特許第6457181号(P6457181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6457181-電子機器の処理方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457181
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】電子機器の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/08 20060101AFI20190110BHJP
   B02C 13/04 20060101ALI20190110BHJP
   B02C 13/13 20060101ALI20190110BHJP
   B02C 13/28 20060101ALI20190110BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20190110BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   B02C23/08 AZAB
   B02C13/04
   B02C13/13
   B02C13/28 A
   B09B3/00 Z
   B09B5/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-26931(P2014-26931)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-150509(P2015-150509A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮栄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寿
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−326061(JP,A)
【文献】 米国特許第06070819(US,A)
【文献】 特開2003−010706(JP,A)
【文献】 特開2002−153856(JP,A)
【文献】 特開2002−273249(JP,A)
【文献】 特開2014−205123(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/131906(WO,A1)
【文献】 社団法人日本建設機械化協会編,骨材の採取と生産,技報堂出版株式会社,1975年 1月30日,第289頁
【文献】 8.家電リサイクルにおける粉砕の現状と課題,粉砕技術とエコ・リサイクル,(有)エヌジーティー,2010年 4月28日,p.318−325
【文献】 窯業原料鉱物の選鉱法(1),窯業協會誌,公益社団法人日本セラミックス協会,1963年,71巻813号,p.C477−C484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 23/08
B02C 13/00−13/31
B09B 3/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理方法であって、
前記処理室内に前記電子機器を投入する投入工程と、
投入された前記電子機器を、前記処理室内に配する回転体の回転によって該回転体の円周の接線方向へ弾き飛ばして衝突部に衝突させる際の衝撃により、前記電子機器における電子部品の連結箇所を破壊し前記電子機器から該電子部品を分離させる分離工程と、
を有し、
前記投入工程では、前記回転体の上半分における回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに前記回転体の下方に落下する広さの隙間を設けてお
前記分離工程後に得られる前記電子部品である配線基板であって素子が搭載されたままの配線基板を回転型衝撃破砕機に投入する工程は含まない、電子機器の処理方法。
【請求項2】
前記回転体の回転速度を15m/s以上30m/s以下とする、請求項に記載の電子機器の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の処理方法およびその装置に関し、詳しくは、廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、我々の身の回りには数多くの電気電子機器が存在する。この電気電子機器としては、例えば、家庭用電子機器、工業用電子機器、自動車搭載品など多岐に亘る。以降、これらをまとめて「電子機器」と言う。
【0003】
その一方、現在、資源確保の観点から、廃棄物となった電子機器を構成する部品(例えば電子基板と称される配線基板など)を電子機器から回収することが求められている。ただ、電子機器を構成する部品を電子機器から回収するのには、経済的な面で、改善すべき多くの点が存在する。
【0004】
例えば、電子機器から配線基板(以降、単に「基板」とも言う)を回収する場合を例に挙げる。
経済的な面から検討すると、まず、電子機器に搭載されている基板は小型のものが多い。それに加え、近年、電子機器の小型化に対する要請が強い。そのため、電子機器から基板を回収する作業は手作業で行わざるを得ず、手作業で行うにしても、作業には熟練を要する。その結果、電子機器から基板を回収するのに要する費用は自ずと多くなってしまう。電子機器から基板を回収する作業を手作業で行っている技術としては、例えば特許文献1に示す技術が知られている(特に[0027])。
