特許第6457210号(P6457210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457210
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ミシンの操作パネル及びミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 81/00 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   D05B81/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-141883(P2014-141883)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-16198(P2016-16198A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】恒川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】榊原 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘幸
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−141471(JP,A)
【文献】 特開2014−015738(JP,A)
【文献】 特開2014−116768(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128873(WO,A1)
【文献】 特開2013−021476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 81/00
D05B 1/00
D05C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンとの間で設定データ又はコマンドの無線通信を行うミシンの操作パネルであって、
前記ミシンに設けられたミシン側通信部との間で非接触型の近距離無線通信を行うパネル側通信部と、
前記パネル側通信部から、通信接続状態を維持するための応答を要求するポーリングデータを周期的に送信する通信制御部とを備え
前記通信制御部は、
前記設定データ又は前記コマンドデータの送信に対するコマンドの完了又はデータの処理の完了を示すレスポンス応答データを前記ミシンの制御部から受信するまで、前記レスポンス応答データを要求するレスポンス要求データを前記パネル側通信部によって周期的に送信し、
前記レスポンス要求データの送信周期を前記ポーリングデータの送信周期よりも短くしたことを特徴とするミシンの操作パネル。
【請求項2】
前記設定データ又はコマンドの入力を受け付ける入力部を備え、
前記通信制御部は、前記入力部からの複数の前記設定データ又は前記コマンドの入力の完了を待ってから一括的に前記設定データ又は前記コマンドデータを前記パネル側通信部から送信することを特徴とする請求項1記載のミシンの操作パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のミシンの操作パネルとの間で、設定データ又はコマンドの無線通信を行うミシンであって、
前記パネル側通信部との間で非接触型の近距離無線通信を行うミシン側通信部を備えることを特徴とするミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの操作パネル及びミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
縫製工場等では、多種にわたる作業種別について縫製作業が行われるため、それぞれの作業種別に応じた多種のミシンが使用される。用途が異なるこれら多種のミシンは、各種の設定を行う操作入力装置である操作パネルの表示パラメータの種類や表示内容が異なっている。また、同じタイプのミシンでも作業種別が異なる場合には操作パネルの取り付け位置が変更され、また、表示パラメータの種類が異なるのでその表示内容を変えることが望ましい。
従って、従来は、上述のような環境下で使用される多種のミシンに搭載されるそれぞれの操作パネルをLAN(Local Area Network)等の通信回線を介してサーバ端末に接続し、当該サーバ端末から各種のミシンに見合った表示画面のデータを取得し、表示を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4485086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年はミシンの多機能化に伴い、操作パネルも液晶画面化され視覚的な直観で容易に操作が行える画面表示や、操作パネル上で複雑な入力が可能になった反面、操作パネル自体が高価になりつつある。
