特許第6457550号(P6457550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6457550車両ベースの移動体通信装置においてリソース管理を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6457550
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】車両ベースの移動体通信装置においてリソース管理を行う方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/30 20180101AFI20190110BHJP
   H04W 80/02 20090101ALI20190110BHJP
   H04W 92/08 20090101ALI20190110BHJP
【FI】
   H04W76/30
   H04W80/02
   H04W92/08
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-555695(P2016-555695)
(86)(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公表番号】特表2017-513302(P2017-513302A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2015052413
(87)【国際公開番号】WO2015149974
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】102014206393.0
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ファートル・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カイントル・マルクス
【審査官】 松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0163093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ベースの移動体通信装置においてリソース管理を行う方法であって、前記移動体通信装置のメモリ内には、ユーザ固有のデータ部分とユーザ非固有のデータ部分とをそれぞれ有する複数の有効化できる識別プロファイル(201,202)が保管されているとともに、前記移動体通信装置は、モデム装置(14)を有しており、当該モデム装置を介し、移動体通信サービスを手配するために利用可能な移動体通信サービスプロバイダの移動体通信ネットワーク(18)に対する少なくとも二つの同時並行の移動体無線通信チャンネルが、それぞれ一つの識別プロファイル(201,202)を使用して確立可能であり、前記移動体通信装置の制御ユニットにより自動的に実施される方法において、
同時に確立された二つの移動体無線通信チャンネルを介して移動体無線通信を行いながら、
−利用中の移動体通信サービスプロバイダを特定するために、現に有効な前記複数の識別プロファイル(201,202)の前記ユーザ非固有のデータ部分を互いに比較し、
−比較において、移動体通信サービスプロバイダが一致することが突き止められた場合、前記移動体無線通信チャンネルの一方を遮断し、他方の前記移動体無線通信チャンネルを介して前記移動体無線通信を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
現に利用中の移動体通信サービスプロバイダを、制御ユニットのメモリ内に保管された対応表を用いて特定し、当該特定表では、識別プロファイル(201,202)の複数のユーザ非固有のデータ部分が、異なる移動体通信サービスプロバイダにグループ単位で対応付けられていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記識別プロファイル(201,202)の前記ユーザ非固有のデータ部分は、それぞれ国別のデータ部分とサービスプロバイダ別のデータ部分とを有しており、第一の比較ステップ(306)では国別のデータ部分を比較し、一致する場合にのみ第二の比較ステップ(306)でサービスプロバイダ別のデータ部分を比較することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、
前記モデム装置(14)は、複数の個別のモデム(141,142)を有し、当該モデムを用いてそれぞれ一つの移動体通信チャンネルが確立可能されていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、
前記モデム装置(14)は、多チャンネルモデムを備え、当該モデムを用いて同時に複数の移動体通信チャンネルが確立可能とされていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法において、
第一の移動体無線通信接続を介して、車両製造業者固有の移動体通信サービスが、一又は複数の選択された移動体通信サービスプロバイダから呼び出されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法において、
