(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
(第1実施形態)
【0023】
図1は、第1実施形態に係る発光装置を示す模式図であり
図1(a)は模式平面図で
図1(b)は模式断面図である。
図1に示す発光装置1は、基板10上に半導体発光素子11が実装され、半導体発光素子11上には波長変換部材12が設けられている。半導体発光素子11と波長変換部材12の周囲を囲むように基板10上にダム部材13が配置されており、ダム部材13の内側には反射部材14が充填されている。
【0024】
基板10は他の部材を搭載して支持するための平板状の部材であり、絶縁性材料や導電性材料の何れを用いてもよく、熱伝導性が高い材料で形成されることが好ましい。例えば、セラミック基板やガラスエポキシ基板、可撓性基板、金属基板上に絶縁膜を形成した複合基板、リードフレームを絶縁材料で固定した基板などを用いることができる。
図1では省略しているが、基板10の半導体発光素子11を搭載する面上には、金属材料等からなる配線層を形成しており、半導体発光素子11に接続されて電流を供給している。
【0025】
半導体発光素子11は、短波長可視光を発光する発光ダイオード(LED)である。本発明における短波長可視光とは、青色よりも短波長である400nm近傍の光であり、より具体的には発光ピーク波長が395〜410nmの波長範囲の光である。この範囲の短波長可視光は、青色である450nm近傍の光よりも視感度が低いため、光量が増加しても白色光全体の色温度に与える影響が小さいという特性がある。
【0026】
半導体発光素子11としては、活性層としてInGaN系の化合物半導体を備えるものが好ましい。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長が変化し、Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ないと短波長となる傾向を示す。InGaN系活性層では、ピーク波長が400nm近傍となる程度にInが含有された組成比のもので量子効率が最も高いことが確認されている。したがって、半導体発光素子11をInGaN系化合物半導体材料とすると、短波長可視光での発光効率を最適にすることができる。しかし、半導体発光素子11を構成する材料はInGaN系に限定されず、短波長可視光を発光できれば他の材料であってよく、例えばII−VI族化合物半導体やZnO系化合物半導体、Ga
2O
3系化合物半導体などであってもよい。
【0027】
波長変換部材12は、半導体発光素子11が発光した短波長可視光の一部を他の波長に変換する部材である。
図1では、蛍光体材料を微粒子にして樹脂中に分散させてシート状に形成した蛍光含有シートを、図示しない接着剤で半導体発光素子11の上面に固定している。波長変換部材12としては蛍光含有シートに限定されず、短波長可視光を波長変換できる部材であればよく、蛍光体微粒子を分散させた樹脂を塗布するものや、ガラス中に蛍光体材料を含ませたもの、蛍光セラミック板などを用いることができる。蛍光体粒子を分散させる樹脂としては、例えばジメチルシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0028】
波長変換部材12には、短波長可視光により励起されて青色光を発光する蛍光体材料と、短波長可視光により励起されて黄色光を発光する蛍光体材料が含まれている。青色光を発光する蛍光体材料としては、例えば(Ca,Sr)
5(PO
4)
3Cl:Euが挙げられる。黄色光を発光する蛍光体材料としては、例えば(Ca,Sr)
7(SiO
3)
6Cl
2:Euが挙げられるが、他の材料であってもよい。波長変換部材に含まれる蛍光体材料としては、青色光と黄色光を発光するものに限らず、混色することにより白色を得られれば他の色でもよく、例えば、赤色光と青色光と緑色光を発光するものをそれぞれ含ませてもよい。また、色温度を調整するために他の色を発光する蛍光体材料を追加してもよい。
【0029】
ダム部材13は、半導体発光素子11から離間した位置の基板10上に配されて周囲を囲む枠体である。ダム部材13としては、例えば樹脂やセラミック等を枠体状に成形して基板10上に接着剤で固定することや、基板10上に樹脂等の材料を枠形状に塗布して硬化させることなど、様々な態様を用いることができる。
