特許第6457531号(P6457531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローズマウント インコーポレイテッドの特許一覧

特許6457531動作設定値自動選定機能を有する電磁式流量計
<>
  • 特許6457531-動作設定値自動選定機能を有する電磁式流量計 図000002
  • 特許6457531-動作設定値自動選定機能を有する電磁式流量計 図000003
  • 特許6457531-動作設定値自動選定機能を有する電磁式流量計 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457531
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】動作設定値自動選定機能を有する電磁式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/60 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   G01F1/60
【請求項の数】25
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-539986(P2016-539986)
(86)(22)【出願日】2014年8月14日
(65)【公表番号】特表2016-540985(P2016-540985A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014051075
(87)【国際公開番号】WO2015094419
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】14/136,955
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ロブナー,ブルース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フォス, スコット ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース, スティーブン, ビー.
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/154110(WO,A1)
【文献】 特表2012−526279(JP,A)
【文献】 特開平04−318424(JP,A)
【文献】 特開平07−324959(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008974(WO,A1)
【文献】 特開平06−137889(JP,A)
【文献】 特開2004−325208(JP,A)
【文献】 特表2010−533295(JP,A)
【文献】 特開平08−105774(JP,A)
【文献】 特開2002−340638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58−1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動管装置とトランスミッタとを備えた電磁式流量計であって、
前記流動管装置は、
流体が流動する導管と、
前記導管に取り付けられ、コイル抵抗及びコイルインダクタンスによって特徴付けられるフィールドコイルと、
前記導管を流動する前記流体内に前記フィールドコイルが生成した磁界によって誘起される電圧を検出する電極とを備え、
前記トランスミッタは、
前記フィールドコイルの前記コイル抵抗及び前記コイルインダクタンスを計測するように構成され、
コイル駆動周波数、コイル駆動電流、及びコイル駆動デューティ比によって特徴付けられるパルス化直流電流波形の電流を用い、前記磁界を生成するように前記フィールドコイルを駆動するコイル駆動部と、
前記電極が検出した前記電圧に相関する流量計測値を生成するプロセッサであって、計測された前記コイル抵抗計測された前記コイルインダクタンスとに基づき、前記コイル駆動周波数、前記コイル駆動電流、及び前記コイル駆動デューティ比についての動作設定値を定めるプロセッサとを備える
ことを特徴とする電磁式流量計。
【請求項2】
前記トランスミッタは、更に前記磁界の磁束密度を計測するように構成され、
前記プロセッサは、計測された前記磁束密度に更に基づき、前記動作設定値を定める
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項3】
前記トランスミッタは、流動管装置ゲインを更に計測するように構成され、
前記プロセッサは、計測された前記流動管装置ゲインに更に基づき、前記動作設定値を定める
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項4】
前記トランスミッタは、電極雑音、信号対雑音比、及び電極電圧零点移動特性のうちの少なくとも1つを更に取得するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項5】
