(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な両軸受リール、特にキャスティングで釣り糸を放出可能なベイトキャスティングリールには、スプールを制動する制動ユニットが設けられる。これによって、キャスティング時のバックラッシュを防止できる。
【0003】
制動ユニットにおいて、制動力をより細かく調整できるようにするために、第1調整部と第2調整部との2つの調整部を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の制動ユニットは、電気的に制御可能にスプールを制動する。制動ユニットは、リール本体に固定された軸支持部と、軸支持部の内側面に固定された回路基板と、磁石と複数のコイルとを有する制動部と、制動部の制動力を調整する第1調整部と、第2調整部と、を有する。軸支持部には、スプール軸の一端が軸受を介して回転自在に支持される。磁石は、スプールと一体回転可能に設けられ、複数のコイルは磁石の外周側に筒状に配置され、回路基板に装着される。第1調整部及び第2調整部は、軸支持部の外側面に回動自在にそれぞれ装着される。第1調整部及び第2調整部は、円板状に構成され、円形の面に直径に沿って突出するつまみ部が形成される。
【0005】
第1調整部は、制動モードの設定に用いられ、第2調整部は、設定された制動モードの制動力の大きさを調整するために設けられる。第1調整部は、開閉可能なカバー部によって覆われ、カバー部を閉じているときには操作できない。第2調整部は、カバー部に設けられた開口部から露出し、いつでも自由に調整できる。これによって、第1調整部を誤操作することによる制動モードの変化が生じにくくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の両軸受リールでは、第1調整部及び第2調整部が円形の面で操作されるため、第1調整部及び第2調整部のスプールの回転軸方向の厚みが大きくなる。このため、第1調整部を覆うと、両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法が大きくなる。
【0008】
本発明の課題は、第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかが覆われる両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る両軸受リールは、対向する一対の側板を有するリール本体と、側板の間に、回転可能に保持されるスプールと、リール本体に装着され、スプール
の回転を制動する制動ユニットと、を備える。制動ユニットは、第1周縁部と、第1周縁部とは異なる第2周縁部と、第1調整部と、第2調整部と、を有する。第1調整部は、第1周縁部から少なくとも一部が露出する第1露出部を有し、制動力を第1調整範囲で調整する。第2調整部は、第2周縁部から少なくとも一部が露出する第2露出部を有し、制動力を第1調整
範囲と異なる第2調整範囲で調整する。リール本体は、第1露出部及び第2露出部の少なくともいずれかを覆う規制部を有する。
【0010】
この両軸受リールでは、制動ユニットの第1周縁部から第1調整部の少なくとも一部を露出させ、第2周縁部から第2調整部の少なくとも一部を露出させる。第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかは、制動ユニットがリール本体に装着されると、規制部によって覆われる。ここでは、第1調整部及び第2調整部は、第1周縁部及び第2周縁部から別々に露出するように構成されるので、第1調整部及び第2調整部のスプールの回転軸方向の寸法が小さくなる。また、制動ユニットをリール本体に装着すると、露出した第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかは、規制部によって覆われる。このため、第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかが覆われる両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0011】
制動ユニットは、第1周縁部に設けられ、第1露出部を露出させる第1開口部、及び第2周縁部に設けられ、第2露出部を露出させる第2開口部を有し、リール本体に装着可能なカバー部を有してもよい。
【0012】
