特許第6457500号(P6457500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457500
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ターボ機械用ロータリアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/30 20060101AFI20190110BHJP
   F01D 11/00 20060101ALI20190110BHJP
   F01D 11/12 20060101ALI20190110BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   F01D5/30
   F01D11/00
   F01D11/12
   F01D5/28
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-516849(P2016-516849)
(86)(22)【出願日】2014年9月23日
(65)【公表番号】特表2016-535827(P2016-535827A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】FR2014052375
(87)【国際公開番号】WO2015044578
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】1359239
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルデュック,マチュー・ルイ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス,ピエール−ルイ・アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ルシル,クレマン
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05318405(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02982635(FR,A1)
【文献】 特開2002−201915(JP,A)
【文献】 特開2013−170577(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0265849(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0275108(US,A1)
【文献】 米国特許第4218189(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/28
F01D 5/30
F01D 11/00
F01D 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用のロータリアセンブリにして、交互配置された、空洞(14)と歯(12)から外周が形成されるディスク(10)と、ディスク(10)および翼根(16)から半径方向に延在する翼(18)とを備え、前記翼はディスクの空洞(14)内に軸方向に係合され半径方向に保持され、ディスクの歯(12)と翼根(16)とは、それらの上流および/または下流の軸端に、端同士を接して交互に円周方向に配設された軸方向ショルダ(74、76)において、ディスクの内側の方に半径方向に向いた連続的な円筒表面(78)を一緒に形成する、ディスクと一体的に製造された部品(56、92、114)によって環状シール(80)が接して保持される軸方向ショルダ(74、76)を備える、ロータリアセンブリであって、前記部品(56、92、114)はショルダ(74、76)の下に延在し、環状シール(80)を前記円筒表面(78)に対して半径方向に押圧することを特徴とするロータリアセンブリ。
【請求項2】
前記部品(56、92、114)が、環状シール(80)が取り付けられる環状溝(100)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のロータリアセンブリ。
【請求項3】
翼根(16)のショルダ(74)が、横断方向に翼根に延在する、外部で翼のプラットフォーム(24)に、内部で翼根(16)に連結された上流および/または下流の放射壁(84)の半径方向内端面によって形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
