特許第6457263号(P6457263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457263
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】タウプロテアーゼ組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20190110BHJP
   C12N 9/64 20060101ALI20190110BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20190110BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20190110BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20190110BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20190110BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190110BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   C12N15/57ZNA
   C12N9/64 Z
   C07K16/40
   C12N5/10
   C12Q1/37
   A61K38/48 100
   A61P25/00
   A61P25/28
【請求項の数】35
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2014-511595(P2014-511595)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-522237(P2014-522237A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】US2012038672
(87)【国際公開番号】WO2012162179
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】61/569,558
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/544,090
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/488,493
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513291687
【氏名又は名称】オリゴメリックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】モエ ジェームズ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィドウィッツ エリオット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロペス パトリシア
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/021755(WO,A1)
【文献】 特表2006−515270(JP,A)
【文献】 特表2004−531224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5のいずれか1つのアミノ酸配列又はタウタンパク質4R2Nのアミノ酸配列を含み、かつ配列番号6からの少なくとも50アミノ酸の連続配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、切断型タウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドであって、
前記切断型タウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドが薬物標的として構成され、
前記切断型タウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドが配列番号6のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、296、301、303、304、315、317、332、335、336、337、342、363、369、389、406、または427に対応する位置で少なくとも1つの置換を含み、前記置換が、元の非置換のタウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドと比較して、前記プロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドに向上したセリンプロテアーゼ活性を与える、切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項2】
配列番号6からの少なくとも60アミノ酸の連続配列と少なくとも約96%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項3】
配列番号6からの少なくとも70アミノ酸の連続配列と少なくとも約97%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1または請求項2に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項4】
配列番号6からの少なくとも80アミノ酸の連続配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項5】
配列番号6からの少なくとも90アミノ酸の連続配列と少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項6】
約70〜約250アミノ酸長の請求項1〜5のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項7】
約80〜約220アミノ酸長の請求項1〜6のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項8】
約100〜約210アミノ酸長の請求項1〜7のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも85%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも95%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の切断型タウプロテアーゼのペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチド。
【請求項11】
1つまたは複数のアミノ酸置換が、アルギニンからヒスチジン置換、アルギニンからロイシン置換、アルギニンからトリプトファン置換、アスパラギンからアラニン置換、アスパラギンからヒスチジン置換、アスパラギンからリシン置換、グルタミン酸からバリン置換、グルタミンからアルギニン置換、グリシンからアルギニン置換、グリシンからセリン置換、グリシンからバリン置換、イソロイシンからバリン置換、ロイシンからアルギニン置換、ロイシンからバリン置換、リシンからイソロイシン置換、リシンからメチオニン置換、リシンからトレオニン置換、プロリンからロイシン置換、プロリンからセリン置換、プロリンからトレオニン置換、セリンからアスパラギン置換、セリンからイソロイシン置換、セリンからロイシン置換、セリンからフェニルアラニン置換、トレオニンからメチオニン置換、バリンからイソロイシン置換、バリンからメチオニン置換、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項に記載のタウプロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチド。
【請求項12】
1つまたは複数のアミノ酸置換が、R5H置換、R5L置換、K257T置換、I260V置換、L266V置換、G272V置換、G273R置換、N279K置換、L284V置換、N296A置換、N296H置換、P301L置換、P301S置換、P301T置換、G303V置換、G304S置換、S305I置換、S305N置換、L315R置換、K317M置換、S320F置換、P332S置換、G335S置換、G335V置換、Q336R置換、V337M置換、E342V置換、S352L置換、S356T置換、V363I置換、K369I置換、G389R置換、R406W置換、T427M置換、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載のタウプロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチド。
【請求項13】
前記バリアントが、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも85%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、請求項12のいずれか一項に記載のタウプロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチド。
【請求項14】
前記バリアントが、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも95%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、請求項12又は13に記載のタウプロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチド。
【請求項15】
配列番号6からの少なくとも40の連続アミノ酸配列を含み、配列番号6のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、285、296、301、303、304、305、315、317、320、332、335、336、337、342、352、356、363、369、389、406、または427に対応する1つまたは複数のアミノ酸において変異されている単離されたペプチドまたはポリペプチドであって、前記ペプチドまたはポリペプチドは、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも85%であるセリンプロテアーゼ活性を有前記変異が、元の非変異のタウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドと比較して、前記プロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドに向上したセリンプロテアーゼ活性を与える、ペプチドまたはポリペプチド。
【請求項16】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のいずれか1つからの少なくとも50の連続アミノ酸配列を含み、配列番号6のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、285、296、301、303、304、305、315、317、320、332、335、336、337、342、352、356、363、369、389、406、または427の1つまたは複数に対応する1つまたは複数のアミノ酸において変異されている、約70〜約220アミノ酸長の請求項15に記載の単離されたペプチドまたはポリペプチドであって、前記ペプチドまたはポリペプチドは、完全長タウ4R2N三量体プロテアーゼのセリンプロテアーゼ活性の少なくとも70%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、ペプチドまたはポリペプチド。
【請求項17】
哺乳動物に対する薬学的投与のために製剤化される、請求項1〜1のいずれか一項に記載のペプチドまたはポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合する、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体または抗原結合断片が、実質的に完全長のタウ4R2N三量体ポリペプチドと実質的に結合しない、請求項18に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項20】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号6のポリペプチドに結合しない、請求項18または19に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項21】
前記抗体が、モノクローナル、ポリクローナルまたは単一特異的抗体である、請求項1820のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項22】
前記抗体が、哺乳動物における発現のためにヒト化されるかまたはコドン最適化される、請求項1821のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項23】
請求項1に記載のペプチドもしくはポリペプチドまたは請求項1822のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項1に記載のペプチドもしくはポリペプチド、または請求項1822のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項1に記載のペプチドもしくはポリペプチド、または請求項1822のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドで形質転換された単離された宿主細胞。
【請求項26】
哺乳動物宿主細胞として定義される、請求項25に記載の単離された宿主細胞。
【請求項27】
ヒト宿主細胞として定義される、請求項2または請求項2に記載の単離された宿主細胞。
【請求項28】
薬学的に許容可能な担体およびa)請求項1に記載のペプチドまたはポリペプチド、b)請求項18〜2のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、c)請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド、d)請求項2に記載の発現ベクター、または請求項2〜2のいずれか一項に記載の単離された宿主細胞を含む、組成物。
【請求項29】
症状の治療、診断、改善、または創薬に使用するための請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ヒトにおけるタウオパチー、神経損失、認知症、老衰、加齢に伴う記憶障害、外傷性脳損傷、またはアルツハイマー病についての症状の治療、診断、改善、または創薬に使用するための請求項28または請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
(a)切断タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼバリアントの発現をもたらす条件下で、請求項1に記載のペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞の集団を培養する工程、および(b)前記宿主細胞の集団または培地から、発現した切断タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼバリアントを回収する工程を含む、切断タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼバリアントを産生する方法。
【請求項32】
セリンプロテアーゼ阻害剤を識別する方法であって、前記方法は、機能的タウプロテアーゼを発現するのに有効な条件下で、セリンプロテアーゼ活性を阻害する疑いのある化合物を、請求項1に記載のペプチドまたはポリペプチドと接触させる工程を含み、前記化合物によるタウプロテアーゼ活性の阻害が、前記化合物のセリンプロテアーゼ阻害活性の指標である、方法。
【請求項33】
配列番号1〜配列番号5のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、配列番号6のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、285、296、301、303、304、305、315、317、320、332、335、336、337、342、352、356、363、369、389、406、または427に対応する1つまたは複数のアミノ酸において変異されている組換えタウ4R2N三量体プロテアーゼ融合タンパク質であって、前記変異が、元の非変異のタウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドと比較して、前記プロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドに向上したセリンプロテアーゼ活性を与える、組換えタウ4R2N三量体プロテアーゼ融合タンパク質
【請求項34】
配列番号1〜配列番号5のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、配列番号6のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、285、296、301、303、304、305、315、317、320、332、335、336、337、342、352、356、363、369、389、406、または427に対応する1つまたは複数のアミノ酸において変異されている単離されたペプチドまたはポリペプチドであって、前記ペプチドまたはポリペプチドは、完全長タウ4R2N三量体のセリンプロテアーゼ活性の少なくとも70%であるセリンプロテアーゼ活性を有前記変異が、元の非変異のタウプロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドと比較して、前記プロテアーゼペプチド若しくはポリペプチド又は前記プロテアーゼのバリアントのペプチド若しくはポリペプチドに向上したセリンプロテアーゼ活性を与える、単離されたペプチドまたはポリペプチド。
【請求項35】
配列番号1〜配列番号5のいずれか1つのアミノ酸配列からなり、前記ペプチドまたはポリペプチドが、完全長タウ4R2N三量体のセリンプロテアーゼ活性の少なくとも80%であるセリンプロテアーゼ活性を有する、請求項3に記載の単離されたペプチドまたはポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年5月20日、2011年10月6日、および2011年12月12日にそれぞれ出願された米国仮特許出願第61/488,493号、同第61/544,090号および同第61/569,558号に対する優先権を主張し、それらの各々の内容はそれらに対する参照を明確にするためにその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、分子生物学の分野、より具体的にはタウタンパク質(tau protein)、ならびにそのプロテアーゼ活性断片およびバリアントに関する。特定の実施形態において、十分なセリンプロテアーゼを保持する切断型タウ断片およびタウプロテアーゼバリアントが提供される。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病
アルツハイマー病のための疾患修飾薬についての満たされていない多く、急速に増えている必要性が存在する。現在、世界中で3000万人より多い人々がADを患っており、この数は約20年毎に2倍になる。米国において、540万人のAD患者が存在すると推定されている。ADは75歳以上の4人に1人、80歳以上の3人に1人が罹患している。2012年における医療費は2000億ドルを超えると推定されている(2012 Alzheimer’s disease Facts and Figures,Alzheimer’s Association)。現在、5つの軽度に有効なAD症状治療薬物のみが存在するが、どれも内在する神経変性過程を治療していない。FDAにより承認された医薬は限定された症状軽減を提供するが、疾患の進行を停止、遅延または反転させるわけではない。抗アルツハイマー病薬物についての2009年の市場は約43億ドルであったと推定されており、疾患修飾薬(DMD)の導入に基づいて10年間の終わりまでに140億ドル以上に増加すると考えられ、50%を超える市場拡大に入ると考えられる。
【0004】
ADの症状はゆっくり現れ、最初の症状は軽度の健忘症のみであり得る。この段階において、人は最近の出来事、活動、家族の名前またはものごとを忘れる場合があり、簡単な数学の問題を解くことができない場合がある。疾患進行がADの中度の段階になると、症状はより顕著になり易く、ADを患っている人々または彼らの家族が医療機関に助けを求めるほど深刻になる。ADの中度の段階の症状は、身支度などの簡単な作業をする方法を忘れ、話し、理解し、読み、または書くことに関して問題が起こる。重篤な段階のAD患者は不安または攻撃的になり得、家から離れて徘徊し、最終的に全ての介護を必要とする。
【0005】
ADの古典的な特徴は、アミロイドβタンパク質(Aβ)の沈殿または凝集からなるニューロン間プラーク、およびタウタンパク質の沈殿または凝集からなるニューロン間神経原線維変化(NFT)である。アミロイドカスケードの仮説は、AβがAD発症を駆動し、異常なタウタンパク質の形成を二次的に誘導するADの病的経路として広範に受け入れられている。遺伝学的証拠により、Aβ凝集の蓄積を増加させる変異が家族性ADを導くと示唆される。しかしながら、Aβカスケード仮説において、神経変性を引き起こし得る他の経路の重要性を扱っていないという多くの不十分な点が存在する(Seabrookら,2007)。AD患者の脳におけるNFTの蓄積および分布は疾患進行と非常に相関し、死後の脳の組織病理によりADを段階分けするために使用され得る。1〜100歳の人由来の2332人の選択されていない脳を、異常なタウおよびAβの検出について検査するという研究が最近実施された。この研究により、AD関連タウオパチーが、脳幹下部において人生の最初の10年間で、プラークの発生前に開始することが示され、アミロイドカスケードの仮説と矛盾している(Braakら,2011)。さらに、AD経路の分子機構の理解についての疑問を投げかける多くの後期臨床特徴が存在する(例えば、表1を参照のこと)。
【0006】
【表1】
【0007】
神経変性疾患におけるタウについての因果的役割
そのタウ機能障害は、タウMAPTについての遺伝子における変異が、第17染色体(FTDP−17)に関連するパーキンソニズム(FTDP)を有する前頭側頭認知症を引き起こすという直接的証拠に起因する他の疾患過程の非存在下でさえ、神経変性および認知症に十分である。100家族にわたるこの研究において見出された32個の異なる変異は、一次転写産物のスプライシングに影響を与え、タウのアミノ酸配列の変化を引き起こすカテゴリーに分類され得る。多くのミスセンス変異は集合領域に配置され、通常、MTに対するタウの能力を減少させる。これらの変異のうちのいくつかは、P301LおよびP301Aなどのインビトロおよびインビボにおけるタウの凝集を促進する。エクソン10の境界におけるステムループ構造の変異およびその後のイントロンは、4R対3Rアイソフォームの比の異常を引き起こすスプライシングを変化させ、タウアイソフォームの適切な比の維持が神経変性および認知症を予防するのに必要であることを実証している(Goedert and Jakes,2005)。最近の研究により、タウは、Aβ−依存性病因およびアポE4−依存性病因の両方の重要なメディエータまたはイネイブラーであることが示されている(Morrisら,2011;Huang and Mucke,2012に概説されている)。
【0008】
疾患進行における細胞外タウ
神経毒性における細胞外タウの役割は比較的新しいが、この分野において重要な概念である。ADにおける細胞外タウに関与する原因となる見識が複数存在する。タウ病理は初期段階の疾患から後期段階の疾患まで脳に隣接して広がり、疾患進行の「感染性」モデルと示唆されている(Schonheitら,2004)。この考えは、細胞外タウ凝集が細胞の外部から内部までタウミスフォールディングを伝播し得るという最近の報告(Frostら,2009)により支持される。この考えについてのさらなる裏付けは、正常なヒトタウを有するトランスジェニックマウスの脳内への凝集した変異ヒトタウを有するトランスジェニックマウス由来の脳抽出物の注入はタウ病理を伝播させ、脳にわたってその拡散を誘導するとことが示されている最近の報告によりもたらされている(Clavagueraら,2009)。最近、2匹のトランスジェニックモデルを独立して成長させ、マウス内嗅皮質において病理タウP301Lを発現させた(Liuら,2012;Calignonら,2012)。公開された結果は、タウ病理が疾患ニューロンから健康なニューロンまで拡散し得るモデルと一致した海馬の隣接領域に病理が拡散することを実証している。トランスジェニックマウスにおける凝集促進ヒトタウの低レベルの誘導は、ヒトおよび正常なマウスタウの両方(同時凝集)からなるタウ凝集体および濃縮体の形成を生じ、正常な宿主タウへの病理タウ特性の伝染による「感染」モデルについての証拠を与えている(Mocanuら,2008)。細胞外タウによりタウ病理を拡散するための受容体により媒介される機構は培養ニューロンでの作用に基づいて記載されている(Gomez−Ramosら,2006;2008;2009)。タウのレベルはADにおいてCSFを上昇させるが、Aβレベルは減少させる(Shawら,2009)。
【0009】
タウオリゴマー:治療法の開発のための標的
NFTは認知障害およびニューロン損失とよく関連するため、ADおよびタウオパチーにおける神経変性の媒介に関与している(Arriagadaら,1992;Bancher,1993;Guillozetら,2003;Iqbalら,2009)。しかしながら、タウオパチーの動物モデルの研究により、記憶障害およびニューロン損失がNFTの蓄積から解離していることが示されている(Brundenら,2008)。この主張についての強い支持は、テトラサイクリン調節プロモーターの制御下で前脳においてタウP301Lを発現するトランスジェニックマウスrTg4510の分析によりもたらされる。これらのマウスは、構築物が発現された場合、記憶障害、ニューロン損失およびNFTを発症した。しかしながら、発現の抑制により、NFTが蓄積し続けた場合でさえも、記憶の改善およびニューロン損失の減少が引き起こされ、プレタングル(pretangle)タウ種が、神経変性表現型の原因となることが明確に実証された(Santacruzら,2005)。さらに、ニューロン損失およびNFT病理の局所解離が存在した(Spiresら,2006)。このマウスモデルもまた、タングルではなく、可溶性タウが海馬機能の機能障害の原因であることを示すために使用した(Foxら,2011)。ヒト突然変異体タウP301S構築物を発現するトランスジェニックマウスは、線維状タウ封入の蓄積前に、凝集が発生した海馬シナプス損失および機能障害、ならびにミクログリア活性化齢の傾向がある(Yoshiyamaら,2007)。同様に、FTDP−17(P301SおよびG272V)に見出された2つの突然変異体を有するヒトタウタンパク質を発現するトランスジェニックマウスモデルはタングル形成前に軸索変性症を示した(Leroyら,2007)。タウおよびAβ病理の両方を蓄積するトリプルトランスジェニックADマウスモデルを、タウおよびAβの免疫軽減の効果を研究するために使用した。両方のタンパク質に対する抗体が、これらのマウスにおいて学習および記憶挙動を改善するために必要とされた。NFTではなく、可溶性タウは治療により減少した(Oddoら,2006)。
【0010】
タウオリゴマー特異的抗体を使用した正常およびAD CSF検体の研究により、疾患の初期においてタウオリゴマーのAD特異的蓄積が示された(Lasagna−Reevesら,2012)。さらに、タウオリゴマーにより、記憶の機能障害が引き起こされ、マウスにおいてシナプスおよびミトコンドリア機能障害が誘導された(Lasagna−Reevesら,2011)。しかしながら、タウオリゴマーがこれらの神経変性作用を引き起こす機構は確立されていない。
【0011】
タウを切断するプロテアーゼ
タウ開裂はタウ凝集および神経変性において重要な役割を果たすことが示されている(Wangら,2010;HangerおよびWray,2010において最近概説されている)。タウ切断により、毒性凝集体の形成を生じる凝集傾向の断片の形成が導かれ、凝集しない毒性断片の形成が導かれる。したがって、タウのタンパク質分解を標的化することは、ADおよび関連するタウオパチーのための治療の開発に有益である。タウは複数のプロテアーゼのための基質であり、その天然に折り畳まれない構造のために、タンパク質分解に非常に感受性がある。タウは、カスパーゼおよびカルパインなどの内因性プロテアーゼならびにピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼに加えてトリプシンおよびキモトリプシンにより切断され得る。ミスフォールドしたタンパク質を分解するプロテアソームもまた、タウを分解するが、タウの線維に結合される場合、阻害される。ADの初期においてタウの断片を生成する未知のプロテアーゼもまた、存在する。
【0012】
アルツハイマー病におけるタウの役割
ADの古典的な特質は、アミロイドベータタンパク質(Aβ)の沈殿物または凝集体からなるニューロン間プラーク、およびタウタンパク質のニューロン内神経原線維タングル(NFT)である。タウタンパク質は微小管集合および安定性を促進し、軸策の機能に重要であるが、Aβの正常な機能は完全に理解されていない。アミロイドカスケードの仮設はADの病理経路として広範に認められている。脳におけるAβの生成およびAβ凝集体の蓄積は疾患プロセスを開始すると考えられている。Aβ凝集体の増加した蓄積を生じる突然変異は家族性ADを導くことが遺伝学的証拠により支持されている。しかしながら、神経変性を引き起こし得る他の経路の重要性を扱っていないという点でAβカスケード仮説において多くの脆弱性が存在する(Seabrookら,2007)。AD患者の脳におけるNFTの蓄積および分布は疾患進行と非常に相関しており、死後の脳組織病理によりADを段階分けするために使用され得るが、ADとβアミロイドからなる老人斑の蓄積との間に不十分な相関関係が存在する。このことはアミロイド仮説に疑問を投げかけるために使用されている(Josephsら,2008)。後期臨床試験におけるAβに向けられた治療についての精彩を欠いた結果は、タウなどの創薬についての代替の標的を調査する興味を増加させている(Iqbalら,2009)。
【0013】
従来技術における欠如
不幸にも、ADについて利用可能な治療法はまだ存在しない。今日、薬物療法はADの症状およびその種々の段階を抑制することに焦点を当てている。例えば、軽度から中度のADは多くの場合、ドネペジル(ARICEPT(登録商標)、Eisai Co.,Ltd/Pfizer,Inc.)、リバスティグミン(EXELON(登録商標)、Novartis AG/Sandoz AG)、ガランタミン(RAZADYNE(登録商標)、Johnson & Johnson)、[およびより少ない程度でタクリン(COGNEX(登録商標)、Warner−Lambert Co.)]などのコリネステラーゼ阻害剤を用いて治療され、一方、中度から重度のADは多くの場合、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))またはメマンチン(NAMENDA(登録商標)、Forest Laboratories,Inc.)などのN−メチルD−アスパラギン酸アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせを用いて治療される。これらの医薬は、ADの症状を制限された期間、悪化するのを遅延または防止するのに役立ち得るが、これらの医薬が疾患自体の根本的な進行に対する効果を有するという明確な証拠は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
過去十年における広範囲の研究により、ADについての可能なバイオマーカーが識別されているが、危険のあるまたは罹患している個体のADの進行を診断、治療、予防、およびモニタリングするのに特に有用である組成物および方法についての緊急の必要性が依然として存在している。ADおよびその症状の治療に使用するための既存の化学化合物の識別、合成、および/または適応のための薬物標的として役立つ新規組成物および方法もまた必要とされる。さらに、例えば免疫療法薬および次世代療法を含む、疾患を治療するための新規クラスの薬物を開発するための必要性もまた存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の簡単な要旨
本発明は、新規および非自明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質ならびに1種以上の哺乳動物タウプロテアーゼ、その切断型またはバリアントをコードするポリヌクレオチド、同様に1種以上の哺乳動物タウプロテアーゼ、その切断型またはバリアントを発現する構築物、ベクターおよび組換え宿主細胞を含む、関連する生物学的組成物を提供することによって従来技術に特有のこれらおよび他の制限を克服する。タウタンパク質部分の自己タンパク質分解特性に基づいて、本発明の組成物は特に有益である。なぜなら、それらはまた、セリンプロテアーゼとして機能し、脳、神経欠損、および早期発症の老衰、認知症、加齢に伴う記憶喪失、アルツハイマー病などの神経学的病態の種々の疾患の1種以上の症状の診断、治療、予防、および/または改善のための新規薬物候補の開発において重要な役割を果たし得るからである。
【0016】
本発明は、部分的に、最初に、タウタンパク質が自己タンパク質分解特性を保有し、セリンプロテアーゼとしてインビトロおよび/またはインビボで機能し得るという本発明者らの驚くべき発見に基づく。本発明者らはさらに、切断型ポリペプチドが完全長のタウプロテアーゼのアミノ酸配列の3分の1未満を含んでいる場合でさえ、ヒトタウタンパク質の特定の切断型が顕著なプロテアーゼ活性を保持していることを発見した。本発明者らはまた、野生型タウプロテアーゼ配列における特定の突然変異体もまた、特に有用なタウプロテアーゼバリアントを生じることを発見し、これにより、タウプロテアーゼの機能ドメインをさらに識別し、新規創薬を含む、診断および/または治療適用に有用なタンパク質バリアントの特性を導いた。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの単離した遺伝子に特有な、またはそれらを含む、新規および非自明の核酸セグメント、発現ベクター、組換え宿主細胞、オリゴヌクレオチド増幅プライマー、およびオリゴヌクレオチド検出プローブなど、あるいは哺乳動物タウプロテアーゼの全てもしくは一部、またはプロテアーゼ活性タウ断片、タウプロテアーゼバリアント、タウプロテアーゼ変異体、タウタンパク質融合産物、または哺乳動物タウプロテアーゼの1つ以上のエピトープ、活性部位、結合ドメイン、触媒ドメイン、または調節領域の全てもしくは一部をコードする核酸セグメントを提供する。さらに、哺乳動物、好ましくはヒトタウプロテアーゼ、またはそのプロテアーゼ活性断片、バリアント、変異体、エピトープもしくは融合タンパク質をコードする単離された遺伝子、核酸セグメントおよび発現構築物が提供される。
【0018】
本発明はまた、本発明のタウプロテアーゼを作製するため、タンパク質分解活性であるタウタンパク質の活性断片を作製するため、ならびに選択される組換え発現系においてタウプロテアーゼポリペプチドを産生するためにタウプロテアーゼポリヌクレオチドを発現する発現構築物、組換えベクター、および形質転換宿主細胞ならびにそれらの活性断片またはエピトープを作製するための方法を提供する。本発明はまた、様々な診断、治療、試験研究、および創薬方法における開示されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0019】