【0005】
経済的な面の問題を解決する一つの手法としては、手作業を行わない方法が挙げられる。この方法を具体化した技術としては、特許文献2〜5に記載の技術が知られている。
特許文献2には、使用済み家電製品を破砕した上で、磁力、風力、重量の違いなどを利用して、最終的に、使用済み家電製品を素材ごとに分別する技術が記載されている(例えば特許文献2の要約)。
特許文献3には、以下の技術が記載されている。すなわち、金属類廃棄物の金属塊をまずは分別する(特許文献3の[0020])。その上で、この金属塊に対して回転体を接触させ、まずは、回転体と床である衝突ライナーとの間(特許文献3の図4で言うところの回転体の右部および下部)に金属塊を巻き込ませ、打撃力、摩擦力および捻り力を加える(特許文献3の図4、[0048]および[0049])。次に、特許文献3の図4で言うところの回転体の左部において、回転体の下部から抜け出た金属塊を、回転体の回転により上に弾き飛ばし、破砕室内の壁であるライナーに金属塊を衝突させ、破砕や整粒が行われる(特許文献3の図4および[0066])。
【0006】
一方、特許文献4に記載の技術は電子部品を搭載したプリント配線基板から搭載部品を分離する技術であるが、特許文献4には、特許文献2〜3と同様、電子部品を搭載したプリント配線基板を数cm角〜10cm角の大きさに破砕し、プリント配線基板から搭載部品を分離する技術が記載されている。
また、特許文献5に記載の技術は小型家電製品からプリント配線板などの実装基板を回収する技術であるが、特許文献5には、特許文献2〜3と同様、家電製品を破砕したあとに篩などで最終的に、破砕後の実装基板を回収する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−319760号公報
【特許文献2】特開2003−112156号公報
【特許文献3】特開2004−267820号公報
【特許文献4】特開2003−10706号公報
【特許文献5】特開2013−685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2〜5に記載の技術は、確かに、手作業を行わずに対象物の処理を行うことが可能であり、経済的な問題は解決される。
その一方、特許文献2においては、電子機器を構成する電子部品(例えば基板)は、その他の電子部品とともに破砕され、粉々の破砕物として混合された状態となっている。
特許文献3においても、金属類廃棄物の金属塊を投入後、まず、回転体の下部に金属塊を巻き込む作業を行う。その結果、金属塊を構成するものは皆、細かく砕かれた破砕物として混合された状態となってしまう。このことは特許文献4〜5についても同様である。
【0009】
まとめると、特許文献2〜5に記載の技術は、手作業を行わずに対象物を処理することが可能であるため、経済的な面は解決できる。しかしながら今度は、回収対象となるもの(例えば電子機器を構成する電子部品)を、電子部品のまま回収することが不可能になるという技術的な課題が生じる。また、細かく砕かれた破砕物として混合された状態から、所定の電子部品の素材を100%回収することは技術的に困難である。
その結果、特許文献2〜5に記載の技術が存在するにしても、結局のところ、特許文献1に記載のように電子部品の分離は手作業により行わざるを得なかった。
【0010】
本発明は、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収する際に、手作業のみに依存することなく、かつ、電子機器を構成する電子部品の破砕を抑制しつつ、電子部品そのものとして電子部品を回収する技術を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。
まず、経済的な課題を解決するためには、手作業のみに依存することなく、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収する必要がある。ただ、従来だと、電子機器を細かく砕き、砕かれた破砕物から電子部品を構成していた素材を分離する手法が常識となっている。
【0012】
本発明者は、電子機器の構造的特徴に立ち返り、更に検討を加えた。そして、電子機器は、数多くの部品同士が固定されることにより構成されていることに、本発明者は着目した。この着目に基づき、本発明者は、従来の常識を覆す手法を想到した。
【0013】
すなわち、電子機器を細かく砕くのではなく、その一歩手前の比較的マイルドな衝撃(例えば歪むに留まる程度の衝撃)を電子機器に与える。そうすると、電子機器および電子部品は歪むに留まる一方、電子機器における部品同士を固定している部位(連結箇所)に大きな荷重がかかり、連結箇所が破壊されることになる。そうなると、電子機器のケーシング内において電子部品同士が分離し、かつ、ケーシング自体も電子機器から外れ、ケーシング内にあった電子部品を電子機器から分離することが可能となる。
【0014】
つまり、電子機器全体に衝撃を与えることにより、電子部品と連結箇所の耐久性の差を利用しつつ、かつ、電子部品の破砕を抑制しつつ、電子機器から電子部品を分離させるという手法を、本発明者は想到した。
そしてこの手法を実現すべく、投入された電子機器を回転体にて弾き飛ばし、当該電子機器を処理装置内の衝突部に衝突させる一方、回転体のせいで電子機器が細かく破砕されることなく、回転体による電子機器の破砕が抑制される構成を設けるという知見を、本発明者は得た。
【0015】