第二の移動体無線通信接続を介して、ユーザ固有の移動体通信サービスが、一又は複数の選択された移動体通信サービスプロバイダから要求されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法において、
前記第一の移動体無線通信接続及び前記第二の移動体無線通信接続の前記移動体無線通信を、共同の移動体無線通信チャンネルを介して行う場合に、前記要求された移動体通信サービスの、接続別のアカウント割り当てが行われることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ベースの移動体(モバイル)通信装置(fahrzeugbasierte Mobilfunkeinrichtung)においてリソース管理を行う方法に関し、移動体通信装置のメモリ内には、ユーザ固有のデータ部分とユーザ非固有のデータ部分とをそれぞれ有する複数の有効化できる識別プロファイルが保管されているとともに、移動体通信装置は、モデム装置を有しており、当該モデム装置を介し、移動体通信サービスを手配するために利用可能な移動体通信サービスプロバイダの移動体通信ネットワークに対する少なくとも二つの同時並行の移動体無線通信チャンネルが、それぞれ一つの識別プロファイルを使用して確立可能であり、その場合に、本方法は、移動体通信装置の制御ユニットにより自動的に実施される。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、特許文献1より公知とされている。
【0003】
この文献は、自動車に組み込まれた移動体通信装置を開示し、当該装置により、同時並行の二つの移動体無線通信チャンネルと、さらに追加で衛星航法システムのための衛星通信とが確立可能とされている。複数の移動体無線通信チャンネルを同時に確立するために、公知の移動体通信装置は、然るべきモデム装置を有している。この装置は、複数の個別のモデムを備えることができ、これらを介して、それぞれ一つの移動体通信チャンネルが確立可能とされている。代替的に、モデム装置は、多チャンネルモデムを有していてもよく、これを介して、複数の移動体通信チャンネルが同時に確立可能とされていてもよい。これは、例えばいわゆる二重ないし多重モデム装置(Dual− oder Multiple−Modem−Anlagen)である。
【0004】
モデム装置は、自動車の外部アンテナと接続されており、このアンテナを通して、所定の周波数帯域で、移動体通信サービスプロバイダの移動体通信ネットワークへのさまざまな通信チャンネルが確立される。移動体無線通信チャンネルの確立は、その都度、識別プロファイルを活用(有効化)することで行われ、それらのうち複数が移動体通信装置のメモリ内に保存されている。例えば、このような識別プロファイルは、一ないし複数の“加入者識別モジュール(Subscriber Identity Modul)”SIMに、とりわけ、いわゆるSIMカード形態のものに保管される。SIMの主要な構成要素は、IMSIとしても知られた識別プロファイルであり、このプロファイルは、典型的には、国固有(国別)のデータ部分(MCC)、ネットワーク固有(ネットワーク別)のデータ部分(MNC)及びユーザ固有(ユーザ別)のデータ部分を有する。確立される通信チャンネルは、各々そのチャンネルのために活用される識別プロファイルにより決まっており、識別プロファイルは、例えば所在地別に選択することができる。前もって交わされたユーザの移動体通信契約に従って特定のユーザがどの国においていずれのサービスプロバイダのどのサービスにアクセスできるのかを、予め保存された複数の識別プロファイルをまとめたものが規定する。
【0005】
公知の方法では、同時並行の複数の移動体無線通信チャンネルを構築する手段が用いられ、これにより、できるだけ多く且つ正確な追加情報を得て、その情報を用いて、衛星航法インターフェースを介して受信された衛星データを、自動車の実際の位置情報に特に迅速かつ正確に変換し、できるだけ便利なルートを計算できるようにする。
【0006】
この種の追加情報並びにその他の車両固有の情報は、車両製造業者の移動体通信サービス、或いは車両製造業者の委託を受けた移動体通信サービスプロバイダの移動体通信サービスとして、提供されることが多い。
【0007】
これとは別に、車両ユーザもまた、例えば、電話通信やモバイルインターネットアクセスといった別個の移動体通信サービスを使用するために、個別の移動体無線通信チャンネルを確立したいと考えることもあり得る。例えば、移動体無線通信チャンネルを必要とする車両ベースの移動体通信小セルや移動体ホットスポットが意図されていてもよい(ここで用いられた移動体通信小セルの概念は、例えば、マイクロセル、ピコセル、フェムトセル又は類似のものといった、3GPP標準規格で“Home eNB”として定義されるような、個別のデバイス或いはセルを意味するものでもよいし、3GPP標準規格においてリリース10以降定義されているような、いわゆる“リレーノード”もこの概念に含まれることになる。)。そのため、通常は、同時に確立可能な複数の移動体無線通信チャンネルの一つは、車両製造業者に特化した移動体無線通信のために使用され、他の移動体無線通信チャンネルは、車両ユーザに特化した移動体無線通信のために使用される。そのために用いられるこれら識別プロファイルは、いずれにしろ異なるものであって、それらは、少なくとも自身のユーザ固有のデータ部分の点では違っている。それは、これらプロファイルが、一方のものが車両製造業者を特定し、他方のものが車両ユーザを特定するからである。