一実施形態において、本発明は、約50〜約300アミノ酸長、あるいは約70〜約250アミノ酸、または約80〜約220アミノ酸長の単離したペプチドまたはポリペプチドを提供し、そのペプチドまたはポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のいずれかに記載されている少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、または少なくとも80またはそれ以上の連続アミノ酸配列と少なくとも90%同一、または少なくとも92%同一、94%同一、96%同一、または98%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むか、それらから実質的になるか、あるいはそれらからなる。好ましくは、単離したペプチドまたはポリペプチドは、インビトロおよび/またはインビボにおいてタウプロテアーゼ活性、好ましくはセリンプロテアーゼ型の生物活性を有する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、配列番号6の1つまたは複数のアミノ酸残基5、257、260、266、272、273、279、280、285、296、301、303、304、305、315、317、320、332、335、336、337、342、352、356、363、369、389、406、または427に対応する1つまたは複数の位置にて、少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つもしくはそれ以上のアミノ酸において置換されている開始哺乳動物タウプロテアーゼのアミノ酸配列を含むタウプロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチドを提供し、ここで、置換は、元の非置換のタウプロテアーゼペプチドまたはポリペプチドと比較して、プロテアーゼバリアントペプチドまたはポリペプチドに向上したセリンプロテアーゼ活性を与える。好ましくは、1つ以上のアミノ酸置換はアルギニンからヒスチジン置換、アルギニンからロイシン置換、アルギニンからトリプトファン置換、アスパラギンからアラニン置換、アスパラギンからヒスチジン置換、アスパラギンからリシン置換、グルタミン酸からバリン置換、グルタミンからアルギニン置換、グリシンからアルギニン置換、グリシンからセリン置換、グリシンからバリン置換、イソロイシンからバリン置換、ロイシンからアルギニン置換、ロイシンからバリン置換、リシンからイソロイシン置換、リシンからメチオニン置換、リシンからトレオニン置換、プロリンからロイシン置換、プロリンからセリン置換、プロリンからトレオニン置換、セリンからアスパラギン置換、セリンからイソロイシン置換、セリンからロイシン置換、セリンからフェニルアラニン置換、トレオニンからメチオニン置換、バリンからイソロイシン置換、バリンからメチオニン置換、またはそれらの任意の組み合わせである。例示した実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換としては、R5H置換、R5L置換、K257T置換、I260V置換、L266V置換、G272V置換、G273R置換、N279K置換、L284V置換、N296A置換、N296H置換、P301L置換、P301S置換、P301T置換、G303V置換、G304S置換、S305I置換、S305N置換、L315R置換、K317M置換、S320F置換、P332S置換、G335S置換、G335V置換、Q336R置換、V337M置換、E342V置換、S352L置換、S356T置換、V363I置換、K369I置換、G389R置換、R406W置換、またはT427M置換、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0021】
本発明はさらに、タウタンパク質またはプロテアーゼに特異的に結合する、特定の実施形態において、本明細書に開示される切断型タウプロテアーゼまたは置換タウバリアントのうちの1つに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片を提供する。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、本明細書に開示される切断型または置換タウプロテアーゼのうちの1つ以上に特異的に結合するが、4R2N完全長配列である、配列番号6に記載されるアミノ酸配列などの全野生型タウタンパク質配列を含むポリペプチドに実質的に結合しない。このような抗体としては、モノクローナル、ポリクローナルおよび/または単一特異的抗体および抗原結合断片が挙げられ得る。
【0022】
別の態様において、本発明は、1つ以上のタウプロテアーゼペプチド、ポリペプチド、タンパク質をコードするか、またはこのようなタウプロテアーゼペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に特異的な抗体もしくは抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドおよび核酸セグメントを提供する。
【0023】
同様に、本発明は、発現構築物、組換えベクター、および1つ以上のこのようなベクター、構築物で形質転換された単離された宿主細胞、あるいは開示されたタウプロテアーゼペプチドもしくは本明細書のポリペプチドのうちの1つ以上、または本明細書に記載されるタウ特異的抗体もしくは抗原結合断片のうちの1つ以上をコードするポリヌクレオチドを提供する。例示した実施形態において、このような構築物は、1種以上の哺乳動物(特にヒト)宿主細胞においてタウプロテアーゼまたはタウ特異的抗体もしくは抗原結合断片を発現するように適応され、構成される。関連した実施形態において、このようなポリヌクレオチドは、例えば、本明細書のいずれかに詳細に記載したように、適切な細菌、真菌、酵母、または他の非哺乳動物細胞中のタンパク質の組換え産物を含む(試験的および大規模調製物を含む)、1種以上の非哺乳動物細胞または宿主系において発現に最適化されたコドンであってもよい。
【0024】
さらなる実施形態において、本明細書に提供されるタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、核酸セグメント、発現構築物、ベクター、および/または組換え宿主細胞は、1種以上の緩衝液、希釈剤、ビヒクル、または薬学的に許容可能な賦形剤中で製剤化される。好ましくは、本発明の1種以上のタウプロテアーゼ関連化合物はヒトなどの哺乳動物への医薬投与のために製剤化されてもよいか、または1つ以上の診断、治療、調査、研究もしくは創薬方法、アッセイ、プロトコルまたは投薬計画における使用のために製剤化されてもよい。
【0025】
特定の実施形態において、このような組成物は、症状の治療、診断、改善、または1つ以上の研究アッセイ、プロトコル、および/もしくは創薬計画に使用するために調製されてもよい。特定の実施形態において、開示される組成物は、症状の治療、診断、改善、または哺乳動物における1種以上の疾患、機能障害、異常状態、損失、欠陥、外傷、または損傷のための創薬に使用するために製剤化される。好ましくは、このような組成物は、限定されないが、タウオパチー、神経欠損、認知症、老衰、加齢に伴う記憶喪失、外傷性脳損傷、もしくはアルツハイマー病、またはそれらの任意の組み合わせを含む、ヒトにおける神経学的状態の1種以上の症状の治療、予防、診断、または改善に使用するために製剤化される場合、有用であり得る。
【0026】
本発明はまた、1つ以上の切断型タウプロテアーゼまたは1つ以上のタウプロテアーゼバリアントを産生するための方法を提供する。このような方法は、通常、切断型タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼバリアントの発現を誘導する条件下で選択されたタウペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞の集団を培養する工程、(b)発現された切断型タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼバリアントを、宿主細胞の集団または宿主細胞が増殖もしくは培養された培地から回収する工程を含む。
【0027】
本発明はさらに、大規模、および自動化化合物ライブラリスクリーニングなどを含む、少なくとも1つのセリンプロテアーゼ阻害剤を含有する疑いのある化合物の集団からセリンプロテアーゼ阻害剤を同定する方法を提供する。その方法は、全般的および一般的な意味において、セリンプロテアーゼ活性を阻害する疑いのある化合物または化合物の集団を、機能的なタウプロテアーゼタンパク質分解活性を観測するのに有効な条件下で、本明細書に開示されるタウプロテアーゼペプチドまたはポリペプチドの1つ以上と接触させる工程、ならびに接触した化合物の1つ以上がタウタンパク質分解活性を阻害または減少させるか否かを決定する工程であって、化合物によるタウプロテアーゼ活性の阻害はセリンプロテアーゼ活性を有する化合物の指標である、工程を少なくとも含む。本発明の前述の態様の各々を以下の実施例、および図面においてさらに詳細に記載する。
【0028】
タウプロテアーゼポリペプチド
上記のように、本発明は、本発明の以前に得ることができなかったレベルで調製される、好ましくはヒト起源の組換えタウプロテアーゼ活性ペプチド、タンパク質、または融合タンパク質を提供する。その方法は、組換え宿主細胞中でタウプロテアーゼポリペプチド、タンパク質または融合タンパク質をコードする遺伝子を発現する工程と、発現したポリペプチド、タンパク質または融合タンパク質を全組換え宿主細胞成分から精製して、約100μg〜約1000mgの組換えタウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼ活性ポリペプチド、タンパク質、バリアント、変異体、もしくはそれらの融合タンパク質を調製する工程とを含む。スケールアップにより、本発明者らは、最大約10gの組換えタウプロテアーゼポリペプチドを産生する10倍増加が達成され得ることを意図する。
【0029】
タウプロテアーゼ融合タンパク質またはタウタンパク質もしくは明確な選択されるアミノ酸配列、例えば選択される抗原性アミノ酸配列、特定の結合親和性を有する選択されるアミノ酸配列、およびDNA結合またはトランス活性化アミノ酸配列に作動可能に連結されるポリペプチド配列の断片を含む構築物もまた、本発明の範囲内に包含される。特に、グルタチオン−S−トランスフェラーゼアミノ酸配列に作動可能に結合されるタウプロテアーゼ活性アミノ酸配列が、選択的に開裂可能な結合などを有する融合タンパク質として提供され、様々な診断、治療および創薬プロトコルに有用である。
【0030】
タウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド
上記のように、本発明はまた、本明細書に開示される1つ以上のタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドおよび核酸セグメントを提供する。
【0031】
好ましくは、これらのポリヌクレオチドおよび核酸セグメントは、哺乳動物、および好ましくはヒトタウプロテアーゼ、またはプロテアーゼ活性断片、そのバリアント、変異体、エピトープ、もしくは融合タンパク質をコードし、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6のうちのいずれか1つ以上に由来する少なくとも50の連続アミノ酸配列、またはそれらの生物学的機能等価物;あるいはプロテアーゼ活性断片、そのバリアント、変異体、エピトープ、もしくは融合タンパク質、または遺伝子、ポリヌクレオチド、またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそれらにハイブリダイズする核酸セグメントと少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含むか、それらから実質的になるか、またはそれらからなる。これらの単離された遺伝子およびコード領域はしたがって、好ましくは、配列番号6に記載される実質的に完全長のタウプロテアーゼコード領域をコードする連続核酸配列またはその生物学的機能等価物;あるいは遺伝子またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそれらにハイブリダイズするDNAセグメントを含む。
【0032】
特定の実施形態において、DNAセグメントおよびコード領域は、1つ以上の哺乳動物またはヒトタウプロテアーゼ、またはプロテアーゼ活性断片、そのバリアント、変異体、エピトープ、もしくは融合タンパク質をコードし得る。示した例において、約210アミノ酸長の哺乳動物タウプロテアーゼ活性断片;または約118アミノ酸長の哺乳動物タウプロテアーゼ活性断片、または約99アミノ酸長の哺乳動物タウプロテアーゼ活性断片、または約83アミノ酸長の哺乳動物タウプロテアーゼ活性断片;または約81アミノ酸長の哺乳動物タウプロテアーゼ活性断片をコードするDNAセグメントおよびコード配列が提供され、好ましくは、断片によりコードされる組換えポリペプチドは、インビトロおよび/またはインビボにおいてタウプロテアーゼ活性を有する。例示的なこのような切断型タウプロテアーゼとしては、限定されないが、本明細書の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5において識別される配列、ならびに配列番号6に開示されるタウタンパク質4R2N配列の配列内から得られる切断型タウプロテアーゼ
が挙げられる。
【0033】
特定の遺伝子およびDNAセグメントは好ましくは、実質的に完全長のタウプロテアーゼ、または切断型プロテアーゼ活性タウタンパク質、もしくはそのペプチドもしくはペプチド断片、変異体もしくはバリアントをコードし、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号5、またはその生物学的機能等価物由来の少なくとも約20、約25、または約30アミノ酸またはそれ以上の連続アミノ酸配列を含むか、遺伝子およびDNAセグメントはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でこのようなコード配列とハイブリダイズする。より好ましくは、遺伝子は、タウプロテアーゼまたはそれから得られるプロテアーゼ活性切断型ポリペプチドをコードし、配列番号6、またはその生物学的機能等価物由来の少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約115、少なくとも約125、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、またはさらに少なくとも約200またはそれ以上のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含み、遺伝子およびDNAセグメントはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのようなコード配列とハイブリダイズする。最も好ましくは、これらの遺伝子およびDNAセグメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6、またはその生物学的機能等価物のうちのいずれか1つ以上において開示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、またはさらに少なくとも約99%以上同一であるアミノ酸配列を含むか、それらから実質的になるか、またはそれらからなるタウプロテアーゼをコードし、あるいは遺伝子およびDNAセグメントはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でそのようなコード配列とハイブリダイズする。
【0034】
例示的な遺伝子およびDNAセグメントはまた、実質的に完全長のタウプロテアーゼ、またはその切断型もしくはプロテアーゼ活性サブ断片をコードすると特徴付けられ得、そのアミノ酸配列内に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6、またはその生物学的機能等価物のうちのいずれか1つ以上に由来する少なくとも約10アミノ酸、またはより好ましくは少なくとも20アミノ酸、少なくとも約30アミノ酸、少なくとも約40アミノ酸、少なくとも約50アミノ酸、少なくとも約60アミノ酸、少なくとも約70アミノ酸、少なくとも約80アミノ酸、少なくとも約90アミノ酸、少なくとも約100アミノ酸、少なくとも約110アミノ酸、少なくとも約120アミノ酸、少なくとも約130アミノ酸、少なくとも約140アミノ酸、少なくとも約150アミノ酸またはそれ以上の連続アミノ酸配列を含み、かつ、適度にストリンジェントからストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6において開示されるタンパク質配列のうちの1つ以上とコードする核酸配列とハイブリダイズすると特徴付けられ得る。
【0035】
DNAセグメントおよび単離された遺伝子はまた、切断型、変異体またはバリアントタウプロテアーゼ、またはタウプロテアーゼ融合タンパク質またはポリペプチド構築物をコードするように操作され得、少なくとも1つのタウプロテアーゼ活性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、選択されるペプチドまたはタンパク質配列をコードする第2のコード領域に作動可能に結合(すなわち作動可能に連結)される。ヒトタウプロテアーゼ特異的タンパク質またはペプチドを含む、タウプロテアーゼ特異的配列と、1つ以上のさらなる選択される抗原性アミノ酸配列;免疫付与に使用するための選択される抗原性キャリアアミノ酸配列;選択されるアジュバント配列;選択される分子に対する特異的結合親和性を有するアミノ酸配列;活性DNA結合またはトランス活性化ドメインを形成するアミノ酸配列との組み合わせが特に意図される。特定の融合タンパク質は、後での容易な分離を可能にする、プロテアーゼ感受性ペプチドリンカーを介して一緒に連結されてもよい。
【0036】
発現における使用を目的とするDNAセグメントは、所望の宿主細胞中にタウプロテアーゼペプチドまたはポリペプチドの発現を指示する第1のプロモーターの(すなわち「下流」の)制御下で作動可能に配置される。プロモーターは、組換えプロモーター、またはタウプロテアーゼに天然に会合するプロモーターであってもよい。このようなタウプロテアーゼをコードする1つ以上の核酸を発現する組換えベクターはしたがって、本発明の別の重要な態様を形成する。
【0037】
プロテアーゼ活性ポリペプチドをコードする配列が特に好ましいが、本発明はさらに、配列番号12の任意の領域から選択される約20、40、60などの連続ヌクレオチドと同じ配列を有するか、または相補的である、少なくとも約20、40、60などの連続ヌクレオチドからなる配列領域を含むか、それらから実質的になるか、それらからなる、またはそれらを含有するもしくは含むと特徴付けられるものを含む、オリゴヌクレオチド増幅プライマー、オリゴヌクレオチド検出プローブ、および他の核酸セグメント;標準的なハイブリダイゼーション条件下、特にハイブリダイゼーション条件下で、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号12のうちのいずれか1つ由来の少なくとも15の核酸連続配列、またはその相補体とハイブリダイズする約40、80、160などから約5,000、10,000、もしくはさらに20,000ヌクレオチド長もしくはそれ以上の核酸セグメントなどのタウが誘導されるオリゴヌクレオチドを提供する。本発明の核酸はまた、DNAセグメントまたはRNAセグメントであってもよい。
【0038】
タウプロテアーゼを発現する組換えベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、少なくとも1つのDNAセグメントまたは哺乳動物(および好ましくはヒト)タウプロテアーゼ、切断型、変異体、もしくはバリアントタンパク質、ポリペプチド、それらのドメインまたは任意の融合タンパク質をコードする単離された遺伝子もしくはコード領域を含むベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。細菌宿主細胞(例えば大腸菌(E.coli))、真菌宿主細胞、酵母宿主細胞、および哺乳動物(および好ましくはヒト)宿主細胞を含む、真核性および原核性宿主細胞が特に好ましい。
【0039】
本発明の組換え宿主細胞は好ましくは、組換えベクターによりそれらに組み込まれる1つ以上のDNAセグメントを有し、好ましくはコードされたタウプロテアーゼを産生するようにDNAセグメントを発現する。組換え宿主細胞は、例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6に記載されているアミノ酸配列のうちの1つ以上と同一である、少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上の一次アミノ酸配列を共有するアミノ酸配列を含むそれらのポリペプチドを含む、実質的に完全長のタウプロテアーゼ、または1つ以上の切断型タウプロテアーゼ、またはタウプロテアーゼ由来の1つ以上の変異体もしくはバリアント、またはタウプロテアーゼ融合タンパク質を発現でき、好ましくは適切な宿主細胞中でインビトロおよび/またはインビボでのセリンプロテアーゼ活性を発現する。
【0040】
細胞、組織、または他の生物学的試料中でタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを検出するための方法もまた提供され、通常、タウプロテアーゼ特異的核酸配列を含有する疑いのある試料から試料核酸を得る工程と、実質的に相補的核酸のハイブリダイゼーションを可能にするのに有効な条件下で試料核酸を、タウプロテアーゼをコードする核酸セグメントと接触させる工程と、このように形成されたハイブリダイズした相補的核酸を検出する工程とを含む。
【0041】
タウプロテアーゼ免疫検出試薬
これまで記載してきた実施形態に加えて、本発明はまた、タウプロテアーゼ特異的抗体、抗原結合断片、免疫検出試薬、ならびに試料からタウプロテアーゼ組成物を識別、単離、定量、および精製するための方法を提供する。免疫検出試薬は、哺乳動物タウプロテアーゼ、好ましくは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のうちのいずれか1つに由来する少なくとも約10の連続アミノ酸のタンパク質に対する免疫特異性を有する抗体またはその抗原結合断片と特徴付けられ得る。
【0042】
本発明の免疫検出試薬は、さらに必要に応じて1つ以上の検出可能な標識を含んでもよい。本発明に使用するための検出可能な標識としては、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン標識、もしくはアビジンまたは適切な基質との接触時に検出可能な産物を生成する酵素が挙げられ得る。本発明の免疫検出試薬に使用される抗体またはそれから単離される抗原結合断片は、従来の方法、好ましくは1つ以上のハイブリドーマ細胞株に由来するモノクローナル抗体使用して作製されてもよい。
【0043】
本発明のキットは様々な免疫検出手段を提供する。免疫検出手段は、タウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼの酵素作用により開裂される分子に作動可能に結合される検出可能な標識であってもよい。他のキットにおいて、免疫検出手段はタウタンパク質に結合する第1の抗タウ抗体であってもよく、好ましくは第1の抗タウ抗体検出可能な標識に作動可能に結合される。さらに、免疫検出手段はヒトタウプロテアーゼに作動可能に結合される検出可能な標識であってもよい。
【0044】
あるいは、免疫検出手段はヒトタウプロテアーゼに結合する第1の抗タウプロテアーゼ抗体であってもよい。本発明はさらにキットを提供し、第1の抗タウプロテアーゼ抗体はヒトタウプロテアーゼサブユニット、ヒトタウプロテアーゼ、またはインタクトなヒトタウプロテアーゼ酵素複合体に結合する。さらに、第1の抗タウプロテアーゼ抗体は検出可能な標識に作動可能に結合され得る。
【0045】
特定の他のキットは第1の抗タウ抗体または第2の抗−抗体(anti−antibody)を含んでもよく、免疫検出標識は第1の抗タウプロテアーゼ抗体に対して結合親和性を有する第2の抗体に作動可能に結合される。そのようなキットにおいて、タウプロテアーゼ、またはその基質のうちの1つ以上は、フィルタ、膜、カラム、マトリクスなどの固体支持体に結合されてもよい。精製されたタウプロテアーゼまたはタウプロテアーゼ誘導体を調製するために使用される同様の抗体が固体支持体に固定されてもよく、固体支持体に抽出物を適用することによって抽出物は断片化される。
【0046】
タウタンパク質を検出および定量するための診断キット
診断キットは本発明の別の態様を表す。そのようなキットはまた、プローブ、プライマー、蛍光標識、または反応緩衝液、ポリメラーゼなどのためにキット内に1つ以上の別の容器手段を含んでもよい。キットはまた、リアルタイムPCRアッセイ、特にリアルタイムPCR FRETベースのアッセイにおいてキット内に含まれる組成物を使用するための指示書をさらに含んでもよい。指示書はまた、インビトロおよび/またはインビボにおいてタウプロテアーゼ活性を保持および/または発現するタウタンパク質または1つ以上のタウ由来のペプチドもしくはタンパク質断片をコードするポリヌクレオチドを検出するためにキット内に含まれる試薬を使用するために提供されてもよい。
【0047】
このようなキットのための容器手段は典型的に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含んでもよく、その容器手段の中に、開示されるタウまたはタウプロテアーゼ断片に特異的なオリゴヌクレオチド組成物(複数も含む)が入れられてもよく、好ましくは適切にアリコートされてもよい。第2のタウまたはタウプロテアーゼ特異的プライマー組成もまた提供される場合、キットはまた、第2の別の容器手段を含有してもよく、その中に、この第2の別のプライマー手段が入れられてもよい。あるいは、複数のタウまたはタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチド組成物が単一の製剤中に調製されてもよく、バイアル、フラスコ、シリンジ、試験管、アンプル、または他の適切な容器手段などの単一の容器手段内に充填されてもよい。
【0048】
本発明の様々なキットはまた典型的に、例えば、注射またはブロー成形プラスチック容器、箱、または他の適切な市販のパッケージなどの市販用の閉鎖した封入物の中に含まれるバイアル(複数も含む)を含有するための手段を含み、それらの中に、所望のバイアル(複数も含む)および/または試薬もしくはキット成分が保持される。同様に、本発明のキットはまた、好ましくは、例えば、Roche LightCycler(登録商標)プラットフォームなどの機器により容易にされるリアルタイムPCR/マイクロ体積蛍光FRET分析を含む、本明細書に記載されるリアルタイムPCRに基づいたアッセイにおいてそのようなキット内に含まれる物品を使用するための指示書を含む。
【0049】
タウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチド増幅プライマー
本発明の実施において、タウタンパク質(ならびに特にタウプロテアーゼ活性を保有するタウペプチドおよびタンパク質断片)をコードするポリヌクレオチドの増幅において使用するためのフォワードおよびリバース増幅プライマーは、好ましくは、配列番号20に開示される「フォワード」オリゴヌクレオチドプライマー配列または配列番号21に開示される「リバース」オリゴヌクレオチドプライマー配列のいずれか1つに由来する、あるいは配列番号20に開示される「フォワード」オリゴヌクレオチドプライマー配列または配列番号21に開示される「リバース」オリゴヌクレオチドプライマー配列と少なくとも約90%同一であるオリゴヌクレオチド配列に由来する、あるいはさらに、配列番号20に開示される「フォワード」オリゴヌクレオチドプライマー配列または配列番号21に開示される「リバース」オリゴヌクレオチドプライマー配列と少なくとも約95%同一であるオリゴヌクレオチド配列に由来する、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個以上の連続核酸を含む。
【0050】
同様に、本発明の増幅方法を実施するのに好ましいプライマー組成は、配列番号20および配列番号21に開示される約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、または約20個またはそれ以上のヌクレオチドの連続核酸配列と約90%同一である核酸配列からなってもよい。
【0051】
他の実施形態において、本発明を実施するのに好ましいプライマー組成は、配列番号20または配列番号21に開示されるオリゴヌクレオチド配列のいずれか1つから選択される、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個またはそれ以上の連続核酸である核酸配列から実質的になってもよい。
【0052】
タウおよびタウプロテアーゼ特異的ポリヌクレオチド増幅キット
本発明はまた、哺乳動物DNA、特に1つ以上のタウまたはタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むDNAを増幅するためのキットを提供する。このようなキットは典型的に哺乳動物DNAを増幅するのに必要な2つ以上の構成要素を含み、このような構成要素は、化合物、試薬、容器および/または機器であってもよい。例えば、キット内の第1の容器は第1のプライマーを含んでもよく、キット内の第2の容器は第2のプライマーを含んでもよい。キット内の第3のプライマーは、ハイブリダイゼーションプローブのセット、またはプローブを標識するための1つ以上の蛍光プローブを含んでもよい。さらに、本発明のキットはまた、使用するための指示書、例えば本明細書に記載される増幅および/または検出反応においてプライマー、ならびに1つ以上の蛍光分子、または必要な場合、例えば、限定されないが、緩衝酵素、ポリメラーゼ、RNasesなどを含む、他の試薬を使用するための指示書を含んでもよい。
【0053】
本発明は、1つ以上の賦形剤、緩衝液担体、希釈剤、助剤、および/または特定のタウまたはタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチドアッセイ試薬の製剤化、診断ツールの調製に利用され得る他の構成要素と一緒に1つ以上のタウまたはタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチド構成要素を提供する。特定の実施形態において、本発明は、インビトロおよび/またはインビボにおいてセリンプロテアーゼ活性を保有するタウタンパク質のペプチドまたはタンパク質断片をコードするポリヌクレオチドを増幅するための増幅キットを提供する。
【0054】
タウプロテアーゼ活性断片をコードするポリヌクレオチドを検出するための方法
本発明は、試料中の1つ以上のタウプロテアーゼ活性断片をコードする哺乳動物ポリヌクレオチド配列を識別する方法を提供する。本発明はまた、試料中で、および特にヒトから得た臨床または生物学的検体中で、タウタンパク質(およびより特には、1つ以上のタウプロテアーゼ活性断片をコードするポリヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチドを特異的に検出するための方法および組成物を提供する。
【0055】
本発明はさらに、試料中で、切断型タウタンパク質、変異型タウタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、またはインビトロおよび/もしくはインビボにおいてセリンプロテアーゼ活性を保有するタウタンパク質のペプチドもしくはポリペプチド断片を特異的に検出するための方法を提供する。これらの方法は好ましくは、タウ特異的標的配列を使用してPCR増幅産物を検出するため、特にFRET、および後での融解曲線分析を使用してそのような増幅産物を検出および定量するための本明細書に開示されるプライマーおよびプローブ構成要素ならびにキットを利用する。
【0056】
一実施形態において、本発明は、タウもしくはタウプロテアーゼ活性ペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはタウプロテアーゼの全てもしくは一部をコードする核酸セグメント、特に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のいずれか1つに記載されるタウタンパク質アミノ酸配列のうちの1つ以上に由来する、少なくとも30個、40個、50個、もしくは60個の連続アミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるペプチドを含むか、それらから実質的になるか、またはそれらからなるタンパク質をコードする核酸セグメントの存在または不存在を検出するための方法を提供する。特定の態様において、1つ以上の生物学的試料は、個体から得られてもよく、上記の配列の存在についてスクリーニングされてもよい。特定の実施形態において、試料は、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5に開示される切断型タウペプチドを含む、セリンプロテアーゼ活性を保有する1つ以上のペプチド断片、または配列番号6に開示される完全長タウ4R2N三量体配列の存在についてスクリーニングされてもよい。
【0057】
本発明の1つの態様において、タウプロテアーゼ特異的ポリヌクレオチド、特に試料内に含まれる複数のポリヌクレオチド内に由来するタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドの存在または不存在を検出するための方法が提供される。特定の実施形態において、試料は哺乳動物から得た生物学的試料である。好ましくは、試料はヒトから得られる。
【0058】
特定の用途において、これらの方法はリアルタイムPCRベースの増幅工程を含み、それらは通常、少なくとも1つのサイクル工程(少なくとも1つの第1の「増幅する」工程および少なくとも1つの第1の「ハイブリダイズする」工程を含む)を実施することを含む。この増幅する工程は、試料を、一対のタウまたはタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチドプライマーと接触させて、タウまたはタウプロテアーゼ標的ポリヌクレオチドが最初に試料中に存在する場合、増幅産物を産生することを含む(標的ポリヌクレオチドが最初に試料中に存在しない場合、PCRプロセスの間に標的産物増幅は起こらない)。
【0059】
ハイブリダイズする工程は典型的に、増幅する工程から得られた試料を、一対のタウ特異的オリゴヌクレオチドプローブと接触させることを含む。通常、タウ特異的オリゴヌクレオチドプローブの対の第1および第2のメンバーは、互いの約4または5個のヌクレオチド以下内の増幅産物とハイブリダイズする。検出プローブの対の第1のプローブは典型的にドナー蛍光部分で標識され、検出プローブの対の第2のプローブは典型的に対応するアクセプター蛍光部分で標識される。ハイブリダイズする工程に使用するために作動可能に連結され得るこれらの検出プローブおよび部分は本明細書上記により詳細に記載されている。
【0060】
本発明はまた、1つ以上のタウまたはタウプロテアーゼ特異的オリゴヌクレオチド増幅プライマーまたは哺乳動物タウポリペプチドをコードする少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドを含む疑いのあるポリヌクレオチドの集団中の突然変異体の検出における、特に、インビトロおよび/またはインビボにおいてタウプロテアーゼ活性を保有する哺乳動物ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドを含む疑いのあるポリヌクレオチドの集団中の突然変異体の検出における本明細書に記載される検出プローブの使用に関する。
【0061】
FRETベースのプロテアーゼ検出アッセイ
本発明の別の態様は、本発明に従って1つ以上のタウポリヌクレオチドまたはタウポリペプチドを検出するための蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの検出アッセイの使用である。
【0062】
FRETベースの検出アッセイにおいて、第1のプローブのドナー蛍光部分および第2のプローブのアクセプター蛍光部分が利用され、ここで、FRET信号の存在は、アッセイされる試料中の標的化合物の存在の指標である。反対に、FRET信号の不在は通常、アッセイされる試料中の標的化合物の不在の指標である。
【0063】
FRETアッセイペプチド基質は、アミノ末端において蛍光分子メチルクマリン(MCA)およびペプチド:MCA−GGQVEVKSE−{Lys(DNP}(配列番号18)をコンジュゲートさせるためにC末端にさらなるLysを使用してC末端において蛍光消光分子ジニトロフェノール(DNP)を有するタウ4R2NにおけるLys340後の自己タンパク質分解切断部位周囲の9個のアミノ酸からなる。タウプロテアーゼがペプチドを切断する場合、クエンチは蛍光から解離されるのでアッセイにおいて蛍光信号の検出可能な増加が存在することが考えられる。このアッセイは、タウプロテアーゼ活性を調節する小分子化合物、ペプチドまたは抗体をスクリーニングするためにタウプロテアーゼ活性をモニターするために使用され得る。このアッセイはまた、酵素反応速度を特徴付けるため、タウプロテアーゼについての緩衝条件を最適化するために使用されてもよい。このアッセイはまた、タウプロテアーゼの異なる構築物およびオリゴマー調製物の活性をモニターするために使用されてもよい。FRETペプチドは、クエンチから蛍光を分離するペプチド基質の長さを調節することにより最適化されてもよい。さらなるFRETペプチドがタウプロテアーゼの他の切断部位に基づいてタウプロテアーゼ活性をモニターするために作製されてもよい。