以上の知見に基づいて成された本発明の具体的な態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理方法であって、
前記処理室内に前記電子機器を投入する投入工程と、
投入された前記電子機器を、前記処理室内に配する回転体の回転によって弾き飛ばして衝突部に衝突させる際の衝撃により、前記電子機器から電子部品を分離させる分離工程と、
を有し、
前記投入工程では、前記回転体の回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間を設けておく、電子機器の処理方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記電子機器から分離される前記電子部品は配線基板である。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の発明において、
前記回転体の回転速度を15m/s以上30m/s以下とする。
本発明の第4の態様は、
廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理装置であって、
前記処理室と、
前記電子機器を前記処理室内に投入する投入部と、
前記処理室内に配する回転体であって、前記投入部から投入される前記電子機器を当該回転体と接触させる際に、当該回転体の回転により前記電子機器を弾き飛ばすことが可能な構成であってロータの周面から突出した突出部を有する回転体と、
前記回転体により弾き飛ばされた前記電子機器の衝突先となる部分であって、衝突の際の衝撃により前記電子機器から電子部品を分離させることが可能な構成を有する衝突部と、
を備え、
前記投入部を、前記回転体の回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入可能な位置に配し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間を設けた、電子機器の処理装置である。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の発明において、
前記衝突部は、衝突面を有する衝突用部材と、当該衝突用部材と前記処理室とを連結する連結部材とを備え、
前記衝突用部材における衝突面は、前記処理室の内壁から離間して設けられている。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、
前記衝突面は前記回転体に向かって凹んだ湾曲形状を有しており、この湾曲形状の前記投入部から離れる側への延長線上には前記回転体が存在する。
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様に記載の発明において、
前記衝突部は、前記衝突用部材の前記回転体に対する角度を調節可能な構成を有する。
本発明の第8の態様は、第4ないし第7のいずれかの態様に記載の発明において、
前記衝突部は、前記回転体の回転方向に並んで複数設けられている。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の発明において、
前記回転体の回転中心から見て、複数設けられた前記衝突部のうち各衝突部の端部同士が重なるように前記衝突部は配されている。
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様に記載の発明において、
複数設けられた前記衝突部のうち各衝突部と前記回転体との間の隙間が、回転方向に進むに従って狭くなるような位置に前記衝突部は配されている。
本発明の第11の態様は、第4ないし第10のいずれかの態様に記載の発明において、
前記突出部は、さらに、前記回転体の回転方向に向かって突出した構成を有している。
本発明の第12の態様は、第4ないし第11のいずれかの態様に記載の発明において、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が、前記回転体と前記処理室との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間が、前記回転体における上半分の部分の中でも前記回転体の回転方向の終点側の部分と前記処理室との間に設けられている。
本発明の第13の態様は、第4ないし第12のいずれかの態様に記載の発明において、
前記回転体の下方には処理された電子機器および分離された電子部品を溜める貯留部または開口状態の排出口が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収する際に、手作業のみに依存することなく、かつ、電子機器を構成する電子部品の破砕を抑制しつつ、電子部品そのものとして電子部品を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における電子機器の処理装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、次の順序で説明を行う。
1.電子機器の処理装置
1−A)処理室
1−B)投入部
1−C)回転体
1−C−a)ロータ
1−C−b)突出部
1−D)衝突部
1−D−a)連結部材
1−D−b)衝突用部材
1−E)貯留部または排出部
2.電子機器の処理方法
2−A)投入工程
2−B)分離工程
3.実施の形態による効果
なお、以下に記載が無い構成については、公知の構成を一部採用しても構わない。また、本実施形態においては、天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方として説明する。