【0008】
問題なのは、例えばアンテナといった共用されるコンポーネントの出力によって全体の出力がしばしば制限されていて、その結果、複数の移動体無線通信チャンネルが同時に確立されている場合に、個々の移動体無線通信チャンネルの各出力が弱められているという点である。加えて、複数の移動体無線通信チャンネルが同時に確立されることが、より多くのエネルギー消費につながっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/104580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、本発明の方法によりシステムの出力とエネルギー消費が改善されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の上位概念を以下の特徴に結びつけることにより解決される。すなわち、同時に確立された二つの移動体無線通信チャンネルを介して移動体無線通信を行いながら、
−利用中の移動体通信サービスプロバイダを特定するために、現に有効化している上記複数の識別プロファイルのユーザ非固有のデータ部分を互いに比較し、
−比較において、移動体通信サービスプロバイダが一致することが見出された場合、移動体無線通信チャンネルの一方を遮断し、他方の移動体無線通信チャンネルを介して移動体無線通信を行う。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、従属する特許請求項の対象である。本発明は、その核心において、可能であれば、二つの移動体無線通信チャンネルを同時に確立することをやめ、一つの共通の移動体無線通信チャンネルを介して移動体無線通信を行うことができるようにするというものである。このチャンネル統合が可能であるか否かの決定的な基準となるのは、二つの確立された移動体無線通信チャンネルが同一の移動体通信サービスプロバイダに向かうものであるかどうかという点である。この情報は、現に活用中の識別プロファイルのユーザ非固有の複数のデータ部分から取り出される。これらの部分は、特に国、サービスプロバイダ、或いはネットワークの特徴を含むので、サービスプロバイダの一致は、これらのデータ部分から割り出すことができる。ユーザ固有のデータ部分は、この目的には無用である。というのも、通常であれば、同時に確立された移動体無線通信チャンネルの一方は車両製造業者により使用され、他方は車両ユーザにより使用されるからである。ユーザ非固有のデータ部分からサービスプロバイダが一致することが分かると、本方法は、二つのチャンネルの通信を統合し、空いた移動体通信チャンネルを遮断する。こうして、結局のところ、唯一使用される移動体無線通信チャンネルが全システムハードウェアを使用でき、もしそうでなければ遮断された移動体無線通信チャンネルによって消費されていたエネルギーも節約することができる。
【0013】
ただし、この着想で問題なのは、サービスプロバイダコード(MNC)のサービスプロバイダへの割り当てがいつも一義的ではない点である。確かに各MNCは、一移動体通信サービス業者に一義的に割り当てられるのだが、しかし逆は成り立たない。というのも、複数のMNCがそれぞれ割り当てられている移動体通信サービスプロバイダも存在するからである。従って、本発明の発展形態では、現に利用中の移動体通信サービスプロバイダを、制御ユニットのメモリ内に保管された対応表を用いて特定し、その特定表では、識別プロファイルのユーザ非固有のデータ部分が、異なる移動体通信サービスプロバイダにグループ単位で対応させられているものとされている。簡単に言えば、メモリ内には、対応するMNCを有する移動体通信サービスプロバイダの“名前リスト”が保管され、本発明により、MNCベースの比較ではなく、対応付けられた“名前”を基にした比較が行われる。当業者には分かることだが、ここでは、コード化されていないテキストによる名前が互いに比較されるというわけでは必ずしもなく、サービスプロバイダをコード化した他の類のものが対応表にあるというのも同じように可能である。
【0014】
実行される比較の数と複雑さを最小限にするために、本発明の好ましい実施形態では、識別プロファイルのユーザ非固有のデータ部分は、通常は、それぞれ国別のデータ部分とサービスプロバイダ別のデータ部分とを有しているという事実を利用するものとされている。これは、第一の比較ステップでは国別のデータ部分を比較し、一致する場合にのみ第二の比較ステップでサービスプロバイダ別のデータ部分を比較することで実行される。大抵のサービスプロバイダは、国際的に活動するコンツェルンであるにもかかわらず、その国内セクションは、通常は経済的に独立している。従って、現に有効な識別プロファイルの国コード(Laenderkennung)(MCC)に違いがあると、チャンネル統合はもうない。そのため、MNCを詳しく調べることは無駄である。MCCが一致する場合にのみ、MNCの一致或いはMNCに関して対応表内に収められたコードの一致に関して引き続き検査することに意味がある。