【0064】
ここで、参照が、図面に示された実施形態、または実施例に対してなされ、特定の用語は同じものを説明するために使用される。それにも関わらず、本発明の範囲の限定をそれらにより意図するものではないことは理解されるであろう。記載した実施形態における変更およびさらなる修飾、ならびに本明細書に記載される本発明の原理の任意のさらなる適用は、通常、本発明に関する当業者により想定されると意図される。
【0065】
以下の図面は本発明の一部を形成し、本発明の特定の態様を実証するために含まれる。本発明は添付の図面と併せて以下の説明に対する参照により、より良く理解され得る。ここで、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1はADにおけるタウプロテアーゼ疾患機構を示す。神経細胞ストレスは、細胞体樹状突起区画におけるタウの蓄積を伴う場合、ジスルフィドにより媒介されるタウオリゴマーの細胞内生成を支持する酸化状態を導き得る。ミトコンドリア機能障害および炎症はタウの過剰リン酸化を潜在的に刺激し得る。これらの状態はアルツハイマー病などの病態においてタウプロテアーゼの形成を導くと考えられる。一旦形成されると、これらの種は機能損失を導く自己切断を受ける。タウ断片化は疾患における原線維の重要な要素と識別されている。疾患において観測される大部分の断片化は、タウプロテアーゼ自己タンパク質分解の結果であり得、それらの神経毒性種を中和しようとする細胞を表し得る。重要なことは、タウプロテアーゼ生成はまた、他のタンパク質標的および神経ペプチドに対するそのタンパク質分解活性に起因し得るタウの毒性機能の獲得と関連し得ることである。例えば、微小管分解、β−セクレターゼ切断部位に隣接するAPPの開裂を導き得るチューブリンの開裂は、BACE上方制御および発現を導く炎症を刺激できるAβ(1−42)を生成できる。ペプチド神経伝達物質の開裂は特に疾患の初期の疾患症状において重要な役割を果たし得る。
図2図2は、切断および高次の凝集体形成に先行したジスルフィド媒介性タウオリゴマーの形成を示す。タウ4R2Nオリゴマーを連続溶出電気泳動により精製し、単量体を、プールし、Tris−HCl pH7.4中に7000Daの分画分子量を有する回転カラムを使用して緩衝液を交換することによりさらに精製した。少量の単量体を周囲温度にて2時間、1mMの最終濃度で新たに調製したNEMで処理した。インキュベーションのために、NEMで処理した単量体および未処理の単量体を、週末にわたって(約50時間)37℃にてインキュベートし、続いて、還元剤を含まない4〜20%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)(SDS−PAGE)Tris−HClゲル(Bio−Radカタログ番号345−0033 Hercules,CA,USA)で分離した。切断の前にタウ4R2N−ジスルフィド媒介性オリゴマーが形成し、高次凝集前に切断した。凝集体形成は時間に依存した。タウ4R2N+N−エチルマレイミド(NEM Sigmaカタログ番号04−260,St Louis,MO,USA)はジスルフィド媒介性オリゴマー形成を不可逆的に阻害し、自己タンパク質分解活性の損失、および高次凝集体形成の阻害を導いた。レーン1:単量体、二量体、および三量体、四量体を含有するオリゴマーラダーが自然発生的に形成されるタウ4R2N;レーン2:37℃で一晩のインキュベーション時に、4R2Nは分解の証拠を示したが、単量体と比べて二量体、三量体、および四量体の減少を優先的に示す;レーン3:NEMで処理したタウ4R2Nはオリゴマーラダーをすぐに形成しない;ならびにレーン4:NEMで処理した4R2Nは、37℃で一晩のインキュベーション時に分解の証拠を示さず、酵素活性についてのジスルフィドの形成に必要であることを示す。
図3図3は、質量分析およびN末端シークエンシングについてのタウ断片の調製を示す。50マイクロリットルの2.45mg/mLの精製したタウ4R2N二量体を自己タンパク質分解できるように37℃にて38.5時間インキュベートした。試料を等体積の2×試料緩衝液(126mMのTris−HCl pH7.0、20%グリセロール、4%SDS、0.05%のブロモフェノールブルー)と合わせ、プレキャストした15%のポリアクリルアミドTris−グリシンゲル(BioRad)の5個のウェルで実施した。ゲルを、GelCode(商標)Blue Safe Stain(ThermoFisher Scientific,Rockford,IL,USA)を用いて1時間染色し、高精製水を用いて一晩脱染した。矢印で表したF3により示したバンドを切り取り、新しいカミソリの刃(水およびエタノールで洗浄した)で細かく分割し、一晩撹拌しながら4℃にて5mMのTris−HCl pH7.0中でインキュベートした。溶出したタンパク質を含有する緩衝液を分析のためにAlphalyseに送った。高分子量断片1〜4をPVDF膜に移すことによってN末端シークエンシングのために調製した。その断片をPonceau染色により可視化し、洗浄した新しいカミソリの刃を用いて切り取った。膜結合断片をN末端シークエンシング分析のためにAlphalyseに送った。4つの断片についてのN末端配列は同じであった:SKDGTG(配列番号18)。このことは、アミノ酸K130とS131との間の切断部位がタウプロテアーゼの主要な自己タンパク質分解部位であることを示す。
図4図4は、断片の分子量(MW)を決定するために使用した断片F3のマトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトル(MS)を示す。MALDI MSにおいて、溶解した試料を金属標的物に堆積させ、ペプチドおよびタンパク質を光吸収マトリクスを用いて共結晶化した。レーザービームを乾燥マトリクス試料に方向付け、試料分子を脱離し、イオン化し、質量を飛行時間(TOF)質量分析器において測定した。より大きなタンパク質は、多くの場合、単一(MH+)−、2倍(MH2 2+)−および3倍にプロトン化した(MH3 3+)イオンとして質量スペクトル(m/z)において観測された。タンパク質の質量はインタクトな非プロトン化タンパク質の平均質量として計算した。MALDIプロセスは、タンパク質調製物が、緩衝する塩および洗浄剤から比較的純粋であることを必要とし、通常、最大約60kDaまでのインタクトなタンパク質の5〜10Da内で質量決定が得られる。この分析において、製造業者のプロトコルに従ってピペットチップ(Zip Tips(登録商標),Merck Millipore,Billercia,MA,USA)(C18物質)を使用してタンパク質をマイクロ精製した。50%メタノールを用いてタンパク質を溶出した。マトリクスとしてHCCAを使用して線形モードにおいてMALDI質量分析法によりタンパク質を分析した。外部校正を使用して質量スペクトルを校正した。N末端EdmanシークエンシングをABI PROCISE(登録商標)494シーケンサーで実施した。この方法は、Edman分解化学によりタンパク質およびペプチドのN末端アミノ酸配列を決定する。シークエンシングは、酸でエッチングしたガラス繊維ディスクまたはPVDF膜上で行う。Edman分解は、アミノ酸残基が一度切断され、クロマトグラフィーにより識別される周期的手順である。工程1において、フェニルイソチオシアネート(phenulisothiocyanate)(PITC)Edman試薬をアルカリ性条件下でN末端アミノ基に結合する。工程2において、N末端残基を酸性媒体中で切断する。工程3において、PITC結合残基をフラスコに移し、PTH残渣に変換し、HPLCにより識別する。次いで次のサイクルを次のN末端残基の識別のために開始する。断片F3についてのN末端配列はタウ4R2Nのアミノ酸341〜346に対応するSEKLDF(配列番号18)であると決定し、タウプロテアーゼがLys340とSer341との間でそれ自身を切断することを示す。
図5図5は、タウタンパク質4R2N(アミノ酸335〜353)のペプチド断片がタウ4R2N三量体プロテアーゼにより切断されたことを示す。質量分析を使用した断片のN末端シークエンシングにより自己タンパク質分解部位を識別した。特に、Lys340−Ser341(340KS341)切断部位における切断は容易に起こった。したがって、KS切断部位(340KS341)を含有するタウタンパク質のアミノ酸335G〜353Lに対応する19アミノ酸ペプチドを合成した。逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応をモニターした。下側のトレースはペプチド単独を示し、上側のトレースはタウ4R2N三量体プロテアーゼとインキュベートしたペプチドを示し、その両方を37℃で一晩インキュベートした。下側のトレースにおいて、未切断ペプチドは約21.25分の保持時間を示す。アスタリスクはマーカーとして使用した非特異的不純物を示す。上側トレースは、2つの生成物断片が約17.5(F1)および20.5(F2)分の保持時間を有したことを示す。試験した反応条件下で反応は90%より多く完了し、その結果は、その自己タンパク質分解反応に加えてペプチドを切断するタウプロテアーゼの能力を決定的に実証した。10μgのタウペプチド335−353(GQVEVKSEKLDFKDRVQSK)(配列番号19)をGenscript(Piscataway、NJ,USA)によりカスタム合成し、1mgを1mLの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中に溶解した。29μgのペプチドを、37℃にて20時間、30μLの緩衝液中の11μgのタウ三量体プロテアーゼとインキュベートし、分析的C18カラム(12.5cm×2.1cm、5μm(Supelco,Bellefonte,PA,USA))上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルにおけるアセトニトリルの線形勾配を使用してHPLC[SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CEシステム,Beckman Coulter,Inc.,(インディアナポリス、IN)]により分析した。30μgのペプチドを陰性対照としてタウプロテアーゼを含まずにインキュベートし、同じ方法を用いて分析した。
図6A図6Aは部分的消化から識別した断片−対を示す。C末端およびN末端に特異的な抗体を使用してタウ4R2Nタンパク質の部分的消化から観測した断片を識別するためにウェスタンブロットを実施した。図6A:精製したタウ4R2N単量体、二量体および三量体調製物を、緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中で37℃にて0、2および16時間インキュベートし、還元剤を有する試料緩衝液を用いて4〜20%のポリアクリルアミドTris−HClゲル上で実施した。左から右に、レーン1〜3:単量体、0、2、16時間インキュベーション;レーン4〜6:二量体、0、2、16時間インキュベーション;レーン7〜9:三量体、0、2、16時間インキュベーション。ゲルをGelCode(登録商標)Blue Safe(ThermoFisher Scientific)を用いて染色し、タンパク質をPVDF膜(Merck Millipore)に移した。C末端に特異的な抗体、アミノ酸404〜441タウ4R2Nにおけるエピトープ(モノクローナルT46,Life Technologies,Grand Island,NY,USA)を使用してタウ4R2Nタンパク質の部分的消化から観測した断片を識別するために使用する免疫ブロットを実施した。ブロットを剥がし、N末端、アミノ酸83〜120タウ4R2Nにおけるエピトープに対する抗体(モノクローナル抗体T14、Life Technologies)を用いて再プローブした。
図6B図6Bは部分的消化から識別した断片−対を示す。C末端およびN末端に特異的な抗体を使用してタウ4R2Nタンパク質の部分的消化から観測した断片を識別するためにウェスタンブロットを実施した。図6B:標準物としてタウオリゴマーラダーを使用し、転移をlogMwに適合して各断片の分子量を決定した。45.8KDaのタウ4R2N MWの分子量と合計した断片対をマッチングすることにより、部分的消化の間に切断したKS部位の識別が可能となった。さらに、KT部位における切断と一致した断片もまた、この方法を使用して識別した。このように、質量スペクトルおよびウェスタンブロットから識別したタウ切断部位モチーフはP1−K−(S,TまたはI)−P1’であった。
図7図7は、タウタンパク質の210−aa断片(TP−210;タウ4R2N131−340)がタンパク質分解活性を保持し、それ故、タウのタンパク質分解領域を画定したことを示す。アミノ酸131〜340、210−aa断片(プラスその発現に必要なさらなる開始メチオニン)はタウプロテアーゼ活性を保有したことを示す。タウ4R2N 131〜340(TP−210)のアミノ酸配列を示す:MSKDGTGSDDKKAKGADGKTKIATPRGAAPPGQKGQANATRIPAKTPPAPKTPPSSGEPPKSGDRSGYSSPGSPGTPGSRSRTPSLPTPPTREPKKVAVVRTPPKSPSSAKSRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIINKKLDLSNVQSKCGSKDNIKHVPGGGSVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVK(配列番号1)。タウプロテアーゼ、タウ4R2N(アミノ酸335〜353)GQVEVKSEKLDFKDRVQSK(配列番号19)についてのペプチド基質の開裂を使用して、逆相HPLCを使用して活性をモニターした。下側のトレースはTP−210の不存在下で反応緩衝液中でインキュベートしたペプチドを示し、上側のトレースはTP−210とインキュベートしたペプチドを示す。下側のトレースにおける大きなピークは、インタクトなペプチドが上側のトレースにおいて非常に減少し、TP−210により生成される断片を表す2つの小さなピークF1およびF2と置き換わっていることを示した。アスタリスクはマーカーとして使用した非特異的不純物に由来する人工ピークを示す。12マイクログラムのタウ4R2Nペプチド(アミノ酸335〜353)を、37℃にて一晩、オリゴマー化したTP−210と共にまたはオリゴマー化したTP−210を有さずにインキュベートし、分析的C18カラム(12.5cm×2.1mm、5μm(Supelco))上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルにおけるアセトニトリルの線形勾配を使用して逆相HPLC(SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CEシステム、Beckman Coulter,Inc.,(インディアナポリス,IN))により分析した。
図8図8は、切断型タウタンパク質TP−99がペプチド消化HPLCアッセイにおいてプロテアーゼ活性を示したことを実証する。アミノ酸241〜340、99−アミノ酸断片(プラスその発現に必要なさらなる開始メチオニン)はタウプロテアーゼ活性を保有し、それにより、野生型タウタンパク質のタンパク質分解領域をさらに画定することを決定した。タウ4R2N 241−340(TP−99)のアミノ酸配列を示す:MRLQTAPVPMPDLKNVKSKIGSTENLKHQPGGGKVQIINKKLDLSNVQSKCGSKDNIKHVPGGGSVQIVYKPVDLSKVTSKCGSLGNIHHKPGGGQVEVK(配列番号3)。図7のように、タウプロテアーゼタウ4R2N(アミノ酸335〜353)についてのペプチド基質の開裂を、逆相HPLCを使用して活性をモニターするために使用した。下側のトレースはTP−99の不存在下で反応緩衝液中でインキュベートしたペプチドを示し、真ん中のトレースはTP−99とインキュベートしたペプチドを示す。下側のトレースにおける大きなピークは、上側のトレースにおいて大きく減少し、TP−99により生成される断片を表わす2つの小さなピークFおよびFと置き換わっているインタクトなペプチドを示す。100μMの塩化亜鉛の添加により、タウ4R2n 241〜340(TP−99)の活性が増加した(上側のトレース)。アスタリスクはインキュベーション管に由来する人工ピークを示す。10マイクログラムのタウペプチド335〜353(OP−001)を、37℃にて44時間、30μLの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中でTP−99を含まず、25μLのTP−99オリゴマーラダーと共に、またはさらなる100μMの塩化亜鉛と共にインキュベートした。分析的C18カラム(12.5cm×2.1mm、5μm、(Supelco))上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルにおけるアセトニトリルの線形勾配を使用して逆相HPLC(SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CEシステム、Beckman Coulter,Inc.,(インディアナポリス,IN))により試料を分析した。
図9A図9Aは、タウ4R2N三量体プロテアーゼがα−エンドルフィンペプチドを切断することを示す。ヒトα−エンドルフィンペプチド[TyrGlyGlyPheMetThrSerGluLysSerGlnThrProLeuValThr(配列番号13)(Abbiotech,LLC,San Diego,CA,USA)]を、1.2pgのタウ4R2N三量体プロテアーゼと共にまたは1.2pgのタウ4R2N三量体プロテアーゼを含まずに37℃にて20時間インキュベートし、分析的C18カラム(12.5cm×2.1mm、5μm(Supelco)上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルにおけるアセトニトリルの線形勾配を使用して逆相HPLC(SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CEシステム,Beckman Coulter,Inc.,インディアナポリス,IN,USA)により分析した。ペプチドはタウにおける自己触媒開裂部位で見出されるその配列中にLys−Serを含有しているので、タウプロテアーゼにより切断されると仮定される。タウ4R2N三量体プロテアーゼにより予測されるように2つの断片ピークが生成された。これらの結果は、タウ4R2N三量体プロテアーゼが神経伝達物質または神経活性ペプチドを開裂できることを示した。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。
図9B図9Bは、タウ4R2N三量体プロテアーゼがAPP667〜676ペプチドを切断することを示す。ヒトAPP667〜676ペプチド[Ser−Glu−Val−Lys−Met−Asp−Glu−Phe−Arg(配列番号14)(Anaspec,Fremont,CA,USA)]を、1.2pgのタウ4R2N三量体プロテアーゼと共にまたは1.2pgのタウ4R2N三量体プロテアーゼを含まずに37℃にて20時間インキュベートし、分析的C18カラム(12.5cm×2.1mm、5pm、Supelco)上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルの線形勾配を使用して逆相HPLC(SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CE System,Beckman Coulter,Inc.)により分析した。2つの主要な断片ピークがAPP667〜676ペプチド由来のタウプロテアーゼにより生成され、配列中のLys残基の後にタウプロテアーゼが切断することが示唆される。アスタリスクはペプチドに関係のない人工ピークを示す。タウ4R2N三量体プロテアーゼは、β−セクレターゼ(BACE)切断部位に隣接する最後から2番目のアミノ酸においてAPPを切断し、それによりAβ(1−42)を生成する。タウプロテアーゼ活性はCSFにおいて細胞外に観察されている。Aβ(1−42)の生成はBACE上方制御を導くニューロン内の炎症を刺激できる。さらに、Aβ(1−42)は血小板中で観察されており、N末端メチオニンのBACE開裂によりAβ(1−42)に変換され得る。タウプロテアーゼがアミロイドカスケードについての初期の活性化工程であり得ることが示唆される。
図10図10は、タウ4R2N三量体プロテアーゼが、タウ(4R1N)単量体およびタウ二量体を切断することを示す。タウオリゴマー形成は、毒性機能の増加およびタウ4R2N三量体活性により分解されるタウ単量体の機能の損失を導く。レーン1:タウ4R2N単量体(0.1μg);レーン2:還元剤を含まない1×試料緩衝液;レーン3:4R2N三量体、4R1Nなし;レーン4:タウ4R1N、タウ4R2N三量体なし;レーン5:タウ4R2N三量体:タウ4R1N、1:10;レーン6:タウ4R2N三量体:タウ4R1N三量体、1:100;レーン7:タウ4R2N三量体:タウ4R1N1:10。タウ三量体プロテアーゼ(4R2N)を、タウ4R1Nオリゴマー混合物と共におよびタウ4R1Nオリゴマー混合物を含まずに37℃にて一晩インキュベートし、続いて、還元剤(最終β−メルカプトエタノール5%)の存在下で4〜20%勾配Criterion(商標)ゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)上でSDS−PAGEにより分離し、単量体および二量体の両方について特定の切断を観察した。矢印は、タウ4R2N三量体プロテアーゼ活性から生成されるタウ4R1Nの断片を示す。上側の矢印については、2つのアイソフォームの間で断片は同じ見かけのMWを有し、下側の矢印の断片はタウ4R2N由来の断片より速く移動するタウ4R1N由来の断片と異なる。
図11図11はタウ4R2Nプロテアーゼについてのセリンプロテアーゼ阻害剤パネルを示す。タウ4R2N三量体を、セリン特異的プロテアーゼ阻害剤(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)と共にまたはセリン特異的プロテアーゼ阻害剤(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を含まずに37℃にて一晩インキュベートした。インキュベーション体積は0.145mg/mLタウ4R2N三量体の最終濃度で3.45マイクロリットルであった。レーン1−タンパク質標準物;レーン2−インキュベーションをしていないタウ4R2N単量体;レーン3−インキュベーションをしていない(プロテアーゼ阻害剤を含まない)タウ4R2N三量体;インキュベーションをした(プロテアーゼ阻害剤を含まない)レーン4−タウ4R2N三量体;レーン5−1mMのフッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩(AEBSF)とインキュベートしたタウ4R2N三量体;800nMのアプロチニンとインキュベートしたレーン6−タウ4R2N三量体;レーン7−100μMのアンチパインとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン8−100μMのキモスタチンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン9−100マイクロモルのエラスタチナールとインキュベートしたタウ4R2N三量体;38.1mMのε−アミノカプロン酸(EACA)とインキュベートしたレーン10−タウ4R2N三量体;500μMのメシル酸ガベキサートとインキュベートしたレーン11−タウ4R2N酸量体;100μMのロイペプチンとインキュベートしたレーン12−タウ4R2N三量体;500μMのメシル酸ナファモスタットとインキュベートしたレーン13−タウ4R2N三量体;100μMのトシルリシンクロモメチルケトン塩酸塩(TLCK−HCL)とインキュベートしたレーン14−タウ4R2N三量体;100μMのN−p−トシル−L−フェニルアラニンクロモメチルケトン(TPCK)とインキュベートしたレーン15−タウ4R2N三量体;レーン16−4μMのトリプシン阻害剤とインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン17−1mMのフッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)とインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン18−20%のジメチルスルホキシドとインキュベートしたタウ4R2N三量体。
図12図12はセリンプロテアーゼ阻害剤パネルとインキュベートしたタウ4R2N三量体を示す。タウ4R2N三量体を、低濃度および高濃度にてセリン特異的プロテアーゼ阻害剤と共におよびセリン特異的プロテアーゼ阻害剤を含まずに37℃にて一晩インキュベートした。レーン1:インキュベーションを用いない(プロテアーゼ阻害剤を含まない)タウ4R2N三量体;レーン2:プロテアーゼ阻害剤を含まずにインキュベートした4R2N三量体;レーン3:1μMのトリプシン阻害剤とインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン4:4μMのトリプシン阻害剤とインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン5:0.1mMのAEBSFとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン6:1mMのAEBSFとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン7:1mg/mLのEACAとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン8:5mg/mLのEACAとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン9:1μMのアンチパインとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン10:100μMのアンチパインとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン11:10nMのアプロチニンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン12:800nMのアプロチニンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン13:10μMのキモスタチンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン14:100μMのキモスタチンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン15:10μMのロイペプチンとインキュベートしたタウ4R2N三量体;レーン16:100μMのロイペプチンとインキュベートしたタウ4R2N三量体。試験した阻害剤の中で、キモスタチンは試験したセリンプロテアーゼ阻害剤の最大の阻害剤効果を示した。さらに、タウプロテアーゼ活性は用量依存的にセリンプロテアーゼ阻害剤パネルにより阻害された。活性は、プロテアーゼ阻害剤の特異性に基づいて、および質量スペクトルデータに基づいてセリンプロテアーゼファミリーと一致し、トリプシンなどの一部のセリンプロテアーゼの特徴を示す塩基性アミノ酸リシン(K)の後に開裂を示す。
図13図13はセリンヒドロラーゼ阻害剤AEBSFにより遮断されたオリゴマー化タウ4R2Nを標識するFP−TAMRAを示す。この方法は独立して、タウがセリンヒドロラーゼであることを示した。タウ4R2Nオリゴマーラダーを、セリンプロテアーゼにおける活性部位セリンに特異的なプローブである、蛍光性タグ(ThermoFisher Scientific)に結合したフルオロホスホネート(FP)で標識した。FPプローブは酵素活性セリンヒドロラーゼのセリンを特異的に標識する。セリンプロテアーゼ特異的阻害剤であるAEBSFを、タウがFPに特異的に標識したかどうかを決定するために用量反応研究に使用した。標識した試料の4〜20%のポリアクリルアミド勾配ゲルを、Typhoon9400(商標)スキャナ(GE Healthcare Biosciences,Pittsburgh,PA)で画像化し、続いてクマシー製品GelCodeBlue Safe(ThermoFisher Scientific)で染色して全タンパク質を可視化し、レーン中のタンパク質の等しい負荷を実証した。その結果により、AEBSF濃度が増加するにつれてタウ標識が用量依存的に阻害したことが示された。試料を還元剤を含まずまたは示した還元剤と共に泳動した。標識化のために、10μgのタウ4R2Nを、10μLの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4、150mMのNaCl、0.5mMのEDTA、0.1%のNP−40、5%のグリセロール)中の5マイクロモル濃度のFP−TAMRAで室温にて4時間暗所で標識した。試料を、室温にて1時間、0、0.1、1.0、または10.0mMのAEBSFで前処理して、FP−TAMRAプローブを加える前に活性部位セリンを遮断した。試料を半分に分け、示した還元剤を含むかまたは含まない試料緩衝液で実施した。
図14A図14Aは、AEBSFがタウ4R2n三量体プロテアーゼ活性を阻害したことを示す。図5に記載したタウ4R2N三量体活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。1mMのAEBSFを、ペプチド基質を添加する前に室温にて1時間、タウ4R2N三量体とインキュベートした。この結果により、タウ4R2N三量体がセリンプロテアーゼのクラスであり、タウプロテアーゼの阻害剤を識別するためにこのアッセイを使用して分子がスクリーニングされ得ることが示された。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。
図14B図14Bは、アンチパインがタウ4R2N三量体活性を阻害したことを示す。100pMのアンチパイン、セリン/システインプロテアーゼおよび一部のトリプシン様セリンプロテアーゼの可逆的阻害剤はペプチドの開裂を強力に阻害した。図5に記載したタウプロテアーゼ活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。100pMのアンチパインを、ペプチド基質を加える前に室温にて1時間、タウ4R2N三量体とインキュベートした。この結果により、タウプロテアーゼがセリンプロテアーゼのクラスであり、分子が、タウプロテアーゼの阻害剤を識別するためにこのアッセイを使用してスクリーニングされ得ることが示される。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。
図14C図14Cは、アプロチニンがタウプロテアーゼ活性を強力に阻害したことを示す。図5に記載したタウペプチド活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。800nMのアプロチニンを、ペプチド基質を加える前に室温にて1時間、タウプロテアーゼとインキュベートした。この結果により、タウプロテアーゼがセリンプロテアーゼのクラスであり、分子が、タウプロテアーゼの阻害剤を識別するためにこのアッセイを使用してスクリーニングされ得ることが示された。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。
図14D図14Dは、キモスタチンがタウプロテアーゼ活性を阻害したことを示す。キモスタチンは、いくつかの成分(キモスタチンA、キモスタチンB、キモスタチンC)の混合物であり、キモトリプシン、キモトリプシン様セリンプロテイナーゼ、キマーゼを含む多くのプロテアーゼの強力な阻害剤である。99pMのキモスタチンはペプチドの開裂を強力に阻害した。図5に記載したタウプロテアーゼ活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。99pMのキモスタチンを、ペプチド基質を加える前に室温にて1時間、タウプロテアーゼとインキュベートした。この結果により、タウプロテアーゼがセリンプロテアーゼのクラスであり、分子が、タウプロテアーゼの阻害剤を識別するためにこのアッセイを使用してスクリーニングされ得ることが示された。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。
図14E図14Eは、PMSFがタウ4R2N三量体活性を阻害したことを示す。1mMのPMSF、セリンプロテアーゼの不可逆阻害剤はペプチドの開裂を強力に阻害した。図5に記載したタウプロテアーゼ活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。1μMのPMSFを、ペプチド基質を加える前に室温にて1時間、タウ4R2N三量体とインキュベートした。この結果により、タウプロテアーゼがセリンプロテアーゼのクラスであり、分子が、タウプロテアーゼの阻害剤を識別するためにこのアッセイを使用してスクリーニングされ得ることが示される。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。また、パパイン(DTT処理により可逆性)およびアセチルコリンエステラーゼを阻害するが、メタロ−、アスパラギン酸およびほとんどのシステインプロテアーゼを阻害しない。
図14F図14Fは、メシル酸ガベキサート、セリンプロテアーゼ特異的阻害剤は試験した濃度においてペプチドの開裂を有意に阻害しないことを示す。図5に記載したタウプロテアーゼ活性についてのペプチドアッセイを使用して一連のセリンプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングした。150pMのメシル酸ガベキサートを、ペプチド基質を加える前に室温にて1時間、タウプロテアーゼとインキュベートした。この結果により、タウプロテアーゼがセリンプロテアーゼ特異的阻害剤に対する選択性を示すことが示される。アスタリスクはペプチドに関連していない人工ピークを示す。メシル酸ガベキサートは膵炎の処置に治療的に使用される合成セリンプロテアーゼ阻害剤である。
図15図15はタウプロテアーゼによるタウFRETペプチド切断の断片を示す。タウ4R2N三量体プロテアーゼおよび逆相HPLC分析を使用してタウプロテアーゼFRETアッセイのために設計されたプチドOP−002を切断する試験が示される。タウプロテアーゼ活性のFRET分析のためのペプチドOP−002は配列:MCA−GGQVEVKSE{Lys(DNP)}(配列番号15)を有し、ここで、MCAは蛍光メトキシクマリンであり、DNPは消光ジニトロフェノールである。ペプチドのC末端におけるLys残基の付加はDNPをペプチドにコンジュゲートするのに必要であった。ペプチドOP−002は、Genscript(Piscataway,NJ,USA)によりカスタム合成した。5μgのペプチドOP−002を、20マイクロリットルの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中の0、120ng、600ngまたは1200ngのタウ4R2N三量体とインキュベートし、37℃にて20時間インキュベートした。分析のために十分な体積を得るために10μLのHOをHPLCの前に加えた。分析的C18カラム(12.5cm×2.1mm、5μm、(Supelco)上で0.1%TFA中の0〜60%のアセトニトリルにおけるアセトニトリルの線形勾配を使用して逆相HPLC(SystemGold(登録商標)32Karat(商標)LC−CEシステム,Beckman Coulter,Inc.,(インディアナポリス,IN,USA))により分析を実施した。
図16図16は、タウプロテアーゼによるタウFRETペプチド切断の蛍光を示す。5μgのペプチドOP−002を、20μLの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中の0、120ng、600ngまたは1200ngのタウ4R2N三量体とインキュベートし、37℃にて23時間インキュベートした。10μLの各試料を、ブラック96ウェルプレートにおいて40μLの25mMのTris−HCl pH7.4を含有するウェルに移し、試料体積がウェルの底部を覆うことができるように混合した。EnVision(登録商標)プレートリーダー(Perkin Elmer,Waltham,MA,USA)を使用してウェルにおける蛍光を測定した。