【0019】
<1.電子機器の処理装置>
まず、本実施形態における電子機器の処理装置は、電子機器から電子部品を分離させるためのものである。当該処理装置の基本的構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における電子機器の処理装置1の概要を示す図である。
本実施形態における電子機器の処理装置1は、以下の構成を備えている。
・廃棄物となった電子機器を処理する処理室2
・処理室2内に電子機器を投入する投入部3
・処理室2内に配され、投入部3から投入される電子機器を弾き飛ばす回転体4
・回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる衝突部5
以下、各構成について詳述する。なお、本実施形態においては、電子部品が配線基板の場合を例に挙げる。
【0020】
1−A)処理室2
本実施形態における処理室2は、廃棄物となった電子機器を処理する部分のことを指す。この処理室2内に、回転体4および衝突部5が設けられる。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器の処理に用いられている処理室2の構成を採用しても構わない。
【0021】
1−B)投入部3
本実施形態における投入部3は、廃棄物となった電子機器を処理室2内に供給するための部分であり、供給部と呼んでも差し支えない。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器を処理室2内に供給するために設けられた構成を採用しても構わない。本実施形態においては、図1に示すように、電子機器が処理室2内に滑り落ちるような傾斜を設けた投入口を投入部3とした例を挙げる。もちろん、コンベア等により電子機器を処理室2に投入したり、落下させることにより電子機器を処理室2に投入したりする構成を設けても構わない。
【0022】
なお、本実施形態における投入部3は、回転体4における上半分の部分の中でも回転体4の回転方向の始点側(以降、単に「上流側」とも言う。)の部分に向けて電子機器を投入可能な位置に配されている。投入部3から電子機器が処理室2内に投入されることにより、電子機器は、回転している回転体4と衝突する。そして、電子機器は、衝突部5へと弾き飛ばされる。そして、衝突部5と衝突した電子機器は、再び回転体4の上部へと落ちて回転体4と衝突し、再度、衝突部5へと弾き飛ばされる。その際、回転体4の回転方向の「始点側(上流側)」の部分へと電子機器を投入していると、長時間にわたり、かつ、多くの回数、回転体4の上方で電子機器を弾き飛ばし続けることができる。逆に言うと、回転体4における上半分の部分の中でも回転方向の「終点側(以降、単に「下流側」とも言う。)」の部分へと電子機器を投入してしまうと、電子機器を衝突部5に十分に弾き飛ばせないうちに電子機器が回転体4の下方へと落ちてしまい、電子機器に対する処理が終了してしまう。
なお、本明細書における「回転体4の回転方向の「始点側(すなわち上流側)」」とは、回転体4において最も左方にある部分から最も上方にある部分に至るまでの部分のことを指すが、好ましくは、回転体4において最も左方にある部分の近傍のことを指す。
【0023】
なお、処理室2で処理された電子機器が誤って投入部3から逆流しないようにするために、投入部3における処理室2の手前の部分に、チェーンカーテン31などの仕切りを設けても構わない。
【0024】
1−C)回転体4
本実施形態における回転体4は、処理室2内に配され、投入部3から投入される電子機器を弾き飛ばすためのものである。当該回転体4は、主に以下の2つの構成を備えている。
・回転体4の基となるロータ41
・ロータ41の周面から突出した突出部42
【0025】
1−C−a)ロータ41
本実施形態におけるロータ41は、回転体4の基となるローラ状のものである。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器の処理に用いられているロータ41の構成を採用しても構わない。本実施形態においては、回転軸を同軸とした複数の円盤を重ね合わせたものをロータ41とする。このロータ41の中心軸となるシャフトが処理室2に固定して設置されている。
【0026】
1−C−b)突出部42
本実施形態における突出部42は、投入部3から投入される電子機器が当該回転体4と接触する際に、当該回転体4の回転により電子機器を弾き飛ばすことが可能な構成であってロータ41の周面から突出した部分のことを指す。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器を処理するロータ41に取り付けられたもの(例えば特許文献3のスイングハンマー)を採用しても構わない。
【0027】
なお、勢いよく電子機器を弾き飛ばすために、図1に示すように、突出部42は、さらに、回転体4の回転方向に向かって突出した構成を有しているのが好ましい。
【0028】
また、突出部42の数は任意のもので構わない。ただ、本実施形態においては、詳しくは1−D)衝突部5の項にて述べるが、配線基板が破砕される一歩手前の比較的マイルドな衝撃(例えば歪むに留まる程度の衝撃)を与えることを目的としている。そのため、複数の円盤から構成されている回転体4において、各々の円盤に、2〜4個の突出部42が設けられているのが好ましい。こうすることにより、電子機器を衝突部5に十分に弾き飛ばすことができ、かつ、電子機器の内部にある配線基板の破砕も抑制することができる。
