(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔粘着シートの構成〕
本発明の粘着シートは、基材と粘着剤層との間にプライマー層を有するものであれば、その構成は特に限定されない。プライマー層は基材及び粘着剤層と接着し、層間密着性を向上させる目的で設けられた層である。また、本発明の粘着シートが有するプライマー層は、層間密着性に優れるため、当該粘着シートの切断時における粘着剤層のはみ出しを効果的に抑制するという役割も担う。
そのため、本発明の粘着シートは、基材とプライマー層との間、及び、プライマー層と粘着剤層との間には他の層を有さず、少なくとも、基材、プライマー層、及び粘着剤層がこの順で直接積層した構成を有する。
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、金属膜を有する基材を用いる場合、この基材の金属膜上に、プライマー層が積層し、さらに当該プライマー層上に粘着剤層が積層した構成を有することが好ましい。このような構成を有する粘着シートにおいても、当該粘着シートは、基材の金属膜とプライマー層との間、及びプライマー層と粘着剤層との間の層間密着性に優れている。
【0012】
例えば、
図1は、本発明の一態様の粘着シートの断面図である。
本発明の一態様の粘着シートは、
図1(a)に示すような、基材11の一方の面上にプライマー層12を設け、さらにプライマー層12上に粘着剤層13を設けた粘着シート1aや、
図1(b)に示すような、粘着剤層13上に、さらに剥離材14を設けた粘着シート1b等が挙げられる。
また、本発明の一態様の粘着シートとしては、
図1(c)に示すような、基材11の両方の面上にそれぞれプライマー層12、12’、粘着剤層13、13’、及び剥離材14、14’をそれぞれ積層した粘着シート1cであってもよい。
【0013】
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいては、上述の基材11、プライマー層12、粘着剤層13、及び剥離材14には該当しない他の層を設けてもよい。
以下、本発明の粘着シートを構成する各層について説明する。
【0014】
<プライマー層>
本発明の粘着シートが有するプライマー層は、酸価が10.0KOHmg/g以上、且つ水酸基価が2.0KOHmg/g以上である水性ポリエステル系樹脂を含むプライマー層形成用組成物から形成された層である。
特定の酸価及び水酸基価を有する水性ポリエステル系樹脂を含むプライマー層形成用組成物から形成されたプライマー層は、粘着剤層又は基材との間の層間密着性に優れる。特に、エマルション型粘着剤から形成した粘着剤層や、金属膜を有する樹脂フィルムのような、密着性が不十分となりやすい層に対しても、優れた層間密着性を有する。また、当該プライマー層は、層間密着性に優れるため、粘着シートの切断時における粘着剤層のはみ出しの抑制効果にも優れる。
【0015】
本発明の一態様において、プライマー層の厚さとしては、層間密着性を良好とし、再剥離性に優れると共に、切断時における粘着剤層のはみ出しの抑制し得る粘着シートとする観点から、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは20〜1500nm、更に好ましくは30〜1200nm、より更に好ましくは50〜1000nmである。
【0016】
(水性ポリエステル系樹脂)
プライマー層の形成材料であるプライマー層形成用組成物は、酸価が10.0KOHmg/g以上、且つ水酸基価が2.0KOHmg/g以上である水性ポリエステル系樹脂(以下、単に「水性ポリエステル系樹脂」ともいう)を含む。
本発明において、「水性ポリエステル系樹脂」は、水に溶解して水溶液の形態をとり得るポリエステル系樹脂、もしくは、水中にエマルションとして分散した水分散体の形態をとり得るポリエステル系樹脂を意味する。
なお、本発明の一態様において、水中で水性ポリエステル系樹脂のエマルションとして分散した水分散体とするために、本発明の効果を損なわない範囲において、少量の乳化剤や界面活性剤等を用いてもよい。
【0017】
ただし、乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分は、プライマー層中で局在化することで、接着性が低下し、層間密着性の低下の原因となる場合がある。その結果、粘着シートを被着体から剥離する際に、被着体に糊残りが生じる現象や、粘着シートの切断時に粘着剤層がはみ出してしまう現象を引き起こし易い。
上記の現象を抑制する観点から、本発明の一態様において、水性ポリエステル系樹脂は、自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂であれば、層間密着性の低下の原因となる乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分を使用せずにエマルションを形成することもできるため、得られる粘着シートの層間密着力をより向上させることができる。さらに、当該粘着シートは、切断時における粘着剤層のはみ出しの抑制効果にも優れる。
なお、「自己乳化型」とは、樹脂骨格に何らかの親水性基を化学的に導入し、乳化剤や界面活性剤の添加を必要とせず、樹脂自体が乳化能を有することを意味する。
【0018】
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、10.0KOHmg/g以上であり、好ましくは15.0KOHmg/g以上、より好ましくは20.0KOHmg/g以上、更に好ましくは30.0KOHmg/g以上、より更に好ましくは40.0KOHmg/g以上である。
【0019】
水性ポリエステル系樹脂の水酸基価は、2.0KOHmg/g以上であり、好ましくは2.5KOHmg/g以上、より好ましくは3.0KOHmg/g以上、更に好ましくは3.5KOHmg/g以上、より更に好ましくは4.0KOHmg/g以上である。
【0020】
酸価が10.0KOHmg/g未満の樹脂、もしくは、水酸基価が2.0KOHmg/g未満の樹脂を用いて形成したプライマー層を有する粘着シートは、形成したプライマー層と、基材及び/又は粘着剤層との層間密着性が低くなる傾向にある。また、再剥離性も劣るため、被着体に貼付後に剥離する際、被着体に糊残りが生じやすい。さらに、得られる粘着シートを切断する際に、粘着剤層のはみ出しが生じ易い。
なお、本発明において、水性ポリエステル系樹脂の酸価及び水酸基価は、JIS K 0070−1992に準拠して測定した値である。
