【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、特許請求の範囲の主題によって解決される。
【0013】
本発明によれば、底板およびフレームを備え、底板およびフレームが異なる材料で作られ、底板の熱伝導率がフレームの熱伝導率よりも高く、フレームが底板上に設置される、材料の結晶化のためのハイブリッドるつぼが提供される。底板とフレームの熱伝導率が違うことにより、結晶化前線の中心と縁部との間の温度勾配が、結晶化高さ全体にわたって無視できる程度に低く保たれるので、全結晶化の間、結晶の好ましい成長方向が、インゴット全体で下から上へ垂直に確立される。結晶質材料の歩留まりを低減する、望ましくない横方向の結晶成長は回避される。
【0014】
本発明によれば、フレームは底板上に設置される。このことは、底板およびフレームが、従来技術では一般的であるように1つの個片から製造されるのではなく、互いに解放可能に接続されることを意味する。本発明による解放可能な接続は、フレームが底板上にのみ設置されるという事実にある。好ましくは、フレームと底板との間に、形状嵌めおよび/または材料結合はない。
【0015】
本発明による溶融および結晶化の方法における実施形態により、底板とフレームとの間に固定接続を確立する必要はない。特に、本発明によれば、形状嵌めおよび/または材料結合は、好ましくは必要ではなく、また存在しない。背景として、溶融され結晶化される材料は、好ましくはハイブリッドるつぼの底板(に達する)までは溶融されず、同材料の固体底部層が底板上に留まるので、それが、一方ではフレームと底板との間のギャップを封止し、他方では材料からの衝撃に対して底板を保護する。このことは、例えばねじ接続、押さえを介して、または当該分野で知られている他の手段によって、フレームが底板に解放可能に接続されることを除外せず、したがって好ましくは、解放可能な接続のための手段を備える。しかしながら、一実施形態では、かかる手段を設けない。
【0016】
この実施形態はまた、1以上の結晶化プロセスに対して底板を使用することを可能にする。最終的に、底板は、同材料の固体底部層によって溶融物による衝撃から保護される。フレームは、本発明の一実施形態では同材料の層によって保護されないが、溶融によって大幅な除去が生じたり、転換プロセスによって今後の使用が不確かになるるつぼの損傷が引き起きされるような場合、一溶融サイクル後に交換することができる。
【0017】
0℃で30W/(m・K)以下、より好ましくは20W/(m・K)以下、より好ましくは10W/(m・K)以下の熱伝導率を有する材料を、フレームに使用するのが有利であることが証明されている。フレームの熱伝導率が、0℃で5W/(m・K)以下、より好ましくは3W/(m・K)以下の値を有することがさらに好ましい。フレームの熱伝導率が高すぎると、好ましい方向での方向性凝固が妨げられる。材料の熱伝導率を判断する測定方法は、当該分野において知られている。
【0018】
フレームと底板との間の熱伝導率の差は、少なくとも10W/(m・K)であるべきである。底板の熱伝導率が、少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.3倍、より好ましくは少なくとも1.5倍、および特に好ましくは少なくとも2倍、フレームの熱伝導率よりも高いように、材料を選択するのが特に有利である。特段の指定がない限り、熱伝導率は0℃で判断される。
【0019】
フレームの材料として適している材料は、特に、酸化セラミック材料である。本発明によれば、この目的のため、シリカを使用することが特に好ましい。フレームは、好ましくは保護層を、特に、好ましくは窒化ケイ素である、保護窒化物層を備える。かかる保護層は、溶融物に対して実質的に不活性の挙動を示し、非常に高温に耐えることができる。
【0020】
底板の材料の熱伝導率は、0℃で、好ましくは>10W/(m・K)、より好ましくは少なくとも13W/(m・K)、より好ましくは少なくとも20W/(m・K)、さらにより好ましくは少なくとも25W/(m・K)、最も好ましくは少なくとも30W/(m・K)である。本発明の好ましい実施形態では、熱伝導率はさらに高く、特に少なくとも40W/(m・K)、より好ましくは少なくとも50W/(m・K)である。
【0021】
特に好ましい実施形態では、底板は、結晶化される材料の溶融温度では固体である材料で作られ、特に金属材料で作られる。金属材料には、金属および合金が含まれる。底板の材料の溶融温度は、好ましくは600℃超、より好ましくは800℃超、より好ましくは1000℃超、より好ましくは1200℃超である。本発明は、好ましくは、結晶質シリコンの作製に関する。したがって、底板に対して、何ら損傷することなく1410℃を超える温度に耐える、好ましい材料が使用される。代替実施形態では、底板は、グラファイト含有材料、特にグラファイトから実質的に成る。好ましくは、底板はセラミック材料では作られず、特に酸化セラミック材料では作られない。