図1に示すように、ダム部材13は、半導体発光素子11よりも高く形成されており、半導体発光素子11上に配された波長変換部材12の高さと略同一に形成されている。
【0030】
反射部材14は、樹脂等の分散媒に光散乱粒子を分散させたものであり、半導体発光素子11からの短波長可視光および波長変換部材12からの可視光を反射するための部材である。分散媒としては、短波長可視光を透過する材料であればよく、例えばジメチルシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ガラスなどが挙げられる。
図1に示すように、反射部材14はダム部材13の内側に充填されて半導体発光素子11と波長変換部材12の側面を覆って形成されている。
図1では、反射部材14の高さは、波長変換部材12とダム部材13の高さと略同一に形成されている。
【0031】
反射部材14における分散媒と光散乱粒子の比率としては、光散乱粒子が10体積パーセント濃度以上20体積パーセント濃度以下となる範囲が好ましい。10体積パーセント濃度未満では、光散乱粒子の密度が小さくなり短波長可視光が反射部材14で十分に反射されず、漏れ光が発生してしまう。また、20体積パーセント濃度より大きいと、光散乱粒子を分散媒に十分に濡らすことができずボイドが発生しやすくなり、歩留まりが低下するため好ましくない。ボイドが発生した場合には、ボイドを経由して短波長可視光が漏れてしまうおそれがあり、反射部材14で十分に短波長可視光を反射することができなくなってしまう。
【0032】
光散乱粒子の粒径としては、粒径分布の中央値(メジアン)が0.1μm≦50%D≦10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1μm≦50%D≦3μmの範囲である。粒径がこの範囲よりも小さいと、光散乱粒子が分散媒に対して均一に分散しにくくなり、この範囲よりも大きいと、光散乱粒子の比表面積が小さくなって短波長可視光を散乱しにくくなる。
【0033】
また、反射部材14の幅(図中横方向の厚さ)としては、0.2〜2.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5mm〜1.5mmの範囲である。反射部材14の幅がこの範囲よりも小さい場合には、反射部材14を通過して外部に取り出される漏れ光が増加してしまい、十分に波長変換部材12に対して短波長可視光を反射できない。波長変換部材12に対して十分に短波長可視光が反射されないと、波長変換されて白色を得るための青色光および黄色光の光量が不足し、結果として白色光の光束が低下して輝度も低下する。反射部材14の幅がこの範囲よりも大きい場合には、反射部材14の成型性が悪化する。
【0034】
発光装置1に電流を供給すると、半導体発光素子11が400nm近傍に発光ピーク波長を有する短波長可視光を発光する。半導体発光素子11からの短波長可視光が波長変換部材12に含まれる蛍光体材料に入射すると、蛍光体材料は励起されて青色光と黄色光とを発光し、混色されて白色光として発光装置1外部に取り出される。
【0035】
半導体発光素子11からの短波長可視光と波長変換部材12からの光が反射部材14に入射すると、反射部材14の分散媒中に分散されている光散乱粒子の屈折率差によって光が屈折して進行方向が変化して散乱される。反射部材14中には多数の光散乱粒子が分散されているため、多数の光散乱粒子に繰り返し散乱された光は、反射部材14の外部方向に再度取り出される。したがって、反射部材14に入射した光は散乱反射されて一部は反射部材14を通過して発光装置1の外部に取り出され、一部は波長変換部材12側に入射して波長変換される。
【0036】
発光装置1では、半導体発光素子11として視感度が低い短波長可視光を用いていることから、直接外部に取り出される短波長可視光が増加すると、波長変換部材12で波長変換される光量が低下し白色光の光束が低下してしまう。したがって、波長変換部材12に対して短波長可視光を良好に反射できる分散媒と光散乱粒子の選定が重要となってくる。
【0037】
