接着性を高める働きをする。
【0020】
上記アンカーコートの層を形成するための塗料としては、特に制限されないが、好ましくは、(b1)熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂 100質量部;と(b2)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物 3〜25質量部;を含む塗料をあげることができる。
【0021】
上記成分(b1)は、アンカーコート形成用塗料のベース材となる樹脂である。上記成分(b1)としては、例えば、任意の多価カルボン酸と任意の多価オールを用い、公知の方法で得られた熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂を用いることができる。
【0022】
上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4、4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニル−3、3’−ジカルボン酸、ジフェニル−4、4’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸などの脂肪族多価カルボン酸;及びこれらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。上記カルボン酸としてはこれらの1種以上を用いることができる。
【0023】
上記多価オールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4'−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族多価アルコール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族多価オール;及びこれらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。上記多価オールとしてはこれらの1種以上を用いることができる。
【0024】
上記成分(b1)の数平均分子量は、導体接着性、及びフレキシブルフラットケーブル用難燃絶縁フィルムとの接着性の観点から、10,000〜35,000であることが好ましく、15,000〜30,000であることがより好ましい。
【0025】
上記成分(b1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)の測定した値である。
GPCの測定は、システムとして、日本分光株式会社の高速液体クロマトグラフィシステム「LC−2000Plus(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ「PU−2080(商品名)」、オートサンプラー「AS−2055(商品名)」、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;カラムとして、昭和電工株式会社のスチレンジビニルベンゼン共重合体充填カラム「Shodex GPC K-806L(商品名)」2本を連結して用い;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用クロロホルム(安定剤としてエタノールを含む。)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、試料注入量100マイクロリットルの条件で行う。
【0026】
各保持容量における溶出量は、上記成分(b1)の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求める。
【0027】
また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS−1(商品名)」(Plain Aの分子量6870000、841700、152800、28770、2930;Plain Bの分子量2348000、327300、74800、10110、580)を使用して作成する。
【0028】
解析プログラムは、日本分光株式会社の「ChromNAV GPC(商品名)」を使用する。
【0029】
なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」などの参考書を参照することができる。
【0030】
上記成分(b1)は、結晶性であってもよく、非結晶性であってもよい。上記成分(b1)は、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止する観点から、非結晶性であってよい。
【0031】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を50℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、20℃/分の降温速度で50℃まで冷却し、50℃で10分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えるポリエステルを結晶性と定義した。
【0032】
上記成分(b2)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有し、アンカーコートの層に弾性体としての性質を付与し、本発明の補強テープの導体接着性を向上させる働きをする。
【0033】
上記成分(b2)としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記成分(b2)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記成分(b2)の配合量は、導体接着性の観点から、上記成分(b1)100質量部に対して、好ましくは3〜25質量部、より好ましくは10〜23質量部、更に好ましくは14〜20質量部である。