【0015】
従来技術の場合によくあるように、本発明を用いる場合も、好ましくは、第一の移動体無線通信接続を介して、車両製造業者固有の移動体通信サービスが、一又は複数の選択された移動体通信サービスプロバイダから呼び出される(要求される)ようになっている。第二の移動体無線通信接続を介して、通常は、ユーザ固有の移動体通信サービスが、一又は複数の選択された移動体通信サービスプロバイダから呼び出される(要求される)。これらの移動体無線通信接続は、それぞれ個別の移動体無線通信チャンネルを介して、或いは本発明により、可能であれば共同の移動体無線通信チャンネルを介して、行うことができる。第一の移動体無線通信接続及び第二の移動体無線通信接続の移動体無線通信を、共同の移動体無線通信チャンネルを介して行うという本発明が求める場合に該当すれば、好ましい実施形態において、呼び出された移動体通信サービスの、接続別のアカウント割り当てが行われる。これは、“二重請求(Dual Billing)”という呼び名でも知られている。それによれば、複数の移動体通信サービス、つまり移動体通信サービスプロバイダにより移動体無線通信チャンネルを介して異なるユーザあてに送信された複数のサービスを、ユーザ別に対応させ、課金することができる。こうして、本発明によるチャンネル統合にもかかわらず、車両製造業者の指示により呼び出されたサービス及び車両ユーザの指示により呼び出されたサービスについて別々の課金が行われる。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に特化した記載と図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による方法を用いた通信システムの概略図である。
図2】本発明による方法の好ましい実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図において同じ符号は、同じか類似の構成要素を示す。
【0019】
図1は、本発明による方法が使用される通信システム10を大まかに図式化して示す。点線で囲まれた領域12は、サービス利用者側ハードウェア、例えば、詳細は不図示の自動車の通信システム及び付加的な車両ユーザハードウェアを示す。車両固有のハードウェアは、モデム装置14を有する。このモデム装置は、図示された事例におけるように、二つの個別モデム141,142を備えているが、二重モデム(Doppelmodem)として構成されていてもよい。モデム装置14は、車両のアンテナ装置16と接続されており、これを通して、プロバイダ側の移動体無線ネットワークハードウェア18との移動体無線通信を構築する。もっぱら象徴的にだが、図1には、二つの移動体無線基地局181,182が示されている。これらの基地局は、本明細書中の説明目的のために、異なる移動体通信ネットワーク事業者に対応付けられているものとする。さらに、第三の移動体無線基地局183が示されており、その意味については、さらに以下において踏み込んで説明することにする。
【0020】
モデム装置14にはもともとメモリが搭載されており、その中に、複数の識別プロファイル201,202が保存されている。図1には、識別プロファイルが、典型的なSIMカードの形態で示されている。しかしながら、当業者であれば、具体的なデータ書き込みによる固有のデータ構造としてもともと具現化された識別プロファイル201,202が、他の態様でハードウェアでも用いることができることは分かるであろう。特に、各識別プロファイルに対して一つの固有のハードウェア要素が設けられていることは必要なことではなく、むしろ、異なる識別プロファイルを一つのハードウェア要素で一緒に保存することも可能である。
【0021】
通信システム12の車両側ユーザインターフェースの例として、図1には、ナビゲーションデバイス221が示されている。車両に無関係なユーザハードウェアとして、図1には、スマートフォン222が示されている。当業者であれば、車両別の通信ハードウェアもユーザー別の通信ハードウェアも、種類と数の点で基本的に制限されていないことは分かるであろう。
【0022】
車両固有のハードウェア221は、通常は、第一の識別プロファイル201を使用して第一のモデム141を介して第一の移動体通信ネットワーク事業者の移動体通信ネットワーク構造181と通信する。車両製造業者は、事業者の顧客に車両別の特別なサービスを提供するために、このネットワーク事業者と或る一定の契約関係を結んでいる。車両独自の通信のための移動体通信ネットワーク事業者或いは移動体通信サービスプロバイダの選択について、車両ユーザは基本的に何ら関わりを持たない。
【0023】
しかしながら、車両ユーザは、その人独自の、車両とは関係のない通信ハードウェア222を独自の契約関係に従って使用する。このとき、ユーザは、第二の識別プロファイル202を用い、通常は、第二のモデム142を介して、第二のサービスプロバイダや移動体通信ネットワーク事業者の移動体無線設備182と通信する。
【0024】