前記トランスミッタは、流動管電力定格及びトランスミッタ電力定格の少なくとも一方を含む電力定格を更に取得するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項6】
前記プロセッサは、最速応答特性、特定のコイル駆動周波数に対する最大信号対雑音比、特定の精度に対する最大信号対雑音比、及び電力効率のうちの少なくとも1つを含む性能基準に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記動作設定値を継続的に調整することを特徴とする請求項1に記載の電磁式流量計。
【請求項8】
交番磁界を生成するコイル、及び前記交番磁界によって流体中に誘起された電圧を検出する電極を有し、前記コイルがコイル抵抗及びコイルインダクタンスによって特徴付けられる流動管装置と、
設定されたコイル駆動周波数及びコイル駆動電流によって特徴付けられるパルス化直流電流波形の電流を用いて前記交番磁界を生成するために前記コイルに接続され、コイル電流を検出する回路を備えたコイル駆動部と、
前記電極で検出した電圧と相関する流量計測結果を生成するプロセッサであって、前記プロセッサが計測する前記コイル抵抗及び前記コイルインダクタンスに基づき、前記コイル駆動周波数及び前記コイル駆動電流についての動作設定値を定めるプロセッサ
を備えることを特徴とする電磁式流量計。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記プロセッサが計測する磁束密度に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項に記載の電磁式流量計。
【請求項10】
前記動作設定値は、コイル駆動デューティ比を更に含むことを特徴とする請求項に記載の電磁式流量計。
【請求項11】
前記プロセッサは、流動管装置ゲイン、コイル電流、電極雑音、及び電極電圧零点移動特性のうちの少なくとも1つに更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項に記載の電磁式流量計。
【請求項12】
前記プロセッサは、流動管電力定格及びトランスミッタ電力定格の少なくとも一方を含む電力定格に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項に記載の電磁式流量計。
【請求項13】
前記プロセッサは、最速応答特性、特定のコイル駆動周波数に対する最大信号対雑音比、特定の精度に対する最大信号対雑音比、及び電力効率のうちの少なくとも1つを含む性能基準に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項に記載の電磁式流量計。
【請求項14】
電磁式の流動管装置と共に用いるトランスミッタであって、
前記流動管装置のコイルにパルス化直流電流波形の電流を供給するコイル駆動部であって、コイル抵抗及びコイルインダクタンスによって前記コイルが特徴付けられ、コイル駆動周波数及びコイル駆動電流によって前記パルス化直流電流波形が特徴付けられるコイル駆動部と、
前記コイルの前記コイル抵抗及び前記コイルインダクタンスを計測し、計測した前記コイル抵抗及び計測した前記コイルインダクタンスに基づいて動作設定値を定め、前記動作設定値に基づいて前記コイル駆動部の作動を制御するプロセッサと
を備えることを特徴とするトランスミッタ。
【請求項15】
前記動作設定値は、コイル駆動デューティ比を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のトランスミッタ。
【請求項16】
前記プロセッサは、流動管装置ゲイン、コイル電流、電極雑音、信号対雑音比、及び電極電圧零点移動特性のうちの少なくとも1つ更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項14に記載のトランスミッタ。
【請求項17】
前記プロセッサは、流動管電力定格及びトランスミッタ電力定格の少なくとも一方を含む電力定格に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項14に記載のトランスミッタ。
【請求項18】
前記プロセッサは、最速応答特性、特定のコイル駆動周波数に対する最大信号対雑音比、特定の精度に対する最大信号対雑音比、及び電力効率のうちの少なくとも1つを含む性能基準に更に基づき、前記動作設定値を定めることを特徴とする請求項14に記載のトランスミッタ。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記動作設定値を継続的に調整することを特徴とする請求項14に記載のトランスミッタ。
【請求項20】
電磁式流量計の作動を制御する方法であって、
コイル抵抗、コイルインダクタンス、及び電力定格を含む流量計パラメータを取得する工程と、
性能基準を入力する工程と、
取得した前記流量計パラメータ及び入力された前記性能基準に基づき、コイル駆動電流設定値及びコイル駆動周波数設定値を含む動作設定値を定める工程と、
定められた前記動作設定値に基づき、前記電磁式流量計のフィールドコイルの駆動を制御する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項21】