この場合には、カバー部の第1周縁部に設けられる第1開口部が第1露出部の少なくとも一部を露出させ、第2周縁部に設けられる第2開口部が第2露出部の少なくとも一部を露出させる。第1露出部は第1開口部から少なくとも一部が露出されるが、カバー部がリール本体に装着されると、規制部が第1開口部を覆い、第1露出部は規制部によって覆われる。これにより、制動ユニットの必要箇所だけを露出させることができるので、露出を最小限に抑えることでき、制動ユニットの一体化が可能となり、第1調整部と第2調整部とを有し第1調整部がカバー部によって覆われる両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法を可及的に小さくすることができる。
【0013】
第1調整部及び第2調整部の少なくとも一部は、スプールの回転軸と直交する同一平面上に配置されてもよい。この場合には、第1調整部と第2調整部とをスプールの回転軸と直交する面に重ねて配置できるので、両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法をさらに小さくすることができる。
【0014】
制動ユニットは、スプールを電気的に制動可能であってもよい。この場合には、スプールを電気的に制動できるので、制動力の時間変化をスプールの回転速度に制限されることなく自由に設定できる。
【0015】
第1調整部は、少なくとも1つの第1磁石を有し、少なくとも一部が第1周縁部から露出する第1調整操作部と、第1磁石に対向し、第1調整操作部の調整位置を検出する第
1検出部と、を有してもよい。この場合には、第1磁石の磁束を検出して、第1調整操作部の操作位置を検出できるので、第1検出部の配置の制限を緩和できる。
【0016】
第2調
整部は、少なくとも1つの第2磁石を有し、少なくとも一部が第2周縁部から露出する第2調整操作部と、第2磁石に対向し、第2調整操作部の調整位置を検出する第
2検出部と、を有してもよい。この場合には、第2磁石の磁束を検出して、第2調整操作部の操作位置を検出できるので、第2検出部の配置の制限を緩和できる。
【0017】
第1調整部は、制動力の時間変化が異なる複数の制動モードのいずれかを選択するために設けられてもよい。この場合には、使用頻度が低い第1調整部の誤操作を防止できる。
【0018】
第2調整部は、制動力の大きさが異なる複数の制動力のいずれかを選択するために設けられてもよい。この場合には、使用頻度が高い第2調整部を迅速に操作できる。
【0019】
制動ユニットは、スプールを機械的に制動可能である。この場合には、磁気又は遠心力によってスプールを機械的に制動可能な制動ユニットに第1調整部及び第2調整部を設け、第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかを覆っても、両軸受リールのスプールの回転軸方向の寸法を可及的に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1調整部及び第2調整部は、第1周縁部及び第2周縁部から別々に露出するように構成されるので、第1調整部及び第2調整部は、それぞれの外周部を指先で触って操作することになる。このため、第1調整部及び第2調整部のスプール軸方向の寸法が小さくなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び
図2において、本発明の一実施形態が採用された両軸受リール100は、リール本体1と、ハンドル2と、スプール12と、スプール12を電気的に制動する制動ユニット20(
図2参照)と、を備える。
【0023】
<リール本体>
リール本体1は、一体形成されたフレーム5と、フレーム5のハンドル2側に配置される側カバー7と、を有する。
【0024】
フレーム5は、
図2に示すように、ハンドル2と逆側に配置された第1側板5aと、第1側板5a
と対向して配置される第2側板5bと、第1側板5aと第2側板5bとを連結する複数の連結部5cと、サムレスト9と、を有する。第1側板5a及び第2側板5bは、対向する一対の側板の一例である。第1側板5aは、スプール12が通過可能な円形の開口5dを有する。複数の連結部5cのうち、第1側板5aと第2側板5bを下側で連結する連結部5cには、釣り竿に装着される竿取付脚5eが設けられる。開口5dの周囲で、フレーム5の第1側板5aに制動ユニット20が着脱可能に設けられる。
【0025】
サムレスト9は、
図1及び
図2に示すように、第1側板5aの上部に外側に張り出して形成される第1張り出し部9aと、第2側板5bの上部に外側に張り出して形成される第2張り出し部9bと、フレーム5の前部で第1側板5aと第2側板5bとを連結し前方に張り出して形成される第3張り出し部9cと、を有する。
【0026】
ハンドル2は、リール本体1に回転自在に支持される。スプール12は、第1側板5aと第2側板5bとの間でリール本体1に回転自在に保持される。
【0027】
スプール12は、