ディスクと一体的に製造された前記部品が、ディスクの上流面および/または下流面上へ当てられる環状フランジ(92、114)にして、フランジをディスク上に軸方向に保持する、ディスク(10)の対応噛合クラッチ手段(110)と協働する噛合クラッチ手段(86)を備える環状フランジ(92、114)であって、フランジ(92)は、端同士を接して円周方向に配置された数個のセクターで形成されることと、
各フランジセクションは、環状シール(80)によって外側の方に半径方向に支持される内側部位(94)と、ディスクの歯(12)上に形成された前記対応噛合クラッチ手段(110)と協働する前記噛合クラッチ手段(86)を備える外側部位(96)とを備え、ディスクの前記対応噛合クラッチ手段は翼根(16)に対して軸方向に突出することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
各フランジセクション(92)の外側部位(96)が、張り出た周縁部(112)として外部に延在する放射壁(108)を備え、その外側自由端は翼の上流または下流横断壁(84)の一方上に載るためのものであることを特徴とする、請求項3に従属した請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
各フランジセクション(92)の内側部位(94)が円筒壁(98)を備え、ディスクに向いたその一方端部位は環状シール(80)上で外側の方に半径方向に支持され、ディスク(10)から離れて内方に延在する円錐台形壁(102)によって延長され、円錐台形壁(102)とディスク(10)の間に環状分割リング(106)が軸方向に挿入されることを特徴とする、請求項4または5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
ディスクと一体的に製造された前記部品が、摩耗性材料で製造された半径方向に反対側のブロック(60)と協働するためのシールリップ(58)を支持するリング(56)であることを特徴とする、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項8】
翼(18)がセラミックマトリックス複合材料で製造され、ディスク(10)は金属合金で製造されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
ディスクの内側に半径方向に向き、環状シール(80)が上に載るように保持される円筒表面(78)が、環状シールが取り付けられることが可能となる溝を有さないことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
各空洞(14)が底を有し、各空洞の底は閉鎖され、隣接する翼根が収容される空洞とは連通しないことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
ショルダ(74、76)が、翼根(16)が遠心効果によって外側の方へ歯に対して押圧されるとき、ディスクの歯(12)の側面と翼根(16)の側面との間の界面と同じレベルで半径方向に形成されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のロータリアセンブリを備えることを特徴とする、ターボ機械用のタービン。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のロータリアセンブリを備えることを特徴とする、ターボジェットまたはターボプロップなどのターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機のジェットエンジンなどのターボ機械用のロータリアセンブリと、そのようなアセンブリを含むターボ機械とに関する。
【背景技術】
【0002】
特にタービンに見受けられることが可能なそのようなアセンブリは、ディスクとディスクから半径方向に延在する翼とを備え、その翼根は、歯と交互に配置されたディスクの外周の空洞内に軸方向に係合され空洞内に半径方向に保持される。翼は、タービン内を循環する高温ガス流の内境界を一緒に画定するように端同士を接して円周方向に配置された内側プラットフォームも備える。内側プラットフォームと翼根との間の翼の一部位はスティルトと呼ばれる。本方策によれば、隣接し合った2つのスティルトの間に空間が形成され、それらはスティルト間空洞または翼間空洞を形成する。プラットフォームは、翼間空洞を軸方向に部分的に閉鎖するように、それらの上流端および下流端で、半径方向に内側の方へ延在する壁の中へ延在することができる。翼根と穴の底との間に形成された半径方向空間内に、所謂穴底空洞も形成される。
【0003】
ターボ機械の適正な作動を保証するために、例えば低圧圧縮機または高圧圧縮機から冷却空気が取り出され、それがディスクの上流または下流から穴底空洞へと送られて、ディスクの冷却を保証し、隣接し合った2つのプラットフォームの間を循環する流れからの高温ガスによって引き起こされる加熱からディスクを保護するようにする。
