(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記状況検知部は、前記ボンネットの開閉によって生じる、前記センサと前記制御装置との間における受信電力レベルの変動量に基づいて、前記ボンネットの開閉を検知することを特徴とする、請求項4に記載の車載センサネットワークシステム。
前記車両のメンテナンスが行われる状況においても、前記高応答センサ群に属する全ての前記センサとの間で前記中継機を介することなく通信を行い得るような位置に、前記制御装置が配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の車載センサネットワークシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る車載センサネットワークシステムNSの構成について説明する。
図1は、車載センサネットワークシステムNSが搭載された車両10の前方部分を上方側から見て描いた図であって、車両10のエンジンルーム内、すなわち、ボンネット40(
図1では不図示)の下方側に配置された機器の配置を模式的に示す図である。
【0014】
車載センサネットワークシステムNSは、複数のセンサ110、120、130、140と、制御装置100と、開閉センサ30と、を備えている。以下の説明においては、センサ110、120、130、140を総じて「センサ110等」と表記することがある。
【0015】
車両10のエンジンルーム内には、上記の車載センサネットワークシステムNSの他に、内燃機関20等の機器が多数配置されている。センサ110等は、これら機器の間の空間に分散配置されている。尚、
図1におけるセンサ110等の個数やそれぞれの位置は、あくまで一例として示されるものである。センサ110等は、
図1に示される位置とは異なる位置に配置されていてもよく、5個以上配置されていてもよい。
【0016】
それぞれのセンサ110等は、車両10の状態を検知するためのセンサである。例えば空気流量を測定するエアフロメータや、コモンレール(不図示)内の燃料の圧力を測定するレール圧センサである。また、内燃機関20から排出される排ガスの酸素濃度を測定するA/Fセンサや、燃料の温度を測定する温度センサであってもよい。本発明を実施するにあたっては、センサ110等の種類やその測定対象は特に限定されない。
【0017】
センサ110等は、内部に無線通信端末を備えており、無線通信により制御装置100に測定値を送信するよう構成されている。尚、センサ110等が備える無線通信端末は、ZigBeeの規格に準拠した所謂マルチホップ通信を行うことが可能となっている。このため、センサ110等の全ての測定値が制御装置100に直接伝達されるような接続経路(
図1)で無線通信が行われる他、例えば、センサ120の測定値が、センサ110を経由して制御装置100に伝達されるような接続経路(
図4)で無線通信を行うことも可能となっている。
【0018】
尚、センサ110等から測定値そのものが送信されるのではなく、測定値に関わる情報(例えば、測定値を間接的に示す信号等)が送信されることとしてもよい。
【0019】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムとして構成されており、センサ110等からの測定値に基づいて車両10の制御(例えば燃料噴射制御)を行うものである。また、制御装置100は、車載センサネットワークシステムNSの全体の動作をも統括制御する。
【0020】
制御装置100は、センサ110等と同様に、内部に無線通信端末を備えている。これにより、制御装置100とセンサ110等との間で無線通信が行われる。
【0021】
開閉センサ30は、ボンネット40の開閉状態を検知するためのセンサである。ボンネット40の開閉状態は、開閉センサ30により検知され、制御装置100へと伝達される。本実施形態においては、開閉センサ30と制御装置100との間は通信ケーブル(不図示)により物理的に接続されており、開閉状態の伝達は当該通信ケーブルを介して行われる。尚、このような態様に替えて、開閉センサ30と制御装置100との間でも無線通信が行われるような態様であってもよい。
【0022】
ボンネット40が開かれている状況は、車両10のメンテナンスが行われる状況、ということができる。このため、ボンネット40の開閉状況を検知する開閉センサ30は、車両10のメンテナンスが行われる状況となったことを検知するための「状況検知部」に該当するものである。
【0023】
本実施形態では、ボンネット40が閉じられている通常時には、
図1に矢印で示されるような接続経路で無線通信が行われる。すなわち、センサ110等のそれぞれと制御装置100との間が、中継機のような他の機器を経由することなく直接繋がるような接続経路で無線通信が行われる。このため、無線通信において生じる遅延は最も少ない状態となっている。
図1に矢印で示される接続経路を、以下では「第1接続経路」とも称する。
【0024】
ところで、
図1に示されるように、第1接続経路の一部(例えばセンサ120と制御装置100とを繋ぐ経路)は内燃機関20の位置と交差する経路となっている。このような経路でも、内燃機関20により電波が遮られることなく通信が行われる理由について、
