(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロッド側主管路と作動油タンクとの間を接続するタンク管路には、前記ロッド側主管路の過剰圧を前記作動油タンクにリリーフするリリーフ弁を設けてなる請求項1に記載の運搬車両。
前記接続管路には、前記切換弁と前記ロッド側主管路または前記ロッド側油室との間で前記接続管路の流路面積を減少させる絞りを設けてなる請求項1に記載の運搬車両。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る運搬車両の実施の形態を、鉱山で採掘した砕石物、土砂を運搬するダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1ないし
図3は、実施の形態を示している。
図1において、運搬車両の代表例としてのダンプトラック1は、車輪である前輪2および後輪3によって走行が可能な車体4と、該車体4上に後部側を支点として上,下方向に傾転(起伏)可能に設けられたベッセル5とを含んで構成されている。
【0016】
ベッセル5は、砕石物または土砂のような荷物(以下、土砂6という)を多量に積載するため、例えば全長が10〜13メートルにも及ぶ大型の容器として形成されている。ベッセル5は、車体4上に後部側を支点として上,下方向に傾転可能に設けられている。即ち、ベッセル5の後部側は、車体4の後部側に連結ピン7を介して傾転可能に連結されている。ベッセル5の前部側は、後述のホイストシリンダ10を伸長または縮小させることにより、連結ピン7の位置を支点として上,下方向に昇降(傾斜)される。
【0017】
キャブ8は、車体4の前部側に設けられている。キャブ8は、ダンプトラック1のオペレータが乗降する運転室を形成している。キャブ8の内部には、運転席、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドル(いずれも図示せず)、後述の操作レバー38A(
図2および
図3参照)等が設けられている。
【0018】
原動機としてのエンジン9は、例えば大型のディーゼルエンジンにより構成されている。エンジン9は、キャブ8の下側に位置して車体4内に設けられている。エンジン9は、後述のメイン油圧ポンプ11およびパイロット油圧ポンプ32(
図2および
図3参照)等を回転駆動する。
【0019】
左,右で一対のホイストシリンダ10は、ベッセル5と車体4との間に伸長または縮小可能に設けられている。
図2および
図3に示すように、ホイストシリンダ10は、多段式(例えば、2段式)の油圧シリンダ、いわゆるテレスコピック式油圧シリンダから構成されている。即ち、ホイストシリンダ10は、外側に位置する筒状の外筒部10Aと、一端が該外筒部10A内に伸長または縮小可能に挿入され他端が該外筒部10A外に突出した筒状の内筒部10Bと、一端が該内筒部10B内に伸長または縮小可能に挿入され他端が該内筒部10B外に突出したロッド10Cと、該ロッド10Cの一端側に設けられ内筒部10B内を摺動するピストン10Dとにより構成されている。
【0020】
ホイストシリンダ10のシリンダとなる外筒部10Aの内部は、内筒部10B、ロッド10Cおよびピストン10Dによりロッド側油室10E,10Fとボトム側油室10Gとの3室に画成されている。この場合、ロッド側油室10Fは、内筒部10Bに設けられたポート10Hを介してロッド側油室10Eと連通されている。ホイストシリンダ10は、内筒部10Bとロッド10Cが伸長または縮小することにより、ベッセル5を、後部側の支点を中心に上向きまたは下向きに傾転(傾斜)させるものである。
【0021】
具体的には、ホイストシリンダ10は、メイン油圧ポンプ11からボトム側油室10G内に圧油が供給されたときに、内筒部10Bがロッド10Cと一緒に下向きに伸長し、内筒部10Bが最大伸長したときには、さらにロッド10Cのみが下向きに最大伸長位置まで伸長する。これにより、ホイストシリンダ10は、連結ピン7を支点としてベッセル5を斜め後方へと傾斜した上げ位置(排土位置)へと回動(傾転)させる。
【0022】
一方、ホイストシリンダ10は、ロッド10Cが最大伸長した状態でメイン油圧ポンプ11からロッド側油室10E内に圧油が供給されると、まずロッド10Cのみが縮小し、その後は内筒部10Bがロッド10Cと一緒に最大縮小位置まで縮小する。これにより、ホイストシリンダ10は、連結ピン7を支点としてベッセル5を下向きに下降した下げ位置(走行位置)へと回動(傾転)させる。
【0023】
次に、ホイストシリンダ10を駆動するための油圧回路について、
図2および
図3を参照しつつ説明する。この場合、
図2は、制御弁装置17が中立位置(N)の状態を示し、
図3は、制御弁装置17が浮き位置(F)の状態を示している。
【0024】
メイン油圧ポンプ11(以下、油圧ポンプ11という)は、作動油タンク12に貯溜された作動油を圧油として吐出する。油圧ポンプ11は、作動油を貯留する作動油タンク12と共に、ホイストシリンダ10に圧油を供給,排出する油圧源(第1の油圧源)を構成している。
図1に示すように、作動油タンク12は、ベッセル5の下方に位置して車体4の側面に取付けられている。
【0025】
作動油タンク12内に収容された作動油は、油圧ポンプ11がエンジン9により回転駆動されるときに、油圧ポンプ11に吸込まれる。油圧ポンプ11の吐出側からは、高圧の圧油がポンプ管路13内に吐出される。ポンプ管路13は、油圧ポンプ11と後述する制御弁装置17との間を接続するものである。一方、ホイストシリンダ10からの戻り油は、低圧の戻り管路14を介して作動油タンク12へと排出される。戻り管路14は、油圧ポンプ11から吐出され制御弁装置17を通った圧油を作動油タンク12に戻すものである。
【0026】