図4に示すように、釣り糸を巻き付け可能な糸巻き部12aと、糸巻き部12aと一体に形成されスプール軸16に固定される筒状部12bと、を有する。筒状部12bの内周面にスプール軸16が一体回転可能に連結される。スプール軸16は、一端が後述する軸支持部8に軸受18によって回転自在に支持される。スプール軸16の他端は側カバー7に図示しない軸受によって回転自在に支持される。
【0028】
<制動ユニット>
制動ユニット20は、
図2、
図3及び
図5に示すように、軸支持部8を有するカバー部6と、制動部30と、回路基板31と、制動部30の制動力を第1調整範囲で調整する第1調整部32と、制動部30の制動力を第2調整範囲で調整する第2調整部34と、スプール12の回転を検出する回転検出部36(
図6参照)と、カバー部材38と、磁束遮蔽部材40と、を備える。
【0029】
<カバー部>
図2に示すように、カバー部6は、フレーム5の第1側板5aに着脱可能に装着される。カバー部6は、カバー本体6aと、カバー本体6aの内側面6bに装着される軸支持部8と、を有する。
【0030】
<カバー本体>
カバー本体6aの内側面6bには、軸支持部8を固定するための複数(例えば3つ)の固定ボス部6cが形成される。また、内側面6bには、制動ユニット20の後述する第1調整操作部50及び第2調整操作部54を回動自在に装着するための第1装着ボス部6d及び第2装着ボス部6eが各別に形成される。第1装着ボス部6dは、第1軸X1を中心に筒状に形成される。第1軸X1は、カバー本体6aが第1側板5aに装着された状態で、後述するスプール軸16と同芯に配置される。第2装着ボス部6eは、第1軸X1と平行な第2軸X2を中心に形成される。第2軸X2は、第1軸X1よりも前方かつ竿取付脚5eの近くに配置される。
【0031】
カバー本体6aは、サムレスト9によって覆われる上側に設けられる第1周縁部6fと、第1周縁部6fとは異なる第2周縁部6gとを有する。カバー本体6aの第1周縁部6fはサムレスト9に接触可能に配置され、サムレスト9の第1張り出し部9aによって覆われる。第1張り出し部9aは、規制部の一例である。第2周縁部6gは第1周縁部6fと反対側(竿取付脚5eに近い下側に)に配置される。第1周縁部6fは、第1調整部32の第1調整操作部50を外部に露出させるために概ね矩形に形成された第1開口部6hを有する。第2周縁部6gは、第2調整部34の第2調整操作部54を外部に露出させるために概ね矩形に形成された第2開口部6iを有する。第1周縁部6fは、
図1に示すように、制動ユニット20がリール本体1に装着された状態では、第1張り出し部9aによって覆われる。第2周縁部6gは、リール本体1に覆われない。また、第1周縁部6fは、
図2に示すように、制動ユニット20がリール本体1から外されると、第1調整部32の第1調整操作部50の少なくとも一部を第1開口部6hから露出させる。第1調整操作部50は、第1開口部6hから僅かに突出して配置される。
【0032】
<軸支持部>
軸支持部8は、
図2及び
図3に示すように、スプール12のスプール軸16の一端を回転自在に支持する。スプール軸16はスプール12の回転軸の一例である。軸支持部8は、扁平有底円筒状の部材である。軸支持部8の中心には、スプール軸16の一端を回転自在に支持するための軸受18が収納される筒状の軸受収納部8aが内側面から突出して形成される。軸支持部8の外周面8bには、軸支持部8を開口5dの周囲で第1側板5aに対して着脱するための着脱リング22が回動自在に装着される。着脱リング22は公知のバヨネット構造によって、軸支持部8を第1側板5aに着脱可能に装着する。着脱リング22は外周面に径方向外方に突出する複数(例えば3つ)の爪部22aと、着脱操作のための操作把手22bと、を有する。複数の爪部22aは、厚さが徐々に薄くなる傾斜面を有し、開口5dの周囲に形成された図示しない複数の係合溝に係合する。操作把手22bを指先で下方に操作して、着脱リング22を一方向(例えば
図2の反時計回り)に回転させると、爪部22aが係合溝から離脱し、軸支持部8及びカバー部6が第1側板5aから外れる。また、操作把手22bを指先で例えば上方に操作して、着脱リング22を他方向に回転させると、爪部22aが係合溝に係合し、軸支持部8及びカバー部6が第1側板5aに固定される。軸支持部8は、複数本(例えば3本)のボルト部材24によって、制動ユニット20の一部の構成とともにカバー部6に固定される。軸支持部8がカバー部6に固定された状態では、着脱リング22は、スプール軸方向の移動が規制され、軸支持部8に対して回転自在になる。
【0033】
<制動部>