このため、上述した特許文献1のように、ミシンごとに操作パネルを搭載すると、個々のミシンそのものが高価となり、コスト低減の要求にこたえることができないという問題があった。
【0005】
一方、操作パネルを複数のミシンで共用化する場合、有線の通信ではケーブルの付け替えが必要となることから作業が煩雑となる。このため、操作パネルとミシンとの間では無線通信を行うことが望ましいが、無線LANを適用すると、ミシンごとにIPアドレスの設定が必要となり、その設定作業が繁雑となることが問題であった。
【0006】
本発明は、操作パネルを複数のミシンで共用化しつつ、操作パネルから個々のミシンに対するデータ送信を容易に行うことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
ミシンとの間で設定データ又はコマンドの無線通信を行うミシンの操作パネルであって、
前記ミシンに設けられたミシン側通信部との間で非接触型の近距離無線通信を行うパネル側通信部と、
前記パネル側通信部から、通信接続状態を維持するための応答を要求するポーリングデータを周期的に送信する通信制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項1記載の発明は、
前記通信制御部は、
前記設定データ又は前記コマンドデータの送信に対するコマンドの完了又はデータの処理の完了を示すレスポンス応答データを前記ミシンの制御部から受信するまで、前記レスポンス応答データを要求するレスポンス要求データを前記パネル側通信部によって周期的に送信し、
前記レスポンス要求データの送信周期を前記ポーリングデータの送信周期よりも短くしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のミシンの操作パネルにおいて、
前記設定データ又はコマンドの入力を受け付ける入力部を備え、
前記通信制御部は、前記入力部からの複数の前記設定データ又は前記コマンドの入力の完了を待ってから一括的に前記設定データ又は前記コマンドデータを前記パネル側通信部から送信することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は2に記載のミシンの操作パネルとの間で、設定データ又はコマンドの無線通信を行うミシンであって、
前記パネル側通信部との間で非接触型の近距離無線通信を行うミシン側通信部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、操作パネルとミシンの制御装置との間で非接触型の近距離無線通信を行うので、互いの通信部は近接した状態で通信が行われる。このため、操作パネルを複数のミシンで共用化する場合でも、操作パネルと当該操作パネルを近接配置したミシンとの間でのみ通信状態が確立され、IPアドレスの設定やケーブル接続等の作業を不要とし、データ送信を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】縫製システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】縫製システムの制御系を示すブロック図である。
図3図3(A)は操作パネルとミシンとの間の通信のデータフォーマットを示す説明図、図3(B)はブロックデータ部のデータ構成を示す説明図、図3(C)は通信ヘッダのデータ構成を示す説明図である。
図4】操作パネルのCPU、パネル側通信制御部、ミシン側通信制御部及びミシンのCPUとの間で行われる通信制御のシーケンス図である。
図5】ポーリングデータの詳細を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[縫製システムの概略構成]
以下、本発明の実施の形態である縫製システム100について図1乃至図5に基づいて説明する。図1は縫製システム100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、縫製システム100は、複数のミシン110と、これら各ミシン110との間で共用可能な操作パネル10とを備えている。なお、図1では複数のミシン110がいずれも同機種である場合を例示しているが、異なる機種又は異なる用途のミシンが混在しても良い。
【0014】
[ミシン]
図2はミシン110と操作パネル10からなる縫製システム100の概略構成を示すブロック図である。なお、図2ではミシン110は一台のみを図示して他のミシン110は図示を省略している。