ロッド側主管路15は、制御弁装置17とホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fとを接続している。ボトム側主管路16は、制御弁装置17とホイストシリンダ10のボトム側油室10Gとを接続している。これらロッド側主管路15およびボトム側主管路16は、制御弁装置17を介して油圧源(油圧ポンプ11、作動油タンク12)にそれぞれ接続されており、アクチュエータ管路となる一対の主管路を構成している。
【0027】
ロッド側主管路15は、油圧ポンプ11からの圧油を、制御弁装置17を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給する。また、ロッド側主管路15は、ロッド側油室10E,10Fの圧油を、制御弁装置17を介して作動油タンク12に排出する。一方、ボトム側主管路16は、油圧ポンプ11からの圧油を、制御弁装置17を介してホイストシリンダ10のボトム側油室10Gに供給する。また、ボトム側主管路16は、ボトム側油室10Gの圧油を、制御弁装置17を介して作動油タンク12に排出する。
【0028】
制御弁装置17は、油圧源(油圧ポンプ11、作動油タンク12)とホイストシリンダ10との間に設けられている。制御弁装置17は、ホイストシリンダ10に対する圧油の供給と排出を制御するものである。このために、制御弁装置17は、高圧側油路18、低圧側油路19,20、センタバイパス油路21、方向制御弁としての第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23、アクチュエータ接続油路24A,24B,25A,25B、迂回油路26A,26B,27A,27B、チェック弁28A,28B,30A,30B、リリーフ弁29A,29Bを含んで構成されている。
【0029】
この場合、第1の方向制御弁22と第2の方向制御弁23は、高圧側油路18、低圧側油路19,20、センタバイパス油路21を介して互いにパラレル接続されている。換言すれば、制御弁装置17を構成する方向制御弁は、油圧ポンプ11とホイストシリンダ10との間でパラレル接続された第1の方向制御弁22と第2の方向制御弁23とにより構成されている。
【0030】
高圧側油路18は、一端がポンプ管路13を介して油圧ポンプ11の吐出側に接続され、他端が第2の方向制御弁23に接続されている。また、高圧側油路18は、途中部位から分岐して第1の方向制御弁22に接続されている。一方の低圧側油路19は、第1の方向制御弁22の戻り側に配置され、後述するアクチュエータ接続油路24A,24Bを、戻り管路14を介して作動油タンク12に接続させるものである。他方の低圧側油路20は、第2の方向制御弁23の戻り側に配置され、後述するアクチュエータ接続油路25Bを、戻り管路14を介して作動油タンク12に接続させるものである。
【0031】
センタバイパス油路21は、第1,第2の方向制御弁22,23が共に中立位置(N)にあるとき、および、第1の方向制御弁22が浮き位置(F)にあり第2の方向制御弁23が中立位置(N)にあるときに、ポンプ管路13と戻り管路14とを連通させる。これにより、油圧ポンプ11はアンロード状態となり、その吐出圧力(ポンプ管路13内の圧力)はタンク圧に近い低圧状態に保たれる。
【0032】
第1の方向制御弁22の流出側には、一対のアクチュエータ接続油路24A,24Bが設けられている。アクチュエータ接続油路24A,24Bは、ロッド側主管路15またはボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10F、ボトム側油室10Gにそれぞれ接続されている。これと共に、アクチュエータ接続油路24A,24Bは、後述する第1の迂回油路26A,26Bを介して戻り管路14(作動油タンク12)にそれぞれ接続されている。
【0033】
第2の方向制御弁23の流出側には、一対のアクチュエータ接続油路25A,25Bが設けられている。アクチュエータ接続油路25A,25Bは、ロッド側主管路15またはボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10F、ボトム側油室10Gにそれぞれ接続されている。これと共に、アクチュエータ接続油路25A,25Bは、後述する第2の迂回油路27A,27Bを介して戻り管路14(作動油タンク12)にそれぞれ接続されている。
【0034】
第1の方向制御弁22と第2の方向制御弁23は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁によりそれぞれ構成されている。第1の方向制御弁22は、一対の油圧パイロット部22A,22Bを有している。第1の方向制御弁22は、後述する上げ操作用の電磁弁35から油圧パイロット部22Aにパイロット圧が供給されると、中立位置(N)から上げ位置(R)に切換えられる。一方、第1の方向制御弁22は、後述する浮き操作用の電磁弁37から油圧パイロット部22Bにパイロット圧が供給されたときには、中立位置(N)から浮き位置(F)へと切換えられる。即ち、第1の方向制御弁22は、中立位置(N)、上げ位置(R)および浮き位置(F)のうちいずれかの位置に切換わる構成となっている。
【0035】
第2の方向制御弁23は、一対の油圧パイロット部23A,23Bを有している。第2の方向制御弁23は、上げ操作用の電磁弁35からパイロット圧が油圧パイロット部23Aに供給されると、中立位置(N)から上げ位置(R)に切換えられる。一方、第2の方向制御弁23は、後述する下げ操作用の電磁弁36から油圧パイロット部23Bにパイロット圧が供給されたときには、中立位置(N)から下げ位置(L)へと切換えられる。即ち、第2の方向制御弁23は、中立位置(N)、上げ位置(R)および下げ位置(L)のうちいずれかの位置に切換わる構成となっている。