定められた前記動作設定値は、コイル駆動デューティ比を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記流量計パラメータは、流動管装置ゲイン、コイル電流、電極雑音、信号対雑音比、及び電極電圧零点移動特性のうちの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記電力定格は、流動管電力定格及びトランスミッタ電力定格の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記性能基準は、最速応答特性、特定のコイル駆動周波数に対する最大信号対雑音比、特定の精度に対する最大信号対雑音比、及び電力効率のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記電磁式流量計の作動中、前記動作設定値を調整して、前記流量計パラメータの変動を補償する工程を更に備えることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作設定値自動選定機能を有した電磁式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁式流量計は、ファラデーの電磁誘導の法則、即ち電磁作用によって流量を計測するものである。一般的に、電磁式流量計は、流動管装置とトランスミッタとを備える。流動管装置は、導管と、導管に取り付けられたフィールドコイル(複数のコイルからなっていてもよい)と、導管の管壁を貫通して設けられた電極とを備える。トランスミッタがフィールドコイルを駆動して導管を横切る磁界を生成し、この磁界によって、プロセス流体の流動を横切る起電力(EMF)が誘起される。こうして生じた電位差(即ち、電圧)は、導管の管壁を貫通して設けられてプロセス流体と接している1対の電極を用いるか、または静電結合を介して検出される。流速は、誘起されるEMFと比例関係にあり、体積流量は、流速及び流路断面積に比例する。トランスミッタは、検出した電圧を電極から受け取り、流量の計測値を示す信号を生成する。
【0003】
一般的に、電磁式の流量計測技術は、水を主成分とする流体、イオン溶液、及びそれ以外の導電性流体に適用可能である。具体的な用途には、水処理施設、高純度薬品製造、衛生的な飲食物製造、並びに、危険性及び腐食性を有したプロセス流体を伴う化学処理が含まれる。また、電磁式流量計は、摩耗性や腐食性を有するスラリを利用した液圧破砕技術を用いる炭化水素燃料産業や、それ以外の炭化水素抽出処理でも使用される。
【0004】
電磁式流量計は、付随して生じる恒久的な圧力損失(例えば、オリフィス板やベンチュリ管を通過する際の圧力損失)のために差圧式の技術が好まれないような用途において、迅速且つ正確な流量計測を提供する。また、タービンロータ、渦流生成部材、或いはピトー管といった機械要素をプロセス流体中に導入することが困難または実現不可能な場合にも、電磁式流量計を使用することが可能である。
【0005】
いくつかの形式の電磁式流量計では、交流電源電力によってそのまま駆動するフィールドコイルが用いられる。また、一般的にパルス化直流励磁型電磁式流量計と称されるような別のタイプの電磁式流量計では、低い周波数の矩形波で周期的にフィールドコイルの駆動、即ち電力供給が行われる。このパルス化直流励磁型電磁式流量計は、駆動に用いる矩形波により定まる周波数で方向が交互に切り替わる磁界を用いる。
【0006】
電磁式流量計では、コイル電流と、フィールドコイルの巻数とによって、流動管装置を通って流動する導電性のプロセス流体に直交する磁界の強さが定まる。このような磁界を横切るプロセス流体の流速に応じ、このプロセス流体に曝されている電極に、わずかな電位が生じる。電極に生じた信号は、フィールドコイルの特定の巻数及びコイル電流において、流速に正比例する。
【0007】
特定の流量において、電磁式流量計を通過する流体によって生じる典型的な雑音スペクトルは、周波数の逆数に比例した大きさを有している(「1/fノイズ」または「ピンクノイズ」と称されることが多い)。また、この雑音レベルは、流速の上昇に伴って増大する。従って、電磁式流量計は、信号対雑音比を改善する上で、より高い駆動周波数で作動可能であることが有利となる場合が多い。また、電磁式流量計の電極に生成される信号レベルは、フィールドコイルのアンペアターン(即ち、コイル電流のアンペア値と、フィールドコイルの巻線の数、つまりコイル巻数との積)に正比例するので、信号対雑音比を改善するには、より大きなコイル駆動電流で作動可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パルス化直流励磁型電磁式流量計では、磁界の方向が駆動周波数で切り替わる。磁界の方向が切り替わると、急変する磁界によって、電極が検出する電圧にスパイクが生じる。流量計測を行うには、計測を行う前に、電極の電圧スパイクが落ち着くまで、電磁式流量計の電極電圧計測回路が待機しなければならない。生じうる誤差のもう1つの要因は、コイルに流れる電流が安定していない場合、或いは磁界の変化がコイルに流れる電流に対して遅れ、ゆっくりと変化する場合に、結果として電極信号に含まれる電圧が、流量計測値における誤差として現れることになる。ある上限周波数では、コイル駆動回路でコイル電流、即ち磁束密度を安定させることができず、その結果、コイル電流の変動により、流量に関係しない電圧変化が電極電圧に誘起される。このような上限周波数を上回る作動は、電磁式流量計の精度及び信頼性を損なわせることになる。また、安定しない駆動電流により、電磁式流量計の零点精度が低下する。