図17図17はアミロイド前駆体タンパク質(APP)におけるタウプロテアーゼ切断部位を示す。
図18図18は、Aβ(1−42)産生の活性化を生じるアルツハイマー病におけるタウプロテアーゼ作用様式についての疾患モデルを示す。細胞内ドメインを含むAPPにおけるさらなる部位での切断は正常なAPPおよびAPP断片機能を妨げ得る。
図19図19は、210アミノ酸切断型タウタンパク質、タウ4R2N131〜340(TP−210)(配列番号1)をコードする構築物の核酸配列(配列番号7)を示す。
図20図20は、99アミノ酸切断型タウタンパク質、タウ4R2N241〜240(TP−99)(配列番号3)をコードする構築物の核酸配列(配列番号9)を示す。
図21図21は、本発明の一態様に係る切断型タウタンパク質の大規模精製についてのフローチャートを示す。タウタンパク質を大腸菌(E.coli)BL21(DE3)Gold(Agilent Technologies,La Jolla,CA,USA)中で発現させた。500mLの培養物を、0.6ODに到達した600nmの波長における光学密度まで250rpmで振盪しながら37℃にて増殖させた。タンパク質発現は、250rpmで振盪しながら37℃にて3時間、1mMの最終濃度におけるイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG;ThermoFisher Scientific)の添加により可能となった。遠心分離により細胞を採取し、将来の使用まで凍結した。細胞ペレットを、CelLyticB(Sigma,St.Louis,MO)、0.2mg/mLのリゾチーム(Sigma,St Louis,MO)、全1750単位におけるベンゾナーゼ(Sigma)およびプロテアーゼ阻害剤(Sigma)、100μMのキモスタチン、4μMのダイズトリプシン阻害剤、および0.8μMにおけるアプロチニンを含む細胞溶解緩衝液pH7.0中で再懸濁した。細胞を4℃にて30〜60分間溶解し、続いて溶解物が透明になるまで15,317×gにて遠心分離した。溶解物を、穏やかに回転させながら4℃にて1時間、予め平衡化した陽イオン交換樹脂SP Sepharose(GE Healthcare)とインキュベートした。樹脂を4℃にて低速で遠心分離し、低塩緩衝液で3回洗浄し、2×Laemmli試料緩衝液(Sigma)で結合タンパク質を溶出した。分取電気泳動システム(BioRad,Hercules,CA)を約220Vにて実施し、蠕動ポンプ(BioRad)を使用して画分を1mL/分の流速で回収する。4〜20%の勾配Tris−HClゲル(BioRad)を使用して還元条件下でSDS−PAGEにより画分を分析した。タンパク質画分をプールし、30,000Daの分画分子量を有するAmicon限外濾過装置(Merck Millipore)を使用して緩衝液を50mMのTris−HCl pH7.4中で交換した。
図22図22は、矢印により各々について示した切断部位を有するタウOP−001(aa335−353)(配列番号16)、ヒトAPPのaa667−676(配列番号14)、およびヒトα−エンドルフィンペプチド(配列番号13)配列を示すHPLC研究のために使用される例示的なペプチド配列を示す。
図23A図23Aは、アルツハイマーの脳の試料由来のタウタンパク質に対して抗体で免疫精製した活性セリンヒドロラーゼについてのプローブによるタンパク質の特異的標識を示し、タウタンパク質がセリンヒドロラーゼ活性を有することを示唆している。セリンヒドロラーゼはセリンプロテアーゼを含む酵素のクラスを含む。セリンヒドロラーゼスーパーファミリーは、セリン求核試薬を含む触媒機構を共有する最大の公知の酵素ファミリーのうちの1つである。フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)は、それらの酵素活性を不活性化し、プローブがそれらを標識することを防ぐためにセリンヒドロラーゼの活性部位セリンに不可逆的に結合する。PMSFで処理した後の標識が減少したバンド内のタンパク質を、活性セリンヒドロラーゼ(矢印により示した)についてのプローブにより特異的に標識した。1mMのEDTA、1μg/mLのペプスタチンA、20mMのホスホラミドン、ホスファターゼ阻害剤(ThermoFisher Scientific)を有するTPER緩衝液(ThermoFisher Scientific)中のDounce均質化によりAD脳からタンパク質を抽出した。10,000×gで20分間の遠心分離により溶解物を清浄した。上清を、ストレプトアビジン−アガロース(ThermoFisher Scientific)を使用してビオチンについて枯渇させた。活性セリンヒドロラーゼに特異的であるプローブ、蛍光カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)タグ(ThermoFisher Scientific)で標識したフルオロホスネート(FP)を、2μMの最終濃度にて溶解物とインキュベートした。非特異的標識についての対照として、溶解物の一部を、FP−TAMRAプローブを使用する前に、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、タウプロテアーゼを含むセリンヒドロラーゼの不可逆阻害剤で処理した。ビオチン化モノクローナル抗体HT7(ThermoFisher Scientific)を使用して、ストレプトアビジン−アガロースビーズ(ThermoFisher Scientific)を有する溶解物由来の全てのタウを捕捉した。タンパク質を抗体に結合させ、ジスルフィド還元剤β−メルカプトエタノールを有するまたは有さないSDS−PAGEにより分解したビーズにより捕捉した。蛍光画像をTyphoon(登録商標)スキャナ(GE Healthcare Biosciences)を用いて捕捉した。レーン1:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSF処理なし;レーン2:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSFを用いたPMSF処理による;レーン3:免疫捕捉タンパク質、PMSF処理なし;レーン4:免疫捕捉タンパク質、PMSF処理した。ジスルフィド媒介性タウオリゴマーが標識されているかどうかを決定するために還元剤を用いず(図23A)試料を流した。白色のバンドは画像捕捉のために使用した電圧における過剰露出に起因する。タウ免疫沈降からバンドを可視化するのに高電圧を必要とした。これらの結果により、AD脳がセリンプロテアーゼ活性を有するタウを含有することが示され、疾患プロセスにおけるその役割が支持される。
図23B図23Aおよび図23Bは、アルツハイマーの脳の試料由来のタウタンパク質に対して抗体で免疫精製した活性セリンヒドロラーゼについてのプローブによるタンパク質の特異的標識を示し、タウタンパク質がセリンヒドロラーゼ活性を有することを示唆している。セリンヒドロラーゼはセリンプロテアーゼを含む酵素のクラスを含む。セリンヒドロラーゼスーパーファミリーは、セリン求核試薬を含む触媒機構を共有する最大の公知の酵素ファミリーのうちの1つである。フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)は、それらの酵素活性を不活性化し、プローブがそれらを標識することを防ぐためにセリンヒドロラーゼの活性部位セリンに不可逆的に結合する。PMSFで処理した後の標識が減少したバンド内のタンパク質を、活性セリンヒドロラーゼ(矢印により示した)についてのプローブにより特異的に標識した。1mMのEDTA、1μg/mLのペプスタチンA、20mMのホスホラミドン、ホスファターゼ阻害剤(ThermoFisher Scientific)を有するTPER緩衝液(ThermoFisher Scientific)中のDounce均質化によりAD脳からタンパク質を抽出した。10,000×gで20分間の遠心分離により溶解物を清浄した。上清を、ストレプトアビジン−アガロース(ThermoFisher Scientific)を使用してビオチンについて枯渇させた。活性セリンヒドロラーゼに特異的であるプローブ、蛍光カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)タグ(ThermoFisher Scientific)で標識したフルオロホスネート(FP)を、2μMの最終濃度にて溶解物とインキュベートした。非特異的標識についての対照として、溶解物の一部を、FP−TAMRAプローブを使用する前に、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、タウプロテアーゼを含むセリンヒドロラーゼの不可逆阻害剤で処理した。ビオチン化モノクローナル抗体HT7(ThermoFisher Scientific)を使用して、ストレプトアビジン−アガロースビーズ(ThermoFisher Scientific)を有する溶解物由来の全てのタウを捕捉した。タンパク質を抗体に結合させ、ジスルフィド還元剤β−メルカプトエタノールを有するまたは有さないSDS−PAGEにより分解したビーズにより捕捉した。蛍光画像をTyphoon(登録商標)スキャナ(GE Healthcare Biosciences)を用いて捕捉した。レーン1:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSF処理なし;レーン2:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSFを用いたPMSF処理による;レーン3:免疫捕捉タンパク質、PMSF処理なし;レーン4:免疫捕捉タンパク質、PMSF処理した。ジスルフィド媒介性タウオリゴマーが標識されているかどうかを決定するために還元剤を用いて(図23B)試料を流した。白色のバンドは画像捕捉のために使用した電圧における過剰露出に起因する。タウ免疫沈降からバンドを可視化するのに高電圧を必要とした。これらの結果により、AD脳がセリンプロテアーゼ活性を有するタウを含有することが示され、疾患プロセスにおけるその役割が支持される。
図24図24は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)(配列番号17)のアミノ酸配列を示す。
図25図25は、タウ4R2N260〜340がタウFRETペプチドを切断することを示す。タウ4R2N260〜340構築物が、図22および図23に記載したタウFRETペプチドを使用してプロテアーゼ活性を有するかどうかを決定するためにFRETアッセイを実施した。2.5μgのタウFRETペプチドを、単独で、または30μLの緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.2)中の10、25もしくは50μgのオリゴマー化タウ4R2N260〜340と37℃にて17時間インキュベートした。96ウェルプレートのウェルについてのバックグラウンド値を決定するために、95マイクロリットルの緩衝液を、ブラック96ウェルMicrofluor Iプレート(ThermoFisher Scientific)のウェルに加え、EnVisionプレートリーダーを使用して(図23に記載したような)信号を決定した。5μLの各試料をウェル中の緩衝液と混合し、信号を決定した。試料とバックグラウンドとの間の相違を棒グラフに示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の例示的な実施形態を以下に示す。明確さの目的において、実際の実施の全ての特徴が本明細書に記載されているわけではない。もちろん、任意のこのような実際の実施形態の開発において、多くの実施に特有な決定が、実施ごとに変化する、システムに関連し、ビジネスに関連した制限との適合性などの開発者の特定の目標を達成するためになされなければならないことは理解されるであろう。さらに、このような開発の試みは、複雑であり、時間を消費するが、本開示の利益を有する当業者にとって慣用の実施であることが理解されるであろう。
【0068】
タウプロテアーゼはジスルフィド結合により安定されるオリゴマータウ種の形成により活性化される。タウプロテアーゼは、タウ単量体および高次の凝集体、チューブリン、APP、およびまた、アルファ−エンドルフィンなどの重要な神経ペプチドを含む、アルツハイマー病に重要である多くのタンパク質を切断することが実証されている。
【0069】
脳内のタウプロテアーゼの蓄積はアルツハイマー病の進行の主要な原因と考えられる。アルツハイマー病の治療のための有効な薬物は存在しないので、タウプロテアーゼの阻害を研究すること、およびアルツハイマー患者における治療的介入に有用な阻害剤を同定することに興味が集中している。活性タウオリゴマー調製物の野生型マウスへの注入により、記憶形成の阻害ならびにCREBリン酸化の減少およびヒストン4アセチル化(両方、記憶形成の分子マーカーである)の阻害が示される。さらに、マウス海馬スライスを使用した注入研究により、長期増強(LTP)における用量依存性の機能障害、メモリ形成の電気生理学的尺度が示される。さらに、タウは、CSF中に存在し、疾患重篤度と共に増加し、その独自の病理の広がりの原因となり得ることが示される。さらに、APPを開裂するその能力は、増加したBACE産生および疾患細胞がアポトーシスに入る減少した能力の両方を生じるアミロイドカスケードモデルを活性化し得る。細胞外タウプロテアーゼは既知の機能を有さない病理と考えられる。したがって、CSFにおける細胞外または細胞内のいずれかのこの活性を遮断する阻害剤の開発は、有害な副作用を有さず、したがって主要な毒性を有さずに疾患の全ての段階におけるAD患者についての顕著な臨床的有益性を示し得る。
【0070】
タウタンパク質のアイソフォーム
タウ構造アイソフォームは、チューブリン結合ドメインの数(タンパク質のC末端半分に位置する3または4個の反復)において互いに異なり得、それぞれ3Rまたは4Rタウアイソフォームと称される。それらはまた、1つまたは2つの29アミノ酸長、タンパク質のN末端部分(突出ドメイン)における強い酸性の挿入物のいずれかの存在または非存在において異なり得る。突出ドメインと微小管結合ドメインとの間に、塩基性のプロリンリッチ領域が存在する。タウ4R2Nは、それが緩衝液(SDSの除去後、25mMのTris−HCl pH7.4)中で37℃にてインキュベートされて、ジスルフィド媒介性オリゴマーを形成する場合、自己タンパク質分解開裂を受ける。タウ4R1Nは同様の特性を示した。活性プロテアーゼを形成する不活性単量体の自己相互作用をカスパーゼにより例示する。活性部位は両方の単量体由来のループから構成されるので、二量化はプロカスパーゼ活性化に重要である。三量体の活性はプロテアーゼおよび神経毒性アッセイの両方において二量体より大きかった。インキュベーションの間、タウ単量体およびタウ二量体は、ゲル上の明確な上側のバンドで観測される限り、高次の凝集体を形成するのに対して、三量体はさらなる高次の凝集体を形成しない。高次オリゴマーを形成する反応性の欠如は、構造が遊離チオールを1つも含まないことを示唆する。タウ三量体ジスルフィドの形成に基づいたモデルは、潜在的な提案される触媒三残基アミノ酸を同定する。
【0071】
精製したタウ三量体により、長時間のインキュベーションの間に最も完全な自己タンパク質分解活性により3つの主要な断片が与えられることが実証された。単量体調製物は、精製の間にオリゴマーを形成し、同時に断片を形成した。二量体および三量体調製物は、緩衝液交換の間、および精製プロセスの終わりの濃度にて自己タンパク質分解断片化を開始した。ジスルフィド媒介性タウオリゴマーの形成はタウプロテアーゼ活性を活性化した。ザイモグラム分析により、タウ種(インキュベーションの間にジスルフィド媒介性凝集体を形成する単量体バンドについて観測した活性に加えて高次の凝集体およびタウ断片)と相関したプロテアーゼ活性により、汚染により引き起こされる可能性が除外されると実証された。タウバンドと自己タンパク質分解活性との間の特別な相関関係により、タウ自体が活性を有し、汚染プロテアーゼではないことが示された。
【0072】
タウプロテアーゼ開裂チューブリン
タウプロテアーゼはその自己触媒的開裂反応に加えてチューブリンを切断する。単量体タウの通常の活性はチューブリンと相互作用して、軸索中で微小管を形成し、安定化する。疾患において、チューブリンを分解する活性と共にタウオリゴマー形態は、微小管および神経機能の破壊についての直接的な病理学的機構であると示唆される。タウ三量体プロテアーゼを、プロテアーゼ阻害剤(PI)カクテル(セリンプロテアーゼ、アミノ−ペプチド、システインプロテアーゼおよびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤を含有する)と共にまたはプロテアーゼ阻害剤(PI)カクテルを有さずに一晩インキュベートした場合、PIカクテルは酵素機能と一致した様式でさらなる断片化を阻害した。現在のデータにより、タウ三量体は最も高いプロテアーゼ活性を有するが、タウ二量体は中間の活性を有し、タウ単量体は低いプロテアーゼ活性を有することが示唆される。データはまた、活性三量体プロテアーゼ中に遊離チオールが存在せず、タウプロテアーゼはシステインプロテアーゼではないことが示唆される。
【0073】
タウのC末端およびN末端部分に特異的である抗体を使用したウェスタンブロット分析は、タウのカルボキシ末端に対する6.2KDa断片(断片1)を正確に示し、1.7KDa断片(断片3)は微小管結合ドメインを含有し、19.5KDa断片(断片2)はタウのC末端を含有することを示唆する。結合微小管に加えて、タウはまた、細胞膜の成分と相互作用する。タウのN末端突出ドメインは細胞膜と会合する。オリゴデンドロサイトにおいて、タウはfynとの相互作用によりプロセス形成(膜伸長)を調節する。セリン/トレオニン残基におけるタウのN末端半分内のリン酸化は、ニューロン膜とのその会合を調節する。Fyn、チロシンキナーゼは、そのプロリンリッチ領域を介してタウと相互作用し、N末端においてタウをリン酸化し、それを細胞膜に移行する。セリン/トレオニン残基におけるリン酸化は、タウ−Fyn相互作用を阻害し、膜に移行する。タウのこの樹枝状の役割は、ADの病理および治療について直接関係がある後シナプスにおいてAβ毒性を与えることである。配列分析により、タウプロテアーゼはAβを生じる3−セクレターゼ部位に隣接するAPPを切断できることが示唆される。このことは、Aβおよびタウ病理の両方を直接結び付けるのでアルツハイマー病において重要であり得る。したがって、タウプロテアーゼの阻害は、タウおよびAβ病理の両方を改善する効果的な治療的介入である。
【0074】
切断型タウポリペプチドはプロテアーゼ活性を保持する
例示的な切断型タウペプチド(本明細書中でTP−210、TP−99、TP−118、TP−83、およびTP−81とそれぞれ指定した)を同定し、調製し、それらはタウプロテアーゼ酵素活性を保持する。アミノ酸位置を野生型、4R2N形態のものの番号付けに対応して示した:
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
タウプロテアーゼポリヌクレオチドおよび発現
本発明の重要な態様は、1つ以上のタウプロテアーゼ活性ポリペプチドをコードする単離DNA部分および組換えベクター、ならびに1つ以上のタウプロテアーゼ活性ポリペプチドを発現するDNA技術の適用による組換え宿主細胞の作製および使用に関する。DNA部分、組換えベクター、組換え宿主細胞およびこのようなポリペプチドを生成する発現方法もまた、本発明により提供される。本明細書で使用される場合、「核酸部分」という用語は、特定の種の全ゲノム核酸を含まない単離されているポリヌクレオチドを指す。したがって、タウプロテアーゼをコードするDNA部分とは、タウプロテアーゼコード配列を含有するDNA部分を指し、さらに全哺乳動物またはヒトゲノムDNAから離れて単離されるか、あるいは全哺乳動物またはヒトゲノムDNAを含まずに精製される。「DNA部分」という用語に含まれるのは、DNA部分およびそのような部分の小さな断片であり、また例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどを含む組換えベクターである。
【0081】
同様に、単離されたまたは精製されたタウプロテアーゼ遺伝子を含むDNA部分とは、タウプロテアーゼコード配列を含むDNA部分、ならびに特定の態様において、天然に存在する遺伝子またはタンパク質をコードする配列から離れて実質的に単離された調節配列を指す。これに関して、「遺伝子」という用語は、簡潔さのために、機能タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドコード単位を指すために使用される。当業者により理解されるように、この機能的用語は、タウプロテアーゼ、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質および突然変異体を発現する、または発現するように適合され得るゲノム配列、相補DNA(cDNA)配列および小さな遺伝子操作した遺伝子断片を含む。
【0082】
「他のコード配列から離れて実質的に単離した」とは、目的の遺伝子、この場合タウプロテアーゼまたは遺伝子が、DNAセグメントのコード領域の有意な部分を形成し、DNAセグメントは大きな部分の天然に存在するコードDNA、例えば大きな染色体断片または他の機能的遺伝子もしくはcDANコード領域を含有しないことを意味する。もちろん、これは、最初に単離されるDNAセグメントを指し、ヒトの手により断片に後で加えられる遺伝子またはコード領域を排除しない。
【0083】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはそれらの生物学的機能等価物のいずれか1つに由来する少なくとも約15アミノ酸、より好ましくは少なくとも約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、もしくは70またはそれ以上の連続アミノ酸配列を含む、実質的に完全長のタウプロテアーゼをコードする単離DNAセグメントおよび組換えベクター、または1つ以上の切断型タウプロテアーゼ、バリアント、変異体、融合物、もしくはそれらのエピトープをコードする断片および組換えベクターに関する。
【0084】
本発明のタウプロテアーゼをコードする核酸断片は通常、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6、またはその生物学的機能等価物のいずれか1つ由来の少なくとも約12アミノ酸など、より好ましくは少なくとも約16アミノ酸などの連続アミノ酸配列、さらにより好ましくは少なくとも約20連続アミノ酸を含むタンパク質またはポリペプチド;あるいはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でこのようなコード配列にハイブリダイズするこのような配列コードする遺伝子および/またはDNA断片をコードする。
【0085】
「実質的に配列番号XXに記載される配列」という用語は、その配列が、配列番号XXに列挙されている配列の一部に十分に対応し、配列番号XXに列挙されているアミノ酸配列と同一でない、または生物学的機能等価物でない比較的少数のアミノ酸を有することを意味する。「生物学的機能等価物」という用語は、当該技術分野において十分に理解されており、さらに本明細書に詳細に定義される。したがって、タンパク質の生物活性(すなわちプロテアーゼ活性)が維持されている限り、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6のアミノ酸と同一または機能等価物であるアミノ酸の約85%〜約90%;またはより好ましくは約91%〜約95%;またはさらにより好ましくは約96%〜約99%を有する配列は、「実質的に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6に記載される」配列である。
【0086】
「機能的に等価なコドン」という用語は、アルギニンまたはセリンについての6個のコドンなどの同じアミノ酸をコードするコドンを指すため、また、生物学的等価アミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書に使用される。
【0087】
また、配列が、タンパク質発現に関係する生物学的タンパク質活性の維持を含む、上記の基準を満たす限り、アミノ酸および核酸配列は、追加のN末端もしくはC末端アミノ酸または5’もしくは3’配列などの追加の残基を含んでもよく、さらに実質的に本明細書に開示される配列の1つに記載されていることも理解されるであろう。末端配列の付加は特に、例えば、コード領域の5’もしくは3’タンパク質のいずれかに隣接する種々の非コード配列を含み得るか、または種々の内部配列、すなわち遺伝子内で発生することが知られているイントロンを含み得る核酸配列に適用する。
【0088】
イントロンまたは隣接領域を除いて、および遺伝子コードの縮重を考慮して、配列は本明細書に開示されるヌクレオチド配列の1つ以上と同一であるヌクレオチドの約75%〜約79%;またはより好ましくは約80%〜約89%;またはさらにより好ましくは約90%〜約99%を有する。
【0089】
本明細書に記載されるものと実質的に同じ配列もまた、比較的ストリンジェントな条件下でこのような配列の相補体を含有する核酸断片にハイブリダイズできる配列として機能的に定義され得る。適切な比較的ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当業者に周知であろう。
【0090】
本発明についての適切な標準的なハイブリダイゼーション条件としては、例えば、42℃にて16時間、50%ホルムアミド、5×Denhardts溶液、5×SSC、25mMのリン酸ナトリウム、0.1%のSDSおよび100μg/mLの変性サケ精子DNAにおけるハイブリダイゼーション、続いて所望の量のバックグラウンド信号を除去するために60℃にて0.1×SSC、0.1%のSDS溶液を用いた1時間の連続洗浄が挙げられる。本発明についてのより低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件としては、例えば、42℃にて16時間、35%のホルムアミド、5×Denhardts溶液、5×SSC、25mMのリン酸ナトリウム、0.1%のSDSおよび100μg/mLの変性サケ精子DNAもしくは大腸菌(E.coli)DNAにおけるハイブリダイゼーション、続いて55℃にて0.8×SSC、0.1%のSDSを用いた連続洗浄が挙げられる。分子生物学的分野における当業者は、所望のレベルのストリンジェンシーを得るために条件は容易に調節され得ることを認識するであろう。
【0091】
当然に、本発明はまた、本明細書に記載される配列の1つ以上に相補的、または実質的に相補的である核酸セグメントを包含する。「相補的」である核酸配列は、標準的なワトソン−クリック相補性規則に従って塩基対合できるものである。本明細書に使用される場合、「相補配列」という用語は、上記の同じヌクレオチド比較によりアッセイされ得る場合、またはすぐ上に記載したものなどの比較的ストリンジェントな条件下で本明細書に開示される核酸セグメントの1つ以上にハイブリダイズできると定義される場合、十分に相補的である核酸配列を意味する。
【0092】
コード配列自体の長さに関わらず、本発明の核酸セグメントは、プロモーター、ポリアデニル化信号、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコード断片など(それらの全長はかなり変化し得る)の他のDNA配列と組み合わされてもよい。したがって、全長が好ましくは意図される組換えDNAプロトコルにおける調製および使用の容易さにより制限される、ほとんど任意の長さの核酸断片が利用されてもよいことが考慮される。
【0093】
本発明の開示されるタウプロテアーゼをコードする核酸配列について設計される種々のオリゴヌクレオチド検出プローブおよび増幅プライマーは任意の適切な長さであり得る。数値を配列に割り当てる(例えば第1の残基が1であり、第2の残基が2であるなど)ことによって、全てのプライマーを定義するアルゴリズムが提案され得る:
n〜n+y
式中、nは1から配列の末尾までの整数であり、yはプライマー−1の長さであり、n+yは配列の末尾を越えない。したがって、125−merについて、プローブは塩基1〜125、2〜126、3〜127などに対応する。315−merについて、プローブは塩基1〜315、2〜316、3〜317などに対応する。360−merについて、プローブは1〜360、2〜361、3〜362などに対応する。
【0094】
本発明は、本明細書に開示される特定の核酸およびアミノ酸配列に限定されないこともまた理解されるであろう。したがって、組換えベクターおよび単離されたDNAセグメントは、これらのコード領域自体、塩基コード領域において選択される変更または修飾を保有するコード領域を様々に含むか、あるいはそれらは、それでもなおこのようなコード領域を含む、より大きなポリペプチドをコードできるか、または変異アミノ酸配列を有する生物学的機能等価タンパク質もしくはペプチドをコードできる。
【0095】
本発明のポリヌクレオチド断片は、1つ以上の生物学的機能等価タウプロテアーゼ、または1つ以上のタウプロテアーゼ由来切断型タンパク質、または1つ以上のタウプロテアーゼ関連ペプチド、それらのエピトープ、断片、バリアント、および/もしくは変異体をコードできる。このような配列は、核酸配列およびそれによりコードされるタンパク質内に天然に発生することが知られているコドン冗長性および機能的等価の結果として生じ得る。あるいは、機能的等価タンパク質またはポリペプチドは組換えDNA技術の適用により作製されてもよく、その組換えDNA技術において、タンパク質構造の変化は、交換されるアミノ酸の特性の考慮に基づいて操作されてもよい。人により設計される変化が、例えば、タンパク質の抗原性の改善を組み込むため、またはインビボおよび/もしくはインビボにおいてタウタンパク質もしくは1つ以上のそのタンパク質分解基質の機能を検査するために突然変異体を試験するために部位特異的突然変異誘発法の適用により組み込まれてもよい。
【0096】
例えば、タウプロテアーゼコード領域が、精製または免疫検出目的などの所望の機能を有する他のタンパク質またはペプチド(例えば、それぞれアフィニティクロマトグラフィーにより精製され得るタンパク質および酵素標識コード領域)を有する同じ発現単位内に整列される融合タンパク質およびペプチドを調製してもよい。
【0097】
また、例えば、約7〜約50アミノ酸長、より好ましくは約10〜約30アミノ酸長のペプチドなどの比較的小さなペプチド、ならびにまた、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、もしくは配列番号6に記載される1つ以上の連続アミノ酸配列に対応するタンパク質までのより大きなポリペプチドおよびそれらを含むより大きなポリペプチドをコードする核酸断片も本発明に包含される。
【0098】
それらを含むポリヌクレオチドおよび核酸セグメントもまた、種々の適用のために利用されてもよい。例えば、特に有用な適用は、タウプロテアーゼまたはそのペプチド、バリアント、切断体、融合体、もしくはエピトープの組換え産生に関する。さらに、本発明のタウプロテアーゼをコードする核酸セグメントはまた、例えば、タウプロテアーゼ遺伝子または関連するゲノム配列の識別およびクローニングに使用され得る、あるいは遺伝子発現の研究などに使用され得る、タウ特異的核酸検出プローブまたは増幅プライマーの調製に使用されてもよい。
【0099】
核酸検出およびハイブリダイゼーション
タウタンパク質またはセリンプロテアーゼ酵素活性を有するそのペプチド、ポリペプチド変異体または誘導体の発現を行う際のそれらの使用に加えて、本明細書に開示される核酸配列はまた、種々の他の用途も有する。例えば、それらはまた、タウタンパク質もしくはタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを識別するための核酸ハイブリダイゼーションの実施形態におけるプローブまたはプライマーとしての有用性を有する。
【0100】
例えば、約14〜20、25〜30、50、75、100、120、150、200、250、300などのヌクレオチド長のハイブリダイゼーションプローブの使用により、安定かつ選択的の両方である二本鎖分子の形成が可能となる。ハイブリッドの安定性かつ選択性を増加させるために、約20塩基長より長いストレッチにわたる相補配列を有する分子が一般に好ましく、それにより、得られる特定のハイブリッド分子の質および程度が改善する。本明細書に開示されるものの任意の領域由来の配列を使用する際に、約75〜約300ヌクレオチドまたは所望の場合それらより長いストレッチを有する核酸分子を設計することが一般に好ましい。本明細書に既に開示されているように、より特異領域から選択することによって、当業者は、より小さな配列が好ましい適用において、例えば、約14〜20、約25、約30、または約35などのヌクレオチド長のより小さなオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーが設計され、利用され得ることを理解するであろう。
【0101】
全てのこのような断片は、例えば、化学的方法により、または組換え体産生のために選択される配列を組換えベクター内に導入することにより、断片を直接合成することを含む、当業者に公知の方法により容易に調製され得る。これらの化学的方法としては、例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,603,102号(これらの各々はそれらの参照を示すことによりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))技術、または組換え体産生のために選択される配列を組換えベクター内に導入することが挙げられ得る。
【0102】
したがって、本発明のヌクレオチド配列は、遺伝子またはRNAの相補的ストレッチと二本鎖分子を選択的に形成するか、あるいは組織由来のDNAまたはRNAの増幅のためのプライマーを提供するそれらの能力のために使用され得る。想定される適用に応じて、標的配列に対するプローブの種々の程度の選択性を達成するためにハイブリダイゼーションの種々の条件を利用することが望まれる。特定の適用に関して、例えば、部位特異的突然変異誘発法によるヌクレオチドの置換に関して、より低いストリンジェントな条件が必要とされることが理解される。これらの条件下で、たとえプローブおよび標的鎖の配列が完全に相補的でなくても、ハイブリダイゼーションが起こり得るが、1つ以上の位置においてミスマッチが存在する。条件は、塩濃度を増加させ、温度を減少させることによって低いストリンジェントにすることができる。例えば、本発明についての低いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃にて16時間、35%のホルムアミド、5×Denhardts溶液、5×SSC、25mMのリン酸ナトリウム、0.1%のSDSおよび100μg/mLの変性サケ精子DNAまたは大腸菌(E.coli)DNAにおけるハイブリダイゼーション、続いて55℃における0.8×SSC、0.1%のSDSでの連続洗浄を提供し、発生する相同タンパク質との異種間のハイブリダイゼーションを可能にする。
【0103】
他の実施形態において、所望の量のバックグラウンド信号を除去するために、例えば、42℃にて16時間、50%のホルムアミド、5×Denhardts溶液、5×SSC、25mMのリン酸ナトリウム、0.1%のSDSおよび100μg/mLの変性サケ精子DNA、続いて60℃にて0.1×SSC、0.1%SDS溶液での1時間の連続洗浄の条件下で、よりストリンジェントなハイブリダイゼーションが達成され得る。
【0104】
特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションを決定するために、標識などの適切な手段と共に本発明の核酸配列を利用することが有益である。検出され得る、蛍光、放射線、酵素または他のリガンド例えばアビジン/ビオチンを含む、多種多様の適切な指標手段が当業者に公知である。好ましい実施形態において、放射線または他の環境に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識または酵素タグ、例えばアルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼを利用することが望まれ得る。酵素タグの場合、相補核酸を含有する試料との特異的ハイブリダイゼーションを識別するために、ヒトの眼で見えるまたは分光光度法による検出手段を提供するために利用され得る比色指標物質が公知である。
【0105】