【0036】
このように、制御弁装置17の方向制御弁となる第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23は、中立位置(N)、上げ位置(R)、下げ位置(L)および浮き位置(F)からなる複数の切換位置を有している。そして、第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23は、各切換位置のうちのいずれかの位置に切換えられる。
【0037】
ここで、制御弁装置17が中立位置(N)にある場合について述べる。この場合は、
図2に示すように、第1,第2の方向制御弁22,23は、共に中立位置(N)に配置されることにより、ホイストシリンダ10の動きを止めベッセル5を保持する保持位置となる。この保持位置となる中立位置(N)では、ホイストシリンダ10に対するアクチュエータ接続油路24A,24Bとアクチュエータ接続油路25A,25Bとを介した圧油の供給,排出が停止される。
【0038】
制御弁装置17が上げ位置となる場合について述べる。この場合には、後述の上げ操作用の電磁弁35から第1,第2の方向制御弁22,23の油圧パイロット部22A,23Aにパイロット圧を供給し、第1,第2の方向制御弁22,23を共に中立位置(N)から上げ位置(R)に切換える。第1,第2の方向制御弁22,23が上げ位置(R)になると、油圧ポンプ11からの圧油は、ポンプ管路13、高圧側油路18、第1,第2の方向制御弁22,23、アクチュエータ接続油路24B,25B、ボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のボトム側油室10G内に供給される。
【0039】
このとき、ロッド側油室10E,10F内の圧油は、第1の方向制御弁22が上げ位置(R)に切換わることにより、ロッド側主管路15、アクチュエータ接続油路24A、第1の方向制御弁22、低圧側油路19および戻り管路14を介して作動油タンク12に戻される。これにより、ホイストシリンダ10の内筒部10Bおよび/またはロッド10Cは、ボトム側油室10G内の圧油により伸長してベッセル5を排出位置へと傾転させる。即ち、このときに制御弁装置17の第1,第2の方向制御弁22,23は共に上げ位置(R)に配置され、ホイストシリンダ10は、油圧力で伸長することによりベッセル5を上向きに傾斜させるものである。
【0040】
一方、制御弁装置17が下げ位置となる場合について述べる。この場合には、後述の下げ操作用の電磁弁36から第2の方向制御弁23の油圧パイロット部23Bにパイロット圧を供給し、第2の方向制御弁23を中立位置(N)から下げ位置(L)に切換える。第1の方向制御弁22は、中立位置(N)に配置されている。第2の方向制御弁23が下げ位置(L)になると、油圧ポンプ11からの圧油がポンプ管路13、高圧側油路18、第2の方向制御弁23、アクチュエータ接続油路25A、ロッド側主管路15を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10F内に供給される。ボトム側油室10G内の圧油は、ボトム側主管路16、アクチュエータ接続油路25B、第2の方向制御弁23、低圧側油路20および戻り管路14を介して作動油タンク12に戻される。
【0041】
これにより、ホイストシリンダ10の内筒部10Bおよび/またはロッド10Cは、ロッド側油室10E,10F内の圧油により縮小してベッセル5を
図1に示す走行位置へと下向きに傾転させる。即ち、このときに制御弁装置17の第2の方向制御弁23は下げ位置(L)に配置され、ホイストシリンダ10は、油圧力で縮小することによりベッセル5を車体4上に着座する位置へと降下させる(下げる)ものである。
【0042】
次に、制御弁装置17が浮き位置となる場合について述べる。この場合は、
図3に示すように、後述の浮き操作用の電磁弁37から第1の方向制御弁22の油圧パイロット部22Bにパイロット圧を供給し、第1の方向制御弁22を中立位置(N)から浮き位置(F)に切換える。第2の方向制御弁23は、中立位置(N)に配置されている。第1の方向制御弁22が浮き位置(F)になると、アクチュエータ接続油路24Bが第1の方向制御弁22を介して低圧側油路19、戻り管路14へと接続される。一方、他のアクチュエータ接続油路24A,25Aは、後述の迂回油路26A,27A、チェック弁28A,30Aを介して戻り管路14側に接続されている。
【0043】
これにより、ホイストシリンダ10は、ベッセル5からの荷重(自重)に従って縮小し、ボトム側油室10G内の圧油は、ボトム側主管路16、アクチュエータ接続油路24B、第1の方向制御弁22、低圧側油路19および戻り管路14を介して作動油タンク12に向けて排出される。一方、ロッド側油室10E,10F内には、作動油タンク12内の作動油が戻り管路14、チェック弁28A,30A、迂回油路26A,27A、アクチュエータ接続油路24A,25Aおよびロッド側主管路15を介して補給される。即ち、このときに制御弁装置17の第1の方向制御弁22は、ベッセル5の自重落下を許す浮き位置(F)に配置されるものである。
【0044】
第1の迂回油路26A,26Bは、第1の方向制御弁22を迂回してアクチュエータ接続油路24A,24Bと作動油タンク12との間に設けられている。第1の迂回油路26A,26Bのうち一方の迂回油路26Aは、一側がアクチュエータ接続油路24Aの途中部位に接続され、他側は戻り管路14を介して作動油タンク12に接続されている。他方の迂回油路26Bは、一側がアクチュエータ接続油路24Bの途中部位に接続され、他側は戻り管路14を介して作動油タンク12に接続されている。
【0045】