ミシン110は、縫い針を保持する針棒の上下動駆動源であるミシンモーター111と、ミシンモーター111の回転数を検出するエンコーダー112と、所定の送りピッチで布送りを行う図示しない布送り機構と、糸調子による上糸の張力を可変とする糸調子ソレノイド113と、縫いの終了時に上糸及び下糸の切断を行う糸切りメスを駆動させる糸切りソレノイド114と、ミシン110の各部の制御プログラム及び初期データが記憶されたROM115と、制御プログラムを実行するCPU116と、CPU116の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM117と、操作パネル10から受信した各種の設定データを格納するEEPROM118と、非接触型の近距離無線通信を行うミシン側通信部119と、ループアンテナ120と、ミシン側通信部119に通信制御を行うミシン側通信制御部121とを備えている。
【0015】
上記ミシン110は、CPU116の制御により、エンコーダー112の出力を監視して、設定された回転数でミシンモーター111が駆動され、縫製が行われる。また、運針を行う針数が設定されている場合には、エンコーダー112の出力を監視して、設定針数分の運針を行うようミシンモーター111が制御される。
さらに、糸切りを実行する針数が設定されている場合には、設定針数の運針後に糸切りソレノイド114が糸切りを実行するよう制御される。
また、ミシン110は、糸調子ソレノイド113が制御され、設定された糸張力で縫製が実行される。
【0016】
また、ミシン側通信部119とループアンテナ120とミシン側通信制御部121は、NFC(Near Field Communication)の規格に準拠するNFC受動型デバイスであり、操作パネル10に搭載されたNFC能動型デバイスの通信の要求に従ってデータ通信を行う。
【0017】
上記ループアンテナ120は電流が流れると誘導磁場が発生する。そして、後述する操作パネル10のループアンテナ18とループアンテナ120とが近接した状態で一方のループアンテナに電流を流して誘導磁場を発生させると、電磁誘導により他方のループアンテナにも電流が発生し、ループアンテナ同士が磁気的に結合する。
ミシン側通信部119は、ループアンテナ120に流す電流振幅の変調を利用して各種の信号を送受信することを可能としている。
ミシン側通信制御部121は、操作パネル10に設けられたパネル側通信制御部19との間で各種所定のデータの送受を行うようミシン側通信部119を制御する。この制御の詳細な内容については後述する。
【0018】
なお、一般的なNFC受動型デバイスは、ループアンテナの電磁誘導によりデバイスが駆動するため、電源を不要とするができるが、ミシン側通信部119とループアンテナ120とミシン側通信制御部121は、ミシン110から電源の供給を受けて駆動を行っている。
【0019】
[操作パネル]
操作パネル10は、図2に示すように、液晶や有機EL等により画面表示を行うモニタ11と、モニタ11の表示画面に重ねて設けられ、タッチ操作で所定の入力を行うタッチセンサー12と、操作パネル10の各部の制御プログラム及び初期データが記憶されたROM13と、制御プログラムを実行するCPU14と、CPU14の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM15と、タッチセンサー12からの入力により設定された各種の設定データを格納するEEPROM16と、非接触型の近距離無線通信を行うパネル側通信部17と、ループアンテナ18と、パネル側通信部17に通信制御を行うパネル側通信制御部19とを備えている。
【0020】
上記操作パネル10では、CPU14が、モニタ11によりミシン110の種別及びミシン110で行う作業種別に応じた設定を行うための設定画面を表示する制御を行い、タッチセンサー12からの入力操作に応じた設定内容を認識し、設定データとしてEEPROM16に格納する。
また、モニタ11において各種動作又は処理の実行を入力する入力画面を表示した場合には、タッチセンサー12からミシン110に対する種々の動作の実行を入力したり、各種データの処理の実行を入力することができる。この時、CPU14は、パネル側通信部17を通じてミシン110側に動作実行のコマンドを送信したり、データの送信又はデータの要求を実行する。
【0021】
また、前述したように、パネル側通信部17とループアンテナ18とパネル側通信制御部19は、NFC(Near Field Communication)の規格に準拠するNFC能動型デバイスであり、ミシン110側のNFC受動型デバイスに対して通信を要求してデータ通信を行う。
【0022】
上記ループアンテナ18とループアンテナ120との通信原理は前述した通りである。
パネル側通信部17は、ループアンテナ18に流す電流振幅の変調を利用して各種の信号を送受信することを可能としている。
パネル側通信制御部19は、ミシン110に設けられたミシン側通信制御部121との間で各種所定のデータの送受を行うようパネル側通信部17を制御する。