【0009】
コイル電流が安定化する速さは、流動管装置の径及び構造ごとに異なる。流動管装置の径が小さいほど、コイル電流は迅速に安定化するので、径の小さい流動管装置の方が、径の大きな流動管装置よりも高い駆動周波数で作動させることが可能である。更に、流動管装置の構造部材に用いるいくつかの材料の磁気特性及び電気特性は、コイルに流れる電流に対する磁束密度の遅れを引き起こす可能性がある。このことは、比較的高い周波数で作動するコイルにとって、特に重要な問題となる。
【0010】
駆動電流の波形に影響を及ぼす主たる要因は、コイル駆動回路と流動管装置との間のリード線を含むフィールドコイルのインダクタンス及び電気抵抗である。電磁式の流動管装置は、流路径や製造業者によって、広範にわたる様々なインダクタンス及び電気抵抗を有している。同じ流動管装置が異なって設置されることにより、トランスミッタと流動管装置との接続に用いる電線の電気抵抗の大きさに応じ、これら2つの装置以外の要素によって変動するセンサ抵抗を有する可能性がある。単一の製造業者の製品群であっても、フィールドコイルのインダクタンスと流動管装置の流路径との間には、直接的な関係が存在しない可能性がある。新たな流動管装置だけでなく、既存の流動管装置の設計変更でも、専用のトランスミッタが製造されていたような場合には、使用困難となりうるような、異なるコイルインダクタンス及び異なるコイル抵抗となる可能性がある。
【0011】
従って、流動管装置とトランスミッタとの個々の組み合わせについて、適切な動作設定値を選定することは、困難となる可能性がある。駆動電流及び駆動周波数についての最適な設定値を予め決定することは、ほとんど不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
電磁式流量計は、流動管装置と、動作設定値に基づき流動管装置に対する駆動を行うトランスミッタとを共に備える。流動管装置は、流体が流動する導管と、前記導管に取り付けられ、コイル抵抗及びコイルインダクタンスによって特徴付けられるフィールドコイルと、前記導管を流動する前記流体内に前記フィールドコイルが生成した磁界によって誘起される電圧を検出する電極とを備える。トランスミッタは、前記フィールドコイルの前記コイル抵抗及び前記コイルインダクタンスを計測するように構成される。更に、トランスミッタは、コイル駆動周波数、コイル駆動電流、及びコイル駆動デューティ比によって特徴付けられるパルス化直流電流波形の電流を用い、前記磁界を生成するように前記フィールドコイルを駆動するコイル駆動部と、前記電極が検出した前記電圧に相関する流量計測値を生成するプロセッサであって、計測された前記コイル抵抗と、計測された前記コイルインダクタンスとに基づき、前記コイル駆動周波数、前記コイル駆動電流、及び前記コイル駆動デューティ比についての動作設定値を定めるプロセッサとを備える
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電磁式流量計のブロック図である。
図2図1に示す電磁式流量計に用いるコイル駆動部、及び付随する計測回路を示すブロック図である。
図3】トランスミッタによる動作設定値の自動選定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、典型的な電磁式流量計10を示しており、この電磁式流量計10は、主要部(流動管装置、即ちセンサ部)10Aと、付属部(トランスミッタ)10Bとを備える。流動管装置10Aは、導管12、絶縁用のライナ14、電極16A、電極16B、並びに直列接続されたコイル18A及びコイル18Bによって形成されるフィールドコイル18を備える。
【0015】
流動管装置10Aの主たる機能は、計測対象の流体の流速に比例する電圧を生成することである。コイル18A及びコイル18Bは、電流が流れることにより駆動されて磁界を生成する。パルス化直流励磁型の電磁式流量計では、コイル駆動電流の方向が周期的に反転されることにより、これらコイル18A及びコイル18Bが生成する磁界の方向が切り替わる。流動管装置10Aの内部を通過するプロセス流体は移動導電体として作用し、磁界によって当該流体中に電圧が誘起される。流動管装置10Aの内周面と面一となるように取り付けられた2つの電極16A及び16Bは、導電性を有したプロセス流体と電気的に直に接することにより、プロセス流体中に生じた電圧を取り出す。この電圧が短絡するのを防止するため、プロセス流体は電気的絶縁材料の中に収容されている必要がある。導管12が金属管である場合、この電気的絶縁はライナ14によって行われ、このライナ14は、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれ以外の絶縁材などの非導電性材料からなる。