【0029】
また、ロータ41と突出部42を別部材として準備し、それらを組み付けて回転体4としても構わないし、ロータ41と突出部42とを一体に形成したものを回転体4として用いても構わない。
【0030】
ところで、本実施形態においては、衝突部5に衝突させて電子機器から分離させた配線基板が、回転体4と処理室2との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間Wが、回転体4と処理室2との間に設けられている。これは、背景技術で述べた各従来技術とは大きく異なる点である。先ほども述べたように、本実施形態においては、電子機器の内部にある配線基板が破砕されないようにしつつ、電子機器から配線基板などの電子部品を分離させることを特徴としている。一方、従来技術はいずれも、配線基板を含む電子部品をまとめて破砕後に配線基板を形成していた破砕物を分離するという手法を用いている。この破砕は、例えば特許文献3の図4に示すように、回転体4と処理室2の内壁(衝突ライナー)との間に破砕対象物を巻き込むことにより行われる。本実施形態の処理装置1は、そのような構成とは全く異なり、電子機器から分離させた配線基板が、回転体4と処理室2との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間Wが、回転体4と処理室2との間に設けられている。
【0031】
なお、上記の隙間Wは、例えば、回転体4における上半分の部分の中でも回転体4の回転方向の終点側(下流側)の部分と処理室2との間に設けられている。こうすることにより、後述する衝突部5(衝突用部材52)が複数設けられていた場合、回転方向の最も終点側(下流側)に位置する衝突用部材52(第2衝突用部材522)と回転体4との間をすり抜けた電子部品が、回転体4と処理室2の内壁との間に巻き込まれることなく、回転体4の下方に電子部品を落下させることができる。つまり、配線基板がほとんど破砕されることなく、配線基板を回収することが可能となる。
なお、隙間の場所は、上記の場所以外であっても構わず、例えば、回転体4の中心軸方向に見たときの、回転体4と処理室2との間に隙間を設けても構わない。
【0032】
1−D)衝突部5
本実施形態における衝突部5は、回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる部分であって、衝突の際の衝撃により電子機器から配線基板を分離することが可能な構成を有するものを指す。
【0033】
先に述べたように、回転体4により弾き飛ばされた電子機器が衝突部5に衝突することにより、その一歩手前の比較的マイルドな衝撃(例えば歪むに留まる程度の衝撃)を電子機器に与える。そうすると、電子機器および配線基板は歪むに留まる一方、電子機器における部品同士を固定している部位(連結箇所)に大きな荷重がかかり、連結箇所が破壊されることになる。そうなると、電子機器のケーシング内において電子部品同士が分離し、かつ、ケーシング自体も電子機器から外れ、ケーシング内にあった電子部品(ひいては配線基板)を電子機器から分離することが可能となる。
この手法は、従来のように、配線基板も他の電子部品も全て破砕した上で、その後で、混合された破砕物から、かつて配線基板を構成していた素材を分離する手法とは全く異なる。
なお、この「比較的マイルドな衝撃」は、先ほど述べたように配線基板を破砕しないようにするためのものであるのに加え、配線基板からCPUなどの素子を脱落させないようにするためのものでもある。配線基板の中でも、CPUなどの素子には貴金属が多量に含まれている。そのため、仮に配線基板を破砕せずに回収できたとしても、衝撃が強すぎると、配線基板上から素子が脱落してしまう。そうなると、回収対象である配線基板の価値が大きく下がってしまう。そのような事態を抑制するためにも、電子機器に対して比較的マイルドな衝撃を与える必要がある。それを実現したのが、本実施形態で述べる構成であり、本実施形態で述べる電子機器の処理装置およびその方法である。
【0034】
衝突部5としては、上記の内容を実現できる衝突面を有し、電子機器における部品同士を固定している部位を破壊することが可能な硬度および形状を当該衝突面が有するならば、特に制限は無い。衝突部5の具体例を挙げるとするならば、処理室2の内壁や、処理室2の内壁に対して設けられた連結部材51に取り付けられた衝突用部材52が挙げられる。本実施形態においては、衝突用部材52を用いる例を挙げる。
以下、
・処理室2の内壁に対して設けられる連結部材51
・連結部材51に取り付けられる衝突用部材52
について説明する。
【0035】
1−D−a)連結部材51
本実施形態における連結部材51は、処理室2と衝突用部材52とを連結する機能を有する。この機能を有するものならば、公知の部材を用いても構わない。
【0036】
なお、連結部材51を用いることにより、衝突用部材52は、処理室2の内壁から離間して設けられる。こうすることにより、まず、処理室2内の内壁の損傷や摩耗を低減することが可能となる。
また、処理室2に対して衝突用部材52を着脱可能な構成を採用することが可能となる。つまり、本実施形態の処理装置1を長期間使用したとしても、衝突用部材52さえ交換すれば、損傷や摩耗が少ない状態を維持できる。
【0037】
もちろん、連結部材51と衝突用部材52とが一体となったものを衝突部5としても構わないが、別体の方が、衝突用部材52さえ交換すれば済む事態に対応可能となり、好ましい。
【0038】