【0023】
なお、操作パネル10は、既存のOS(Operating System)を搭載したスマートフォンやタブレット端末を使用することも可能である。
【0024】
[通信制御:データフォーマット]
操作パネル10のパネル側通信制御部19とミシン110のミシン側通信制御部121との間で行われる通信制御について説明する。
まず、操作パネル10のパネル側通信制御部19とミシン110のミシン側通信制御部121との間で送受されるデータのフォーマットについて図3に基づいて説明する。
【0025】
図3(A)はパネル側通信部17及びミシン側通信部119が一回の通信で送るデータの単位を示している。このデータは、「コマンドコード」B1、「ID」B2、「サービス数」B3、「サービスコードリスト」B4、「ブロック数」B5、「ブロックリスト」B6、「ブロックデータ部」B7から構成されている。当該データの全体的なフォーマットはNFC(Felica〔登録商標〕)の規格に準拠している。
なお、図3(A)の括弧内の数値はビット数を示している。
【0026】
さらに、「ブロックデータ部」B7は、図3(B)に示すように、「通信ヘッダ」B71、「サイズ」B72、「データ部」B73、「CRC」B74から構成されている。
上記「通信ヘッダ」B71は、図3(C)に示すように、「データ方向」B711、「データ有無」B712、「再送要求」B713、「予備」B714、「分割データの分割数」B715などのデータで構成されている。
【0027】
「サイズ」B72は「データ」B73のデータサイズ、「データ」B73は設定データやミシンに対するコマンドコード、「CRC」B74は通信チェック用のCRCデータが格納されている。
【0028】
さらに、「通信ヘッダ」B71の「データ方向」B711には、操作パネル10からミシン110へのデータ転送時には”01”が格納され、ミシン110から操作パネル10へのデータ送信時には”00”が格納される。
各通信制御部19,121はデータ受信時にこのデータ設定を確認し、通信方向が正しいか否かの判定を行う。
【0029】
「データ有無」B712には、「データ部」B73におけるデータの有無が”0”(データなし)と”1”(データあり)とで記録される。
パネル側通信部17とミシン側通信部119の通信制御においては、ポーリングや再送要求等の通信時のリクエストの場合には「データ部」B73にはデータが格納されないので、「データ有無」B712には”0”が格納される。
【0030】
「再送要求」B713は受信したデータがCRCチェック等で異常と判断した場合に、再度同じデータを要求するためのフラグである。再送要求が”1”の場合、データの再送要求となるため、データ有無はデータ無し”0”が設定される。
【0031】
通信プロトコルにより定められた、1回のデータ通信で送ることができる最大データ量(例えば、Felica(登録商標)の場合には、「ブロックデータ部」B7の最大データ量は192バイト)を超えるデータ量を送受信する場合には、データを複数回に分けて分割送信する必要がある。
「分割数」B715には、上記分割送信する場合に、全体の送信回数と、今回の送信データが何回目の送信データであるかを識別可能となるデータが分割数で格納される。
分割データの設定例は、分割データが無い1回の送信の場合は”000”を設定し、3回に分割して送信する場合は1回目の送信は”011:本データを含めて残り3回”、2回目の送信”010:本データを含めて残り2回”、3回目の送信”001:本データを含めて残り1回”とする。
【0032】
「サイズ」B72は「通信ヘッダ」B71から「CRC」B74まで(「ブロックデータ部」B7の全体)のデータサイズを示す。例えば、「データ部」B73が0バイトの場合、「サイズ」B72には「通信ヘッダ」B71(1バイト)+「サイズ」B72(1バイト)+「CRC」B74(2バイト)の合計4バイトが設定される。
【0033】
「データ部」B73は、操作パネル10とミシン110がやりとりする実際のデータとなる。例えば、ミシン110に対するコマンドデータ、ミシン110に送信する設定データ等が格納される。
【0034】
「CRC」B74は、Cyclic Redundancy Checkの略であり、データ送信後にデータの抜けや化け生じていないかをチェックするための数値データである。
「通信ヘッダ」B71から「データ部」B73までのデータをX16+X12+X5+1やX16+X15+X2+1等の生成多項式で計算した解が「CRC」B74に格納される。
データを受信したパネル側通信制御部19又はミシン側通信制御部121は、「通信ヘッダ」B71から「データ部」B73までのデータと「CRC」B74に格納された数値とが整合するか否かによりデータが正しく送信されたか否かを判断することができる。
【0035】