【0016】
トランスミッタ10Bは、電極16A及び電極16Bに生成された電圧を解析し、標準化された信号を監視システムまたは制御システムに伝送する。付属部10Bは、一般的にトランスミッタまたは信号変換器と称される。
【0017】
通常、トランスミッタ10Bは、信号プロセッサ20、デジタルプロセッサ22、コイル駆動部24、通信用インタフェース26、及びローカルオペレータインタフェース28を備える。信号の変換、調整、及び伝送がトランスミッタ10Bの主たる機能である。
【0018】
デジタルプロセッサ22は、コイル駆動部24によってコイル18A及びコイル18Bに供給されるパルス化直流コイル駆動電流のパルス周波数を制御する。コイル駆動部24によって供給される電流の波形は、パルス周波数またはコイル駆動周波数と称される周波数を有した矩形波である。この矩形波は、デジタルプロセッサ22によって選定される可変のコイル駆動デューティ比を有するものとすることができる。
【0019】
信号プロセッサ20は、電極16A及び電極16B、並びに接地点に接続されている。接地点への接続は、導管12への接続であってもよいし、導管12の上流側または下流側にあるフランジまたは配管部分への接続であってもよい。
【0020】
デジタルプロセッサ22によって定められた電極電圧サンプリング期間にわたり、信号プロセッサ20は、電極16Aの電位VA及び電極16Bの電位VBを監視する。信号プロセッサ20は、電極16Aと電極16Bとの間の電位の差を表す電圧を生成し、この電圧を、電極電圧サンプリング期間における電極電圧を示すデジタル信号に変換する。デジタルプロセッサ22は、更に、信号プロセッサ20から受け取ったデジタル信号の信号処理やフィルタリングを行うようにしてもよい。デジタルプロセッサ22は、通信用インタフェース26に流量計測値を送り、通信用インタフェース26は、この流量計測値を、コントロールルームに設置可能な監視システムまたはコントロールシステム(図示せず)に伝送するための通信を行う。通信用インタフェース26による通信は、4mAと20mAとの間で変化するアナログ電流値、デジタル情報が4〜20mAの電流に変調されるHART(登録商標)通信プロトコル、例えばFieldbus(登録商標、IEC61158)のようなデジタルバスを介した通信プロトコル、或いは、例えばWirelessHART(登録商標、IEC62591)のようなワイヤレスプロトコルを用いるワイヤレスネットワークを介したワイヤレス通信によって行うことが可能である。
【0021】
電磁式流量計10は、流動管装置10Aの特性、並びに流動管装置10A及びトランスミッタ10Bの電力定格に基づき、コイル駆動周波数及びコイル駆動電流に、必要に応じてコイル駆動電流のデューティ比を加え、これらの最適な組み合わせを示す動作設定値を自動的に選定する方法を提供する。このようなコイル駆動周波数、コイル駆動電流、及びコイル駆動デューティ比の自動選定は、設置の際に現場で行ってもよいし、トランスミッタの起動の際に自動的に行ったり、流動管装置10A及びトランスミッタ10Bの作動中に、バックグラウンドで継続的に実行したりしてもよい。
【0022】
動作設定値の自動選定は、個々の設置の際、トランスミッタ10Bの動作を設定するためにオペレータが行う性能基準の選定と共に入力された流量計パラメータを用いるアルゴリズムに基づき、デジタルプロセッサ22が実行する。入力されて使用される流量計パラメータには、コイルインダクタンス、コイル抵抗、流動管装置ゲイン(即ち、アンペア単位の駆動電流あたりのミリボルト単位の出力電圧)、流動管装置電力定格、トランスミッタ電力定格、及び磁束密度を含めることができる。また、デジタルプロセッサ22が用いる性能基準には、例えば、最速応答特性、周波数に応じた最大信号対雑音比、精度に応じた最大信号対雑音比、及び電力効率を含めることができる。オペレータは、ローカルオペレータインタフェース28を介し、性能基準を選定することができる。様々な性能基準の候補をローカルオペレータインタフェース28に表示し、そこから選定を行って、オペレータからデジタルプロセッサ22への入力として性能基準を供給するようにしてもよい。オペレータによる性能基準の選定は、単一の性能基準を示すものであってもよいし、2以上の性能基準の組み合わせを示すものであってもよい。
【0023】
流量計パラメータには、コイルインダクタンス及びコイル抵抗の計測値が含まれ、必要に応じて流動管装置ゲイン及び磁束密度の少なくとも一方の計測値が含まれる。これらの計測値は、設置の際、またはトランスミッタ10Bの起動の際に、トランスミッタ10Bが自動的に計測してもよいし、電磁式流量計10の作動の間に、トランスミッタ10Bが継続して自動的に計測してもよい。これに代えて、コイルインダクタンス、コイル抵抗、及び流動管装置ゲインについては、設置の前に(即ち、製造工場で)計測した後、ローカルオペレータインタフェース28を介し、或いは通信用インタフェース26に接続された設定用機器(図示せず)から、デジタルプロセッサ22への入力として供給するようにしてもよい。