さらに、別体だと、衝突用部材52の回転体4に対する角度を調節することが可能な構成を採用できる。この構成を採用することにより、処理対象となる電子機器や回収対象となる電子部品に応じて、衝突用部材52における衝突面の、回転体4に対する角度を調節することが可能となる。
【0039】
当該角度を調節することにより、電子機器に与える衝撃の度合いを調節することができる。例えば、電子機器が弾き飛ばされる軌道を回転体4の円周の接線方向としたとき、衝撃の度合いを強めたいのならば、衝突面を円周の接線方向と正対するように設ければよい。一方、電子機器が比較的低い強度しか有さない場合、衝突による衝撃により電子機器ひいては電子基板が破砕する可能性もある。その場合、衝突面が円周の接線方向と正対しないように衝突用部材52の角度を変更すればよい。
【0040】
また、1−D−b)衝突用部材52の項にて述べるが、衝突面の向きを変更することにより、電子機器が衝突面に衝突した後、回転体4の上部に電子機器が着地しやすくすることも可能となる。そうすると、電子機器が回転体4の上部に滞在する時間を延ばすことも可能となる。別の言い方をすると、電子機器が少ない回数しか衝突面に衝突できず、十分な衝撃が与えられないまま電子機器が回転体4の下部へと落ちてしまう状況を回避できる。
【0041】
1−D−b)衝突用部材52
本実施形態における衝突用部材52は、回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる衝突面を有する部分である。そして、当該衝突用部材52は、衝突の際の衝撃により電子機器から配線基板を分離する機能を有する。この機能を有するものならば、公知の部材を用いても構わない。
【0042】
衝突用部材52の好ましい形態としては、先に1−D−a)連結部材51の項にて述べたが、衝突面を処理室2の内壁から離間して設けることにより、処理室2の内壁の損傷や摩耗を抑制できるという効果がある。
【0043】
また、衝突用部材52の別の好ましい形態としては、図1に示すように、衝突面は回転体4に向かってへこんだ湾曲形状を有しており、湾曲形状の延長線上には回転体4が存在するという構成が挙げられる。
【0044】
まず、衝突面が上記のような湾曲形状を有することにより、回転体4により弾き飛ばされた電子機器は衝突面に衝突した後、湾曲形状をスムーズに伝って落下するようになる。電子機器がスムーズに落下できないと、次から次へと電子機器が弾き飛ばされていく中、衝突面上において複数の電子機器が滞留してしまう場合も考えられる。しかしながら上記の構成を有することにより、電子機器のスムーズな落下が可能となり、ひいては配線基板の分離を効率よく行うことにもつながる。
【0045】
また、衝突面の湾曲形状の延長線上に回転体4が存在するように回転体4および衝突面を配置するのも非常に好ましい。先程、衝突面に衝突後の電子機器は、湾曲形状をスムーズに伝って落下すると述べた。湾曲形状の延長線上に回転体4が存在すると、電子機器は、自ずと回転体4の上に落下する。回転体4の上に落下すれば、ローラに設けられた突出部42との接触のチャンスが新たに生まれる。こうすることにより、電子機器が回転体4の上に滞在する時間を延ばすことができ、ひいては衝突部5に対して多くの回数、電子機器を衝突させることが可能となり、電子機器に対して十分な衝撃(しかもマイルドな衝撃)を与えることが可能となる。
【0046】
なお、衝突面の形状としては、与える衝撃の度合いを大きくするために、湾曲形状の表面に複数の突起を設けても構わない。衝突面の形状および素材については、電子機器の種類や与えるべき衝撃の度合いに応じて適宜設定しても構わない。
【0047】
また、衝突部5の別の好ましい形態としては、図1に示すように、衝突部5(すなわち衝突用部材52)を、回転体4の回転方向に並んで複数設ける構成が挙げられる。図1においては、投入部3側に位置する衝突用部材52を第1衝突用部材521とし、第1衝突用部材521に対して回転方向に位置する衝突用部材52を第2衝突用部材522とする。同様に、連結部材51についても、第1衝突用部材521と連結するものを第1連結部材511とし、第2衝突用部材522と連結するものを第2連結部材512とする。もちろん、衝突用部材52の数は2個に限られず、3個以上存在しても構わない。
【0048】
衝突用部材52が回転方向に並んで複数設けられることにより、以下の効果を奏する。電子機器が第1衝突用部材521に対して十分に衝突せず、第1衝突用部材521と回転体4との間の隙間W1を抜けてしまったとしても、電子機器が回転体4により再度弾き飛ばされる際に、第2衝突用部材522と衝突させることが可能となる。つまり、電子機器に対し、十分な衝撃(しかもマイルドな衝撃)を与えることができ、配線基板の分離を確実なものとすることができる。
【0049】
また、その場合、回転体4の回転中心から見て、複数設けられた衝突部5のうち各衝突部5の端部同士が重なるように衝突用部材52が配されるのが好ましい。こうすることにより、図1で言うと、第1衝突用部材521と第2衝突用部材522との間(破線で囲んだ部分)から電子機器が弾き落ちて回転体4上から落ちてしまうことを防ぐことができる。つまり、電子機器に対し、十分な衝撃を与えることができ、配線基板の分離を更に確実なものとすることができる。
【0050】