この場合、一方の迂回油路26Aは、アクチュエータ接続油路24A、および、戻り管路14と共に、ロッド側主管路15と作動油タンク12との間を接続するタンク管路を構成している。後述するように、一方の迂回油路26Aには、ロッド側主管路15の過剰圧を作動油タンク12にリリーフするリリーフ弁29Aが設けられている。
【0046】
第2の迂回油路27A,27Bは、第2の方向制御弁23を迂回してアクチュエータ接続油路25A,25Bと作動油タンク12との間に設けられている。第2の迂回油路27A,27Bのうち一方の迂回油路27Aは、一側がアクチュエータ接続油路25Aの途中部位に接続され、他側は戻り管路14を介して作動油タンク12に接続されている。他方の迂回油路27Bは、一側がアクチュエータ接続油路25Bの途中部位に接続され、他側は戻り管路14を介して作動油タンク12に接続されている。
【0047】
メイクアップ用のチェック弁28A,28Bは、制御弁装置17の第1の方向制御弁22側に配設されている。チェック弁28A,28Bは、第1の方向制御弁22の流出側を迂回した第1の迂回油路26A,26Bの途中に設けられている。チェック弁28A,28Bのうち一方のチェック弁28Aは、作動油タンク12内の作動油が第1の迂回油路26A、アクチュエータ接続油路24A、ロッド側主管路15を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。これにより、ホイストシリンダ10の縮小行程で、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fは、チェック弁28Aを介して補給される作動油により負圧となるのを防止される。
【0048】
一方、他方のチェック弁28Bは、作動油タンク12内の作動油が第1の迂回油路26B、アクチュエータ接続油路24B、ボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のボトム側油室10Gに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。これにより、ホイストシリンダ10の伸長行程で、ホイストシリンダ10のボトム側油室10Gは、チェック弁28Bを介して補給される作動油により負圧となるのを防止される。
【0049】
過負荷防止用のリリーフ弁29A,29Bは、制御弁装置17の第1の方向制御弁22側に配設されている。リリーフ弁29A,29Bは、第1の方向制御弁22の流出側を迂回した第1の迂回油路26A,26Bの途中にチェック弁28A,28Bと並列に設けられている。リリーフ弁29A,29Bのうち一方のリリーフ弁29Aは、第1の迂回油路26Aに設けられており、ホイストシリンダ10に対し伸長方向の過負荷が作用すると、ロッド側油室10E,10F側の過剰圧をリリーフするために開弁する。他方のリリーフ弁29Bは、第1の迂回油路26Bに設けられており、ホイストシリンダ10に対し縮小方向の過負荷が作用すると、ボトム側油室10G側の過剰圧を作動油タンク12にリリーフするために開弁する。
【0050】
メイクアップ用のチェック弁30A,30Bは、制御弁装置17の第2の方向制御弁23側に配設されている。チェック弁30A,30Bは、第2の方向制御弁23の流出側を迂回した第2の迂回油路27A,27Bの途中に設けられている。チェック弁30A,30Bのうち一方のチェック弁30Aは、作動油タンク12内の作動油が第2の迂回油路27A、アクチュエータ接続油路25A、ロッド側主管路15を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。これにより、ホイストシリンダ10の縮小行程で、チェック弁30Aは、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに作動油を補給し、これにより負圧となるのを防止する。
【0051】
一方、他方のチェック弁30Bは、作動油タンク12内の作動油が第2の迂回油路27B、アクチュエータ接続油路25B、ボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のボトム側油室10Gに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。これにより、ホイストシリンダ10の伸長行程で、チェック弁30Bは、ホイストシリンダ10のボトム側油室10Gに作動油を補給し、これにより負圧となるのを防止する。
【0052】
メインのリリーフ弁31は、ポンプ管路13(高圧側油路18)と作動油タンク12(戻り管路14)との間に設けられている。リリーフ弁31は、油圧ポンプ11の最大吐出圧を決め、ポンプ管路13内の圧力を最大吐出圧以下に抑える。即ち、リリーフ弁31は、ポンプ管路13内に最大吐出圧を越える過剰な圧力が発生すると開弁し、このときの過剰圧を作動油タンク12側にリリーフするものである。
【0053】
次に、制御弁装置17を制御する電磁弁35,36,37、操作レバー装置38、コントローラ40等について説明する。
【0054】
パイロット油圧ポンプ32は、油圧ポンプ11とは別に設けられている。パイロット油圧ポンプ32は、油圧ポンプ11と同様に、作動油タンク12に貯溜された作動油を圧油として吐出する。パイロット油圧ポンプ32は、作動油タンク12と共に、制御弁装置17の方向制御弁(第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23)にパイロット圧を供給する油圧源(第2の油圧源)を構成している。
【0055】