一般に、本明細書に記載されるハイブリダイゼーションプローブは、対応する遺伝子の発現を検出するためのPCR(商標)におけるような溶液ハイブリダイゼーションにおける試薬として、ならびに固相を利用する実施形態において有用であると想定される。固相を含む実施形態において、試験DNA(またはRNA)は吸着されるかまたはそうでなければ選択されるマトリクスもしくは表面に付着される。この固定された一本鎖核酸は次いで、所望の条件下で選択されるプローブとのハイブリダイゼーションに供される。選択される条件は、必要とされる特定の基準(例えば、G+C含量、標的核酸の種類、核酸源、ハイブリダイゼーションプローブのサイズなどに応じる)に基づいた特定の状況に依存するであろう。非特異的結合プローブ分子を除去するためにハイブリダイズした表面の洗浄後、ハイブリダイゼーションが検出されるか、またはさらに検出可能な標識により定量される。
【0106】
増幅およびPCR(商標)
増幅のための鋳型として使用される核酸は、分子生物学分野における当業者に公知である標準的な方法に従って、生物学的試料中に含有する細胞から単離される。このような核酸は、ゲノムDNAと含有されてもよいか、または断片化もしくは全細胞核酸単離および/もしくは抽出から得られるポリヌクレオチドの集団中に含有されてもよい。タウタンパク質または切断型タウプロテアーゼ、またはそれらのタウプロテアーゼバリアントもしくは変異体に対応する核酸と選択的にハイブリダイズするプライマーの対は、選択的ハイブリダイゼーションを許容する条件下で単離核酸と接触される。本明細書に定義される場合、「プライマー」という用語は、鋳型依存プロセスにおいて初期核酸の合成を準備できる任意の核酸を包含することを意味する。典型的に、プライマーは、長さが10〜12塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列が利用されてもよい。プライマーは二本鎖または一本鎖形態で提供されてもよいが、一本鎖形態が好ましい。
【0107】
一旦ハイブリダイズすると、核酸:プライマー複合体は、鋳型依存性核酸合成を促進する1つ以上の酵素と接触される。増幅の複数のラウンドはまた、「サイクル」と称され、十分な量の増幅産物が産生されるまで実施される。次に増幅産物が検出される。特定の適用において、検出は視覚手段により実施されてもよい。あるいは、検出は、化学発光、組み込まれる放射性標識もしくは蛍光標識の放射性シンチグラフィーによる、またはさらに、電気もしくは熱インパルス信号を使用したシステムによる産物の間接同定を含んでもよい。多くの鋳型依存性プロセスが所与の鋳型試料中に存在するマーカー配列を増幅させるのに利用可能である。最も知られている増幅法の1つは上記のPCR(商標)である。
【0108】
増幅産物はマーカー配列の増幅を確認するために視覚化されなければならない。1つの典型的な視覚化方法は、エチジウムブロマイドでのゲルの染色およびUV光下での視覚化を含む。あるいは、増幅産物が放射性または蛍光定量的に標識されたヌクレオチドで完全に標識される場合、増幅産物は分離後、x線フィルムに曝露され得るかまたは適切な刺激スペクトル下で視覚化され得る。一実施形態において、視覚化は間接的に達成される。増幅産物の分離後、標識された核酸プローブが、増幅されたマーカー配列と接触される。プローブは好ましくは、検出可能な標識(例えば、発色団、蛍光部分、または1つ以上の磁石、スピン共鳴、または放射性標識)にコンジュゲートされる。別の実施形態において、プローブは、抗体またはビオチンなどの結合パートナーにコンジュゲートされ、結合対の他のメンバーは検出可能な部分を保有する。
【0109】
別の実施形態において、検出は、検出可能な標識プローブとのハイブリダイゼーションによるサザンハイブリダイゼーション分析(すなわち「サザンブロット」)などの方法を使用して達成されてもよい。サザンハイブリダイゼーションに含まれる技術は当業者に周知であり、分子プロトコルに関する多くの標準的な本に見出され得る。簡潔に、増幅産物はゲル電気泳動により分離される。次いでゲルは、PVDFまたはニトロセルロースなどの膜と接触され、核酸の移動および非共有結合を可能にする。続いて、膜は、標的増幅産物とハイブリダイズできる標識プローブ(発色団とコンジュゲートしたまたは放射性標識プローブなど)とインキュベートされる。検出は、x線フィルムに対する膜の曝露または標準的な検出機器による。
【0110】
上述の一例は、参照を示すことによりその全体が本明細書に具体的に組み込まれている米国特許第5,279,721号に記載されており、それは自動化電気泳動および核酸の移動のための装置および方法を開示している。その装置は、ゲルを外部操作せずに電気泳動およびブロッティングを可能にし、理想的には、本発明の実施においてこのような方法を実施するように合わせられる。
【0111】
試料中にタウプロテアーゼを検出するのに必要とされる全ての必須材料および試薬は、簡便な「キット」形態で一緒に集められてもよい。そのようなキットは診断および研究方法において広範に使用され、一般に、1つ以上の予め選択された増幅プライマーおよび必要に応じて、または1つ以上の予め標識された検出プローブ、分子量基準物、および/または1つ以上の陽性もしくは陰性対照試料を含む。また、種々のポリメラーゼ(逆転写酵素Taqなど)を含む核酸を増幅するのに適した酵素、デオキシヌクレオチドの混合物、および1つ以上の緩衝液または所与の増幅および/もしくは利用される検出プロトコルに適切な反応混合物を調製するのに必要な他の試薬も含んでもよい。
【0112】
このようなキットは一般に、適切なパッケージングにおいて、各々の個々の試薬または酵素の別個の容器ならびにプライマーおよび/またはプローブの各セットのための別個の容器を含む。
【0113】
別の実施形態において、このようなキットは、タウプロテアーゼをコードする配列に特異的なハイブリダイゼーションプローブを含む。このようなキットは一般に、適切な容器中に、1つ以上の個々の反応成分、緩衝液、酵素(複数も含む)、デオキシヌクレオチド混合物ならびに選択されたハイブリダイゼーションプローブ(複数も含む)のセットおよび/または試験を実施するのに必要な検出試薬を含む。このようなキットはまたさらに必要に応じて、特定の種類の反応を実施するための指示書、ならびに個別化されたプロトコル、標準曲線、陽性および陰性対照試料などのうちのの1つ以上のセットを含む。
【0114】
切断、変異、または置換タウプロテアーゼ
部位特異的突然変異は、内在するDNAの特異的突然変異による、個々のペプチド、または生物学的機能等価タンパク質もしくはペプチドの調製に有用な技術である。その技術はさらに、1つ以上のヌクレオチド配列の変化をDNAに導入することにより、上述の考慮の1つ以上を組み込んだ、配列変異体を調製し、試験する準備能力を提供する。部位特異的突然変異は、十分なサイズのプライマー配列および横断する欠失連結部の両側において安定な二本鎖を形成する配列複雑性を提供するために、所望の突然変異体のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列、および十分な数の連続ヌクレオチドの使用による変異体の産生を可能とする。典型的に、約17〜25ヌクレオチド長のプライマーが好ましく、配列の連結部の両側において約5〜10残基が変化される。
【0115】
一般に、部位特異的突然変異の技術は分子生物学の分野の当業者に周知である。理解されるように、その技術は典型的に単鎖および二本鎖形態の両方に存在するバクテリオファージベクターを利用する。部位特異的突然変異に有用な典型的なベクターとしては、M13ファージなどのベクターが挙げられる。これらのファージベクターは商業的に利用可能であり、それらの使用は一般に当業者に周知である。二本鎖プラスミドもまた、部位特異的突然変異に慣用的に利用され、それはファージ由来の対象の遺伝子をプラスミドに移送する工程を除外する。
【0116】
部位特異的突然変異誘発は、多くの場合、一本鎖ベクターを最初に得ること、あるいはその配列内に、所望のタウプロテアーゼ、またはそのプロテアーゼ活性断片、変異体、エピトープ、もしくは突然変異体をコードする核酸断片を含む二本鎖ベクターの二本鎖を融解することにより実施される。所望の突然変異配列を保有するオリゴヌクレオチドプライマーは合成的に調製される。次いでこのプライマーは、一本鎖DNA調製物とアニールされ、突然変異を有する鎖の合成を完了するために、大腸菌(E.coli)ポリメラーゼI Klenow断片などのDNA重合酵素に供される。したがって、第1の鎖が元の非突然変異配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異体を保有する、ヘテロ二本鎖が形成される。このヘテロ二本鎖ベクターは次いで大腸菌(E.coli)細胞などの適切な細胞を形質転換するために使用され、突然変異配列アレンジメントを保有する組換えベクターを含むクローンが選択される。部位特異的突然変異を使用するタウプロテアーゼをコードする核酸配列の配列変化の調製は、潜在的に有用な種を産生する手段として提供され、遺伝子の配列変化が得られ得る他の方法が存在する場合、限定することを意味するわけではない。例えば、所望のタウをコードするポリヌクレオチドをコードする組換えベクターが、タウプロテアーゼの配列変異を得るために、ヒドロキシルアミンなどの1つ以上の突然変異誘発物質を用いて処理されてもよい。
【0117】
組換えベクター、宿主細胞および発現
組換えベクターは本発明の重要なさらなる態様を形成する。「発現ベクター」または「発現構築物」という用語は、核酸コード配列の一部または全てが転写され得る遺伝子産物をコードする核酸を含有する任意の種類の遺伝構築物を意味する。転写産物はタンパク質に翻訳され得るが、それは必要とされない。したがって、特定の実施形態において、発現は、遺伝子の転写および遺伝子産物へのRNAの翻訳の両方を含む。他の実施形態において、発現は、例えばアンチセンス構築物を生成するために核酸の転写のみを含む。
【0118】
特に有用なベクターは、DNA断片のコードタンパク質が、適切な宿主細胞中で配列を発現できる少なくとも第1のプロモーターの転写制御下で作動可能に配置される、それらのベクターであることを意図する。「作動可能に配置される」、「制御下」または「作動可能に連結される」、および「転写制御下」という用語は、プロモーターが、RNAポリメラーゼ開始を制御し、連結されたプロモーターにより核酸断片の発現を駆動するために、核酸に対して正確な位置および方向にあることを意味する。プロモーターは、例えば、本明細書に開示される組成物と関連して、組換えクローニングおよび/またはPCR(商標)技術を使用してコード断片またはエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することにより得られる場合、タウタンパク質またはタウプロテアーゼをコードする遺伝子と天然に会合するプロモーターの形態であってもよい。
【0119】
他の実施形態において、特定の利点が、1つ以上の組換え体、または異種プロモーター(複数も含む)の制御下でコード核酸部分を配置することにより得られることが意図される。本明細書で使用される場合、組換え体または異種プロモーターは、その天然環境においてタウタンパク質またはタウプロテアーゼをコードする遺伝子と天然に会合しないプロモーターを指すことを意図する。そのようなプロモーターは、他の遺伝子と天然に会合するプロモーター、および/または任意の他の細菌、ウイルス、真核細胞、または哺乳動物細胞から単離されるプロモーターを含んでもよい。
【0120】
当然に、発現のために選択される、細胞種類、生物、またはさらに動物においてDNA断片の発現を効果的に駆動するプロモーターを利用することが重要である。タンパク質発現のためのプロモーターおよび細胞種類の組み合わせの使用は一般に分子生物学の分野における当業者に周知である。利用されるプロモーターは、構成的、または誘導的であってもよく、導入される核酸断片の高レベルの発現を駆動する適切な条件下で使用されてもよく、それにより組換えタンパク質またはペプチドの大規模産生において有益である。
【0121】
プロモーターにおける少なくとも1つのモジュールはRNA合成のための開始部位を位置付ける機能をする。この最適な公知の例はTATAボックスであるが、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子についてのプロモーターおよびSV40後期遺伝子についてのプロモーターなどのTATAボックスを欠く一部のプロモーターにおいて、開始部位自体を重複する個別の要素が開始の場所を固定するのに役立つ。
【0122】
さらなるプロモーター要素が転写開始の頻度を調節する。典型的に、それらは開始部位の30〜110bp上流における領域に位置するが、多くのプロモーターは同様に開始部位の下流に機能要素を含有することが示されている。プロモーター要素間の間隔は高い頻度でフレキシブルであるので、要素が互いに対して反転または移動される場合、プロモーター機能は保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前に約50bp間隔まで増加し得る。プロモーターに応じて、個々の要素が転写を活性化するために同時に作動可能にまたは独立して機能し得るようである。
【0123】
核酸の発現を制御するために利用される特定のプロモーターは、標的細胞中で核酸を発現できる限り、重要でないと考えられる。したがって、ヒト細胞が標的とされる場合、選択されるヒト宿主細胞中で発現できるプロモーターに隣接する核酸コード領域を、選択されるヒト宿主細胞中で発現できるプロモーターの制御下で配置することが好ましい。
【0124】
種々の他の実施形態において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)早期プロモーター、およびラウス肉腫ウイルス長い末端反復が、選択される導入遺伝子の高レベルの発現を得るために使用されてもよい。発現のレベルが所与の目的のために十分であるならば、導入遺伝子の発現を達成するために当該技術分野において周知である他のウイルスまたは哺乳動物細胞または細菌ファージプロモーターが同様に意図される。多くの発現要素、エンハンサー、および/またはプロモーターが、タウタンパク質の発現を調節するため、またはタウプロテアーゼ活性断片もしくはその変異体をコードする1つ以上の核酸断片の発現を促進するために本発明に関連して利用されてもよい。そのようなエンハンサー、プロモーター、および発現要素は当業者に周知である。
【0125】
エンハンサーは最初は、DNAの同じ分子上の離れた位置に位置するプロモーターから転写を増加させる遺伝要素として検出された。遠い距離にわたって作用するこの能力は、原核生物転写調節の古典的研究においてほとんど前例が見られなかった。その後の研究により、エンハンサー活性を有するDNAの領域がプロモーターとそっくりに構造化されることが示された。すなわち、それらは多くの個々の要素から構成され、その各々は1つ以上の転写タンパク質に結合する。エンハンサーとプロモーターとの間の基本的な相違は操作可能である。全体としてエンハンサー領域は、ある距離を置いて転写を刺激できなければならず、これをプロモーター領域またはその構成要素に当てはめることは必要とされない。他方で、プロモーターは、特定の部位および特定の方向においてRNA合成の開始を駆動する1つ以上の要素を有さなければならないが、エンハンサーはこれらの特異性を欠く。プロモーターおよびエンハンサーは多くの場合、重複し、隣接し、多くの場合、非常に類似したモジュール構造を有するように見える。さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(真核生物プロモーターデータベース、EPDBによる)もまた、導入遺伝子の発現を駆動するために使用されてもよい。T3、T7またはSP6細胞質発現系の使用が別の可能な実施形態である。真核細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが提供される場合、送達複合物の一部としてまたはさらなる遺伝子発現構築物として、特定の細菌プロモーターからの細胞質転写を支持できる。
【0126】
タウプロテアーゼもしくはタウプロテアーゼ活性断片またはその変異体の発現に関して、適切なクローンが得られると(それらがcDNAベースであるかまたはゲノムであるかに関わらず)、適切な発現系を調製することが開始し得る。原核生物または真核生物系において発現するためのDNA断片(複数も含む)の操作は一般に当業者に公知の技術により実施され得、本発明者らは、当該技術分野における実質的に任意の従来の発現系が、本発明のタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素および/またはエピトープ配列の発現において利用され得ることを意図する。
【0127】
タンパク質への翻訳のために機能的mRNAを得るために、宿主細胞が一般にゲノム転写産物を進行する場合、cDNAおよびゲノム配列の両方が真核生物発現に適している。一般に、組換え遺伝子として遺伝子のcDNA型を利用することがより都合が良い。cDNA型の使用は、遺伝子のサイズが一般に、典型的にcDNA遺伝子より最大一桁大きいゲノム遺伝子より、標的細胞を形質転換するために、非常に小さく、より容易に利用されるという利点を与えると考えられる。しかしながら、本発明者は、所望の場合、特定の遺伝子のゲノム型を利用する可能性を排除しない。本明細書で使用される場合、「操作された」および「組換え」細胞という用語は、タウタンパク質、またはそのタウプロテアーゼ活性切断体、バリアント、または変異体をコードするcDNAまたは遺伝子などの外因性核酸断片または遺伝子が導入される、細胞を指すことを意図する。したがって、操作される細胞は、組換え的に導入される外因性DNA断片または遺伝子を含有しない天然に存在する細胞と区別できる。したがって、操作される細胞は、人の手により導入される遺伝子(複数も含む)を有する細胞である。組換え細胞は、導入されるcDNAまたはゲノム遺伝子を有するものを含み、また、特定の導入される遺伝子と天然に会合しないプロモーターに隣接して配置される遺伝子も含む。
【0128】
本発明によれば、変異体、切断型、野生型に関わらず、組換えタウプロテアーゼを発現するために、1つ以上の適切なプロモーターの制御下でタウプロテアーゼをコードする核酸を含む発現ベクターを調製する。プロモーターの「制御下」にコード配列をもたらすために、通常、選択されるプロモーターの約1〜約50ヌクレオチド「下流」(すなわち3’)に転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を配置する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされる組換えタンパク質の発現を促進する。このことは、この状況における「組換え発現」を意味する。
【0129】
多くの標準的な技術が、種々の宿主発現系においてタンパク質またはペプチド発現を達成するために、適切な核酸および転写/翻訳制御配列を含有する発現ベクターを構築するのに利用可能である。発現に利用可能な細胞種類としては、限定されないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換される大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis)が挙げられる。
【0130】
一般に、宿主細胞と適合する種由来のレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターがこれらの宿主と関連して使用される。ベクターは通常、形質転換細胞において表現型選択を提供できる複製部位、およびマーキング配列を保持する。例えば、大腸菌(E.coli)は多くの場合、大腸菌(E.coli)種由来のpBR322、プラスミドを使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有するので、形質転換細胞を識別するための容易な手段を提供する。pBRプラスミド、または他の微生物プラスミドまたはファージはまた、その独自のタンパク質を発現するための微生物により使用され得るプロモーターを含有しなければならないか、または含有するように修飾されなければならない。
【0131】
さらに、宿主微生物と適合するレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターが、これらの宿主と関連した形質転換ベクターとして使用され得る。例えば、ファージラムダGEM(商標)−11が、大腸菌(E.coli)LE392などの宿主細胞を形質転換するために使用され得る組換えファージベクターを生成するのに利用されてもよい。
【0132】
さらに有用なベクターとしては、後での精製および分離または開裂のためにグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)溶解性融合タンパク質を生成するのに使用するためのPINベクターおよびpGEXベクターが挙げられる。他の適切な融合タンパク質はβ−ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどを有するものである。
【0133】
微生物に加えて、多細胞生物由来の細胞培養物もまた、宿主として使用されてもよい。原則として、脊椎動物または無脊椎動物培養物であるかどうかに関わらず、任意のこのような細胞培養物が機能できる。哺乳動物細胞に加えて、それらとしては、組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;および組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されたまたは1つ以上のタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系が挙げられる。
【0134】
異なる宿主細胞は翻訳後プロセシングおよびタンパク質の修飾のための特徴および特異的機構を有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される異種タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確保するように選択され得る。
【0135】
哺乳動物においてこのような細胞を使用するための発現ベクターは、複製起点(必要な場合)、任意の必要なリボソーム結合部位と共に発現される遺伝子の前部に位置するプロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終了配列を含む。複製起点は、SV40または他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源由来であり得るものなどの外因性起点を含むベクターの構築物により提供されてもよいか、または宿主細胞染色体複製機構により提供されてもよい。ベクターが宿主細胞染色体内に組み込まれる場合、多くの場合、後者が十分である。
【0136】
プロモーターは、哺乳動物細胞(例えばメタロチオネインプロモーター)のゲノム由来または哺乳動物ウイルス(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)由来であってもよい。さらに、所望のタウタンパク質またはタウプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列と天然に会合するプロモーターまたは制御配列を利用することも可能であり、好適であり得るが、但し、このような制御配列は利用される選択される宿主細胞系(複数も含む)と適合する。多くのウイルスベースの発現系が利用されてもよく、例えば一般に使用されるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス2、および高い頻度でシミアンウイルス40(SV40)由来である。SV40ウイルスの早期および後期プロモーターが特に有用である。なぜなら、その両方は、SV40ウイルス複製起点も含有する断片としてウイルスから容易に得られるからである。ウイルス複製起点に位置するBglI部位に対してHindIII部位から伸長する約250bpの配列を含む場合、より小さいまたはより大きいSV40断片もまた、使用されてもよい。
【0137】
発現ベクターとしてアデノウイルスが使用される場合、コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3部リーダー配列に連結され得る。このキメラ遺伝子は次いで、インビトロまたはインビボ組換えによりアデノウイルスゲノム内に挿入され得る。ウイルスゲノム(例えば領域E1〜E3)の非必須領域における挿入の結果、感染宿主中で生存し、タウプロテアーゼを発現できる組換えウイルスが生じる。
【0138】
特異的開始信号もまた、特定のタウプロテアーゼをコードする配列の効果的な翻訳に必要とされ得る。これらの信号はATG開始コドンおよび連続配列を含む。ATG開始コドンを含む、外因性翻訳制御信号が提供されることをさらに必要としてもよい。このことは特に、開始メチオニンコドンを欠くタウプロテアーゼ断片の場合に当てはまる(例えば、以下の実施例で説明されるTP−81、TP−99、TP−210などの構築物を参照のこと)。当業者は、このことを容易に決定でき、必要な信号を与えることができる。開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確保するために所望のコード配列のリーディングフレームを有するフレーム内(または相内)になければならないことは周知である。これらの外因性転写制御信号および開始コドンは天然および合成の両方の様々な起点であってもよい。発現の効果は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターを含めることにより増強され得る。
【0139】
真核細胞発現において、また、元のクローニングされた断片内に含まれない場合、転写単位内に適切なポリアデニル化部位(例えば5’−AATAAA−3’)を組み込むことが典型的に望まれる。典型的に、ポリ−A付加部位は転写終結の前の位置におけるタンパク質の終結部位の約30〜2000ヌクレオチド「下流」に配置される。
【0140】
組換えタウプロテアーゼの長期の高収率の産生に関して、安定な発現が好ましい。例えば、タウプロテアーゼをコードする構築物を安定に発現する細胞株が操作され得る。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用すること以外に、宿主細胞が、適切な発現制御要素(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位)により制御されるベクター、および選択可能なマーカーで形質転換されてもよい。外来DNAの導入後、操作される細胞は富栄養培地中で1〜2日間増殖でき、次いで選択培地に換えられる。組換えプラスミドにおける選択可能なマーカーが選択のための耐性を与え、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定に組み込み、後で細胞株内でクローニングされ、増殖され得る病巣を形成するために増殖することが可能となる。
【0141】
限定されないが、単純ヘルペスウイルス(HSK)tk、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hgprt)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(aprt)(それぞれtk−、hgprt−、またはaprt−細胞において)を含む、多くの選択系が使用されてもよい。また、メトトレキサートに耐性を与えるdhfr;ミコフェノール酸に耐性を与えるgpt;アミノグリコシドG−418に耐性を与えるneo;およびハイグロマイシンに耐性を与えるhygroについての選択の基礎として代謝拮抗物質耐性が使用されてもよい。
【0142】
動物細胞は2つの様式でインビトロにおいて増殖できる:培養物のバルクを通して懸濁液中で増殖する足場非依存性細胞としてまたはそれらの増殖のために固体基質への結合を必要とする足場依存性細胞(すなわち、単分子層型の細胞増殖)。連続樹立細胞株からの足場非依存性または浮遊培養は、細胞および細胞産物の大規模産生の最も広範に使用される手段である。しかしながら、浮遊培養細胞は、腫瘍形成能などの限定および付着細胞より低いタンパク質産生を有する。撹拌槽中の哺乳動物細胞の大規模浮遊培養は組換えタンパク質を産生するための一般的な方法である。2つの浮遊培養リアクタ、撹拌リアクタおよびエアリフトリアクタの設計は広範に使用されている。撹拌設計はインターフェロンを産生するために8000リットル容量で首尾良く使用される。1:1〜3:1の高さ対直径比を有するステンレス鋼タンク中で細胞を増殖させる。培養物は通常、ブレードの付いたディスクまたは船用プロペラパターンに基づいた1つ以上の撹拌器を用いて混合する。ブレードより低い剪断力を与える撹拌器システムが記載されている。撹拌は、磁気的に結合されたドライブなどの装置により直接または間接のいずれかで駆動され得る。間接的なドライブは撹拌器シャフトに対する封止により微生物汚染の危険性を減少させる。エアリフトリアクタ(微生物発酵のために最初に特徴付けられ、哺乳動物培養のために後で適合される)は培養物を混合し、酸素を送り込むためにガス流に依存する。ガス流は、リアクタのライザー部に進入し、循環を駆動する。ガスは培養表面で解放し、リアクタの降水管部分において下方に移動するように気泡を含まない高密度液体を生じる。この設計の主な利点は単純であり、機械的混合についての必要性を欠くことである。典型的に、高さ対直径比は約10:1である。エアリフトリアクタは比較的容易にスケールアップし、ガスの良好な物質移動を有し、比較的低い剪断力を生じる。
【0143】
本発明のタウプロテアーゼまたはタンパク質は、「過剰発現」、すなわち細胞内のその天然発現に対して高いレベルで発現され得ることが意図される。このような過剰発現は、放射性標識および/またはタンパク質精製を含む、種々の方法により評価され得る。しかしながら、例えば、SDS/PAGEおよびタンパク質染色またはウェスタンブロッティング、その後の得られるゲルまたはブロットのデンシメトリー走査などの定量分析を含む、簡単かつ直接的な方法が好ましい。天然細胞のレベルと比較して組換えタンパク質またはペプチドのレベルの特異的増加は過剰発現の指標であり、同様に、宿主細胞により産生される他のタンパク質に対する特異的タンパク質の相対存在量の指標であり、例えばゲル上で見える。
【0144】
タウタンパク質、ペプチド、およびポリペプチド
したがって、本発明は、精製した、好ましい実施形態において、実質的に精製したタウプロテアーゼ、およびその切断断片、変異体またはバリアントを提供する。本明細書で使用される場合、「精製したタウプロテアーゼ」という用語は、適切な組換え宿主細胞から単離可能なタウタンパク性組成物を指すことを意図し、タウプロテアーゼは、1つ以上のタウプロテアーゼコードする核酸セグメントの識別および特徴付けの前に、以前には得ることができないレベルで調製される。したがって、精製したタウプロテアーゼはまた、天然に存在する環境に含まれないタウプロテアーゼを指す。
【0145】
「実質的に精製した」という用語が使用される場合、これは、タウプロテアーゼ、サブユニットまたはペプチドが、組成物中に約50%のタンパク質またはそれ以上を構成するなどの組成物の主成分を形成する組成物を指す。好ましい実施形態において、実質的に精製したタウプロテアーゼは、組成物中に存在する60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、またはそれより多いタンパク質から構成される。
【0146】
本発明に適用される場合、「均一に精製した」ポリペプチドまたはタンパク質とは、ポリペプチドまたはタンパク質が他のタンパク質および生物学的成分に実質的に含まれない純度のレベルを有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。例えば、精製したポリペプチドまたはタンパク質は、多くの場合、他のタンパク質成分を実質的に含まず、分解シークエンシングが首尾良く実施され得る。
【0147】
タウプロテアーゼの精製の程度を定量するための種々の方法が本開示を鑑みて当業者に公知である。タウプロテアーゼを精製するために、少なくとも一部のタウプロテアーゼを含む天然または組換え組成物は、種々の非タウプロテアーゼ成分を組成物から除去するために分画に供される。タンパク質精製の使用に適切な種々の技術は当業者に周知である。それらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体を用いた沈殿、または熱変性、その後の遠心分離による沈殿;イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイト、レクチン親和性などのクロマトグラフィーステップおよび他の親和性クロマトグラフィーステップ;等電点電気泳動法;ゲル電気泳動;ならびにそれらの組み合わせおよび他の技術が含まれる。
【0148】
タウプロテアーゼ特異的抗体、免疫学的試薬、およびエピトープコア配列
タウタンパク質またはそのタウプロテアーゼバリアント、変異体もしくは断片の1つ以上の抗原決定基に対応するペプチド、あるいは「エピトープコア領域」もまた調製され得る。そのようなペプチドは通常、長さが少なくとも7または8アミノ酸残基であるべきであり、好ましくは長さが約10、15、20、25または約30アミノ酸残基であり、最大約35〜50残基を含み得るなどである。自動化ペプチド合成機器を使用して、または1つ以上の組換え方法により合成ペプチドが製造され得る。
【0149】
米国特許第4,554,101号(その全体は参照により本明細書に具体的に組み込まれる)は、親水性に基づいて第一級アミノ酸配列からのエピトープの識別および調製を教示している。抗体分野の当業者に公知である方法を使用して、本明細書に開示されるタウプロテアーゼ配列のうちの1つのアミノ酸配列内からエピトープを識別できる。
【0150】
さらに、タンパク質の抗原部分およびエピトープコア領域の予測を支援するコンピュータプログラムが現在利用可能である。例としては、Jameson−Wolf分析に基づいたプログラムおよびタンパク質三次構造予測のための種々のコンピュータプログラムが挙げられ、それらはタンパク質生物学の分野の当業者に公知である。
【0151】
さらなる実施形態において、ポリペプチドの主要な抗原決定基が、ポリペプチドをコードする遺伝子の部分が組換え宿主内で発現され、得られたタンパク質が免疫反応を誘発する能力について試験される、実証的アプローチにより識別され得る。例えば、PCR(商標)が、タンパク質のC末端の連続的に長い断片を欠く様々なペプチドを調製するために使用されてもよい。これらのペプチドの各々の免疫活性が、免疫優勢であるポリペプチドのそれらの断片またはドメインを識別するために決定される。少数のみのアミノ酸が各反復において除去されるさらなる研究により、ポリペプチドの抗原決定基の位置のより正確な決定が可能となる。
【0152】
1つ以上のこのような分析が完了すると、1つ以上の抗原決定基の少なくとも必須の特徴を含有するポリペプチドが調製される。次いでペプチドはポリペプチドに対する血清の生成に利用される。これらの決定基をコードするミニ遺伝子または遺伝子融合物もまた、例えばPCR(商標)クローニング方法を使用して標準的な方法により発現ベクター内で構築され、挿入され得る。
【0153】
ワクチン接種のためのこのような小さなペプチドの使用は典型的に、B型肝炎ウイルス表面抗原、キーホールリンペットヘモシアニンまたはウシ血清アルブミンなどの免疫原性キャリアタンパク質のペプチドのコンジュゲーションを必要とする。このコンジュゲーションを実施するための方法は当業者に周知である。
【0154】
タウ特異的抗体の調製
特定の実施形態において、本発明は、タウタンパク質に高い特異性で結合する抗体および本明細書に開示されるタウタンパク質の1つ以上の切断型または変異バリアントに結合する他の抗体を提供する。野生型タウタンパク質に特異的な抗体および複数の特定のタウバリアントまたは変異体のいずれか1つに特異的な抗体は、当該技術分野において公知の従来の方法を使用して調製され得る。上記の説明のように、実質的に完全長のタンパク質に対して生成した抗体に加えて、抗体はまた、タウまたは他のセリンプロテアーゼ由来の野生型および変異型エピトープを含む1つ以上のエピトープコア領域を含む、より小さな構築物に応答して生成されてもよい。本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどの免疫結合因子のいずれかを広範に指すことを意図する。一般に、IgGおよび/またはIgMが、生理学的状況において最も一般的な抗体であるので、かつ、それらは実験室環境において最も容易に作製されるので、好ましい。モノクローナル抗体(MAb)は、特定の利点、例えば再現性および大規模産生を有すると認識されており、それらの使用が一般に好ましい。したがって本発明は、ヒト、マウス、サル、ラット、ハムスター、ウサギおよびさらにニワトリ起源のMabを提供する。調製の容易さおよび試薬の入手し易さに起因して、マウスMabが多くの場合、好ましい。
【0155】