【0024】
流動管装置10Aのゲイン、並びにコイルインダクタンス及びコイル抵抗の計測値からなる流量計パラメータに基づき、トランスミッタ10Bが、コイル駆動電流、コイル駆動周波数、及びコイル駆動デューティ比の設定値を選定できるようにすることにより、流動管装置10Aとトランスミッタ10Bとの個別の組み合わせに適合するように個々に設置を行うことが可能となる。オペレータが選定した性能基準に応じ、トランスミッタ10Bが、コイル駆動電流、コイル駆動周波数、及びコイル駆動デューティ比の設定値を適合させることで、最善の信号対雑音比、最善の省電力性能、または最善(最速)の応答時間といった、所望の性能基準が達成されることになる。
【0025】
上述の流量計パラメータに加え、コイル電流(またはコイル電流安定性)、電極雑音、及び電極電圧零点移動特性といった、付加的な入力を行うようにしてもよい。これらの付加的な入力により、動作設定値を選定する際のデジタルプロセッサ22の能力を向上させることができる。
【0026】
流動管装置10Aの現実の特性に基づいて動作設定値が選定されるので、このような動作設定値の自動選定により、より柔軟で優れた動作設定値選定が行われる。従って、従来とは異なる特性(例えば、より低いコイルインダクタンスで、より高い流動管装置ゲイン)を有した新たな流動管装置が使用可能となった場合、トランスミッタ10Bが製造された時点では、まだその新たな流動管装置が存在していなかったとしても、デジタルプロセッサ22は、新たな流動管装置の特性に基づき、動作設定値を選定することができる。
【0027】
また、動作設定値の自動選定は、コイル駆動周波数及びコイル駆動電流について、より広範な選択範囲を提供するものである。デジタルプロセッサ22が行う動作設定値の自動選定では、1つだけの、または限られた数のコイル駆動電流の設定値と、1つだけの、または限られた数のコイル駆動周波数の設定値とを有するのではなく、様々なコイル駆動周波数、コイル駆動電流、及びコイル駆動デューティ比の設定値からなる、より多数の組み合わせから選定を行うことが可能となる。これにより、それまで市場に出回っていた流動管装置とは異なる電気的パラメータを有して設計された新たな流動管装置をトランスミッタを組み合わせる際に、より大きな柔軟性がもたらされる。
【0028】
動作設定値の自動選定は、継続的な調整機能として、バックグラウンドで実施することも可能である。これにより、トランスミッタ10Bは、環境条件が変化しても、選定された性能基準について、作動中に最善の性能を維持可能となる。具体的には、作動中に、温度変化により、2つのコイル18A及び18B、並びにこれらコイル18A及び18Bにコイル駆動部14を接続するケーブルの電気抵抗に変化が生じる可能性がある。
【0029】
また、動作設定値の自動選定により、必要に応じて、流動管装置を別の流動管装置に交換することも可能となる。トランスミッタ10Bは、交換した流動管装置に付随する新たな流量計パラメータに適応し、それらの流量計パラメータに基づき、オペレータが選定した性能基準に最もよく合致するような動作設定点を再度選定する。
【0030】
場合によっては、デジタルプロセッサ22が、ローカルオペレータインタフェース28を介し、同じ性能基準に対する代替の動作設定値の選定候補、または選定可能な複数の性能基準のそれぞれに対する動作設定値の選定候補を、オペレータに対して表示することも可能である。これにより、オペレータは、電磁式流量計10に対して要求する性能が得られるような性能基準の選定を行うことが可能となる。
【0031】
電力重視で設置を行う場合には、最も効率的な作動となるような最小限のコイル駆動デューティ比を求めるようにしてもよい。消費電力は、最低限求められる信号対雑音比が得られるような点まで低下させた状態に維持することができる。これは、プロセス流体の流量が増大するに従い、電力消費を低減することができることを意味している。或いは、流量が増大すると、同じ電力量で、より迅速な情報の更新が可能となる。これらの調整は、電磁式流量計10が作動している際にバックグラウンドで作動するデジタルプロセッサ22によって自動的に実施することが可能である。
【0032】
コイル駆動周波数に相関する値としての電極雑音及び電極電圧零点移動特性を含む付加的な流量計パラメータを、デジタルプロセッサ22で用いるようにしてもよい。これらの流量計パラメータの入力は、コイル駆動周波数の設定値の選定に含めてもよい。
【0033】
図2は、フィールドコイル18(コイル18A及びコイル18B)並びにデジタルプロセッサ22と共にコイル駆動部24を示すブロック図である。コイル駆動部24は、4つの電界効果トランジスタ32,34,36,38で形成されるHブリッジ回路30、デジタル・アナログコンバータ(DAC)40、電流コントローラ42、クロックロジック回路44、コイル電圧増幅調整回路46、コイル電流増幅調整回路48、及び検出用抵抗50を備える。フィールドコイル18を形成するコイル18A及びコイル18Bは、Hブリッジ回路30のノード52とノード54との間で、直列に接続されている。図2に示すように、コイル18A及びコイル18Bは、ノード52とノード54との間に、コイルインダクタンスL及びコイル抵抗Rを形成する。