パイロット油圧ポンプ32は、エンジン9によって回転駆動されることにより、作動油タンク12内の作動油を昇圧してパイロット管路33内に吐出する。パイロット管路33内に吐出された圧油は、パイロットリリーフ弁34によって所定のパイロット圧に保たれる。パイロット管路33は、第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23を切換えるためのパイロット圧を、電磁弁35,36,37を介して第1の方向制御弁22および第2の方向制御弁23に供給する。
【0056】
電磁弁35,36,37は、制御弁装置17の第1,第2の方向制御弁22,23の油圧パイロット部22A,22B,23A,23Bにパイロット圧を供給するためのものである。電磁弁35,36,37は、パイロット管路33の途中部位に並列に設けられている。電磁弁35,36,37は、それぞれコントローラ40と接続されている。電磁弁35,36,37は、後述する操作レバー装置38の操作に従ってそれぞれ個別に開,閉弁され、開弁時に制御弁装置17の第1,第2の方向制御弁22,23に対し切換制御用のパイロット圧を供給するものである。
【0057】
電磁弁35,36,37のうち上げ操作用の電磁弁35は、上げ操作用パイロット管路33Aを介して第1,第2の方向制御弁22,23の油圧パイロット部22A,23Aに接続されている。電磁弁35は、コントローラ40からの励磁信号に従って閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わる。開弁位置(b)では、パイロット管路33から上げ操作用パイロット管路33Aを介して、第1,第2の方向制御弁22,23の油圧パイロット部22A,23Aに上げ操作用のパイロット圧が供給される。これにより、第1,第2の方向制御弁22,23は、
図2に示す中立位置(N)から上げ位置(R)に切換えられる。
【0058】
下げ操作用の電磁弁36は、下げ操作用パイロット管路33Bを介して第2の方向制御弁23の油圧パイロット部23Bに接続されている。電磁弁36は、コントローラ40からの励磁信号に従って閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わる。開弁位置(b)では、パイロット管路33から下げ操作用パイロット管路33Bを介して、第2の方向制御弁23の油圧パイロット部23Bに下げ操作用のパイロット圧が供給される。これにより、第2の方向制御弁23は、
図2に示す中立位置(N)から下げ位置(L)に切換えられる。このとき、電磁弁35,37は消磁されて閉弁位置(a)にあるため、第1の方向制御弁22は中立位置(N)に配置される。
【0059】
一方、浮き操作用の電磁弁37は、浮き操作用パイロット管路33Cを介して第1の方向制御弁22の油圧パイロット部22Bに接続されている。電磁弁37は、コントローラ40からの励磁信号に従って閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わる。開弁位置(b)では、パイロット管路33から第1の方向制御弁22の油圧パイロット部22Bに浮き操作用のパイロット圧が供給される。これにより、第1の方向制御弁22は、
図2に示す中立位置(N)から
図3に示す浮き位置(F)に切換えられる。このとき、電磁弁35,36は消磁されて閉弁位置(a)にあるため、第2の方向制御弁23は中立位置(N)に配置される。
【0060】
操作レバー装置38は、第1,第2の方向制御弁22,23の切換操作を行う操作装置である。操作レバー装置38は、例えば電気レバー装置により構成され、キャブ8の運転席の近傍位置に設けられている。操作レバー装置38は、キャブ8内のオペレータによって手動で傾転操作される操作レバー38Aを有している。操作レバー38Aは、第1,第2の方向制御弁22,23の各切換位置、即ち、中立位置(N)、上げ位置(R)、下げ位置(L)および浮き位置(F)に対応して、中立位置(N)、上げ位置(R)、下げ位置(L)および浮き位置(F)のいずれかに傾転される。
【0061】
レバーセンサ39は、操作レバー装置38に付設されている。レバーセンサ39は、オペレータによる操作レバー38Aの操作位置(レバー位置)を検出し、その検出信号を後述のコントローラ40に出力する。具体的には、レバーセンサ39は、操作レバー装置38の操作レバー38Aが、中立位置(N)、上げ位置(R)、下げ位置(L)および浮き位置(F)のうちいずれの位置にあるかを検出する。レバーセンサ39が検出する操作レバー38Aの操作位置は、第1,第2の方向制御弁22,23の切換位置に対応する。即ち、レバーセンサ39は、操作レバー38Aの位置を検出することにより、第1,第2の方向制御弁22,23の切換位置を検出することができる。
【0062】
コントローラ40は、マイクロコンピュータからなり、その入力側がレバーセンサ39等に接続され、その出力側は電磁弁35,36,37等に接続されている。コントローラ40は、レバーセンサ39からの検出信号により操作レバー38Aの操作位置を判定すると共に、該操作レバー38Aの操作位置と制御弁装置17の切換位置とを対応させるべく、電磁弁35,36,37に励磁信号を出力するものである。
【0063】
ところで、前述の特許文献2による運搬車両は、ベッセルを車体側に押付けるための圧力を、方向制御弁の浮き位置に設けた絞りによって発生させる。このため、絞りによる圧力損失に伴って、油圧ポンプの効率が低下する可能性がある。これに対して、方向制御弁が浮き位置(F)にあるときに、方向制御弁を切換えるためのパイロット圧を、ホイストシリンダのロッド側油室に供給することにより、ベッセルを車体側に押付けることが考えられる。この場合に、例えば、パイロット管路の途中に電磁式の切換弁(電磁弁)を設け、該電磁式の切換弁を介してパイロット管路のパイロット圧をホイストシリンダのロッド側油室に供給できるようにすることが考えられる。
【0064】