【0021】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、形成されたプライマー層と、基材及び/又は粘着剤層との層間密着性を向上させる観点、並びに、切断時における粘着剤層のはみ出しの抑制効果にも優れる粘着シートとする観点から、好ましくは30〜55℃、より好ましくは33〜50℃、更に好ましくは36〜48℃である。
なお、本発明において、水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準拠して測定した値であり、具体的には、実施例に記載の方法にて、測定した値である。
【0022】
水性ポリエステル系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、水への溶解性又は分散性を良好とし、形成されるプライマー層と、基材及び/又は粘着剤層との層間密着性を向上させる観点から、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1500〜15000、更に好ましくは2000〜10000、より更に好ましくは2500〜7500である。
水性ポリエステル系樹脂のMwが1000以上であれば、形成されるプライマー層の耐久性を良好とすることができる。一方、水性ポリエステル系樹脂のMwが20000以下であれば、形成されるプライマー層と、基材及び/又は粘着剤層との層間密着性を良好とすることができる。
なお、本発明において、質量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0023】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体、及び当該共重合体の変性物等が挙げられる。
当該共重合体の変性物としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体の末端に有するヒドロキシル基とポリイソシアナート化合物とが反応して得られるポリウレタン変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。本発明においては、このような水性ポリエステル樹脂の変性物も「水性ポリエステル系樹脂」に含まれる。
【0024】
アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを使用することができる。
具体的なアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等のグリコール類;これらのグリコール類にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン等の二価環式アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の三価以上の多価アルコールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、水酸基価を上記範囲に調整する観点から、三価以上の多価アルコールに由来する構成単位を有することが好ましい。
また、本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、上記と同様の観点から、水酸基を含有する水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0026】
カルボン酸成分としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸を使用することができる。
具体的なカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸等のトリカルボン酸及びこれらの無水物;1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、酸価を上記範囲に調整する観点から、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸に由来する構成単位を有することが好ましく、トリカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物に由来する構成単位を有することがより好ましい。
また、本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、上記と同様の観点から、カルボキシル基を含有する水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0028】
(汎用添加剤、他の樹脂成分)
本発明の一態様で用いるプライマー層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の水系ポリエステル系樹脂以外に、汎用添加剤を含有していてもよい。
汎用添加剤としては、粘着シートの用途に応じて適宜選択でき、例えば、顔料、着色剤、金属粉末、導電材、制震材、ブロッキング防止剤、可塑剤、溶剤、界面活性剤、分散剤、凍結溶融安定剤、中和剤、増粘剤、濡れ剤、消泡剤、滑り剤、防錆剤、帯電防止剤、架橋剤、粘着付与樹脂、無機フィラー、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの汎用添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の一態様で用いるプライマー層形成用組成物中の上述の水系ポリエステル系樹脂の含有量は、プライマー層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0030】
また、本発明の一態様で用いるプライマー層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の水系ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂成分を含有してもよいが、層間密着性に優れた粘着シートとする観点から、他の樹脂成分を含有しないことが好ましい。
本発明の一態様で用いるプライマー層形成用組成物中の他の樹脂成分の含有量は、上述の水系ポリエステル系樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0〜10質量部、更に好ましくは0〜5質量部、より更に好ましくは0〜1質量部である。