【0004】
さらに、上述のロータリアセンブリがタービンロータの上流に配置されるとき、ディスクと上流のステータ要素との間に環状空間が形成される。このように、この環状空間は、高温ガス流とターボ機械の内部要素との間の直接的な連通をもたらす。この場合、ディスクの上流から供給される冷却空気は、ディスクの上流環状空間の中へのガス流の再導入を防止するためにも使用される。
【0005】
翼間空洞と、例えばプラットフォームの放射壁などの被覆部との上流に特別の封止技術が適用されない場合、翼同士間の接合区域で冷却空気が漏れ、それが翼間空洞内を循環する場合がある。このように、適切であっても、そのような冷却空気は穴底空洞からのディスクの冷却に関与せず、ターボ機械の内部構成要素の方へのガス流の再導入を防止することに寄与しない。このような空気の漏洩は、低圧圧縮機での空気採取をより多く必要とし、そのことがターボ機械の出力を低下させる。
【0006】
このような空気の漏洩を最小限に抑えるために、1つの解決法として、英国特許第2148404号明細書のように、環状リングを使用して翼間空洞を封止することから成るものがある。この環状リングは、穴底空洞と翼間空洞との間に半径方向に位置決めされたエリアを覆うように翼根とディスクの歯とに対して軸方向に取り付けられ、フランジによってディスク上にきっちりと保持される。リングの内側で半径方向に、フランジとディスクとの間に冷却空気をディスクの内側から穴底空洞の方に案内するための環状通路が画定される。このように、このリングは前記環状冷却空気通路とリングの外側に位置付けられた翼間空洞との間に絶縁をもたらす。
【0007】
しかし、作動中、翼は空洞内にある程度の軸方向の自由を有することが認められている。これは、一方では、例えばディスクの上流面に当てられたフランジによって翼根上に引き起こされる軸方向の締め付け応力を加えるのを回避するために、翼根の端が空洞の軸端よりも決して先に行かないことを確実にするように、翼根の軸方向寸法がディスクの軸方向寸法よりも名目上小さくなくてはならないことによる。それに加え、この程度の自由は、特に翼がセラミックマトリックス複合材料(CMC)で製造され、ディスクが金属合金で製造されるとき、ディスクと翼の間の伸び差によって可能になる。
【0008】
このように、作動中この自由度は、ディスクの歯に対して軸方向に締め付けられた環状封止リングと翼根の軸端との間で隙間が形成されるようにする。このように、穴底空洞の中に供給された冷却空気の一部がこれらの隙間を通って翼間空洞へ流れ、それはもはやディスク内の空洞を冷却するという主要な機能を果たさない。
【0009】
英国特許第2148404号明細書では、翼根と歯の前に、リングセクタ内のトレイの連なり(そのうちの1つは本明細書の図2では参照番号84を有する)が延在し、それが、環状リングまたは封止リングを軸方向ショルダによって画定された空間の中へ押圧する。ターボ機械が作動すると、遠心効果によって環状シールはショルダに対して密接して押圧され、そのようにして所望の封止をもたらす。作動中、大きな応力がシールに掛かる(シールはS字形状または実質的に垂直方向に逆さにされたオメガ形状の断面を有する)。明細書では3頁に、封止はシールがいかに変形するかに依存すると述べられている。このように、シールの疲労が封止をより不確実なものにする場合がある。その上、遠心効果があまり大きくなく、または無効にされると(機械が停止された状態で)、シールはその空間内で可動となる。損傷または不正確な位置決めが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第2148404号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、これらの問題に対するシンプル、効果的、かつ経済的な解決方法を提供することによってそのような状況を防止することと、封止を確実にすることとを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、ターボ機械用のロータリアセンブリにおいて、交互配置された空洞と歯から外周が形成されるディスクと、ディスクから半径方向に延在する、そのディスクの空洞内に翼根が軸方向に係合され空洞内に半径方向に保持される翼とを備え、ディスクの歯と翼根とは、それらの上流および/または下流の軸端に、端同士を接して交互に円周方向に配設された軸方向ショルダにおいて、ディスクの内側の方に半径方向に向いた円筒表面を一緒に形成する、ディスクと一体的に製造された部品によって環状シールが接して保持される軸方向ショルダを備える、ロータリアセンブリであって、前記部品はショルダの下に延在し、環状シールを前記円筒表面に対して半径方向に押圧することを特徴とするロータリアセンブリを提供する。