図2は、半導体発光素子11が発光する発光積分強度を示すグラフである。
図2では、短波長可視光である395〜410nmの波長範囲のうち、最も波長が短い395nmで発光ピーク波長を有する場合を示している。
図2で示したように、半導体発光素子11の発光スペクトルは半値幅30nm程度のガウス分布に近似したものとなっており、350〜450nm程度まで分布が広がっている。このような半導体発光素子11では、全波長域での発光強度の積分値に対して、短波長側から発光強度を積分して1パーセンタイルとなる波長は365nm、10パーセンタイルとなる波長は385nm、25パーセンタイルとなる波長は390nm、50パーセンタイルとなる波長は395nmである。半導体発光素子11として、発光ピーク波長が410nmのものを用いた場合には、1パーセンタイル値は383nmであった。
【0038】
図2から明らかなように、半導体発光素子11として短波長可視光のものを用いると、その発光強度分布には、380nm以下の波長が数%程度含まれていることがわかる。従来の発光装置で用いられていた青色LEDでは、
図2に示した発光積分強度とは異なり、ピーク波長が450nm近傍にシフトしたものである。よって、半値幅が本発明と同程度であったとしても、青色LEDでは380nm以下の領域まではスペクトルが広がっておらず、TiO
2等の粒子を光散乱粒子に用いても青色光はほとんど吸収されなかった。
【0039】
しかし、本発明の発光装置1では、半導体発光素子11として短波長可視光を発光するものを用いていることから、反射部材14において分散媒中に分散されている光散乱粒子を適切に選択しなければ、光散乱粒子によって短波長可視光の一部が吸収されてしまう。その結果として、波長変換部材12に入射する短波長可視光の光量が減少し、波長変換部材12で波長変換される青色光および黄色光も減少して、発光装置1の光束と輝度が低下してしまう。このような問題は、半導体発光素子として青色LEDを用いた従来技術においては発生していなかったものである。
【0040】
光散乱粒子による光の吸収は、光散乱粒子を構成する物質のバンドギャップと光の波長が主な要因と考えられる。光散乱粒子を構成する物質は、それぞれ特有のバンドギャップを有しており、そのバンドギャップエネルギーを波長に換算したバンドギャップ波長よりも短波長の光を吸収してしまう。したがって、
図2に示したようなスペクトル分布である短波長可視光をほとんど吸収しないようにするためには、バンドギャップ波長が短波長可視光のスペクトル分布と可能な限り重ならない材料を光散乱粒子として用いる必要がある。
【0041】
具体的には、半導体発光素子11の発光積分強度において、1パーセンタイル値となる波長よりもバンドギャップ波長が短波長となるように光散乱粒子の材料を選択する。このようなバンドギャップ波長を選択すると、半導体発光素子11が発光した光のうち、光散乱粒子で吸収される比率を1%以下とすることができ、光の吸収による光束の低下を実用上は無視できる。
図2に示したように、発光ピーク波長が395nmの短波長可視光の場合には、1パーセンタイル値は365nmであり、発光ピーク波長が410nmの短波長可視光の場合には、1パーセンタイル値は383nmである。したがって、バンドギャップ波長が365nm以下(3.4eV以上)の材料を選択することで、光散乱粒子による短波長可視光の吸収を抑制し、発光装置1の光束を低下させず高輝度化を図ることが可能となる。
【0042】
また、反射部材14で短波長可視光を良好に反射するためには、分散媒と光散乱粒子の屈折率差も重要な要因となってくる。前述したように、反射部材14では分散媒と光散乱粒子の屈折率差によって生じる光の散乱が繰り返されることで、短波長可視光が入射してきた方向に再び短波長可視光が取り出されて、短波長可視光が散乱反射される。このとき、分散媒と光散乱粒子の屈折率差が小さい場合には、光が散乱される角度が小さくなって十分に光が散乱されないため、全体として反射部材14を通過して外部に漏れる光量が多くなってしまう。具体的には、光散乱粒子の屈折率は分散媒の屈折率よりも0.3以上大きいことが好ましい。
[実施例]
【0043】
本発明の第1実施形態の実施例として、