制動部30は、スプール12と一体回転可能に設けられる制動磁石44、及び制動磁石44の外周側に所定の隙間をあけて筒状に配置され、直列接続された複数のコイル46を有する。制動磁石44は、スプール軸16に一体回転可能に装着される。この実施形態では、制動磁石44は、接着によってスプール軸16に固定される。制動磁石44は、円筒形磁石である。複数のコイル46は、コイル取付部材48によって回路基板31に装着される。直列接続された複数のコイル46の両端は、回路基板31に電気的に接続される。この実施形態では、コイル46は4つ設けられる。各コイル46はそれぞれ円弧状に湾曲して形成され、複数のコイル4は、全体として概ね筒状に形成される。
【0034】
<回路基板>
回路基板31は、
図2及び図5に示すように、貫通孔31cを有する円板状に形成される。回路基板31は、軸支持部8の軸受収納部8aの外周側でスプール12と対向する面に装着される。回路基板31は、コイル46が装着される第1面31aと、第1面31aと反対側の第2面31bと、を有する。回路基板31は、ボルト部材24によって、軸支持部8、カバー部材38、及び磁束遮蔽部材40とともに、カバー部6に固定される。
【0035】
<第1調整部>
第1調整部32は、制動部30の、制動力の時間変化が異なる複数の制動モードのいずれかを選択するために設けられる。この実施形態では、例えば、釣り糸の種類(たとえば、ナイロンライン、フロロカーボンライン(ポリフッ化ビニリデン製の糸)、PEライン(ポリエチレン繊維を縒り合わせた糸))に応じた3つの制動モードに調整可能である。
【0036】
第1調整部32は、少なくとも1つ(例えば2つ)の第1磁石50aを有する第1調整操作部50、及び2つの第1磁石50aに対向し、第1調整操作部50の調整位置を検出する第1検出部52(図
5及び
7参照)を有する。
【0037】
第1調整操作部50は、リール本体1に複数段階の第1調整範囲に移動可能に設けられる。この実施形態では、第1調整操作部50は、カバー本体6aの内側面6bに、例えば3段階の第1調整範囲に位置決め可能に回動自在に設けられる。第1調整操作部50は、例えば2つの第1磁石50aが装着されるレバー部材50bを有する。レバー部材50bは、先端に円弧状に湾曲し、表面に周方向に間隔を隔てて形成された複数の凸部50dを有する第1露出部50cを有する。レバー部材50bは、第1装着ボス部6dの外周面に第1軸X1回りに第1調整範囲で回動自在に取り付けられる。第1調整範囲は、例えば30度以下の範囲である。この実施形態では、第1装着ボス部6dがスプール軸16と同芯に配置されるので、第1調整操作部50は、スプール軸16回りに回動する。第1調整操作部50の第1露出部50cは、カバー部6に装着された状態で、第1周縁部6fに形成された第1開口部6hから突出して露出する。しかし、カバー部6が第1側板5aに装着された状態、すなわち制動ユニット20がリール本体1に装着された状態では、第1周縁部6fがサムレスト9によって覆われるため、第1調整操作部50の
第1露出部50cは、リール本体1内に隠れる。これによって、釣りをしているときに、使用者の意志に反して、調整された状態が変化しない。
【0038】
第1検出部52は、図
5及び図
7に示すように、制動磁石44から離れた回路基板31の第2面31bの外周側に配置される。第1検出部52は、第2面31bに2つの第1磁石50aに対向可能な位置に配置された2つのホール素子52a、52bを有する。2つのホール素子52a、52bは、第1軸X1回りに間隔を隔てて配置される。
【0039】
<第2調整部>
第2調整部34は、制動部30の、強さが異なる複数の制動力のいずれかを選択するために設けられる。この実施形態では、例えば、制動力の強さを8段階に調整可能である。第2調整部34は、少なくとも1つ(例えば3つ)の第2磁石54aを有する第2調整操作部54、及び3つの第2磁石54aに対向し、第2調整操作部54の調整位置を検出する第2検出部56を有する。
【0040】
第2調整操作部54は、リール本体1に複数段階の第2調整範囲に移動可能に設けられる。この実施形態では、第2調整操作部54は、カバー本体6aの内側面6bに、例えば8段階の第2調整範囲に位置決め可能に回動自在に設けられる。第2調整範囲は、例えば120度以下の範囲である。第2調整操作部54は、例えば3つの第2磁石54aが装着される操作部本体54bと、操作部本体54bに、例えば弾性係合によって固定される第2露出部54cと、を有する。操作部本体54bは、第2装着ボス部6eにねじ込まれるネジ部材55によって、カバー本体6aの内側面6bに第2軸X2回りに回動自在に取り付けられる。第2露出部54cは、カバー部6がリール本体1に装着された状態で、第2周縁部6gに形成された第2開口部6iから露出する。これによって、釣りをしているときに、両軸受リール100をパーミングする指の先端で第2調整操作部54を調整可能である。
【0041】
第2検出部56は、図