【0013】
このように、シール締め環状部品が上述のように空気の供給を保証するとき、ショルダによって形成された円筒表面とシールが連続的に接触することによって、冷却空気はもはや翼間空洞の方に流れることが可能ではない。
【0014】
ディスクと一体的に製造されたシール保持部品は、環状ガスケットが取り付けられる環状溝を含むことが好ましい。このように、接合は正確に保持され、より小さな応力にしか晒されない。このことは長期の実用寿命と効率とにとって有利である。
【0015】
本発明の他の特徴によると、翼根のショルダは、横断方向に翼根に延在する、外部で翼のプラットフォームに連結された、内部で翼根に連結された上流および/または下流の放射壁の半径方向内端面の表面によって形成される(その自由端からいくらか半径方向に間隔をおいたところに前記ショルダが位置付けられる)。このように、環状シールは円筒表面に接して締め付けられ、もはや翼根の自由端の半径方向表面上へは締め付けられない。作動中、翼根とディスクの空洞との間にどのような相対的な軸方向移動があろうとも、環状シールは常に円筒表面と接触したままである。このことは、歯および翼根の軸方向ショルダによって形成された円筒表面上のシールの外表面全体に不連続性が無い状態より効果的な締め付けを可能にする(適切な翼根の幅または軸方向寸法がいかなるものでも、翼根ショルダの幅は必要であれば適合されることができる)。
【0016】
横断壁は、流れに対して翼間空洞を封止するという追加の利点を有する。
【0017】
ディスクと一体的に製造された前記部品は、ディスクの上流面および/または下流面上へ当てられる環状フランジにおいて、フランジをディスク上に軸方向に保持する、ディスクの対応噛合クラッチ手段と協働する噛合クラッチ手段を備える環状フランジであることができる。
【0018】
フランジは、端同士を接して円周方向に配置された数個のセクターで形成されることが好ましく、各フランジセクションは、環状シールによって外側の方に半径方向に支持される内側部位と、ディスクの歯上に形成された前記対応噛合クラッチ手段と協働する前記噛合クラッチ手段を備える外側部位とを備え、ディスクの前記対応噛合クラッチ手段は翼根に対して軸方向に突出する。
【0019】
各フランジセクションの外側部位は、張り出た周縁部として外部に延在する放射壁を有利に備え、その外側自由端は翼の上流または下流横断壁の一方上に載るためのものである。
【0020】
最大の効果を得るために、各フランジセクションの内側部位は円筒壁を備え、ディスクに向いたその一方端部位は環状シール上で外側の方に半径方向に支持され、ディスクから離れて内方に延在する円錐台形壁によって延長され、円錐台形壁とディスクの間に環状分割リングが軸方向に挿入される。
【0021】
シールに円筒壁のラジアル軸受けを1つだけ備えたこのような取付けは、部品の遠心力の回復によって、フランジの円筒壁とショルダによって形成された円筒表面との間のシールを圧迫して、最適な封止を得ることを可能にする。寒冷時は、翼がそれらの空洞内に収容された後に、部品は噛合クラッチによって取り付けられる。作動中、遠心力が、円錐台形壁上に載ったリングの直径の拡大を引き起こし、噛合クラッチラインのまわりのフランジセクタの軸方向の傾動を引き起こして、張り出たフランジの自由端が翼の横断放射壁と接触するようにさせ、そのようにして張り出た周縁部と横断方向放射壁との間に気流が再導入されるのを回避し、歯のより充分な熱防御を保証する。
【0022】
本発明の他の実施形態によると、ディスクと一体的に製造された前記部品は、摩耗性材料で製造された半径方向に反対側のブロックと協働するためのシールリップ支持リングである。
【0023】
有利に、翼はセラミックマトリックス複合材料で製造され、ディスクは金属合金で製造されて、そのようにしてロータの質量の大幅な縮小を可能にして(金属合金とセラミックマトリックス複合材料の密度比は3から4である)、ターボ機械のエネルギー消費の縮小を可能にする。
【0024】
本発明は、先行する請求項の一項に記載のロータリアセンブリを備えることを特徴とするターボ機械タービンにも関する。
【0025】
本発明は最終的に、先行する請求項の一項に記載のロータリアセンブリを備えることを特徴とする、ターボプロップエンジンまたはターボジェットエンジンなどのターボ機械に関する。
【0026】
非制限的な例としてここに掲げられる以下の説明を、添付図面を参照しながら読めば、本発明の他の詳細、特徴、および利点が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】先行技術のタービンロータリアセンブリの軸方向横断面概略図である。
図2図1の線II−IIに沿った概略図である。
図3】選択された実施形態による、下流方向で見た本発明によるロータリアセンブリの斜視図である。