例えば、方向制御弁が浮き位置(F)にあることを、レバーセンサにより検出する。ベッセルが車体に着座していることを、着座センサにより検出する。ベッセルが空荷であることを、サスペンション圧力センサにより検出する。さらに、走行していることを、速度センサにより検出する。電磁式の切換弁の切換えを行うコントローラは、これらを検出したときに、電磁式の切換弁を連通位置に切換えることにより、パイロット管路のパイロット圧をホイストシリンダのロッド側油室に供給することが考えられる。しかし、この場合は、油圧回路を変更することに加えて、電磁式の切換弁を制御するためのコントローラのソフトの変更が必要になる等、組付け作業が面倒になる可能性がある。
【0065】
そこで、実施の形態では、パイロット管路33に油圧パイロット式の切換弁41を設けると共に、該切換弁41を介してパイロット管路33のパイロット圧をホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給できるように構成している。このために、パイロット管路33とロッド側主管路15との間には、これらパイロット管路33とロッド側主管路15とを接続する接続管路42が設けられている。そして、接続管路42の途中部位には、油圧パイロット式の切換弁41が設けられている。
【0066】
切換弁41は、例えば、2ポート2位置の油圧パイロット式切換弁により構成している。そして、切換弁41の油圧パイロット部は、浮き操作用パイロット管路33Cと接続されている。これにより、切換弁41は、第1の方向制御弁22を浮き位置(F)に切換える油圧パイロット部22Bに供給されるパイロット圧の一部が供給されることにより、開位置(d)に切換わる。なお、切換弁41は、例えば、外部パイロット方式のシーケンス弁により構成してもよい。
【0067】
図2に示すように、切換弁41は、第1,第2の方向制御弁22,23が浮き位置(F)以外の位置(即ち、中立位置(N)、上げ位置(R)または下げ位置(L)のいずれか)にあるときには、パイロット管路33とロッド側主管路15との連通を遮断する閉位置(c)となる。
図3に示すように、切換弁41は、第1,第2の方向制御弁22,23が浮き位置(F)にあるときには、浮き操作用パイロット管路33Cを通じて切換えパイロット圧が供給されることにより、パイロット管路33とロッド側主管路15とを連通する開位置(d)となる。
【0068】
これにより、パイロット管路33のパイロット圧が、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給され、ホイストシリンダ10には、ロッド10Cを縮小する方向の推力(縮み力)が発生する。即ち、
図1中に矢印Fで示すように、ベッセル5には、ホイストシリンダ10から下向きの力となって推力F(縮み力F)が加わる。この結果、ホイストシリンダ10によりベッセル5を車体4側へ押付けることができ、走行中にベッセル5の浮き上がりを抑制することができる。
【0069】
一方、ロッド側主管路15と作動油タンク12との間の迂回油路26Aには、リリーフ弁29Aが設けられている。このため、切換弁41が開位置(d)のときに、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給されるパイロット圧に抗してベッセル5が浮き上がることにより、ロッド側主管路15の圧力が上昇しても、その過剰圧をリリーフ弁29Aによってリリーフさせることができる。
【0070】
さらに、接続管路42には、切換弁41とロッド側主管路15との間に位置して絞り43が設けられている。絞り43は、切換弁41とロッド側主管路15との間で接続管路42の流路面積を減少させるものである。このため、例えば、ベッセル5が浮き上がることにより、ロッド側主管路15の圧力が上昇しても、絞り43よりも切換弁41側を、ロッド側主管路15側よりも低圧にできる。これにより、ロッド側主管路15の過剰圧をリリーフ弁29Aでリリーフし易くできる。
【0071】
本実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き構成を有するものであり、次に、その作動について説明する。
【0072】
鉱山等の砕石場では、例えば大型の油圧ショベル(図示せず)を用いて荷物となる土砂6をベッセル5上に積載する。このとき、ベッセル5は、
図1に示す走行位置に置かれ、ダンプトラック1は、ベッセル5上に土砂6を多量に積載した状態で荷降し場に向けて運搬する。
【0073】
荷降し場において、キャブ8内のオペレータが、操作レバー装置38の操作レバー38Aを手動で中立位置(N)から上げ位置(R)に傾転操作すると、コントローラ40から上げ操作用の電磁弁35に励磁信号が出力される。これにより、上げ操作用の電磁弁35は、閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わり、パイロット管路33から第1,第2の方向制御弁22,23の油圧パイロット部22A,23Aに向けて上げ操作用のパイロット圧が供給される。
【0074】
これにより、第1,第2の方向制御弁22,23は、中立位置(N)から上げ位置(R)に切換えられる。この結果、油圧ポンプ11からの圧油は、ポンプ管路13、高圧側油路18、第1,第2の方向制御弁22,23、アクチュエータ接続油路24B,25B、ボトム側主管路16を介してホイストシリンダ10のボトム側油室10G内に供給される。ロッド側油室10E,10F内の圧油は、ロッド側主管路15、アクチュエータ接続油路24A、第1の方向制御弁22、低圧側油路19および戻り管路14を介して作動油タンク12へと戻される。
【0075】
これにより、ホイストシリンダ10の内筒部10Bおよび/またはロッド10Cは、ボトム側油室10G内の圧油により伸長する。即ち、ダンプトラック1は、ベッセル5が連結ピン7を支点として傾斜姿勢に回動することにより、ベッセル5内の土砂6を下方へと滑り落とすように荷降し場に向けて排出することができる。