また、複数設けられた衝突部5のうち各衝突部5と回転体4との間の隙間が、回転方向に進むに従って狭くなるような位置に衝突部5は配されているのが好ましい。図1で言うと、第1衝突用部材521と回転体4との間の隙間W1よりも、第2衝突用部材522と回転体4との間の隙間W2の方が狭く設定されている。こうすることにより、以下の効果を奏する。電子機器が回転体4により弾き飛ばされて第1衝突用部材521に衝突し、電子機器のケーシングが外れたり電子機器内の電子部品が分離したりする。ただ、第1衝突用部材521と回転体4との間の隙間W1を通過できる程度に電子機器が分解されないと、第1衝突用部材521の奥にある第2衝突用部材522に対して電子機器を衝突させることができない。つまり、回転方向に向かって隙間を徐々に狭くすることにより、電子部品が大きい状態のまま(電子機器を十分に分解できないまま)回転体4上から落下してしまうことを確実に防ぐことができる。
【0051】
なお、上記の場合は、衝突部5が連結部材51と衝突用部材52とで構成される場合であるが、もちろんこれら以外の部材を衝突部5として設けても構わない。また、そもそも衝突部5を処理室2の内壁としても構わない。その場合、上記の衝突用部材52にとって好ましい形状へと、処理室2の内壁の形状を変形させることにより、衝突部5を処理室2の内壁とする場合にも上記で列挙した例は適用可能である。ただ、処理室2の内壁とは別体に衝突用部材52を設けることの方が、メリットが大きいことは上述の通りである。
【0052】
1−E)貯留部または排出部
回転体4の下方には処理された電子機器および分離された電子部品を溜める貯留部または開口状態の排出部が設けられているのが好ましい(共に不図示)。こうすることにより、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むことを抑制できる。
【0053】
繰り返しになるが、従来の手法とは異なり、本実施形態においては、配線基板が多少歪
むにしても、ほぼそのままの形で配線基板を回収することを特徴としている。しかもこの回収は、手作業のみに依存することなく行うことが、本実施形態ならば可能となる。貯留部または排出部が設けられるということは、回転体4の下部に所定のスペースが設けられていることを意味する。それはひいては、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むような構成とは本実施形態が異なることを意味する。
【0054】
なお、上記の構成以外にも、廃棄物となった電子機器を処理するための装置に対して適宜必要となる構成を採用しても構わない。
【0055】
<2.電子機器の処理方法>
次に、本実施形態における電子機器の処理方法について説明する。なお、以下の工程の内容は、<1.電子機器の処理装置1>の項にて説明した内容と重複する部分もある。そのため、以下に記載が無い内容については、<1.電子機器の処理装置1>の項にて説明した通りである。
【0056】
2−A)投入工程
投入工程においては、処理室2内に電子機器を投入する。なお、本実施形態における電子機器の処理方法は、バッチ式とは異なり、連続して行うことが可能である。そのため、電子機器を連続的に投入しても構わない。
【0057】
2−B)分離工程
分離工程においては、投入された電子機器を、処理室2内に配する回転体4の回転によって弾き飛ばして衝突部5に衝突させる際の衝撃により、電子機器から配線基板を分離する。
【0058】
そして、投入工程においては、回転体4における上半分の部分の中でも回転体4の回転方向の始点側(すなわち上流側)の部分に向けて電子機器を投入する。こうすることにより、長時間、回転体4の上に電子機器を滞在させることが可能となり、十分な衝撃を電子機器に与えることができる。
【0059】
また、回転体4と処理室2との間には十分な広さの隙間が設けられている。そのため、衝突部5に衝突させて電子機器から分離させた電子部品が、回転体4と処理室2との間に巻き込まれずに落下することが可能となる。
【0060】
なお、繰り返しになるが、本実施形態においては、電子機器から配線基板を回収している。
従来だと、配線基板は、他の電子部品とともに破砕される。しかもこの破砕は、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むことに行われるのが常である。そして、混合物となった破砕物から、配線基板を構成していたものを分離している。
しかしながら、本実施形態においては、配線基板が多少歪むにしても、ほぼそのままの形で配線基板を回収することが可能である。従来だと、配線基板をそのままの形で回収するためには、手作業で回収するよりほかなかった。その従来の常識を覆したのが、本実施形態である。そしてそれを如実に表した構成が、回転体4と処理室2との間には十分な広さの隙間を設けるという構成である。
【0061】
なお、電子機器から配線基板を回収する場合、回転体4の周面(詳しく言うと突出部42)の回転速度を15m/s以上30m/s以下とするのが好ましい。こうすることにより、電子機器から配線基板を確実に分離することが可能となるし、配線基板が破砕される可能性が著しく低くなる。
【0062】
上記の手法により電子機器から電子部品(配線基板)を分離し、貯留部または排出部を経て配線基板を回収した後は、適宜、篩処理、磁選処理等を行う。なお、配線基板等から所定の部品を回収した後に、配線基板を破砕し、配線基板を構成していた素材ごと(例えば鉄や銅ごと)に素材を回収しても構わない。その後、磁選処理やXRFソータにより、元素ごとに元素を回収しても構わない。
【0063】
<3.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0064】