上述の二つの通信経路は、図1において破線による二重矢印として示されている。二つの通信経路が共通に車両のアンテナ装置16を用い、このことが、許容範囲を超え、特に干渉と混信をもたらしかねないことが分かる。もちろん、複数のアンテナが用いられる変形例も考えられ得る。この場合もまた、複数のチャンネルが同時に確立するときに、出力を弱める干渉が生じ得る。二つのチャンネルに対して一つのアンテナを共用する例は、特に理解し易いという理由から取り挙げられたものである。
【0025】
しかしながら、さらに以下において実施例の詳細において説明される本発明による方法によれば、二つの通信経路が同じ行先、つまり同じ移動体通信サービスプロバイダないし移動体通信ネットワーク事業者に至るという場合には、識別プロファイル201,202の比較に基づいて、とりわけ、そのユーザに関係のないデータ部分の比較に基づいて、これら通信経路を統合し、ただ単数モデム(図中の第一のモデム141)だけを通して通信経路を機能させることが可能である。この通信パスは、図1では、移動体無線設備183に至る。この設備は、必ずしも移動体無線設備181,182と異なっていなければならないというわけではなく、これらの設備の一方であってもよい。
【0026】
従って、アンテナ装置16は、専ら一つのモデム141によって使用され、その結果、全体でより良好な通信パフォーマンスを得ることができる。加えて、第二のモデム142のためのエネルギー消費は、このモードでは、節約することができる。
【0027】
図2は、本発明による方法の流れ図30を示す。本方法は、そのスタートステップ301において有効化される二つの識別プロファイル141,142から出発する。方法のステップ302では、識別プロファイル、特にIMSIが、本方法を実施する制御ユニットに読み込まれる。続けて、識別プロファイル、特にIMSIの、ユーザに無関係なデータ部分の一部が比較される。IMSIがそれぞれMNCすなわち国別コードを有する好ましい実施形態では、これらが次にステップ303において互いに比較される。判断ステップ304における比較の結果、国別コードが異なれば、ステップ305では、通信チャンネルの変更は行われず、特には、二つの有効な識別プロファイルを通して通信が引き続き行われる。
【0028】
しかし、判断ステップ304における比較の結果、国別コードが一致するとなると、続いて比較ステップ306が行われる。この比較ステップでは、識別プロファイルのユーザに無関係なデータ部分の他の部分、すなわち、移動体通信ネットワーク事業者コードMNCが検査される。ただし、本発明の好ましい実施形態では、二つの通信経路で有効な識別プロファイルのMNCをただ単純に比較することは行われない。幾つかの移動体通信ネットワーク事業会社は、幾つかの国において、当会社に割り当てられている複数のMNCを持っているからである。そのため、比較ステップ306では、特に制御ユニットのメモリ内に保管された、特にダイナミックに更新可能なテーブルが参照され、このテーブルの中に、それぞれの国における複数のMNCが、対応付けられた会社名とともに保管されている。ステップ306における比較は、この会社名に基づいて行われる。
【0029】
判断ステップ307において、移動体無線事業者が二つの有効な通信経路において異なっていることが確かめられると、現在の通信を変更することはせず、本方法は、上述したステップ305に進む。
【0030】
ステップ307において、事業者が一致することが確かめられると、ステップ308において、複数の通信経路の一つが遮断され、全ての通信が一つの識別プロファイルによってのみ、そして対応する一つのモデムによってのみ進行する。
【0031】
ステップ309では、ステップ305とステップ308からの工程の分岐が一緒にされ、ステップ309は、もっぱら一つの待ちステップだけを表し、ステップ305により有効な二つのプロファイルの一つが変わる、或いは、ステップ308により唯一有効なプロファイルの他に別のプロファイルが有効になるといった、プロファイル状況(Profilkonstellation)の変化を待つ。プロファイル状況のこの種の変化は、例えば、ユーザによる移動体通信プロバイダの変更により発生し得る。プロファイルの変更が検出されない限り、判断ステップ310は、待ちステップ309とのループに入る。プロファイルの変更が検出されると、判断ステップ310は、既に説明したステップ302に戻る。
【0032】
もちろん、特化した記述において検討され且つ図に示された実施形態は、本発明の単なる図的な実施例を示す。当業者には、開示内容の全体に照らして、可能な変形に関して幅広い多彩さが与えられている。
【符号の説明】
【0033】
10 通信システム
12 サービス利用者側通信ハードウェア
14 モデム装置
141 第一のモデム
142 第二のモデム
16 アンテナ装置
18 モバイル通信ネットワーク基盤
181 基地局
182 基地局
183 基地局
201 第一の識別プロファイル
202 第二の識別プロファイル
221 車両固有の通信ハードウェア
222 ユーザー固有の通信ハードウェア
30 フロー図
301 スタートステップ
302 読取ステップ
303 比較ステップ
304 判断ステップ
305 継続ステップ
306 比較ステップ
307 判断ステップ
308 切換ステップ
309 待ちステップ
310 判断ステップ
図1
図2