図2を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、車両10の前方側からエンジンルーム内を見た場合の構成を、模式的に描いたものである。
図2に示されるように、センサ120と制御装置100とを直線的に結ぶような経路(
図2で点線で示される経路)の途中には、内燃機関20が介在している。このため、当該経路での無線通信を行うことはできない。
【0026】
しかしながら、通常時においてはエンジンルームの上方側にボンネット40が存在するので、センサ120から送信された信号(電波)の一部が、ボンネット40の裏面で反射された後に制御装置100に到達することとなる。このような経路の途中には内燃機関20が介在しない。このため、センサ120と制御装置100との間では無線通信を行うことが可能となっている。センサ130と制御装置100との間の無線通信についても同様である。
【0027】
このように、通常時における第1接続経路では、センサ110等のそれぞれと制御装置100との間の無線通信が、直接、又はボンネット40での反射を経由して行われる。
図3に示されるように、センサ110等の全ては、制御装置100に対して互いに同じ階層で接続された状態となっている。
【0028】
ボンネット40が開かれて、車両10のメンテナンスが行われる状況となったときには、センサ110等や制御装置100の上方側にはボンネット40が存在しない。このため、
図2に示されるような反射を利用した経路での通信を行うことができなくなってしまう。そこで、本実施形態では、開閉センサ30によりボンネット40が開かれたことが検知されると、センサ110等と制御装置100との間における無線通信の接続経路が変更される。
図4には、変更後における接続経路が模式的に示されている。
【0029】
センサ110等のうち、制御装置100との間に内燃機関20が存在しないような位置に配置されているもの(センサ110、140)は、ボンネット40の開閉状態によることなく、制御装置100と直接通信を行うことができる。このため、これらは
図1に示される場合と同様に、制御装置100と直接繋がるような経路で通信を行う。以下においては、このような位置に配置された一群のセンサのことを総じて「第1センサ群」とも称する。
【0030】
一方、センサ110等のうち、制御装置100との間に内燃機関20が存在するような位置に配置されているもの(センサ120、130)は、既に述べたように、ボンネット40が開いている状態においては制御装置100と直接通信することができない。このため、第1センサ群に属するセンサを介して制御装置100との通信を行う。
【0031】
例えば、センサ120による測定値は、センサ120とセンサ110との間における無線通信によりセンサ110に一旦送信される。その後、当該測定値は、センサ110と制御装置100との間における無線通信により制御装置100に送信される。このように、センサ110が無線通信の中継機として機能することにより、内燃機関20を迂回するような接続経路でセンサ120と制御装置100との無線通信が行われる。
【0032】
センサ130についても同様である。センサ130による測定値は、センサ130とセンサ140との間における無線通信によりセンサ140に一旦送信される。その後、当該測定値は、センサ140と制御装置100との間における無線通信により制御装置100に送信される。このように、センサ140が無線通信の中継機として機能することにより、内燃機関20を迂回するような接続経路でセンサ130と制御装置100との無線通信が行われる。
【0033】
第1センサ群に属するセンサを中継機としながら、制御装置100に測定値を送信する一群のセンサ(センサ120、130)のことを総じて「第2センサ群」とも称する。また、
図4に実線の矢印で示される接続経路を、以下では「第2接続経路」とも称する。
【0034】
このように、第2接続経路に切り換えられた状態では、センサ110等のうち第2センサ群に属するものと制御装置100との間の無線通信が、内燃機関20を迂回するような経路で行われる。
図5に示されるように、第2センサ群に属するセンサ120及びセンサ130は、第1センサ群に属するセンサ110及びセンサ140とは異なる(1段下の)階層で、制御装置100に対して接続された状態となっている。
【0035】
第1接続経路と第2接続経路との切り換えを行うために行われる処理について、
図6を参照しながら説明する。
図6に示される一連の処理は、一定の周期が経過する毎に制御装置100において繰り返し実行されている。
【0036】
最初のステップS01では、車両10のメンテナンスが行われる状況であるか否かが判定される。かかる判定は、開閉センサ30により検知されたボンネット40の開閉状態に基づいて行われる。ボンネット40が閉じられている状態であれば、メンテナンスが行われる状況ではないと判定され、ステップS02に移行する。ボンネット40が開かれている状態であれば、メンテナンスが行われる状況であると判定され、ステップS03に移行する。
【0037】
ステップS02では、センサ110等と制御装置100との間における無線通信の経路が、
図1に示される第1接続経路となるように切り換えられる。これにより、通信の遅延が最小化され、安定した無線通信が行われる。
【0038】
ステップS03では、センサ110等と制御装置100との間における無線通信の経路が、