図4】本発明による、図2と同じタイプの概略図である。
図5】本発明の第1実施形態によるタービンロータリアセンブリの軸方向断面概略図である。
図6】本発明の第2実施形態によるタービンロータリアセンブリの軸方向断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および図2で示された、知られている技法によると、タービンロータリアセンブリは、ロータリディスク10においてタービンの軸11上に心合わせされ、その外周に、翼根(その内端に参照数字16が付されている)が中へと軸方向に係合され中で半径方向に保持される空洞(その基部に参照数字14が付されている)と交互に配置された歯(その頂部に参照数字12が付されている)を備えるロータリディスク10から成り、そのような翼18は、空洞14から半径方向に、燃焼室(図示されず)からの気流20の環状流れ(矢印A)の中へと延在する。
【0029】
さらに具体的には、各翼18は、半径方向に外側から内側にかけて翼22と、翼18の伸張軸26に実質的に垂直であり、高温ガス流20の内側の環状境界を画定するプラットフォーム24とを含み、スティルト28がプラットフォーム24を、例えば蟻継ぎなどの形状を有する翼根16に連結して、空洞14内での翼根16の半径方向の保持を保証する。本方策によると、円周方向に隣接した2つのスティルトの間に空間が形成され、それらはスティルト間空洞30または翼間空洞30と呼ばれる。翼根16と穴14の底との間に形成された半径方向空間内に、所謂穴底空洞32も形成される。
【0030】
例えば上流に配置された低圧圧縮機から冷却気流Bがタービンの内側に搬送され、これが一方で穴底空洞32、したがってディスク10を冷却するために使用され、他方でガス流れAがディスク10と上流のステータ要素36との間に形成された環状空間34の中へと再導入されるのを防止するために使用される。このような環状空間は高温ガス流れ20とターボ機械の内部要素との間の直接的な連通を形成する。
【0031】
ターボ機械の性能にとって致命的である圧縮機からの冷却空気の採取を制限するために、ディスク10の上流および下流に封止手段が形成されて、冷却空気Bが穴底空洞32を通ってディスク10の上流の環状空間34の中へと循環する封止された2つの環状回路を画定する。特に、そのような封止手段の目的は、冷却空気Bが、スティルト28同士間の円周空間を通って翼間空洞30内を循環することを防止し、穴底空洞32を通ってディスク10を冷却することにも、ガス流Aがディスクの上流の環状空間34の中へ再導入されるのを防止することにも関与しないことである。
【0032】
封止手段は壁38を備える。壁38は、翼18のプラットフォーム24の上流から半径方向内方に延在して、翼間空洞30、環状フランジ40、および環状リング42を軸方向に部分的に封止する。
【0033】
環状フランジ40は、連結壁48を介してディスク10と一体的に製造された半径方向環状フランジ46上にボルト44によって締め付けるための内側放射壁42を含む。それは円錐台形壁50も備え、円錐台形壁50は内側放射壁42を、下流方向に環状リング42上に軸方向に凭れながら、外側環状放射壁52に連結する。フランジ40の内側放射壁42とディスクの環状フランジ46との間の接合部に、空気が通行する孔54が設けられて、空気Bがフランジの円錐台形壁50とディスク10の連結壁48との間から空洞32の穴底へ循環するのを可能にする。
【0034】
このように環状リング42は、翼根16およびディスク10の上流で、プラットフォーム24と穴底空洞32との間で、プラットフォーム24の上流から延在する放射壁38とフランジ40の放射壁52とによって、半径方向に押圧される。このアセンブリは上流の翼間空洞30を軸方向に封止するために使用される。
【0035】
下流の封止手段は、マニホルド(図示されず)によって担持される摩耗性材料で製造されたブロック60と協働するリップ58支持リング56を備える。リング56は、ディスク10の下流環状フランジ64と下流ディスクの上流環状フランジ(図示されず)との間でボルト締め62される。リングは湾曲された下流環状アーム66を含む。環状アーム66は、ディスクの歯12と翼根16との下流の面に対して当てられた環状リング68上に弾性的に軸方向に載る。リング68は、冷却空気Bが下流方向に、リング56のアーム66の半径方向に内側に流れるように半径方向に穴底空洞32の直ぐ上に配置される。下流のプラットフォームから半径方向内方に環状リング68の外周に放射壁70も延在して、下流の翼間空洞30を軸方向に封止する。
【0036】