[通信制御:各通信制御部の行う処理]
次に、図4のシーケンス図により、操作パネル10のCPU14、パネル側通信制御部19、ミシン側通信制御部121及びミシン110のCPU116との間で前述した通信フォーマットを使用したデータにより行われる通信制御について説明する。
【0036】
まず、パネル側通信制御部19は、ミシンとの通信制御用アプリケーション(プログラム)が起動されると同時に、ループアンテナ18及びパネル側通信部17を介して、ミシン110側のNFC受動型デバイス(ミシン側通信制御部121)の検索を行う。
操作パネル10がミシン110のNFC受動型デバイスの近くに設置され、検索によりミシン側通信制御部121との相互のデータ通信状態の確立(ハンドシェイク)が完了すると、通信状態を保持するためのポーリング処理を実行する。ポーリング処理では、操作パネルからミシンに対し「0x40044D48」のポーリングデータが送信される。
ポーリングデータの詳細は図5に示す通りである。即ち、最初の二桁[40]は「通信ヘッダ」B71の設定内容を示し、次の二桁[04]は「サイズ」B72を示し、最後の四桁[4D48]は「CRC」B74を示している。なお、ポーリングデータはミシン110側に送信する実体的なデータがないので「データ部」B73は存在しない。
【0037】
一方、ミシン側通信制御部121は、このポーリングデータを受信したらポーリング応答データを返信する。
通常は、ポーリングデータに対して応答するデータが無いので、データ無しの「0x00044084」をポーリング応答データとして返信する。
一方、エラーなどの非同期メッセージがある場合は、ポーリング応答データとして「0x20aabbbbcc」を返信する。この場合、最初の[20]は「通信ヘッダ」B71、[aa]は「サイズ」B72、[bbbb]は応答メッセージの内容を示す「データ部」B73、[cc]は0x20aabbbbから算出した「CRC」B74を示す。なお、[aa]、[bbbb]、[cc]については以下同様の定義とする。
なお、ポーリング応答データが分割データとなる場合は、分割数に応じてパネル側通信制御部19はデータ読み取り処理を実行する。
【0038】
パネル側通信制御部19は、ポーリングデータを送信するポーリング処理を、比較的,長周期である数百msec〜数秒の範囲の一定間隔で繰り返し実行する。操作パネル10は、携帯性を高めるために、図示しないバッテリーを電源として駆動するが、ポーリングデータの送信周期を短く設定すると電力消費量が増加するため、送信周期を長めにして電力消費の低減を図っている。
そして、この規定間隔の間にミシン側通信制御部121からのポーリング応答データが得られなかった場合には、通信接続状態がリセットされ、パネル側通信制御部19は、再びミシン110側のNFC受動型デバイスの検索状態となる。
なお、操作パネル10のCPU14は、ポーリング処理によりミシン110との通信接続状態が確保されていることを認識している間は、通信接続状態であることをモニタ11に表示する制御を実行し、オペレータに通知する。
【0039】
一方、ミシン110との通信接続状態において、オペレータにより操作パネル10のタッチセンサー12が操作され、設定データやミシンに対する動作指示のコマンドが入力されると、CPU14はパネル側通信制御部19に通知する。
そして、パネル側通信制御部19はCPU14からの通知を受けて、パネル側通信部17から設定データ又はコマンドデータである「0x60aabbbbcc」をミシンに送信する。最初の[60]は「通信ヘッダ」B71である。
【0040】
ミシン側通信制御部121は、操作パネル10から設定データ又はコマンドデータを受信すると、受信したことを示す受信応答データ(ACK: ACKnowledgement)を操作パネル10に返信する。そして、ミシン110のCPU116は、受信した設定データ又はコマンドデータに対応する処理又は制御を開始する。
【0041】
そして、パネル側通信制御部19は、ミシン110からのACKを受信すると、レスポンス要求データである「0x40044D48」をミシン110に対し送信する。
これに対して、ミシン側通信制御部121は、レスポンス要求データを受信した時点で設定データ又はコマンドデータに対応する処理又は制御が完了していれば、レスポンス応答データ「0x20aabbbbcc」を操作パネル10に返信する。また、設定データ又はコマンドデータに対応する処理又は制御が完了していない場合は受信したことを示す受信応答データ「0x00044084」を返信する。
そして、パネル側通信制御部19は、ミシン110からレスポンス応答データ「0x20aabbbbcc」が応答されるまでレスポンス要求データ「0x40044D48」の送信を周期的に繰り返す。このレスポンス要求データの送信周期を長くすると、次の処理又は制御に遅れを生じて、操作性や応答性に影響を与えるため、ポーリングデータの送信周期よりも短い数msec〜数十msecの周期で送信を繰り返し実行する。