本実施形態においては、手作業のみに依存することなく、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収することができる。しかも、従来のような手法すなわち「電子機器を細かく砕き、砕かれた破砕物から電子部品を構成していた素材を分離する手法」とは本実施形態は全く異なる。つまり、比較的マイルドな衝撃(例えば歪むに留まる程度の衝撃)を電子機器に与えることにより、電子機器における部品同士を固定している連結箇所を破壊でき、結果的に電子部品を電子機器から分離することが可能となる。
【0065】
つまり、電子機器全体に衝撃を与えることにより、電子部品と連結箇所の耐久性の差を利用しつつ、かつ、電子部品の破砕を抑制しつつ、手作業のみに依存することなく、廃棄物となった電子機器から電子部品を分離でき、電子部品そのものとして電子部品を回収することが可能となる。
【実施例】
【0066】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
本実施例においては、試験対象として廃棄済みデジタルカメラ(以降、単に「デジタルカメラ」と言う。)を選択し、当該デジタルカメラ20台に対し、上記の実施形態で述べたような電子機器の処理方法を実施した。そして、「処理時間」「配線基板の回収率」「配線基板上から脱落した素子の比率」について調べた。「配線基板上から脱落した素子の比率」については、先にも述べたように、配線基板の中でも、CPUなどの素子には貴金属が多量に含まれており、回収対象である配線基板の価値を高めるためにも重要な指標である。
【0068】
試験としては、まず、参考例として、デジタルカメラを手作業で解体した。その結果を後述の表1に示す。
20台のデジタルカメラを手作業で解体したところ、手作業で行ったため、配線基板の回収率は90%という高い値であった。また、配線基板上から脱落した素子の比率についても、ほぼ0%だった。しかしながら、処理時間は1500秒も要した。
この結果と、以下の実施例および比較例の結果と対比した。
【0069】
実施例1として、上記の実施形態に好ましい形態として記載された電子機器の処理装置(「1軸衝撃方式」と称する。)を用いて試験を行った。
一方、比較例としては、従来から「破砕機」として存在する装置を用いて試験を行った。比較例1においては1軸ハンマー方式、比較例2においては1軸チェーン方式、比較例3においては1軸せん断方式の装置を用いた。
なお、実施例1も比較例1〜3も共に回転体を回転させることにより対象に衝撃を与える方式を採用している。
【0070】
試験の概要としては、以下の通りである。
まず、本発明者の経験上、電子機器が処理後に電子部品へと解体されたとしても、電子機器における配線基板が、目開き20mmの篩でいうと+20mmの大きさであれば、当該配線基板を回収可能である。つまり、処理後において+20mmの部品の比率が多ければ多いほど、配線基板の回収率を向上させることができる。
このことを踏まえ、実施例および比較例にてデジタルカメラを処理した後、処理後のデジタルカメラを、目開き20mmの篩にかけた。そして、各々の欠片に含まれる基板の重量を測定した。そして、この重量に対する、篩上に残った(すなわち+20mmの)部品(すなわち手作業で選別可能な配線基板)の重量比率を求めた。
更に、手作業で選別した配線基板上から脱落している素子の個数を調査することで、配線基板上から脱落した素子の比率を求めた。
【0071】
以上の通り、参考例、実施例1および比較例1〜3を実施した。その結果を表1に示す。なお、表1には、実施例1および比較例1〜3で用いられる回転体の回転速度を記載した。比較例1〜3の回転体の回転速度は、いずれも、上記の実施形態で述べた好ましい例「回転体の周面(詳しく言うと突出部42)の回転速度が15m/s以上30m/s以下」の範囲を逸脱している。
【表1】
【0072】
表1に示すように、実施例1においては、「配線基板の回収率」は、参考例(手作業)と同じ90%という高い値であった。そして、「配線基板上から脱落した素子の比率」は、40%と低い値であった。そして何より、デジタルカメラ20個の処理に要した時間は、手作業だと1500秒だったのに対し、3秒しかかからなかった。
【0073】
その一方、比較例1においては、「配線基板の回収率」は30%という低い値であった。また、「配線基板上から脱落した素子の比率」は100%であり、配線基板上の全ての素子が脱落していた。比較例1においては、配線基板が過度に粉砕されていた。
比較例2においては、「配線基板の回収率」は80%であった。しかしながら、「配線基板上から脱落した素子の比率」は80%であり極めて高い値となっていた。更に、デジタルカメラ20個の処理に要した時間は、比較例の中では最も長い20秒だった。
比較例3においては、「配線基板の回収率」は0%であり、「配線基板上から脱落した素子の比率」は100%であり、有用な配線基板を回収することができなかった。
【0074】
以上の結果、本実施例ならば、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収する際に、手作業のみに依存することなく、かつ、電子機器を構成する電子部品の破砕を抑制しつつ、電子部品そのものとして電子部品を回収可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0075】
1………処理装置
2………処理室
3………投入部
31……チェーンカーテン
4………回転体
41……ロータ
42……突出部
5………衝突部
51……連結部材
511…第1連結部材
512…第2連結部材
52……衝突用部材
521…第1衝突用部材
522…第2衝突用部材
図1