この構成によると、作動中、冷却空気Bの一部が空洞32の穴底から翼間空洞30へ流れることが認められている。実際のところ、作動中、環状リング42、68がディスクの歯12の半径方向端表面に対して押圧される間、環状リング42、68と翼根16の軸端との間に軸方向隙間72が形成される。このことは第一に、翼根16の軸方向寸法がディスク10の軸方向寸法よりも名目上小さくて、翼根の端部同士が空洞14を決して超えないことを保証して、フランジ40およびリップ支持リング56が翼根16に軸方向の締め付け応力を掛けることを防止するという事実に起因し、他方で、翼根16がディスクの歯よりも比較的小さくしか拡張しないという事実に起因する。特に、セラミックマトリックス複合材料(CMC)の翼18と、例えばニッケル基の高温耐熱金属合金で製造された、鍛造されることが可能なディスク10とでは、これらの部品の伸び差と延び差の間に2から3の比率が存在する。これに関して、図2は、環状リング42と翼根16の軸端との間に軸方向隙間72がどのように形成されることが可能であって、冷却空気が穴底空洞から翼間空洞に半径方向に隙間の外側に向かって流れるようにするかを示す。
【0037】
図3および図4に示されるように、本発明は有利に、穴底空洞32と翼間空洞30との間に、封止手段において、部品同士の拡張差と製造の許容誤差とに起因する、翼根16の端とディスク10の歯12の端との間の相対的な軸方向の食い違いを受けない封止手段を形成することを可能にする。
【0038】
本発明によると、翼根16とディスクの歯12との上流端および下流端で、ショルダ74、76が端同士を接して交互に円周方向に配置されて、内方に配向された、環状シール80が上に掛けられる上流円筒表面78と下流円筒表面78とを形成する。これらの上流円筒表面および下流円筒表面は、翼とディスクのショルダ同士の当接配置によって連続的であると考えられることが可能である。このようなショルダは、翼根が遠心効果によって外側の方へ翼に対して押圧されるとき、ディスクの歯12の側面と翼根16の側面との間の界面と同じレベルで半径方向に形成される。図3で見られるように、翼根16が空洞14内にあり、そのように半径方向に空洞32の穴底へ延在するとき、各翼根の自由端160はそのショルダ74よりも半径方向に内側へより深く位置付けられる。そして各空洞の底32は閉鎖され、隣接する翼根を収容するものとは連通しない。これは、英国特許第2148404号明細書に開示されたものとは異なっている。そこでは、各翼根の自由端68がシール70用のショルダを形成するので、受け取り空間56は円周となり、全翼根に共通である。個別化された歯と空洞を使用する本明細書で提示される解決法が好ましい。
【0039】
この目的のために、各翼は、プラットフォーム24と翼根16との間を半径方向に延在する上流の横断方向放射壁84と下流の横断方向放射壁84とを含む。翼がCMCで製造されるとき、これらの横断方向放射壁84は、製織または焼結によって製造され、ロウ付け、焼き締め、シリコン処理によって組み立てられることが可能である。翼が金属で製造されるとき、それらは、成形によってスティルト28の上流端および下流端と一体的に形成されることができる。これらの上流横断壁および下流横断壁84は、翼のプラットフォーム24上に類似の方法で外部的に取り付けられることもできる。これらの壁84は、それらの内端に、部分的に翼根16、90の高さを超えて、ディスクの歯12の外端の軸方向に突き出た部位同士の間に延在する放射フィンガ88を有する。フィンガ88の内端面74とディスクの歯12の突出部90の内面76とは、円周方向に位置合わせされた円筒表面部位78を形成する。それらは半径方向にそれらの内側に向き、空洞32の穴底の半径方向外側に位置付けられ、環状シール80が掛けられることができるショルダ74、76を形成するのに充分な軸方向の厚みを有する。
【0040】
これらの表面74、76は端同士を接して円周方向に位置合わせされる。そのことが、シールの嵌め込みに使用されることが可能な締まった表面78を得るのを可能にする。円筒表面部位の寸法は、円筒表面78が作動中そこに留まるのに充分軸方向に大きく、ディスクの歯12の軸端と翼根16と間の上述の相対差にも関わらず、そこでシール80は接触したままとなって、恒久的な封止をもたらす。横断方向放射壁84は、CMC翼の場合には、翼の軸端面上でウェーハをハンダ付けすることによって製造される。
【0041】
上述の本発明は2つの実施形態で実装され、第1のものは図5に、第2のものは図6に示される。いずれの実施形態でも、シール80をショルダ74、76の円筒表面78に対してきっちりと保持し、空洞32の穴底を通過する冷却空気回路を形成するように、ディスク10の面と翼18の面との一方に対して環状部品がもたらされる。このように、冷却空気回路から翼間空洞30への漏洩はもはや存在しない。
【0042】