【0042】
なお、設定データ又はコマンドデータの送信に対するミシン側通信制御部121からの応答が受信応答データACKではなく、受信エラーが発生し再送要求データである「0x010473B5」であった場合には、パネル側通信制御部19は、設定データ又はコマンドデータである「0x60aabbbbcc」の再送を行う。
【0043】
[技術的効果]
以上のように、操作パネル10とミシン110は、それぞれ、接触型の近距離無線通信(例えば、数センチ〜1m程度の範囲内)のNFC能動型デバイスを備え、設定データや制御コマンドの無線通信を行うことを可能としている。
このため、操作パネル10を複数のミシン110で共用化する場合でも、操作パネル10と当該操作パネル10を近接配置したミシン110との間でのみ通信状態が確立され、IPアドレスの設定やケーブル接続等の作業を不要とし、データ送信を容易に行うことが可能となる。
【0044】
また、操作パネル10のパネル側通信制御部19は、通信接続状態を維持するためのポーリングデータの送信周期を長くし、コマンドの完了又は設定データの処理の完了示すレスポンス応答データを要求するレスポンス要求データの送信周期をポーリングデータよりも短く設定している。
このため、コマンドデータや設定データ等のような迅速な応答性の要求が高い場合には応答を迅速に得ることが出来、処理や制御を迅速に進めて、操作性や応答性の向上を図ることが可能となる。
また、迅速な応答性の要求があまり高くないポーリングデータの送信期間中は、その送信周期を長くすることで、省電力化を図ることが可能となる。従って、携帯を有する操作パネル10のバッテリーを長く使用することが可能となり、充電やバッテリーの交換等の頻度を低減することが可能となる。
【0045】
また、操作パネル10のパネル側通信制御部19とミシン110のミシン側通信制御部121との間で送受されるデータは、ブロックデータ部B7の通信ヘッダB71に、データ方向B711、データ有無B712、等の通信内容を規定している。
このため、データ内容に関係なくNFCの規格に準拠して常に同じフォーマットでの通信が可能になる。
【0046】
[その他]
また、設定データ又はコマンドの入力を受け付ける入力部としてのタッチセンサー12からの複数の設定データ又はコマンドの入力を受ける場合に、これら複数の設定データ又はコマンドの入力の完了を待ってから一括的に設定データ又はコマンドデータをパネル側通信部17から送信するようにパネル側通信制御部19は通信制御を行っても良い。
その場合、複数の設定データ又はコマンドの入力の完了をオペレータが支持する完了ボタン等の指示入力手段を操作パネル10に設け、その入力をトリガーとして一括的に設定データ又はコマンドデータを送信しても良い。
或いは、タッチセンサー12でミシンモーター111の回転数と糸張力等のような複数の設定データが変更された場合、ミシンモーター111の回転数変更時と糸張力変更時にそれぞれ通信処理を実行するのではなく、両方の設定が完了し、縫製処理を実行する直前にモニタ11の画面遷移が行われる場合に、当該画面遷移をこれらの設定データを一括的に送信するトリガーとしても良い。
さらに、ミシン110側でリアルタイムで処理又は制御する必要がない設定データやコマンドを入力する場合であって、操作パネル10とミシン110との通信接続状態が確保されていない状態である場合に、複数の設定データ又はコマンドの入力が完了するまでミシン110の検索を行わず、これらの入力が完了してからミシン110を検索し、通信接続状態を確保し、一括的に複数の設定データ又はコマンドを送信するようにパネル側通信制御部19が通信制御を行っても良い。
【0047】
これらのように複数の設定データ又はコマンドの送信を一括的に行うことにより、短い送信周期でレスポンス要求データの送信を繰り返す機会を低減し、操作パネル10におけるさらなる省電力化を実現することが可能である。
【0048】
なお、非接触型の近距離無線通信としてNFC、Felica(登録商標)を例示したが、これに限定されない。例えば、複数台あるミシンの中で特定の一台のミシンに操作パネル10を近接させた場合に、誤って他のミシンとの通信接続状態が確保されることない距離(例えば数センチ〜1メートル程度)での通信が可能ないかなる近距離無線通信を利用しても良い。
【符号の説明】
【0049】
10 操作パネル
11 モニタ
12 タッチセンサー(入力部)
17 パネル側通信部
18 ループアンテナ
19 パネル側通信制御部
100 縫製システム
119 ミシン側通信部
120 ループアンテナ
121 ミシン側通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5