【0031】
<基材>
本発明の一態様の粘着シートが有する基材としては、例えば、樹脂フィルム、紙基材、紙基材を樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられ、当該粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0032】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂;三酢酸セルロース樹脂;ポリカーボネート樹脂;アセテート樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられる。
本発明の一態様で基材として用いる樹脂フィルムは、これらの樹脂を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
なお、本発明の一態様において、基材として用いる樹脂フィルムには、上記樹脂の他に、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
また、基材として樹脂フィルムを用いる場合、当該樹脂フィルムは、複数の樹脂フィルムを積層した積層体としてもよく、また、発泡体であってもよい。
【0034】
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
ラミネート紙としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0035】
また、基材として樹脂フィルムやラミネート紙を用いる場合、基材とプライマー層との間の層間密着性をより向上させる観点から、樹脂フィルム又はラミネート紙の表面に対して、酸化法や凹凸化法等の表面処理を施してもよい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、基材とプライマー層との間の層間密着性をより向上させる観点、及び操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。
【0036】
本発明の一態様で用いる基材としては、樹脂フィルムが好ましく、ポリエステル樹脂を含む樹脂フィルムがより好ましい。
【0037】
また、本発明の一態様で用いる基材としては、金属及び金属酸化物から選ばれる1種以上を含む金属膜を有する樹脂フィルムを用いることができる。
本発明の粘着シートは、上述のプライマー層を有するため、金属膜を有する樹脂フィルムを用いた場合でも、金属膜を有する基材と当該プライマー層との間の層間密着性を良好とすることができる。
金属膜の厚さとしては、粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、通常1〜300nmである。
【0038】
金属膜に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、錫、銅、ニッケル、クロム、銀、金、鉄、ビスマス、チタン、インジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、マンガン、タンタル、コバルト等が挙げられる。
また、金属膜に含まれる金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化亜鉛等が挙げられる。
本発明の一態様において、多様な用途に使用でき、コスト面及び環境面に優れているとの観点から、当該金属膜は、アルミニウムを含むことが好ましい。
なお、当該金属膜は、単一の金属膜であってもよく、複数の金属膜が積層した積層膜であってもよい。
【0039】
樹脂フィルム上に金属膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、PVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、電気メッキ法、無電解メッキ法等が挙げられる。
なお、樹脂フィルムと金属膜との密着性を向上させるために、樹脂フィルムの表面に対して、上述の酸化法や凹凸化法等の表面処理を施してもよい。
また、金属膜を有する樹脂フィルムの作製方法としては、予め用意した金属膜上に、樹脂フィルムを構成する樹脂の溶液又は溶融した樹脂を、コーティング法、射出成型法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等により塗布して、樹脂フィルムを形成する方法であってもよい。
【0040】
なお、金属酸化物を含む金属膜は、金属酸化物自体を用いる他に、金属を含む金属膜の表面に酸化皮膜が形成されたものも用いることもできる。酸化皮膜は金属層の表面に自然に形成されたものでもよいし、電気化学的処理等により人工的に形成されたものでもよい。
【0041】
本発明の一態様で用いる基材の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、取扱性及び経済性の観点から、好ましくは5〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは25〜150μmである。
なお、基材が金属膜を有する樹脂フィルムの場合、上記の厚みは、樹脂フィルムだけでなく、金属膜の厚さも加えたものである。
【0042】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層を構成する粘着剤としては、当該粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
具体的な粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エチレンビニルアルコール(EVA)系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤等が挙げられる。
これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の一態様において、これらの粘着剤の中でも、取扱性の観点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0043】
なお、粘着剤層を構成する粘着剤は、エマルション型粘着剤、溶剤型粘着剤、無溶剤型粘着剤のいずれであってもよいが、環境面や安全面の観点から、エマルション型粘着剤が好ましい。