図5に示された第1実施形態では、上流に加えられた環状部品は、内側部位94と外側部位96を備えるセクター化フランジ92である。内側部位94は円筒壁98を備え、そのディスクの反対側に延在する部位はスポイラを形成し、そのショルダ74、76の下に延在するディスク付近の部位は、環状シール80が中に取り付けられ、ショルダの円筒表面78に対して押圧される環状溝100を含む。円筒壁付近の部位は円錐台形壁102に連結され、円錐台形壁102は内方にディスクから離れて延在し、その内端でディスク10の方に延在する円筒周縁部104に連結される。フランジの前記円錐台形壁102と円錐台形壁の軸方向に反対側の歯12および翼根16の半径方向面との間に、楔形状または三角形状の断面を備えた環状の分割リング106が取り付けられる。
【0043】
フランジ92の円筒壁98は、放射壁108を備える外側部分96にも連結される。放射壁108は、ディスクの歯12の突出部位90の上流端に形成された噛合クラッチ部材110の上流で半径方向外方に延在する。ディスクのこのような噛合クラッチ部材110は、翼の上流の横断方向放射壁84に対して上流方向に突出し、L字形状のフックと円周方向に交互に配置される中空部位とを備える。フランジ92の放射壁108の外端は、L字形状のフック86と中空部位を備える。フランジ92のL字形状フックは、ディスクの歯12のフックと協働して、フランジ92をディスク10上に軸方向に保持するのを保証する。放射壁108は、翼の横断方向放射壁84に対して凭れ掛かるための下流の張り出た周縁部112に、外部でさらに連結される。
【0044】
このような取付けは、部品の遠心力の回復によって、フランジの円筒壁98とショルダ74、76によって形成された円筒表面78との間のシール80を半径方向に圧迫して最適な封止を得ることを可能にする。寒冷時には、部品は、翼18がそれらの空洞14内に収容された後に噛合クラッチによって取り付けられる。作動中、分割リング106は遠心効果によって円周方向に開き、テーパ形壁102とディスク10との間に滑り込んで、噛合クラッチ区域に位置付けられた、タービンの軸11に実質的に垂直の軸のまわりのフランジ92セクターの傾動を引き起こして、張り出た周縁部112の自由端が横断方向放射壁84上に接触するのを保証し、そのようにしてディスク歯の突出部位90を気流Aから保護する。
【0045】
作動中、冷却空気はテーパ形壁102とディスク10との間を流れ、そのとき分割リング106の下に位置付けられている空洞32の穴底に到達する。
【0046】
ディスクの下流で、かつ冷却回路が穴底だけに限られず、シールリップを支持するリング56の冷却にも繋がっている場合、シール80の圧迫は、作動中の遠心力の効果の下で、リング56のアーム66の上流端の外部表面によって保証される。
【0047】
したがって、ディスクの上流の本発明による封止手段は、ディスクの下流の封止手段と組み合わせて、または互いから独立して使用されることが可能である。実際のところ、最適な封止はディスクの上流および下流でショルダを形成することを必要としない。
【0048】
図6に示された第2実施形態では、上流で挿入された環状部品は、一体として製造された環状フランジ114である。この実施形態では、ディスク10のハブ116はその外端の直ぐ前で軸方向の拡幅部118を有する。噛合クラッチ手段110は、この実施形態ではハブ116の上流面上、その拡幅部118の内側に形成される。
【0049】
第1実施形態とは異なって、フランジ114の円筒壁116がディスクの歯と翼根とのショルダ74、76の下に延在し、環状シール80に対して半径方向に凭れ掛かる際、それはその端で円錐台形壁にではなく、環状壁120に連結される。環状壁120は半径方向にディスク10の内側の方にハブの噛合クラッチ手段110に延在し、ディスク10の形状と一致する形状を有する。この壁は反対側のディスクの一部位と共に、壁120とディスクとの間に環状の冷却空気流通路Bを画定する。この壁はその内端に、フランジ114の軸方向の転び止め用の、ディスクの噛合クラッチ手段110と協働する噛合クラッチ手段86も有する。
【0050】
寒冷時、フランジ114は、ショルダの円筒表面78上に半径方向に凭れる環状シール80に対してプレストレスを掛けて取り付けられる。
【0051】
上流フランジ114のこの第2実施形態は、第1実施形態と比較して、その一体設計によってディスクの上流部位内でより充分な封止を達成するという利点を有する。さらに、それは、ハブ116での噛合クラッチ手段の位置決めによって、ディスク10の歯12に掛けられる軸方向の応力を低減する。しかし第1実施形態のフランジ92はより充分な機械的強度を有する。それは、フランジ92がセクター化され、張り出た周縁部121と横断方向放射壁84との間のより確実な軸方向の接触を可能にすることによる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6