【0022】
本明細書に記載するハイブリッドるつぼを、結晶質材料、特に単結晶または多結晶材料(特にシリコン)を作製するプロセスで使用することも、本発明の範囲内である。
【0023】
ハイブリッドるつぼの内径は、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは少なくとも30cm、特に好ましくは少なくとも50cm、特に400cm以下、より好ましくは300cm以下、特に好ましくは200cm以下である。これは、それぞれの最大内径を指す。
【0024】
さらに、本発明によれば、結晶質材料を作製するプロセスであって、
A.本発明によるハイブリッドるつぼに原材料を充填するステップと、
B.材料が上から下へと溶融するように入熱するステップと、
C.溶融物を凝固させて結晶質製品を形成するステップとを含み、
プロセス全体を通して、未溶融材料の画分(Anteil)が底板上に留まる、プロセスが提供される。
【0025】
原材料の追加および供給は、固体またはすでに溶融した形態で実現することができる。結晶質製品は単結晶であっても多結晶であってもよい。入熱は、好ましくは、特に1つもしくは複数の抵抗および/または誘導加熱器から選択される、加熱装置を用いて行われる。
【0026】
原材料の充填に先立って、必要であれば、使用される原材料で作られているが粒径がより小さい、いわゆる種材料を導入することができる。この種材料は、溶融プロセス中、液化されないかまたは完全には液化されず、底板上に固体底部層または未溶融材料の画分として留まる。
【0027】
本発明の一実施形態は、原材料の充填に先立って底板上に設置される保護フレームの使用を提供する。保護フレームは、入熱に先立って、または溶融プロセスに先立って取り除かれる。保護フレームは、縁部が鋭い場合が多い原材料によるフレームの損傷を回避するために、原材料の充填中、フレームを保護するのに役立つ。一実施形態では、第1のステップで、保護フレームが底板上に設置され、その後、種材料が供給され、次に原材料が保護フレーム内に充填される。フレームの保全には注意を払う必要がないので、充填プロセスは、単純な流し込みによって、さらには機械によって実現することができる。フレーム自体は、充填の時点ですでに底板上に設置され、保護フレームを取り囲んでいてもよく、または充填プロセス後にのみ、保護フレームの上に配設することができる。いずれの場合も、保護フレームが取り除かれると、フレームは底板上に載った状態となる。
【0028】
したがって、本発明による好ましい方法は、
A.保護フレームを底板上に設置するステップと、
B.任意に、保護フレーム内で底板上に種材料を充填するステップと、
C.原材料を種材料上に充填するステップと、
D.保護フレームを取り除くステップと、
E.材料が上から下へと溶融するように入熱するステップと、
F.溶融物を凝固させて結晶質製品を形成するステップとを含み、
プロセス全体を通して、未溶融材料の画分が底板上に留まり、原材料を溶融する時点よりも前にフレームが底板上に設置される。
【0029】
本実施形態では、ハイブリッドるつぼへの入熱は溶融プロセス中に生じるので、原材料は上から下へと底板に向かって溶融される。未溶融材料の画分、いわゆる固体底部層は、底板上に留まる。したがって、底板における温度は、好ましくは材料の溶融温度よりも低温のままである。結晶化の間、温度分布は好ましくは、結晶成長が下から上へと生じるように設定される。
【0030】
固定底部層はハイブリッドるつぼの底板上に留まるので、様々な利点がある。一方で、固体底部層の材料によってフレームと底板との間のギャップが封止されるので、るつぼは、フレームと底板との間で固定接続が不要であるように構成されてもよい。プロセスの開始に先立って、封止、形状嵌め、および/または材料結合を実現する必要はない。さらに、底板上の固定底部層は、溶融物からの衝撃に対して底板を保護する。これにより、抵抗の欠落や汚染のリスクにより、かかるるつぼで使用するのに適していないであろう材料を、底板に使用することが可能になる。それに加えて、ハイブリッドるつぼの底部領域にある溶融物の汚染が有効に回避される。このことにより、底板の材料に対する要件が著しく低減される。
【0031】
本発明によるフレームおよび/または保護フレームは、好ましくは、モノリシックで、または個々の構成要素から組み立てられる。「モノリシック」とは、複数の個々の構成要素から組み立てる必要がなく、1つの個片で作られることを意味する。フレームは底板に向かって開いている。
【0032】
概して、本発明によるハイブリッドるつぼを使用した本発明による方法を用いて、従来技術の製品に照らして、品質がより高く、不純物がより少ない製品が、少なくとも、より少ない製造コストで同じ品質の製品が得られる。また、バッチサイズの計画的増大に対して、モノリシックのるつぼは、安全な取扱いおよびプロセス制御の自由度に関して限界があることが想定される。本発明による製品は単結晶質または多結晶質であってもよい。本方法は、汚染および望ましくない結晶成長がより少ないことによって材料歩留まりが大幅に増加するので、概して、より経済的である。