【0076】
このとき、オペレータが操作レバー38Aから手を離すと、操作レバー38Aは、戻しばね(図示せず)により中立位置(N)に自動的に復帰する。このため、コントローラ40から上げ操作用の電磁弁35に出力される信号は消磁(OFF)状態となり、上げ操作用の電磁弁35は
図2に示す閉弁位置(a)に復帰する。これにより、第1,第2の方向制御弁22,23は中立位置(N)に自動的に戻り、ホイストシリンダ10のボトム側油室10G,ロッド側油室10E,10Fに対する圧油の供給,排出を停止する。従って、ホイストシリンダ10は、内筒部10Bおよびロッド10Cを伸長状態に保つことができ、ベッセル5を傾斜姿勢のままで一時停止させることができる。
【0077】
次に、土砂6の排出作業が終了すると、オペレータが操作レバー38Aを手動で中立位置(N)から浮き位置(F)まで傾転操作することにより、コントローラ40から浮き操作用の電磁弁37に励磁信号が出力される。これにより、
図3に示すように、浮き操作用の電磁弁37は、閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わり、パイロット管路33から第1の方向制御弁22の油圧パイロット部22Bに向けて浮き操作用のパイロット圧が供給される。
【0078】
これにより、第1の方向制御弁22は中立位置(N)から浮き位置(F)に切換えられる。このとき、電磁弁35,36は消磁されて閉弁位置(a)にあるため、第2の方向制御弁23は中立位置(N)に配置される。この結果、アクチュエータ接続油路24Bが、第1の方向制御弁22を介して低圧側油路19、戻り管路14へと接続される。アクチュエータ接続油路24Aは、チェック弁28Aを介して戻り管路14側に接続される。さらに、他のアクチュエータ接続油路25Aは、チェック弁30Aを介して低圧側油路20、戻り管路14へと接続される。
【0079】
これにより、ホイストシリンダ10は、ベッセル5からの荷重(自重)に従って縮小する。即ち、ボトム側油室10G内の圧油が、作動油タンク12に向けて排出されると共に、ロッド側油室10E,10F内には、チェック弁28Aまたは/およびチェック弁30Aを介して作動油タンク12内の作動油が補給される。この結果、ホイストシリンダ10は、ベッセル5の自重による落下を許すことにより、ベッセル5を
図1に示す走行位置へと下降することができ、ベッセル5を車体4上に着座させることができる。
【0080】
一方、ダンプトラック1が作業現場の凹凸、傾斜地等で傾いた状態にあるときには、第1,第2の方向制御弁22,23を浮き位置(F)に切換えても、ベッセル5が自重により下降しないことがある。このような場合には、オペレータが操作レバー38Aを下げ位置(L)まで傾転操作することにより、コントローラ40から下げ操作用の電磁弁36に励磁信号が出力される。これにより、下げ操作用の電磁弁36は、閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換わり、パイロット管路33から第2の方向制御弁23の油圧パイロット部23Bに向けて下げ操作用のパイロット圧が供給される。
【0081】
これにより、第2の方向制御弁23は、中立位置(N)から下げ位置(L)に切換えられる。このとき、電磁弁35,37は消磁されて閉弁位置(a)にあるため、第1の方向制御弁22は中立位置(N)に配置される。この結果、油圧ポンプ11からの圧油が、ポンプ管路13、高圧側油路18、第2の方向制御弁23、アクチュエータ接続油路25A、ロッド側主管路15を介してホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10F内に供給される。ボトム側油室10G内の圧油は、ボトム側主管路16、アクチュエータ接続油路25B、第2の方向制御弁23、低圧側油路20および戻り管路14を介して作動油タンク12に戻される。
【0082】
これにより、ホイストシリンダ10は、ロッド側油室10E,10F内に供給された圧油により、内筒部10Bおよび/またはロッド10Cが外筒部10A内へと縮小し、ベッセル5をホイストシリンダ10の油圧力で
図1に示す走行位置へと下向きに回動することができ、ベッセル5を車体4上に強制的に着座させることができる。
【0083】
ただし、このように第1,第2の方向制御弁22,23を下げ位置(L)に切換えたときには、ホイストシリンダ10を油圧力で縮小させるため、ベッセル5と車体4とに余分な負荷を与える可能性がある。その後も下げ位置(L)に切換えておくと、ベッセル5が車体4上に強く押付けられたままの状態となり、ベッセル5と車体4との当接面にはホイストシリンダ10からの油圧力が余分な負荷となって作用する。このため、ダンプトラック1のオペレータは、車両の走行時に操作レバー38Aを浮き位置(F)に自己保持させる。これにより、第1,第2の方向制御弁22,23は浮き位置(F)に切換わり、ベッセル5は自重によって車体4上に着座し続け、ホイストシリンダ10もベッセル5側の自重を利用して縮小状態に保つことができる。
【0084】
ところが、第1,第2の方向制御弁22,23を浮き位置(F)にして走行すると、ベッセル5が空荷の場合に、路面からの突き上げによる振動に伴って、ベッセル5が車体4から浮き上がり、該ベッセル5が車体4に着座するときに車体4と衝突する虞がある。これにより、キャブ8内のオペレータに不快感を与える可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施の形態では、第1,第2の方向制御弁22,23が浮き位置(F)にあるときに、接続管路42の途中に設けられた切換弁41は、パイロット管路33とロッド側主管路15(ロッド側油室10E,10F)とを連通する開位置(d)となる。これにより、パイロット管路33のパイロット圧が、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給され、ホイストシリンダ10には、ロッド10Cを縮小する方向の推力F(縮み力F)が発生する。この結果、ホイストシリンダ10によりベッセル5を車体4側へ押付けることができる。