【0035】
上記アンカーコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は上記成分(b1)、上記成分(b2)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。
【0036】
上記アンカーコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0037】
上記アンカーコート形成用塗料は、これらの成分を混合攪拌することにより得ることができる。
【0038】
上記アンカーコート形成用塗料を用いて上記層(B)を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0039】
上記アンカーコートの層(B)の厚みは、導体接着性の観点から、5〜50μm、好ましくは10〜40μm、より好ましくは15〜30μmである。
【0040】
(C)ホットメルト接着剤の層:
上記層(C)は、導体接着性を直接的に担保する働きをする。
【0041】
上記ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリスチレン系、及びポリオレフィン系の接着剤をあげることができる。これらの中で、ポリエステル系接着剤が好ましく、熱可塑性飽和共重合ポリエステル系接着剤がより好ましく、結晶性の熱可塑性飽和共重合ポリエステル系接着剤であって、融点が100〜150℃のものが更に好ましい。
【0042】
本明細書において、融点は、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を50℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、20℃/分の降温速度で50℃まで冷却し、50℃で10分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃まで加熱するという温度プログラムにおけるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される曲線)に現れる最も高い温度側のピークのピークトップ温度である。またセカンド融解曲線の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えるポリエステルを結晶性と定義した。
【0043】
上記ホットメルト接着剤の層を形成する方法は、特に制限されない。例えば、押出機、Tダイ、及び引巻取機を備えた装置を使用し、溶融押出する方法;ホットメルト接着剤を溶剤、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどに溶解し、公知のウェブ塗布方法、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどにより、所望のウェブ基材の上に塗膜として形成する方法;などをあげることができる。
【0044】
上記ホットメルト接着剤の層の厚みは、導体接着性の観点から、10〜30μm、好ましくは15〜20μmである。
【0045】
本発明の補強テープは、導体接着性の観点から、軟化温度が好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上である。
【0046】
本明細書において、上記軟化温度は、熱機械測定装置を用い、補強テープの上記層(C)の側から圧子を侵入させたときの温度−侵入深さ曲線において、侵入深さ変化率の絶対値が最大となる温度である。圧子として株式会社リガクのペネトレーション用円錐ピン(PN/P1X07R)を用いたこと以外はJIS K7196−1991に準拠し、株式会社リガクの熱機械測定装置「TMA8310(商品名)」を使用し、直径5mmの円形に裁断されたサンプル、荷重491mN、及び温度30℃から150℃まで昇温速度20℃/分で昇温する条件で得られた温度−侵入深さ曲線を、温度で微分して算出した曲線のピークトップ温度として求めた。測定例を図2に示す。
【0047】
理論に拘束される意図はないが、本発明の構成とすることにより、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止することができるのは、成形加工時に厚肉のアンカーコートがクッションとなり、ホットメルト接着剤が、導体の周囲から流出しないようになるためと考えられる。
【0048】
本発明のフレキシブルフラットケーブルを得る方法は、特に制限されず、公知の方法で得ることができる。上記方法としては、例えば、以下のような方法をあげることができる。絶縁フィルムの片面に難燃性ホットメルト接着剤の層を設けた公知のフレキシブルフラットケーブル用難燃絶縁フィルムを2ロール用い、公知のフレキシブルフラットケーブル製造装置を使用し、上記難燃絶縁フィルムを上記ホットメルト接着剤の層が対向するように送り出し、その間に平行に引き揃えた導電体の平角線を挟み込み、上記装置の熱プレスロールで熱プレスして上記ホットメルト接着剤の層同士を互いに融着させる。上記難燃絶縁フィルムには、導電体の平角線を挟み込む前に、孔を打抜くとともに、孔を打抜いた所に上記絶縁フィルムの層の側から、本発明の補強テープを貼着する。次に、両側端をスリットして所定の仕上げ幅とし、孔と本発明の補強テープの部分で切断して、本発明のフレキシブルフラットケーブルとして完成することができる。図1は、フレキシブルフラットケーブルの一例を示す部分斜視図である。
【0049】
上記導電体の平角線としては、特に制限されないが、ケーブルの摺動性の観点から、厚さ12〜50μm、幅0.2〜2mmの軟銅線、硬銅線、及びこれらの錫メッキ線やニッケルメッキ線であってよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