しかしながら、キメラ抗体として、ヒト定常および/または可変領域ドメイン、二重特異性抗体、組換えおよび操作された抗体およびそれらの断片を保有する、マウス、ラット、または他の種由来の「ヒト化」抗体もまた、意図される。患者の腫瘍に「合わせて作製される(オーダーメードの)」抗体を開発するための方法は同様に当業者に公知であり、そのようなオーダーメード抗体もまた、タウエピトープ特異的抗体などの作製に有用であると意図される。「抗体」という用語は、抗原結合領域を有し、Fab’、Fab、F(ab’)、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFV(一本鎖Fv)などの抗体断片を含む、任意の抗体様分子を指すために使用される。種々の抗体ベースの構築物および断片を調製し、使用するための技術は当該技術分野において周知である。抗体を調製し、特徴付けるための手段は当業者に周知である。Mabを生成するための方法は一般に、ポリクローナル抗体を調製するためのものと同じ株と共に開始する。つまり、ポリクローナル抗体は、本発明に従って免疫原性タウ組成物で動物を免疫化し、その免疫化動物から血清を回収することにより調製される。
【0156】
様々な動物種が血清を産生するために使用されてもよい。典型的に、抗血清の産生に使用される動物は、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはヤギである。ウサギの比較的多い血液量のために、ウサギがポリクローナル抗体を産生するための好ましい選択である。当業者に周知のように、所与の組成物がその免疫原性を変化させ得る。したがって、多くの場合、ペプチドまたはポリペプチド免疫原を担体に結合することにより達成され得るように、宿主免疫系を追加免疫することが必要である。例示的および好ましい担体はキーホールリンペットヘモシアニ(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オボアルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンもまた、担体として使用されてもよい。ポリペプチドを担体タンパク質にコンジュゲートするための手段は当該技術分野において周知であり、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンコイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドおよびビス−ビアゾチ化(bis−biazotized)ベンゾジンを含む。また、当該技術分野において周知であるように、特定の免疫原組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる免疫反応の非特異的刺激因子の使用により増強され得る。適切なアジュバントとしては、サイトカイン、毒素または合成組成物などの全ての許容可能な免疫活性化合物が挙げられる。
【0157】
使用され得るアジュバントとしては、IL−1、IL−2、IL−4、IL−7、IL−12、γ−インターフェロン、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、thur−MDPおよびnor−MDPなどのMDP化合物、CGP(MTP−PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)、細菌から抽出された3つの成分を含有するRIBI;MPL;トレハロースジミコール酸(TDM);および2%スクアレン/Tween80エマルション中の細胞壁骨格(CWS)が挙げられる。MHC抗原がさらに使用されてもよい。例として、多くの場合、好ましいアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死滅した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する免疫反応の非特異的刺激因子)、不完全フロントアジュバントおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。アジュバントに加えて、T細胞性免疫を上方制御するかまたは抑制遺伝子細胞活性を下方制御することが示されている、生物反応修飾物質(BRM)を同時投与することが好適であり得る。そのようなBRMとしては、限定されないが、シメチジン(CIM;1200mg/d)(Smith/Kline,PA);または低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/m)(Johnson/Mead,NJ)およびγ−インターフェロン、IL−2、もしくはIL−12などのサイトカイン、またはB−7などの免疫ヘルパー機能に関連するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0158】
ポリクローナル抗体の産生に使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質および免疫化に使用される動物に応じて変化する。様々な経路(皮下、筋肉内、皮内、静脈内および腹腔内)が免疫原を投与するために使用され得る。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後の種々の時点で免疫化動物の血液をサンプリングすることによりモニターされ得る。次に、追加免疫注射もまた、与えられてもよい。追加免疫および滴定のプロセスは、適切な滴定が達成されるまで反復される。所望のレベルの免疫原性が得られる場合、免疫化動物から血液を抜き出すことができ、血清を単離し、保存し、および/またはMAbを生成するために動物を使用できる。
【0159】
ウサギポリクローナル抗体を産生するために、耳静脈を介してまたは代替として心穿刺により血液を抜き取ることができる。取り除いた血液を凝固させ、次いで全細胞および血栓から血清成分を分離するために遠心分離する。種々の用途のために、または所望の抗体画分を、別の抗体、固体マトリクスに結合したペプチドを使用した親和性クロマトグラフィーなどの周知の方法により、または例えばプロテインAもしくはプロテインGクロマトグラフィーを使用すすることにより精製できるように、血清は使用され得る。
【0160】
Mabは、米国特許第4,196,265号(その全体は参照を示すことにより本明細書に具体的に組み込まれる)に例示されているものなどの周知の技術の使用により容易に調製され得る。典型的に、この技術は、適切な動物を選択される免疫原組成物、例えば精製もしくは部分的に精製したタウプロテーゼ、またはプロテアーゼ活性タウペプチド断片、変異体、バリアント、もしくはエピトープドメイン、野生型またはその1つ以上のバリアント、切断型、もしくは変異体で免疫化することに関する。免疫化組成物は抗体産生細胞を刺激するのに有効な様式で投与される。MAbを生成するための方法は一般に、ポリクローナル抗体を調製するものと同じ株と共に開始する。マウスおよびラットなどのげっ歯動物が好ましい動物であるが、ウサギ、ヒツジ、または他の細胞種の使用もまた、可能である。ラットの使用は特定の利点を与え得るが、マウスが多くの場合、より高い割合の安定な融合物を一般に与えるので、好ましい。通常、上記のように、抗原を動物に注射する。抗原は必要な場合、キーホールリンペットヘモシアニンなどの担体分子に結合され得る。抗原は典型的に、フロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと混合される。同じ抗原を用いた追加免疫注射はほぼ2週間の間隔で発生する。免疫化後、抗体を産生する可能性のある体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)がMAb生成プロトコルに使用するために選択される。これらの細胞は、生検脾臓、扁桃腺またはリンパ節から、あるいは末梢血試料から得られ得る。脾臓細胞および末梢血細胞が好ましい。なぜなら、前者は、形質芽球段階を駆動する抗体産生細胞の豊富な源であるからであり、後者は、末梢血は容易に得られるからである。
【0161】
多くの場合、動物のパネルは免疫化され、最も高い抗体力価を有する動物の脾臓は取り除かれ、脾臓リンパ球がシリンジを用いて脾臓を均質化することにより得られる。典型的に、免疫化したマウス由来の脾臓は約5×10〜2×10のリンパ球を含有する。免疫化動物由来の抗体を産生するBリンパ球は次いで、不死化骨髄腫細胞の細胞、通常、免疫化される動物と同じ種の1つと融合される。ハイブリドーマを産生する融合手順に使用するのに適した骨髄腫細胞株は好ましくは、非抗体産生であり、高い融合効果、および後で、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地中で増殖できないようにする酵素欠損を有する。多くの骨髄腫細胞のうちのいずれか1つが使用されてもよく、それらは当業者に公知である。例えば、免疫化動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag41、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7およびS194/5XX0Bulを使用してもよく;ラットに関して、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983Fおよび4B210を使用してもよく;U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6はヒト細胞融合物と関連して全てに有用である。1つの好ましいマウス骨髄腫細胞は、NS−1骨髄腫細胞株(P3−NS−1−Ag4−1とも称される)であり、細胞株保存番号GM3573を要求することによってNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手可能である。使用され得る別のマウス骨髄腫細胞株は8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫SP2/0非産生細胞株である。抗体を産生する脾臓またはリンパ球細胞および骨髄腫細胞のハイブリッドを生成するための方法は通常、2:1の割合で体細胞を骨髄腫細胞と混合することを含むが、その割合は細胞膜の融合を促進する薬剤(複数も含む)(化学または電気)の存在下でそれぞれ約20:1〜約1:1に変更されてもよい。融合手順は、通常、低い頻度、約1×10−6〜1×10−8で生存可能なハイブリッドを産生する。しかしながら、このことは、生存可能な融合ハイブリッドは、選択培地中で培養することによって親の非融合細胞(特に通常無限に分裂し続ける非融合骨髄腫細胞)と区別されるので、問題ではない。選択培地は通常、組織培地中でヌクレオチドのデノボ合成を遮断する薬剤を含有するものである。例示的および好ましい薬剤はアミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートは、プリンおよびピリミジンの両方のデノボ合成を遮断するが、アザセリンはプリン合成のみを遮断する。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、培地にヌクレオチド源としてヒポキサンチンおよびチミジンが捕捉される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地にはヒポキサンチンなどの化合物が捕捉されてもよい。
【0162】
所望の場合、濾過、遠心分離およびHPLCまたは親和性クロマトグラフィーなどの種々のクロマトグラフ法を使用して、いずれかの手段で産生されたMAbはさらに精製されてもよい。本発明のMabの断片は、ペプシンもしくはパパインなどの酵素を用いた消化、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の開裂を含む方法により産生されるMabから得られ得る。あるいは、本発明による含まれるモノクローナル抗体断片は、自動化ペプチドシンセサイザーを使用して合成されてもよい。分子クローニングアプローチが、本明細書に開示されるタウプロテアーゼ組成物の1つ以上に特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するために使用されてもよいこともまた、意図される。このために、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーが、免疫化動物の脾臓から単離されるRNAから調製され、適切な抗体を発現するファージミドは、抗原および対照細胞を発現する細胞を使用したパニングにより選択される。従来のハイブリドーマ技術に対するこのアプローチの利点は、1回のラウンドで産生され、スクリーニングされ得る抗体が約10倍になることであり、HおよびL鎖の組み合わせにより新規特異性が生じ、適切な抗体を見つける機会をさらに増加させる。あるいは、本発明に含まれるモノクローナル抗体断片は、自動化ペプチドシンセサイザーを使用して、または限定されないが、細菌、酵母もしくは真菌宿主細胞を含む、1つ以上の宿主細胞中の完全長遺伝子もしくは遺伝子断片の発現により合成され得る。
【0163】
抗体コンジュゲート
本発明はさらに、通常、抗体コンジュゲートを形成するために1つ以上の他の因子に連結されるモノクローナルタイプの抗タウタンパク質抗体を提供する。十分な選択性、特異性および親和性のいずれかの抗体が抗体コンジュゲートに基づいて利用されてもよい。このような特性は、当業者に公知の従来の免疫学的スクリーニング方法を使用して評価され得る。抗体コンジュゲートの特定の例は、抗体が検出可能な標識に連結されるもののコンジュゲートである。「検出可能な標識」は、それらの特異的機能特性、または化学特性に起因して検出され得る化合物または要素であり、その使用により、それらが結合した抗体は検出およびさらに所望の場合、定量され得る。別のこのような例は、細胞毒性薬または「抗毒素」と称され得る抗細胞剤に連結される抗体を含むコンジュゲートの形成である。本発明に関して、抗毒素は通常、あまり好ましくない。したがって診断剤としての使用のために抗体コンジュゲートが好ましい。抗体診断は通常、2つのクラス、すなわち、様々な免疫アッセイなどのインビトロ診断に使用するもの、および一般に、「抗体介在性画像化」として知られているインビボ診断プロトコルに使用するものの範囲内である。再び、抗体介在性画像化は本発明における使用にあまり好ましくない。
【0164】
多くの適切な造影剤が、抗体に結合させるための方法として、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,021,236号および同第4,472,509号(それらの各々はその全体が参照を示すことにより具体的に組み込まれる)を参照のこと)。特定の結合方法は、例えば、抗体に結合したDTPAなどの有機キレート剤を利用する、金属キレート錯体の使用に関する。モノクローナル抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨード酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応できる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応により調製される。常磁性体イオンの場合、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)などのイオンが挙げられ、ガドリニウムが特に好ましい。X線画像化などの他の状況に有用なイオンとしては、限定されないが、ランタン(III)、金(III)、鉛(III)、および特にビスマス(III)が挙げられる。治療および/または診断用途のための放射性同位体の場合、アスタチン21114炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67152Eu、ガリウム67水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム11159鉄、32リン、レニウム186、レニウム18875セレン、35硫黄、テクニシウム99mおよびイットリウム90が挙げられる。125ヨウ素が多くの場合、特定の実施形態における使用に好ましく、テクニシウム99mおよびインジウム111もまた多くの場合、長期検出のためのそれらの低エネルギーおよび適合性に起因して好ましい。
【0165】
本発明の放射性標識したタウプロテアーゼ特異的Mabは当該技術分野において周知の方法に従って産生され得る。例えば、Mabは、ヨウ化ナトリウムもしくはヨウ化カリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムなどの化学酸化剤、またはラクトペルオキシダーゼなどの酵素酸化剤との接触によりヨウ化され得る。本発明に係るモノクローナル抗体は、リガンド交換プロセスにより、例えば、スズ溶液で過テクネチウム酸塩を還元すること、還元したテクネチウムをSephadexカラム上でキレート化すること、および抗体をこのカラムに適用することによって、または直接標識技術によって、例えば、過テクネチウム酸塩、SNClなどの還元剤、フタル酸ナトリウム−カリウム溶液などの緩衝溶液、および抗体をインキュベートすることにより、テクネチウム99mで標識され得る。多くの場合、金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合するために使用される中間官能基はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。蛍光標識としては、ローダミン、フルオレセインイソチアシアネートおよびレノグラフィンが挙げられる。
【0166】
本発明の最も好ましい抗体コンジュゲートは主にインビトロでの使用を目的とするものであり、抗体は二次結合リガンドまたは発色基質との接触時に着色産物を生成する酵素(酵素タグ)に連結される。適切な酵素の例としては、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(セイヨウワサビ)水素ペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼが挙げられる。好ましい二次結合リガンドはビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン化合物である。このような標識の使用は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号および同第4,366,241号(それらの各々はその全体が参照を示すことにより本明細書に参照により具体的に組み込まれる)に記載されている。
【0167】
免疫検出法およびキット
免疫検出法は、タウプロテアーゼと結合、反応、阻害またはタウプロテアーゼにより開裂する新規化合物、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質またはそのペプチドもしくはエピトープを識別するため、および/あるいは既知のタンパク質の新規特性を識別するために利用され得、そのタンパク質をタウ結合タンパク質、もしくはタウプロテアーゼ標的タンパク質と定義できる。いずれかの事象において、タウプロテアーゼに結合するさらなるウイルスタンパク質の識別は、識別したタンパク質が新規抗Aβストラテジーの標的とすることができる。このようなアプローチの最初のステップは再び、多くの場合、潜在的化合物が、タウプロテアーゼまたはこのように識別された新たに開発されたタンパク質(複数も含む)もしくは化合物(複数も含む)の結合を阻害する、自己タンパク質分解を防止する、開裂を防止する、またはプロテアーゼ活性を阻害する、それらの能力について試験される、結合アッセイに基づく。
【0168】
本発明のタウプロテアーゼ、ペプチド、またはエピトープに対する抗体および標識抗体はさらに、組換え宿主細胞および臨床試料を含む、試料中のタウタンパク質またはタウプロテアーゼ基質を検出するために利用されてもよい。このような抗体は最終的に、ヒト組織などの生物学的試料および/または流体試料中の高いまたは低いレベルのタウプロテアーゼを検出するため、あるいは変異タウタンパク質、切断プロテアーゼもしくはタウ由来ペプチドを検出するために診断的実施形態に利用され得る。
【0169】
したがって、タウプロテアーゼ単独の検出は本発明別の重要な態様である。一般に、簡単なタウプロテアーゼ免疫結合法は、タウプロテアーゼ、そのバリアント、ペプチド、または変異体を含有する疑いのある試料を得ること、および免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、本発明に係る第1の抗タウプロテアーゼ抗体または抗変異タウプロテアーゼ抗体と試料とを接触させること、次いでそのように形成された免疫複合体を検出することを含む。
【0170】
ADなどの疾患を患っている患者の臨床診断またはモニタリングにおいて、タウプロテアーゼ変異体または正常な被験体由来の対応する生物学的試料中のレベルと比較したタウプロテアーゼのレベルの変化の検出はADを患っている患者の指標である。しかしながら、当業者に知られているように、このような臨床診断は、必ずしも、単離におけるこの方法に基づいてなされているわけではない。当業者は、バイオマーカーの陽性識別、および低レベルまたはバックグラウンド変化を表わす、バイオマーカーの種類または量の有意な差を識別することに関してよく知っている。実際に、バックグラウンド発現レベルは多くの場合、高い検出が有意または陽性としてスコア付けされる「カットオフ(cut−off)」以上を形成するために使用される。
【0171】
生物学的機能等価物
当業者により理解されるように、修飾および変化が、開示されるタウプロテアーゼの1つ以上、およびセリンプロテアーゼ活性を有する本明細書に開示されるタウプロテアーゼ由来ポリペプチドの1つ以上の構造になされてもよく、さらに、同様または他の所望の特性を有する分子を得る。それはタンパク質の生物学的機能活性を定義するタンパク質の相互作用能力および性質であるので、特定のアミノ酸配列置換が、タンパク質配列(またはもちろん、その内在するDNAコード配列)になされてもよいが、それにも関らず、同様の(アゴニスト)特性を有するタンパク質を得る。したがって、種々の変化が、それらの生物学的有用性または活性の検知できる損失を有さずにタウタンパク質またはタウプロテアーゼ活性オリゴマーまたはその断片(またはそのようなタンパク質をコードする内在するDNA配列)の配列になされてもよいことが本発明者により意図される。
【0172】
機能的等価物に関して、生物学的機能等価タンパク質またはペプチドの定義に固有のものは、分子の規定部分内になされ得る変化の数に対する制限が存在し、さらにその結果として検知できるレベルの機能的等価活性を生じる概念であることもまた当業者に理解されるであろう。したがって生物学的機能等価ペプチドは、特定のほとんどまたは全てのアミノ酸が置換されているそれらのペプチドと本明細書に定義される。特に、小さなペプチドに関する場合、ほとんどのアミノ酸は変化されない。もちろん、異なる置換を有する複数の異なるタンパク質/ペプチドが本発明に従って容易に作製され、使用されてもよい。
【0173】
特定の残基が、タンパク質またはペプチドの生物学的または構造的特性に特に重要であると示され(例えば、タウプロテアーゼの活性部位における残基)、そのような残基は通常、生じる変異タンパク質の酵素活性に影響を与えずに変化され得ないこともまた理解されるであろう。これは、タンパク質分解機能を維持することを目的とする、プロテアーゼの活性部位における残基が通常、変化されるべきではない、本発明における場合である。
【0174】
アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。アミノ酸側鎖置換のサイズ、形状および種類の分析は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが全て正電荷残基であり、アラニン、グリシンおよびセリンが全て類似のサイズであり、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが全て全体が類似の形状を有することを表す。したがって、これらの考慮に基づいて、アルギニン、リシンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;ならびにフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが本明細書において生物学的機能等価物と定義される。より定量的な変化をもたらすために、アミノ酸のハイドロパシーインデックス(hydropathic index)が考慮され得る。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷特性に基づいてハイドロパシーインデックスを割り当てられ、それらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。タンパク質に相互作用する生物学的機能を与えるハイドロパシーアミノ酸インデックスの重要性は一般に当該技術分野において理解されている(KyteおよびDoolittle,1982,本明細書に参照により組み込まれる)。特定のアミノ酸が、類似のハイドロパシーインデックスまたはスコアを有する他のアミノ酸に置換され得、さらに類似の生物学的活性を保持することは知られている。ハイドロパシーインデックスに基づいた変化を生成する際に、ハイドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、±0.5以内がさらにより特に好ましい。
【0175】
同様のアミノ酸の置換がハイドロパシーに基づいて効果的になされ得、特にこのように作製される生物学的機能等価タンパク質またはペプチドが、本発明の場合のような免疫学的実施形態における使用のために意図されることもまた、当該技術分野において理解される。参照を示すことによりその全体が本明細書に具体的に組み込まれている米国特許第4,554,101号は、その免疫原性および抗原性、すなわちタンパク質の生物学的特性と関連して、その連続アミノ酸の親水性によって制御されている、タンパク質の最大の局所平均親水性を記載している。米国特許第4,554,101号に記載されているように、アミノ酸残基に以下の親水性値が割り当てられる:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0176】
類似の親水性値に基づいて変化を生成する際に、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、±0.5以内がさらにより特に好ましい。説明はアミノ酸変化から生じる機能的等価ポリペプチドに焦点を当てているが、それらの変化は、コードDNAの変化により行われ得ることは理解されるであろう。また、遺伝子コードが縮重され、2つ以上のコドンが同じアミノ酸をコードし得ることも考慮される。
【0177】
医薬組成物
本発明の水性組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、緩衝剤、または水性媒体中に溶解または分散される開示されるプロテアーゼの1つ以上の有効量を含む。「薬学的または薬理学的に許容可能」という用語は、動物、または適切な場合、ヒトに投与される場合、有害、アレルギー性または他の厄介な反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質のためのこのような媒体および剤の使用は当該技術分野において周知である。任意の従来の培地または剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補足的活性成分もまた、組成物に組み込まれてもよい。ヒトへの投与のために、調製物は、FDA Office of Biologicsにより必要とされる滅菌性、発熱性、および全体的な安全性ならびに純度規格を満たすべきである。
【0178】
生物学的物質は、望ましくない低分子量分子を除去するために広範に透析され、適切な場合、所望のビヒクルにより容易に製剤化するために凍結乾燥されるべきである。次いで活性化合物が一般に、非経口投与のために製剤化、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病巣内、またはさらに腹腔内経路による注射のために製剤化される。活性成分または組成としてタウプロテアーゼを含有する水性組成物の調製は本発明を考慮して当業者に周知である。典型的に、このような組成物は、注射物質として、液剤または懸濁剤のいずれかとして調製されてもよく;注射前の液体の添加により液剤または懸濁剤を調製するための使用に適した固体形態もまた調製されてもよく;調製物はまた、乳化されてもよい。注射用の使用に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油または水性ポリエチレングリコールを含む製剤;ならびに滅菌注射溶液または分散剤の即時調製物のための滅菌粉末剤が含まれる。全ての場合において、形態は滅菌されなければならず、容易に注射できる程度に流動的でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0179】
本発明の化合物(遊離塩基としてまたはその薬理学的に許容可能な塩のいずれかとして)の1つ以上を含有する溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合される水中で調製され得る。また、分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製され得る。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含有する。本発明に係るプロテアーゼ組成物はまた、天然または塩形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)、および例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導され得る。担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合に必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンなどの組成物の使用によりもたらされ得る。
【0180】
滅菌注射剤は、上記に列挙したいくつかの他の成分と共に適切な溶媒中に必要とされる量で開示される化合物の1つ以上を導入し、必要な場合、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散剤は、塩基性分散媒体および上記に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に種々の滅菌活性成分を導入することにより調製される。滅菌注射剤を調製するための滅菌粉末剤の場合、調製の好ましい方法は、活性成分プラス以前に滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0181】
例示的な定義
本発明によれば、ポリヌクレオチド、核酸セグメント、核酸配列などとしては、限定されないが、DNA(限定されないが、ゲノムまたはゲノム外(extragenomic)DNAを含む)、遺伝子、ペプチド核酸(PNA)RNA(限定されないが、rRNA、mRNAおよびtRNAを含む)、ヌクレオシド、および天然源、化学的に合成され、修飾されるかのいずれかから得られるか、または人の手により全体もしくは部分的に調製され、もしくは合成される、適切な核酸セグメントが挙げられる。
【0182】
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的および化学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または等価の任意の方法および組成物が本発明を実施または試験するのに使用され得るが、好ましい方法および組成物が本明細書に記載される。本発明の目的のために以下の用語は以下のように定義される。
【0183】
本明細書で使用される場合、「プロテアーゼ」または「タンパク質分解酵素(複数も含む)」とは、1つ以上のポリペプチド基質を分解する作用をする加水分解酵素を意味する。例示的なプロテアーゼは哺乳動物、特にヒト起源であり得る。
【0184】
本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、生物学的配列間の同一の要素の程度の指標、例えば、2つの整列されたタンパク質配列間の同一のアミノ酸の割合である。ギャップが最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の1つまたは両方に導入されてもよく、相同配列は比較目的のために無視されてもよい。本明細書で使用される場合、「類似性」という用語は、生物学的配列間の類似性の程度、例えば、2つの整列されたタンパク質配列間の類似位置において類似機能および/または構造を有する類似アミノ酸の割合の指標である。
【0185】
本明細書で使用される場合、「例えば」または「e.g.」という用語は、限定されないが、意図する例を意味し、明細書中に明確に列挙されたそれらの項目のみを指すと解釈されるべきではない。
【0186】
長年の特許法の慣例に従って、「一つの(a)」および「一つの(an)」という用語は、特許請求の範囲を含む、本明細書で使用される場合、「一つまたは複数」を示す。
【0187】
本明細書で使用される場合、「基質」という用語は、本明細書に開示されるプロテアーゼの1つ以上により触媒され得る化学化合物を意味する。
【0188】
本明細書で使用される場合、成分の量に関して「実質的に含まない」または「本質的に含まない」という用語は、約10重量パーセント未満、約5重量パーセント未満、および約1重量パーセント未満の化合物を含有する組成物を意味する。一実施形態において、これらの用語は、約0.5重量パーセント未満、約0.1重量パーセント未満、または約0.001重量パーセント未満を指す。
【0189】
「タンパク質」という用語は、「ペプチド」および「ポリペプチド」と交換可能に本明細書で使用され、合成的、組換え的、またはインビトロで産生されるペプチドおよびポリペプチドならびに核酸配列が宿主動物またはヒト被験体内に投与された後にインビボで発現されるペプチドおよびポリペプチドの両方を含む。「ポリペプチド」という用語は、約2〜約20アミノ酸残基の長さ、約10〜約100アミノ酸残基の長さを含む短いペプチド、および約100アミノ酸残基以上を含む長いポリペプチドを含む、任意のアミノ酸の鎖の長さを指すことを目的とする。さらに、この用語はまた、酵素、すなわち少なくとも1つのアミノ酸ポリマーを含む、機能的生体分子を含むことを意図する。本発明のポリペプチドおよびタンパク質はまた、翻訳後修飾されている、または翻訳後修飾を有するポリペプチドおよびタンパク質を含み、骨格アミノ酸鎖に付加される任意の糖もしくは他の誘導体(複数も含む)またはコンジュゲート(複数も含む)を含む。
【0190】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を意味し、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖(複数も含む)を含む。したがって、本明細書で使用される場合、限定されないが、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」、「アミノ酸鎖」および「連続アミノ酸配列」を含む用語は全て、「ポリペプチド」の定義内に包含され、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、または交換可能に使用され得る。この用語はさらに、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化、タンパク質分解開裂、翻訳後プロセシング、または1つ以上の非天然に生じるアミノ酸の包含による修飾を含む、1つ以上の翻訳後修飾を受けているポリペプチドを含む。本開示全体を通して、一般的な一文字および三文字のアミノ酸の省略形が当該技術分野における従来の命名に従って利用される:アラニン(A;Ala)、アルギニン(R;Arg)、アスパラギン(N;Asn)、アスパラギン酸(D;Asp)、システイン(C;Cys)、グルタミン(Q;Gln)、グルタミン酸(E;Glu)、グリシン(G;Gly)、ヒスチジン(H;His)、イソロイシン(I;Ile)、ロイシン(L;Leu)、メチオニン(M;Met)、フェニルアラニン(F;Phe)、プロリン(P;Pro)、セリン(S;Ser)、トレオニン(T;Thr)、トリプトファン(W;Trp)、チロシン(Y;Tyr)、バリン(V;Val)、およびリシン(K;Lys)。本明細書に記載されるアミノ酸残基は「L」異性体であることが好ましい。しかしながら、「D」異性体形態の残基は、ポリペプチドの所望の特性が保持されるならば、L−アミノ酸残基に置換されてもよい。本明細書に表される全てのアミノ酸残基配列は、左から右のアミノ酸末端からカルボキシ末端配向と一致する。