図1に示した発光装置1を作製した。基板10としてAlNのセラミックス基板を用い、半導体発光素子11としてInGaN系材料からなる活性層を有し発光ピーク波長が400nmのLEDチップを用いた。LEDチップのサイズは1mm×1mmであり、基板10上にフリップチップ実装した。
【0044】
波長変換部材12に含有させる蛍光体粒子として、青色蛍光体である(Ca,Sr)
5(PO
4)
3Cl:Euと、黄色蛍光体である(Ca,Sr)
7(SiO
3)
6Cl
2:Euを用い、色温度が5500Kとなるような比率で混合した。混合した二種類の蛍光体粒子が15体積パーセント濃度となるように、屈折率1.4のジメチルシリコーン樹脂中に分散させ、厚さ300μmのシート状に成形した。得られた蛍光含有シートを1.2mm×1.2mmのサイズに切断し、LEDチップの四方から0.1mmはみ出す位置に透光性接着樹脂で固定した。
【0045】
波長変換部材12から1mmの位置を囲むような枠状のダム部材13を形成して基板10上に設置した。したがって、ダム部材13の内側に形成される反射部材14の幅は1mmとなる。
【0046】
反射部材14として、屈折率が1.4のジメチルシリコーン樹脂中に[表1]で示した各材料からなる光散乱粒子を分散させて、ダム部材13内にディスペンス塗布して半導体発光素子11と波長変換部材12の側面を覆うように充填し、実施例1−9および比較例1−5の発光装置1を得た。実施例1−9および比較例2−5の各材料では、ジメチルシリコーン樹脂における光散乱粒子の濃度を10〜20体積パーセント濃度の範囲となるように調整し、粒径を0.1μm≦50%D≦3μmの範囲となるように調整した。比較例1では、光散乱粒子を添加しない屈折率1.4のジメチルシリコーン樹脂のみで反射部材14を形成した。
【0047】
このようにして得られた各発光装置1について、発光装置1に供給するオペレーション電流を350mAに固定して輝度と光束の測定を行った。輝度の測定方法としては、オペレーション電流を供給して20〜30分経過した後に、暗室中で波長変換部材12の上面に焦点をあわせてカメラで撮像して光量を測定し輝度を算出した。光束の測定方法としては、積分球に発光装置1を設置して、10msecの間オペレーション電流を供給し光束を測定した。このように測定した輝度と光束について、比較例1を基準として相対輝度と相対光束を算出した。
【0048】
表1に、実施例1−9および比較例1−5の各材料のバンドギャップ、屈折率、相対輝度、相対光束を示す。
【表1】
【0049】
実施例1−9であるGa
2O
3、HfO
2、Y
2O
3、ZnO、Nb
2O
5、Ta
2O
5、ZrO
2、AlN、BNは、いずれもバンドギャップが3.4eV以上であり、分散媒であるジメチルシリコーン樹脂との屈折率差も0.3以上となっている。これらの実施例1−9では、相対輝度が1.3以上であり相対光束も1.05以上となっており、光束が向上するとともに輝度も向上している。
【0050】
表1に示したように、比較例2のルチル型TiO
2では、ジメチルシリコーン樹脂との屈折率は大きいため、反射部材14から波長変換部材12に向けて反射される光量を確保できるが、バンドギャップが小さく短波長可視光を数%程度吸収してしまう。これにより、相対輝度および相対光束が実施例1−9より小さくなっている。
【0051】
実施例2において、光散乱粒子で短波長可視光が部分的に吸収されていることを、
図3を用いて説明する。
図3は、実施例1および比較例1,2の発光装置1について発光特性を測定したスペクトル図である。図中で実線が実施例1のスペクトルを示し、点線が比較例1のスペクトルを示し、破線が比較例2のスペクトルを示している。比較例1では、ジメチルシリコーン樹脂に光散乱粒子を分散していない例であり、半導体発光素子11からの光はほとんどが反射部材14を通過してしまうため、LEDチップが発光した短波長可視光である400nmの波長で強度が最大となっている。比較例2では、バンドギャップが3.0eVと小さいため、短波長可視光近傍の波長範囲で光が吸収されてしまい、光強度が実施例1よりも小さくなっていることがわかる。
【0052】
比較例3−5のMgF
2、Al
2O
3、SiO