7に示すように、制動磁石44から離れた回路基板31の第2面31bの外周側に配置される。第2検出部56は、回路基板31の第2面31bに第1検出部52と実質的に180度間隔を隔てて配置される。第2検出部56は、回路基板31の第2面31bに3つの第2磁石54aに対向可能な位置に配置された3つのホール素子56a、56b、56cを有する。3つのホール素子56a、56b、56cは、第2軸X2回りに間隔を隔てて配置される。
【0042】
<回転検出部>
回転検出部36は、図
6に示すように、制動磁石44の磁束の変化によって、スプール12の回転速度及びスプール12の回転方向を検出するために設けられる。また、スプール12の回転速度の時間変化によって釣り糸に作用する張力も検出可能である。回転検出部36は、回路基板31の第1面31aの内周側に、第1軸X1回りに間隔を隔てて配置された2つのホール素子36a、36bを有する。
【0043】
<カバー部材>
カバー部材38は、
図2に示すように、回路基板31、コイル46、及び回路基板31に搭載された電装品を絶縁するために設けられる合成樹脂製の段付き筒状の部材である。カバー部材38は、複数のコイル46の先端、内周部及び外周部を覆う第1カバー部38aと、回路基板31の外周部、内周部、第1面31a、及び第2面31bを覆い、第1カバー部38aと一体形成された第2カバー部38bと、を有する。第1カバー部38aは、制動磁石44の外周側に配置される。すなわち、カバー部材38は、コイル46及び検出部を含む電気部品が装着された回路基板31の全面を覆って、回路基板31を封止する。第2カバー部38bは、スプール12と対向する側で第1カバー部38aとの間に段差面38cを有する。なお、
図3では、カバー部材38の図示を省略している。
【0044】
<磁束遮蔽部材>
磁束遮蔽部材40は、
図6及び
図7に示すように、例えば鉄板製の部材である。磁束遮蔽部材40は、第1検出部52及び第2検出部56に向かう制動磁石44の磁束を遮蔽するために設けられる。磁束遮蔽部材40を設けることによって、第1検出部52及び第2検出部56が制動磁石44の磁束の影響を受けることなく第1磁石50a及び第2磁石54aを精度よく検出できる。磁束遮蔽部材40は、第1検出部52と制動磁石44との間に配置される。また、磁束遮蔽部材40は、第2検出部56と制動磁石44との間にも配置される。磁束遮蔽部材40は、第2カバー部38bのスプール12と対向する段差面38cに固定されたリング状の第1遮蔽部40aと、回路基板31の第1面31aに、例えば接着などの適宜の固定手段によって固定され、第1遮蔽部40aよりも内周側を遮蔽する第2遮蔽部40bと、を有する。第1遮蔽部40aは、軸支持部8及びカバー部材38によって封止された回路基板31とともに、ボルト部材24によってカバー部6に固定される。
【0045】
このように構成された制動ユニット20では、以前使用した釣り糸と異なる釣り糸を使用する場合、カバー部6をリール本体1から外す。具体的には、両軸受リール100の後部に配置される操作把手22bを指先で下方に操作して、着脱リング22を一方向(例えば
図2の反時計回り)に回転させると、回路基板31からカバー部6までの制動ユニット20がリール本体1から外れる。この状態が
図2に示す状態である。これによって、第1調整部32の第1調整操作部50が第1周縁部6fの第1開口部6hから露出し、釣り糸の種類に応じた制動モードに調整操作できる。調整操作が終わると、制動ユニット20をリール本体に密着させ、操作把手22bを指先で例えば上方に操作して、着脱リング22を他方向に回転させると、制動ユニット20がリール本体に装着される。
【0046】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0047】
(a)上記実施形態では、制動ユニット20がスプール12を電気的に制動可能であったが、本発明はこれに限定されない。制動ユニットは、スプールを、磁気又は遠心力などを利用して機械的に制動可能であってもよい。
【0048】
(b)上記実施形態では、カバー部6がリール本体1に着脱可能に装着されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、カバー部は、リール本体に揺動可能に連結され、リール本体に開閉可能に装着されてもよい。
【0049】
(c)上記実施形態では、検出精度を高めるために、第1磁石50a及び第2磁石54aが複数設けられたが、これらは少なくとも一つ設けられればよい。また、ホール素子は、それぞれ少なくとも一つ設けられればよい。さらに磁石とホール素子の数は異なってもよい。
【0050】