【0191】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、機能的関係における2つ以上のポリヌクレオチドまたは2つ以上の核酸配列の連結を意味する。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に配置される場合、「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結される。「作動可能に連結された」とは、連結される核酸配列が、典型的に隣接しているか、または実質的に隣接しており、必要な場合、リーディングフレームに隣接し、かつリーディングフレーム内の2つのタンパク質コード領域に結合することを意味する。なぜなら、エンハンサーは一般に、プロモーターから数キロベース(Kb)離れている場合に機能し、イントロン配列は可変長であり得るからであるが、一部のポリヌクレオチド要素は隣接していないが作動可能に連結され得る。
【0192】
「単離された」または「生物学的に純粋な」という用語は、実質的に、または本質的に、天然状態で見られる物質を通常伴う成分を含まないことを意味する。したがって、一実施形態は、それらのインサイチュ環境においてペプチドと通常関連する物質を含有しない単離されたペプチドを提供する。
【0193】
「連結」または「結合」とは、限定されないが、組換え融合、共有結合、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合、静電結合などを含む、2つ以上の分子を機能的に接続するための当業者に周知の任意の方法を意味する。
【0194】
本明細書で使用される場合、「活性な」、「生物学的に活性」および「活性」とは、特定のタンパク質またはアミノ酸配列に関連している生物学的活性を意味し、本明細書で交換可能に使用される。例えば、リパーゼに関連する酵素活性は、トランス−脂肪酸またはカルボン酸部分の少なくとも一部を加水分解またはエステル化するように、加水分解および/またはアルコール分解、すなわちエタノール分解である。リパーゼ活性は、トランス−脂肪酸またはカルボン酸部分の少なくとも一部を加水分解および/またはエステル化する能力として測定される。
【0195】
特定の実施形態はまた、本明細書に記載される特定の配列の1つ以上と相補的または実質的に相補的なDNA配列を包含する。「相補的」である核酸配列は、標準的なワトソン−クリック相補性規則に従って塩基対合できるものである。本明細書で使用される場合、「相補的配列」とは、上記の同じヌクレオチド比較により評価され得る場合、実質的に相補的である核酸配列を意味するか、またはすぐ上に記載した比較的ストリンジェントな条件下で本明細書に開示される特定の核酸断片の1つ以上に加水分解できると定義される。
【0196】
「配列番号Xに実質的に記載される配列」とは、その配列が、配列番号Xの少なくとも第1の部分に実質的に対応し、配列番号Xのヌクレオチドと同一ではない、または生物学的に機能等価でない、比較的少ないヌクレオチドを有することを意味する。したがって、本明細書に提供されるヌクレオチド配列の1つ以上と同一または機能的に等価であるヌクレオチドの約85%〜約90%;約91%〜約95%;または約96%〜約99%を有する配列が本発明を実施するのに有用であると特に意図される。ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質に関して、「配列番号Xに実質的に記載される配列」とは、配列番号Xの少なくとも第1の部分に実質的に対応し、配列番号Xのアミノ酸残基と同一でない、または生物学的に機能等価でない、比較的少ないアミノ酸残基を有する配列を意味する。「生物学的に機能等価」という用語は、当業者により十分に理解されており、本明細書に詳細にさらに定義される。したがって、本明細書に提供されるアミノ酸配列の1つ以上と同一または機能的に等価であるアミノ酸の約85%〜約90%;約91%〜約95%;または約96%〜約99%を有するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列は、本発明を実施するのに有用であると特に意図される。
【0197】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、限定されないが、本明細書に記載されているものを含む、周知の方法(例えばPCR)を使用した鋳型特異的(template−directed)DNA合成の開始点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。プライマーの適切な長さはその特定の用途に依存するが、典型的に約15〜約30ヌクレオチドなどの範囲である。
【0198】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、コード配列によりコードされる産物の生物学的産生を意味する。多くの場合、コード配列を含む、ポリヌクレオチド(すなわちDNA)配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)を形成するように転写される。次いでメッセンジャーRNAは、関連する生物学的活性を有するポリペプチド産物を形成するように翻訳される。発現プロセスは、イントロンを除去するためのスプライシング、および/またはポリヌクレオチド産物の翻訳後プロセシングなどの、RNA転写産物に対するさらなるプロセシング工程を含み得る。
【0199】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、所定の参照遺伝子配列に関連して使用される。例えば、構造的遺伝子配列に関して、異種プロモーターは、参照構造遺伝子に隣接するが、実験的操作により配置される、天然に存在しないプロモーターとして定義される。同様に、異種遺伝子または核酸断片もしくは配列は、参照プロモーターおよび/またはエンハンサー要素に隣接する天然に存在しない遺伝子または断片と定義される。同様に、「異種」という用語はまた、所定のアミノ酸配列に関連して使用される。例えば、アミノ酸配列に関して、ポリ−ヒスチジンタグなどの異種タンパク質タグは、参照アミノ酸配列に隣接する天然に存在しないペプチド配列として定義される。同様に、異種アミノ酸断片または配列は、参照タグに隣接する天然に存在しない断片または配列として定義される。さらに、異種タンパク質は、特定の生物により天然に産生しない、または特定の生物内に見られないタンパク質を指す。これは、例えば、大腸菌(E.coli)などの宿主生物中の非天然リパーゼ遺伝子のクローニングおよび発現により発生できる。
【0200】
本明細書に使用される場合、「プロテアーゼバリアント」という用語は、「親」プロテアーゼのポリペプチド配列内の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸残基の置換、挿入、および/または欠失により誘導される、天然または野生型プロテアーゼとは異なるプロテアーゼを意味し、アミノ酸置換の場合、バリアントは典型的に、通常、対応する、非置換、または「野生型」プロテアーゼに見られない、1つ以上の他のアミノ酸残基により1つ以上のアミノ酸残基において置換される。
【0201】
本明細書で使用される場合、「プライマー」または「プライマー配列」という用語は、相補的鋳型核酸鎖(「標的配列」)と選択的にハイブリダイズし、鋳型鎖を複製するためにヌクレオチドを付加するための開始点として機能する任意の核酸配列または断片を指す。本発明のプライマー配列は、標識されてもよいか、または他の修飾を含有してもよく、それにより増幅産物の検出および/または分析を可能にする。標的DNA配列のポリメラーゼ媒介性重複の開始因子として役立つことに加えて、プライマー配列はまた、対応するDNAへの鋳型RNAの逆転写のために使用されてもよい。
【0202】
本明細書で使用される場合、「構造遺伝子」という用語は、コードされるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、リボザイム、触媒RNA分子、またはアンチセンス分子を産生するために発現されるポリヌクレオチドを意味する。
【0203】
本明細書で使用される場合、「標的配列」または「標的ヌクレオチド配列」は、ポリメラーゼ活性を有する酵素がプライマー配列を伸長でき、それにより相補鎖を複製できる条件下でプライマー配列の1つがハイブリダイズする任意のヌクレオチド配列を含む。
【0204】
本明細書で使用される場合、「形質転換」という用語は、外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、ウイルスベクター、プラスミド、または組換えDNAもしくはRNA分子)を宿主細胞またはプロトプラスト内に導入するプロセスを意味し、その外因性ポリヌクレオチドは、少なくとも第1染色体内に導入されるか、または形質転換宿主細胞内で自己複製できる。トランスフェクション、エレクトロポレーション、および「ネイキッド」核酸取り込みは全て、1つ以上のポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換するために使用される技術の例を表す。
【0205】
本明細書で使用される場合、「形質転換細胞」という用語は、核酸相補体が、1つ以上の外因性オリゴ−またはポリヌクレオチドのその細胞内への導入により変化される、宿主細胞を意味する。
【0206】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は典型的に、宿主細胞中で複製できる核酸分子(典型的にDNAからなる)および/または別の核酸断片が、結合断片の複製をもたらす作動可能に連結され得る核酸分子を指す。プラスミド、コスミド、またはウイルスが例示的なベクターである。
【0207】
本明細書で使用される場合、「実質的に対応する」、「実質的に相同」または「実質的に同一」という用語は、核酸またはアミノ酸配列の特徴を示し、選択される核酸またはアミノ酸配列は、選択される参照核酸またはアミノ酸配列と比較して少なくとも約70または約75パーセントの配列同一性を有する。より典型的に、選択される配列および参照配列は、少なくとも約76、77、78、79、80、81、82、83、84またはさらに85パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも約86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95パーセントの配列同一性を有する。さらにより好ましくは、高い相同配列は多くの場合、選択される配列と、比較される参照配列との間で少なくとも約96、97、98、または99パーセントの配列同一性を共有する。配列同一性のパーセンテージは、比較される配列の全長にわたって計算され得るか、または選択される参照配列の全体で約25パーセント未満などの少しの欠失もしくは付加を除外することによって計算され得る。参照配列は、遺伝子もしくは連続配列の一部、または染色体の反復部分などのより大きな配列のサブセットであってもよい。しかしながら、2つ以上のオリゴ−またはポリヌクレオチド配列の配列相同性の場合、参照配列は典型的には、少なくとも約10〜15ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約16〜25ヌクレオチド、さらにより典型的には少なくとも約26〜35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、または少なくとも約60、70、80、90、もしくはさらに少なくとも約100などのヌクレオチドを含む。
【0208】
好ましくは、高い相同断片が望まれる場合、2つの配列(多くの場合、「標的」および「プローブ」配列と称される)間の同一性パーセントは、少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも約85%同一、より好ましくは少なくとも約90%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、またはさらに少なくとも約95%、96%、97%、98%、もしくは99%もしくはそれ以上である。2つ以上のオリゴ−またはポリヌクレオチド配列の間の相同性のパーセンテージまたは同一性のパーセンテージは、標準的な配列比較アルゴリズム、例えば、PearsonおよびLipman(1988)により記載されているFASTAプログラム分析のうちの1つ以上を使用して、当業者により容易に決定され得る。
【0209】
本明細書で使用される場合、対象物に適用する場合、「天然に存在する(発生する)」という用語は、対象物が天然に見出され得るという事実を指す。例えば、天然源から単離され得、実験室で人の手により意図的に修飾されていない、生物に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0210】
アミノ酸または核酸配列のいずれかを定義するために使用される場合、「実質的に相補的」という用語は、特定の対象配列、例えばオリゴヌクレオチド配列が、選択される配列の全てまたは一部と実質的に相補的であるので、選択される配列をコードするmRNAの一部と特異的に結合することを意味する。したがって、典型的に、配列はmRNA「標的」配列と高い相同性を有し、配列の相同性部分にわたって約1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、または10以下の塩基ミスマッチを有する。多くの場合、配列がマッチすることを必要とする、すなわち、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する配列と完全に相同し、したがって相補鎖に沿ってミスマッチがゼロであることが好適であり得る。したがって、高い相同プライマーまたはプローブ配列は典型的に、複数のポリヌクレオチドの標的配列領域とかなり特異的に結合するので、リアルタイムPCRにより標的配列の増幅を駆動するのに高い効果を有する。
【0211】
実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列は、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応する標的核酸配列と約80パーセントより高い相同性、約85パーセントより高い相同性、約90パーセントより高い相同性、またはさらに約95パーセントより高い相同性(または「正確なマッチ%」)であり、より好ましくは、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応する核酸配列と約96%またはそれより高い相同性である。特定の態様において、上記のように、本発明の実施に使用するために、さらにより実質的に相同的なオリゴヌクレオチド配列を有することが望ましく、そのような場合、オリゴヌクレオチド配列は、設計されたオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーが特異的に結合する標的核酸配列の全てまたは一部と約96%超、97%超、98%超、99%超、またはさらに100%相同である。
【0212】
開示される配列のいずれかの類似性パーセントまたは相同性パーセントは、例えば、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を使用して配列情報を比較することにより決定され得る。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunsch(1970)のアラインメント法を利用する。手短に述べると、GAPプログラムは、2つの配列の短い方のシンボルの総数で割った、類似する整列されたシンボル(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)の数として類似性を定義する。GAPプログラムについての好ましいデフォルトパラメータは、(1)ヌクレオチドについての単項比較マトリクス(識別子について1の値および非識別子について0の値を含有する)、およびGribskovらの重み付け比較マトリクス、(2)各ギャップ(gap)について3.0のペナルティおよび各ギャップにおける各シンボルについてさらに0.10のペナルティ;ならびに(3)エンドギャップについてペナルティなし。
【0213】
本明細書で使用される場合、「蛍光共鳴エネルギー移動対」または「FRET対」とは、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアを含むフルオロフォアの対を指し、ドナーフルオロフォアは共鳴エネルギーをアクセプターフルオロフォアに移動できる。好ましい蛍光共鳴エネルギー移動対において、ドナーフルオロフォアの吸収スペクトルは、アクセプターフルオロフォアの吸収スペクトルと実質的に重ならない。本明細書で使用される場合、「ドナー」プローブとは、蛍光共鳴エネルギー移動対のドナーフルオロフォアで標識されるプローブを指す。本明細書で使用される場合、「アクセプター」プローブとは、蛍光共鳴エネルギー移動対のアクセプターフルオロフォアで標識されるプローブを指す。一部の場合、ドナーおよびアクセプターの両方は、単一プローブに作動可能に連結され得るか、またはしばしばオリゴヌクレオチドベースのFRET分析における場合、各々は異なるプローブに作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、「FRETオリゴヌクレオチド対」は典型的に、「アンカー」または「ドナー」オリゴヌクレオチドプローブおよび「アクセプター」または「センサー」オリゴヌクレオチドプローブを含み、このような対は、ドナーオリゴヌクレオチドプローブおよびアクセプターオリゴヌクレオチドプローブがそれらの相補的標的核酸配列とハイブリダイズする場合、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)関係を形成する。蛍光共鳴エネルギー移動対として使用するための許容可能なフルオロフォア対は当業者に周知であり、限定されないが、フルオレセイン/ローダミン、フィコエリトリン/Cy7、フルオレセイン/Cy5、フルオレセイン/Cy5.5、フルオレセイン/LC Red640、フルオレセイン/LC Red705、およびそれらの組み合わせを含む。
【実施例】
【0214】
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。実施例に開示される技術は、本発明を実施するのに十分に役立つ本発明者らにより発見された技術を表し、したがってその実施のための好ましい様式とみなされると考慮されるべきであることは当業者により理解されるべきである。しかしながら、当業者は本開示を鑑みて、多くの変更が、開示される特定の実施形態においてなされ得、さらに本発明の精神および範囲から逸脱せずに同様または類似の結果を得ることを認識するであろう。
【0215】
実施例1−タウオリゴマーの自己タンパク質分解活性
この実施例はタウオリゴマーの自己タンパク質分解活性の識別を記載する。この研究により、タウ4R2Nが、反応緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中での37℃におけるインキュベーション時にジスルフィド媒介性オリゴマーを形成する場合、
自己タンパク質分解開裂(すなわち自己開裂)を受けることが実証される。タウ4R1Nは類似特性を示した。
【0216】
精製した組換えヒトタウ4R2Nをフローチャートに記載したように調製した。単量体、二量体および三量体種は形成したオリゴマーを有するタウ4R2N調製物由来の精製した分取電気泳動であった。電気泳動緩衝液はタンパク質分解活性を阻害する0.1%SDSを含有した。タウ種を含有する画分は、Amicon限外濾過装置(Merck Millipore,Billerica,MA)を使用して25mMのTris−HCl pH7.4に交換した緩衝液であり、タウ自己タンパク質分解活性の回復を導いた。調製物のタンパク質濃度を、BCAキット(ThemoFisher Scientific)を使用して決定した。試料は、ジスルフィド媒介性オリゴマーを可視化するために、還元剤を使用せずにプレキャスト4〜20%ポリアクリルアミドTris−HClゲル(BioRad,Hercules,CA)上で泳動した。GelCodeBlue Safe(ThermoFisher Scientific,Rockford,IL)でゲルを染色した。レーン1:5.2μgのタウ4R2Nオリゴマー鎖;レーン2:緩衝液交換前の2マイクロリットルの単量体画分;レーン3:緩衝液交換後の0.5μgの単量体;レーン4:緩衝液交換前の5μLの二量体画分;レーン5:緩衝液交換後の0.5μgの二量体;レーン6:緩衝液交換前の20μLの三量体画分;レーン7:緩衝液交換後の0.5μgの三量体。
【0217】
タウ4R2Nは、インキュベーション時にジスルフィド媒介性オリゴマーを形成する場合、自己タンパク質分解開裂(自己開裂)を受ける。タウ自己タンパク質分解活性を二量体および三量体種で同時精製した。自己タンパク質分解活性の量は、完全なサイズの三量体がインキュベーション後に残らなかった程度に断片化した三量体で最大であった。二量体はまた、自己タンパク質分解活性を示したが、単量体のみは、インキュベーション時にオリゴマー形成の後で少しの活性を示した。このことは、タウタンパク質が、自己断片化により示される、タンパク質分解活性を有し、そのオリゴマー形成が観測可能なタンパク質分解活性に必要であったことを示す。このことはまた、三量体形態が、二量体形態より活性であり、同様に単量体から形成されるオリゴマーラダーより活性であることを示す。タウ自己タンパク質分解活性が二量体および三量体種で同時精製したこともまた示された。この自己タンパク質分解活性は、三量体活性>>二量体活性>>単量体活性であると観測された。完全長の三量体は小さな断片中で完全に消化し、インキュベーション時に、単量体は低レベルの自己タンパク質分解活性を生成するオリゴマーラダーを形成した。
【0218】
実施例2−プロテアーゼ活性または精製した単量体、二量体、および三量体
この実施例は、精製したタウ単量体、二量体、および三量体のプロテアーゼ活性を実証する研究の結果を記載する。タウ441の単量体、二量体、および三量体は、連続溶出電気泳動を使用して非還元条件下で精製した。各オリゴマー試料の画分をプールし、30,000ダルトンの分子量カットオフを用いてAmiconスピン濃縮器を使用して緩衝液を安定緩衝液に交換した。インキュベートしていない対照を4℃にて氷上に維持しながら、0.35μgの各試料を37℃にて一晩インキュベートした。翌朝、還元剤を有さない2×SDSの試料緩衝液を各試料に加え、4〜20%勾配のTris−HCl Criterion Gel(Bio−Rad,Hercules,CA)上にロードした。
【0219】
タウ4R2Nプロテアーゼの複数のロットをこれまでに作製し、三量体について最大活性を有するジスルフィド媒介性凝集体の形成後のみプロテアーゼ活性の類似の特性を示す。レーン1−オリゴマーラダー;レーン2−インキュベーションしていない単量体;レーン3−インキュベーションした単量体;レーン4−インキュベーションしていない二量体;レーン5−インキュベーションした二量体;レーン6−インキュベーションしていない三量体;レーン7−インキュベーションした三量体;および4°=四量体;3°=三量体;2°=二量体;1°=単量体。
【0220】
タウ三量体活性>>タウ二量体活性>>タウ単量体活性
インキュベーションの間、タウ単量体およびタウ二量体は、明確な上側バンド(ボックス1に示す)で観測される限り高次凝集体を形成するのに対して、三量体はさらなる高次凝集体を形成しない(ボックス2に示す)。高次オリゴマーを形成する反応性の欠如により、三量体構造が少しの遊離チオールを含有することが示唆された。なぜなら、それらは既にジスルフィド結合しているか、または立体的に遮蔽されているからである。この実験は、実施例1からの結果が、三量体、続いて二量体について最も高い活性を示しているので再現性がある。この調製物から精製したタウ4R2N三量体はまた、インキュベーションの間にさらなる高次種を形成しないように見え、遊離チオールを有さない、または存在する遊離チオールが立体的に遮蔽されているので、反応しないことを示し得る。
【0221】
タウ4R2Nプロテアーゼの複数のロットが作製され、各々は、三量体について最大活性を有するジスルフィド媒介性凝集体の形成後にのみプロテアーゼ活性の類似特性を示した。インキュベーションの間、タウ単量体およびタウ二量体は、明確な上側バンドで観測される限り高次凝集体を形成したのに対して、三量体はさらなる高次凝集体を形成しなかった。高次オリゴマーを形成する反応性の欠如により、三量体構造が少しの遊離チオールを含有したことが確認された。なぜなら、それらは既にジスルフィド結合しているかまたは立体的に遮蔽されているからである。
【0222】
実施例3−汚染抑制研究
この実施例はタウプロテアーゼの汚染抑制研究からの結果を示す。タウ441の単量体、二量体、および三量体を、連続溶出電気泳動を使用して非還元条件下で精製した。各オリゴマー試料の画分をプールし、30,000ダルトンの分子量カットオフを用いてAmiconスピン濃縮器を使用して緩衝液を安定緩衝液に交換した。インキュベーションしていない対照を4℃にて氷上に維持しながら、0.35μgの各試料を37℃にて一晩インキュベートした。翌朝、還元剤を有さない2×ドデシル硫酸ナトリウム試料緩衝液を各試料に加え、4〜20%の勾配のTris−HCl Criterion Gel(Bio−Rad,Hercules,CA)上にロードした。
【0223】
タウ三量体は優先的に分解されるのに対して、活性の原因となる場合、等量の汚染プロテアーゼを含有する精製からの等しい試料体積を使用した単量体および二量体の最小の開裂が示された。レーン1−タウオリゴマーラダー標準物;レーン2−空;レーン3−インキュベーションしていない精製した単量体(精製プレートからの画分);レーン4−インキュベーションしていない精製した単量体;レーン5−インキュベーションした精製した単量体;レーン6−インキュベーションしていない精製した二量体;レーン7−インキュベーションした精製した二量体;レーン8−インキュベーションしていない精製した三量体;37℃にて一晩インキュベーションした精製した三量体。レーン3〜9はβ−メルカプトエタノール(BME)を含有する試料緩衝液で処理した。この研究の結果により、タウ三量体は優先的に分解されるのに対して、精製から等しい試料体積を使用した場合、単量体および二量体の最小開裂が観測されたことが実証された。
【0224】
調製の間、同じ体積の単量体、二量体および三量体をプールし、緩衝液を交換し、各試料が同じ量の緩衝液に曝露されるように濃縮した。これは、この精製の工程の間に使用される緩衝液内に含まれる汚染プロテアーゼを抑制する。
【0225】
実施例4−タウプロテアーゼについての安定緩衝液の開発
この実施例はタウプロテアーゼの活性を保存するための安定緩衝液の開発および特徴付けを記載する。酵素活性についての最小阻害濃度である0.002%SDSを含有する酵素安定緩衝液を開発した。安定緩衝液は、50mMのTris、pH7.4および0.002%のドデシル硫酸ナトリウムを含有した。反応緩衝液中で10倍以上であるタウプロテアーゼ酵素の希釈は活性を戻した。
【0226】
各試料に関して、0.3μgの精製したタウ4R2N三量体を、50mMのTrisHCl pH7.4中の種々の量のドデシル硫酸ナトリウムの存在下で37℃にて一晩インキュベートした。50mMのTrisHCl pH7.4中のSDSの連続希釈を氷上で調製し、一定量のタウ4R2N三量体を各希釈に加えた。インキュベートしていない対照を4℃にて氷上で維持しながら、試料を37℃にて一晩インキュベートした。翌朝、還元剤を有する2×SDSを各試料に加え、4〜20%の勾配のTris−HCl Criterionゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)上にロードした。
【0227】
試験したSDSの濃度は、レーン1=0%;レーン2=0.000050%;レーン3=0.000100%;レーン4=0.000200%;レーン5=0.000390%;レーン6=0.000780%;レーン7=0.001560%;レーン8=0.003130%;レーン9=0.006250%;レーン10=0.012500%;レーン11=0.025000%;レーン12=0.050000%;レーン13=0.100000%;レーン14=空;レーン15=βメルカプトエタノールを有するタウ4R2N単量体。
【0228】
この研究は、反応緩衝液(すなわち25mMのTris pH7.4)中で10倍の希釈により活性化され得る、タウプロテアーゼが安定である緩衝液の形成を可能にした。酵素活性についての最小阻害濃度である、0.002%SDSを含有する酵素安定緩衝液を開発した。反応緩衝液中で10倍以上であるタウプロテアーゼ酵素の希釈は活性を戻す。
【0229】
実施例5−安定緩衝液は自己切断を防ぐ
この実施例は、実施例4に記載した安定緩衝液が、そのタンパク質分解ドメインによりタウタンパク質の自己切断を防ぎ、完全長単量体、二量体および三量体タウプロテアーゼの産生を可能にすることを実証する。
【0230】
精製したタウ4R2N単量体、二量体、および三量体の個々の画分は、30,000ダルトンの分子量カットオフを用いてAmiconスピン濃縮器を使用して安定緩衝液に緩衝液交換した。同じ日に、各オリゴマー試料のアリコートを、還元剤を有さない2×SDSを付加することによりゲル分析のために調製し、続いて4〜20%の勾配のTrisHCl Criterionゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)上にロードした。
【0231】
安定緩衝液は、タウプロテアーゼについての完全長単量体、二量体および三量体の産生を可能にする。レーン1−未精製タウ4R2Nオリゴマーラダー;レーン2−空;レーン3−空;レーン4−安定緩衝液中のタウ4R2N精製単量体;レーン5−安定緩衝液中のタウ4R2N精製二量体;レーン6−安定緩衝液中のタウ4R2N三量体。
【0232】
その結果により、インタクトの単量体、二量体および三量体が、精製され得、実施例3に記載した安定緩衝液中で安定なままであることが示された。
【0233】
実施例6−タウ単量体、二量体、および三量体分解
この実施例に示した研究は5個のタウ断片の質量決定を実証する。タウ三量体、二量体および単量体分解物由来の断片を精製し、質量分析に供した。断片3は、N末端シークエンシングに基づいて340KS341にて切断し、質量決定に基づいて353KI354および370KI371にて切断した。断片1〜4は同じN末端を有することを示し、それらが全て、C末端上で異なるが、130KS131にて切断したことを示す。表3は標準曲線を生成するために分子量マーカーサイズ標準物を使用した断片の見かけの分子量を報告する。
【0234】
【表7】
【0235】
【表8】
【0236】
質量決定およびN末端シークエンシングのための低分子量のタウ断片の調製。50μLの2.45mg/mLの精製したタウ4R2N二量体を、自己タンパク質分解を可能にするために37℃にて38.5時間インキュベートした。試料を等量の2×試料緩衝液(126mMのTris−HCl pH7.0、20%グリセロール、4%SDS、0.05%ブロモフェノールブルー)と混合し、5ウェルのプレキャストの15%ポリアクリルアミドTris−グリシンゲル(BioRad)中に泳動した。GelCode(登録商標)Blue Safe(ThermoFisher Scientific)でゲルを1時間染色し、高度に精製された水で一晩脱染した。矢印の標識されたF3により示されたバンドを切除し、新たなカミソリの刃(水およびエタノールで洗浄した)で細かく細分化し、一晩撹拌しながら4℃にて5mMのTris−HCl pH7.0中でインキュベートした。溶出部分を含有する緩衝液を分析のためにAlphalyseに送った。高分子量の断片1〜4を、PVDF膜に移すことによりN末端シークエンシングのために調製した。断片をPonceau染色で可視化し、洗浄した新たなカミソリで切断した。膜結合断片をN末端シークエンス分析のためにAlphalyseに送った。4個の断片のN末端シークエンスは同じであった:SKDGTG(配列番号18)。このことは、アミノ酸K130とS131との間の切断部位がタウプロテアーゼの主な自己タンパク質分解部位であることを示す。
【0237】
MALDI質量分析(MALDI MS)による分子量決定。MALDI MSにおいて、溶解した試料を金属標的物上に堆積させ、ペプチドおよびタンパク質をリガンド吸収マトリクスで共結晶化する。レーザービームを乾燥マトリクス試料に方向付け、試料分子を脱着させ、イオン化し、飛行時間型(TOF)質量分析器において質量を測定する。より大きなタンパク質が多くの場合、単一(MH+)、二重(MH2 2+)および三重プロトン化(MH3 3+)イオンとして質量スペクトル(m/z)において観測される。タンパク質の質量はインタクトな非プロトン化タンパク質の平均質量として計算する。MALDIプロセスは、タンパク質調製物が、塩および洗浄剤を干渉することから比較的純粋であることを必要とし、通常、最大約60kDaまでのインタクトなタンパク質の5〜10Da内の質量決定が得られる。この分析において、ZipTip(登録商標)ユーザガイドに従ってMillipore ZipTips(登録商標)(C18物質)を使用してタンパク質をマイクロ精製した。タンパク質を50%メタノールで溶出した。マトリクスとしてHCCAを使用して線形モードにおいてMALDI質量スペクトルによりタンパク質を分析した。外部校正を使用して質量スペクトルを校正した。
【0238】
ABI Procise(登録商標)494シークエンサーに基づいてN末端エドマンシークエンシングを実施した。この手順は、エドマン分解化学によりタンパク質およびペプチドのN末端アミノ酸配列を決定する。シークエンシングは酸でエッチングしたガラスファイバーディスクまたはPVDF膜上で行う。
【0239】
エドマン分解は、アミノ酸残基が一つずつ切断され、クロマトグラフィーにより識別される循環手順である。循環手順において3つの工程が存在する。工程1において、PITC試薬はアルカリ性条件下でN末端アミノ基に結合される。工程2において、N末端残基は酸性培地中で開裂される。工程3において、PITCが結合した残基はフラスコに移され、PTH残基に変換され、HPLCクロマトグラフィーにより識別される。次いで次のサイクルを次のN末端残基の識別のために開始する。断片F3についてのN末端配列は、タウ4R2Nのアミノ酸341〜346に対応するSEKLDFであると決定し、タウプロテアーゼがリシン340とセリン341との間でそれ自体を切断することを示す。
【0240】
断片の単離およびシークエンシングにより、4つの断片が同じn末端(130K−S131にて切断)を有し、反応の間に容易に開裂される1つの断片(340K−S341)がウェスタンブロット(図6A)において見られる信号の損失を生じるので、我々が主要な切断部位と指定したタウにおいて2つの切断部位を識別できた。
【0241】
【表9】
【0242】
表4は、C末端およびN末端に特異的な標識抗体を有するウェスタンブロットを使用して観測したタウ4R2N部分消化からの計算したMWを示す。切断部位モチーフP1−P1’をこの分析において識別した。精製したタウ4R2N単量体、二量体および三量体調製物を、緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中で37℃にて0、2および16時間インキュベートし、還元剤を有する試料緩衝液を含む4〜20%のポリアクリルアミドTris−HClゲル上で泳動した。左から、レーン1〜3−単量体、0、2、16時間のインキュベーション;レーン4〜6−二量体、0、2、16時間のインキュベーション;レーン7〜9−三量体、0、2、16時間のインキュベーション。GelCode(登録商標)Blue Safe(ThermoFisher Scientific)でゲルを染色し、タンパク質をPVDF膜(Merck Millipore,Billerica,MA)に移した。C末端に特異的な抗体、アミノ酸404〜441タウ4R2Nにおけるエピトープ(モノクローナルT46、Life Technologies,Grand Island,NY)を使用してタウ4R2Nタンパク質の部分消化から観測された断片を識別するために使用した免疫ブロット法を実施した。ブロットを剥がし、N末端に対する抗体、アミノ酸83〜120タウ4R2Nにおけるエピトープ(モノクローナル抗体T14、Life Technologies,Grand Island,NY)で再プローブした。
【0243】
移動断片の分子量(MW)を、標準物としてオリゴマーラダーを使用し、移動(Rf)対log(MW)をプロットすることにより決定した。この計算のために、以下のMWを使用した:単量体について45,900Da;二量体について91,800Da;三量体について137,700Da;四量体について183,600Da、それらから標準曲線を計算し、log(Mw)=−0.5893Rf+5.5107;R=0.9832に線形的に適合した。標準曲線から、単量体タウのMWが44,674Daであると計算し、実際のMWと約1,225Da異なる。このように計算したMWは実際のMWの近似値である(見かけのMWではない)。
【0244】