2は、バンドギャップが3.4eVよりも十分に大きいため、光散乱粒子での短波長可視光の吸収による光量の低下はみられない。しかし比較例3−5は、分散媒であるジメチルシリコーン樹脂との屈折率差が0.3未満であり、反射部材14中で光散乱粒子によって十分に短波長可視光が散乱されず、短波長可視光を波長変換部材12に対して十分に反射できていない。したがって、相対輝度および相対光束が実施例1−9より小さくなっている。
【0053】
実施例1−9の中でも、相対輝度および相対光束が特に大きいものは実施例5−7,9のNb
2O
5、Ta
2O
5、ZrO
2、BNであり、さらにZrO
2、BNは僅かに着色しており、可視光の一部を吸収してしまうため、実施例5,6のNb
2O
5、Ta
2O
5が光散乱粒子として最も好ましい。
【0054】
表1に示したように、反射部材14において短波長可視光を良好に反射して、発光装置1から出射する白色光の光束および輝度を高くするためには、分散媒との屈折率差の大きさとバンドギャップ大きさのどちらか一方を満たす光散乱粒子の選択だけでは十分ではないことがわかる。これは従来の青色LEDチップを用いた発光装置では問題とならず、短波長可視光を発光する半導体発光素子11を用いた発光装置に特有の現象であり、ピーク波長が395〜410nmの半導体発光素子と、バンドギャップが3.4eV以上の光散乱粒子と、光散乱粒子の屈折率が分散媒より0.3以上大きいという3条件が揃って初めて光束と輝度の向上という効果を得られる。
【0055】
次に、光散乱粒子としてTa
2O
5を用い、波長変換部材12の厚さと蛍光体粒子の濃度を変化させた実施例10−12および比較例6,7を作製した。ここで、波長変換部材12の蛍光体条件である厚さを決定し、その厚さにおいて色温度5500Kを実現できる蛍光体粒子の量を決定して、ジメチルシリコーン樹脂に分散させた。したがって、波長変換部材12が厚いほど蛍光体粒子の体積パーセント濃度は低下する傾向にある。実施例10−12および比較例6,7の発光装置1は、波長変換部材の厚さと濃度以外は実施例6と同様に作製した。反射部材14における光散乱粒子であるTa
2O
5の濃度は、15体積パーセントであった。
【0056】
表2は、実施例10−12および比較例6,7について、実施例1−9および比較例1−5と同様の測定方法で相対輝度および相対光束について測定した結果を示している。相対輝度および相対輝度は、表1に示した比較例1を基準としている。
【表2】
【0057】
表2から明らかなように、実施例10−12では波長変換部材12の厚さがそれぞれ80μm、200μm、450μmであり、いずれも相対輝度が1.3以上であり相対光束も1.00以上となっており、光束が向上するとともに輝度も向上している。それに対して、比較例6,7の波長変換部材12の厚さはそれぞれ40μm、600μmであり、いずれも相対輝度は1.3未満であり相対光束も1.00未満となっている。
【0058】
比較例6のような波長変換部材12の厚さが50μm未満では、所望の色温度を実現するためにジメチルシリコーン樹脂中に分散される蛍光体粒子の濃度が高くなりすぎて、蛍光体粒子表面での光の散乱と遮蔽が増大して、光取り出しが困難になるため光束および輝度が低下してしまう。また、蛍光体粒子の濃度が高くなりすぎると、前述したように分散媒であるジメチルシリコーン樹脂と光散乱粒子を十分に濡らすことができずボイドが発生しやすくなり、歩留まりが低下するため好ましくない。ボイドが発生した場合には、ボイドを経由して短波長可視光が漏れてしまうおそれがあり、反射部材14で十分に短波長可視光を反射することができなくなってしまう。
【0059】
比較例7のような波長変換部材12の厚さが500μmより大きい場合には、反射部材14で覆われている波長変換部材12の側面の面積が増加しすぎる。これにより、波長変換部材12のうち発光装置1上面から露出している光取り出し面の比率が低下し、光取り出し面以外から取り出される光が増加してしまう。その結果として光取り出し面から取り出される光量が減少するため、発光装置1の光束および輝度が低下してしまう。したがって、望ましい波長変換部材12の厚さは、50〜500μmの範囲である。
【0060】