【0033】
さらに、るつぼの底板は、固体底部層を用いて溶融物の衝撃に対して保護されているので、繰り返し使用することができる。本発明による方法の好ましい一実施形態では、凝固に続いて、製品を除去(移動)するステップが実行され、次に、好ましくはハイブリッドるつぼのフレームが交換される。底板は再使用することができる。
【0034】
溶融物の結晶化または凝固が完了した後、フレームは取り除くことができ、特に、上に持ち上げることができるので、凝固または結晶化した物体が底板上に留まり、さらなる処理に供給することができる。
【0035】
固体底部層の同材料はまた、溶融物が底板の材料によって汚染されるのを防ぐ。好ましくは2パートのハイブリッドるつぼは、底板の被覆が、従来技術とは対照的に不要であり、好ましくは設けられないので、より信頼性高く原材料を供給する機会および方策を提供する。従来技術のるつぼは、通常、溶融物がるつぼと接触するのを防ぐために被覆を有する。したがって、るつぼに対する原材料の供給は、被覆の損傷を回避するために、非常に慎重に実行しなければならない。本発明によれば、被覆は不要であり、好ましくは存在しない。このことはまた、従来技術よりも脆弱な材料を底板に使用できるという事実に関連する。従来技術のセラミックのるつぼは、供給の間に簡単に損傷する可能性があり、そのことがるつぼに対して壊滅的な結果をもたらす恐れがある。
【0036】
好ましい実施形態では、ハイブリッドるつぼは、フレームに加えて、原材料および/または種材料の充填中のみ使用される、追加の保護フレームを備える。保護フレームは、その寸法に関してはフレーム内に嵌合するので、原材料を充填する間、フレームの内壁を損傷から保護する。好ましくは、その長さおよび幅に関してフレームに正確に嵌合するように形作られ、即ち、保護フレームの外側とフレームの内側との間の距離は、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下とする。保護フレームの壁は、好ましくは2〜50mm、より好ましくは3〜25mm、特に好ましくは5〜15mmの厚さを有し、この壁厚が十分であることが見出されている。保護フレームは、フレームと充填された材料との間に広すぎるギャップが残ることを回避するため、厚くなりすぎないようにするべきである。
【0037】
保護フレームは、好ましくは、少なくともフレーム内の原材料の充填レベルに対応する、高さを有する。例えば、保護フレームは、フレームの高さを超えるか、同じ高さを有するか、またはフレームよりもわずかに低い高さとすることができる。
【0038】
本方法の好ましい実施形態では、保護フレームは、原材料および/または種材料の充填に先立って、フレーム内に位置決めされるので、保護フレームも好ましくは底板上に設置される。あるいは、保護フレームは、フレームを配置するのに先立って、底板上に設置することもできる。このため、保護フレームは、原材料および/または種材料の充填中、底板上に留まるので、フレームの内壁が原材料の鋭い縁部による損傷から保護される。これは、原材料としての縁部が鋭いシリコンの場合に特に大きな利点である。
【0039】
保護フレームは、好ましくは、原材料および/または種材料の充填後に、また特に入熱または溶融プロセスに先立って、フレーム内のエリアから取り除かれてもよい。そのため、保護フレームは、材料を充填する間、フレームを保護するためにのみ用いられる。したがって、フレームの寿命が延び、溶融すべき材料が汚染されるリスクが低減される。保護フレームを取り除いた後、充填された材料とフレームの内壁との間に小さいギャップが残る。当然ながら、このギャップは溶融プロセス中に塞がる。
【0040】
保護フレームの使用によって、特別に注意して充填する必要がなくなるので、ハイブリッドるつぼの自動充填を実施することができる。保護フレームは、特にシリコンで作られている場合、この事例では、損傷した場合であっても汚染を引き起こさないので、繰り返し使用されてもよい。
【0041】
保護フレーム自体は、縁部が鋭い原材料による機械的負荷に抵抗する材料で作ることができる。必ずしも耐熱性でなくてもよいが、原材料に対して不活性であるべきであり、即ち、汚染を引き起こすべきではない。一実施形態では、保護フレームは、シリコンで被覆された材料(金属など)、またはシリコンで作られる。あるいは、窒化物で被覆された金属など、他の材料が使用されてもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、底板は、複合材料で、特に傾斜材料で作られる。したがって、底板は、材料内に熱伝導率の特異的分布を有することができる。複合材料は積層材料であってもよい。底板は、局所的に異なる熱伝導率を有することができるので、局所的に異なる熱流を確立することができる。