【0034】
デジタルプロセッサ22は、Hブリッジ回路30を介してコイル18A及びコイル18Bに供給される駆動信号におけるコイル駆動電流、コイル駆動周波数、及びコイル駆動デューティ比を制御する。駆動信号のコイル駆動周波数及びコイル駆動デューティ比は、クロックロジック回路44を介し、デジタルプロセッサ22によって制御され、クロックロジック回路44は、クロック信号CH及びクロック信号CLを発生する。クロック信号CHは、Hブリッジ回路30の電界効果トランジスタ32及び電界効果トランジスタ38をオンオフさせる。クロック信号CLは、Hブリッジ回路30の電界効果トランジスタ34及び電界効果トランジスタ36をオンオフさせる。クロック信号CHによって電界効果トランジスタ32及び電界効果トランジスタ38がオンし、クロック信号CLによって電界効果トランジスタ34及び電界効果トランジスタ36がオフしているとき、電流は、Hブリッジ回路30のノード56から電界効果トランジスタ32を介してノード52へと流れた後、コイル18A及びコイル18Bを介してノード54へと第1の方向に流れ、更に電界効果トランジスタ38を介してHブリッジ回路30のノード58へと流れ、検出用抵抗50を介して接地点に流れる。また、クロック信号CLによって電界効果トランジスタ34及び電界効果トランジスタ36がオンし、クロック信号CHによって電界効果トランジスタ32及び電界効果トランジスタ38がオフしているとき、電流は、Hブリッジ回路30のノード56から電界効果トランジスタ34を介してノード54へと流れた後、コイル18A及びコイル18Bを介してノード52へと第2の方向に流れ、更に電界効果トランジスタ36を介してHブリッジ回路30のノード58へと流れ、検出用抵抗50を介して接地点に流れる。
【0035】
Hブリッジ回路30に供給される電流は、DAC40を介し、デジタルプロセッサ22によって制御される。デジタルプロセッサ22からのデジタル制御信号により、DAC40は、電流コントローラ42の入力信号としてコイル駆動電流の設定値を示すアナログ電圧を生成する。電流コントローラ42に供給されるコイル駆動電流の設定値信号と相関関係にあるコイル電流Iは、電流コントローラ42からHブリッジ回路30のノード56へと流れた後、電界効果トランジスタ32及び電界効果トランジスタ38がオンしているときには、コイル18A及びコイル18Bを第1の方向に流れ、電界効果トランジスタ34及び電界効果トランジスタ36がオンしているときには、コイル18A及びコイル18Bを第2の方向に流れる。その後、コイル電流Iは、検出用抵抗50を介して接地点へと流れる。
【0036】
コイル駆動部24は、コイル電圧を検出するコイル電圧増幅調整回路46、及びコイル電流を検出するコイル電流増幅調整回路48を備えている。コイル電圧増幅調整回路46の入力端子は、Hブリッジ回路30のノード56とノード58とに接続されている。コイル電圧増幅調整回路46の出力信号は、デジタルプロセッサ22の基板実装アナログ・デジタルコンバータ(ADC)の入力端子に供給される。コイル電流増幅調整回路48の入力端子は、Hブリッジ回路30のノード58と接地点とに接続されている。コイル電流増幅調整回路48の入力端子における電圧Vは、コイル電流Iに検出用抵抗50の抵抗値Rを乗じたものに等しく、即ち、V=I・Rである。
【0037】
デジタルプロセッサ22は、コイル電圧増幅調整回路46及びコイル電流増幅調整回路48のそれぞれから受け取った信号に基づき、コイル電圧Vを示すデジタル値及びコイル電流Iを示すデジタル値を生成する。これらのデジタル値を用い、デジタルプロセッサ22は、コイル抵抗及びコイルインダクタンスを求める。
【0038】
コイル18A及びコイル18Bが使用する電力は、デジタルプロセッサ22がコイル電圧増幅調整回路46及びコイル電流増幅調整回路48と協働して求めたコイル電流の計測値及びコイル電圧の計測値を用いて算出することが可能である。コイル電流Iは、計算式I=V/Rで得られる。コイル電圧Vは、計算式V=V−Vで得られる。コイル電流I及びコイル電圧Vが計測されれば、コイル18A及びコイル18Bの抵抗R(コイル駆動部24をコイル18A及びコイル18Bと接続する配線の抵抗を含む)は、計算式R=V/Iで算出できる。コイル電流の整定時間は、抵抗Rと主に、デジタルプロセッサ22によるコイルインダクタンスL(コイル18A及びコイル18Bとコイル駆動部24との間の配線によって生じるインダクタンスを含む)の算出に用いられる。
【0039】
図3は、デジタルプロセッサ22が実行する動作設定値の自動選定処理70を示すフローチャートである。自動選定処理70は、ステップ72で開始される。デジタルプロセッサ22は、入力された流量計パラメータを取得し(ステップ74)、この流量計パラメータには、例えば、コイルインダクタンス、コイル抵抗、流動管装置ゲイン、流動管装置電力定格、トランスミッタ電力定格、コイル電流、電極雑音、磁束密度、及び電極電圧零点移動特性を周波数と関連付けて含めることができる。
【0040】