(d)上記実施形態では、第1検出部52、第2検出部56及び回転検出部36にそれぞれホール素子を用いたが、本発明はこれに限定されない。これらは、磁束の変化を検出できるものであれば、どのような磁気センサでもよい。
【0051】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0052】
(A)両軸受リール100は、対向する一対の第1側板5a及び第2側板5bを有するリール本体1と、第1側板5aと第2側板5bの間に、回転可能に保持されるスプール12と、リール本体1に装着され、スプール12
の回転を制動する制動ユニット20と、を備える。制動ユニット20は、第1周縁部6fと、第1周縁部6fとは異なる第2周縁部6gと、第1調整部32と、第2調整部34と、有する。第1調整部32は、第1周縁部6fから少なくとも一部が露出する第1露出部50cを有し、制動力を第1調整範囲で調整する。第2調整部34は、第2周縁部6gから少なくとも一部が露出する第2露出部54cを有し、制動力を第1調整
範囲と異なる第2調整範囲で調整する。リール本体1は、第1露出部50c及び第2露出部54cの少なくともいずれか一方を覆う第1張り出し部9aを有する。
【0053】
この両軸受リール100では、制動ユニット20の第1周縁部6fから第1調整部32の少なくとも一部を露出させ、第2周縁部6gから第2調整部34の少なくとも一部を露出させる。第1調整部32及び第2調整部34の少なくともいずれかは、制動ユニット20がリール本体1に装着されると、規制部によって覆われる。ここでは、第1調整部及び第2調整部は、第1周縁部及び第2周縁部から別々に露出するように構成されるので、第1調整部及び第2調整部のスプールの回転軸方向の寸法が小さくなる。また、制動ユニット20をリール本体1に装着すると、露出した第1調整部32及び第2調整部34の少なくともいずれかは、第1張り出し部9aによって覆われる。このため、第1調整部32及び第2調整部34の少なくともいずれかが覆われる両軸受リール100のスプール12の回転軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0054】
(B)制動ユニットは、第1周縁部6fに設けられ、第1露出部50cを露出させる第1開口部6h、及び第2周縁部に設けられ、第2露出部を露出させる第2開口部を有し、リール本体に装着可能なカバー部6を、有してもよい。
この場合には、リール本体1からカバー部6を外すと、第1調整部32の第1露出部50cが第1開口部6hから露出するため、第1調整部32を操作できる。
【0055】
(C)第1調整部32及び第2調整部34の少なくとも一部は、スプール12のスプール軸16と直交する同一平面上に配置されてもよい。この場合には、第1調整部32と第2調整部34とをスプール12のスプール軸16と直交する面に重ねて配置できるので、両軸受リール100のスプール軸16方向の寸法をさらに小さくすることができる。
【0056】
(D)制動ユニット20は、スプール12を電気的に制動可能であってもよい。この場合には、スプール12を電気的に制動できるので、制動力の時間変化をスプール12の回転速度に制限されることなく自由に設定できる。
【0057】
(E)第1調整部32は、少なくとも1つの第1磁石50aを有
し、少なくとも一部が第1周縁部6fから露出する第1調整操作部50と、第1磁石50aに対向し、第1調整操作部50の調整位置を検出する第1検出部52と、を有してもよい。この場合には、第1磁石50aの磁束を検出して、第1調整操作部50の操作位置を検出できるので、第1検出部52の配置の制限を緩和できる。
【0058】
(F)第2調整部34は、少なくとも1つの第2磁石54aを有
し、少なくとも一部が第2周縁部6gから露出するする第2調整操作部54と、第2磁石54aに対向し、第2調整操作部54の調整位置を検出する第2検出部56と、を有してもよい。この場合には、第2磁石54aの磁束を検出して、第2調整操作部54の操作位置を検出できるので、第2検出部56の配置の制限を緩和できる。
【0059】
(G)第1調整部32は、制動力の時間変化が異なる複数の制動モードのいずれかを選択するために設けられてもよい。この場合には、使用頻度が低い第1調整部32の誤操作を防止できる。
【0060】
(H)第2調整部34は、制動力の大きさが異なる複数の制動力のいずれかを選択するために設けられてもよい。この場合には、使用頻度が高い第2調整部34を迅速に操作できる。
【0061】
(I)制動ユニット20は、スプール12を機械的に制動可能である。この場合には、磁気又は遠心力によってスプールを機械的に制動可能な制動ユニットに第1調整部及び第2調整部を設け、第1調整部及び第2調整部の少なくともいずれかを覆っても、スプールの回転軸方向の寸法を可及的に小さくすることができる。