本発明の発光装置1では、半導体発光素子から出射した光のピーク波長が395〜410nmの範囲である短波長可視光であっても、光散乱粒子のバンドギャップが3.4eV以上であり、分散媒と光散乱粒子の屈折率差が0.3以上であることから、光散乱粒子によって吸収される光量を抑制でき、かつ光散乱粒子で良好に光を散乱できるため反射部材の反射率を向上させることができる。
【0061】
また、発光積分強度において1パーセンタイルの値が365〜383nmの半導体発光素子を用いることで、バンドギャップが3.4eV以上の物質である光散乱粒子によって吸収される光量を全体の1%以下とすることができる。これにより、半導体発光素子が発光した光量全体のうち、光散乱粒子で吸収されてしまう光量を実質的に無視できる程度まで低減できるため、さらに光束低下を抑制して高輝度化を図ることが可能となる。
【0062】
これにより、光源として短波長可視光を発光する半導体発光素子を用いて白色光の色温度改善を図りながらも、良好な反射特性の反射部材を用いて光束を低下させずに高輝度化を図ることが可能となる。
(第2実施形態)
【0063】
図4は、第2実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
図4に示すように、第2実施形態の発光装置4は、基板10上に半導体発光素子11を実装し、半導体発光素子11から離間した周囲に枠状の反射部材14を配置し、反射部材14の内側に波長変換部材12を充填している。
【0064】
本実施形態では、反射部材14は半導体発光素子11から離間した周囲に形成されて、半導体発光素子11の側面と上面は波長変換部材12で覆われている。したがって、半導体発光素子11が発光した短波長可視光は、波長変換部材12に入射して波長変換される。波長変換部材12で変換されなかった短波長可視光は、反射部材14に到達して散乱反射され再び波長変換部材12に入射する。これにより、短波長可視光を反射部材14で良好に反射して波長変換部材12からの白色発光の効率を向上させることができ、発光装置4の光束および輝度を向上させることができる。
(第3実施形態)
【0065】
図5は、第4実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
図5に示すように、第3実施形態の発光装置5は、基板10上に半導体発光素子11を実装し、半導体発光素子11から離間した周囲に内側側面が傾斜した枠状の反射部材14を配置し、反射部材14の内側に透光性部材15を充填して半導体発光素子11を封止し、反射部材14の上に波長変換部材12を形成している。
【0066】
透光性部材15は、半導体発光素子11が発光する短波長可視光を透過する透明な材料であり、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ガラスなどが挙げられる。また、透光性部材15は、半導体発光素子11の封止部材としても機能している。波長変換部材12を板状部材として別途用意しておき、透光性部材15として窒素などの不活性ガスを充填し、反射部材14と波長変換部材12とで半導体発光素子11を気密封止するとしてもよい。
【0067】
本実施形態では、半導体発光素子11が発光した短波長可視光は、透光性部材15を通過して波長変換部材12や反射部材14に到達する。反射部材14に到達した短波長可視光は、反射部材14で散乱反射されて波長変換部材12に入射する。これにより、短波長可視光を反射部材14で良好に反射して波長変換部材12からの白色発光の効率を向上させることができ、発光装置5の光束および輝度を向上させることができる。
(第4実施形態)
【0068】
図6は、第4実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
図6に示すように、第4実施形態の発光装置6は、基板10上に半導体発光素子11を実装し、基板10表面の半導体発光素子11の周囲を覆って反射部材14が形成されている。また、半導体発光素子11とその周囲の反射部材14上は半球形状に透光性部材15が形成されており、透光性部材15の外側にドーム形状の波長変換部材12が形成されている。
【0069】