図4に示される第2接続経路となるように切り換えられる。これにより、ボンネット40の反射が無くなって通信環境が変化した後においても、引き続き安定した無線通信が行われる。
【0039】
本実施形態では、ボンネット40が開かれた状態の接続経路である第2接続経路においては、第1センサ群に属するセンサ110、140が中継機としても機能するように構成されている。このような態様に替えて、(センサとの兼用ではない)専用の中継機がエンジンルーム内に配置されているような態様であってもよい。つまり、第2センサ群に属するセンサ120、130と制御装置100との間における無線通信が、ボンネット40が開かれた状態では当該専用の中継機を介して行われるような態様であってもよい。
【0040】
また、開閉センサ30のように、ボンネット40の開閉を検知するための専用のセンサが設けられておらず、ボンネット40の開閉がセンサ120等により検知されるような態様であってもよい。
【0041】
例えば、センサ120と制御装置100とが、
図1のように直接通信を行っているときに、ボンネット40が開かれた状態になったとする。このとき、ボンネット40での反射による電波の伝達が行われなくなるので、センサ120が制御装置100から受信する信号の強度(受信電力レベル)は低下する。センサ120は、このように信号の強度が低下したこと(例えば、所定の閾値を下回ったこと)をもって、ボンネット40が開かれたことを検知することができる。
【0042】
尚、上記のようにボンネット40の開閉を検知するために用いられるセンサは、センサ120以外の他のセンサであってもよい。例えば、第1センサ群に属するセンサ110やセンサ140であってもよい。つまり、センサとしての本来の機能に加えて、ボンネット40の開閉を検知するための機能と、中継機としての機能とが、センサ110等の1つに兼ね備えられるような態様であってもよい。
【0043】
センサ110等の中には、例えば空気流量を測定するエアフロメータや、コモンレール内の燃料の圧力を測定するレール圧センサのように、制御装置100との間で行われる通信の周期が比較的短い(1msec程度)ものがある。このように高応答が求められる一群のセンサのことを、以下では「高応答センサ群」とも称する。
【0044】
また、例えば内燃機関20から排出される排ガスの酸素濃度を測定するA/Fセンサや、燃料の温度を測定する温度センサのように、制御装置100との間で行われる通信の周期が比較的長い(100msec程度)ものもある。このように高応答が求められない一群のセンサのことを、以下では「低応答センサ群」とも称する。
【0045】
本実施形態では、センサ110及びセンサ140が高応答センサ群に属しており、センサ120及びセンサ130が低応答センサ群に属している。つまり、高応答センサ群に属するセンサは、ボンネット40の開閉に拘らず、制御装置100と直接通信し得るような位置に配置されている。換言すれば、制御装置100は、高応答センサ群に属するセンサと常に直接(中継機を介することなく)通信し得るような位置に配置されている。このため、第1接続経路と第2接続経路のどちらで無線通信が行われる場合でも、高応答センサ群に属するセンサと制御装置100との間における無線通信において遅延が生じてしまうことが防止される。
【0046】
ところで、車両10のメンテナンスが行われる状況になったことによる通信環境の変化は、ボンネット40が閉じられた状態のままであったとしても生じる場合がある。
【0047】
図7には、センサ120と制御装置100との間で行われる通信の経路であって、
図2で示されるものとは別の経路が示されている。
図7の実線の矢印で示されるように、車両10が路面RD上にあるときには、センサ120から送信された信号(電波)の一部は、路面RDで反射された後に制御装置100に向かい、制御装置100に到達する。
【0048】
ところが、メンテナンスのために車両10がジャッキアップされ、車両10と路面RDとの距離が離れてしまうと、
図7に示されるような反射を利用した経路での通信を行うことができなくなってしまう。その結果、ボンネット40が閉じられた状態のままであったとしても、センサ120と制御装置100との間における無線通信の信号強度が低下することがあり、これにより直接の無線通信ができなくなってしまうことがある。
【0049】
従って、車両10のメンテナンスが行われる状況であるか否かの判定を、ボンネット40の開閉を検知する以外の方法により行う方が望ましい場合もある。
【0050】
例えば、メンテナンスの開始をシステムに通知するための操作ボタンが車両10に設けられており、メンテナンスが行われる際には、作業者が当該操作ボタンを予め操作することとしてもよい。この場合、操作ボタンが操作されると、それに伴って第1接続経路から第2接続経路への切り換えが行われることとなる。
【0051】
本実施形態では、車両10のメンテナスが行われる際の接続経路が、
図5に示されるような2つの階層に分かれるような接続経路となっている。このような態様に替えて、3つ以上の階層に分かれるような接続経路に切り換えられてもよい。つまり、メンテナンス時には、センサ110等の一部が2つ以上の中継機(他のセンサ)を経由して制御装置100との通信を行うような状態、に切り換えられることとしてもよい。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。