コイルインダクタンス及びコイル抵抗の値は、コイル駆動部24と協働してデジタルプロセッサ22が行う計測結果とすることができるが、ローカルオペレータインタフェース28または通信用インタフェース26を介し、デジタルプロセッサ22に与えられる入力値としてもよい。また、デジタルプロセッサ22は、流動管装置ゲインを計測するためのテストを開始してもよいし、計測した流動管装置ゲインの値を、ローカルオペレータインタフェース28を介して提示するか、或いは通信用インタフェース26を介して送信されるメッセージにより提示するよう、オペレータに促すようにしてもよい。
【0041】
また、デジタルプロセッサ22は、動作設定値の選定に使用するための、流動管装置10Aの電力定格やトランスミッタ10Bの電力定格といった、他の流量計パラメータの提示をオペレータに促すようにしてもよい。場合によっては、デジタルプロセッサ22が、コイル電流、電極雑音、信号対雑音比、及び電極電圧零点移動特性のうちの1つ以上の提示をオペレータに促すようにしてもよい。個々の性能基準の選定に利用できるように、必要に応じて、別のパラメータを、計測またはオペレータの入力により得るようにすることもできる。
【0042】
デジタルプロセッサ22は、選定した性能基準を示すようにオペレータに促し(ステップ76)、その性能基準を動作設定値の自動選定に用いる(ステップ78)。この性能基準の選定には、最速応答特性、特定の周波数または特定の要求精度に対する最大信号対雑音比、及び特定の要求信号対雑音比に基づく電力効率などの選択を含めることができる。また、性能基準の選定には、トランスミッタ10Bの作動中におけるバックグラウンドでの継続的な動作設定値の調整を選択的に含めてもよいし、代わりに、オペレータが新たな動作設定値の選定を要求するまでの間、継続的な調整をせずに使用する動作設定値の選定を含めてもよい。
【0043】
受け取った流量計パラメータ及びオペレータが選定した性能基準に基づき、デジタルプロセッサ22は、コイル駆動周波数、コイル駆動電流、及びコイル駆動デューティ比についての動作設定値を算出する(ステップ78)。次に、デジタルプロセッサ22は、コイル駆動部24で適用するコイル駆動周波数の値、コイル駆動電流の値、及びコイル駆動デューティ比の値を動作値として設定する(ステップ80)。
【0044】
次に、デジタルプロセッサ22は、オペレータがバックグラウンドでの継続的な調整を選択しているか否かをチェックする(ステップ82)。答えがノー(NO)である場合、動作設定値の自動選定処理を完了する(ステップ84)。この場合、オペレータが新たな動作設定値の選定を求めてデジタルプロセッサ22に入力を行うまで、自動選定処理70が繰り返されることはない。また、自動選定処理70は、トランスミッタ10Bへの電力供給が遮断された後、トランスミッタ10Bに再び電力が供給される度に、再開するようにしてもよい。
【0045】
一方、答えがイエス(YES)である場合、動作設定値の継続的な調整が、デジタルプロセッサ22によりバックグラウンドで実行されることになる。自動選定処理70は、ステップ74に戻り、ステップ74からステップ82が繰り返される。
【0046】
動作設定値の自動選定により、電磁式流量計10は、与えられた設置状態に対応する動作設定値を定める際に、流動管装置10A及びトランスミッタ10Bの双方の特性を考慮することが可能となる。動作設定値の自動選定は、付加的な経費や高性能の信号処理機能を加えることなく、実現することが可能である。設置された状態における性能の劇的な改善は、流動管装置及びトランスミッタのパラメータと、オペレータが要求する特定の性能基準とを、より良好に整合させることで、達成することができる。動作設定値の自動選定により、トランスミッタ10Bは、そのトランスミッタ10Bが製造された時点では存在していなかった流動管装置の作動に対しても、より良好に整合させることが可能となる。
【0047】
動作設定値の自動選定により、コイル駆動電流の大きさ、コイル駆動周波数、コイル駆動デューティ比、或いはこれらパラメータの任意の組み合わせを、コイルインダクタンスやコイル抵抗だけでなく、流動管装置ゲイン、信号対雑音比データ、トランスミッタ電力定格、流動管装置電力定格、電流安定性、及び電極特性といった、別の複数のパラメータに基づいて調整することが可能となる。
【0048】
コイル駆動のための設定値は、トランスミッタの製造時点で判っているセンサデータに依存するものではない。コイル抵抗に影響を及ぼす可能性がある温度変化を考慮する必要があれば、当該設定値を継続的に調整することが可能である。
【0049】
動作設定値の自動選定は、使用する特定の性能基準をオペレータが選定することを可能とし、電磁式流量計の特性と、オペレータが選定した性能基準とに基づき、デジタルプロセッサが自動的に動作設定値を選定するので、オペレータにとって電磁式流量計の設定作業を簡素化させる。
【0050】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で本発明の各構成要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるための様々な変形が可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての態様を含むものである。
図1
図2
図3