断片対の一致により、45.9kDaのタウ4R2Nの分子量MWが、部分消化の間に切断したKS部位の識別を可能にすることがまとめられる。さらに、KT部位における切断と一致する断片もまた、この方法を使用して識別された。したがって、質量スペクトルおよびウェスタンブロットから識別したタウ切断部位モチーフはP1−K−(S,TまたはI)−P1’であった。NおよびC末端特異的抗体についてのウェスタンブロットで観測した各断片のMWを、この標準曲線を使用して計算した。開裂反応が完了していなかったので、N末端を含有する各々の可能な断片およびC末端を含有する各々の可能な断片が表される。このように、断片は、N末端のMW+C末端のMWがタウ4R2NのMW(45,900)と近似するように組み換えられてもよいか、または一致されてもよい。この分析から、16個の断片は、46,087Daの計算した平均MWおよび2,267Daの標準偏差と一致した。この分析から、代替部位において断片切断を表すことができる4個の一致していない断片が存在した。この結果はK−SおよびK−I部位を含む質量スペクトルにより識別した切断部位と一致する。K−SおよびKIについて全部で12の切断部位はタウ4R2Nの配列から予想されるが、2つのセットの断片は断片の予測されるMWに基づいてPAGEにより区別可能である。したがって、22個の予測される断片のうちの20個が観測され、16個の断片は一致した対を形成した。4個の断片はK−SおよびK−Iにおける切断と関連していないようであるが、タウプロテアーゼについて二次切断部位を表し得るK−Tにおける切断と一致する。この分析から識別した断片により、我々は、自己タンパク質分解反応の間、最も容易に切断するタウにおける切断部位を識別できる。これにより、我々はまた、K−S部位における切断に加えて、タウにおけるK−IおよびK−T部位における切断が存在することも見ることができる。K−I部位における切断は図4における質量決定により支持される。
【0245】
実施例7−タウ4R2Nタンパク質分解断片
表4に示した結果ならびにまた、実施例6におけるn末端シークエンシングの結果および完全長タウのn末端およびc末端領域においてプローブするウェスタンブロットの結果(図6A図6B)に基づいて、我々は生成される可能性のある断片を識別できる。これらの断片はバイオマーカーとして潜在的有用性を有し、また、固有のプロテアーゼ活性を有し得るかまたは神経毒である可能性もある(仮説)。全部で16個の切断部位について切断部位P1−K−(S,T,またはI)−P1’の識別を可能にする不完全な消化物でウェスタンブロットを実施した:
【表10】
【0246】
観測した切断のうちの3つは、タウ4R2N三量体プロテアーゼ自己タンパク質分解反応において見られる主要な切断部位(すなわち、130KS131、340KS341、353KI354、および395KS396)であり、反応混合物の一晩のインキュベーション後に3個の断片を生じた。観測した他の13の切断は二次切断部位であり、単量体または二量体タウ上のTPRの部位(すなわち、67KS68、130KS131、148KT149、150KI151、174KT175、180KT181、190KS191、234KS235、240KS241、257KS258、259KI260、353KI354、370KI371、385KT386、および395KS396)を表し得る。
【0247】
2つの主要な切断部位130KS131および340KS341により、我々はTP−210(131〜340)から活性断片を識別できた。クローニング後、この断片により、我々は、それがプロテアーゼ活性を有することを実証できたので(図7)、この断片はタウの活性部位領域に及ぶ。
【0248】
識別した切断部位に基づいて、タウにおいて16個の潜在的切断部位が存在した。完全な消化により、表5に記載した17個の断片が生じた。部分消化により257個の断片が生じたようであった。これらの断片は疾患におけるタウタンパク質分解活性についての可能なバイオマーカーを表す。さらに、タウはアニオン性N末端およびカチオン性C末端を有するので、これらの断片は大いに異なる特性を示し得ると予想される。断片15におけるヒト芽球により、それがタウ、およびタウ誘導体、およびMAP4においてのみ存在することが示された。この断片はADに対する高度に特異的なバイオマーカーを表し得る。また、そのサイズ、変化、および組成に起因して、簡単な血液検査を用いてADの検出を可能にする血漿に容易に侵入すると予想される。
【0249】
【表11】
【0250】
実施例8−タウプロテアーゼ活性のザイモグラム分析
ブルーカゼイン(10−ウェル、Invitrogen,Inc.)を使用して4〜16%のPAトリス−グリシンゲルシステムにおいてザイモグラフ分析を実施した。非還元試料緩衝液を使用して試料を泳動し、精製水で2回、200mLの25mM Tris−HCl pH7.0で1×30分、ゲルを洗浄した。37℃にて200mLの25mM Tris−HCl pH7.0中でゲルをインキュベートし、2時間のインキュベーション後に走査した。
【0251】
4〜16%のPAトリス−グリシンブルーカゼインゲル(Life Technologies,Grand Island,NY)上でザイモグラフ分析を実施した。ゲル内のブルーカゼインの除去はゲル内のその位置におけるタンパク質分解活性を示す。ジスルフィド媒介性オリゴマーを維持するために非還元試料緩衝ゲルを使用して試料を泳動した。精製水でゲルを洗浄して、プロテアーゼ活性に対して阻害性であるSDSを除去し、反応緩衝液(25mM Tris−HCl pH7.0)中で平衡化した。37℃にて2時間、反応緩衝液中でゲルをインキュベートし、画像化し、さらに18時間インキュベートした。ゲルを画像化した後、それを、GelCodeBlue Safe(ThermoFisher Scientific,Rockford,IL)で染色して、ゲル内に泳動したタンパク質試料を可視化し、それらをゲル内の観察されるプロテアーゼ活性と関連付けた。レーン1−タンパク質標準物、SeeBluePlus2(Life Technologies,Grand Island,NY);レーン2−25μgのタウ4R2Nオリゴマーラダー;レーン3−25μgのタウ4R2N二量体;レーン4−5μgのタウ4R2N二量体;レーン5−1μgのタウ4R2N二量体。
【0252】
タウタンパク質バンドとタンパク質分解活性との間の空間相関により、活性がタウに内在しており、汚染プロテアーゼでないことが示された。高次の凝集体およびタウ断片はブルーカゼインの除去により活性を実証した。ブルーカゼインの除去はまた、タウオリゴマーラダーからの単量体バンドの領域において見出された。続いて、このバンドから別のゲル上にタンパク質を泳動することにより、タウが単量体バンドの位置においてゲル内でオリゴマー化され、それが自己タンパク質分解活性を有することが実証された。別の観測により、タウはザイモグラムにおいてカゼインタンパク質基質を切断する能力を有した。
【0253】
実施例9−タウ4R2N三量体プロテアーゼはチューブリンを切断する
タウプロテアーゼは、その自己タンパク質分解反応に加えて、また、チューブリンを開裂する。タウの主要な正常機能のうちの1つは、微小管内のチューブリンの重合を促進し、ニューロンの軸索内でそれらの構造を維持することである。この作用は、タウがオリゴマーを形成する場合、それがチューブリンを分解できることを示し、微小管および神経機能の破壊のための直接的な病理機構を実証する。
【0254】
示していない結果において、タウ4R2N三量体はチューブリンを切断する。その研究において、レーン1−チューブリン、インキュベーションなし;レーン2−タウを含まずにインキュベートしたチューブリン;レーン3−タウ4R/2N三量体とチューブリン、インキュベーションなし;レーン4−タウ4R2N三量体とインキュベートしたチューブリン。チューブリンのみのインキュベーションは一部のチューブリン二量体の形成を導いたが、チューブリンを断片化しなかった。タウ4R2N三量体とのチューブリンのインキュベーションは、チューブリン断片の形成およびチューブリン二量体の分解を導いた。
【0255】
凍結乾燥したチューブリン(カタログ番号TL238、Cytoskeleton Inc.)を、6mg/mLの溶液のために200μLの緩衝液中で懸濁した。試料を37℃にて19.25時間インキュベートした。10μLの2×Laemmli試料緩衝液(BME)を各試料に加えた。試料を、ロードする5分前に加熱した蓋を用いてサーマルサイクラー内で95℃にて5分間加熱した。
【0256】
α−エンドルフィンは内因性オピオイドペプチドであり、そのアミノ酸配列はTyr−Gly−Gly−Phe−Met−Thr−Ser−Glu−Lys−Ser−Gln−Thr−Pro−Leu−Val−Thr(配列番号13)である。それは、β−エンドルフィンのN末端の16アミノ酸配列であり、1つのアミノ酸がガンマ−エンドルフィンと異なる(β−エンドルフィン1〜17)。したがって、タウプロテアーゼはこれらのタンパク質の全てを切断するはずである。なぜならアルファエンドルフィンがそれらのサブ断片であるからである。
【0257】
アルツハイマー疾患におけるタウプロテアーゼによるオピオイドペプチドの分解は、疾患と関連した情緒変化についての機構を提供でき、タウプロテアーゼ活性の阻害は疾患における気分障害を改善する有用性を有し得る。
【0258】
12μgのα−エンドルフィンペプチド(Anaspec,Fremont,CA)を、37℃にて20時間、反応緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中で1.2μgのタウ4R/2N三量体とインキュベートした。逆相HPLCを使用してペプチドの開裂をモニターした。下側のトレースはタウプロテアーゼを有さずにインキュベートしたインタクトなペプチドについてのピークを示し、上側のトレースは、アルファエンドルフィンの開裂を示すピークF1およびF2の形成を示す。アスタリスクは、インキュベーションチューブから誘導される人工ピークを示す。
【0259】
アミロイド前駆体タンパク質(APP)を開裂して、アルツハイマー病の病理における重要な因子であると考えられる、Aβを形成する。APPのアミノ酸667〜676(SEVKMDAEFR)(配列番号14)由来のペプチドもまた、AβのN末端を生成するためにAPPを切断するベータセクレターゼについての開裂部位を含有する。ベータセクレターゼはMとDとの間を切断するのに対して、タウプロテアーゼは恐らく、KとMとの間を切断する(ペプチド配列において下線を引いている)。
【0260】
実施例10−タウ三量体活性はプロテアーゼ阻害剤カクテルにより阻害される
タウ三量体プロテアーゼを、セリンプロテアーゼ、アミノ−ペプチド、システインプロテアーゼおよびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤を含有するプロテアーゼ阻害剤カクテルと、およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを有さずに、一晩インキュベートした。プロテアーゼ阻害剤カクテルは、酵素機能と一致するさらなる断片化を阻害した。
【0261】
【表12】
【0262】
各試料に関して、0.45μgのタウ4R2N三量体を、種々の新たに調製したプロテアーゼ阻害剤の存在下で37℃で0.2mg/mLにて一晩インキュベートした。インキュベートしていない対照を氷上に一晩4℃にて維持した。翌朝、還元剤を有する2×ドデシル硫酸ナトリウム試料緩衝液を各試料に加え、4〜20%の勾配のTris−HCl Criterion Gel(Bio−Rad)上にロードした。
【0263】
標的とするプロテアーゼ阻害剤は、セリンプロテアーゼ、アミノ−ペプチダーゼ、システインプロテアーゼ、メタロ−プロテアーゼ、およびアスパラギン酸プロテアーゼを含む。S=セリンプロテアーゼ阻害剤;N=非特異的セリンプロテアーゼ阻害剤。レーン1=インキュベートしていない対照;レーン2=インキュベートした対照;レーン3=AEBSF;レーン4=EACA;レーン5=アンチパイン;レーン6=アプロチニン;レーン7=ベンズアミジンHCl;レーン8=キモスタチン;レーン9=EDTA;レーン10=NEM;レーン11=ロイペプチン;レーン12=ホスホラミドン;レーン13=トリプシン阻害剤;レーン14=ペプスタチン;レーン15=ベスタチン;およびレーン16=E−64。これらの結果により、タウプロテアーゼが、表6に示したような活性である阻害剤のクラスに基づいたセリンプロテアーゼであることが実証された。
【0264】
実施例11−タウラダーのTAMRA−FP標識
4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)を無水DMSO中で新たに調製した。(Sigma Chemical Co.)A8456−≧97%、分子量:239.69;9mg AEBSF/187.2μL DMSO=200mM。セリンヒドロラーゼFPプローブを、乾燥剤を有する小袋中で室温まで平衡化した。セリンヒドロラーゼFPプローブを100μLのDMSO中に溶解して0.1mMのストック溶液を作製した。試料を5μLチューブ中にアリコートし、−80℃の冷凍庫中に保存した。このアッセイに関して、試料を、室温にてAEBSFと1時間インキュベートし、次いで0.5μLのTAMRA−FPを加え(4.55μM最終)、混合し、室温にて4時間インキュベートした。20μLの2×試料緩衝液(BMEなし)を試料に加え、混合し、−80℃の冷凍庫中で一晩保存した。10μLの各試料を、10μLの2×試料緩衝液(+BME)を含有する別のセットのチューブに移し、混合し、サーマルリアクター上で「煮沸」プログラムで加熱した。残りの30μLの試料をそのままロードした(この試料は複数のバンドを有するので、2/3の試料を非還元レーンに注いだ)。試料を、Tris−グリシンを有する4〜20%のPAゲル、18−ウェルゲル(BioRad)上で泳動した。
【0265】
実施例12−AD脳からのタウのFP−TAMRA標識
この研究は、アルツハイマーの脳の検体由来のタウタンパク質に対する抗体を用いて免疫精製した活性セリンヒドロラーゼについてのプローブを用いたタンパク質の特異的標識を示し、タウタンパク質がセリンヒドロラーゼ活性を有することが示唆された。セリンヒドロラーゼは、セリンプロテアーゼを含む酵素のクラスを含む。セリンヒドロラーゼスーパーファミリーは、セリン求核試薬を含む触媒機構を共有する最大の公知の酵素ファミリーの1つである。フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)はセリンヒドロラーゼの活性部位セリンに不可逆的に結合して、それらの酵素活性を不活性化させ、プローブがそれらを標識することを防ぐ。PMSFでの処置後に減少した標識を有するバンドにおけるタンパク質は、活性セリンヒドロラーゼについてのプローブにより特異的に標識した(矢印により示した)。
【0266】
TPER緩衝液(ThermoFisher Scientific)、1mMのEDTA、1μg/mLのペプスタチンA、20mMのホスホラミドン、またはホスファターゼ阻害剤1×(ThermoFisher Scientific)中のDounce均質化によりAD脳からタンパク質を抽出した。20分間、10,000×gの遠心分離により溶解物を清浄した。ストレプトアビジン−アガロース(ThermoFisher Scientific)を使用して上清をビオチンについて枯渇させた。活性セリンヒドロラーゼに特異的なプローブ、蛍光カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)タグ(ThermoFisher Scientific)で標識したフルオロホスホネート(FP)を、2μMの最終濃度にて溶解物とインキュベートした。非特異的標識についての対照として、溶解物の一部をPMSF、FP−TAMRAプローブを使用する前にタウプロテアーゼを含むセリンヒドロラーゼの不可逆的阻害剤で処理した。ビオチン化モノクローナル抗体HT7(ThermoFisher Scientific)を使用して、ストレプトアビジンアガロースビーズ(ThermoFisher Scientific)を有する溶解物から全てのタウを捕捉した。抗体に結合し、ビーズにより捕捉されるタンパク質を、ジスルフィド還元剤β−メルカプトエタノール(BME)を有するまたは有さないSDS−PAGEにより分解した。Typhoonスキャナ(GE Healthcare)を用いて蛍光画像を捕捉した。レーン1:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSF処理なし;レーン2:タウ免疫枯渇後の溶解物、PMSFでPMSF処理した;レーン3:免疫捕捉したタンパク質、PMSF処理なし;レーン4:免疫捕捉したタンパク質、PMSF処理有り、でアッセイした。左のパネル−還元剤なし;右のパネル−ゲルをロードする前に還元剤を試料に加えた。
【0267】
AEBSFはセリンプロテアーゼ阻害剤である。阻害定数はPMSFおよびDFPのものと同様であった。AEBSFは、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、カリクレイン、およびトロンビンを阻害する。図15Aにおけるデータは、AEBSFもまた、タウプロテアーゼ活性を阻害することを示した。10μLの水を各試料に加え、HPLC分析のためのロードの前に混合した。試料の分析の前に2つのブランクをHPLC上で泳動した。FRETアッセイについての切断ペプチドの試験は、タウ441三量体(2)およびEnVisionプレートリーダー使用してOP−002をアッセイする。
【0268】
試料を37℃にて23時間インキュベートした。10μLの各試料を、ブラック96ウェルプレート中に40μLの25mMのTris−HCl pH7.4を含有するウェルに移し、混合したので、試料はウェルの底部を覆った。50μLの緩衝液を有する対照もまた利用した。EnVision(登録商標)上のゲインを10〜100に低下させてカウントを減少させたので、緩衝液のみのウェルは1単位のみであった。
【0269】
続いて得られたゲルを使用して、タウに対するモノクローナル抗体BT2(ThermoFisher Scientific)を用いて免疫ブロットを調製した。ゲルの免疫ブロットは、タウ特異的抗体により認識されるタウタンパク質の位置を示した。セリンヒドロラーゼプローブおよび同じ位置における免疫ブロットからの信号により、タウがセリンヒドロラーゼプローブにより標識されたという結論が支持された。しかしながら、免疫ブロットのために使用されるモノクローナル抗体がタウのみの単一のエピトープ(小さな領域)を認識したので、このエピトープを含有するタウの断片がこの抗体により認識される。
【0270】
実施例13−C末端抗体を用いたウェスタンブロット
結果により、C末端を切断した場合、信号が、タウのC末端の30アミノ酸領域におけるエピトープを有する抗体について損失したことが示された。タウのこの領域は最も容易に切断するように見え、インビボおよびADにおけるタウプロテアーゼ活性についての重要なバイオマーカーを表し得る。全タウの検出/C末端抗体を有する検出の比はADについての可能性のあるバイオマーカーである。
【0271】
図6Aから、精製したタウ4R2N単量体、二量体および三量体調製物を、緩衝液(25mMのTris−HCl pH7.4)中で37℃にて0、2および16時間インキュベートし、還元剤を有する試料緩衝液を有する4〜20%のポリアクリルアミドTris−HClゲル上で泳動した。左から、レーン1〜3−単量体、0、2、16時間のインキュベーション;レーン4〜6−二量体、0、2、16時間のインキュベーション;レーン7〜9−三量体、0、2、16時間のインキュベーション。GelCode(商標)Blue Safe(ThermoFisher Scientific)でゲルを染色し、タンパク質をPVDF膜(Merck Millipore,Billercia,MA)に移した。C末端に特異的な抗体、アミノ酸404〜441タウ4R2Nにおけるエピトープ(モノクローナルT46、Life Technologies,Grand Island,NY)を使用してタウ4R2Nタンパク質の部分消化から観測した断片を識別するために使用した免疫ブロットを実施した。ブロットを剥がし、N末端に対する抗体、アミノ酸83〜120タウ4R2Nにおけるエピトープ(モノクローナル抗体T14、Life Technologies,Grand Island,NY)を用いて再プローブした。
【0272】
実施例14−タウプロテアーゼ活性検出キット
この実施例は、タウプロテアーゼ阻害剤スクリーニングについて設計されるタウプロテアーゼ活性アッセイキットを記載する。それは、タウプロテアーゼ活性の効果的な検出のために必要とされる全ての試薬(陽性対照として使用するためのタウプロテアーゼの試料を含む)を提供する。このアッセイは、基質がタウプロテアーゼにより開裂された後に蛍光信号の増強が観測される蛍光エネルギー共鳴(FRET)の簡便な方法に基づく。
【0273】
試薬:
キットの例示的な市販の製剤は、96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットにおいて250の反応についての十分な試薬を提供する。
蛍光アッセイ緩衝液50mL
停止溶液15mL
アッセイ標準タウプロテアーゼ、1バイアル
7−メトキシクマリン−4−アセチル 0.5mg
タウペプチド断片334−342(OP−002)GGQVEVKSE(配列番号15)は、例えば、タウプロテアーゼスクリーニングアッセイについての基質であり、フルオロフォアおよびクエンチを含有するFRETベースの化合物スクリーニングアッセイのために使用され得るKS、KI、またはKMにより規定されるタウ切断部位のいずれかを例示し、KS部位におけるタウプロテアーゼにより開裂されると、蛍光信号が観測される。
【0274】
キットの市販の形態に含まれないが必要とされる機器および試薬:
蛍光光度計
蛍光アッセイについての96ウェルマイクロタイタープレート
ジメチルスルホキシド
保存/安定性:キットは乾燥氷上で輸送し、−20℃で保存する。最初の解凍後、蛍光アッセイ緩衝液および停止溶液は2〜8℃に保存するべきである。基質、酵素、および標準物の複数の冷凍−解凍サイクルは、キットの最適な実施に回避されるべきである。
【0275】
試薬調製:
以下に説明する試薬の体積は96ウェルプレート中で実施するアッセイについてである。異なるサイズのプレートまたはウェルについて、必要とされる試薬の量はそれに応じて調整され得る。
【0276】
タウプロテアーゼ基質溶液:0.5mLのDMSOをタウプロテアーゼ基質に加えることにより1mg/mL溶液を調製する。タウプロテアーゼ基質溶液をアリコートし、−20℃に保存する。
【0277】
アッセイを開始する直前に、タウプロテアーゼ基質溶液のアリコートを蛍光アッセイ緩衝液で10倍希釈する。ウェルを混合する。
【0278】
タウプロテアーゼ溶液:アッセイを開始する直前に、タウプロテアーゼを蛍光アッセイ緩衝液で10倍希釈する。ウェルを混合する。
【0279】
アッセイ標準溶液:アッセイを開始する直前に、アッセイ標準物を蛍光アッセイ緩衝液で10倍希釈する。ウェルを混合する。
【0280】
アッセイプロトコル:
320nmにおける励起、および405nmにおける発光を用いてウェルプレートリーダーモードで蛍光光度計を設定する。全ての成分(タウプロテアーゼ酵素溶液を除く)を室温にする。記載しように成分を蛍光光度計96ウェルプレートに加える。穏やかなピペット操作によりウェルを混合する。読み取りの直前にタウプロテアーゼ酵素溶液を加える。
反応1:陰性対照(酵素なし)反応および標準曲線ブランク。「ブランク」反応チューブは標準物のみに起因して蛍光を反映する。
反応2:アッセイキットに供給される陽性対照。
反応3:酵素阻害試験。
反応4:試料酵素活性試験。
【0281】
酵素を加えた直後に蛍光を読み取る。これは「時間ゼロ」の読み取りである。ウェルにおける信号は酵素の付加とこの最初の読み取りとの間で増加し得る。プレートをパラフィルムで覆い、37℃にて2時間インキュベートする。「時間ゼロ」+2時間で信号を読み取る。読み取り前にプレートを室温にすべきである。任意選択:読み取りを行った後、40μLの停止溶液を加える。停止溶液の付加は少なくとも24時間、信号を安定化する。
【0282】
データ分析:
このアッセイは、37℃にて1〜2時間の間、酵素が5〜20%の基質を蛍光産物に変換するように設計する。標準曲線を決定するために、2時間で全ての信号読み取り(反応5〜8)からブランク値の蛍光単位(FU)(反応1)を引く。蛍光単位を各標準物に存在するpmolに対してプロットする。Perkin Elmerluminescence分光計ISSOB、励起320nm(スリット12nm)および発光405nm(スリット12nm)を使用して典型的な標準曲線y=1.3736×+8.7973を得た。
【0283】
基質開裂のパーセンテージの計算
基質開裂のパーセンテージはチューブ8の蛍光信号読み取りに基づく。この読み取りは500pmol標準物からの蛍光を反映し、これは、反応中の基質の量が1,000pmolであるので、50%の開裂した産物を示す。試験試料中の基質開裂のパーセンテージを計算するために、ブランクのFU値(反応1)を引き、以下の式に従う。S=標準曲線から得られる試験試料(反応4)中の蛍光産物の量(pmol)。
開裂%=S(pmol)
500(pmol)
タウプロテアーゼ阻害剤のアッセイ
酵素活性阻害反応は反応1〜3(すなわち、ブランク、酵素活性反応、および阻害反応チューブ)を使用して設定した。反応3は異なる濃度の阻害剤を有する少しのウェルを含むように拡大し、反応を37℃にて2時間実施した。
【0284】
実施例15−タウプロテアーゼUmuDのプロテアーゼ相同性
タウ268His−タウ385Lysは、UmuDに対して90%より多いコンセンサスにおいて35%相同性を示し、セリンリシンプロテアーゼは細菌SOS反応に含まれた。UmuDをRecA結合およびN末端テイルから24−aa断片を開裂する自己タンパク質分解反応により活性化させた。100%マッチを有するアミノ酸を、タウ(上側配列)とUmuDとの間にアミノ酸省略形として与える。
【0285】
実施例16−プロテアーゼ活性タウバリアント
タウタンパク質4R2N完全長
【表13】
【0286】
タウプロテアーゼバリアント:
Lys274、Lys280、Lys281、Lys311、Lys340およびLys343(太字、下線タイプで上記の完全長配列に示す)を、触媒部位における活性部位残基について評価した。Lys274はβ−ターンとβ−シート構造との間であり、Cys291とCys322との間にジスルフィド結合および/またはヘキサペプチドモチーフPHF6とPHF6との間に相互作用が存在する場合、推定活性部位Ser305に近接し得る。隣接するGly273はまた、タウオパチー前頭側頭認知症における変異部位である。
【0287】
Lys280は前頭側頭認知症における変異部位であり、それは欠失され得、Lys281はこの状況においてLys280に置換し得る。この位置におけるリシンの冗長により、この位置におけるこの残基についての有意性が示唆される。これらのリシンはまた、PHF6ヘキサペプチドモチーフを形成するβ−シートのカルボキシル末端に位置する。Lys311はPHF6ヘキサペプチドモチーフを形成するβ−シートのカルボキシル末端に位置する。Lys340は、自己触媒タンパク質分解により形成されるタウ断片のカルボキシル末端に見出される。Lys343は相同セリンプロテアーゼUmuDにおける活性部位リシンに対応する。
【0288】
この実施例はまた、タウタンパク質の野生型4R2Nアイソフォームにおいて単一のアミノ酸置換を含有するタウプロテアーゼバリアントを記載する。番号付けは、配列番号6に示すタウの野生型4R2Nアイソフォームに基づく。
【0289】
タウタンパク質におけるFTD変異体
R5H、R5L、K257T、I260V、L266V、G272V、G273R、N279K、ΔK280、L284V、N296A、N296H、P301L、P301S、P301T、G303V、G304S、S305I、S305N、L315R、K317M、S320F、P332S、G335S、G335V、Q336R、V337M、E342V、S352L、S356T、V363I、K369I、G389R、R406W、T427M
【0290】
37個のコード領域変異体を有するFTDにおける29個の変異部位のうちの20個は、リシン、セリン、またはイソロイシンの除去または挿入に関する。19個は、26個のコード領域変異体を有するタウ切断タンパク質TP−210およびTP−99に存在する。23個のコード変異体はタウプロテアーゼ切断部位または活性部位セリンに対して直接または潜在的な影響を有する:
【0291】
2つは推定タウプロテアーゼ開裂部位を除去している:K257Tは257KS258を除去しており;I260Vは259KI260を除去している。1つは推定タウプロテアーゼ開裂部位:P332Sを作製している。2つはセリンを置換し、そのうちの1つは触媒三残基、S305IおよびS305Nの一部であり得る。6個はタウプロテアーゼ開裂部位に隣接する(K257Tは259KI260に隣接し;I260Vは257KS258に隣接し;K369Iは370KI371に隣接し;E342Vは340KS341に隣接し;S352Lは353KI354に隣接し;K369Iは370KI371に隣接する)。17個は1つ以上のアミノ酸により潜在的開裂部位を作製または除去または隣接している(R5H&R5L;L266V;G272V G273R;N279K、ΔK280、P301L、P301S、P301T、L315R、K317M、S320F、Q336R、E342V、S352L、G389R、およびR406W)。
【0292】
対の螺旋状線維領域:
PHF6における2つの変異:N279KおよびΔK280
【0293】
Pro−Gly反復領域:
グリシン反復と共にプロリンは、β鎖(β屈曲)を接続する鋭いターンにおいて一般的に見出される。タウ81は3つのこのような領域270PGGG273、301PGGG304、332PGGG335を含有する。これらの3つの領域において、FTDにおいて7個のコード変異部位および全部で10個のコード変異が存在する。変異はG272V、G273R、N279K、P301L、P301S、P301T、G304S、P332S、G335S、およびG335Vである。さらに、Pro−Gly反復領域の2つのC末端側における第1のアミノ酸位置において全部で4つの変異(S305I、S305N、S305S、およびQ336R)が存在する。さらに、Pro−Gly反復領域の1つのC末端側の第2のアミノ酸位置においてさらなる変異(V337M)が存在する。
【0294】
4個はタウプロテアーゼとの見かけの会合を有さない:
L284L、ΔN296、N296A、およびN296H
【0295】
Ser285からAla285のアミノ酸置換を有するタウ4R2N:
タウ4R2N S285A
【表14】
【0296】
Ser285(太字、下線)を推定活性部位セリンとして選択した。なぜなら、それは、タウオパチー前頭側頭認知症における変異についての部位である残基Leu284の後であるからである。Leu284はまた、セリンプロテアーゼumuDの活性部位領域に対してこの領域のアラインメントにおいて保存される。
【0297】
Ser305からAla305のアミノ酸置換を有するタウ4R2N:
タウ4R2N S305A
【表15】
Ser305(太字、下線)を推定活性部位セリンとして選択した。なぜなら、それは、β−ターンとβ−シート構造の間にも配置されるumudにおける相同活性部位領域と同じ領域内であるからである。Ser305はまた、タウオパチー前頭側頭認知症における変異のための頻繁な部位である。Ser305直前のβ−ターン領域(Pro301−Gly304)は前頭側頭認知症における変異のための「ホットスポット」である。Ser305はまた、タウ3Rアイソフォームにおいてリシンと置換される。タウ4Rアイソフォームの過剰発現はタウオパチーと頻繁に会合する。Ser305のリン酸化はまた、アルツハイマー病において調節される。
【0298】
Ser316からAla316のアミノ酸置換を有するタウ4R2N
タウ4R2N S316A
【表16】
Ser316(太字、下線)を推定活性部位セリンとして選択した。なぜならそれは、残基Leu315とLys317との間に位置するからであり、その両方はタウオパチー前頭側頭認知症における変異のための部位である。
【0299】
開示されるポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列の要約
配列番号1 TP−201のポリペプチド配列
配列番号2 TP−118のポリペプチド配列
配列番号3 TP−99のポリペプチド配列
配列番号4 TP−83のポリペプチド配列
配列番号5 TP−81のポリペプチド配列
配列番号6 完全長タウタンパク質のポリペプチド配列
配列番号7 TP−210をコードするDNA配列
配列番号8 TP−118をコードするDNA配列
配列番号9 TP−99をコードするDNA配列
配列番号10 TP−83をコードするDNA配列
配列番号11 TP−81をコードするDNA配列
配列番号12 完全長タウタンパク質をコードするDNA配列
配列番号13 ヒトα−エンドルフィンペプチド
配列番号14 ヒトAPPペプチドaa667−676
配列番号15 タウペプチドOP−2
配列番号16 タウペプチドOP−1
配列番号17 ヒトAPPタンパク質
配列番号18 断片F3のN末端配列
配列番号19 タウプロテアーゼのaa335−353
配列番号20 ヒトAPPペプチド断片aa155−169
配列番号21 ヒトAPPペプチド断片aa663−678
配列番号22 ヒトAPPペプチド断片aa746−759
配列番号23 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号24 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号25 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号26 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号27 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号28 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号29 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号30 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号31 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号32 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号33 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号34 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号35 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号36 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号37 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号38 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号39 KS、KTおよびKIにおける切断からのタウ4R2N断片
配列番号40 タウ4R2N由来プロテアーゼバリアントS285A置換
配列番号41 タウ4R2N由来プロテアーゼバリアントS305A置換
配列番号42 タウ4R2N由来プロテアーゼバリアントS316A置換
【0300】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものに対する例示的な手順または他の詳細な補足を与える限り、本明細書に参照により具体的に組み込まれる。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0301】
本明細書に開示され、特許請求される組成物および方法の全ては、本開示を考慮して過度の実験を行わずに作製され、実施され得る。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、その変更が、本発明の概念、精神および範囲から逸脱せずに、組成物および方法ならびに本明細書に記載される方法の工程または工程の順序に適用されてもよいことは当業者に明らかであろう。より具体的には、同じまたは類似の結果が達成される限り、化学的および生理学的の両方に関連する特定の因子が本明細書に記載される因子と置き換えられてもよいことは理解されるであろう。当業者に自明である全てのこのような類似の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]