測定方法
(イ)導体接着力1(未処理):
(イ−1)フレキシブルフラットケーブルの製造:
フレキシブルフラットケーブル装置を使用し、リケンテクノス株式会社のフレキシブルフラットケーブル用難燃絶縁フィルム「NC5224(商品名)」を2ロール用い、導体幅1.4mm、厚み0.035mmの硬銅線を12本配列させたものを、一方の上記難燃絶縁フィルムのホットメルト接着剤層と他方の上記難燃絶縁フィルムのホットメルト接着剤層とで挟持し、温度180℃に予熱された押圧ロールと温度180℃に予熱された受けロールとで、ライン速度0.5m/分、圧力3MPaの条件で押圧し、融着させた後、両側端をスリットして幅24mmの仕上げ幅とし、孔と補強テープの部分におけるマシン方向の中央の線において切断して、長さ100mm、幅24mmのフレキシブルフラットケーブルを得た。その際に、上記難燃絶縁フィルムには、マシン方向20mm×横方向24mmの孔を、マシン方向に100mm間隔で打抜き、そこに長さ150mmに裁断した補強テープを、絶縁フィルムの層の側から貼着した。
(イ−2)
上記で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープと銅線との接着力を、試験速度50mm/分の条件で、銅線を補強テープから180度剥離を行い測定した。
【0052】
(ロ)導体接着力2(酸浸漬後の導体接着力):
上記(イ−1)で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープ部分を、5質量%塩酸水溶液に温度60℃で2時間浸漬後、上記(イ−2)と同様にして測定した。
【0053】
(ハ)導体接着力3(アルカリ浸漬後の導体接着力):
上記(イ−1)で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープ部分を、5質量%水酸化ナトリウム水溶液に温度60℃で2時間浸漬後、上記(イ−2)と同様にして測定した。
【0054】
(ニ)導体接着力4(塩水に浸漬後の導体接着力):
上記(イ−1)で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープ部分を、5質量%塩化ナトリウム水溶液に温度60℃で2時間浸漬後、上記(イ−2)と同様にして測定した。
【0055】
(ホ)導体接着力5(金メッキ処理液浸漬後の導体接着力):
上記(イ−1)で得たフレキシブルフラットケーブルの補強テープ部分を、フレキシブルフラットケーブルの端末金メッキ用の金メッキ処理液(シアン化金カリウム、シアン化カリウム、リン酸水素カリウム、及び炭酸カリウムの混合水溶液。pH11。)に温度60℃で2時間浸漬後、上記(イ−2)と同様にして測定した。
【0056】
(ヘ)導体接着力6(金メッキ処理液浸漬後の導体接着力2):
上記(ホ)と全て同様にして金メッキ処理液浸漬後の導体接着力を、100本のケーブルについて、各2本の銅線について測定(合計データ数200個)し、接着力が1.5N/14mm以下のデータ数を数え、以下の基準で評価した。
◎:0個
○:1〜4個
△:5〜10個
×:11個以上
【0057】
使用した原材料
(A)絶縁フィルム:
(A−1)厚み188μmの片面易接着処理二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
【0058】
(B)アンカーコート用塗料:
(B−1)下記(b1)100質量部、下記(b2)17質量部、下記(b3)33質量部、及び下記(b4)230質量部を混合攪拌して得た塗料。
(B−2)下記(b1)100質量部、下記(b2)12質量部、下記(b3)33質量部、及び下記(b4)230質量部を混合攪拌して得た塗料。
【0059】
(b1)東洋紡株式会社の非結晶性の熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂「バイロン500(商品名)」、分子量23000、ガラス転移温度 4℃。
(b2)東ソー株式会社のポリイソシアヌレート「コロネートHX(商品名)」。
(b3)大日精化工業株式会社のインキ「NB500 739藍(商品名)」。
(b4)トルエン。
【0060】
(C)ホットメルト接着剤:
(C−1)東亜合成株式会社の結晶性の熱可塑性飽和共重合ポリエステル系樹脂「アロンメルトPES−111EE(商品名)」。
【0061】
(D)セパレーターフィルム:
(D−1)厚み12μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【0062】
例1
上記(A−1)の易接着面の上に、ロールコーターを使用し、上記(B−1)を用い、乾燥後厚みが15μmとなるようにアンカーコートの層を形成した。上記(C−1)を、下記(D−1)の上に、押出ラミネートして厚み15μmのフィルム状ホットメルト接着剤を得た。上記で得た上記(A−1)と上記(B−1)との積層体の上記(B−1)側の面の上に、上記で得た上記(C−1)と上記(D−1)との積層体の上記(C−1)側の面を重ねて熱ラミネートした。こうして得られた積層体を幅25mmにスリットし、補強テープを得た。上記試験(イ)〜(ホ)を行った。結果を表1に示す。
【0063】
例2〜4、例1C、2C
上記(B)層の厚み、及び上記(C)層の厚みを表1に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0064】
例5
上記(B−1)の替わりに、上記(B−2)を用いたこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
本発明の補強テープは、導体との接着力が良好であり、導体端末に金メッキなどの処理を行う際に、補強テープが導体から剥離するなどのトラブルを抑止するができる。
【符号の説明】
【0067】
1:フレキシブルフラットケーブル
2:補強テープ
3:導体端末
図1
図2