ここで、エマルション型粘着剤から形成した粘着剤層は、層間密着性が低くなる傾向にある。しかしながら、本発明の粘着シートが有する上述のプライマー層は、エマルション型粘着剤から形成した粘着剤層との層間密着性も良好である。そのため、本発明の一態様において、エマルション型粘着剤を用いることによる弊害(層間密着性の低下)の影響は非常に小さい。
【0044】
粘着剤層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜80μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0045】
<剥離材>
本発明で用いる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用基材としては、例えば、本発明の粘着シートが有する基材として使用し得る、樹脂フィルム、紙基材、ラミネート紙等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0046】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はない。
例えば、
図1(a)の粘着シート1aは、基材11上に、上述のプライマー層形成用組成物を公知の塗布方法にて塗布し、乾燥して、プライマー層12を形成した後、さらに当該プライマー層12上に、上述の粘着剤を同様の塗布方法にて塗布し、乾燥して、粘着剤層13を形成することで製造することができる。
また、上記の方法にて製造した
図1(a)の粘着シート1aの粘着剤層13上に、剥離材14を積層することで、
図1(b)の粘着シート1bを製造することができる。
【0047】
図1(b)の粘着シート1bは、剥離材14上に、上述の粘着剤を塗布し、乾燥して、粘着剤層13を形成し、さらに当該粘着剤層13上に、上述のプライマー層形成用組成物を塗布し、乾燥して、プライマー層12を形成した後、当該プライマー層12上に基材11を積層することによっても製造することができる。
また、
図1(b)の粘着シート1bは、剥離材14上に上記の方法で形成した粘着剤層13と、基材11上に上記の方法で形成したプライマー層12とを貼り合わせることでも製造することができる。
【0048】
図1(c)の粘着シート1cの製造方法としては、まず、剥離材14上に、上述の粘着剤を塗布し、乾燥して、粘着剤層13を形成し、さらに当該粘着剤層13上に、上述のプライマー層形成用組成物を塗布し、乾燥して、プライマー層12を形成した積層体を作製する。同様にして、剥離材14’上に、粘着剤層13’及びプライマー層12’を順に形成した別の積層体も作製し、基材11の両面に、2つの積層体のプライマー層12、12’を貼り合わせて作製する方法が挙げられる。
【0049】
プライマー層形成用組成物は、塗布性を良好とし、作業効率を向上させる観点から、溶媒を加えて溶液の形態として、基材又は剥離材上に塗布することが好ましい。
当該溶媒としては、特に制限は無いが、プライマー層形成用組成物は上記の水性ポリエステル系樹脂を含むため、水又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
当該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
上記混合溶媒における水と有機溶媒との質量比〔水/有機溶媒〕としては、有機溶媒の種類や水性ポリエステル系樹脂の特性により適宜選択されるが、好ましくは10/90〜99/1、より好ましくは30/70〜95/5、更に好ましくは55/45〜90/10である。
【0050】
また、粘着剤についても、塗布性を良好とし、作業効率を向上させる観点から、溶媒を加えて溶液の形態として、基材又は剥離材上に塗布することが好ましい。
当該溶媒としては、粘着剤を溶解し得るものであればよく、粘着剤の種類により適宜選択されるが、例えば、水、上述の有機溶媒、及び、水と当該有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
上記混合溶媒中の水と有機溶媒との質量比の好適範囲としては、プライマー層形成用組成物の溶液を調製するのに使用される、上述の混合溶媒の範囲と同じである。
【0051】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、リップコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
塗布後に形成した塗膜の乾燥温度及び乾燥時間については、特に制限はなく、適宜設定することができる。
【実施例】
【0052】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の各種物性値は、下記の方法により測定した値である。
【0053】
(1)質量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、昇温速度20℃/分にて測定した。
(3)酸価、水酸基価
JIS K 0070−1992に準拠して測定した。
【0054】
実施例1
カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)(商品名「プラスコートZ−730」、互応化学社製、Mw=3,000、Tg=46℃、酸価=50.0KOHmg/g、水酸基価=5.0KOHmg/g、自己乳化型)を100質量部に対して、水とイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶媒(水/IPA=70/30(質量比))を800質量部加えて希釈し、プライマー層形成用組成物の溶液を調製した。
そして、基材として、アルミニウム(Al)が蒸着されたAl膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「メタルミーS#50」、東レフィルム加工(株)製、厚さ:50μm)を用いた。
当該基材のAl膜の面上に、ワイヤーバーを用いて上記プライマー層形成用組成物の溶液を塗布し、塗布膜を形成し、当該塗布膜を、100℃で30秒間乾燥させ、厚さ100nmのプライマー層を形成した。
さらに、形成したプライマー層上に、アプリケーター(テスター産業(株)製)を用いて、アクリル系エマルション型粘着剤(商品名「オリバインBPW5012」、東洋インキ製造(株)製)を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を100℃で60秒間乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