透光性部材15は、半導体発光素子11が発光する短波長可視光を透過する透明な材料であり、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ガラスなどが挙げられる。また、透光性部材15は、半導体発光素子11の封止部材としても機能している。波長変換部材12を板状部材として別途用意しておき、透光性部材15として窒素などの不活性ガスを充填し、反射部材14と波長変換部材12とで半導体発光素子11を気密封止するとしてもよい。
【0070】
本実施形態では、半導体発光素子11から上方に出射した短波長可視光は、透光性部材15を通過して波長変換部材12に到達する。半導体発光素子11から側方に出射した短波長可視光は、反射部材14に到達し散乱反射されて波長変換部材12に入射する。これにより、短波長可視光を反射部材14で良好に反射して波長変換部材12からの白色発光の効率を向上させることができ、発光装置6の光束および輝度を向上させることができる。
(第5実施形態)
【0071】
図7は、第5実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
図7に示すように、第5実施形態の発光装置7は、基板10上に半導体発光素子11を実装し、半導体発光素子11から離間した周囲に反射部材14を配置し、反射部材14の内側に波長変換部材12を滴下して略半球状に形成している。ここで、反射部材14は波長変換部材12を滴下した際に、波長変換部材12が半導体発光素子11の近傍で略半球状となるように堰き止めるダム部材として機能している。
【0072】
本実施形態では、反射部材14は半導体発光素子11から離間した周囲に形成されて、半導体発光素子11の側面と上面は波長変換部材12で覆われている。したがって、半導体発光素子11が発光した短波長可視光は、波長変換部材12に入射して波長変換される。半導体発光素子11から側方に出射し波長変換部材12で変換されなかった短波長可視光は、反射部材14に到達して散乱反射され再び波長変換部材12に再び入射する。これにより、短波長可視光を反射部材14で良好に反射して波長変換部材12からの白色発光の効率を向上させることができ、発光装置7の光束および輝度を向上させることができる。
(第6実施形態)
【0073】
図8は、第6実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
図8に示すように、第6実施形態の発光装置8は、基板10上に半導体発光素子11を実装し、半導体発光素子11から離間した位置に内側側面が基板10に対して傾斜した反射部材14を配置し、反射部材14の傾斜面上に波長変換部材12を形成している。本実施形態では、半導体発光素子11として端面発光型のものを用いており、例えばスーパールミネッセントダイオード(SLD)や半導体レーザ(LD)などが挙げられる。
【0074】
端面発光型の半導体発光素子11が発光する短波長可視光は、図中矢印で示した方向に指向性をもって出射され、波長変換部材12に到達する。短波長可視光は波長変換部材12で一部が波長変換されるが、残りの一部は波長変換部材12を通過して反射部材14で散乱反射され、再び波長変換部材12に入射する。これにより、短波長可視光を反射部材14で良好に反射して波長変換部材12からの白色発光の効率を向上させることができ、発光装置8の光束および輝度を向上させることができる。
(第7実施形態)
【0075】
第1〜第5実施形態では、半導体発光素子11の周囲をすべて反射部材14で囲んだ例を示した。しかし本発明は、光散乱粒子のバンドギャップが3.4eV以上であり、分散媒と光散乱粒子の屈折率差が0.3以上であることから、半導体発光素子11から出射した光のピーク波長が395〜410nmの範囲である短波長可視光であっても、光散乱粒子によって吸収される光量を抑制でき、かつ光散乱粒子で良好に光を散乱できるため反射部材14の反射率を向上させることができるものである。
【0076】
したがって、半導体発光素子11及び波長変換部材12の周囲すべてを反射部材14が囲んでいる必要はなく、半導体発光素子11及び波長変換部材12の周囲の少なくとも一部に反射部材14を形成しておけば、反射部材14での短波長可視光の良好な散乱反射をすることが可能である。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。