【0086】
即ち、第1,第2の方向制御弁22,23を浮き位置(F)にして走行しているときに、路面の凹凸の通過に伴ってベッセル5に車体4から浮き上がる方向の力が加わっても、ホイストシリンダ10の推力Fによりベッセル5を車体4に着座させ、該ベッセル5の浮き上がり(ばたつき)を抑制することができる。この場合に、ホイストシリンダ10に圧油を供給するための油圧ポンプ11の上流側に絞りを設ける必要がないため、絞りを設ける構成と比較して、油圧ポンプ11の効率の低下を抑制することができる。
【0087】
実施の形態によれば、ロッド側主管路15と作動油タンク12との間を接続するタンク管路、より具体的には、迂回油路26Aには、リリーフ弁29Aが設けられている。このため、ベッセル5がホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給されるパイロット圧に抗して浮き上がり、ロッド側主管路15(ロッド側油室10E,10F)の圧力が上昇したときに、ロッド側主管路15の過剰圧をリリーフ弁29Aによってリリーフできる。これにより、ロッド側主管路15および該ロッド側主管路15と連通されたパイロット管路33の圧力が過大になることを抑制でき、切換弁41を含むパイロット管路33側の機器の耐久性を確保することができる。
【0088】
実施の形態によれば、接続管路42に絞り43を設けている。このため、ベッセル5がホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給されるパイロット圧に抗して浮き上がり、ロッド側主管路15(ロッド側油室10E,10F)の圧力が上昇したときに、絞り43によって該絞り43よりも切換弁41側を、ロッド側主管路15側よりも低圧にできる。これにより、切換弁41を含むパイロット管路33側の機器の耐久性を確保することができる。しかも、タンク管路となる迂回油路26Aには、リリーフ弁29Aが設けられているため、絞り43によってより高圧になったロッド側主管路15の過剰圧をリリーフ弁29Aからリリーフし易くできる。このため、この面からも、切換弁41を含むパイロット管路33側の機器の耐久性を確保することができる。
【0089】
実施の形態によれば、制御弁装置17の方向制御弁を、油圧ポンプ11とホイストシリンダ10との間でパラレル接続された第1の方向制御弁22と第2の方向制御弁23とにより構成している。そして、切換弁41は、第1の方向制御弁22を浮き位置(F)に切換える油圧パイロット部22Bに供給されるパイロット圧の一部が供給されることにより、開位置(d)に切換わる構成としている。このため、電磁式の切換弁を用いなくても、第1の方向制御弁22が浮き位置(F)にあるときに、パイロット管路33のパイロット圧をホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに供給することができる。これにより、コントローラ40のソフトの変更が必要なくなり、電磁式の切換弁と比較して、切換弁41を容易に組付けることができる。
【0090】
なお、上述した実施の形態では、接続管路42によりパイロット管路33とロッド側主管路15とを接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、
図4に示す変形例のように、接続管路51によりパイロット管路33とロッド側油室10E,10Fとを(ロッド側主管路15を介することなく)直接的に接続する構成としてもよい。
【0091】
この場合も、第1,第2の方向制御弁22,23が浮き位置(F)にあるときに、接続管路51の途中に設けられた切換弁41が、パイロット管路33とロッド側油室10E,10Fとを連通する開位置(d)となる。これにより、パイロット管路33のパイロット圧が、ホイストシリンダ10のロッド側油室10E,10Fに直接的に供給され、ホイストシリンダ10には、ロッド10Cを縮小する方向の推力F(縮み力F)が発生する。この結果、ホイストシリンダ10によりベッセル5を車体4側へ押付けることができる。
【0092】
上述した実施の形態および変形例では、第1,第2の方向制御弁22,23を用いて制御弁装置17を構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば4ポート4位置の1個(単一)の方向制御弁を用いて制御弁装置を構成してもよい。
【0093】
上述した実施の形態および変形例では、2段式のホイストシリンダ10を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、3段式以上の多段式のホイストシリンダ(油圧シリンダ)や1段式のホイストシリンダ(油圧シリンダ)を用いてもよい。例えば、1段式のホイストシリンダの場合は、単一のシリンダ(筒部)と、ロッドと、シリンダ内をロッド側油室とボトム側油室に画成するピストンとにより構成することができる。
【0094】
さらに、上述した実施の形態および変形例では、運搬車両として後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用してもよく、走行用の車輪を備えたダンプトラック以外の運搬車両に適用してもよい。さらに、クローラ式の運搬車両にも適用できるものである。