そして、形成した粘着剤層上に、剥離シート(商品名「SP−8Kアオ」、リンテック(株)製)の剥離処理面を貼り合わせ、粘着シートを作製した。
【0055】
実施例2
プライマー層の厚さを50nmとした以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0056】
実施例3
プライマー層の厚さを1000nmとした以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0057】
実施例4
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(B)(商品名「ポリエスターWR961」、日本合成化学社製、Mw=7,000、Tg=40℃、酸価=65.0KOHmg/g、水酸基価=19.0KOHmg/g、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0058】
比較例1
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「スルホン酸基含有水性ポリエステル系樹脂(C)(商品名「プラスコートZ−561」、互応化学社製、Mw=27,000、Tg=64℃、酸価=5.0KOHmg/g未満、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0059】
比較例2
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「スルホン酸基含有水性ポリエステル系樹脂(D)(商品名「プラスコートRZ−570」、互応化学社製、Mw=23,000、Tg=60℃、酸価=5.0KOHmg/g未満、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0060】
比較例3
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「スルホン酸基含有水性ポリエステル系樹脂の(E)(商品名「ポリエスターWR−901」、日本合成化学社製、Mw=16,000、Tg=67℃、酸価=5.0KOHmg/g未満、水酸基価=6.0KOHmg/g、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0061】
比較例4
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「水性ポリエステル系樹脂(F)(商品名「バイロナールMD1500」、東洋紡社製、Mw=8,000、Tg=77℃、酸価=3.0KOHmg/g未満、水酸基価=14.0KOHmg/g、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0062】
比較例5
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「水性ポリエステル系樹脂(G)(商品名「バイロナールMD1480」、東洋紡社製、Mw=15,000、Tg=20℃、酸価=3.0KOHmg/g、水酸基価=6.0KOHmg/g、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0063】
比較例6
「カルボキシル基含有水性ポリエステル系樹脂(A)」に代えて、「シラノール基含有水性ポリウレタン系樹脂(H)(商品名「タケラックWS−4000」、三井化学ポリウレタン(株)製、Tg=136℃、自己乳化型)」を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0064】
実施例及び比較例で作製した粘着シートについて、以下の耐久試験前後の「層間密着性(再剥離性)」及び「粘着剤層のはみ出しの有無」を評価した。当該結果を表1に示す。
(耐久試験)
実施例及び比較例で作製した粘着シートを、40℃、80%RH(相対湿度)環境下で7日間静置した。
【0065】
〔層間密着性(再剥離性)〕
上記耐久試験前後の粘着シートをそれぞれ23℃、50%RH(相対湿度)環境下で30mm×50mmにカットし、試験片(I)を作製した。当該試験片(I)の剥離シートを除去し、表出した粘着剤層を、下記の2種類の被着体に各々貼付した。
・ステンレス(SUS)板
・ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーT60S、東レ社製PETフィルム)
そして、各被着体に貼付した試験片(I)を、40℃80%RH(相対湿度)の環境下、もしくは70℃の環境下で1日間静置した後、被着体から当該試験片(I)を手で約300mm/minの速度にて剥離した。
その上で、剥離後の試験片(I)の各層の界面破壊の状況、及び被着体上の糊残り(粘着剤層)の有無を目視で観察し、以下の基準により、粘着シートの層間密着性(再剥離性)を評価した。
・A:基材とプライマー層との間、及び、プライマー層と粘着剤層との間において、界面破壊が見られない。また、被着体に糊残りは見られず、再剥離性に優れる。
・B:基材とプライマー層との間、もしくは、プライマー層と粘着剤層との間において、若干の界面破壊が見られる。また、被着体に糊残りが一部確認された。
・C:プライマー層と粘着剤層との間において、界面破壊が見られ、被着体に粘着剤層の大半が残存した。
・D:基材と粘着剤層との間において、界面破壊が見られ、被着体に粘着剤層の大半が残存した。
【0066】
〔粘着剤層のはみ出しの有無〕
上記耐久試験前後の粘着シートをそれぞれ23℃、50%RH(相対湿度)環境下で25mm×100mmにカットし、試験片(II)を作製した。当該試験片(II)を100枚重ね、ギロチン断裁機にて断裁した際の、ギロチン刃及び粘着シートの断裁面を目視観察し、以下の基準により、粘着シートの粘着剤層のはみ出しの有無を評価した。
・A:粘着剤層のはみ出しが見られず、ギロチン刃及び断裁面にもベトツキが確認されなかった。
・B:若干の粘着剤層のはみ出しが見られ、ギロチン刃及び断裁面にも若干のベトツキが確認されるが、実用上問題ない程度である。
・C:粘着剤層のはみ出しが酷く、実用上の使用が難しい程度である。
【0067】
【表1】
【0068】
表1より、本発明の一態様である実施例1〜4の粘着シートは、比較例1〜6の粘着シートに比べて、耐久試験前後の双方ともに、層間密着性(再剥離性)に優れ、粘着剤層のはみ出しも見られなかった。